ソーナンスが繋いだ絆! ムサシとチリ!   作:haldon

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pixivの方でも投稿してるものです。


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 ここパルデアの地に、頑張るロケット団が二人……いや、二人と一匹。

 

「しっかり見張るのニャ! ターゲットがいつ現れるか分からニャいからニャ!」

 

「おう、わかってるって!」

 

「ふぁ〜あ……」

 

 失敬、頑張っているのは一人と一匹でした。残る一人は退屈そうにおおあくび。

 

「ムサシ! たるんでるニャ!」

 

「だってー」

 

 ムサシは口を尖らせて、コジロウをじろりとにらみつけます。

 

「もう何日こうしてると思ってんのよ。なんか、この街に強いトレーナーが来るから? ジャリボーイも必ず来るはず? こーんな曖昧な情報に踊らされちゃってさぁ」

 

「それは、その……」

 

「ホントに来るとしても、それっていつ? だいたい強いトレーナーって誰? なーんにも分かってないじゃないのよ」

 

 相棒に次々と責められて、たじたじとコジロウは小さくなりました。そもそもの情報を持ち込んだのが彼だったのですが、ムサシの言う通り、ものすごーく曖昧ことしか分かっていません。だから、それに返す言葉がないのでしょう。

 

「ロトム、おみゃーは何か知らないのかニャ?」

 

『えー、ロトムはポケモンの図鑑だよ? 人間のことわかるわけ無いじゃん』

 

「道具のくせに相変わらず生意気ニャ」

 

『アンタはポケモンのくせに生意気ね』

 

「にゃにおぅ!」

 

 ニャースとスマホロトムのやりとりをしばらく見ていたムサシは、ため息をつくと立ち上がりました。

 

「お、おい、ムサシ?」

 

「あたし、ちょっと気分転換してくる。あとは任せたわよ」

 

 引き留めようとするコジロウと、喧嘩をするニャースとロトムを後にして、ムサシはアジトを出ていってしまったのでした。

 

 

 

 街に繰り出したムサシは、大きく伸びをしました。ずっとアジトにカンヅメだったので、身体がマユルドみたいに硬くなっていたのです。進化したてのドクケイルのような気持ちになって、彼女はるんるんとスキップしました。

 

「ソッソソッソ、ソーナンス!」

 

 ぽん、とボールから勝手にソーナンスが出てきて、ムサシと同じようにスキップしました。

 

「あーもう、勝手に出てくんじゃないわよ!」

 

 慌ててムサシはソーナンスのボールを取り出し、彼を収めようとします。ソーナンスはいやいやとそれを避けました。「戻りなさい!」「ソーナンスッ!」とにぎやかな追いかけっこが始まって、通行人たちが目を丸くします……が、ムサシはそれに気づかない様子。

 

「わぁー、ソーナンスやん! なっつかしいわぁ!」

 

 通行人の間から聞こえてきた一際通る声に、自分たちが注目の的になっていることにようやく気がつくまで、その追いかけっこは続いたのでした。

 

「何よ、見世物じゃないわよ!」

 

 気がついてもムサシはムサシです。悪びれもせず、照れもせず、堂々と通行人をにらみつけると、腕を組んでそう言い放ちました。通行人たちのほとんどは、そそくさとその場を離れていきました―――一人を除いて。

 その一人は、にこやかな笑顔を浮かべてパチパチと拍手をしています。細身の、ムサシ好みのイケメンです。

 

「元気のええお嬢さんやなぁ。な、そのソーナンス撫でてもええ?」

 

「え、ええどうぞ」

 

 思わずムサシは頷いていました。

 その人はソーナンスの前にかがむと、楽しそうにソーナンスをいじり始めました。撫でる、の範疇じゃない気もしましたが、ソーナンスも嫌そうじゃないので、まあいいのでしょう。ムサシはそのイケメンを観察します。

 筋肉質ではなく、スラリとスレンダーな体型。髪は長くて、後ろで一つにくくっています。顔は中性的で……とじーっと見ていると、その人も気づいたのかムサシを見上げて、ニコッと笑顔を見せてくれました。ドキッ、とムサシの胸が鳴りました。

 

「堪忍な。うち、ジョウトの出身やさかい、久々にジョウトのポケモン見て、嬉しくなってしもてん」

 

「ソーナンス?」

 

「うん、ソーナンや」

 

 彼はソーナンスの頭をひと撫でして立ち上がりました。並ぶと、ムサシより少し背が高い……コジロウと同じくらいでしょうか。

 

「うち、チリいいます。チリちゃん呼んだってな」

 

「む、ムサシ、です」

 

 ムサシは声が上擦るのを自覚しました。乙女心がドキドキと脈打っているのを感じました。

 

