カグラとはなんぞや?
「リーフ兄さん、カグラに行こう!」
アルのそんな一声によって俺の求めるスローライフはことごとく崩れ去る…
というわけでもなかった。
「カグラとはなんぞや?」
どっかで聞いたことがある気がしないでもないが…
「とりあえず詳しい話はトリーと一緒にね」
アルはそう言うと俺の手を引っ張り客室に連れて行く。
トリエラ商会か…そもそも俺はそのトリーさんとやらと面識はあるのだろうか。
不安でしょうがないがとりあえず会ってみるとするか。
「リーフ様!お久しぶりっす!」
なんだ!?この爽やかイケメンは!?これがトリエラ商会の長なのか!
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
俺は無難な返しで様子を見る。
「リーフ様…やはりご病気になられてから変わったっすね。いつもは無視か頷くだけだったすよね?」
「よ…よく言われます」
リーフ君…お前、無視はダメだろ。
「えーと、弟のアルがカグラに行きたいと言っているらしいのですが…カグラってどこですか?」
「海を渡った先にある国っすね!カグラ米もそこで作られるんすよ!」
なんと!?どこかで聞いたことがあったのはカグラ米のことだったのか。
「ああ!いつも美味しくいただいています」
「そこでこれからカグラに向かうんすけど、アルフリート様も是非にと思いまして」
なるほど、なるほど。うるさい弟が少しの間留守にするわけですね。
「頭の回る愚弟ですがよろしくお願いします」
ペコリと俺は頭を下げる。
「リーフ兄さん!?愚弟って…酒バカのリーフ兄さんに言われたくないよ」
「そう褒めるなって」
「褒めてないよ!!」
「まぁまぁ、話を戻すけどトリーさんと一緒にカグラに行くんだろ?何で俺も誘うんだ?」
「だって生贄…じゃなくて話し相手は旅の中で必要でしょ?」
でたな、生贄。
「行ってみたい…気持ちもあるんだが、長男は色々とやることがあるから多分無理なんじゃないか?」
「リーフ兄さんがやる事って言ったらエール造りだけでしょ?」
こいつ。
「こう見えてエール以外にもちゃんと仕事はしているんだぞ。そして何故か評判がいい」
「どうせ、「はやく終わらせればエール造りが出来る!」なんて考えながら仕事してるんでしょ?」
「そうだが?」
「そこは嘘でも否定するところじゃないの!?」
どうやらまた話が脱線してしまったようだ。
「トリーからカグラに行けばお米が買えるって聞いてね、それに黒髪の人が多くてこっちとは文化も違うらしいよ」
「直接カグラ米を買いに…文化も違う…確かに面白そうだが。ちなみに、ここからカグラまでどのくらいかかるんですか?」
俺はトリーさんに質問する。
「アルフリート様にも言ったすけど、大体2週間っすね」
「2週間!?王都の倍!?よくそれで行こうと思ったな」
「それでも…行きたいんだ」
結構真剣に考えていたのかな?それならそれで応援してやらないことはないか
「それに今回はリーフ兄さんにも責任があるんだよ」
アルはそう言って俺を睨む。
「責任って何?俺はアルの迷惑になるようなことは…「リーフ兄さんがカグラ米を沢山食べたからもう在庫が無いんだよ!」
えっ?俺のせい?
「いやいやいや、家族全員食べてるじゃないか。いくら俺をカグラに連れて行きたいからといっても嘘は…」
「毎日3食プラス夜食まで米を食べているのはリーフ兄さんだけなんだよ!」
「…」
これ…ガチギレのやつだ。確かに夜食でおにぎりを作って食べていた。
「悪かった、許してくれ。これでいいだろ?」
「よくないよ!!」
そう甘くないか。
アルは怒りながら俺に近づいてくる。そして…
「カグラに一緒に行ってくれないと、ノルド父さんにリーフ兄さんの秘密を言ってやる!」
「ひ…秘密?」
秘密ってなんだ?別に父さんに隠し事なんてしてないけど…うーん何もないな
「別に何にもな「仕事中に隠れてエールを飲ん」全面的に協力しよう!お兄ちゃんに全て任せてくれ!だからこれ以上何も喋るな!!」
とんでもない爆弾だった…
「ありがとう。リーフ兄さん」
「くっ…」
なんで俺が仕事中にエールを飲んでいることがこいつにバレた!?気をつけているつもりだったのに。
「次バレたら剣の稽古に強制参加なんだ…頼むから言わないでくれ」
「飲むのを辞めたらいいのに…しかも前科もあるなんて知らなかったよ」
エールを飲むから仕事が捗るのにこれだから子供は。
「あのーそろそろいいっすかね?」
トリーさんは手を挙げて話に割り込んできた。
「あっ、トリーさんほったらかしてしまい申し訳ございません」
「リーフ様が謝罪なんて…明日は雪っすね!」
この人はこの人で結構失礼だな。
「アルはこれから父さんと母さんを説得しに行くんだろ?あとで俺も加勢するから先に行って来なよ」
「リーフ兄さんは?」
「エールについて真面目な話をしなくちゃいけないんだ」
「分かったよ。絶対後で来てよね!来ないと…ね?」
ね?じゃねぇよ。怖いわ。
俺はサムズアップで態度を示した。するとアルは満足そうに部屋から出て行った。
「いやーそれにしてもリーフ様は随分とアルフリート様に懐かれているっすね」
「懐かれているというか、脅されているというか…カグラってそんなすごい所なんですかね?」
米ならトリーさんが運んできてくれるし、何かもっとおっ!って思うようなことはないものか。
「特に食文化はすごかったすね。なんでも魚が生で出されて驚いたっすよ!」
「な…生魚だと!!??」
魚…王都で食べた記憶はあるが、あれは確か調理されていたよな?カグラでは生でってことは刺身で食べるのか?
「そっそうっす。そしてその魚を醤油っていう黒色の液体をつけて食べると中々美味しいんすよ!」
「ショ…ショ…醤油だと?」
頭がパニックになっている。魚?醤油?カグラに行けばそれらが食べられるのか?やばい超行きたくなってきた。
「そして!エールを造り始めたリーフ様が気に入りそうなお酒もカグラにはあるんすよ!カグラ酒って言うんすけど、それが魚とよく合うんすよ!」
「カグラいい所ですね!!俺も行きたくなっちゃいましたよ!」
カグラ最高!!俺はカグラに行くために生まれてきたのかもしれない。
それに…
カグラに行けば酒が飲めるのか…!?
「トリーさん。俺もアルの所に行ってきます」
「了解っす。エールについては後ほどっすね」
カグラ酒に生魚に醤油だと!?
米以外にも楽しそうなものがあるじゃないか。
「こいつは…面白くなってきたな」
俺は昂る気持ちを抑えながら、父母のいるダイニングに向かった。
トリーさんの口調がわからん!!