IS 散弾の閃き   作:mizurahi

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15話 廃人の恩返し 後編

 

 

 

「どうやら作戦は順調の様ですね。残るはわたくしと祐治様ですか、ですがどうしましょうかこの娘達」

 

現在秘密鉱山では6人の黒兎隊がじぃやを無力化するためにゴム弾を撃ち込だす鎮圧様の武装やナイフを持ち出し必死に戦っている。

さて、そんな黒兎隊を尻目にじぃやは顔色ひとつ変えずに淡々と作業のように撃ち込まれたゴム弾を斬りかかって来た黒兎隊の面々を受け流しているが、じぃやは一切手を出そうとしない。

このじぃやと言う人物、優しげな雰囲気、物腰の柔らかい口調から勘違いしている人が殆どだが父親同様に秘密鉱山の研究と機密保持を一人で行っていたため人並み外れた実力の持ち主なのである。

秘密鉱山の存在を知ろうものなら半日と経たず存在を消されるほどの情報力を持ち。

どのような相手であろうと真っ向から捻り潰す戦闘力を持ち。

それでも足りず秘密鉱山周囲へと近づいてきた敵を粉砕する兵器群の開発まで行えるほどの技術力を持つ。

これがじぃやの正体。

そしてデュノア社、これはじぃやの父親が秘密鉱山の研究と機密保持のために近くに住み込むようの小さな小屋を建てた所から始まる。

やがて鉱石の研究施設を作り、情報収集用の施設を作り、兵器群の開発拠点を作り、優秀な人材を集めた結果が今のデュノア社である。

今でこそ社長と言うものが存在しているが少し前まではじぃや一人で経営から開発、経営まで行っていた。

そんなじぃやがなぜ手を一切出そうとしないのか、それは手加減ができないためである。

なので黒兎隊を無力化するために一足踏み出そうものなら六つの達磨が並ぶことになるだろう。

 

「ふん、一体いつまで遊んでいやがる。餓鬼のお遊びに付き合うなんて鬼も落ちたもんだな、はっはっは」

 

「これはこれは社長、相変わらずの女遊びですか?それに鬼はわたくしの父親の事ですよ」

 

「お前も十分鬼だ。それに女遊び等ではない、雌狐の生皮を剥ぎに行ってたんだ」

 

「ふむ、その様子では逃げられた様ですね、そんな体たらくでデュノア社の社長が勤まるのか不安です」

 

「えぇい、うるさいぞ。俺は今非常に気分が悪いんだ、くそ忌々しいアメリカめ、そんなに戦争がしたいか、自分達の懐具合だけで勝手に戦争を起こしやがって、いつか捻り潰す」

 

「ええ、それはいい考えです」

 

身長180cmi以上の長身と服の上からでもわかる鍛えられた肉体、短く切られたら金色の癖のある髪の毛と悪巧みが好きそうな顔つきをした社長と呼ばれる人物は、心底不機嫌そうに吐き捨てる。

 

「で、この状況はなんだ、説明しろ」

 

「ミッションオーダー、可愛らしい眼帯少女6人を捕まえろ」

 

「はっはっは、そうか、それはいい。それじゃ気晴らしにこいつらで遊んでやるか」

 

「祐治様、こちらは上手く行きそうです。後は頼みましたよ」

 

じぃやは心の中でそう呟くと黒兎隊に向けて明確な殺意を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、そこをジャーンプ」

 

「まかせろ、とう!!」

 

シノンの掛け声と共に建物屋上から建物外へと飛び出した。

 

「くっ、また訳のわからないギミックか」

 

今回の黒兎隊歓迎作戦も大詰めを迎えようとしている。

残るは祐治とシノンとデュノア社の愉快な仲間達連合VS《シュヴァルツェア・ツヴァイク》を展開しているクラリッサ・ハルフォーフ。

そして現在祐治達がクラリッサ相手にとっている戦法が、《逃げの一手》

簡単に逃げているといっても相手はIS、人間がいくら本気で逃げたところであっという間に捕まるが、祐治の人間離れした体力と黒兎隊歓迎部隊の面々が仕掛けた罠やら仕掛けやらカラクリを駆使してISを装備したクラリッサを翻弄している。

 

