なんかカードゲーム型eスポーツのある世界に転生したんだが   作:九十九もちもち

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第二話

【事前情報】始めようと思ってるけどまだ足踏みしてる【教えろ】

 

1:名無しプレイヤー

そもそもあれどういうゲームなん? 今んとこニュースで聞きかじった情報しか知らん

 

2:名無しプレイヤー

基本は典型的なダイブ型VRやね。そこにカードやリアルアクション、あとレースが混じる感じ

 

3:名無しプレイヤー

お、早速情報サンクスな。それから無課金ガチ陰キャのワイでもできそう?

 

4:名無しプレイヤー

全然問題ないで。とりあえず今のバージョンだと毎週ガチャ一回無料な上に、初回ボーナスでも更に一回できるで。あ、流石に毎週分のは初回から一週間経ってからやな

 

5:名無しプレイヤー

俺もイッチと同じでやろうか迷ってるんだけど、動画でよく見るような人達みたいに上手くできる自信ない……

 

6:名無しプレイヤー

その辺心配すんのは分からなくもないけど、そんなん気にする人殆どいないから、勢いで始めちゃっても大丈夫やで

 

ーーーーーーーー

 

五代雄介。そう名乗った男は(おもむ)ろに名刺を渡してきた。

 

「……」

 

本当に、異世界からの存在が来た。

再現情報体だろうが、ネットで事前に知っていようが、やはり自分にとっては未知への一歩に違いないのだ。

そして、彼こそが自分にとって相性のいいカードということになる。

ややぎこちない動作で名刺を受け取り、目を通す。

名刺には『夢を追う男 2000の技を持つ男 五代雄介』と書かれてあった。

 

「ど、どうもご丁寧に……俺の名前は里山康介といいます。ミキシオン(ここ)ではヤスと呼んで下さい」

 

彼のあまりに明るい佇まいに思わずどもってしまう。

めちゃくちゃ社交的な人だ、もはや陽キャだとかそういう次元じゃない。なんつーか、光そのもの?

そんな感想を抱くくらいには、根本的な部分での隔たりを感じた。

 

「一応確認するけど、ユニットカードとして一緒に戦ってくれるんですよね?」

 

ユニットカードとは、プレイヤーが操作するカードのことである。これがなければミキシオンは成り立たない。

 

「うん、勿論だよ」

 

お手本のような、人当たりのいい笑顔だ。振る舞いのみならず表情も明るい。本当に自分とは大違いである。

しかし一瞬……ほんの一瞬だけ、その表情に陰りが見えたような気がしたが、錯覚か何かと判断し、無視することにした。

 

その性質上、複製された存在である彼らの人権や自意識がどうだのという議論は、もうさんざん行われた。それこそTV、学会、ネットとあらゆる界隈でだ。

とりあえず、こちら(この世界の人達)もあちら(カード側)も『そういうもの』として認識している。

その辺りはもう皆疲れているというか、これ以上議論しても仕方ないという空気になり、半ばタブー扱いしているのが現状である。

 

「っと、そうだ……このイラストにある姿とは随分違いますよね、変身系なんですか?」

 

そう言い、今手元に現れた彼自身のカードを見せる。

 

ーーーーーーーーーー

[リントの戦士]

 

 

 

 

 

 

コスト3000

ーーーーーーーーーー

 

ユニットは生成されると同時に、管理AIが自動でカードやイラストも作成、プレイヤーの手に出現するようになっている。

イラストについては、そのユニットが元の世界でどんな姿でいることが多いか、といった部分などを基準に作っているのだとか。

 

普段はカードの中に情報圧縮保存され、試合の時に実体化する、というのが基本の流れだ。

この技術は異世界の一つにある『モンスターボール』という機械を参考にしたとのこと。

 

そして先程言った変身系とは、文字通り姿を変える能力を持つユニットの通称。

あくまでプレイヤー間でのものなので、厳密な定義は定められていない。

 

「うん、そうだよ。クウガっていってね、俺の世界ですっごい昔にいた、リントって種族の戦士らしいんだ」

 

件のイラスト部分には、亜人の戦士が描かれていた。

上半身の大半を包む鎧、昆虫の複眼のような大きな目。そして腰に巻かれたベルト状の道具の中心部に埋め込まれた宝玉。

それら全てが、燃えるような赤色に染まっている。

 

「で、俺は色々あって、そのクウガになれるベルトを付けることになったんだ。この辺りは話すとかなり長くなるね」

 

「そうだったんですか……あ、不躾に聞いてしまってすみません」

 

「謝らなくていいよ、別段嫌ってわけじゃないし」

 

粗相をしても笑って許してくれた。

本当に人が出来ている。自分なんかでは逆立ちしてもこうはなれないだろう。

 

「ありがとうございます。それと、早速マッチアップしていいですか?」

 

ミキシオンのメインとなるファクター、やはり試合だ。

これが拒否されるようならプレイヤーとして一歩も進めない。

 

「わかった、じゃあ準備お願いするね」

 

「はい!」

 

プレイヤーメニューを起動、ホログラムのように表示される画面を操作していく。

 

ーーその際、横目で再び五代の曇る顔が見えた気がした。

 

(五代さん……?)

