「なんかすみませんでした」
俺は酒屋のお二人(夫婦?)に頭を下げる。
「いや、こっちこそ悪かったな。まさか本当にエールが傷んでいるとは思わなくて感情的になってしまった」
大柄な男も頭を下げる。どうやら店主らしい。
「それにしても小僧が造ったエールは香り豊かで濃厚な味だな。まぁ俺のエールには負けるけどな」
えっ?…そっちは傷んだものを売っていた癖に?
「だが、いいのか?小僧のエールを樽ごともらってましてやレシピまでくれるなんて…金なら払うぞ?」
「いやいや、俺はただエールの美味しさを色々な人に伝えたいだけなんで!お金はいらないですよ。そのレシピを使って今よりもっと美味しいエールを造ってください!」
「そうだな!それじゃありがたく使わせてもらうぜ」
今よりもっと美味しいエールって結構皮肉をこめて言ったつもりなんだけど…気付かなかったのかな?
第一印象は最悪だったがエールのことになれば話の分かるいい人だった。
「だが、貰ってばかりじゃ悪いからな…ちょっと待ってろ」
店主はそう言うとお店の中に入って行った。
「ごめんなさいね。うちのが迷惑をかけて、エールのことになると周りが見えなくなるのよ」
「迷惑なんてそんな、エールで周りが見えなくなるのは自分もなんで…もう本当にすみません」
「もう謝らなくていいのよ。あなたが造ったエール私も好きよ」
「えっ…本当ですか!」
今まで野郎ばかりに褒められていたからか、照れてしまう。
「まぁ、うちのエールには負けるけどね」
「あ…あはは」
ほんっとうに一言多いなこの人たちは!!
「ほらっ!持ってきたぞ。干し肉と野菜だ。全部持っていけ!」
いやいや、ちょっと多すぎませんか?
俺は半ば強制的にそれらを受け取った。
酒屋の二人と別れて俺は宿に向かっている。
前が見えないくらいの食糧品を持って先程の出来事について回想する。
正直、胸ぐらを掴まれたあたりで真面目に死を覚悟したけど助かって良かった。後はレシピを受け取ってくれたし次この街に来る頃には新しいエールが出来ているのではないかと考えるだけでワクワクする。
こうやって少しずつエールを広めていけたらいいなぁ。
などと考えているうちに宿屋に到着した。
結構長く酒屋の店主喋っていたので辺りは真っ暗だ。
「てか旅のメンバー誰も来てくれなかったな…もしかして忘れられているとか…」
そんな不安もありつつ宿に入り自分の部屋に向かう。
部屋はアルと一緒だけどもう寝てるよな、起こさないように静かに入らないと。
「ちょっと、アルフリート様起きてるんだろ!?なあ!」
「面白い遊びがあるんだがやってみないか?アルフリート様もはまると思うぜ!」
宿に着いたら、モルトさんとアーバインさんが廊下ではしゃいでいた。
他人のフリしてえなぁ…でもあの部屋って俺とアルの部屋だよなぁ。
などと思っているとアーバインさんと目が合ってしまった。
「おい!モルト、リーフ様が帰ってきたぞ」
「なんだと!?あっ、リーフ様お帰りなさい。酒屋の店主とは仲直り出来たんですか?」
「ただいま戻りました…って何で俺が店主といると知っているんですか?」
あの場には知り合いはいなかったはずだけど。
「帰ってくるのが遅いと思ってルンバさんに聞いたら酒屋に殴り込みに行ってるぞって言っててな。それでモルトと一緒に見に行ったんだ。そしたら…」
「店主に胸ぐら掴まれているもんだから楽しくやってんだなと思ってそのまま戻ってきたんですよ」
アーバインさんとモルトさんにあの場を見られていたのか。
「見ていたのなら助けて欲しかったですよ」
「ん?助けて欲しかったのか?酔っていたらあれぐらいよくあることだぞ?」
えっ、もしかしてアーバインさんて酒癖悪い?
「というか、部屋の前で二人は何をしていたんですか?」
「そうだ!聞いてくださいよリーフ様!」
モルトさん曰く、ルンバさんのいびきはうるさく寝られないため寝るスペースのあるであろう俺たちの部屋を使わせて欲しいとのこと。
「それでお願いしに行こうとしたら鍵を閉められたってわけですね」
「だから、リーフ様がアルフリート様に直接お願いしてはくれませんかね」
「そういうことでしたら全然良いですよ」
『助かります!』
二人から感謝の言葉をもらい俺は部屋の前でアルに喋りかける。
「おーい、リーフだけどここ開けてもらえるか?」
返事がない。
「もう寝たのか?」
「こんな早く入眠できわけないだろ。照明消えてまだ数分だぞ」
「気配はあるんで起きているとは思いますけどね」
この厄介ごとを押し付けられる感じ…これはあれだ、恒例の「生贄」だ。
はぁ…そっちがそう来るなら俺だって。
「モルトさん、アーバインさん、俺に考えがあります。協力してくれませんか?」
アル…悪いな、今日はお前の好きにはさせないぜ。
前回一ヶ月空いたのに今回は一週間で投稿だと?