IS 散弾の閃き   作:mizurahi

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 雷電から放たれたプラズマレーザーを受け、絶対防御を発動したラファール。
 窮地に陥った祐治に打鉄が救いの手を差し伸べる。

 


30話 戦姫

 

 「....ここは?」

 

 途切れかけた意識の中、はっきりと聞こえた打鉄の声に答えた祐治はラファールと同じようにコアネットワーク内と思われる場所で意識が覚醒した。

 長方形の部屋に畳こそ敷いてある物の壁は木組で三方に外を見渡せる華頭窓と大きめの扉、土戸が設けられているだけの簡単な作りの部屋には祐治一人。 

 

 「打鉄?」

 

 周囲を見渡して姿の見えない打鉄を不思議に思いながらも祐治は外を眺める為に土戸を開く。

 

 「来たか」

 

 土戸の先には永遠と広がる広大な青空と祐治がいた部屋を囲う回廊と手すりが設けられており、そこには艶やかな黒髪を一本結びにし紺鼠色の袴と道着に身を包んだ打鉄が背を向け佇んでいた。

 祐治は回廊に佇む打鉄の横に並ぶと周囲の眺めに息をのんだ。

 

 回廊の眼下に広がるのは城下町、ここは初めて打鉄に合った時に見た打鉄の専有領域内にある山城の天守閣だと周囲の眺めから理解する事が出来た。

 こうやって高い所から眺めるコアネットワーク内の眺めは絶景で、少し離れた所にある小高い丘、ラファールの専有領域と思われる場所や湖、森、険しい渓谷や、この山城よりも遥かに高い山脈が広がっている風景に祐治は心を奪われていた。

 

 「どうだ、この眺めは」

 

 「凄いな、いつまで見ても飽きが来なさそうだ」

 

 打鉄からの投げかけに祐治はただ思った事を素直に伝える。

 

 「お主はこの眺めを唯一守る事が出来るとしたらどうする」

 

 「唯一か....そうだなぁ....」

 

 打鉄からの意味深な投げかけに祐治はもう一度目の前に広がる世界を目をやる。

 こんなにも心奪われる眺めを守れるなら答えは簡単に出せる。だがそれでいて難しい質問だと祐治は思った。

 それと同時に専有領域へと招く意味、そして打鉄と初めて手合わせした後に何気なく呟いた言葉を思い出す。

 

 「この身一つでこの眺めが守れるなら喜んでこの身を捧げよう。自分にできる事なら何でもやるだろう。だが今の俺には口だけで実際にこの世界を守るだけの実力が無い」

 

 「....」

 

 祐治は横に佇む打鉄へと向き直ると彼女もそれにつられて祐治へと向き直る。

 そして祐治は打鉄の目をまっすぐに見つめて続ける。

 

 「だから打鉄、あの時の約束を今使わせてもらう。俺の下で一緒にここを守ってくれないか?」

 

 初めて打鉄と手合わせした時にした約束。-俺が勝ったら一つお願いを聞いてもらえるかな?-

 この約束を覚えていたのか打鉄は目を大きく見開き驚いたような表情を浮かべてまっすぐに祐治を見つめてくる。

 

 どれだけの時間が経っただろうか、それとも刹那の一瞬だろうか、長くそれでいて短く感じた沈黙は打鉄の目から流れる一筋の滴が切り裂いた。

 

 「お主はずるい男だ....」

 

 「そうかな?それで、答えはどうだろうか?」

 

 「決まっているであろう我(あるじ)よ」

 

 目に涙を浮かべながらも心を奪われるような眩しい笑顔を向ける打鉄の言葉に自然とほほが緩む祐治は打鉄の涙を指で拭うと手を差し伸べる。

 

 「あらためて宜しく頼むでござるよ、主!!」

 

 「あぁ、未熟者だけど頼むぞ、打鉄!!」

 

 祐治と打鉄、お互いの手を取り合うと二人は眩い光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆうくん、打鉄の一時移行(ファースト・シフト)が終わったから現実世界に戻る前に簡単に仕様を説明しておくね。

 なんで説明するかって言うとゆうくん専用の一時移行だからね!!

