IS 散弾の閃き   作:mizurahi

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2話 IS学園入学

 (それなりに身構えてきたけれど実際にこの状況におかれると気まずい)

 

 ここはIS学園一年一組。

 入学式も終わり、朝のHRが始まるまでの少しの間。

 周りを見渡せば自分と目の前一番前の座っていいる織斑一夏の二人を除いてすべて女子。

 目の前の織斑君は顔を青くして心ここにあらず、随分と緊張していらっしゃるようで声をかけようかと思っていたが面白そうなので眺めている。

 時折窓際の女子生徒に助けを求めるような目線を投げかけているが無視されているようだ。

 

 (さてと、戦況はどうなってるかな)

 

 祐治はスマホをポチポチと操作しながらリアルタイムで変化する戦場を眺めていた。

 

 「こちら小隊長から大隊、敵の機動部隊を確認、次の地点への攻撃を要請します。目標東経一○五」

 

 「了解了解っと」

 

 現在祐治がスマホで遊んでいるのは、とある大規模FPSに実装されたコマンダーモードというもので、コマンダーは戦場に歩兵として参加することはできないが、戦場にいる歩兵からの要請で艦砲射撃やミサイル攻撃などを行ったり、攻撃目標や防衛目標を指示し、部隊を勝利へと導くための重要な役割を担っている

 

 「えー、こちら大隊から小隊長、目標東経一○五、北緯二○、地点ロの二。準備が出来次第大砲撃開始します、っと」

 

 MAPを確認すると確かにスポットされた敵の戦車と複数の歩兵を確認でき、味方が進攻する上でとても邪魔になっているのがよくわかる。

 

 「はい、着弾」

 

 

 (このまま行けばこの拠点は落とせるからっと、とはいえそろそろHRが始まりそうだし権限を誰かに移しておくか)

 

 「皆さん入学おめでとう。副担任の山田 真耶(やまだ まや)です、これから三年間よろしくお願いします」

 

 権限を移してすぐ、教室の扉が開かれると小柄だが出ているところがすごく出ている女性が入室し簡単な挨拶をするが目の前の一夏は緊張から聞こえていないのか反応が無く、周りの女子生徒も一夏にしか興味が無いのか結局誰も反応が無く教室に入ってきた山田先生は涙目になりながらあたふたとしている。

 

 「こちらこそおねがいします。」

 

 流石に可愛そうだったので祐治は注目されるのを覚悟で一人挨拶を返す。

 すると先ほどまで涙を浮かべていた真耶は祐治に眩しいほどの笑顔を向けてきた。

 

 「で、ではまず始めに出席番号順に簡単な自己紹介をお願いします。最初は相川 清香(あいかわ きよか)さん、お願いします。」

 

 なんとか持ち直した真耶に名前を呼ばれると皆少しずつ話を聞いてくれるようになった。

 それから何人かの自己紹介が終わり、目の前にいる一夏の番になった。

 

 「織斑君、織斑一夏君!!」

 

 「は、はい!」

 

 「自己紹介、あから始まって次は織斑君の番なんだけど、いいかな?」

 

 一夏に無視されたと思ったのかまた涙目になりながらお願いしする真耶に気がつき席を立つと大きく息を吸い込み。

 

 「織斑一夏(おりむら いちか)です、よろしくおねがいします!!」

 

 そして少し間をおいて。

 

 「以上です!!」

 

 何か面白い事を期待していた女子生徒たちはずっこけた。

 

 「あれ?駄目でした?」

 

 なぜ周りがずっこけたのか理解できていない一夏は正面から近づいてきた女性に頭を殴られた。

 

 「いっつぅ・・・」

 

 「お前はまともに自己紹介もできんのか」

 

 「ち、千冬ねぇ「織斑先生と呼べ」

 

 そういってもう一度一夏の頭を叩きつける。

 

 (痛そうだな、あれ)

 

 織斑先生に叩かれた頭を抑えて悶絶する一夏をよそに小学生並みの感想を思った。

 

 「山田君遅れてしまって申し訳ありません。諸君、私の名は織斑 千冬(おりむら ちふゆ)、この教室の担任だ。貴様らを一年で使い物になるようにきつくしごいていくから覚悟するように」

 

