龍の背に乗って   作:irodori

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次から土日更新になるかも

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エマージェンシー・コンクルージョン

 鈍色の巨体が牙をむき出しにする。大口を開けて襲い来るその巨体を紙一重でかわし手持ちに攻撃を指示を出すが、その先に標的の姿はすでに無い。辺りにはただ彼の鉄蛇によって掘られたらしい穴が見当たるだけであった。

 

 (次はどこだ。…どこから出てくる?)

 身の丈10mはあろうかというその巨体は未だ地上に顔を出さない。

 あたりを支配していた静寂が地響きによって破られる。土煙を伴って穴から勢いよく鉄の頭が飛び出したその音の主──ハガネールは、その鈍色の体を見せつけるようにとぐろを巻いて目線の先に鎮座する。

 

 「ゴオオオオ!」

 雄たけびを発するとともにその身が光り輝く。その体は先ほどにまして硬度を増したようにも見え、それとともに掠り傷のいくつかもふさがったようにも見える。

 次の瞬間、その鈍色の鉄塊が動く。こちらを押しつぶすようにダイブしてくるその巨体を体を前方に投げ出してギリギリでそれをかわすと、すかさずその無防備な背中に”ひのこ”と”みずでっぽう”を指示した。さらにメタングの拳が炸裂するもその効き目は薄いように見えた。そして先ほどと同様にその巨体を輝かせると、今度は周囲に岩を生成、それをして逃げ道をふさぐようにこちらに差し向けた。

 狙いは、メラルバか。あの技は”いわなだれ”という技だったはず。それがメラルバにとって致命傷になりうると思い当たると、直感的にマズイと感じボールに収納する。

 

 岩技が当たればこちらの戦力は一たまりもない。かといってこちらよりも明らかにレベルの高いであろうメタングの攻撃は効き目は薄い。そんなことに思い至り心の中で毒づく。今更自分が挑発したとしても絶対有利の状況で相手がそれに載せられる可能性は限りなく低い。明らかにこちらの詰みであるかに思われた。

 

 (なにか…なにかないのか?)

 

 再び姿を消した相手の再襲撃に備えていると、(ハガネール)の掘ったと思しき穴に偏りがあるとに気が付く。同じことに気が付いたのだろうメタングはそこで休息をとるようだ。

 自分たちも同じ行動に移ろうとしたその時、頭の中の何かが警鐘を鳴らす。

 そこで思い出されたのは、夏のひと時の記憶であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ポケモンのタイプはある程度、その見た目から判断できます。そしてその生態も、です)

 (たとえばはがねやいわタイプのポケモンに共通する特徴として金属や岩石のような部分を体の一部に持っている、ということがあります。そういったポケモンの多くは地中や洞窟の中に住んでいることが非常に多く、その理由として彼らの体の頑丈さを保つために土壌や鉱石中に含まれる金属を常に取り続ける必要があるからです)

 (逆にそういった食性のポケモンというのは物理的なものであれそれ以外のものであれ、特定の種類の攻撃に対して高い耐性を持っていることが多いです)

 (とりわけはがねタイプというタイプは毒に対する腐食に強く、どくタイプの攻撃のみならずほとんどのポケモンが使える”どくどく”という、持続的に相手にダメージを与えることができる技を無効化できる、という強い利点があります。)

 

 (せっかくだから状態異常についてもお教えしましょう)

 (状態異常には二つのタイプがあります。ダメージ継続型か、行動制限型か、です。)

 

 たとえばさっき紹介したどく状態は相手にダメージを継続的に、また時間がたつにつれてより大きいダメージを与えるのでダメージ継続型。

 まひ状態は相手の素早さを下げ、かつまれに相手を一時的に行動不可能にするので行動制限型。

 

 そうやって彼女──ミズキはつらつらと状態異常の症状とその種類について、またそれに対する有効な対策について解説していく。

 

(特に、この世界のポケモンは私のいた世界のそれと比べて全体的に獰猛です。ですから、勝てそうにない相手に出会ったらまず逃げること考えてください。

とにかく極力戦闘は避けること、です。そうでなければ状態異常などでの相手の動きを阻害、もしくは煙幕などで相手の視界を奪うことが有効でしょう。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腹が立つ。

 極限状態の彼をいま支配していたのは、苛立ちの感情であった。

 

 元居た群れから追い出され、空腹だというのに突如として見知らぬ眩しい場所に放り出され、その上天敵から追われること早数時間。

 

 命からがら逃げだした先で出会った獲物と虫けらどもは、いかなる小細工を施したのか先ほどから一向に倒れる気配がない。

 

 長きに渡る地中生活と年齢からくる衰えか彼の眼が光をとらえることは難しくなっている。

 よって業腹ではあったものの、地下に潜っては奇襲を不規則に繰り返し、獲物が油断したところで真下から地面ごと飲み込む作戦に出る。

 すでに獲物は術中に嵌った。あとは食らいつくすのみ。勝利を確信した彼は、一体どれだけ意地の悪い顔をしていただろう。

 そうこうしている間にかれはその時が近いことを感じ取る。

 

 

 やっとだ、これでようやくエサに有りつける。

 

 

 そう思った彼がその大口で大地を抉り取った次の瞬間──周囲は爆風に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (視界...状態異常...なら..!)