 

 細かい所は追々説明するとして、大きな変更点としては特殊な大型噴進機が四機追加されたとこかな。この噴進機はとっても特殊で普通の使い方はできないから注意してね。

 

 ちゃちゃっと説明するけど、これは瞬時加速(イグニッション・ブースト)専用で噴進機内部に常に一定以上のエネルギーが圧縮され続けていて、瞬時加速を使うと同時にエネルギーが放出される圧縮加速(ダブル・ブースト)が使えるようになるよ!!

 だから単純計算で出力が倍になるよ!!だけど欠点としてエネルギーが圧縮されるまで少し時間が必要だから単一の連続使用はできないよ、ばらばらに使ってね。

 

 それと最高速度こそ速くなったけど同時にエネルギー消費が増えたのと速度を維持するのは苦手だから。特に速度を維持できない所を見抜かれると雷電と戦ううえでとっても不利になるから気を付けてね。

 

それじゃ生まれ変わった打鉄と一緒に目に物見せてやろ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「打鉄!!」

 

 ラファールの絶対防御を発動させ意識を手放しそうになった祐治の周囲を光の粒子が包み込むと一瞬の閃きが包み込むと雷電に向かって稲妻の様な一閃が空を切り裂く。

 

 「おっと通り過ぎたか。なんだこれ恐ろしい」

 

 新たに増えた四機の大型噴進機による特殊な瞬時加速は二倍の出力で四回、単純計算で八回分の瞬時加速は今まで届かなかった雷電への距離をいとも簡単に手の届く範囲へと納めてしまった。

 

 「これなら....行けるッ!!」

 

 打鉄の武装である焔火を量子転送し、雷電へ向けて狙いを定めるとトリガーを引く。

 だが雷電はピッチを上げ噴進機を吹かす事で後方へと飛び距離を離そうとする。だが祐治はそれに食らいつくように圧縮加速を一度使い距離を詰めながら焔火を放つ。

  

 逃げ切れないと判断した雷電は誘導力の高いホーミングミサイルを放つ。祐治はそれを朧月を使って避けようとするがラファールと違い姿勢制御の能力が低い事と、圧縮加速で生み出される出力が高すぎる為に円軌道が描けず直線的な軌道しか描けないながらも何とか避ける。

 これでは朧月の持つ避けながら距離を詰めると言う利点が発揮できない。

 

 「シノン、圧縮加速のタイミングをずらしてくれ」

 

 「あいさ~」

 

 こうして点火タイミングをずらす事によって円軌道は描けないものの瞬時加速で斜め前へ、圧縮加速でさらに斜め前と射線を避けながらの高機動戦闘が可能となった。

 

 こうして繰り出される稲妻の様な高速機動を手に入れた祐治は雷電の放つレーザー、プラズマレーザー、ミサイルを避けつつ距離を保ち、焔火による的確な射撃の連続で徐々に雷電へと攻撃を当てて行く。

 

 「残りエネルギー半分を切ったよ」

 

 常時瞬時加速状態の打鉄のエネルギー消費は激しく、ほんの数分の戦闘で既に半分のエネルギーを消費してしまっている。

 それでも一度距離を離されてしまえば圧縮加速の連続使用をしなければ距離を詰める事が出来ないため無理を承知で使い続けるしかない状態だった。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「当たってはいるはずなんだけど、戦闘爆撃機だか何だか知らないけど装甲が硬すぎじゃないですかね?」

 

 愚痴りながらも焔火を雷電に向かって放つと同時に圧縮加速を使い距離を詰める祐治。

 雷電はそれを避ける為にロールと同時に噴進機を吹かして横方向へと避けながらレーザーとホーミングミサイルを放つ。

 距離を詰めながらも祐治はレーザーとミサイルを圧縮加速を使い避ける。

 

