IS 散弾の閃き   作:mizurahi

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12話 決戦前夜

「ドイツ軍IS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ,、ねぇ」

 

研究所でのじぃやの話を聞き、祐治以外の四人は何やら忙しそうに作業に取り掛かってしまったため、やることの無くなってしまった祐治はISの点検整備をしようと格納庫へ来ていた。

 

「じぃやの言っていた優秀な協力者ってシノンの事でょ?」

 

「ん?そうだよ~。ゆうくんの言ったとおり社長夫人を調べてたら気になる動きをしてたからね~、じぃやと協力して裏づけをしてたんだよ」

 

「そうか、お手柄だな」

 

「ふっふ~ん、当然でしょ~。あ、ゆうくん今外付けのパーツを外しちゃうから待っててね」

 

現在祐治はシノンの協力の下ISを実際に使っての勉強会を行っていた。

勉強会といっても祐治としてみては自転車と同じように乗ったその日のうちに汚れを落として点検と整備をしようと思ったのでシノンにその旨を伝えたところ、なんならISの勉強も一緒にしちゃおうとなったわけである。

 

「じゃあゆうくん、腕から順番に外していくからね~」

 

シノンの言葉と共に腕のパーツの固定具が外されてゆく。

祐治の目の前にあるIS<ラファール・リヴァイヴ>が鎮座している整備機は生身の人間が背丈の三倍近くあるISを効率よく整備するために簡単な操作で色々な高さに足場を展開でき、IS用の整備工具を数々収納してある。

それ以外にも外したパーツを収納、固定する棚が床から現れたりと非常に万能で整備性に優れる代物である。

そんな整備機をシノンは操りながら次々と固定具が外されていくパーツを祐治は丁寧に外し整備機に備え付けてある収納場所へと収めてゆく。

 

「外装自体はそんなに汚れてないけれど....」

 

そういいながら間接部等の小さな隙間に指を差し込んでみるとざらつきやぬめりと共に指が真黒になる。

 

「うわ、汚いねー。軍手がほしい....っとシノンありがと」

 

真黒になった指を見てこんなに汚れてしまっては綺麗にしても、また汚してしまうと思い軍手がほしくなる。

その言葉を聞きシノンは軍手を一組と、汚れ落しを整備機から取り出して祐治へ渡す。

 

「よーしパーツは外し終わったから細かいところの汚れを落としていこうか」

 

ISには多少の損傷も自分で治してしまうという自動修復昨日が付いているが、汚れを落としてくれる訳ではないので細かい隙間や駆動部といった所の汚れは殆どそのままになっていることが多いのだとか。

 

「ふ~ふふ~ん」

 

整備機の中には工具の類はいくらでも収納されているが掃除をする道具は最低限しかないため、大小様々なブラシや、ぼろきれ、バケツ、灯油といったものを色々なところから集めて回ってきていた。

 

「ゆうくんカバーを外していくから気をつけて」

 

本来専門の技術者が必要な各所駆動部の保護板の開放などをシノンが行っており、祐治は汚れを落とし、シノンに不具合が無いかを確認してもらいながらの作業は順調に進んでゆく。

 

「さーて細かい部分の掃除は終わったかな」

 

そういって額の汗を軍手で拭う。

真黒になった大小様々なブラシやぼろきれ、バケツの水などがいかに汚れていたかを物語っている。

 

「それじゃパーツを磨いて戻していこうか、シノン指示よろしく」

 

「あいあいさ~」

 

シノンの指示の元外したパーツを綺麗に拭きながら元通りにしていく。

 

「ん~、綺麗になったんじゃないかな?」

 

全てのパーツを元通りにし、掃除道具を片付け、床に落ちたヘドロのようになった油や鉄粉を綺麗に拭取り整備機から降りて正面から掃除し終えた<ラファール・リヴァイヴ>を見上げる。

 

「うんうん、きっと彼女も喜んでるよ」

 

「彼女?....あぁ、ISには知性があるんでしたっけ?こんな魅力的な女性に感謝されるなんて男冥利に尽きるって物かな?」

 

(あり.....と...ご...ま...す)

 

「なんか言ったか?」

 

「ん?何も言ってないよ?どうしたの」

 

「今何か聞こえたような.....ってもう6時じゃないか、通りでお腹が空いてるわけだ、家に帰るか、また明日ねー」

 

祐治は<ラファール・リヴァイヴ>に手を振ると格納庫を後にし、シャルロットの待つ家へと急いだ。

 

 

 

「ただいまー」

 

「お帰り、お兄ちゃん」

 

「まったく、寝てなさいと言ったのにな」

 

外を漂ういい匂いにシャルロットが起きて食事の用意をしているというのは分かっていた。

今日一日ゆっくり寝ていなさいと言っておいたが、シャルロットのすっかり元気になった声を聞いて呆れ半分嬉しさ半分といった所だ。

 

「ただいま、調子は良くなったようだな」

 

「うん、ごめんね。寝てようと思ったんだけど朝からずっと寝てたから流石に寝れなくて...って、お兄ちゃん顔真黒だよ?先にお風呂に入ってきてよ」

 

そういって祐治に手鏡を見せるシャルロット、確かに何かで擦ったように帯状の黒い汚れが幾つも顔を走っている。

たぶん汚れた軍手で汗を拭ったせいだろう、そんな事を思いながら祐治はお風呂場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

 

「今日のご飯の量はどうだった?足りたかな?」

 

そういわれお腹の満足度と先程まで机の上に並べられていた大量の料理を思い出す。

 

「満足だ、味も量もね。まったく良くできた妹を持つと楽が出来ていい」

 

