テラリアの大型アップデート来たのにこのPCじゃ満足にできない
「次はISの実習だ、お前ら遅れるんじゃないぞ」
授業終了の鐘が鳴り、教壇に立つ千冬は手にした指導書を整えながら注意を促し教室を後にした。
「お兄ちゃん、これ渡しておくね」
女の花園であるIS学園では二人しかいない男子生徒は肩身が狭い。更衣室一つ取ってもそうだ、授業が終わり次第急いで向かわなければ遅刻してしまう程に遠くて不便なのである。
なので祐治は遅刻しない為に足早に更衣室に向かおうとしたところにシャルロットから声をかけられた。
「これは.....お、ISスーツ」
一夏に先にいくよう促し、シャルロットから手渡された物を確認する。
デュノア社特製の祐治専用ISスーツ
今まで祐治が使っていたISスーツは腕が入らない足が入らないで散々で無理やり伸ばして着ていたため窮屈でしょうがなかった。
そんな祐治の為にデュノア社が祐治専用に作り上げたのがこのISスーツ。
「これでやっと窮屈な思いから解放されるか」
「うん。それじゃ今までお兄ちゃんが使っていたISスーツは預かっておくね」
「そうか?ありがとう、よろしく頼む」
「じゃ、実習でね」
シャルロットから新しいISスーツを受け取り、今まで使っていた窮屈なISスーツを渡すと祐治は更衣室へと向かう準備を始める。
さて一夏が授業が終わると共に我先にと教室を出た様に、そうでもなければ実習に間に合わないのである。
本来なら学園内を走るという行為は禁止されているが更衣室に向かう場合に限り許されるほどに不便なのである。
ここで祐治の状況を簡単に報告すると、既に遅刻する状態なのである....平均的な男子学生ならば。
「はぁぁぁ」
大きな深呼吸と共に全身の筋肉を程よい緊張状態へ、それと同時に心肺機能を活性化させ全身の筋肉へ大量の血液を送る。
「よし、じゃあシャル、またあとで」
その一言と共に学園内を一筋の疾風が生まれる。
「気を付けてねー.....クンクン、えへへ」
シャルロットが受け取ったISスーツの匂いを嗅ぎ、周りから若干引かれている事など知らない祐治は更衣室へと向かう。
80kgを越える肉体は鍛え抜かれた全身の筋肉によって爆発的な加速力と風のような早さを生む。
僅かな歩数であっという間に最大速力に到達した祐治は、授業の合間と言うことで廊下で談笑する数多くの女子生徒の合間を苦もなくすり抜けて一陣の風を伴いかけて行く。
祐治が去った後に発生する風によってスカートがめくれあがるという苦情が多数報告されるのは少し後の話。
途中で必死に走る一夏を悠々と追い越し更衣室までの長い道のりをあっという間に走り去った祐治は新しいISスーツに着替えグラウンドへと向かった。
「「「.........」」」
グラウンドで実習が始まるのを待っていた女子生徒達はとある人物の登場と共に言葉を失い、その人物の姿に目を奪われていた。
彼、桐島 祐治は新しいISスーツの着心地に満足していた。
何事にも動じない太い首
それをさらに支えるように山のように発達した僧帽筋
プロテクターのように発達し丸みを帯びた三角筋
山のようなこぶに血管の浮き上がった上腕二等筋
腕を伸ばすと膨れ上がる上腕三等筋
ISスーツの袖を引き裂かんとする上腕に負けないくらいの太さを持つ何本も筋が入り血管の浮き上がった前腕
エラのように発達し正面からでも解るほど肥大化した広背筋
発育の良いIS学園の女子生徒と比べても比け劣らない程の大胸筋
80cmを越える胴部でありながら六つに割れているのが解るほど分厚い腹直筋
脇腹から胴部にかけて何本も筋が入り、腰の辺りでコブのように膨れ上がった外腹斜筋
その上半身を支えるように発達した大臀筋と太股
ラグビーボールのように肥大化し、何本もの血管が浮き上がるふくらはぎ
「流石だ。これは動きやすくて良い、常に着ていたいくらいだ」
新しいISスーツの着心地を確かめるように軽く柔軟をしたり、走ったりしてみるが普段運動するときに着ているものと比べても遜色が無いどころか、こちらの方が動きやすいくらいだった。
それもそのはず。このISスーツはそこらの大量生産品と違い、祐治の体に合わせて一つ一つ職人の手で作られたもの。
そんじょそこらのスポーツ用品程度が出せる着心地では無い。
