もうちょっとバトル要素を入れた方がいいのかなと思ったりします
招待状
張り詰めた空気の中、二匹のポケモンが相対している
一方は頭頂部や腕についたヒレとオレンジ色の刺が特徴的なサンショウウオのようなポケモン、しかし息が上がっており疲弊が感じられる。
片や植物のような器官をもつトカゲのような風貌のポケモンは余力十分といった様子だが、体の各所には連戦をこなしたのか小さな擦り傷が出来ている。
「仕舞です、"リーフブレード"」
「かわせ! 応戦しろ、"どろばくだん"だ!」
腕の棘葉を逆立て、目標に向かって跳躍する。振り降ろされた刃は迎撃に吐き出された泥を切り裂くも、しかし目標の姿はそこにはない。
「"やどりぎのタネ"、気持ち多めで」
フィールドに残った相手の痕跡を手掛かりに穴の中へと無数の種が投げ込まれる。しばらくして地面が盛り上がるとたまらずといった様子でそこから体中をツタに絡めとられたヌマクローが姿を現した。
「"リーフブレード"」
振るわれた刃は今度こそ正確無比に相手を捉え、戦闘不能へと追いこんだ。
「勝負ありです。ジュプトル、お疲れ様でした」
「頑張ったなメタング、しっかり休んでくれ」
労う二人と労われる二匹、そこには先ほどまでの切迫した様子は見られない
「指示が多い、回避や移動の指示は相手に情報を与えるばかりかポケモン自身への反射的行動のキレが鈍らせる。判断が悪いとは言わないけどもう少しポケモン自身に任せてみないかい?」
「うっ、でもキミは上手くやっているじゃないか」
「年季が違うのよ年季が。トレーナー歴一か月の君と私じゃ前提が別。こちとらただジムバッジ制覇してるわけじゃないの」
「ジムバッジ……前から思っていたけどそれって本当にただのバッジなのか……?」
「さあね、地方によって規格……というか効果は違うみたいだし案外バッジそのものには効果がないんじゃない? ただバッジを多く持ってるトレーナーってのはそれに応じて長く連れ添った強いポケモンを連れてるからそういうのを自然と感じてるんじゃない? マーキングみたいな縄張り意識がポケモンの間にもあるのかもね。ほら、残りの子も出しなよ」
事の発端は発案はミズキからだった。
「そういえば、さ。現状この世界にはポケモントレーナーってどのくらいいるの?」
ドライヤーで髪を整えながら彼女はそんな疑問を投げかけた。普段使わないのでしまっておいた整髪剤を勝手に持ち出してくるあたり、最初の申し訳なさはすっかりとなくなっているようだ。
「そうだな……その言葉の指す対象にもよるけど、現状一般向けに広くモンスターボールが配布された。という話は聞いたことがないし……たぶんこうやって個人でポケモンを所持してるのは俺達だけ……だと思う」
一緒に暮らしてみて少しずつ彼女のことがわかってきたような気がする。
まず精神面だ。この点については幸か不幸か見た目と同じく年相応、悪く言えば自分と同じ程度である。といったろころだろうか。それとなく彼女に問いかけてみると、どうやら向こうの世界での教育機関に通っていた、という情報を得ることができた。
次に生活習慣について。昼夜ともに活発であり本人曰く”決まった時間に就寝を行うようにはしている”が実際はどうなのかわからない……時々、所用で深夜起きると決まっていつも起きてくることが多く見られる。
そして特筆すべきは物音や温度の変化に対する反応、何事においても他の相手に悟られずに行動を実行しようとする秘密主義の二点といえる。この間は温度の変化について寸分違わず温度を言い当ててみせたことがあった。それ以外にも、時折パソコンの履歴に見慣れない単語が乗っていることもあり、その点について問い詰めると”授業の内容を考えていた”という回答が得られた。
総合的な観点で彼女という俯瞰した場合、人格面では大きな瑕疵はみられないように感じるものの、警戒心が強いように感じる。というのが結論だ。
(それにしてもどうしてこうも無防備なのかなぁ)
それだけ自分が信頼されているということか、あるいは単に自分が歯牙にもかけない存在であるのか。そんなことに頭を悩ます天戸祐希、16歳であった。
「というわけで、これからはバトルについて実践的に学んでいこうかと思います」
「拒否権は……」
「ないです」
「あ、ない……でも急だな、何か事情があるのか」
さて、どこまで話せばよいものか。
ポケモントレーナーの定義をポケモンを、「モンスターボールを仲立ちとしてポケモンを所持し、両者の間で信頼関係を構築している者」とするならば、この世界においてトレーナーは現状二人だけといえる。
しかしながら、シンオウ地方がまだヒスイ地方と呼称されていた時代、当時はモンスターボールが広く普及していなかったにも関わらず、強力なポケモンを多く従えていた存在がいた、という朧げな記憶を頼りにすれば、それはこの世界においても例外ではないだろう。
無論ポケモンという存在が歴史の中でどれだけ影響を及ぼしていたか、という差異を鑑みれば可能性はかなり低いだろう。
しかし、なればなぜここまで日本という国はポケモン、あるいは既存の生物の多くと彼らが入れ替わりに出現したことによる影響を受けていないのだろうか。