祐治はそういってシャルロットの頭を撫でてやると、えへへと頬を緩ませ嬉しそうに笑う。

そのまま少し撫で、使った食器類を片付けるために台所へと向かう。

 

「片付けは僕がやるよ」

 

「駄目」

 

立ち上がろうとするシャルロットの額を指で軽く押して椅子へと押し戻す。

 

「作るのは苦手だが掃除は得意だから任せなさい」

 

不機嫌さを出すために頬を膨らませるシャルロットだが、すぐにさっきまでの緩んだ表情に戻ってしまう。

 

「まぁ、まだ完全に良くなった訳でもないし今日はゆっくりしてなさい」

 

「はーい」

 

祐治は机の上にある食器類と料理で使ったものを洗い始める。

鼻歌交じりに効率よく丁寧に磨き上げていると後ろから視線を感じ、振り向いてみる。

すると椅子に座っているシャルトッとが幸せそうな笑みを浮かべこちらを見つめていた。

祐治は随分と幸せそうだなと思い、こちらからも笑みを返し作業を開始した。

 

「はい、お終いっと」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

「それはこっちの台詞だ」

 

掃除の終わった祐治は居間に置いてあるソファーに深く腰掛ける。

それにつられ、シャルロットも祐治の正面に置いてあるソファーに腰掛ける。

 

「お兄ちゃん」

 

「何かな?」

 

「お兄ちゃんは、いつまでもお兄ちゃんなんだよね?」

 

「ん?」

 

大好きな僕のお兄ちゃん。

だけど本当の兄じゃ無くて今はただ頼れる存在、僕の居場所。

お兄ちゃんの考え、生き方に影響されて、もう少しだけ頑張ってみようと思えた。

そんなお兄ちゃんに恩返しがしたくて本当の妹である佑香の変わりになって少しでもお兄ちゃんの支えになりたかった、ただそれだけで満足だった....最初は。

だけど一緒に生活して、言葉を交わしていくうちに僕の気持ちが変化してきた。

ISで強いお兄ちゃんが

少し大人びていて頼れるお兄ちゃんが

僕の作った料理を美味しいって言ってくれるお兄ちゃんが

体調を崩した僕を心配してくれるお兄ちゃんが

倒れた僕を看病してくれる優しいお兄ちゃんが

 

大好きなんだ

 

僕はお兄ちゃんとこうやって一緒に生活していくのがたまらなく楽しくて幸せなんだ。

だからこれからもずっと一緒にいたい、お兄ちゃんのすぐ隣で泣いたり笑ったりしたい。

僕を救ってくれた日に車の中で色々な話をして、佑香の事で女の人を一生許せないほど憎んでいる事も知ってる。

断られるって分かっていてもこの気持ちを伝えたい。

伝えないで後悔するくらいなら当たって砕ける。

だから言うよ。

 

「僕はお兄ちゃんが大好き。家族としてじゃなくて異性として」

 

こうなる事は判っていた、最も信頼していた母親との別れ。

愛人の子供という事で本家の人間からの酷い仕打ち。

頼るべき相手もいない。

わずか10歳そこそこの少女がそんな環境でまともであるはずが無い。

そして壊れるすんでの所で俺はシャルロットを助けた。

そして僅か二日間だけではあるが佑香に誓った理想の兄であり、男であり続けるという誓いを貫き通した。

俺はあまり顔が良いわけではないが、あそこまで弱りきった女の子にここまでしてのであれば好意を持たれる可能性があるという事ぐらい考えてある。

シャルロットはとても良い子だ、こんな良い子が自分の彼女、そして人生の伴侶となってくれればどれだけ嬉しい事か。

だけど受け入れるわけにはいかない、今はまだ。

 

「ありがとう、凄く嬉しい。だけど言ったよね?俺はシャルロットの兄である、と」

 

「もちろん覚えてるよ。だけどね僕はお兄ちゃんとずっと一緒にいたい傍にいたいって思ったんだよ?」

 

「シャルロット、君はとてもよく出来た子だ、女性として認められるほどにね。だけど初めて合った日に車の中で話したと思うけど俺はどうしても女って生き物が好きになれないんだ。」

 

「それももちろん判ってる。だけどどうしようもなく好きなんだ、大好きなんだよ....」

 

まさかここまで好かれているとは思ってなかった。

でも答えは用意してある、可愛い義妹にはこれまで負ってきた傷を癒し、強く一人前になるまではこの関係を続けさせてもらおう、それがじぃやへの答えでもある。

 

「そんな悲しそうな顔をしないで、こっちを向く。いいかい?シャルロットは俺の義妹だぞ?今俺の中で一番好感度が高いのは紛れも無くシャルロットだ。それに車の中でも言っただろ?女は嫌いだが女性は尊敬に値するって」

 

「ん....あれ?という事は....さっき僕の事女性としてって.....お兄ちゃん!!」

 

「ま、今はまだ妹だからな?」

 

「うん!!」

 

シャルロットはさっきまでの悲しみを浮かべていた顔から一変して満面の笑みを浮かべると座っていたソファーから立ち上がり、祐治の胸元に飛び込んだ。

 

「えへへ~、そうか僕が一番か、これからもいっぱい甘えちゃうけど、よろしくね?」

 

上目遣いでそうお願いされては断れないな。

 

「だからっていきなり抱きついてくる事は無いんじゃないか?」

 

「ん~、妹が兄に甘えるのに理由なんて要らないんだよ?」

 

しかたの無い妹だなと思いながらも満更ではない祐治は片方の腕でシャルロットを抱きしめ、もう片方の腕で頭を撫でてやるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シャルロットにブラコン属性を付与しておいたぞ
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