「よっと、この感覚にも大分慣れて来たな」
ここでは毎日の睡眠時間を使って打鉄から剣術の手ほどきを受けている場所であるが今日は祐治の置かれている状況が状況なので訓練は行われない。
「ゆうくん、こっちこっち~」
コアネットワークと言う
そしてその両隣りには胴着に身を包み艶やかな黒髪を風に靡かせている打鉄とメイド服に身を包み緩やかに吹く風に短く切りそろえられた緑色の髪が柔らかく揺れているラファール。
「待っていたでござるよ」
「ご主人様、お待ちしておりました」
シノンにつられて振り向き笑顔を向けてくる。
その三人の眩しすぎる姿に幸福感を覚えながらも三人の元へと歩み寄るとシノンが自分がいた場所へと腰かける様に促し、打鉄とラファールの間に腰かけるとその膝の上にシノンが座った。
「んふ~、おちつく~」
「シノン、ずるいですよ」
「ず、ずるいでござる」
「だってこうしないと作戦会議しにくいもん」
「それを言われてしまうと.....」
「一理....あるでござるな」
「あ、納得しちゃうんだ」
三人のやり取りを膝に座ったシノンの頭を優しく撫でながら三人のやり取りにほほを緩めたり突っ込んだりと和やかな空気が四人の周りを支配して行く。
「はいは~い、それじゃ楽しい作戦会議をはじめま~す」
そうして祐治とシノンの正面に幾つもの映像が浮かび上がる。
「まず最初にゆうくんの置かれている状況を説明します」
そう言って今まで通って来た道や周囲の地形、その他のルートや様々な書き込みがされた衛星写真を空中投影させ見やすい位置へと移動させる。
「今ゆうくんが置かれている状況を簡単に説明しま~す」
祐治の膝の上に座ったシノンは空虚から取り出した指さし棒を片手に、いつの間にかかけていた眼鏡を空いた手で意味もなく位置を直すと簡単な説明を開始した。
「ここが今ゆうくんがいる位置で、目的地まで約7kmって所。ゆうくんが目を覚まし次第正面にそびえ立つ山を登ってこの先がどうなってるのか確認する」
「しかしシノン、衛星写真でここまで詳しく周囲の地形が解っていながら余計な体力を使ってまで目視に拘る理由は何なんですか?」
「実はね、いままで歩いて来た道と衛星写真の地形が微妙に食い違う所があるんだよ」
「まさか衛星写真に間違いがあるなんて言わないだろうな?」
「ま、それを確かめる為にって訳なんだけど....幾つも気になる点があってね」
「その気になる点、と言うのは?」
シノンが無言で頷くと何も記されていない衛星写真を表示させる。
「まずゆうくんが降下した場所」
シノンが手に持った指さし棒で写真を指すと解りやすいように×印が書き込まれる。
「そしてここ、雷電が頭上を通り過ぎた地点なんだけど。気になるのがその後一度も現れていないって言う点ね」
「確かに。それだけじゃなくて雷電、戦闘機なのかな?あれ一機だけなのもおかしいね」
「レーダーが使えないから何とも言えないけど、少なくともゆうくんの周囲を飛んでたのは雷電一機だけ、しかも一回」
現在ラファールは必要最低限の機能だけで動いており自身から発するレーダー波を感知される可能性があるため周囲を探知する術が使えない状態なのである。
「降下地点とミサイルが爆発した地点は向こうでも解っているはずですよね?」
「当然だろうね」
「今の状態ならレーダーにも映らないはず、それならば救助と言う名目で捜索隊が派遣されてもおかしくないでござるが....」
「でもそれが無い、と言う事は?」
「ん~、たぶん向こうはゆうくんがどこにいるのか解ってるんじゃないかと思うんだ」
シノンの言葉にシノン以外の三人は顔を見合わせる。
そしてシノンは空中投影された写真に何かを黙々と書き込んでいる。
「とりあえずこれを見て」
降下地点と雷電が頭上を通った位置だけが記されていた写真はシノンの書き込みが追加されていた。
「これは最悪の場合、私たちが予想してるよりも特自の実力が高かった場合の話なんだけど。まず雷電が頭上を通過したのはゆうくんにプレッシャーを与える為だと思うんだ」
「いつでも雷電が俺を狙っているぞ、と言った所か」
「そう言う事。それで次なんだけど普通捜索って歩兵でやるでしょ?でもここは拠点から大分離れてるからヘリか何かで輸送する必要があると思うんだけど周囲に飛んで来た痕跡が無い」
「雷電を飛ばして上空から探した方が早いと思うのでござるが」
「生身の人間なら雷電とかヘリとかで空から探せば良いだろうけどISだからね、下手に飛ばしたら返り討ちに合うと思うはずだからそれはしないと思う」
「ならシノンはどう考えてるんだ?」
「うんとね、たぶんだけど付けられてるんじゃないかと思うんだ」
「付けられてる....か」