 ラファールの時とは違い攻撃性が増した祐治の動きに雷電の動きは徐々に守りに回る事が増え、立場が逆転し始めた。

 

 それでも雷電は攻撃の手を緩める事は無く、ミサイルの飽和攻撃にプラズマレーザーを祐治へと放って行くが祐治はそれらを避け、焔火による反撃を行い着実にプレッシャーをかけ続ける。

 

 

 

 「そろそろエネルギーがまずいな」

 

 圧縮加速の使用によって加速度的に減少するエネルギーを危惧した祐治は着実に攻撃を与えながらも変化の無い雷電に焦りを感じ始めていた。

 

 「主、落ち着くでござる。奴は確実にダメージを受けているでござるよ」

 

 「そうだったな、ありがと打鉄。やる事は変わらない、プレッシャーをかけ続けて焦った所を叩く」

 

 「そのいきでござるよ」

 

 焦りを感じていた気持は打鉄のお陰で落ち着きを取り戻すと集中力を高め、雷電の隙を窺う事を諦め、攻勢に出る事を決心するのだった。

 

 「行くぞ!!」

 

 圧縮加速による急加速で雷電の目と鼻の先まで迫る。構造上ここまで近づけば攻撃が当たらないのは今までの戦闘で確認済みなので問題無く成功。

 そうして焔火をコックピットへ向け放つ。

 

 「逃がすか!!」

 

 流石の雷電も祐治の行動に今までよりも大げさな軌道を描きながら距離を取りながらとプラズマレーザーとホーミングミサイルを放つ。

 祐治はそれらが誘導性を発揮するよりも早く圧縮加速を二連続で使い脇をすり抜けると勢いそのままに雷電の後ろを取りながら焔火を放つ。

 火花を散らしながら数発の銃弾が雷電へと命中し後ろを取った祐治は追撃をかける為に焔火を放つがホバリングモードを解除した雷電は噴進機を吹かし光の尾を靡かせながら一気に加速して祐治との距離を離そうとする。

 

 「逃がすかッ.....っと、まずい!!」

 

 当たり所が悪かったのか噴進機を吹かして一気に加速して行く雷電の噴進機がひと際長く光の尾を伸ばしたかと思うと一瞬にして途切れ、僅かな間を置いて大爆発と共に吹き飛んだ。

 それに伴い機体は空中で吹き飛ばされ、そのまま制御を失い木の葉の様に舞いながら地面へと向けて落下して行く。

 

 「脱出装置とかは無いのか....いや、あの衝撃だパイロットが気絶したか脱出装置が壊れたと考えるべきか。とにかく助けるぞ打鉄」

 

 「主ならばそう言うと思ったでござるよ、まかせるでござる」

 

 圧縮加速を使い墜落しそうになっている雷電へと下から近づくとそのまま雷電を蹴飛ばし、動きを一瞬止めると同時に機体を掴みコックピットを覗き込む。

 

 「大丈夫か!!」

 

 だが祐治の問いかけに雷電のパイロットからの反応は無し。

 

 「シノン、なんとか雷電の姿勢制御をできないか?」

 

 「ん~....あれ?セキュリティが何もない?」

 

 「ならできるな?」

 

 「う、うん。それくらいなら....ってゆうくんどうするつもり?」

 

 「今から雷電を押す。エネルギーがほとんど残って無いから近くに軟着陸させてくれ」

 

 「あいさ~」

 

 こうして祐治は雷電の後部に取りつくと打鉄の噴進機を使い雷電の推進力となる事によって機体の制御を取り戻した雷電は墜落する事無く荒れた道路に着陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふぅ、一時はどうなる事かと思ったけど三人のお陰で何とか乗り越えられたかな」

 

 雷電と共に地面へと降り立った祐治はエネルギーの切れた打鉄を除装すると大きく深呼吸をし、支えてくれる三人へ感謝の気持ちを伝えると疲れ切った身体を休める為にその場に横になるのだった。

 

 

 

 





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