さらに、ISスーツならではの機能、心肺、血圧、体温と言ったデータまでとれると言うことで祐治は自転車に乗る際に非常に便利なのでは?と思うのであった。
そんな祐治の行動一つ一つ、筋肉の僅かな動きさえも目に焼き付けんばかりに凝視している女子生徒達。
すでに何度か一夏のISスーツ姿を見て「男の子って筋肉あるな~」なんて思っていたが祐治の肉体は比べ物にならなかった。
身長が同じくらいでありながら20kgも重い体重、そして二回りほどデカイ体。
そんな祐治の肉体を目の当たりにして一部の女子生徒の気持ちに僅かばかりの変化が訪れるのだった。
「お兄ちゃ~ん」
祐治が新しいISスーツの着心地を確認していると、正面からISスーツに着替えたシャルロットが祐治を呼びながら駆けて来る。
「と~う、えへへ~」
勢いそのままに抱きついてくるシャルロットを受け止めると嬉しそうに頬を緩ます。
「どうお兄ちゃんISスーツの具合は」
「ばっちりだ。普段も着ていたいくらいだ」
「本当?実は、そのISスーツ僕も製作に加わってるんだ」
「ほう、流石我妹ではないか、よ~しよし嬉しいぞ」
祐治は左腕でシャルロットをしっかりと抱きしめ右手で頭を撫でる。
二人は周りからの呆れや冷ややかな目線を無視して仲睦まじく会話に花を咲かせる。
そして時間ギリギリにやって来た一夏共に授業開始の鐘が鳴る。
「よし、専用機持ちは手本を見せてみろ」
千冬の声と共に整列している生徒達の前へと向かうシャルロット、セシリア、一夏。
「それでは展開しろ。熟練のIS操縦者ならば1秒もかからずにISを身に纏うことが出来る、やってみろ」
シャルロットとセシリアは1秒とは行かないが、それに迫る速度でISを展開する。
「あれ?展開......しない?」
デュノア社のテストパイロットと国家代表候補生であり専用機を持っているためISに触れる時間が必然的に長い二人に比べ、セシリアとのクラス代表を決めるための戦いでしかISを展開した事のない一夏はどうしても展開に手間取ってしまう。
「思い出せ、共に戦った姿を。思い描け、相棒を身に纏った自分の姿を」
祐治の語りかけるような声が一夏の混乱した頭の中に入り込むと、何を悩んでいたのだろうと思うほど頭の中が整理され、先程までどうやってもISの身に纏い方が思い浮かばなかったはずなのに今では明確な答えが浮かび上がっている。
白式
一夏は自身が白式を見に纏い、縦横無尽に青空を飛び回る姿を思い浮かべ相棒の名を心の中で短く呼ぶ。
「おぉ、サンキュウ祐治」
「どういたしまして」
自分でも思っていた以上に円滑に展開出来た事に驚きつつも一夏は助言をくれた祐治に笑みを浮かべ感謝の言葉を投げかける。
「ふ、素人にしては上出来だ。さて桐島お前もISを展開しろ」
「私のラファールは今改修中なのですが.....」
「ほう?」
祐治の発言に千冬は意味ありげな笑みを浮かべゆっくりと祐治へと近づき。
「もう一つ、あるだろ?」
耳元で囁いた。
流石世界最強、気がつかれていたか。
「は!!急いで準備してきます」
自身が整備した打鉄を呼ぶため走ってその場を後にする祐治を見届けると千冬は専用機持ちの演習を再開した。
「よし、次は飛行だ、飛んでみろ」
「さて、ここなら大丈夫かな。打鉄!!」
祐治の呼びかけに答えるように周囲に光の粒子が煌めき始めると、それは徐々に密度を増し祐治に絡みつくと一瞬の眩い閃光と共に打鉄を身に纏い一夏たちと合流するために空へと舞い上がった。
「流石ですわね、シャルロットさん」
「ありがと。セシリアも狙撃メインの機体なのに機動制御にも手を抜かないなんて流石だよ」
「ありがとうございますわ。ですが....」
「ふぅ、やっと追い付いた。二人とも凄いな」
セシリアの向けた視線の視線の先にはふらふらと危なっかしく空を飛ぶ一夏の姿があった。
「織斑、お前のISは三人の中で一番機動性が優れているんだぞ」
「そう言われてもなぁ、空を飛ぶって言う感覚がいまいちわからないんだよな」
「それでしたら私が教えて差し上げますわ」
「本当かセシリア、ぜひ頼む」
「よし、お前ら楽しいお話はそれまでだ。次は着地、地上10cmで停止してみせろ」
「では一夏さん。先に行かせてもらいますわ」
