ソーナンスが繋いだ絆! ムサシとチリ!   作:haldon

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Side Chili

――――Side Chili

 

 新しく友達になったムサシと過ごす時間は、チリにとってはとても楽しいものでした。実を言えば、キャピキャピしたタイプの人間はあまり得意ではないのですが、なぜかムサシとは馬が合うのです。

 その日も、街で偶然ムサシと出会ったチリは、彼女と連れ立って公園へ出かけました。ムサシには仕事、と言いましたが、実のところ仕事は2割くらい。あとの8割は息抜きです。

 

「街に出て有望そうなトレーナーをチェックする、やなんて、雲をつかむような話やねんな。よくこんな言い訳みたいな申請が通ったもんやわー」

 

「チリちゃんさん? なにか言いました?」

 

 ムサシが不思議そうに見上げてくるのに、チリは何でもないと首を振ってみせます。幸い、ムサシはリーグ四天王としての自分を知らないようですから、それなら敢えて身分を明かして、萎縮させるようなことはしたくないと思ったのでした。

 ポケモンと戯れるために、サンドイッチを作ります。ムサシとは他愛もない話で盛り上がります。

 

「なんや、自分カレシおらへんの? こんなに可愛いのに勿体ない。世の男共は見る目があらへんわ」

 

「ですよねー。チリちゃんさんがもらってくださってもいいんですよ?」

 

「あはは、自分おもろいこと言うやん」

 

 実際、ムサシはかなり美人だし、話してて楽しいし、ポケモンにも慕われているようだし、素敵な女性だと思っていました。自分が男だったら、放っておかないのに、と。

 

「チリちゃんさんには、恋人とかいらっしゃらないんですか?」

 

「おらんよ。まあ、強いて言うならこの子らかな」

 

 いや、たぶん実際にそうだったら、仕事とポケモンに追われて彼女を構ってあげられないかもしれません。やっぱりありえない想像だな、とチリはこっそり首を振りました。

 

 

 

 

「ソーナンス、あんたもサンドイッチ食べ……ソーナンス?」

 

 相棒の方を振り返ったムサシが戸惑ったような声を上げたので、チリもそちらに目を向けました。

 

「どうしたのよ、なんかあった?」

 

「ソソ、ソーナンス……」

 

 ソーナンスは両方の手を口元にやって、ムグムグとしています。キョロキョロと落ち着かなさげに視線を彷徨わせている様子は、普通とは思えません。

 

「どしたん?」

 

「さあ……つまみ食いでもしたんじゃないですか」

 

 ムサシは気にしていないようですが、チリはそうも行きませんでした。ドオーに目で問うと、ドオーはある方向に顔を向けます。そちらを見ると、木の影に人影のようなものが。

 

「つまみ食い……かぁ」

 

 怪しいことこの上なし。しかし、ソーナンスの様子を見るに、害のある人物ではなさそうです。ムサシの知り合いでしょうか?

 チリはすぅっと目を細めました。

 

 

 

 

 先にムサシを帰すと、その人物は目で彼女の後を追います。けれど、自分から近づこうとはしませんでした。チリは彼の背後に近づきます。彼は心ここにあらずといった感じで、気づきません。

 

「なあ、自分」

 

 声をかけると、彼は驚いて飛び上がりました。青い髪の男です。まあまあイケメンの類でしょうか。しかし、おどおどとしてどこか不安げなその姿は、チリの好む男らしさとはかけ離れていて、ちょっと蹴飛ばしたくなりました。

 

「自分、ムサシちゃんのなんなん?」

 

「なんなん、って……」

 

「カレシ?」

 

 ずばり! 尋ねると、彼は虚を突かれたのか一瞬固まりました。それから、ぶんぶんぶんと首を横に振ります。

 

「ち、違う、けど」

 

「じゃ、ストーカー?」

 

「違う違う! オレはただ、最近ムサシが一人で出かけちゃうから、なんだろうな、と思って……」

 