「そう、空を飛べばミサイルと雷電の餌食になるのは間違いない。残された道は険しい陸路のみだから最初のミサイルでゆうくんがやられた時のためにこの森の中に特自が待機してたんじゃないかと思うんだ」
「それが付けてきてる可能性があると言う事か。それなら今は相手にとって絶好のチャンスじゃないのか?」
「そうなんだけどね、ラファール周りの様子はどう?」
「えーっと....何も動きはありません」
「ゆうくんはどう思う?」
「そうだな、おかれてる立場を考えると、この先が本番なんだろうね」
「そうと決まれば何があってもいいように作戦会議と行こうか」
こうして一人と二つのコアと一つのAIがこの先に待ち構える未知なる出来事に対応するために緻密な作戦を練り、様々な状況を仮定しての演習を行う事となった。
「さぁゆうくん!!」
「えーっと、そろそろ起きる時間ですよ」
「奴らに目に物みせてやるでござる」
「おう!!」
睡眠時間を余すことなく使い立てた作戦と数々の演習を行った祐治は三人に見送られ仮想世界を後にした。
「よし、周囲の状況は?」
「動き無し」
「それじゃ」
「「「作戦開始」」でござる」
現在の時刻は朝の4時、空はまだ暗く祐治のいる山岳地帯は深い闇に包まれている。
そんな中でISを身に纏った一人の少年は目を覚ますと暗闇の中で爛々と輝く内に秘めたる灼熱の闘志を全身にみなぎらせ今まさに世界で唯一の対IS部隊との戦いが始まろうとしているのだった。
「システム戦闘モード!!」
「らじゃ~、全システム起動」
「システム異常ありません。ご主人様行ってらっしゃいませ」
「お主の戦いぶりを奴らに見せてやるでござる」
「目標"桜井研究所"行くぞ!!」
そして闇の中に一筋の光が舞い踊ると静寂を置き去りにし、山肌を滑るように上昇しあっという間に山の頂へと到達した。
「やっぱり....ゆうくん!!正面からミサイル接近」
「よし、VTBS装填。ラファール!!」
「はい、目標補足。ロックオン完了しました」
山の頂へと到達した祐治を待っていたのは眼下に広がる広大な廃墟と迫りくるミサイル。
昨夜の作戦会議の中で衛星写真の真偽についての話題が出ており、もし仮に衛星写真が偽物だとしたらいったい何があるのか?と話し合った所、特自の兵器群を隠蔽しつつ演習を行うためではないか?という結論に至った。
もしそうならば相手の庭の様な場所で生き残るための方法を模索し、新型ショットシェルVTBSを使ったミサイル迎撃訓練など、考えうる最悪の事態を想定し演習を行った結果....
「ではまず一つ!!」
「着弾.........今です」
アギトから撃ち出された新型ショットシェルはまっすぐと目標であるミサイルへと向かい期待通りミサイルの正面で炸裂し見事に撃ち落とす事に成功した。
当たり前の様に撃ち落としているが、いくらISの性能が高いとは言え小さく高速で飛来するミサイルに正確に射撃する事は簡単な事では無い。
だが祐治の持つ射撃能力はISの射撃補正を切っているにも関わらず正確にミサイルへと撃ちこめる程の物だった。
「目標までの距離は?」
「約6km」
「全速力で向かうぞ」
「あいあいさ~」
飛来するミサイルを無力化し祐治は眼下に広がる廃墟と言う名の演習場へ向け全速力で飛び立った。
「ゆうくん、周囲に熱源反応多数。小型のミサイルが来るよ」
「えーっと、補足完了です」
「よーしどんどん落とすよ!!」
廃墟のあちらこちらから飛来するミサイルをVTBSで次々と撃ち落とす祐治は勢いを落とす事無く着実に目的地へと進んでいく。
「ゆうくん!!後方から高エネルギー反応!!」
シノンの警告に反応するよりも早く朧月を使う祐治のすぐ横を極太の青白い光の束と一つの影が光を靡かせながら通り過ぎて行く。
「さぁ大本命の登場ですってね」
祐治の脇をすり抜けた影は雷電。噴進機から溢れるエネルギーを光の尾の様に靡かせながら噴進機のノズルを自在に操り航空機とは思えないほどの急減速急旋回を披露したかと思うと、その場に停止してみせた。
「なんだか戦闘機の概念が根本的に覆されたんだけど」
「正直な所ここまで性能が高いとは思わなかったよ」
「だがやるしかないな。ラファール」
「だめです、強力な妨害電波のせいで補足できません」
「わかった、タイミングはラファールに任せる」
「ゆうくん、雷電以外にも気を付けてね」
「わかった、それじゃ行くぞ!!」
挨拶代わりに浮遊している雷電に対してVTBSを放つが強力な妨害電波を発しているせいで補足ができないためラファールに発射の度に距離と着弾時間を計算し、発射後に時間経過で炸裂する擬似的な時限信管モードを応用して使う事になった。
だが雷電は航空機の概念を覆すような動きでこれを回避した。
