「さぁシャルロット、ゆっくりと休むんだぞ」
祐治はそういって腕の中で寝息を立てているシャルロットを優しくベットに横たわらせ、掛け布団をかける。
アリーナから出て少しの間は恥ずかしくて嫌がっていたが本人の予想以上に疲れていたのか、ものの数分で寝息を立て始めてしまった。
「お昼ご飯は何か作りにくるから」
聞こえていないと思いつつも、そう一言残すと、再びアリーナに向かった。
「祐治様」
「あ、じぃや丁度いいところに」
アリーナに向かって歩いていると、どこからとも無く現れたじぃやに声をかけられた。
「シャルロット様のご容態はいかがですか?」
「過労、だと思います。ですが素人の私が判断したものなので信憑性に欠けます、なのでじぃやに医者の手配をお願いしたかったんですよ」
「なるほど、その点はわたくしにお任せください」
「よろしくお願いします」
祐治とじぃやは短いやり取りを終え、お互い向かう場所へと別れた。
「ただいま戻りました」
「ん、お帰り。シャルロットは大丈夫だったかな?」
「えぇ、じぃやに任せてきたので安心できます」
「そうか」
アリーナに併設されている研究所に戻ると出て行ったときと変わらずセザールがPCに向かって何かを打ち込んでいる最中だった。
「とりあえずどうする?シャルロットとの演習でデータを取る予定だったけど肝心のシャルロットが体調不良だし」
「私一人で出来る事って何かありませんか?」
祐治がそういうとセザールはそうだなーと考えはじめた。
「とりあえずIS用の射撃訓練プログラムをやってみようか」
そういってセザールが研究所内に設置されている端末を操作するとアリーナに幾つもの標的が出現した。
「とりあえずアリーナの中心に行ってこのターゲットをひたすら撃って、そうすれば機械が勝手に難易度を上げたり下げたりしてくれるから。最初は正面にしかターゲットは現れないけど難易度が上がれば360度どこにでも現れるようになるから」
「わかりました」
セザールの説明を一通り聞いた祐治は研究所を後にし、アリーナへと向かった。
「それじゃ、またよろしくラファール」
アリーナについた祐治はシャルロットの体調不良で中止した演習のときに置き去りにした<ラファール・リヴァイヴ>に一声かけ、身に纏った。
「それじゃ、始めます!!」
研究所から眺めているセザールが片手を上げるのを確認し、<コルティア>を一丁右手に展開し両手で構え次々と標的を打ち抜いてゆく。
(....5.....6...リロード...)
装弾数七発を撃ち終わる前に弾倉を外すと同時に左手に新しい弾倉を展開し装填する、撃ち終わって空になった弾倉は重力に引かれて僅かに落ちながら拡張領域へ量子転送される。
これによって再装填時にスライドを引く、という動作が省かれ、狙いを定めたまま再装填を終えることが出来る。
通称タクティカルリロード
この動作を何度か繰り返していると標的に変化が見られ始めた。
先程までは撃ち抜かれた分だけ新たに標的が展開されていたが一定時間撃ち抜かれなかった標的は自然に消え、新たに別の場所に標的が展開させるようになった。
それでも正面、視界に納まる範囲の出来事なので先程と変わらず、と言うより慣れてきたせいで射撃効率は上がる一方であった。
(ん~、ゲーム内でドンパチやるのも楽しいけどリアルでやるのもなかなか楽しいな)
順調に射撃効率を上げている祐治はそんな事を心の中で呟きながら次々と標的を打ち抜いてゆく。
そうしていると、また標的の動きに変化が現れた。
(お次は上下左右の繰り返し移動か)
動きが変わったと言っても上下か左右の繰り返し運動。
距離が離れていれば偏差撃ちが必要になるがアリーナの中なので必要が無く、これも祐治にとってはたいした変化ではなかった。
「流石は戦場太郎って所かしら?」
「ん?もう君のやる事はなくなったのかい、アニー」
「えぇ、後は良蔵にお任せ。私は.....何をしようか」
研究所内では役目が終わったのかアニーが戻ってきており、セザールと一緒に祐治の動きをモニタリングしている。
「ねぇ、戦場太郎のこのデータを使って射撃補佐プログラムを組めないかな」
「確かに戦場太郎の射撃効率は目を見張るものがあるけど、まだ物足りないかな」
「そうか....」
研究所内でそんな会話をしているなんて思っても見ない祐治は着実に射撃効率を上げ、もう一段階難易度が上がろうとしていた。
「お、これから本番かな」
祐治がそう呟いたように、標的の数が減ったと思ったら360度すべての方向に展開され難易度が格段に上がった。
それでもレーダーMAPと全周囲視界を上手く使い射撃効率の低下を最小限に抑えてゆく。
(しかしこの三次元レーダー見にくいなぁ....シノン)
(はいはい、何かな?)