 ふうん、とチリは目を細めます。少なくともムサシと知り合いなのは確かなようです。面接官モードのスイッチを入れてみると、彼はたじろぎました。

 

(なんや、ただのヘタレかいな)

 

 そう冷たくあしらおうとしたところで、はたと気づきます。彼の目にはまだ光があるということに。チリはおや、と彼を見直しました。

 彼はぎ、と奥歯を噛み締めて、言います。

 

「お、お前こそムサシのなんなんだよ?」

 

「友達や」

 

「友達? ただの?」

 

「ただじゃなかったら、なんぼやっちゅうの」

 

 見直したところで、手心を加えるつもりはありませんが。ふん、と鼻を鳴らして、面接的なそれを続けます。

 

「何者や知らんけど、自分ムサシちゃんの知り合いやろ? ならなんでこんなところで隠れとったん? 声かけてくれればよかったんに」

 

「だって……邪魔しちゃ悪いかなって思ったからさ」

 

 その言葉は素直にチリの耳に入ってきました。裏のない、素直な感情なのでしょう。仕事柄、そういう人の腹の中に関しては聡いと自負しているチリです。

 

「ほーん」

 

 なるほど、悪い人ではないようです。面接官モードを止めると、彼はほっとしたような表情を浮かべました。

 男性に対して抱く感想ではありませんが、チリは彼のことを分かりやすくてかわいいと思いました。それに、男らしいとは言い難いですが、案外芯の強いところもありそうです。

 

「なるほど、ムサシちゃんのこと心配しとるのはホンマみたいやな。自分、名前は?」

 

「こ、コジロウ」

 

「ん、うちはチリちゃんや。よろしゅう」

 

 第一印象とは打って変わって好印象を抱いたチリは、握手を求めました。ついつられてか、コジロウと名乗った彼も「あ、どうも」と手を差し出し、それからハッとした顔をしてブンブンと首を横に振ります。チリは内心でくすくすと笑いました。

 

「で、で、お前はなんなんだ?」

 

「だから言うたやないの。ムサシちゃんの友達やで」

 

「でも、それにしちゃ……」

 

「それにしちゃ、なんや?」

 

 問うと、コジロウは口ごもりました。言葉を探している様子がうかがえます。

 

「ムサシとは……ずいぶん仲いいみたいだったから」

 

「友達やもん、当たり前やない?」

 

「そりゃ……そうなんだけど、そうじゃなくて」

 

 俯いて、もごもごと言葉にならない声を発しているコジロウ。どうやら、自分で自分の気持ちが分からなくなっているようです。チリが顔を覗き込んでみると、コジロウは驚いて仰け反りました。チリは今度は声に出して、からからと笑いました。

 

「もしかして、嫉妬しとるん? 安心しいや、男女の関係と、女同士の友情は、違うもんやで」

 

「嫉妬って、そんなんじゃ……!」

 

 言いかけたコジロウが、ハッと目を丸くします。

 

「女同士、の?」

 

「女同士の?」

 

 首を傾げる彼につられて、チリも鏡合わせのように首を傾げました。コジロウは何に引っかかったのでしょう?

 

「お前、女?」

 

「失礼なやっちゃな、うちは女やで。……まあよく間違われるんはそうやけど」

 

 男だと思われることは、普段から少なからずあることです。ボーイッシュな服装を好むせいもあるようだし、それ自体は別に気にしていません。しかし。

 

「ムサシにそれ、言ったか?」

 

「特に言うとらん……けど……」

 

 そう言われて、チリは問題に気づきました。もしかして、もしかすると……? 青ざめるコジロウの顔。チリも思わず頭を抱えて、うずくまります。

 

「まさか、ムサシちゃん、うちのこと男だと思っとる? あああ、言われてみれば心当たりあるう!」

 

