正体不明のIS、イ-01の襲撃を受けたIS学園は祐治と簪の連携と一夏の持つ雪片二号と、鈴音の身体を張った行動によって人的被害はほぼ無しで撃退する事に成功する。
ISよりも遥かに性能の劣る甲冑で果敢にも挑んでいった鈴音が負傷してしまうが命に別条は無く、数日安静にしていれば回復する物だった。
「シノン、目的地までは後どのくらいだ?」
「15kmって所かな!!」
謎のISイ-01の襲撃から数日たった休日の朝、祐治はとある山岳地帯の上空を改修の終わったラファールを身に纏い目的地へと向かい飛んでいる。
本来ならばIS学園の敷地内でもISを勝手に展開する事は許されないが目的地が桜井研究所とその周囲十数kmを囲う特殊機動兵器自衛隊の駐屯地兼演習場であることに加え世界に二人しかいいない男性IS操縦者と言う事で特例として許可が下りた。
そしてなぜ祐治がこんな所にいるのかと言うと話は数日前に遡る。
「鈴、体調はどうか?」
「何とかって所ね」
正体不明のISの襲撃を受け数日、第二アリーナなど被害の受けた建物や一夏の専用機である白式の修繕が急ピッチで進められている頃、ISよりも遥かに性能が落ちる甲冑を身に纏って果敢にも戦った鈴音の怪我も殆ど癒えていた。
「それで用と言うのは?」
「前に話したでしょ?黒兎隊の事。もうね連絡の催促がかなり来てるんだけどあたしが話してもらちが明かないから祐治にお任せしようかと思ってね」
「そうか、なら今からでもいいのか」
「もう連絡入れたわ、はいよろしく」
そう言って鈴音は手に持った小型の端末を祐治へと手渡した。
『もしもし、鈴さんですか?』
僅か1コール目で聞こえてきた相手の声。
そんなにも待ち焦がれていたのかと内心で苦笑いを浮かべつつも聞こえた声に返す事にした。
「アリサか、調子はどうだ?」
『え?....えぇ!?お、お、お兄様!?』
祐治の声に反応した相手、アリサは驚いたような声と共に何かが盛大に倒れるような音が聞こえてきた。
「久しぶり、まぁ落ち着いてよ」
『は、はいお久しぶりです。お兄様のご活躍はこちらにも届いています流石ですね』
「そうか、と言う事はこちらから報告するような事はないのか?」
『え、えぇ無いと言えば無いのですが、その~....』
「ん~、アリサはそっち、特自だっけ?どういった事をやりに行ってるんだ?」
『え?あ、それはですね!!』
これ以上報告する事は無いと聞き残念そうだったアリサだったが、報告は無いが祐治がまだ話す事はあると会話を続けようとすると声色で解り易く機嫌が良くなるアリサだった。
『こちらでは名前から解るようにISに対しての特殊な組織でして対IS用の戦術開発に余念が無く、実際にISを相手にしながらの本格的な演習を行うために我々は呼ばれた様なんです』
「対ISに特化した自衛隊の組織か」
『はい、しかも
「話には聞いていたけれど本当に存在していたんだな」
イー01の襲撃を思い出し目の前にいる鈴音が実際に
『はい、しかもお恥ずかしい話ですが私は既にISを身に纏った状態で負けています』
「そう、か....」
淡々と告げるアリサの言葉に祐治は衝撃を受けた。
実際に自分でISを身に纏って戦った事のある祐治はISの性能の高さを身にしみて感じておりデュノア社でアリサとは何度も手合わせをした事もあり、そのよく知ったアリサがISを身に纏い通常兵器と甲冑相手に負けたと言う話は非常に身近な物と感じたのだった。
「悔しくはなかったか?」
『それはもちろん悔しいですが、どちらかと言えば悔しさよりも尊敬と言った言葉が正しいでしょうか。それだけ特自の隊員の動きは洗礼されていましたからはっきり言って負けて当然だと思いました』
ISを使って負けたと言う割には言葉使いに悔しさが感じ取れないと思った祐治は単刀直入に感想を求めたが帰ってきた言葉はさらに驚くものだった。
噂程度ではあるが自衛隊の中にIS専門の特殊部隊が有るとは聞いていたがどういった事をしているのか、どういった武器を使うのか、実際に行動をした事があるのか、そういった情報が殆ど流れてこなかったため本当に活動しているのかさえ疑っていた程であったがアリサの言葉から確かに存在し、なおかつISに本気で対抗できる力を持っているという事が解った。
『ですから今は毎日、毎時間、毎分、毎秒が勉強の日々ですよ。なのでISを身に纏ってISと戦っていた時よりも得る物がすごく多いですよ』
