「あの酒屋!傷んだエールなんか売りやがって文句言ってやる!」
傷んだエールを飲んで憤慨しているルンバさん。そりゃあお金払って出てきたものが痛んでいたら怒るのも無理はないよね。
「でも冷やして飲んで「ぷはー」なんて言ってた人が怒鳴り込んだところで話をきいてくれますかね?」
「あれはリーフの言う通り冷えてて味が分からなかったから仕方がない、冷えていないエールを飲めば俺だって傷んでいることは分かる」
負けず嫌いなのかな?ルンバさんらしいっちゃらしいけど、
「つまりエールを冷やしたアルが悪いと」
「そうだ」
「まさかの飛び火!?」
いきなり名前を呼ばれて狼狽えるアル。
「…まぁ怒りを抑えて別の飲み物でも飲みましょうよ。ルンバさんエール以外にも飲み物ってありますよね?」
「ん?ああ。それならブドウジュースはどうだ?あれは美味いぞ」
「ブドウジュース!!」
アルが手をあげて喜んでいる。
ブドウジュースか、申し訳ないが先程のエールのせいであんまり期待は出来ないが…
「アルドニア産のブドウジュース!一杯銅貨六枚だよ!」
気づけばブドウジュースが売られている所まで歩いてきたようだ。
というか、人多くないか?さっきのエール屋よりも二倍…いや三倍ぐらい人がいるぞ?これは期待していいのか?
「銅貨六枚…エールよりも高いのはやはり自信があるからなのだろうか」
「王都のブドウジュースが銅貨三枚だから二倍だね」
まぁものは試しだよな。
三人はお金を払いブドウジュースを入れるコップを渡された。どうやらここもセルフ式らしい。
「エールのコップで入れてもバレなさそうだけどなぁ」
なんてことを思っていたら、
「お客様!ダメですよ、エールのコップで入れちゃあ!」
店員さんが慌てて止めに入っている。
そりゃそうだ、エールのコップを持っていたらそっちに入れたくなるもんね。
よし、ちょっとどんな奴か顔を見てみよう。
俺は人混みの中上から顔を出し…
「前回はいけたんだけどなぁ…」
困惑しているルンバさんを見た。
「身内かよ…」
いや、そんな気はしてたよ?ルンバさんならやりそうだなぁとか思ったりはしたけど普通やります?
「おい!リーフ。エールのコップじゃダメみたいだ!!」
「…」
よし、他人のふりをしよう。
俺は知らんぷりをしてブドウジュースを注いだ。もちろんエールのコップで。
「リーフお前何エールのコップで並々入れてるんだ!!」
「いやぁ、みんなルンバさんに注目していたんでありがたく頂きました!」
エールのコップとブドウジュース用のコップとでは二倍近く容量が違う。ラッキーだね!
「このやろう!飲ませろ!」
「の、飲ませろってルンバさんだって同じブドウジュース持っているじゃないですか!?」
掴み掛かろうとしてくるルンバさんをギリギリでかわした俺。
肉弾戦じゃ勝てないのは明らかだ…それなら。
「飲まれる前に飲む!」
俺は500mlはあるであろうブドウジュースを一気に飲み干す。
あ…甘い!?そして濃厚!これが人工甘味料を使っていない自然の味なのか。
「はぁ…はぁ…ご馳走様でした」
「で?どうだったよ?」
「最高でした!冷えていたら泣いていたでしょう」
俺の特殊能力?美味しい物を食べたり飲んだりしたら涙が出るは今回発動されなかった。
いや、仮に冷えていて泣いてしまったらそれはそれで人前だから恥ずかしいのだけれども。
「それならシャーベットにしたらリーフ兄さんも泣いちゃうね」
「シャーベットだと?」
しまった…アルは氷魔法を使える、ブドウのシャーベットなんか食べたら間違いなく…やられる!でも…食べたい!ブドウのシャーベット食べたい!
俺が葛藤している間にアルと興味を持ったルンバさんはブドウジュースに氷魔法を唱えてシャーベットにしていた。
「ぐあっ」
頭をおさえるルンバさん。
「アイスクリーム頭痛だと!?くそっどんだけ冷たいんだ!それ」
「リーフ兄さんもおかわりしてくればシャーベットにしてあげるけど…」
アルの優しさとルンバのアイスクリーム頭痛を見て俺は窮地に陥る。
「いや!俺は負けない!シャーベットになんかに俺は…俺は!」
〜数分後〜
「お…おおおお、美味ぃい」
「あいつ、頭おさえながら嬉し泣きしてるぞ」
「器用だよね」
シャーベットを口に入れ泣きながら悶えていた。
最近「転生領主の優良開拓~前世の記憶を生かしてホワイトに努めたら、有能な人材が集まりすぎました」という漫画を読んだのですが感動しすぎて一時間ほど泣いてしまいました。
あぁ、余韻がヤバイ。