 思い返してみれば、あのときも、あのときも! ムサシの態度は、まるで恋する乙女だったではありませんか。なぜ気づかなかったのかと、チリは自分を問い詰めたい衝動に囚われました。

 

「どないしよ、いや待ちぃ、うちの口から言うからな、コジロちゃんはムサシちゃんに言わんといてや」

 

 チリはすっくと立ち上がると、真っ直ぐにコジロウを見つめました。取り乱したのも一瞬のこと、さすがは腐ってもリーグ四天王、リーグ面接官です。もう狼狽はありません。

 

「もしホンマに誤解を与えとったなら、それはうちの責任や。うちがケジメつけなあかん。すまんな、自分。迷惑かけるかもしらんけど」

 

「い、いや、それは別にいいよ……」

 

 コジロウの返事に、チリは微笑みました。彼の表情、言葉、そこから彼の優しさが滲み出てくるように思いました。ムサシにはショックを与えるかもしれませんが、彼が近くにいるならきっと大丈夫。

 

「うちが言うこっちゃないけどな、ムサシちゃんのこと、頼むな―――」

 

 

 

 さて、とチリは空を仰ぎました。ムサシにはどのように伝えたらいいでしょう。騙していた、と詰られるのもやむ無しですが、できれば友達のままでいたいと思うのは、わがままでしょうか。

 しばらく考えてから、チリは自分自身を鼻で笑いました。

 

「はっ、しょーもな」

 

 こんなことで悩むなんてどうかしている、と。言いたいこと、言うべきことがあるのならば、言えばいいじゃないか。不誠実であることこそ、最も嫌うところです。

 

「そんなん、真っすぐ言うだけやん。自分らしくないでぇ、チリ!」

 

 結果がどうなろうと自分の責任。ばちん! と自らの頬をはたいて気合を入れます。決めたなら、あとは行動あるのみです。

 

「せや、あれ買うてこ。ムサシちゃんなら似合うやろ」

 

 この街にある贔屓の店を思い出して、チリは一人うなずきました。お詫びの印、友達の証として、贈り物をしたいと思ったのです。

 

「ムサシちゃん、受け取ってくれるとええなあ」

 

 そう独りごちると、早速店へと向かうのでした。

 

 

 

 目当てのものを手に入れたチリは、街の中を彷徨っていました。なるべく早くムサシに会いたいところですが、彼女を帰してしまったのは自分だし、今日はもう無理かもしれません。それならそれで、またの機会に預けるだけですが……あんまり遅くなるのはいややなぁと眉をひそめます。

 しかし、その憂いは杞憂に終わりました。公園に差し掛かったところで、尋ね人の姿を見つけたのです。

 

「ムサシちゃん! あー、会えてよかったわぁ」

 

「チリちゃんさん? どうしたんですか?」

 

「いやー、自分に伝えなあかんことがあったさかい」

 

 チリは息を整えると、真っ直ぐにムサシと向かい合いました。応じて、ムサシも真っ直ぐに見つめ返してくれます。

 

「ムサシちゃん」

 

「は、はい」

 

 応えるムサシの目はキラキラと輝き、やはり恋する乙女のように見えました。この誤解は早く解かなければならないと、チリは単刀直入に言葉を紡ぎます。

 

「あんな……うち、女やねん」

 

「はい! ……はい?」

 

 ムサシは首を傾げました。聞き取れなかったのでしょうか。チリは優しく言い直しました。

 

「うち、女やねん」

 

「おんな……おんな?」

 

 固まるムサシ。やはりショックを与えてしまったようです。心からの謝罪を込めて、チリは頭を下げました。

 

「自分、やっぱし誤解しとったよな。女やてはっきり言わんうちが悪いんや」

 

「おんな……女性って、こと、ですか?」

 

「せやで」

 

「冗談、ですよね?」

 

「マジや」

 

「あー……」

 