言葉と共にセシリアは地上へ向けて加速して行き見事に地上10cmで危なげなく停止して見せた。
「ほぅ、上手いもんだなセシリア」
「祐治....ん?ラファールじゃないのか?」
「あ、お兄ちゃん。お兄ちゃんのラファールは改良中なんだよね」
セシリアの動きに集中していた二人の元に遅れながら祐治は合流した。
「それじゃ次は僕が行くね」
「おう、しっかり見ていてやるからな、シャル」
「もう、恥ずかしいよ....」
恥ずかしさに顔を染めながらもデュノア社のテストパイロットであるシャルロットはセシリアと同じように危なげなく停止を決めて見せた。
「よし!!それじゃ次は俺が」
「あまり気を張らないほうがいいぞ」
祐治の言葉に笑みを浮かべた一夏はISを地上に向けて速度を増して行く。
「ところで一夏って停止の仕方知ってるんだっけ?」
「ん?そう言えば停止って念じれば....っと止まらねえええええ!!!」
「まったくしょうがない奴だ。行くぞ打鉄」
「応、任せろ」
打鉄の力強い返事と共に
「な!!激突するつもりですの!!?」
まるで流星の如く地上に向けて加速する祐治の姿を見た生徒たちは一部を除き地上に激突するだけだろうと、その自殺行為に似た無茶な動きにざわめき立つ。
一夏との距離を一気に詰めた祐治は勢いそのままに右側の推進機だけで瞬時加速を発動させ残像を残しながら半円を描くように一夏を追い越す。
「行くぞ、イナーシャル・キャンセラー全開!!」
そのまま正面に躍り出ると
祐治の行った朧月の影響で大量の粉塵が舞い上がったグラウンドでは祐治と一夏がどうなったのかと生徒たちが固唾を飲んで粉塵が晴れるのを待っている。
「た、助かった....のか?」
一夏の言葉と共に徐々に視界が開け、二人の姿が露わになる。そこには地上数㎝の所で白式を受け止める祐治の打鉄がいた。
「流石お兄ちゃん」
「お、恐ろしい方ですわ」
「きりりん、かっこいいー」
「織斑君を全力で受け止める桐島君....ありだわ!!」
「ふん、なかなかやるじゃないか」
ざわめき立つ生徒たちをしり目に祐治は一夏を放し、地上に立たせる。
「まったく、あのまま地面に突っ込んだら今頃ここにでかいクレーターが出来てるぞ」
「面目ない、助かったよ祐治、この借りはいつか返す」
「期待しないで待っとくよ」
お互いの無事をかみしめながら二人は実習を再開するのであった。
「さて、目的の人物がいてくれるといいのだけれど」
現在祐治はIS学園にある食堂に来ている。
ここで祐治は鉄山から依頼された任務のために目標の人物、更識 簪を探している。
「あの人か」
祐治は簪が写っている写真と周りの生徒達を見比べながら窓際の席に座って食事をしている空色のセミロングの髪形をした一人の女子生徒に近づいていく。
「こんにちわ」
「どうしたの?」
祐治の問いかけに振り返る事無く返事をする簪。
よく見ると彼女は右手に持ったお箸で食事をしながら机にレーザー投影されたキーボードを空いた左手でせわしなく操作していた。
「更識 簪さん?」
祐治の言葉に食事と作業を止め、簪は振り返る。
「....」
「えーと、更識 簪さんで間違いないよね?」
「....」
祐治の問いかけに答えることなく簪は黙ったまま祐治の眼を見つめ続ける。
「そう....そういうこと。私の名前は更識 簪、何か用?」
簪は何かを悟ったような表情を一瞬見せると祐治から視線を外す。
「これを」
祐治は手に持った手紙を簪に差し出す。
「果たし状....」
「一対一の決闘を申し込む。詳しいことは中に書いてあるから、それでは」
果たし状を手渡すと祐治はその場を後にする。
そして、それを受け取った簪は去りゆく祐治の後ろ姿が完全に消えるまで眼で追った後、果たし状の内容を確認する。
内容は一週間後、第五アリーナにて一対一での勝負を申し込むと言った趣旨のものが手書きで記されていた。
ただ一つ条件があり、お互いに近接装備一つにて行うという趣旨が書かれており簪には、超振動長刀
「ふう、太郎は....知ってるんだね夢現の事」
果たし状を読み終えた簪は短く呟くと丁寧に折りたたみ拡張領域へと仕舞い込んだ。
ついにメインヒロイン簪ちゃんの出番です。
決闘までの特訓を一話挟んでから本格的に簪ちゃんの出番が増える