 

もしかしたら作られたばかりでどこか不調があるのかもしれない。

 

「あの、調子が悪かったりしたら、すぐに言って下さいね」

 

「ありがとう、でも本当に大丈夫だから」

 

また笑顔。

この人のそれは、心から人を安心させる魔法でもあるのかと錯覚してしまう。

 

ーーーーーー

 

「対戦よろしくお願いします」

 

「お願いしま〜す」

 

いよいよマッチ相手が決まり、互いのアバターで対面。

リアルのそれと大差ない流れでお辞儀する。

 

相手の名は社築(やしろきずく)

最低限のパーソナルデータは各プレイヤーアバターの頭上に表示されている。

随分とやさぐれたサラリーマン、といった印象の男だ。

 

(あ、この人市民カードか)

 

市民カードとは、戦闘目的ではなく現実世界での活動を目的として実体化されたカードのこと。

プレイヤー側に備わってる機能で、ひと手間程度の操作で容易に実行可能。

実体化する経緯は様々であり、いちプレイヤーが所持カードと交流を深めたり、カード側から現実世界を出歩いてみたいという要求を出したり、はたまた公的機関が社会的な目的で行ったりするが、実体化の際は一般人程度の能力しか発揮できなくなる。この点は如何なる場合でも例外はない。

 

挨拶が終わると同時に、景色は草原型マップに変化、そして二人の距離も10mほど離れる。

このような工程や調整なども、全て管理AIがやってくれるので便利なものだ。

 

「ルールはワンライフの制限10000でいいすか?」

 

「はい、構いません」

 

社の気怠げなルール確認に返答する。

ワンライフとは一対一のマッチで人気のルール。残機なし、とも。

ユニットのリスポーンがなく、コスト枯渇でも敗北となる。

程よいテンポで試合が動くことから自然とこの形式が流行り、ほぼ不動のものとなった。

 

そしてコストとは、その試合で各プレイヤーに定められた数値であり、各種カードの使用やユニットのリスポーンで消費されていく。基本的に先に0になった方の敗北となる。

 

今回の場合は『制限10000』と決定したので、互いの所持コストは10000。

で、こちらは[リントの戦士]コスト3000を使うので、残りコストが7000から始まるのが確定しているというわけだ。

 

『3』

 

自分と相手を挟む形でカウントダウンを示すウインドウが出現。

さあ闘争の時だ。

 

『2』

 

記念すべき初陣、できることなら勝って喜びを分かち合いたい。

もし負けたらちょっと恨まれたりするのだろうか。

 

『1』

 

自然と息が止まる、神経に熱が灯る。

 

 

『試合開始』

 

「「召喚(サモン)!!」」

 

 

同時に叫び、カードを(かざ)す。

 

「[リントの戦士]!」

 

「[柿崎隊 副万能手]!」

 

双方のそれが輝き、中から人型が飛び出す。

 

「変身!」

 

[リントの戦士]コスト3000 ヤス残りコスト7000

 

「トリガー起動(オン)!」

 

[柿崎隊 副万能手]コスト3000 社残りコスト7000

 

それぞれの掛け声と共に、戦士達が姿を表した。

 

相手の方は、髪をおさげに纏めたオレンジのジャージが印象的な少女。

そしてこちらは知っての通り炎の如き赤い鎧のーーーーー

 

「……?」

 

白い。

真っ白だ。イラストでは赤かった鎧が、実体化したら真っ白になっている。

どういうことだろう。

 

「五代さん、これは……?」

 

「大丈夫! 戦えるよ、ちゃんと戦えるから!」

 

少しだけ声色に余裕がない。

よく見ると角も短くなっている、これで何もないと考えるのは無理がある。

多少強引にでも試合を中止して、原因を究明するのがベストだろう。

しかし……

 

(今は……五代さんを信じよう)

 

何故か……何故かそうするべきだと判断したのだ。

このタイミングで中止するのは相手に失礼だから?

それもあるだろうが、決定的ではない。

単に自身がこのゲームを楽しみたいから?

まあ十中八九これだろう。自分は昔から他人の迷惑など、然程考慮しない性格である。

 

 

或いはーー

 

 

彼自身の『戦える』という言葉を、信じてみたくなったからーーーー?

 

 

「…………」

 

やってみよう。

曲りなりにも、今の自分達は相棒。その相棒の言葉を無碍にするのはなんとなくイヤだ。

無論、これ以上不測の事態が起こるようなら、問答無用でサレンダー(試合中止)するつもりである。

 

 

「……行くよ、五代さん!」

 

 

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