IS 散弾の閃き   作:mizurahi

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8話 手間の掛かる妹

「それでは戦場太郎、君の武器を開発するメンバーを紹介しよう」

 

ここはデュノア社にある研究所の一室。

 

ここには現在祐治とシャルロットの他に三人の人間が居る。

 

「まず私ね。昨日少し話したと思うけど自己紹介はまだだったよね。私の名前はアニー・ブラッスール。この企画の主任です。」

 

そういってメガネを指で押し上げ出来る女を演じているのはアニー。

 

首にかからないように耳の高さ辺りで外にはねている髪を下ろせば肩にかかる位の長さの金色の髪が特徴的なメガネをかけた美人な女性。

 

「次は俺だな。俺は三田 良蔵(みた りょうぞう)知ってるかも知れねぇが三田銃砲店の何代目かはわからねぇが社長だ、よろしくな」

 

ソフトモヒカンの髪型に筋肉質な肉体を持ち自分が何代目か分からないという大雑把な性格かと思いきや、火縄銃の時代から銃を作り続けているという世界と比べても老舗中の老舗である三田銃砲店の長年の技術の結晶と良蔵自身の才能から、散弾銃を作らせたら右に出るものは居ないと言われる程の実力の持ち主。

アニーとはかなり仲が良いらしい。

 

「最後は僕だね、セザール・ジョンシエール。細々とした研究を担当してる」

 

ぼさぼさの髪に牛乳瓶の底のような厚さのレンズをつけたメガネをかけたやせ細った色白の、まさに研究者といった佇まいだが、とてもマッドな研究員らしく実力は確かなのだが周りから相手にされていないらしい。

 

「それとシャルロットちゃんの4人が戦場太郎の武器開発のメンバーです!!」

 

「お前一人だけ周りの温度と差がありすぎでドン引きされてたんだよな。それで結局誰もお前についていけなくてシャルロットを除く3人しか集まらなかったんだよな」

 

「うるさい!!あんな足手まといなんていらないから、この三人が居れば不可能なんて無い!!」

 

アニーの発言に茶々を入れる良蔵に突っ込みを入れるアニー、昨日のオフラインイベントでも同じ光景を見たなと思い出し、この二人は仲がいいんだなと思う祐治であった。

 

「まぁでも実際彼程の人間には中途半端な研究員より我々のようなマッドは人のほうが合ってる」

 

「いや、お前....お前と一緒にされちゃかなわねぇよ....」

 

「そうね...私と良蔵、そして頭九つくらい飛び出てあなたよね...」

 

先程まで元気だった二人がこのセザールの発言にここまで大人しくなるとは、余程凄い人なんだなと、祐治は思った。

 

「大体あなたが一番最初に出してきたあの案は結局なんだったの?なんだっけ、撃ちだされた二つの糸か何かで繋がった弾丸?当たった物を切り刻むとか言うおっそろしいあれ、ドン引きです」

 

嫌な物を思い出したといわんばかりにげんなりした表情を浮かべるアニーと裏腹に心底楽しそうな表情を浮かべるセザール。

 

「それってもしかしてボーロー弾ですか?」

 

ボーロー弾

2つのスラッグ弾をワイヤーで繋いだ実包。

重量の異なる2つのスラッグが発射後左右に展開し、その間に張られたワイヤーに対象が引っ掛かると、スラッグのエネルギーによってワイヤーが高速で巻き付き、対象を切断する設計だった。

しかし想定された効果が、安定して発揮されないこと、また人体に対して効果が発揮された場合のあまりに凄惨なダメージを懸念して、開発は中止された。

 

「おぉ、知っているのか」

 

「はい、一度だけ映画の中で見た事があります。ですが効果が安定して発揮されないのと非人道的だという事で研究は中止されていたはずでは....」

 

「ふっふっふ、IS用に効果があると僕は結論付けたのさ。まだ研究中だけどいずれ日の目を見れるようにしてあげるからね」

 

「楽しみです!!期待してます」

 

そういって二人は力強く握手を交わした。

 

「折れる折れる、君力強すぎ」

 

「ごめんなさい、大丈夫ですか?っと俺も自己紹介しておいたほうがいいですね。遅れましたけど皆さん初めましてよろしくお願いします。戦場太郎もとい桐島 祐治です。なんでも詳しい情報は篠ノ之博士から伝わっているそうなのでそちらの方が俺よりも詳しく知っているかもしれません」

 

「僕も自己紹介したほうがいいかな?シャルロット・デュノアです。えっと....デュノア社でテストパイロットをしてます。そしてお兄ちゃんの妹です」

 