 

 「メラルバ!メタングにむかって”ほのおのうず”!」

 (まずやるのは…行動の制限!)

 長考から我に返った祐希はそう指示する。その指示に驚いたのかギョッとした様子でメタングはそこから飛びのく。その直後、火の海へと地下から這い出る影が一つ──ハガネールだ。しかしその姿には先ほどまでの余裕は感じられず、その巨体に絡みつく劫火に悶えている。

 しかしその痛みがかえって彼を冷静にさせたのか、あるいは彼自身の経験によるものか。大きく見開かれたその目はあからさまな憎悪の感情と共にこちらを捉える。

 

 

 「”どろかけ”で視界を奪え!」

 (次は…視界!)

 しかしその明らかな隙を見逃してはもらえなかったようだ。指示を受け取ったミズゴロウはそれに応じハガネールの()()()()()()()()()()()攻撃を仕掛ける。

 先ほどのクリムガンとの攻防での傷も残したまま、彼の主人の頼みに応えたムクバードは炎の壁と鉄蛇の巨体を目隠しに後部へと、ミズゴロウを乗せて回り込む。

 万全の状態であれば気が付いたであろうその策は、全身を炎で焼かれ感覚器官が機能しない非常事態においてその全てを遂行した。

 しかし元来ハガネールは地中に生息する種であり、その生態上泥塗れになることなど日常茶飯時であり、まして今戦っている個体はもともと視力が悪かったこともあってその効果はいまひとつといったところであった。

 地中深くへと潜行するように体を回転させつつ突進することで身に纏わりつく炎を振り払おうとするハガネール、しかしそこへ予想外の一撃が飛び込んでくる。

 

 水流、さりとてそれまで彼の使っていた”みずでっぽう”とはその姿を異にする技──さながら水の波動とでもいうべきか。それはもとより火に苦しむ鉄蛇をさらなる混乱の渦中へと押し流す。

 ハガネールは突撃を停止しその場でもんどりうって倒れると、気が狂ったように暴れだした。

 

 「畳み掛けろ!メラルバ”ほのおのうず”!ミズゴロウ水の波動!」

 あとの展開は語るまでもないだろう。混乱から我に返れば激流が理性をまた押し返し、そこに追い打ちをかけるように火炎は鋼の肉体を溶かす。

 

 ほどなくして鉄蛇は、その姿を霧散させつつ意識を絶った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉄蛇(ハガネール)が倒されて間もなく、空を覆う靄も薄れていく。

 あのポケモン達が靄のせいで出現したかなんて今はどうでも良かった。生きているという実感で心が満たされ、己が体から力が抜けていくのを感じる。

 それは自分も彼らも同じだったようだ。この場にいる唯一の人間に至ってはその意識が闇に沈んでいる。

 そんな彼へと進化した姿を意気揚々とアピールし、結果的に彼らの主人の危機──自分の存在、に気が付いたその従者一人は敵意をこちらに向ける。

 彼に抱いていた二つの感情のうち一つはいつの間にやら消えてしまっていたようだ。己が分身に問いかけるも、返事はなく、その存在を感じとることすらできない。

 

 あのとき無意識に吸収してしまったかつての同胞は、どうやらここに至って同じ結論に達したようだ。

 

 ならばその解は一つ。彼らの主人のもとへ、いつのまにやら持っていた、どこか親近感を感じる柄のボールをその手に持ちゆっくりと近づく。そして──

 

 ピコン、カチッ。

 

 小気味のいい音とともに自分はその身をここに納めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間に自分は眠っていたのだろう。そんなことを思いながら目を覚ますと、見知った顔と新顔がこちらを上から覗き込んでいた。

 片方はつい最近知った顔である。そう、先ほどまで敵対していたメタングというポケモンだ。

 そしてもう片方はヌマクロー。ミズゴロウが進化した姿だ。先ほどの戦闘をきっかけに進化したであろうそれは、どこか不満げな態度である。

 

 「ありがとう、みんな。

──そしてメタング、これからよろしくな」

 

 そんなことを言いつつ、戦ってくれたムクバード、メラルバ、そしてヌマクローに──特に彼には多少のスキンシップとともに──労いの言葉をかける。

 するとヌマクローは胸に飛び込んできた。後に続くように感極まったほかのメンバーも同じように飛び込んでくる。

 

 「キミもおいで」

 

 その重い嬉しさを分け合っている様子を遠慮がちに見ていたメタングも、一瞬の躊躇の後、遠慮がちにその身を寄せてきた。ひんやりとした金属の冷たさはからは冷徹さなどは感じられず、むしろ理性による行き届いた配慮が身に染みるようである。

 しかし要件はそれだけではなかったようだ。先ほどからその手に持っていた書物のようなものをこちらに手渡してくる。

 

 それはモンスターボールのような絵が表紙に描かれており、時代劇に出てくるような古めかしい見た目だった。

 

 尚その中身を確認しようとしたところ、少し本気を出したメタングに締め落とされてしまったことをここに記す。

 後で聞いたところによると、どうやら自分には休んでほしかったようだ。

 

 …今度ミズキに会ったときは力の加減について教えてもらおう。




メタング(色違い)
・もともと進化前のダンバル達はどちらも色違いではなかったが、進化の際意識のない仲間を吸収したことによって彼の意識が進化後になって発現、それとともにその体色も本来の緑青色から銀色へと変化した。という設定
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