キッカを出て四日、無事、港町エスポートに着いた。
ここから船に乗ってカグラに行くとのこと。ということは…
「あぁ、海だ」
この世界に来て初めて見る海は俺が今まで見た海よりも青く綺麗だった。
これだけの水があれば大量のエールが造れるよなぁ…いや海水じゃ無理か。
待てよ?塩のしょっぱさが逆に麦の甘味を引き出すんじゃないのか?あれ?もしかしてそれって美味しいのでは?名前は海だから…シーサイドエールとか。
「おいリーフ。何やってんだ?」
「わぁ、ルンバさん!?急に背中を叩かないでくださいよ!」
突然背中に激痛が走り振り向くとルンバさんがいた。
「死んだ目で海を見ていたからな。アルみたいだったぞ?」
それは俺に失礼だろ。
「死んだ目なんてしてないですよ。少し考え事をしていたんです」
「ほう?どうせ海水を使ったエールとか造りたいなぁとかだろ?」
「…」
「おい、なんとか言えよ」
「…」
なんで分かるんだよ。おかしいだろ。
「海水がしょっぱいから麦と合わせれば甘じょっぱいが出来ていいエールが造れるとか「ええ!全部言わなくていいですよ!なんで分かるんですか!」
顔に出やすいのかなぁ。
その後ルンバさんと別れて俺は船に自分の荷物を運ぶため港に来ていた。
「我は求める、意志に従い念道せよ」
サイキックを唱えエールの入ったタンクを浮かせる。
二つ…頑張って三つかな、一度に運べるのは。それ以上は魔力が不安定になってしまう。
船の日が当たらない場所に運ぶ。持ってきては運ぶ、持ってきては運ぶを繰り返す。
身体強化で重ねた方が楽に運べるのかな?と思ってやってみたが、対して労力は変わらなかった。
そんな試行錯誤をした結果、サイキックを唱え、タンクを浮かせながら身体強化で他のタンクを持つというごり押しの方法に辿り着いてしまった。
全てのタンクを船に乗せ魔法を解くと一気に疲れが押し寄せた。
「楽して運ぼうとしたのになんでこんな疲れているんだ…」
エール造りで魔法には慣れてきたつもりだったんだけど、まだまだなのかな?
とりあえず疲れたから一杯飲もう。なんて考えていると、
「リーフ様!やっと見つけたっすよ」
「トリーさん?どうかしました?」
私物がある馬車に戻ったところでトリーさんに呼び止められた。
「お昼は海鮮バーベキューですからそれまで自由にしてていいっすよ」
「か…海鮮バーベキュー?」
はて、なんのことだろうか?
「はぁ…その感じやっぱり聞いてなかったんすね。お昼はみんなで海鮮バーベキューをするって話したじゃないすか」
そんな話していたか?エールのことばかり考えていたから聞いていなかったのかもしれない。
「えーと、考え事をしていて聞いていなかったかもしれないですね。ごめんなさい」
「新しいエールのことっすよね?大丈夫っす」
…ねえ、ルンバさんといいトリーさんといいなんで俺が考えていることが分かるの?心が読める魔法とかある感じなの?この世界。
トリーさんと話を終え、いよいよ何もすることが無くなった俺は、
「とりあえず、アルたちがいる海岸にでも行こうかな」
それにしても、トリーさんが言っていた海鮮バーベキュー…海鮮かぁ、この世界の魚介はどんな味がするのかなぁ。
王都で食べた海鮮はあまり味がしなかったから、是非王都を上回る味であって欲しい!
海と言えば魚。魚と言えば酒。酒と言えばエール。魚を食べてエールで流し込む…
なんて思っていると、
「リーフ様大変です!」
またかよ。今日はやけに名前を呼ばれるな。
声からしてイリヤさんだろうか?大変というからには何か問題があったのだろうけど。
「リーフ様!大変です。アルフリート様がいじめられています!」
ん?
「なんて?」
イリヤさんの言葉の意味が分からない。あいつがいじめられている?誰だよ?あいつをいじめられるなんてすごいな。
「あの…リーフ様?」
「え?ああすいません。ちょっと想像が出来なくて。ちなみに誰にいじめられているのですか?町の子どもたちとかならそんな危険ではないと思いますが」
もし子どもたちなら是非そのいじめ方を教えてもらいたい。俺も混ぜてもらいたいからね。さぁ教えてくれ、その勇敢な勇者の名前を。
「モルトとアーバインです」
「でかした!!」
「え?」
「あ」
しまった…俺としたことが本音が出てしまった。
「大変ですね。すぐ向かいましょう」
それにしてもあの二人よくやった。今日は好きなだけエールを飲んでいいぞ!そして、どんなふうにいじめられているのか、俺も混ぜて…じゃなくて止めないと。
いやぁ、なんだか楽しくなってきたな。
なんて考えながら二人は海岸に向かって走り出した。
「ところで今「でかした」って言ってませんでした?」
「い、言ってないですよ」
海水を使ったビールは飲んだことあるのですが、塩味が強すぎて麦の味が分からなかったのはいい思い出です。
今年もありがとうございました。