噴進機のノズルを下へと向けていた雷電はローリングと機首の上げ下げを組み合わせて真横や円を描く機動で難なく避けて行く。
それだけではなく噴進機の出力が計り知れないほどに強力なのか狙いを定めて撃ったかと思うと消えたかと思うほどの速さで背後をや死角に位置取ると言う常識離れした動きを見せた。
そんな動きにも祐治はあわてる事は無く、既に目視で追う事を諦め全周囲視界と二次元レーダー二種類を使い見失う事無く雷電に食らいついて行く。
祐治が狙いを定めVTBSを撃つと雷電は難なくそれを避け、それどころか一瞬で背後に回り込むと極太のレーザーを放つ。
だが祐治はレーザーが放たれるよりも早く朧月を使いレーザーを避けると同時に距離を詰めるが、雷電は機首を上げ噴進機を吹かす事で後方へと朧月で速度に乗るラファールよりも速い速度で下がる。
航空機の枠を軽く飛び越えた動きに舌を巻きながらも祐治は攻撃を仕掛けようとするがミサイルが飛来するだけでなく、速射砲までもが現れ祐治を狙う。
だが雷電から発せられる妨害電波はただのミサイルには及ばずラファールが補足する事で難なく撃ち落とし、速射砲もレーダーにさえ表示されれば新型ショットシェル、フラグ4で無力化する事位は可能であった。
だがIS以上の機動力と火力を持った雷電を相手しながらの対応は集中力を極限まで高めた祐治でも針の穴程の可能性を探し当て潜りぬける事の連続であり並大抵の事では無かった。
一手間違えればミサイルや雷電のレーザーの餌食になりかねない極限の状態でありながらも集中力を切らす事無く一進一退の攻防を繰り広げる。
瞬時加速の応用だった朧月は速度を増し
二連加速によって朧月の連続使用に磨きがかかり
擬似バックブーストと慣性バックブーストは朧月中の姿勢制御をより柔軟な物とした
こうして磨きがかかり続ける朧月は、そのおぼろげな姿が闇夜に溶け届かないはずの領域へと踏み込んでいく。
両肩に浮かぶ大きな
四方八方から飛来するミサイルを撃ち落とし、厄介な速射砲を黙らせながら雷電へと果敢に挑む。
撃ち出される高威力のレーザー
破壊力の高いニュークリアミサイル
誘導性能の高いホーミングミサイル
不規則な動きで迫ってくるレーダーミサイル
様々な特性を持った雷電の攻撃を捌きながらも僅かな隙を見逃さぬように集中力を極限まで高める祐治はラファール・リヴァイヴの性能を余すことなく使い切り自身の限界へと挑戦し続けているが、それでも雷電には届かない。
だが諦める事を知らない祐治にはすでにそれを射程圏内へと納めていた。
「ゆうくん、雷電と周囲から大量の熱源反応」
シノンの言葉通り雷電と周囲から大量のミサイルが接近している事がレーダーに映し出されていた。
VTBSではとても撃ち落とせない量。それに元々ミサイルの爆風で減っていたシールドエネルギーは高機動戦闘とアギトによって既に底を尽きかけていた。
絶体絶命の状態の中ラファールをロックした大量のミサイルを目の前にしながらも一片の陰りすら見せない祐治の瞳が一段と輝いたように見えた。
「瞬時加速と同時にラファール強制解除!!」
「あいさ!!」
祐治の言葉通り瞬時加速を発動させたラファールは祐治を残し遥か前方へとミサイルを引き連れ飛びさる。
「ラファール!!」
祐治の叫びと共に一筋の光が稲妻の様に降り注ぐと、そこには大量のミサイルを引き連れていたはずのラファールを身に纏った祐治が不敵な笑みを浮かべていた。
「目標までの距離は?」
「約2km、ぶっ飛ばして!!」
遠隔コールを行った祐治はラファールの残り少ないエネルギーを全て使い切る勢いで朧月を連続使用し、一気に目的地である桜井研究所へと向かった。
「あと少しッ」
「ゆうくん避けて‼」
コアネットワーク内での数々の演習とシノン、ラファール、打鉄との作戦会議で数々の可能性を見いだし、ついに目的地を視界に納めた祐治を雷電が襲う。
「なんだと!?」
今まで何度も行ってきたように朧月を使い避けようとするが、雷電が放ったのはミサイルでも先ほどまでの青白い光の束ではなく、薄紫色の極太の稲妻だった。
朧月を使った祐治、先ほどまでのレーザーならば避ける事が出来ただろうが雷電が放ったのはプラズマレーザー。威力こそレーザーには劣るが最大の特徴は誘導性と攻撃範囲の広さである。
雷電から放たれたプラズマレーザーは祐治を一度追い抜くと一週とぐろを巻きもう一度祐治へと襲い掛かった。
「ゆうくん!!」
プラズマレーザーの直撃を受けラファールの絶対防御が発動し、意識が遠くなる祐治はおぼろげな意識の中ではっきりと聞こえる-声-に意識を繋ぎとめられた。
----名を--べ----
--の名を----
某の名を呼べ!!主!!
「打鉄!!」
雷電の動きはプラネットサイド2のリバースマニューバ的なアレ