(このレーダー見にくいからもっと見やすいレーダーがほしいんだけど、そういうことって出来る?)
(それぐらいなら簡単だよ、どんなのがほしいの?)
(上から見下ろした形のレーダーと大体の地形が表示できる物と。それだけじゃ自分から見てどの高さに目標があるのか分からないから、自分を中心として左右のどの高さに目標があるかっている物がほしい。たとえば正面右上なら右上、後方右上でも右上、前か後ろは目視かもう一つのレーダーMAPで見るから)
(その程度なら簡単、ちょいちょいっと、ほい出来た)
そうして新しく視界に表示されたレーダー二つを右下と左下に振り分ける。
(うん、完璧だ。とりあえず標的は白で表示しておいて)
(はいはーい)
こうする事によってわざわざ広いアリーナを見渡すことなく大体の位置をつかむ事によって補足から射撃までの時間を大幅に短縮する事ができる。
「ん~一瞬射撃効率が下がったかと思ったけどあっという間に元通り....どうなってるのかしら....」
「アニー、これを見て」
「ん、何々?戦場太郎の視覚情報....こんなレーダーあったかしら?」
「これ、二次元レーダーが二つ。元々の三次元レーダーは僕も見にくいだけで何の役にも立たないと思ってたけど、この二つのレーダーなら一瞬で目標がどこにいるか分かる優れものだね」
「この僅かな時間で必要なものが思い浮かぶなんて中々やるわね。でもこのレーダーって誰が用意したのかしら?」
「まぁ細かい事は気にしないで、射撃効率がまだ上がってるからこっちに集中しようか」
その後も祐治は非常に高い数値で射撃効率を維持し、順調に難易度を上げて行く、その難易度はすでに<モンド・グロッソ>射撃部門の訓練項目の域にまで達し始めていた。
「楽しくなってきた!!」
ついに祐治は最大難易度へと到達した。
360度全ての方向に標的が現れるのはもちろん、上下左右の繰り返し運動と言う単調な動きも無くなり、すべの目標が不規則に動き回るようになる。
だが不規則と言っても一秒間隔で進行方向が変わるので撃ちぬく隙は十分にある。
「おーすっごいわね。ハンドガン一丁でよくやる」
「いや、たぶん彼の本気はあれなんだろうね」
「ハンドガンで本気?変わってるわね」
「AIMの問題だよ。たとえばアニー、君はAR使いだよね?ARのAIMって言うのは目標に合わせ続けるでしょ?でも彼は違う、どちらかと言えばSRのAIMに似てるんだ。一瞬一瞬、間隔をあけてるんだ。その分一発一発に集中してるから目標に照準を合わせるまでがずば抜けて早い。SRを使わせたらめちゃくちゃ強そうなんだけどなぁ」
「そう聞くとそうね。でも戦場太郎がSRって聞いた事ないわね....でも戦場太郎と言えば偏差撃ちよね。そっちのプログラムって作れないの?」
「そうだね、偏差撃ちのデータはほしいかも、射撃武器に関してはこのデータを使えばさらに精度が上がりそうだ」
「そうと決まれば....おーい戦場太郎、グレネードとロケットランチャーも使ってくれないかしら?」
それから祐治はグレーネードやロケットランチャーと言った弾速の遅い武器のデータ取りを開始した。
「いやー楽しいですね、これ」
「そう?こっちはおいしいデータが沢山取れて嬉しいんだけど」
「データ?ですか」
「そうよ、今のデータを使えばIS用の新しい射撃補正プログラムと偏差撃ちのプログラムが作れるわ、しかも相当精度が高い。これが完成すればシャルロットちゃんのラファールリヴァイヴカスタムの性能が底上げされるわ」
「しかも今ので歴代のスコアを塗り替えて堂々の一位ときた」
「それは凄いと言いますか、元が低すぎですよ。私はAIMごり押しと言うより立ち回り重視ですからね。多分ですけど私の知り合いにIS適正があればこんな記録一日持たないでしょうね」
祐治のやっている大規模オンラインFPS<プラネット・フィールド>それ以外にもFPSをやっている人達と比べてISを使っている人達は射撃に関して言えば反射神経もAIM力も劣っていると祐治は判断している。
「確かにそうかもね知れないわね、FPSの人口も9割は男だし。男にIS適性が無くてほんとに良かったと思うわ。冷静に考えてあんな基地外スーパー歩兵達がISなんて手に入れた日には今の女尊男卑なんて一瞬でひっくり返るわ....」
「確かに今の女の子向けの軍隊でおままごとに興じているIS乗りより毎日何時間も仮想で統率の取れた動きで殺しあってる奴らのほうが余程訓練されてるだろうし」
そういって二人は大きくため息を吐いた....