 だんだんと、ムサシの顔が蒼白になっていきます。口をパクパクさせて、言葉を探しているようです。それから泣きそうに口元を歪めて、おもむろにくるりとチリに、背を向けました。

 

「そうなん、ですね。あははは、あたし、勘違いしてましたー」

 

 まるで棒読みのその言葉には、感情が籠もっていませんでした。少し、声が震えているようにも聞こえます。それでもチリは、頭を下げ続けました。それが、いま自分ができる、精一杯の謝罪と信じて。

 

「この通り、堪忍したってや」

 

「あははは、いーんですよー。こっちこそ、変な勘違いしてごめんなさいでしたー」

 

 あははは、とムサシの乾いた笑い。痛ましい程でした。自分が思っているより、ムサシが受けたショックは大きかったようです。

 ムサシが踵を返します。一歩、二歩と離れていきます。

 

「ムサシちゃん! どこ行くんや?」

 

「大丈夫、気にしないでくださーい」

 

 ムサシの表情はもう見えませんが、なんだか泣いているようでした。チリは声をかけようとしましたが、彼女の背中がそれを拒絶している気がして、ついぞ出来ませんでした。

 追いついてきたソーナンスがムサシを見て、ぎょっとした様子で立ち止まりました。立ち去るムサシと、立ち尽くすチリを、見比べてオロオロしています。チリは、ムサシに渡すはずだった包みをギュッと握りしめました。

 

 

 

 

「ソーナンス! ちょっと待ってや」

 

 主人を追いかけようとしたソーナンスをチリは呼び止めます。

 

「堪忍な。うち、自分のご主人を傷つけてもうたかもしれん」

 

「ソーナンス?」

 

「うん……だからな、自分にこれ、頼みたいんや」

 

 チリはソーナンスに、小さな包みを渡しました。ソーナンスが首を傾げます。その愛らしさに健気を感じて、チリは頭を撫でました。ソーナンスは嬉しそうに頬を染めて、口をムグムグと動かしました。

 

「ソー……」

 

「これ、ムサシちゃんに渡したってな」

 

「ソーナンス!」

 

 わかった、と言うように、ソーナンスは大きく頷きます。チリは微笑みました。

 

「勝手言いおるけどな、うちはムサシちゃんと友達でいたいんや。もし、うちのこと許してくれるんなら、やけど」

 

「ソーナンス!」

 

 心情を吐露すると、ソーナンスはぽんぽんとチリの肩を叩いてくれました。なんだか励ましてくれているようです。大きく頷いているのは、大丈夫だよとでも言ってくれているのでしょうか。なんとも人間臭くて、チリは思わず吹き出しました。

 

「なんや、元気でたわ。おおきに」

 

「ソーナンス!」

 

 よろしい、とばかりに頷いて、ソーナンスは改めて主人のあとを追うのでした。

 

 

 

 

 

―――――

「チリちゃんさん!」

 

「お、ムサシちゃん……と、コジロちゃん?」

 

 翌日も、いつものように偶然ムサシと出くわしました。本当は今日は無理じゃないかと思っていたチリは、嬉しさ半分気まずさ半分に、挨拶をします。実を言えばどんな顔をしたらいいか分からなかったのですが、少なくともムサシはいつも通りに見えます。

 一緒にコジロウがいるのを見て、チリは少し嬉しくなりました。

 

「一緒におるんや」

 

「はい! コイツが私の後を付けてチリちゃんさんと知り合ったってのも聞きました!」

 

「さよかー」

 

 コジロウの耳を引っ張りながらそう言うムサシ。二人はずいぶんと、気のおけない仲のように見えます。

 

「仲、ええんやな」

 

「違いますよ、ただの腐れ縁です! 仲良しってのは、あたしとチリちゃんさんみたいなのをいうんですー!」

 