「ゆうくん、目の前に見える縄を掴んで~」

 

「とどけぇぇぇぇ!!」

 

「させるかぁぁぁぁ」

 

少し遅れて同じように屋上から飛び出したクラリッサが祐治を捕まえようと迫ってくる。

だがあと少しで掴めると思った瞬間祐治は別の建物から伸びた縄を掴み、落下する勢いをそのままに空中で方向転換しクラリッサから逃れる。

 

「さっきからちょこまかと...おお!?」

 

突如としてシグナルが消えた祐治を追っていた三人、生身の人間一人満足に捉えることの出来ない自分への苛立ち、今までに経験したことの無い数々のカラクリ仕掛けによる妨害。

数々の予想外の出来事に疲弊し緊張の糸が切れた瞬間、どこからともなく現れた弩デカイハンマーがクラリッサへと叩きつけられた。

 

「くっ...おぉぉぉぉぉ!!!」

 

ISのPIC、スラスターを使っても殺しきれない勢いで地面に叩きつけられたクラリッサは今までの冷静さを失い、大きな叫び声を上げる。

 

「ゆうくん、そろそろ頃合だね。良蔵には話を通してあるから急いで向かおうか」

 

「逃げ切れますようにっと」

 

今回の作戦の最終仕上げを行うべく祐治はデュノア社内にある良蔵の専用工房へと向かう。

 

 

ゆるさない....許さない許さない!!!違法な人体実験だけでなく私をここまで虚仮にしてただで済ますわけにはいかなくなった。

本来なら情報を手にいれ施設を破壊するだけに収め、人的被害は極力抑えるつもりでしたが、そんな事はどうでも良くなった。

手足の何本かは覚悟してもらう!!

 

怒りの感情に身を任せ祐治へと追いすがるクラリッサ。

だがこれも全て計画通りだと気がつくのはもう少し後のお話。

 

「良蔵さん!!」

 

「おう、おせぇぞ準備はとっくに済んでる。行って来やがれ!!」

 

「はい!!」

 

良蔵の専用工房にたどり着いた祐治はカプセル状の容器に入る。

この容器は《アギト》をお披露目する際に使用したもので、この工房からアリーナまで地下を通っているこれ専用の通路を通り行き来するという代物。

これを使ってセザールが最後の仕上げを完成させているアリーナまで一気に移動し、理性を失っているクラリッサをおびき寄せ捕らえる、というのが作戦の最終段階である。

 

「おい貴様、ここに一人男が走ってこなかったか」

 

アリーナへ向けて祐治の入った容器が射出されてすぐクラリッサが良蔵の元まで追いついてきた。

 

「あぁ、あいつならあそこに見える大きな建物に向かったぞ」

 

そういって良蔵がアリーナを指差すとクラリッサはISのスラスラーを吹かし飛び立った。

 

「あーあ、あのお嬢さん大分キレてるじゃねぇか、大丈夫なのか?」

 

そんな良蔵の心配を知る由もない祐治は作戦の最終段階へ向けて全身の振るえを抑えきれずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついに来たかな」

 

アリーナで最終調整を終え、待機していたセザールはアリーナの中央から白煙と共にカプセル状の容器が現れるのを確認した。

 

「ふぅ、後は黒兎隊の副隊長が来ればお終いかな?」

 

容器から出た祐治は来るべき最終段階の作戦に備えるべく一息入れようかと思ったが、アリーナの壁をぶち破って進入してきた黒い影に中断せざるおえなくなった。

 

「拘束プログラム展か「覚悟しろおおおお」

 

壁をぶち破って進入してきたのはクラリッサ、そしてアリーナに祐治の姿を見つけると同時に《レールカノン》と《ワイヤー・ブレード》をあたりかまわず撃ちまくった。

 

「まずい、拘束用の設備が破損した。戦場太郎逃げるんだ!!」

 

「うおおおおおおおお」

 

セザールの必死の訴えと共に目の前に迫る《プラズマ手刀》を展開し切りかかってくるクラリッサを不自然なほどゆっくりと流れる時間の中ではっきりと捉える。

そして今にも《プラズマ手刀》で切られる瞬間。

 

私を呼んで.....

 

どこかで聞いたことのある女の子の声が訴えかけてくる。

 

私を....呼んで!!!

