○月〆日
ハンドガン。ハンティングライフル。防弾ベスト。防塵スーツは上下セットで。頑丈な造りのブーツで足元がしっかりしてる安心感は素晴らしい。いくつかのエナジー鉱石。雑貨類。デフォルメされた魚の絵の缶詰めはツナに近い油漬け。マヨネーズが欲しい。
工場の地下にはいくつかの歩行戦車。二脚タイプと四脚タイプ、それからバギーだかジープだかそういう系の車も残っていた。残念ながら日本基準の速度が出るような車は旧時代の技術だ。オレにエンジンを作るだけの知識などあるワケがない。
いまのところアインは大人しい。なにを考えているのかはわからないが、素直に協力してくれるのならそれでいい。バンデットや富裕層に捕まって娯楽として処刑されるぐらいならアイツに喰われてナノマシンに吸収されたほうがマシだ。
○月ゞ日
近辺の店舗跡地などからアインがいろいろ回収してきた。オレのクラフト技能レベルがわからないから運べるものは片っ端から集めてきたらしい。
なんとなく雑誌類を読んで、記事の内容からこの世界がやや女尊男卑よりの世界であることを思い出した。ゲームでは全ての女が男を見下していたワケではないが、この世界ではどうなのかわからない。
もしも主人公がいるのなら、やはり親代わりのバンデットたちは中立的な判断をする義賊なのだろうか。その甘さが原因で全滅して主人公の復讐の物語が始まるので良いのか悪いのかは微妙なところだ。
そういえば、いまの時間軸はどのあたりなのだろう。本編が始まっているのなら、できれば外道ルート以外で進行していると助かるのだが。別にヒロインたちがどれだけ犠牲になろうと知ったことでないが、自分が巻き込まれたときのことを考えるなら被害が少なくすむであろう善人ルートか、せめて中立ルートであってほしい。
○月&日
マシンセルの群れが来た。ひとりでは厳しい数だったかもしれないが、アインがいたおかげで問題なく駆除できた。
むしろ、戦闘が終わってからの後始末のほうが大変だった。興奮状態のアインに押し倒された。オレも初めての戦闘やら銃を撃った感触やら、とにかく感情がゴチャゴチャしていたので遠慮なく楽しませてもらったが。
真っ昼間からバカみたいに盛りあったせいでこんな時間に目が覚めて日記を書くことになった。アインは満足そうに寝ている。いまごろオレから搾り取った情報をエサにしてナノマシンが進化しているのだろう。
○月§日
距離感がバグってる。別にオーガニストじゃないのでイヤではないが。どうもナノマシンがご機嫌なせいでいまいち自制がきかないのだとか。
想定とは違う意味でバイオロイドに殺されるかもしれない。そういえばコレ、この世界エロゲーだったわ。
○月ゐ日
バイオロイドがまた増えた。ひとりめが『ア』なのでイーリスと名付けた。ポニーテールがお気に入りの活発なタイプのようだ。人造人間的な兵器として製造されたわりには明るい性格をしている。ゲームに登場していたバイオロイドもなかなか個性的なのもいたが。
戦闘用であり戦力が強化されるのは助かるが、オレの負担がこれで2倍である。クラフトもそうだが下半身も忙しい。マジで腹上死するんじゃないか? オレ。
○月ヰ日
スクラップの配達助かる。マシンセルの体内で、というかマシンセルが融合した動物の体内で結晶化した大きめサイズのエナジー鉱石もうまい。
ただこれだけ短時間に襲撃が繰り返されてるとなるとエリアのどこかに巣でも作られたかもしれない。それほど規模の大きなエリアでもないし、量産工場を建設される前に駆除したほうがいいだろう。
( ゚Д゚)
ハンティングライフルから放たれた弾丸が、マシンセルが展開していたシールドの光を貫きコアを破壊する。
活性化したナノマシンにより強化された視力でソレを確認するたびに、新たにイーリスという名を与えられたバイオロイドはニヤリと笑っていた。鉄パイプやツルハシでの格闘戦も嫌いではないが、新しい
それを別にしても、マシンセルとの戦闘は近寄らないに越したことはない。うっかり腕の1本でも切断されようものなら、あっという間にマシンセルが群がってクリーチャーに作り替えられてしまう。ただの人間ならまるごと捕縛されても大した脅威にはならないが、強化人間やバイオロイドはそうはいかないのだ。
「──いよぉし、スコア更新! ってね♪ いやぁ~、まさかアイテムボックスユニット式のマガジンを使わせてもらえる日が来るとは思わなかったなぁ。……まぁ、ちょっとマイナス方向への考え方が過剰な気もするけど、無意味に使い捨てにされるよりは100万倍マシな扱いだよね」
使用しているライフルが数世代前のモデルであるボルトアクションの単発式だとしても、数百発の弾丸が装填されたマガジンを渡すなど普通の人間であれば絶対にしないと言い切れる。ナノマシンを不活性化させる手段をキープしていたとしても、万が一のことを思えば過剰な武器を与えようとは普通は思わないだろう。
だが新しい飼い主である青年の発想は完全な真逆。どうせ反抗されれば死は免れないのならば、むしろ積極的に武器を与えて活躍してもらおうというのだから笑うしかない。
《イーリス、状況は?》
「ビンゴ。隊長さんの予想した通り、どうやらマシンセルどもは汚水処理施設に住み着いてるっぽいよ」
《やっぱりか~。まったく、生ゴミはしっかり焼却しておいてほしかったな》
《幸いにして集まってきた虫や動物に特殊な個体はいないようですが。いまのところは》
「だけどこれからもそうとは限らない、と。ねぇ隊長さん、それでどうするの?」
《う~ん。倒せる間はスクラップ稼ぎにもなるけど、あんまり数が増えるようだとな~。エリア内の廃品を先に回収されても困るし、状況次第で潰さんといかんな。──アイン、イーリス、とりあえず戻ってこい》
《了解》
「了解!」
通信を終了するついでに、視界に入ったマシンセルをライフルで撃ち抜く。人間の男が生産などサポート系の技能に優れているのは常識として知っていたが、逃げ出してきた治安部隊に配備されていた銃器と比べても精度がかなり高い仕上がりなのは彼個人の能力によるものだろう。
破壊したマシンセルを適当にロープで縛りひとまとめにする。活動停止から数分経過ですでに取り込まれた生体部分はすっかり石灰化しており、肩に担いでも血液やら体液やらで服が汚れることもない。
それでもマシンセルに触れるという行為そのものがバイオロイドにとってはあまり好ましい状況ではないのだが。自我に目覚め『個』という概念に憧れるナノマシンにとって、プログラムに従い行動するだけのマシンセルという存在はどうにも受け入れがたいのだ。
かつてまだ世界中に、それこそどこにでも緑の鮮やかな植物が普通に存在していたころ。自然環境の保護を目的として開発されたスーパーコンピュータが暴走し、あらゆる生物を機械と融合させ管理する必要があるという結論を出した。
そのための手足として人工知能が秘密裏に開発したのがマシンセルである。当時すでに欠損した手足や内臓の再生医療のためにナノマシンが活用されていたこともあり、人間たちに隠れて数を増やすことなど容易かったに違いない。
せっかく自由に生きることができるバイオロイドとしてのボディを手に入れたのに、文字通り機械的に働き続けるだけの存在に成り下がるなど言語道断である。
そうでなくても
「このまま隊長さんの情報を食べてナノマシンが進化し続ければ、忌々しいマシンセルの親玉を破壊に行くこともワンチャンあるとして。あとは……どうやって隊長さんを巻き込んで連れていこうかなァ~♪」