「そうか、でも声に覇気が有るし充実した日々を送っているのは間違いないんだろうな」
『はい!!あ、そうだお兄様に伝えないといけない事が有ったんでした』
そうしてアリサから特自の本拠地でもある桜井研究所へと招待された祐治は長話に舟を漕いでいた鈴音に呆れられながらも端末を返し、その日のうちに帰って来たラファールと祐治に小太刀を作ってくれるという鉄山という人物が同じく桜井研究所にいると言う事なので早速次の休みにこうして桜井研究所へと向かう事にしたのだった。
「ゆうくんロックオンされてる!!」
順調だった空の旅もシノンの声と共に表示されるミサイルアラートに体が戦闘モードへと切り替わる。
「方向は?」
「12時の方向、目的地から」
「そういえばアリサが言ってたっけ、俺の価値がどうとか」
「ご主人様、それじゃこれは試されている?と言う事でしょうか」
「そう言う事。さて新しくなったラファールの実力を試すいい機会だ」
「ミサイル着弾まで後10秒」
アリサの話では祐治の保護に乗り気ではなかった特自の最高責任者を祐治の実力は確かな物だと説得したらしく実際にこの目で見てみたいと聞かされていたが、まさかこんな手段を取ってくるとは思っていなかった祐治だったが、すでに全神経を集中させ今後の立ち回りを頭の中で組み上げている最中だった。
「ミサイルの進路予測を表示するよ」
「よし、それなら」
全周囲視界越しに表示されたミサイルの予測進路は複雑な軌道を描きながら確実に飛行中の祐治へと吸い込まれていく物だった。
それならばと祐治は一度その場に停止し、改修されたアギトを量子転送するとバックショットを弾倉へと押し込み停止した事によって一直線の軌道を描く予想進路に標準を定めた。
「発砲と同時にシールドバリアーと最低限の保護機能以外を全て停止。シノンは着弾までの秒読みを」
「あいあいさ~」
「ご主人様なら必ず」
「任せなさい!!」
5
4
3
2
1
「そこ!!」
「反応、消失しました」
「ふむ、さてアリサ君どう思うかね?」
「はっ、お兄様はやられていないと思います」
「では救援部隊はいらない、と言う事で良いね?」
「はい」
ここは桜井研究所に併設されている特自の駐屯地内にある総司令部作戦室。
ここには現在特自の最高責任者であるウルセライとアリサ、そして数人の特自隊員が居り、祐治が本当にウルセライの求める実力を持っているのかを確かめるべく行われているちょっとした試験の真っ最中である。
「そうか、それなら作戦を続けたまえ」
「了解しました。総司令部作戦室より作戦本部、作戦は第二段階へ移行」
大丈夫、初めて戦った時と同じはずだからお兄様は絶対にここにたどり着く。
アリサはミサイルの爆発と共に反応が無くなった祐治の事を心配する。
そして駐屯地からは特自隊員を乗せた輸送ヘリと攻撃ヘリ、さらには超高空戦闘爆撃機・雷電が騒音をまき散らしながら祐治の反応が消えた地点へと飛び立っていくのだった。
「で、ゆうくんこれからどうするの?」
「とりあえず目標もできたし、見付からない様にできる限り目標地点に近づこうか」
「ご主人様、先ほどの衝撃でシールドエネルギーの残りが30%です」
「運よく撃ち落とせたけど、それでもこのダメージか。直撃してたらやばかったね」
シノンの秒読みと進路予想のお陰で運よくミサイルを撃ち落とす事に成功したが、その破壊力は凄まじく直撃で無いにも関わらずシールドエネルギーを70%も削られてしまった。
「それで桜井研究所まで行くんだよね?」
「そう、後何km?」
「約10kmって所かな」
「そうか、この険しい山道で何時間かかる事か....」
「ご主人様、頑張ってください!!」
「ゆうくん頑張って!!」
「こんな可愛い娘二人に応援されるなんてやる気出ちゃうね」
目の前に広がる密度が濃く、歩くのもままならないうえに上り下りの激しい山岳地帯を10kmも踏破しなければいけないが二人の応援を聞きやる気十分な祐治はラファールの余分な装備を拡張領域へと仕舞、険しい森の中を進み始めた。
「シノン、
「あいあいさ~」
祐治の指示に従い、シノンはラファールの機能を限定的に使用してレーダーや音響、音波、熱感知と言ったセンサー類を誤魔化すための隠密モードに移行すると、その数分後に爆音を轟かせながら青白い光を尾の様に靡かせながら飛ぶ航空機が通り過ぎた。