「さてと、シャルロットの様子はっと」
あの後やる事のなくなった祐治は再び射撃訓練プログラムを開始し、今の今まで標的を撃ち抜き続けていた。
「祐治様」
呼ばれて声のする方へと振り向くとこちらに向かってじぃやが歩いてきているところだった。
「祐治様、シャルロット様の元へ向かいますよね?」
「えぇ、様子見、というかお腹が空いたと言うか....」
「ではお昼はわたくしが....と言いたいところですが実は料理は苦手と言いますか、やった事が殆ど無いのです」
「私もしないんですよね....しかし世話になっているシャルロットに作らせるわけにはいかない。大丈夫です、今はインターネットに料理のイロハなんていくらでもありますから」
そういって二人はシャルロットの待つ家へと向かった。
結論から言うと料理自体はシノンに映像を流してもらったり文章を読み上げてもらったりで形にはなった。
しかし台所に立つ筋骨隆々の15歳の男と、燕尾服を着た細身で白髪の初老の男が二人が並んで不慣れな料理を手探りで行う姿は異様で物音に気がついてこっそり降りてきたシャルロットが映像と写真に残すほどであった。
「わたくしは所用を思い出しましたので、この辺でお暇させていただきます。シャルロット様の容態は過労でしたので今日一日休めばよくなります」
「そうですか、ありがとうございます」
そして祐治はじぃやと作ったおかゆを持ってシャルロットの元へと向かった。
「シャルロット、入るぞ」
「あ、うんどうぞ」
「起きてたのか、調子はどうだ?」
まだ眠っているだろうと思っていた祐治はシャルロットの部屋に入った。
「うん、下の物音と匂いでね」
「そうか」
祐治はおかゆを持ったままシャルロットの寝ているベットの脇に置いてある椅子に座ると蓮華におかゆを掬いシャルロットに差し出した。
「さぁ、口をあけて、あーん」
「え?えぇー!?だ、大丈夫だよ一人で食べれるから....」
「駄目、今日一日ゆっくりしていなさい、あーん」
「うぅ....あ、あーん....おいしいよ」
「そう?食べられるだけ食べてよ」
テレながらも食べてくれるシャルロットは結局全て食べきってしまい、体調がよくなりつつあるなと安心する祐治であった。
「さ、ご飯を食べたらもう少し寝なさい。今日一日しっかり休めばよくなるとじぃやがいってたから」
「うん、分かった今日一日大人しくするよ」
その言葉を聞くと祐治はおかゆの入っていた土鍋を洗うために部屋を後にした。
「そういえば俺は何を食べたらいいんだろ」
そんなことを思いながら土鍋やおかゆを作るために使った道具を片付けていると、アニー達から食事の誘いが来たので二つ返事で了承すると祐治はデユノア社内にある食堂へと向かう事にした。
遅れました。
別にスカイリムのアダルトMODで遊んでいたとか。
初回予約で買ったバルドスカイゼロ2をいまさらやっていたとか
そんなことは~なかった~すこし~まえまでは~
うすよごれた~きっさてんの ばね~のこわれたいす~で....