現在の自粛解除というこれまでの政策とは180度異なる方針での、ポケットモンスターへの対応。未曾有の危機に対して災害というよりも害獣と見る反応が多くなったことも気になる。
単に政策が追い付いていないだけならまだしも、もし政府にポケモントレーナーがいる場合、それがどのような意図を以て行動しているのかがわからない以上、こちらも手放しに彼にトレーナーとしての基礎を叩き込むだけ、というわけにはいかない。
そのためには彼にはバトルについて、特に対トレーナー、対多人数戦について学んでもらわなくては。
そう思った私は、急遽、このような形でバトルをすることになったわけだ。
「安心してよ。なにも初心者狩りをしようだなんて思ってはいないからね。こっちに来てから新しく捕まえた子達の練習相手になってほしくてさ」
「そのボールは……?」
そういって取り出してみたボールは向こうから一緒にいた子達のボールとは異なりクラシカルなものだ。
外装は木材や植物由来─俗にぼんぐりと呼ばれる果実─でできており、ボールの真ん中に走る黒いラインは代わりに金属製のファスナーのようなあしらいが為されている。赤いレドーム状のパーツにはその頂点に金属でできたノズルのようなものがすこし飛び出ている。
「ああこれ? 作った」
「作った」
「っていうのは半分嘘、あの本に書いてあった通りに材料とかはどうにかしようとしたけど一応工業製品だからね、当然のように加工された金属とか要求されてて参ったよ。文字通り木型ってところかな。まあでも」
いつものように投げるのではなく前に突き出してボタンを押す
「でてきて、みんな。こんなふうに持ち運び自体はできるよ、強度は保証しないけどね」
「チルチルッ!」
「ジュジュッ」
出てきたのは綿のような羽を持つ鳥ポケモン、チルット、そしてキモリが進化した姿であるジュプトルの二匹
「そういえば時々夜遅くまで起きてたけどあれは……」
「そうだね、コレを作ったりテストしたりしてたの捕まえられるかどうかの」
「言ってくれれば協力したのに……」
残念そうに呟く彼に対して私はこう苦笑交じりに答えた。
「ごめんね、住まわせてもらってる分際で負担をあまりかけたくなかったんだ」
「前々から思ってたけどそういうところで変に気張るのよくないぞ……」
不機嫌そうな声色でそう言った後、バトルをすることになったのだが、
「そこだムクバード! 飛び上がれ!」
「メラルバ、後ろに飛んで"ひのこ"!」
「メタング、右にかわして"バレットパンチ"!」
とにもかくにも指示が多いように感じた。熟達したトレーナーにとってはそれは十分に次の一手を読み切る材料になりうるし、賢いポケモン相手では回避や攻撃のパターンを掴ませることになりかねない。
「その点はおいおいやるかぁ……」
ただポケモンとの信頼関係は十二分に築けているようだった。その点は手放しに誉めたいところだ
「まぁトレーナー初めたてなら十分じゃない? その子らとも関係はわりと良好みたいだし、指示にちゃんと従ってくれるっていうのはそれ以外と呉べれば悪いことじゃないからね」
リザードンなんて進化前のヒトカゲのときは見向きもしてくれなくってさー、試合中に眠ったり勝手に技使ったりなんてしょっちゅうだったよ。
そんなことを話していると
「そういえばミズキ、家に泊めるときなんて言って頼んだか覚えてるか?」
「ちょっと懐が寂しくなってきたから、でしょ? 覚えてる覚えてる」
実際はそれ以外にもテント暮らしに飽きてきたこと(というよりこれから秋になるので防寒対策がおざなりだから)、あのときのようにポケモンの大量出現があった場合身のリスク、という二点。そして手持ちのポケモンの食費、という三つの内訳があるのだが。
「そうか……ならこういうの、興味はないか?」
「んー? なになに?
リサーチフェロー?」
そういって差し出してきたスマホの画面にはその概要とそれを募集するという旨が書かれていた。
「果たして釣れてくれるかどうか、だな」
”向こう側から来訪者が来る”
そんな爆弾を先日落とされた私はその対策としてエサをばらまくことにした
今しがた出してもらったリサーチフェローを募集する旨も、表向きはポケモンという存在を広く一般に普及させるという大義名分を持たせたものの、裏の理由は相手の素性を収集するためのものだ。
「なにより相手はこの世界にきて幾ばくも無い」
「ということはこれに乗っかるしかないだろう、と考えたロトね、随分と短絡的ロト」
「うるさい、それに実際はポケモンを多くの人にとって身近な存在にしたいっていう思いは本当のことだ」
実際これは半ば博打のようなものだ、こちらに来てて間も無いのならば警戒心は高いはず。こんなものに参加するとは到底思えない。
「どんな人なんだろ、いい人だといいなぁ」
「バナァ」
私はフシギバナに蔓で持ち上げられながら、そんなことを考えた。
転生者二号ちゃんの手持ち
・フシギバナ
・キュウコン(アローラのすがた)
・?????
・?????
・?????
・????
ミズキの手持ち
・リザードン
・ヌメルゴン(ヒスイ)
・ドラパルト
・?????
・?????
・?????
こっちに来てからの手持ち
・デンチュラ
・キモリ→ジュプトル
・チルット
祐希の手持ち
・ミズゴロウ→ヌマクロー
・ムックル→ムクバード
・メラルバ
・メタング(色違い)