 

誰だろう?でも多分きっと知ってるはず。

 

私を....《ラファール》を呼んで!!

 

そうだ思い出した。

 

「来い!!ラファール!!!」

 

女の子の声に答え、名を呼ぶとアリーナの天井をすり抜けた一筋の稲妻が祐治に降り注ぐ。

そして強力な閃光に包まれ辺り一面が真っ白な世界へと変貌を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体何が起きた?

ラファールのコア?女の子の声に答えるべく名前を叫んだと思ったら目の前が真っ白になった....

眩しすぎるほどの白。

360度全てが白に覆われた世界....

 

「ここはISのコアネットワーク内です」

 

何も無い真っ白な世界を見渡していると先程の女の子の声が脳内に直接語りかけるように響いてきた。

 

「コアネットワーク内?電脳世界とでも考えておけばいいのでしょうか?」

 

「えぇ、それがとても近いです。それと、ちょっと待ってくださいね?今私の世界を構築しているところなので」

 

世界を構築?電脳世界なんて物も夢物語だと言うのに世界を構築なんていう破天荒な事を言われてもまったく考えがついていけない。

とにかく考えても混乱する一方なので大人しく待つ事にした。

 

 

「っと....おぉ」

 

5分か10分か、それとももっと長かったか、何も無い世界でただ待っていると強烈な風が吹き抜けたかと思うと真っ白な世界が風と共に流れるように変化してゆく。

真っ白だった床はなだらかな起伏と青々とした緑生い茂る丘となり、空は青く透き通り太陽が爛々と輝いている。

そして風が通り過ぎ、先程まで白一色だった世界には緑の丘、青い空、爛々と輝く太陽、空を自由に飛びまわる鳥や丘の草を食べている草食動物たち、そして心地よい風。

これがラファールが作った世界なのだろう。

 

「お待たせいたしました」

 

声のするほうに振り向くと一人の女の子が佇んでいた。

 

歳は15,6、風に揺れる緑色のショートヘアの髪、ここを流れる穏やかな風を体現したような表情、そしてなぜかロングスカートのメイド服を着ている。

 

「あー、えーと...」

 

質問したい事が沢山ありすぎて混乱しかけている、とにかく会話をしよう、喋っていれば落ち着いてくるだろう。

 

「どうしてメイド服なんですか?」

 

「あぁ、そこから聞きますか。えーとですね、なんといいますかご主人様に仕えたい!!って気持ちが大きくなった結果です」

 

「ご主人様っていうのは?」

 

「桐島祐治さんです」

 

「では君のお名前は?」

 

「はい、コアナンバー105、ラファールとも呼ばれています」

 

「ここはどこ?」

 

「はい、ここはISコアネットワーク内にある私の専用領域です」

 

「えーっと、んー」

 

余計に混乱してしまった。

簡単にまとめると

ここはISコアネットワーク内のラファールの専用領域

ご主人様(桐島祐治)に仕えたい

そしてそれを表す様にメイド服を着てます

駄目だ、全然判らない。

 

「えーとですね。色々と聞きたい事は沢山あると思うんですけど、あまり時間が無いんです。なので自分勝手だと思われるでしょうけど私の質問に答えて欲しいんです」

 

「ん?あぁ、どうぞ」

 

「ありがとうございます。えーと、そのこういった感情?は初めて感じるんですけど、ご主人様と一緒になると気持ちが落ち着くんです。そして凄く幸せな気分になるんです。私を使ってくれた後には時間をかけて綺麗にしてくれますし。でもどうしてそこまでして下さるのか、どういった気持ちで私に接してくれているのか知りたいんです。」

 

「どう?と言われましても....」

 

初めて《ラファール・リヴァイヴ》を展開したときは、「よろしく、ラファール」と声をかけた。

おい、とか展開しろ、とか偉そうな態度を取るよりも名前を呼ぶほうが人間同士でも気持ちがいい物だから。

使い終わった後の点検整備は自転車と同じで自分の身を預けているって言うのと相棒?とか体の一部だと思ってるから当たり前だしなぁ....

そういえば自転車の事を彼女だとか嫁さんですとか言ってたな、そう考えると....