 「キャアアアアアアア」

 

 「本物の千冬様よ!!」

 

 「私千冬様に憧れて北九州から着ました!!」

 

 千冬の自己紹介が終わり、一瞬の静寂に包まれたかとおもうと耳を覆いたくなるような黄色い歓声。

 さすが世界最強ブリュンヒルデの称号は伊達じゃないなと痛感した。

 

「まったく毎年毎年よくもこんな馬鹿者ばかり集まるものだ」

 

 あきれたように吐き捨てるが、それでもお構い無しに女子生徒たちは織斑先生に敬愛に近い感情を抱き、期待の眼差しを向け続ける。

 

 「あれ、でも織斑一夏君と、織斑千冬先生ということは、ご姉弟ですか」

 

 「そうだ、だが家族とはいえ容赦はしない。」

 

 祐治がふと疑問に思ったことをつぶやくとあっさりと肯定した。

 その言葉を聴き、クラスの女子たちが唯一の男性操縦者かと思ったらさらに千冬様の弟さん、私ついてるッ。などと言った声がちらほら上がってくる。

 

 (唯一って俺も男性操縦者なんだけどねぇ・・・やっぱ顔がよくないと女の子にはもてないのかなぁ)

 

 織斑一夏、誰がどう見ても爽やかなイケメン。

 それに比べて祐治はイケメンには程遠く、普通か、見る人によれば普通以下といわれる容姿。

 だが祐治の真骨頂は顔ではなく、鍛え抜かれた反射神経と肉体。

 幼い頃から肉体の限界に挑戦するトライアスロンを行ってきた祐治には同年代に体力や筋力で争えるような人はおらず成人男性すらも日常的にトレーニングを積んでいる者でもない限り太刀打ちできない程である。

 

 「さて、そこで回りに殺気を振り撒いている馬鹿桐島、お前の番だ自己紹介しろ」

 

 つい抑えきれない苛立ちが出てしまったことを悔いることなく席を立つと祐治に対して特に興味のなさそうな女子生徒たちに向けて簡単な自己紹介を始める。

 

 「始めまして皆さん。紹介にあがりました桐島祐治です。藍越学園に自転車と水泳と陸上のどれか好きなものでスポーツ推薦を上げちゃうから是非うちに来てくれとお願いされていたのですが残念ながらこのIS学園に強制的に入学させられてしまってショックを受けています。ですがいまのところ世界でたった二人だけの男性操縦者ということで世界中の男性から期待を向けられています。なのでそんな些細なことは忘れてISというものを粉骨砕身に覚悟で学んでいきたいと思いますので皆さんよろしくお願いします」

 

 これでもかというほど嫌味たっぷりな自己紹介に周りの女子たちは絶句。

 祐治はこのIS学園に入学することの難しさをよく理解しており、ただ周りの態度が気に食わなかったので少し大人気ない自己紹介になってしまったというだけである。

 

 「馬鹿者が・・」

 

 織斑先生つぶやきをわざと聞こえない振りをすると祐治はゆっくりと自分の席について何事も無かったかの様な態度で次の人が自己紹介を始めるのを待つことにした。

 

 「で、では次の方、四十院 神楽(しじゅういん かぐら)さん自己紹介をお願いします。」

 

 その後祐治の一軒は無かったかのように順調に自己紹介も終わり、最初の時間までのわずかな間。

 

 「えーと、始めまして。桐島であってるよな。織斑一夏、一夏って呼んでくれ」

 

 祐治の前に座っていた一夏は体を祐治に向け簡単な挨拶を行う。

 

 「この世界にたった二人の男性操縦者だ、仲良くしようじゃないか。祐治だ、よろしく頼む」

 

 二人の簡単な自己紹介も終わり、ちょっとした雑談に花を咲かせていると一人の女性が話しかけてきた。

 

 「ちょっといいか」

 

 大和撫子を体現したような黒髪で凛とした佇まい、よく通るハッキリとした声、可愛さと美しさが見事に混ざり合った彼女は有無を言わさぬ態度で話しかけてきた。

 

 「箒か、祐治すまん、また後で、すぐ戻る」

 

 そういうと一夏は箒と呼んだ女子生徒の手を引き教室を出て行ってしまった。

 

