「揚げパン!ラスクの蜂蜜漬け!カステラ!」
俺が開けようとする扉の向こうからそんな声が聞こえた。
「あいつはなにをやっているんだ?」
まぁとりあえずまずはアルとの約束を果たすためにカグラに行く許可をとらないと…
俺はドアを開け…
「失礼します。アルがどうしてもカグラに行きたいって言って聞かない…「アイスクリーム!プリン!串揚げの盛り合わせ!」
前世の美味しい物をそんな沢山言って何をするつもりなんだ。
ふと、俺は母さんの方を見ると…
「そそ…それでも駄目よ」
なるほど、美味しい物で母さんを味方にしようとしていたのか。
なんて思っているとアルが俺に気付いた。そして、
「リーフ兄さん!今だよ。エルナ母さんにトドメをさして!」
「俺はお前に使役されている魔物か何かか?」
「リーフ兄さんにだって美味しい物の一つや二つ作れるでしょ?それを母さんにぶつければカグラ行きも許してくれるよ」
そんな簡単にいくのか?
確かにぷるぷる震えている母さんを見てみると後一押しってところか。
でも俺が作れる美味しい物ってなんだ…あ。
「母さん…今アルが言った美味しい物に俺が造っている麦ジュースをつける…というのはどうでしょう?勿論普通の麦ジュースじゃありません。さらに糖度を高めた…甘い麦ジュースを用意しま「それは今すぐやりなさい」
「あれ?俺の時だけ反応違う?」
「なんで今まで造れることを黙っていたの?そんなとこに突っ立っていないで早く行きなさい!」
びしっ!っとドアを指差す母さん。
「いやいやいや!そう簡単に造れる訳ないじゃないですか!?」
麦芽を煮込む時間を増やせば糖が増える。そしてそれが、高アルコールのエール造りに繋がるからやってみる価値はある。あるんだけども!
そんなすぐ出来たらもうとっくの昔にやっとるわ!
「それに母さんがカグラ行きを許可してくれないとこっちも造れないですからね」
「あら?リーフもアルをカグラに行かせたいの?」
「まぁ…それもあるんですけど、俺自身もカグラっていう国に行ってみたいなと思いまして」
「え?リーフも行くつもりなのかい?」
ここにきて父さんも議論に参戦してきた。
「まぁ…その、仕事も一段落しましたし、将来の為に今のうちに外国に行くのもいい経験になるかなぁと思いまして」
とりあえず、醤油!カグラ酒!魚!は隠して適当に理由を並べてみる。
「嘘ね」
「え?」
「昔のリーフならともかく今のリーフはただの酒バカ。どうせカグラのお酒が飲みたいとかそんな理由なんじゃないの?」
わぁすごい。なんでわかるの?
「そ…そんなわけないじゃないですか。俺は真剣に外国で研鑽を積もうと…」
「本当のことを言ってくれたらカグラ行きを考えてあげてもいいわ」
「カグラ酒とかいう未知なるお酒が飲みたかったからです!!」
嘘をついてもこの人には通用しない…俺はそんな気がした。
「ほらやっぱりね。そうだと思ったのよ」
ふふん。と胸を張る母さん。
このままだと印象が悪いな、どうしたものか。
「確かにカグラでお酒を飲みたいのは事実ですが、それ以外にもカグラに行きたい理由があるんです!」
「あら?それは何かしら」
考えろ…カグラ行きを許される理由を!酒バカなりに答えを出すんだ!
「外国で…自分の造ったエールを売ってみたいんです」
我ながら咄嗟に出た理由がそこそこ良いなと思ってしまった。
「エールを売るなら王都でもいいんじゃないのかしら?」
すかさず母さんに突っ込まれる。
「王都だと確実に売れてしまうからダメなんです」
「リーフ兄さん随分と大きく打って出たね」
「アルの言う通りよ。なぜそこまで自信があるのかしら?」
簡単な話だ。
「自分が父さん…ドラゴンスレイヤーの息子だからですよ」
その場しのぎで考えた理由だが考えているうちに俺の中で不安が自信に変わって行った。
カグラという外国でエールを売るのはかなり面白いのでは!?と。
初投稿から1年が経ちました。
こうして投稿を続けていられるのも読んでくださっている皆様のおかげです。
更新頻度は相変わらずですがまだまだ書いていきたいです。
これからもよろしくお願いします。