 

「愛情、になるのかな?」

 

愛情を持って接しているからこそ乗って楽しい、整備も苦にならない。

 

「愛情かな、うん愛情だ」

 

「そう、ですか。これが愛情ですか....決めました。私ご主人様に使えます一生!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《コアナンバー105 システムオーバーロード開始》

 

一次移行制限強制解除 

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一次移行開始

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機動データを元に操縦系のマニュアル制御を開放

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射撃データを元に不要な射撃補助機能への演算を打ち切り

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戦闘データを元に機体の最適化開始

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戦闘効率《6》射撃効率《10》機動制御《8》格闘効率《不明》IS親和性《測定不能》IS適正《S》ISへの思いやり《愛情》

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IS適正の算出完了

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最適化完了

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一次移行完了

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二次移行開始

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不具合発生

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コアネットワーク内の記憶情報との差異が発生

深刻な不具合に至る可能性アリ

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二次移行中止

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余剰演算能力の振り分け終了

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最適化完了

オーバーロード終了

不具合の解決案の思考開始

ISコアの再起動を持って強制一次移行を完了します

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コアナンバー105略称《ラファール》再起動完了

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コアナンバー105と022の遠隔コールを承認します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ようこそISコアネットワークへ、我々は貴方を歓迎します》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁご主人様、今は時間が無くてゆっくりお話できませんがやるべきことがあるはずです。力をお貸しします、共に行きましょう!!」

 

 

頭に流れ込んでくるシステムメッセージが止まると、ラファールはこちらに笑顔を向けて手を差し伸べてきた。

 

「いくぞ、ラファール!!」

 

掛け声と共にラファールの手を取ると光に包まれ意識が覚醒してゆく。

 

「覚悟おおおおおお」

 

「逃げるんだ、戦場太郎!!」

 

今まさにクラリッサの《プラズマ手刀》が祐治を切り裂こうとする瞬間、祐治の体は光に包まれた。

 

「来い、ラファール!!」

 

掛け声と共に遠隔コールされた《ラファール・リヴァイヴ》が展開され、《プラズマ手刀》を《ブレット・スライサー》で受け止める。

 

「二人目のIS操縦者!!?」

 

「よし、復旧完了!!拘束プログラム起動」

 

祐治がISを展開した事に気を取られ大きな隙を作ったクラリッサはセザールが起動したIS用の拘束プラグラムによりISの絶対防御が発動し意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?クラリッサ・ハルフォーフ今回の件、どうするつもりだ?」

 

ここはデュノア社内にある社長室。

ここには現在、社長椅子に腰掛け机に足を投げ出している社長と、その正面にクラリッサ。

その後ろに祐治、セザール、アニーが立っている状況。

 

「これは貴方方が違法な人体実験をしていると「誰に聞いた」

 

「な、内通者による報告で、社長夫人という立場で間違いない情報だと!!」

 

「は!!あの雌狐の言う事なんか信じるからこうなるんだ。あいつはアメリカの、CIAの工作員だぞ。俺が今まで家族まで犠牲にしてあの女が悪さをしないように押さえ込んでたというのに貴様らはそれをこうも簡単にぶち壊しやがって。愛した女すら見殺しにしてきた俺の気持ちがわかるか!!!」

 

「そ、それは....」

 

明確な殺意の篭った怒鳴り声に萎縮してしまうクラリッサ。

だが今の社長の言葉を聞き祐治は社長の人物像を改める必要があった。

シャルロットからは愛人と結婚するためにシャルロットの母親を捨てたと聞いていたが、今の会話を聞いてそれが間違いだと思った。

アメリカという国は戦争で持って儲けを出す国であり何度も何度も自分達がうまい汁を吸うために工作員を各国に派遣し、第三国同士が争いを起こすように仕向け、それに正義の味方として参加し儲けを出すというのは祐治自身も良く知っている。

なので社長は工作員である元社長夫人がフランスで悪さを行わないためワザワザ近くに置いたのではないかと考えた。

 

「フランス国内トップである我デュノア社にISを持って進攻。これは明確な戦争行為だな。さらにうちの可愛い社員達への戦闘行為、これは俺が許さない。さてどうするか....これを餌にドイツからISコアを奪って目障りなお前達を消してもらうか、んん?」

 

「っ!?」

 