 (どこにいくんだろ、すぐに授業が始まるのに)

 

 「ねぇねぇ、きりりん」

 

 祐治が次の授業の準備をしていると隣に座っている制服の上着の袖がかなり余っている女子生徒が袖をパタパタと振りながら声をかけてきた。

 

 「確か、布仏 本音(のほとけ ほんね)さんでしたっけ? 後きりりんってもしかして俺の事かい?」

 

 「そーだよ、きりしまだからきりりん、えへへー」

 

 「なんだこのかわいい生き物」

 

 「かわいいだなんてそんな照れるよー」

 

 間延びした声と眠たそうな目、長い袖をパタパタ振る仕草。よく見るとかなりスタイルもいい彼女が人懐っこい笑みを浮かべあだ名で呼んでくるならそれを可愛いと思わないほうが少ないだろう。

 

 「きりりん、なんだか近寄りがたい印象だったけど実際に話してみるとそんなことないよね」

 

 「それはどうかな? まだ会って間もないしそう判断するのは早いんじゃないか?」

 

 「そんなことないよ、こー見えても人を見る目には自信があるんだから」

 

 「そこまで自信満々に言うのであればそうなんでしょうね」

 

 「これからよろしく、本音でいいよ」

 

 「ISの知識もまったく追いついてないからこちらからもよろしく頼む」

 

 ニコニコと微笑む本音を見ていると自己紹介での自分の態度が大人気なかったなと素直に反省することができた。

 ちょうど本音との会話が終わると授業の開始を知らせるチャイムとともに一夏と箒が教室に駆け込んできた。

 

 

 

 「それではここまでで分からないところはありませんか?」

 

 授業が始まって数十分、山田先生の授業はとても分かりやすく一週間前にISの参考書をもらった祐治でもなんとかついていけている・・・・目の前の一夏はどうやら駄目らしいが。

 

 「織斑君は分からないところありますか?」

 

 「え、えっとー・・・」

 

 天使のような微笑を浮かべる真耶とは対照的に顔を真っ青にして冷や汗を搔いている一夏。

 

 「わかりません」

 

 「どこがわからないんですか?」

 

 (山田先生ってもしかして結構天然なんじゃないか? 一夏も勉強ができないわけではなさそうなんだけどな)

 

 「全部・・・わかりません」

 

 「ぜ、全部ですか? ここまでで分からない人は他にいませんか?」

 

 もちろん一夏以外に分からない者はいない。

 

 「桐島君はどうですか」

 

 一週間前に参考書を貰ったとはいえ本気で覚える気になればなんとか、ぎりぎりで付いていけているが涙目になりながら必死に訴えかけている真耶を見て少し意地悪をしたくなってしまう。

 

 「実は私も分かりまs「馬鹿なことを言うな」

 

 そんな祐治のくだらない企みは真耶の横でにらみを利かせていた千冬に一蹴された。

 

 「織斑、参考書はどうした」

 

 「参考書・・・あの分厚いやつなら電話帳と間違えて捨てt」

 

 千冬は何も言わずに持っていた出席簿で一夏の頬を叩いた。

 

 「再発行してやるから一週間で覚えろ」

 

 「あの厚さを一週間?そりゃ流石に無理ってもんじゃ・・・」

 

 「やれ、いいな」

 

 「は、はいぃ・・・」

 

 (今織斑先生キラーンって目が光ったぞ、あの人ほんとなにものなんだ)

 

 

 

 

 「あぁー」

 

 「どうした、そんな情けない声なんか出しちゃってさ」

 

 なんとか授業に食らい付いていく祐治と、まったく何も分からずため息ばかりの一夏は慣れない環境と難しい授業の合間にある休み時間を謳歌していた。

 

 「ちょっとよろしくて?」

 

 そんな二人に声をかけてきたのは、お嬢様ですと自己主張が鬱陶しい女子生徒。

 

 「んあぁ?」

 

 それに対して一夏は完全に気が抜けているのかみっともない声で返事をした。

 

 「まぁ!!?なんてみっともないお返事?この私に話しかけられるだけで光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

 「悪いな、俺君が誰だか知らないし」

 

 「この私を知らないですって!!?イギリス代表候補生であり入試主席のこのセシリア・オルコットを?」

 