 ムサシは心底心外だと言うように口をとがらせて言いました。彼女が示す自分の耳には、光るものが。

 チリは息を呑みました。それは、チリが彼女のために買い求めたもの―――チリとお揃いのピアスだったからです。ソーナンスに託したそれは、ちゃんとムサシの手に渡っていたのです。そして、それを身に着けてくれたということは。

 

「チリちゃんさん、勘違いしててごめんなさい。あたし、かんっぜんにあなたのこと、男性だと思ってました」

 

 チリがなにか言うより先に、ムサシが口を開きます。チリは慌てて首を横に振りました。

 

「あー、うん。ええんや。勘違いさせたうちも悪い」

 

「いいえ! 悪いのはあたしです!」

 

 ムサシが頭を下げました。

 

「謝るので許してください。そんで、できれば、これからもチリちゃんさんとはお友達でいたいです」

 

 チリは、胸のわだかまりが融けていくのを感じました。ムサシも、自分と同じ気持ちでいてくれたのです。

 

「ムサシちゃ……ううん、それはうちから頼みたいことや。これからも友達でいてくれるん?」

 

「もちろん!」

 

 ムサシは顔を上げて、正面からチリを見ました。恋する乙女の瞳ではなくなったけれど、友達でいられる喜びに溢れているように見えました。きらきらしていて、チリはこの瞳が好きでした。

 しかし、ふとその瞳がくもります。

 

「……あの、チリちゃんさん」

 

「ん?」

 

 ムサシは言いづらそうに目を逸らしました。コジロウが心配そうに見守っていますが、口を出す気はなさそうです。

 

「あたしたち、そろそろ街を離れなくちゃならなくって……寂しいですけど、お別れです」

 

「……さよか」

 

 もちろん、いつか来る時間です。それは仕方のないことですが―――ムサシの泣きそうな笑顔に、チリは少しばかりの自嘲をこめた微笑みで応えました。

 

(女の子にこんな顔をさせるなんて、悪いやっちゃな、自分は)

 

「どこにおってもうちらは友達。それは変わらへん。せやろ? きっとまた会えるさかい、そんな顔せんといてーな」

 

「……はい」

 

 次に会えるのがいつかは分かりません。もしかしたらもう二度と会えないかもしれません。けれど、チリは決してそう言いませんでした。ムサシを悲しませないためであり、もしかしたらそれは、自分に言い聞かせるためでもあったのかもしれません。

 ずっと二人のやり取りを見守っていたコジロウに目をやると、なぜか彼まで泣きそうな顔をしています。

 

(なんや、ええ奴やな。コジロちゃんがいてくれはるんなら、うちがそんなに心配することもないやろ)

 

「コジロちゃん、ムサシちゃんのことよろしゅうな。うちが側におられへん分、自分がきばりぃよ」

 

 そう言うと、コジロウは目元を赤くしたまま、大きく頷きました。

 

「おう、任された」

 

「コジロウのくせに生意気」

 

 コジロウが頷くと同時に、ムサシの裏拳が放たれます。それは見事彼のみぞおちにクリーンヒットして、コジロウがケホケホとむせました。涙目でムサシを睨むコジロウと、そんなコジロウを意に介さず澄まし顔のムサシ。二人の態度からは、普段の信頼関係が見て取れます。微笑ましさに、チリは笑いました。ムサシも釣られて笑います。ぽん、とボールから出てきたソーナンスも笑いました。辺りは和やかな空気に包まれました―――

 

 

 

 

 

 一人になったチリは、そっと自分の耳に触れました。いつも身につけているそれなのに、今日はなんだか存在感を放っています。心の中にあの二人の笑顔を思い浮かべると、ほわほわと温かいものを感じます。

 チリは満足げに空を仰ぎました。空はどこまでも青く澄んでいます。それはソーナンスのようでもあり、ムサシの瞳のようでもあり、コジロウの髪のようでもあると、チリには感じられました。

 

「なんだかちょっと、ええ感じ、やな」

 

 チリの呟きは風に乗って、空まで届くかのようでした。

 

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