そんなシャルロットの自己紹介を聞いた皆はシャルロットの置かれていた立場をよく理解しているのか、一様に安心したような表情を浮かべた。

 

「よっし、それじゃ自己紹介も終わったし、模擬戦行ってみようか、シャルロットちゃん相手よろしくね?」

 

「はい!!お兄ちゃん負けないよ?」

 

「そんな事言って負かされて泣いても知らないぞ?」

 

「お兄ちゃんのいじわる」

 

そんな兄妹の中睦まじいやり取りをしながら、自己紹介の終わった四人は模擬戦を行う為にデュノア社内にあるアリーナへ向かった。

 

 

 

 

 

「実はまだ戦場太郎の武器は出来てないのよね。この模擬戦の記録を取って最終調整して明日には出来上がる予定だけど。だから今日いっぱいは我慢してね、ISについて問題があったらセザールに相談して」

 

「分かりました」

 

「そこに置いてあるリヴァイヴを使って、それはしばらく戦場太郎の専用気になるから好きなだけ使っていいわよ」

 

アニーの指差した一台のIS、ラファール・リヴァイヴに近づくとそっと手を触れる。

 

(リヴァイヴ、これからしばらく仲良くやろうな)

 

心の中でそう呟くと祐治は光に包まれ展開されたリヴァイヴを装備した。

 

「さて戦場太郎、武器はどうする?色々武器があるけど、まぁリストアップしておいたからその中から選んでくれ」

 

リヴァイヴを装備した祐治の近くに居たセザールから受け取ったリストには様々な装備品が記載されていた。

いくつか気になった装備品があったが、記録を取る事が目的なので使い慣れた物を選ぶ事にした。

 

「そうですね.....アサルトライフル<ヴェント>とハンドガン<コルティア>にしましょうか」

 

ヴェント

五十五口径アサルトライフル

 

コルティア

七十口径ハンドガン

 

「ふむ、ショットガンもあるけど使わないのかい?」

 

「え?あんなダサい武器、使わないと駄目ですか?」

 

「ダサい?くくく...あっはっは。そうだよね、男の子が使うならかっこよくないとね。当然だよ、ここに居る三人、シャルロット君は除くけど<レイン・オブ・サタディ>嫌ってるんだよね。それにあれ二丁持たないと満足な火力でないし」

 

「ショットガンの二丁持ちはちょっと....」

 

「流石戦場太郎、よくわかってる。君のために素晴らしいショットガンを作ってあるから期待して。よしセッティング完了、いつでも行けるよ」

 

「期待しています、行きます!!」

 

カタパルトに乗ってアリーナに飛び出すと、すでにそこにはISを身にまとったシャルロットが待っていた。

 

「お、それはもしかして専用機か?」

 

「そう、この子は<ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ>よろしくね」

 

シャルロットの身に纏っている専用機、リヴァイヴを元に改良された期待のようで、装甲が一部取り外されスラスターが増やされており、腰のスカート部分に武器がマウントされていたりと、祐治の乗っている現行のリヴァイヴと比べて大幅な変化が見られる。

 

「戦場太郎、申し訳ないんだけど武器開発って名目でISをすら用意されてなかったのを無理やり奪ってきた形になっちゃって最適化もできないだ。すまないがそのままで戦ってくれ」

 

そういって通信を繋いできたのはアニー。

とても申し訳無さそうに語る姿に祐治は攻める気など一切起きず、それよりも自分はデュノア社にあまり歓迎されていないんだなと考えを改める事にした。

 

「むしろISまで用意してくださった事に感謝したいくらいです」

 

「そう言ってくれると気が楽になるわ。でも皆戦場太郎のISでの動きには興味津々みたいだから。それじゃ早速始めてもらおうか!!!」

 

別に嫌われているわけではなかったかと安心した祐治はシャルロットとの模擬戦に集中する事にした。

 

「よし、行くぞシャルロット」

 

「いくよお兄ちゃん!!」

 

二人同時の掛け声と共に同じく展開された<ヴェント>による射撃で模擬戦は始まった。

 

「やるじゃない」

 

「流石戦場太郎といったところか」

 

模擬戦開始と共に二人の<ヴェント>から放たれた銃弾は反射神経の差で祐治の方が僅かに早く撃ち始め、シャルロットは一発だけ被弾する、そしてまったく同じ回避行動を取り、そのまま円状制御飛翔(サークルロンド)へと移行してゆく。

 

円状制御飛翔 サークルロンド

 

複数の機体が互いに円軌道を描きながら射撃を行い、それを不定期な加速をすることで回避する。徐々に速度を上げながら、回避と命中の両方に意識を向けることで、射撃と高度なマニュアル機体制御の訓練になる。

 

祐治としては<サークルロンド>といったものは知らず、回避行動からの動きで偶然そうなっただけである。

 

(予想以上に強いな...)