 (主席、それは凄いな流石専用気持ちといったところかな)

 

 まったくといっていいほどISに対しての知識が無い一夏と違い、必要最低限の情報は持っている祐治はセシリアの発言を注意深く聞いている。

 

 「あの、一ついいか?」

 

 「何かしら?下々のものの要求に答えるのも貴族の役目ですわ、よろしくてよ」

 

 (あの人を見下す態度を見ていると少しずつイライラしてくるな、いかんいかん大人な対応で行かなくては)

 

 「代表候補生って何?」

 

 その発言に周りで聞き耳を立てていた生徒たちはずっこけ、オルコットは頭を抱えている。

 そして祐治は笑いを堪えるのに必死になっている。

 

 「呆れましたわ、日本の男性というのはこれほどに知識に乏しいんですの? 常識ですわよ、常識」

 

 そういってわざとらしく呆れてみせるオルコットに段々と怒りを募らせていく祐治であったが、一つ気になる事ができたので怒りを爆発させること無くオルコットの発言に耳を傾け続ける。

 

 「それで代表候補生のは?」

 

 一夏の疑問に長々とエリートという単語を強調して説明してゆく。

 

 「しかし何も知らないのによくここに入学できましたわね、唯一の男性操縦者と聞いて期待していましたが期待はずれですわね」

 

 (あれ?また俺のこと無視されちゃってるけど、まぁそれはいいとして保護という名目なの位簡単に想像できるはずなんだけどな、偉そうな事言ってる割には彼女も頭悪いんじゃないかな)

 

 「まぁでも、私は優秀ですからあなたのような人間にもやさしくして差し上げますわよ? 分からないことがあれば、まぁ泣いてお願いすれば教えて差し上げてもよくってよ?なんせ私は唯一入試で教官を倒したエリート中のエリートなんですから」

 

 (イギリス人て言うのはいつまでアジアの人間を見下せば気が済みのだろうか)

 

 イギリスなんていう野蛮な国の貴族らしくアジアの人間を見下し続ける事しか脳が無い典型的なイギリス人貴族を体現するオルコットに、本当にこんな人間が存在するんだなと怒りを通り越して関心してしまう祐治。

 

 「教官なら俺も倒したぞ?」

 

 「はぁ?」

 

 「まぁ倒したって言うか、突っ込んできたのを避けたら壁にぶつかって動かなくなったんだけど」

 

 一夏も段々とセシリアと話すのがめんどくさくなってきたのか、鞄から参考書を取り出し、枕にして寝る準備を始めた。

 

 「わ、私だけだと聞きましたが・・・」

 

 「女子ではって落ちじゃないのか?」

 

 「あなたも教官を倒したっていうの!!?」

 

 唯一倒したエリートという箔が落ちてみすぼらしいほど小さなプライドが維持できなくなったのか、先ほどまでの態度と打って変わり声を荒げ一夏に迫る。

 

 「お、落ち着けって、な?」

 

 「これが落ち着いていられ、話の続きはまた後で、よろしいいですわね!!」

 

 セシリアが言い終わる前に予鈴が鳴り、捨て台詞を残して自分の席に戻っていった。

 

 「モテモテじゃん」

 

 「きついジョークだ・・」

 

 祐治の煽りに返す気力も残っていない一夏は一言そういうと大きなため息をついた。

 

 

 

 

 「あー終わった」

 

 「じゃ、織斑君、僕はやることがあるからおさらばしちゃうよ」

 

 「あ、おう、またな」

 

 初日の授業もなんとかこなし、放課後になると祐治はそそくさと教室を後にしてとある場所に向かう。

 

 「桐島はいるか」

 

 「千冬ね、織斑先生。祐治なら今さっき教室を出て行ったけど、会わなかったのか」

 

 「そうか・・・」

 

 教室でそんなやり取りがあったことなど知る由もない祐治は目的地について着替えも済ましていた。

 

 「男用の更衣室が近くてよかった。最悪の場合制服の下に水着を着込むことになりかねなかったからな」

 

 わざわざ着替えてまでやってきたのはプール。

 IS学園に入学すると部活に参加しなければいけないと書いてあったので色々と考え、自転車と走りこみはいつでもできるけど水泳はそうも行かないよな、と思い水泳部に入部しようとプールまで来たのはいいが誰もいなかったので、とりあえず泳ぐために着替えてきたというわけ。

