殆ど流れは一緒ですが読んでもらえたら嬉しいです。
パウロがシズさんの説教を受けた翌日。
リムルとフォルテはそれぞれ嵐牙、ゴスペルが引っ張る
ソリに乗って砂漠を移動していた。
「お前達のお陰で、予定より早くコリウス王国に入る事が出来たな、嵐牙。」
「ゴスペルも相変わらず良い走りだ。」
「お褒めに預かり光栄です、我が主。」
「主の為ならば、どの様な場所でも進んで行きましょう。」
本当に頼りになるな。
「…にしても、まさか生まれ変わって砂漠を見る日が来るとはな。」
前世だと、テレビ番組のツアーなどでエジプトのサハラ砂漠などを見たことがあるが、こうして実際に砂漠を進み体感すると違うなとフォルテは思った。
「…交易路って感じじゃないな。盗賊や魔物と出会した時は、自分達でどうにかしろってわけか。」
「そういえば、シズさんはコリウス王国に行った事はあるのか?」
「一度だけ依頼で行った事はあるよ。」
リムルとシズさんと、そんな話をしながら砂漠の中を進んでいく。
しばらくは順調に進んでいたが、途中でパウロが戦闘する事に。
「この俺は、空拳のパウロ。命が惜しければ、黙って去りな!」
「素手で戦うようですね。」
「構えは中々しっかりしている様だ。」
「相手が盗賊ならいいよ。でも……」
「まさか
パウロなら倒せるだろうが、
「油断はするなよ。」
フォルテは一応注意するように声を掛ける。
「安心しな。俺の力を見せてやるぜ!」
だが、パウロはフォルテの言葉をまったく理解しておらず、なんと
「ちょっ⁉︎待て!」
リムルが声を上げるが間に合わない。
「へい!ナックルーークラーーーシュ!」
パウロの拳が
その一撃で顔面を陥没させて倒したが、……猛毒も飛散しパウロの顔面に掛かった。
「あああぁーっ!目が、顔が熱い!ぐああああ〜!」
強酸によりパウロの顔は焼け爛れ、その苦痛に踠き苦しむ。
そんなパウロの姿に、リムルとフォルテは呆れながらも近寄る。
そして、リムルが
「え?こ、これは?」
突然、痛みがなくなりパウロは戸惑いながらも起き上がる。
「座れ。」
「お、おう。リムルよ、助かったぜ。」
「いいから、黙って座れ!」
パウロはリムルに礼を言うが、反省している様子は全く無い。
そんな姿を見てフォルテは圧を掛けながら声を上がる!
「は、はい!」
その圧に、パウロは怯みながらすぐさまその場で正座する。
「人の言う事を聞け、無茶をするな。出来る事を確実にやれ!」
「リムルの言う通りだ。それに、何処からどう見ても毒で体を覆っている相手に対して真正面から戦ってどうする!ああいう敵を素手で相手するなら、毒に覆われていない下腹部分を攻撃すれば良いだろ。もっと良く相手を見てから行動しろ。」
「……はい、すみませんでした。」
リムルとフォルテの説教にされ項垂れるパウロだった。
その様子を、シズさんは苦笑いを浮かべながら見ているのだった。
その後、しばらく進み夕方になったので、一旦休憩を取る事にした。
その際、焚き火で暖を取りながら、パウロの話を聞いた。
「元々、体術と棒術が得意なんだ。」
「だったら、武器を使えよ。」
「使ってた木の棒が折れちまってな。」
「新しいのを買え!」
「素手で十分、ふんっ!」
そう言いながら、立ち上がってシャドーボクシングをするパウロ。
「それで痛い目を見たのは誰だ…。」
あれだけ説教したのに全く懲りてないパウロの姿にリムルとフォルテは溜め息を吐くのだった。
「はぁ、お前な、大サービスだぞ……。」
そう言って、リムルは西遊記の悟空が使う如意棒の様な見事な棒を取り出した。
「おぉぉ〜!」
「ほい!」
リムルはその棒をパウロに渡し、受け取ったパウロは棒を振り回しながら見事に使い熟して見せる。
「すげぇ、すげえよコレ!」
やはり、実力はあるな。
「俺からも、これを渡しておく。」
フォルテが取り出したのは、水色の鱗で作られた籠手だった。
「試してみろ。」
フォルテにそう言われ、今度は籠手を試すパウロ。
「コレもすげえ!軽いし手に馴染む!」
気に入った様で、何度も拳を振るうパウロ。
パウロに渡した籠手は、
「ついでにこれも持っておけ。」
「大切に使えよ。」
リムルとフォルテはそう言って
「わかったぜ、リムル、フォルテ…いやリムルさん!