社長の畳み掛けにクラリッサは言葉すら出なくなってしまっている。

自分の行った行為でドイツの地位は落ち、愛すべき隊長のいる《シュヴァルツェ・ハーゼ》は文字通り抹殺される。

ただ隊長と同じ目に会う人がこれ以上出てきてはいけない、その一身で内通者からの情報を信じきり行った行為がまったくの無意味、それどころかドイツ自体が傾きかけない状況に陥っていると、自分の力ではどうにも出来ないという答えが出てしまっているクラリッサにこれ以上の発言は恐怖との隣り合わせ。

 

「で?さっきから黙ってないでなんとか言ったらどうなんだ!!」

 

バン!!と拳で机を叩きつけるとクラリッサはそれに反応して体をビクリと反応させた。

 

「あ、あの....私のことは、どうなっても構いません....ですが、隊長と部隊員の命だけは、なんとか....」

 

クラリッサは恐怖に打ち震えながら目に涙を溜めながらも、自分以外の黒兎隊の命だけは繋ぎ止めようと自分を犠牲にする。

 

そういえば、副隊長の情報を貰ったときに「ゆうくんゆくん、このクラリッサって娘は隊長にぞっこんだね」という、どの時はどうでもいいと思った情報を思い出した。

 

社長は愛する人を犠牲にし、フランスとデュノア社を守った。

クラリッサは愛する黒兎隊の隊長と部下達のために自分の命までも差し出した。

だが社長には何故命を差し出してまで黒兎隊を守ろうとするのかを伝えていない。

今回の件で悪いのはアメリカの工作員である。

 

「発言の許可を願います」

 

「いいだろう」

 

このままでは埒が明かないと思い祐治は社長へと発言の許可を願い出る。

この場で初めて顔を合わせたため何か言われるかと思ったが社長は祐治の事など気にすることなく発言を許可した。

 

「ハルフォーフ、聞きたいことがあります、よろしいですか?」

 

社長の許可を受け祐治はクラリッサの脇へ移動し話しかける。

 

「な、なんでしょうか?」

 

怯え、恐怖、絶望といった負の感情が渦巻くクラリッサ、そんな彼女の表情を真っ直ぐと見つめ簡単な質問を投げかけた。

 

「貴女は何故ISを伴って此処へやって来たのですか?」

 

「ですから、ここで違法な人体実験をおこなっていると聞いて」

 

「本当にそうなんですか?確かに違法な人体実験と聞けばどうにかしたいと思うでしょうが、わざわざISを引きつれて危険な橋を渡ってまでどうにかしようと思う代物なのでしょうか?私はそうは思いませんけれど」

 

祐治はラウラの件を知っていてワザと感情を逆なでするような発言をする。

そして冷静な判断を失っているクラリッサはその挑発に乗り祐治を睨み付け怒りの感情をあらわにする。

 

「それは!!貴方に馴染みが無いからでしょう!?《シュヴァルツェ・ハーゼ》の隊長は《遺伝子強化試験体》なんですよ!?人間が強力な戦力が欲しいと願い生み出された言わば生体兵器の様な物。しかもISの登場で適正を無理やり上げるために移植された《ヴォーダン・オージェ》と上手く適合できずに能力が暴走、まともな戦闘すら出来なくなり出来損ないのレッテルを貼られ、それでもなお血の滲む様な努力をして、ようやく今の地位を手に入れた。こんな苦しい思いをする者がこれ以上増えてはいけないんです!!」

 

怒りに任せて怒鳴るように言葉を発していたクラリッサであったが苦しい思いをしていた頃のラウラを思い出したのか途中からは殆ど泣き叫ぶような物であった。

その発言に満足した祐治が何も言わず元の位置へ戻る。

 

「ふん、まともな人間らしい理由があるじゃないか、なぜ最初からそう言わない!!誰があんな糞ツマラン建前を言えなどといった」

 

やけくそ気味に叫んだクラリッサだったが、なぜ社長からの威圧感が消えたかまったく理解できずに呆けてしまっている。

 

「おい!!そこで盗み聞きしてる奴ら、いい加減で入ってこんか!!」

 

「「「「お姉様あああああああああ」」」」

 