 

 「さって体も流して、準備運動も終わったし泳ぎますか、ひゃっほー」

 

 惚れ惚れするような綺麗な姿勢でプールに飛び込むと、そのまま片道50mのプールをクロールで往復し始めた。

 

 「9・・・後一往復したら一旦上がるか」

 

 のんびりと1kmを30分ほどかけて泳ぎ、体を休めてから本格的な練習を始めようと思いプールから上がろうとすると、水着を着た一人の女子がこちらをずっと見ているのに気が付いた。

 

 「すぐ上がります、少々お待ちを」

 

祐治の声に反応が無く、ただこちらをじっと見ているだけの女子生徒に多少の気味悪さを感じながらも流石に初対面でプールの中から話しかけるのはまずいだろうと思い、プールから出ることにした。

 

 「始めまして、水泳部の方ですか?」

 

 「え、え?あぁ、うんそうだ。私は水泳部部長ジェレミア・ソリアッドだ」

 

 (すばらしいスタイルをしていると思ったら外国の方でしたか、髪の毛の色が少し茶色っぽかったけど、この学園には色々な髪色をした生徒が多いからなんともいえなかったんだよね)

 

 (なんて身体つきだ、まるで鋼のようだ・・・・は、いかんいか、また見とれてしまった)

 

お互いどう思っているかなんて分かりはしないが第一印象はどちらも良いものだった。

 

 「そ、それで桐島君は水泳部に一体何の用があってきたんだ?」

 

 「実はわたくしトライアスロンをやっていまして、自転車と走りこみはいつでもできるんですけど水泳はどうして場所が必要でして。それで水泳部に入ればいつでもプールを使えると思って水泳部に入部しようと思ってここに来たんですよ」

 

 本来こういったことは職員室に行ったほうが確実なんだけれど祐治はとにかく泳ぎたかったため、とりあえず水着だけを持ってプールに来て水泳部の人がいればもののついでに入部届けを受理してもらおうかなと考えていた。

 

 (な、なんだと。こんな鋼の肉体を毎日拝めるのかッ)

 

 「受理します」

 

 「そんなに簡単に?」

 

 「面倒ごとは私がやっておきます、存分に使っていいぞ。私は入部手続きをしてくる」

 

 「ではお願いします部長さん?」

 

 「ソリアッド、いやソリッドと呼んでくれ。とにかく今日は私以外誰も来ないし自由に使っていてくれ」

 

 そういうとソリアッドは更衣室へと消えていった。

 

 「自由に使って良いのか、それじゃ遠慮なく」

 

 そういうとプールに飛び込み、お腹が空くまで泳ぎ続けた。

 

 

 

 

 「お腹空いた、ちょっと張り切りすぎた」

 

 あの後一時間ほど全力で泳いでいたが、あまりの空腹に耐え切れなくなり着替えてすぐに食堂まで足を運んだ。

 

 「時間はまだ17時を回ったところ、生徒は少ない。さっさと食べて部屋の番号を聞かないと」

 

 祐治が教室を出てすぐにやってきた千冬は祐治に部屋の番号と、鍵を渡すためにきていた。

 

 「食券か、んー実物が無いと悩むな・・・・とりあえず量に自信有りとか書いてある海鮮丼とこれじゃ足りないから・・・京稲荷を五つとあおさの味噌汁とフルーツサラダにしよう。これで500円か安い」

 

 「おねがいします。後海鮮丼大盛りにできれば大盛りで」

 

 「はいよ、ちょっと待っててね。て君は男性操縦者の・・・」

 

 厨房に声をかけると愛想のいいおばちゃんが出てきてすぐさま料理に取り掛かる。

 どうやらこの時間に来る生徒は少ないようで他にも何人かおばちゃんがいるがテレビを見たりのんびりしている。

 

 「桐島です、沢山食べに着ますので三年間よろしくお願いします」

 

 「おや礼儀正しいというか義理堅いっていうか、おいしい料理を期待しておいて」

 

時間のかかる物を頼んだわけではないのでほんの数分で頼んでいたもの出てくる。

 