 

(そうだね、彼女IS適正Aだし、フィッティングと一次移行もしてるからISの追従性は向こうの方が遥かに上。それにマニュアル制御だろうから動きの柔軟性も違う)

 

(俺の使っているラファールはオート制御って事か)

 

(そうゆうこと)

 

もともと<サークルロンド>はマニュアル制御が前提であるため、オート制御の祐治とマニュアル制御のシャルロットではISの動きの柔軟性に差があるため速度が上がるにつれて祐治の動きがぎこちなくなってくる。

 

それでも持ち前の射撃の正確さでシャルロットの動きを封じ込めながら祐治は戦ってゆく。

 

「弾切れか「もらった!!」

 

祐治の射撃に手を焼いていたシャルロットは祐治のリロードのタイミングに合わせ<イグニッション・ブースト>を使って一気に距離を詰めて来た。

 

「甘い!!」

 

祐治も<イグニッション・ブースト>を使った事があり、真っ直ぐにしか飛べないという欠点を知っているため被弾を覚悟でシャルロットに同じように真っ直ぐ突っ込むとシャルロットが撃ち始めるだろうギリギリまで引き付けシャルロットを中心に半円を描くような動きで後ろを取る。

 

「かすったか、それでも後ろは取ったぞ!!」

 

シャルロットは<ラピッド・スイッチ>で<ヴェント>から<レイン・オブ・サンディ>に持ち替えていたため撃ちだされたベレットにかすりはしたものの後ろを取りリロードを終えた<ヴェント>を撃ち込んだ。

 

「ッ!!おかしいな、いつもより動けない」

 

それでもシャルロットは振り向かずに回避行動を取ると最低限の被弾でそれを凌いだ。

 

「戦場太郎、予想以上だな」

 

「シャルロットちゃんをあそこまで追い込むなんて」

 

一旦距離を置き二人は向かい合う。

 

「お兄ちゃん、思ってたよりやるね」

 

「当然でしょ」

 

祐治はそういいながらシャルロットへ向けて<ヴェント>撃ち込む。

 

「危な「そこぉ!!」

 

不意打ち気味に放った銃弾をシャルロットはなんとか回避するがそれに合わせて祐治は<イグニッション・ブースト>で距離を詰める。

 

「同じ手でッ!!」

 

シャルロットは先程祐治が見せた回避行動を取るため真っ直ぐ距離を詰め、半円を描くように祐治の後ろを取った。

 

「もらい...!?」

 

だがそれを予想していた祐治は振り向く事無く<ハイパーセンサー>の<全周囲視点>を

応用して<コルティア>をシャルロットに向ける。

 

(狙われてる?避けなきゃ....それともはったり?攻撃するべきか....)

 

「あれ....」

 

シャルロットが攻撃するか回避するか思考を張り巡らせていると不意に糸が切れたかのように全身の力が抜け、思考が止まってしまった。

 

「やっぱりな」

 

祐治はそういって呟くと、ふらつくシャルロットへ近づいていった。

 

「過労だ、まったく世話のかかる妹だ」

 

「あ、あれお兄ちゃん僕.....」

 

「いいからISを解除して」

 

そういって地上まで誘導するとお互いにISを解除しする。

 

「お兄ちゃんごめん、っと、あれおかしいな力が入らないや」

 

シャルロットはISを解除すると力なくその場に座り込んでしまった。

 

「ほら乗って」

 

「で、でも少し休めば大丈夫だから」

 

強がるシャルロットを見かねた祐治はシャルロットをお姫様抱っこする。

 

「ちょ、ちょっと恥ずかしいよぉ....」

 

口では嫌がっても体に力の入らないシャルロットはなすがままにされるしかなかった。

 

「あらま、どうしちゃったのかね?」

 

「さぁ?」

 

「シャルロットの体温、血圧が上がってる、疲れが抜けきらないうちにISに乗ったせいで体が限界を超えたのかもしれない」

 

「あら、それは大変、でも彼がいるし何とかするでしょう。今ので十分すぎるデータも取れたし私は最終調整に行きますか。今のでデータは取れたからシャルロットちゃんをよろしくね」

 

スピーカ越しの会話を聞いていた祐治はそのまま一礼するとシャルロットを抱えたままアリーナを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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