☆前回の反省点☆
・長い。
・他作品ネタの必要性。たぶん無い。
・マシンセルの説明が足りてない。雑魚敵の役割をもう少しわかりやすく。(課題)
・拠点作りのパートを利用して世界観を説明するほうが自然な流れかもしれない。
・バイオロイドの登場は準備段階でもよさそう。第3者視点大事。
( ゚Д゚)⇐前書きとの境界線を示す置物
○月✕日
ノートを見つけた。文字をかく。こころが落ちつく。さいあくだ。日本に帰りたい。そとに明かりはなにもない。あつい。さむい。ひえる。すながおおい。日本に、日本かえりたい。
○月□日
少しだけ気分が落ちついた。感情的には最悪なのに変わりはないが、この世界が周回クリア済みのゲームであることに気が付いたのは大きい。
いや、世界観的には全く助かっていないのだが。500mlのペットボトルひとつぶんの水が原因で殺し合いが起きる世界だ、明日にはバンデットが押し入ってきて殺されるかもしれない。本当に本当に本当に最悪だ。
○月△日
ステータス画面が開けることに気付く。アイテム増殖バグに成功した。食料が尽きる前に気が付けたのは好運だった。知らないメーカーのナッツ入りチョコレートとラベルすら張られていない水のペットボトル、当分はこれだけで生きる必要がある。
もっとも、明日には食中毒でくたばる可能性もあるが。それならそれで諦めがつくというものだろう。荒廃したサバイバル世界でオレのような平凡な日本人が長生きできるとは思えないからな。ちくしょう、くたばれ神様。
○月☆日
建物の中を少しだけ探索した。ゲームでは歩行戦車を製造していた工場に似ていた。技能レベルの強化や様々な機械類の燃料となるエナジー鉱石の欠片もあった。バグで増やした。
戦闘系のスキルとサバイバル系のスキルのどちらを先にレベル上げするか迷ったが、そもそも生活が安定しなければ身を護るどころの話ではない。風呂は無理だとしても、せめてお湯で身体を拭くぐらいのことは毎日できるようになりたい。サバイバル系の、クラフト技能をいくつか強化した。明日から色々試すとしよう。
○月◇日
簡単な造りのシャワーを使えるだけで泣いている自分が惨めに感じた。シャンプーなんてもちろん無い。湯せんしたケチャップ味のミートボールの缶詰めは、チョコレートばかり食べて甘味にイライラしていたので最高に美味かった。歯ブラシは好みの固さのが偶然見つかったので、増殖バグで新品を増やして使っている。
プラモデルぐらいしか作ったことがないのに、解体の技能レベルを上げた影響で機械類を簡単にバラバラにすることができるのは地味に面白い。それぞれのパーツをインベントリにしまったり出したりをしていると魔法使いにでもなった気分になる。文明らしきモノが周囲にあるだけ、ファンタジー世界への転移よりは100倍マシだなと思えた。マシなだけだが。
○月↑日
バイオロイドが迷い込んできた。どこからか逃げてきたらしい。本当かどうかは知らない。身長はオレの肩ぐらいで、ちゃんとオッドアイだった。ロングヘアーで丁寧口調だったが、その気になればオレは簡単に殺される。
だけど簡単に殺されるのなら幸せなほうだと思う。そう思えば受け入れるのも簡単だった。どうせ勝てないのなら警戒する意味も無いからと気楽にしていられる。お礼にと貰ったホウレン草の瓶詰めとトウモロコシの瓶詰めはバグで増やした。なにも言ってこないので説明はしてない。
○月↓日
野菜があると食事が豪華に感じるようだ。戦闘用なので料理はできないと言っていたが、缶詰めと瓶詰めの中身を皿に出すだけの作業は普通だった。名前はアインになった。オレは隊長扱いになるらしい。ご主人様と呼ばれるよりは返事がしやすいのでガマンする。
ガラクタ集めも順調だ。視界の悪い物陰はマシンセルがいると危ないので全部アインが調べた。情けないとは思わない。オレは死にたくないからだ。そしてアインは戦闘用バイオロイドなのだから、戦えるヤツが危険な場所を調べるのは当たり前だ。戦いは任せると言ったときの喜び方は少し不気味だった。役に立ってくれるならどうでもいいことだが。