社長の一声がかかると入り口の扉が勢いよく開かれ、アリサを含む秘密鉱山強襲部隊の7人が涙を流しながらクラリッサに抱きついた。

 

「お姉様、私一生お姉様と隊長についていきます!!」

 

「「「「ついていきます」」」」

 

「お、お前達....無事だったのか、良かった」

 

一瞬何が起こったのか理解できなかったクラリッサだったが黒兎隊の面々だと気がつくと安堵の表情を浮かべ抱きついてきた7人を優しく抱きしめる。

 

「いやはや、これで一件落着ですかね?」

 

黒兎隊が飛び込んでから遅れて入って来たじぃや、だがいつも通りのじぃやを見て黒兎隊のアリサを除く6人が一斉に恐怖で顔を青くし、ガタガタを震えだした。

 

「お、鬼....」

 

「悪魔....」

 

「お、お姉様助けてください」

 

怯える黒兎隊には目もくれず真っ直ぐと社長を見据えるじぃや。

 

「そうは言ってもな、実際こいつらが攻め込んできた事は事実だしなぁ」

 

社長は頭をかきながら困ったような表情を浮かべる。

 

「では社長、今回のドイツ軍IS配備特殊部隊《シュヴァルツェ・ハーゼ》との演習結果を報告します」

 

「ほう?それはどういう事だ?」

 

セザールの演習という言葉に興味を持ったのか先程までの困った表情から一変、なにか悪巧みを考えるような表情を浮かべ続きを促す。

 

「今回の演習は彼、二人目のIS操縦者であり、ここデュノア社に専用武器を開発しに来た戦場太郎の発案という事を前提にお話します。演習内容としては、デュノア社へISで武装したよく訓練された謎のグループが攻めて来た、というものでデュノア社の敷地内に配備してある対IS用の設備が実際に効果があるのか、というのを重点的に調査しました。結果としては防衛施設だけでの無力化は出来ませんでしたが、ISと複数の職員によって相手を完全に無力化することが出来ました。そしてこれらを含め、戦場太郎が此処に滞在している間《シュヴァルツェ・ハーゼ》と共に演習を重ね諸外国へドイツとの友好的な関係を大々的に知らしめる事になりました。ですがドイツへの交渉はまだ行っていませんので、そこらへんの難しい事は社長にお任せしようかと思います」

 

「ん、大いに結構。戦場太郎、よくやった褒めてやろう」

 

「あ、ありがとうございます。ですがこの作戦は私だけでなくデュノア社の皆さんの協力の下に成功したと言えま「お兄ちゃん?呼ばれたから来たけど....」

 

「おい貴様、お兄ちゃんとはどういう事だ!!」

 

先程までご機嫌だった社長だったがシャルロットがやってきて祐治をお兄ちゃんと呼ぶと表情を一変させ先程のように殺気の篭った声を祐治へと向けた。

 

「あー、その....あ!!この機密データが目に入らぬか」

 

今にも飛び掛ってきそうな社長を抑えるべくじぃやから貰ったデータをシノンに読み込ませ記憶されている映像を空中投影されたスクリーンで流し始めた。

 

「おかあさーん」

 

「シャルロット、私はお母さんなんですから頭を撫でないでください」

 

「だっておかあさん、わたしよりもせがひくいんだもん」

 

「むむむむ、言い返せないのが悔しいです」

 

スクリーンに映し出されたのはシャルロットの幼い頃に撮られたであろう映像。

そこには幼いシャルロットと、それよりも少し背の低い女の人が写っていた。

 

「シャルロットちゃんは判るけれど、この可愛らしい女の子は誰かしら?」

 

「それはシャルロット様のお母様ですよ」

 

じぃやの発言に皆の視線が社長に集まる。

そして僅かな静寂ののち。

 

「え、社長ってロリコ「貴様!!それを早くよこせ!!」

 

物凄い剣幕で飛び掛ってきた社長にデータを投げると、祐治はシャルロットの手を引き社長室から一目散に逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃祐治を追いかけていた三人娘は?

 

「「「もう、お腹いっぱいで動けない....」」」

 

甘味の山に埋もれていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





5~6千文字くらいで終わるかと思ってたけど気がついたらここまで増えてた。

後1話上げたらデュノア社編は押しまい。

次は日常話だからそんなにかからないかも?
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