「ムサシちゃん、よろしゅう。……自分、ええトレーナーやな」

 

「え?」

 

 チリちゃ……いえ、チリはソーナンスを指さしました。ソーナンスは心配そうにムサシを見ています。なんのことやら、とムサシが戸惑っていると、ソーナンスはひょいと手を伸ばして、ムサシのおでこに触りました。どうやら熱を計っているようです。

 

「ソー?」

 

 不思議そうに首を傾げるソーナンス。別に風邪を引いているわけじゃないのだから、熱などあるはずないのですが―――考えて、ムサシははっとしました。きっと自分の顔が赤くなっていたに違いないと。

 

「ポケモンに心配してもらえるとか、トレーナー冥利に尽きるやん、ええなぁ。しかし、大丈夫なん? 体調でも悪いん?」

 

「い、いえ、なんでもないでぇす!」

 

 慌ててごまかして、ソーナンスをしまいます。しまわれ際、ソーナンスは名残惜しそうにチリに手を振っていました。

 

「大丈夫ならええんやけど。無理はあかんで?」

 

「大丈夫、大丈夫ですっ! 何でもないので気にしないでください!」

 

 ムサシがほほほほほと笑ってみせると、ようやく彼も難しい顔を引っ込めて笑ってくれました。その笑顔に、またムサシの胸がドキンと跳ねました。もはやコイキングです。

 

「さて、ポケモン撫でさせてもろたし、なんやお礼せなあかんよな。どないしよ」

 

「あ、じゃあじゃあ、一緒にお茶でもどうですかぁ!?」

 

 チャンス到来。ムサシは胸の中のコイキングを抑え込むと、勢い勇んで身を乗り出しました。チリは一瞬気圧されたように仰け反りましたが、すぐに気を取り直してこう答えます。

 

「ええよ、喜んで」

 

 

 

――――――

 

 

「じゃあ、あたしは出かけてくるから。しっかりやっときなさいよ」

 

「ええー、またかよ」

 

 ここ数日、ムサシは出かけてばかりで、アジトにはほとんど居ることがありません。しかも、いつも気合の入ったおめかしをして、コジロウとニャースには仕事を押し付けて―――これでは、コジロウでなくとも愚痴を言いたくなるってものです。

 

「いつもどこに行ってるんだ?」

 

「どこだっていいじゃない」

 

 うきうきしているムサシには、コジロウの言葉は届いていない様子。そのまま出ていってしまいました。

 

「なんだよ、あいつ。変なの」

 

「いっつも変だけどニャー」

 

「それはそうなんだけど……じゃなくって」

 

 コジロウはムサシが出ていった扉を見つめます。そして、意を決したように立ち上がりました。

 

「オレ、ちょっと確かめてくる!」

 

「ニャニャ!? 作戦はどーするのニャ?」

 

「悪い、ニャース。あとは任せた!」

 

「おにゃ、ちょっと待つニャー!!!」

 

 ニャースの叫びなんてなんのその。コジロウは脇目も振らず、ムサシが出ていったその扉を潜っていったのでした。

 

 

 

 

「あ、チリちゃんさーん! 奇遇ですねっ」

 

「おお、ムサシちゃんやーん! よく会うなぁ」

 

「えへへっ、気が合いますね〜」

 

 街に出たムサシは偶然チリを見つけて、挨拶をしました。チリも親しげに返事をくれます。ここ3日ほど、これが続いていますが―――偶然、のはずです。少なくともムサシはそう主張しています。ここ、深く追求してはいけないところです、たぶん。

 

「チリちゃんさん、今日もポケモンの調査ですか? よかったらご一緒しても……」

 

「ええけど、自分の用事はええのん? そら、ムサシちゃんと一緒なら楽しいし、退屈せえへんから嬉しいけども」

 

「楽しいだなんて、超光栄ですぅ!」

 

「ソーナンスぅ!」

 

 ムサシは飛び出してきたソーナンスとくるりと後ろを向いて、ガッツポーズを交わします。

 

(一緒にいると楽しいですって!)

 

(ソーナンス!)

 

(やだもー、これって実質告白よね? ヨッシャ!)

 

(ソーナンス!)

 

「ムサシちゃん?」

 

「はーい、なんですかぁ?」

 

 ぶりっ子モードON。この場にニャースかコジロウがいれば、その豹変ぶりに寒気くらい感じたかもしれません―――

 

 

 

 

「へくしっ!」

 

 コジロウは大きなくしゃみをしました。なぜだか寒気がしたのです。

 

「うう……風邪引いたかな」

 

 ぶるりと身を震わせて、前を向きます。なんだか街がやけに広く見えて、彼は眉をひそめました。

 

「ムサシのやつ……どこ行っちゃったんだよ」

 

 

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