( ゚Д゚)⇐シーン切り替えを示す置物
「私が言うのもなんですが、ずいぶんと簡単に信用していただけるのですね」
「疑う意味がないからな」
「意味がない、とは?」
「強化人間ですらない生身のオレではバイオロイドになんて勝てん。たとえ戦闘用でなかったとしてもな。なら警戒するだけムダだし、居場所がバレた時点で追い払う意味もない。だから受け入れを断る必要がない。理解したか?」
「なるほど。無条件で信じたワケではない、と。了解しました。むしろそのある種の合理的思考は好ましく思います」
「本当に賢いなら息を潜めてやり過ごしてる。つまりは命の危険より孤独に耐えられなかった、それだけだよ。それに水はタップリある。多少の食料とエナジー鉱石もな。余裕がなければ泣いて土下座してでもお引き取り願ってた」
己の弱さについてケラケラと笑いながら語る青年の姿を見たバイオロイドは、今回の人間は大当たりに分類できると確信していた。
見た目こそ人間そのものでもバイオロイドは工業製品であり、その扱いは基本的に生物ではなく兵器である。普通の人間であれば近寄ることすら躊躇うし、この青年のような会話が成立することなどあり得ないと断言してもいい。
殺される可能性を考慮、というより前提条件として判断されていることについて少しだけ思うところはあったが、無条件で他人を信用するような考え無しの人間と行動するリスクを考えれば無視できる要素だ。善行そのものを否定するつもりはないが、自己満足のために周囲をトラブルに巻き込むバカと積極的に関わりたいと思う者などいないだろう。
案内されたのは廃棄された工場に隣接している事務所らしき建物で、部屋の中は外観とは違い中規模エリアの富裕層並みに家具などが整っていた。これでは最悪のパターンを想定してしまうのも無理はない。
「いま食事の用意をする。あぁ、さきにエナジー鉱石の欠片と水を渡しておこう。右目と髪の毛の一部が灰色に変色しているのは自分で気付いていたか?」
「いえ。そうですか、おそらくマシンセルから逃げるときに余分な消耗をしてしまったせいでしょう。感謝します。よろしければこちらを食事の足しにしてください」
「これは……ホウレン草とトウモロコシか! コイツはありがたい、ミートボールとチョコレートだけで野菜が足りてなかったんだ」
そう言いながら男はステータスを開いて瓶詰めをインベントリに収納してしまった。明日の食事にでも使うのだろうか、などと考えていると男がなにやら画面を忙しなく操作して──同じような瓶詰めを何本もインベントリから取り出して並べ始めたではないか!
機嫌良く鼻歌を奏でながら冷蔵庫にしまっている男の背後でバイオロイドの少女は驚きのあまり言葉を失っていた。
もとからインベントリに収納していた物を取り出したのではない、それでは瓶詰めを渡したときの男の反応は正しくないのだ。
つまりは何らかの技能によるもの。だがインベントリ内部の道具を増やす技能など聞いたことがない。
(────ッ!? 黙れッ!!)
色めき立つ全身のナノマシンを無理矢理黙らせる。兵士であり兵器として製造された戦闘用バイオロイドは、他者の血肉を取り込むことでステータスや技能の一部を吸収することができる。故に、未知の技能を持つ極上のエサを目の前にして食欲が一気に限界まで高まってしまったのだ。
いけない、今回ばかりは早まるな。仮に脳髄から血液の一滴まで残さず喰らい尽くしたとて確実に技能をコピーできるワケではない。一か八かで貴重な技能を喪失する可能性に賭けるよりは、地道に信頼関係を築き恩恵に預かるほうが賢い選択だろう。
それに、わざわざ物騒な手段など選ばずとも彼は男でありバイオロイドは人間の女に近い肉体をしているのだ。相手の『情報』を獲得するのが目的ならば、
「とりあえず食事の心配はいらないとして……一応、シャワーもあるから適当に汚れは落としてくれ。あとは寝床の準備も必要だな」
「えぇ、そうですね。シャワーはもちろんありがたく使わせていただきます。それに、寝るための場所についても是非ともしっかりとお願いします。……フフッ」