「ふぅ…大変美味しゅうございました」
俺は頭をおさえながらブドウジュースのシャーベットを平らげた。
うーむ、シャリシャリとした食感そしてこの清涼感…氷魔法とはなんと偉大なのだろうか。俺に氷魔法の適正がないのが本当に悔やまれる。
「美味そうに食べてたな!もう一杯行くか?」
「勘弁してください。これ以上俺を惑わさないでくださいよ」
あれ以上食べたらもう止まらない…そんな気がする。
「それにしても、ここのブドウ本当に美味しいですよね。これならエールにしてもいいんじゃないかって思う程でしたよ」
「何!?ブドウでエールが造れるのか!?」
ルンバさんの声と一緒にブドウのシャーベットも一緒に飛んできた。
「冷た!!食べながら喋らないでくださいよ!」
ルンバさんが意外にも食いついてきた。フルーツ系のエールもいける口なのか。
「麦、ホップ、それにブドウを加えれば形にはなると思いますよ。ただこの甘さを再現することは出来るかどうかはやってみないとですけど」
「よし!なら早速やってくれ!アル!ブドウをありったけ買ってくるぞ」
興奮気味のルンバさんはアルを引き連れてブドウを買いに行こうとするが、
「ちょ、ちょっと待ってください!俺たちこれからカグラに向かうんですよね?道中で造れるわけないじゃないですか!?」
道中でエールを造れるか俺も一回考えたことはあるがはっきり言って難しい。特に温度管理が出来ないんだ!
「帰りにもここには寄るんですよね?ならそこで買って家で造りましょうよ」
「お前がそう言うならそうするか。その代わり絶対美味いのを造れよ!」
「ぜ、善処します」
そんなこんなで家に帰ったらエールを造る約束をし町を見てまわる。
「あらかた見た気がしますけど、ルンバさんとアルはこれからどうするの?」
「俺はもう一杯ブドウジュース…いやシャーベットを食べるぞ!」
「シャーベットってことは氷魔法が使える俺も一緒ってことだよね。で、リーフ兄さんはどうするの?」
「俺は宿に戻ってエールを…「リーフの造ったエールをあの酒屋の前で美味しそうに飲むんだな!」
『え?』
ルンバさんの唐突な割り込みに困惑する俺とアル。
だいたい美味しそうに飲むってなんだ?俺の造ったエールは美味しいんだよ!
「そうだよな〜あんなエールを飲まされたら文句の一つでも言わなきゃな!俺は分かっていたぞ」
うんうんと頷くルンバさん。
あの、そんなこと全く考えていなかったんですけど。ただ宿に戻ってエールを飲みたかっただけなんですけど…
でも…
「さすがルンバさん。俺のことよく分かっていますね」
「リーフ兄さん!?」
再び困惑するアルを横目に俺は話を続ける。
「あの時はルンバさんが怒っていたから勝手にクールダウンしてしまったが考えてみると傷んだエールを売るなんて失礼極まりないですよね!」
「そうだそうだ!」
「よし、分かりました。俺は今からエールを取ってきて…」
「おう!」
「傷んだエールを飲ませたあの酒屋に…」
「おう!」
「俺が造った美味しいエールを飲ませて改心させてきますね!」
「おう!……ん?」
そうなればすぐにでも宿からエールを取ってこなければ!!
「善は急げ…という言葉もありますので行ってきます!」
俺はエールを取りに宿に戻るため走り出した。
「なぁ…アル、善は急げってどういう意味だ?」
「良いことはすぐに実行しろって意味だけど、リーフ兄さんがやろうとしていることは善なのかは分からないや」
俺は宿に戻り食糧庫に保管してあるエールを担ぐ。
「よし、さっそく酒屋に向かうぞ!」
テンションが上がった俺は宿を出た。
ちなみにテンションが上がっている理由は口直しに自分のエールを二杯程飲んだからだ。
でかい樽を担いでいるからか周りからヒソヒソと声が聞こえる。
シラフだったら恥ずかしいという気持ちもあったのだろうがほろ酔いの今ならそんな声も心地いいものだ。
酒屋の前に着いた。が、ここで一旦深呼吸をしよう。
いきなり目の前に現れて「このエール傷んでるぞ!」なんて言ってたらただのクレーマーだ。ここは穏便に優しく諭すように文句を言うべきだ。
「いらっしゃいませ!あ、さっきのお客さんじゃないですか!もう一杯どうですか?」
先程の店員さんが再びエールを勧めてくるが…
「あ、じゃあ一杯いただこうかなー」
銅貨五枚を支払いエールを入れるためのコップをもらう。
さぁてこれでエールを飲んじゃうぞ…じゃなくて!!
「あ…危ない。普通にエールを飲んでしまうところだった。あの店員誘導が上手すぎる」
間一髪で俺は我に帰った。さぁ俺の造ったエールを飲んで「傷んだエールを売ってしまい申し訳ございませんでした!」と喚くがいい!強気で行くぞ!
俺は決心し店員の元に再び向かう。
「店員さん!さっきエールを飲んだんですけど、少し酸っぱい気がしたんですよね。もしかしてなんですけど、いや本当にもしかしてなんですけど、傷んでいたりしてないかなと思いまして…」
自分で喋っててなんだか悲しくなってくるな。何が強気で行くぞだよ。
「つまり俺が造ったエールに文句があるということなんだな?」
「いや、まぁ文句というか…ん?何か声色が違うような」
ふと顔をあげるとそこには、大柄で筋肉隆々な男が立っていた。
「若造が…どうなるか分かっているんだろうな?」
男はそう言って俺の胸ぐらを掴んだ。
「あはは、まじか…」
ルンバさんよりも大きい身体をみて俺は思った。
死んだな…と。
創作意欲ってある日突然湧くんですよね…でも仕事中に湧くのだけはやめてほしいです。