「黒色のエールかぁ!すげえなこれ」
「あぁ!こんな真っ黒でもエールなんだもんな」
「…」
アーバインさんとモルトさんがそれぞれ感想を言い合っているがそんなことはどうでもいい。
黒色のエール…ホップを使ったエールすらまだ無いはずなのにもう黒が出てくるのか。
スタイルは?
低い温度で発酵させて造る下面発酵のシュバルツか?それとも普通のエールと同じような上面発酵のスタウトか?
下面発酵は…無理だよな、これから気温が上がるのにどうやって低い温度を維持するつもりなんだ?氷も高価だって聞くし。
それなら上面発酵のスタウトってことなのか。
「リーフ様大丈夫っすか?」
「あ…」
トリーさんに肩を叩かれ俺は我に返った。
「いやぁ、黒色のエールなんて初めてみたのでびっくりしちゃいましたよ」
とりあえずここは平静を装っておこう。
「リーフ様、ずっとぶつぶつ言ってて気持ち悪かったぞ」
「ええ、そんなにですか…」
アーバインの言葉に少し傷ついてしまった。
「そ、そんなことより早く飲んじゃいましょう!どんな味がするかワクワクしますね」
「それもそうだな!」
俺、アーバインさん、モルトさんの三人でジョッキを持ち『乾杯』と言い合い飲み始めた。
「う、これは!?」
言われていたとおりかなりの塩分だ、だけど、嫌いじゃない。むしろ後から来る麦の甘味を引き立たせてくれている。
「しょっぱい!?あれでも甘い?」
「確かに甘い気がしてきたぞ。なんだこれ」
アーバインさんとモルトさんも同じような感想を持ったみたいだ。
黒いエールというからには飲みごたえのある重いものだと想像していたが全然そんなことはなかった。
そして、特筆すべきはしょっぱいからの甘いという味覚の変化だ。一度飲むだけで二回味の変化を楽しめる。
温度によって香りが変わるエールと違ってこれはインパクトに残りやすい。
しょっぱいと甘いを両立させたエール…これは、
「すごいなぁ」
あまりの凄さに声を出してしまった。
だ、誰にも聞かれてないよね?
俺は恐る恐る顔を上げると、トリーさん、アーバインさん、モルトさん。まぁ、つまりは全員がこっちを見ていた。
「リ…リーフ様が」
「エールを褒めた」
「だと!?」
「打ち合わせしました?」
別にセリフを分ける必要なかったよね?
「だって、リーフ様といえば「自分が造ったエール以外エールと認めない!」って言ったって噂ですよ?」
は?なんだその噂は!
「俺は、王都で「これがエールだなんて俺は認めない!」って言ってグラスごと叩き割ったって聞いたぞ!」
叩き割ってなーい!!真実と嘘がごちゃ混ぜになってる!
「モルトさんもアーバインさんも根も葉もない噂を信じちゃダメですよ。一応これでも貴族の長男なんですよ?そんな失礼なことしませんって」
そう、俺は当事者だ。俺が違うと否定すれば全てが終わる!
「あれ?でも「これがエールだなんて俺は認めない」って言ったのは本当すよね?」
「ぐ…そ、それは本当ですけど」
だってさ、前世で世界中のビールを飲んできた俺からしたらね転生して初めて飲むモノがさあんな麦の味もないただの炭酸水だなんて思わないでしょ!
「アルフリート様が言ってたんで裏は取れてるっす」
アル!またあいつか!いや分かっていたけど。
「俺の話はそこまでにして、このエールの感想でも言い合いませんか?」
もうここは強引にでも話を戻すしかない!
「それもそうだな。俺はやっぱり色だよな。あんな真っ黒なエールはみたことねぇ」
「俺はしょっぱいってのに感動を覚えましたね。聞いた話通りのしょっぱさ、それでエールにも合うんですから!」
アーバインさん、モルトさんそれぞれの感想を頷きながら聞く。
いいねえ。こうやって一つのエールで感想を言い合うの実に楽しい!
「リーフ様はこのエールを飲んでどう思ったんすか?」
「概ね二人と同じ意見ですね。まずは人目を引く色!とりあえず一回飲んでみてもいいかな?と人は思ってしまいます。そしてそこからのガツンとくる塩味!からの麦の甘味。緩急があって飲んでて飽きないと感じました!」
「おぉ…リーフさまが饒舌だ」
「喜んでもらえて良かったっす。そこでリーフ様に相談なんですが…」
トリーさんが真剣な声色でこう言ってきた。
「リーフ様はこのエールを造ることは出来るっすか?」
普通に更新遅れました。ごめんなさい。
黒ビールは二十歳になって最初に飲んだビールでした。
選んだ理由が「黒飲んでる俺ってカッコいい!」と思ったからです。
ちなみに今は苦手です。