「あれが超高空戦闘爆撃機・雷電か?」
「詳しいデータは解らないけど、多分そうだろうね」
「一夏から聞いた話だとISのシールドエネルギーを一気に半分削る威力がある武装を搭載しているらしいからな、見付かる訳にはいかないな」
イー01の襲撃前に行っていた一夏と鈴音の決闘で鈴音が持っていた武器がこの雷電に搭載されているレーザーと同じ威力で一発直撃しただけでシールドエネルギーの半分近くを削られたと聞かされ驚かされた。
「よし、もういいだろ」
「ご主人様、正面11時と1時の方向に何かあります」
「シノン、何か見えるか?」
「ん?あれは....セントリーガンだ」
「またか、なんなんだこの森は」
祐治が降下地点から歩く事1km。
この間に解った事と言えば見て解る通り歩きにくく進まないだけでなく縦横無尽に仕掛けられた大量の罠があると言う事。
シノンとラファールの助けとISを身に纏っているから安心して歩けているが、その数々の罠はセントリーガンの様な最新式の物から落とし穴に鋭角に削られた木の枝を落ちて来た物に刺さる様に設置した物や手榴弾のピンに線を取りつけ人が通りそうな所に線を張り引っ掛かれば爆発するような古典的な物まで様々であった。
お陰でこの森に着いて既に3時間が経とうとしているにも関わらずたったの1kmしか進んでいない有様である。
「迂回は....できないか。シノン、センサーの範囲を予測してくれ」
「あいさ~」
「ん~、よっしできた。けど数が三つ、通れる範囲は本当にぎりぎりだね」
「迂回は?」
「衛星写真を見る限りここを迂回しちゃうとその先でさらに迂回するようになって到着する時間が読めなくなるかな~」
「そうか....その写真見せてくれるか?後高低差が解りやすいようにグリッド線を引いたやつと二種類」
「うん、わかった」
シノンから送ってもらった二種類の画像はグリッド線だけでなく通れそうな経路をいくつか表示してあり、それを見比べてみると確かにここを迂回してしまうと、この広大な森の中を研究所を中心として大きな円を書きながら迂回する事になってしまいそうな地形で今進もうとしている方向が最も踏破できる可能性が高そうだった。
「空を飛べばミサイルや雷電に撃ち落とされる。陸路は天然の要塞と罠の数々。桜井研究所にはいったい何があるんだ」
自分の実力を試すためと、黒兎隊に会うため、鉄山と言う人物から小太刀を貰うために桜井研究所を訪れてちょっと演習をするだけだろうと簡単に考えていた祐治だったが日本国内にこんな場所がある事や、特殊機動兵器自衛隊の実力の高さの一片を垣間見た事によって闘争心が体の奥深くから灼熱の溶岩流のようにゆっくりと湧き上がり身体全体を支配する感覚と底知れない集中力の高まりに心地よささえ覚え始め、必ずや桜井研究所へと到達してやると言う確固たる目標のために難攻不落の天然要塞を邁進するのだった。
「ふぅ、そろそろ時間かな」
この山岳地帯を歩く事数時間、既に日は沈みかけ暗い影を落としていた。
「何かあった時のためにと食べる物と水を拡張領域に入れていたから良いけど、これが無かったら諦めてたかな」
第二世代機の傑作と謳われるラファールの大きな特徴に拡張領域の広さがある。
この大きな拡張領域に数多くの兵装を詰め込む事によってあらゆる場面で活躍できるのだが、祐治の場合はアギトとショットシェル、こうやってISを身に纏って行動する際に不要な装備、
「ゆうくん、そろそろ暗くなるけどどうする?」
「今日はここらへんで休もうか、ちょうど雨風が凌げそうな場所があるし。朝一でこの先にある山を登ってこの先がどうなっているのか確かめようか」
「あいさ~」
「4月とは言えまだ夜は冷えるからこのまま寝るか。ラファール宜しく」
「はい!!お任せ下さい、ご主人様の身は私がお守りします」
「任せた。それじゃ今日は疲れたから寝るとしようかな」
こうして祐治は洞窟とは言えないがちょっとした岩の窪みに横になると、そのまま深い眠りに着いた。
僕の考えた最強の自衛隊、になってしまってますがISはもっと強いはずなので大丈夫だと思いたいです。
もっと色々なSTGの機体とか追加しちゃおうかなーなんて思ってたけど大変な事になりそうだから雷電だけで我慢した。
でも色々なSTGの機体を出す何かを書くのもいいかもしれない。