 「ほんとにこれ食べきれる?いくら男の子だからって無理はよくないよ」

 

 出てきた海鮮丼は量に自信有りと書いてあるとおりかなり大きく、ラーメンどんぶりほどの大きさの器にめいっぱいの量がある。

さらにそれだけではなく京稲荷も5個あるためとんでもない量になってしまっている。

 

 「ご心配なく、それでは」

 

 そういうと祐治はお盆に乗った料理を軽々と持ち上げ、そのまま窓際の一人席に着き、黙々と食べ始めた。

 

 「お、美味しいな。海鮮丼に乗っているものも全部冷凍じゃないし、京稲荷もシソが利いていて食欲をそそる。ただあおさの味噌汁が風味が強すぎてちょっと苦手かな美味しいけど」

 

 思っていた以上に料理が美味しくてあれだけ沢山あった海鮮丼と京稲荷を食べきるとデザートのフルーツサラダもあっという間に食べ終わった。

 

 「ごちそうさま」

 

 「すごいじゃない、これは作り甲斐があるってものよ」

 

 「予想以上に美味しかったので食が進みます、これからもよろしくお願いしますね」

 

 祐治は返却口に食器を返し、食堂を後にすると、その足で一年の寮長である千冬の探しに職員室に向かった。

 

 

 

 

 

 「1030は・・・ここか」

 

 食事を終えた祐治は職員室に向かう途中で千冬に会い、その場で部屋の番号と鍵を貰った。

 

 「なんでもここには俺一人だとか、一夏と同じ部屋だと思ったんだがな」

 

IS学園は全寮制であり、それぞれ二人部屋になっており男性操縦者が二人いるということで当然一夏と祐治が同じ部屋になると思っていたが、どうやら一夏は別の部屋らしい。

 

 「とりあえず荷物をあけないと。といっても持ってきたものは自転車とローラーくらいだけど」

 

 そういうと祐治は輪行バックから自転車を取り出して組み立ててゆく。

 もちろん室内に自転車を置くことは寮長である千冬から了承済みである。

 

 「後は三本ローラーだけか」

 

 ものの数分で自転車を組み上げると、二つ折りにて持ってきていた三本ローラーをベッドと机の間におく。

 

 「さて、ちょっと自転車に乗っておくか」

 

 祐治は制服を脱ぎ、自転車用の服がまとめて入っているダンボールから室内トレーニング用の服。厚手の膝上まであるスポーツタイツを取り出し、それだけを着ると自転車のトレーニングを開始した。

 

 

 

 「桐島、いるか」

 

 祐治が自転車のトレーニングを開始して一時間程経ち、三本ローロラーの下に敷いた防音マットに汗の水溜りができ始めたころ外から誰かに呼ばれる声がした。

 

 「はい、ちょっと待ってください」

 

 パチンと自転車のペダルから足をはずし、タオルで汗を拭きながら扉に向かって声をかけた。

 

 「こんな格好で申し訳ない」

 

 なにか羽織るものを探したが、まだダンボールから自転車の服以外出していなかったため、スポーツタイツのまま扉を開けた。

 

 「いや、構わん。ふむ、制服の上からでも判っていたが高校生には見えない身体つきだな」

 

 「これだけが取り柄ですので」

 

 「まぁいい。とりあえずこれを受け取れ」

 

 そういって千冬は腕時計の液晶を大きくしたようなものを祐治に手渡した。

 

 「何ですか、これは? 時計・・・でもなさそうですし・・・」

 

 「どっかの馬鹿、まぁ世間一般には天災と呼ばれているやつからの贈り物だ、部屋に戻ったらつけてみるといい」

 

 「天才?一体誰なんですか?危ないものじゃないんですよね?」

 

 一夏と違い祐治は自分の身がかなり危ないと言う事を感じており、例え千冬が直接受け渡したものでも万が一何かあるのではないかと勘ぐってしまう。

 

 「大丈夫だ、あいつはそんなことはしない」

 

 「随分と信用しているんですね。そこまで言うのであればそういうことにしておきます」

 

 「そうか、あー後な、明日の放課後からフランスに行くことになったぞ」

 

 「そうですか、行ってらっしゃい」

 

 「桐島がな」

 

 「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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