フォルテさん!」
こうして俺達は、パウロに懐かれた。……必要以上に。
そして、十分休息とり再び出発するリムル達。
「見えてきました、我が主!」
「あれがコリウス王国…。」
「コリウスの首都、ハーバリアか。」
オアシスを中心にして発展した街で、夜でも賑わっている。
そんなコリウス王国に入ったリムル達は、ジェフ先生が紹介状を書いてくれたアマディ侯爵家に向かった。
侯爵家に着くと、筋骨悠々たる門番とおもしき二人の男が立っている。
そして、二人の従女を連れた金髪の美しい女性が出迎えてくれた。
(…どこかで見た様な顔だな。)
「姉がお世話になりました。」
「姉?」
「…もしかして、ウラヌスさんの妹さんですか?」
「そうです。」
どうりで、見たことある様な気がした。姉のウラヌスさんに似ているからだ。
となると、ジェフ先生はコリウス王国の事を知って俺達が行く様に仕向けたのかもしれないな。
「シフォン・アマディと申します。ジェフ・シーガル伯爵の妹にして、我が夫・バラク・アマディの第一の妻ですわ。」
シフォンさんが自己紹介して下さったので、リムル達も自己紹介をしようとしたが、パウロが先に声を上げた。
「パウロです!これでも俺、A−ランクの冒険者なんですよ。」
(……優樹に敬意を持つように言われていたのに、何やっているんだパウロ。)
優樹に言われた事を忘れ、敬意も礼儀もなく自慢げに言うパウロに頭を悩ますフォルテだった。
「まあ、それは素晴らしいですわね。是非とも当家でオモテナシさせて下さいませ。」
「はい!」
「………お客様をお連れして。」
笑みを浮かべていたシフォンさんだが、この瞬間だけ笑みが消え目線を門番向けると、門番二人はパウロを抱えられた。
「え?え?……え?」
そして、そのまま何処かに連れて行かれるパウロだった。
「主人が待っております。どうぞ、こちらへ。」
パウロが連れて行かれるのを、呆然となって見ていた
リムル達に、何事もなかったかの様にシフォンさんはそう言うのだった。
シフォンさんに連れられアマディ侯爵の元に。
そのまま夕食をご馳走してもらい、シフォンさんがリムルのグラスにワインを注ぐ。
フォルテとシズさんも、従女達にグラスにワインを注いでもらった。
「アマディ侯爵閣下、で宜しいでしょうか?」
リムルは対面している筋骨悠々たる剛毅な男性…バラク・アマディに話し掛ける。
「バラク、で構わんよ。貴殿達は妻の恩人、つまりは俺の恩人である。遠慮は不要だ。」
「ところで、パウロはどうなったのでしょうか?」
「あの男は武人だが、品がない。リムル殿達の連れだから屋根は貸すが、贅を尽くして供する謂れはない。」
「御安心を、食事は用意させておりますので。」
「まあ、それなら問題ないか。」
「そうだな。」
「うん。」
バラクさんの言う通り、パウロは品がないからな。
その後、バラクさん達と共に夕食を食べるリムル達。
その際、フォルテとシズさんはちゃんと仮面を外して食べている。
やがて、食事を終え従者の人達が皿を片付けると、バラクさんが口を開く。
「さて、腹芸は好まぬ。貴殿らは、シフォンを連れ戻しに来たのかな?」
「え?」
「ん?」
「シフォンさんを?」
バラクの質問に、リムル、フォルテ、シズさんは首を傾げながらシフォンさんを見ると、シフォンさんは気不味そうな表情を浮かべいた。
「ああ、そう言う事ね。」
「ジェフ先生から頼まれて、シフォンさんを迎えに来たと思ったのだな。」
ジェフ先生の事を一番良く知るシフォンさん達からすれば、そう思われてもおかしくない。
「違うのですか?兄はああ見えて、身内にはとても優しい方ですので……。」
「ええ。違います。」
「ふむ。だとすると、
シフォンさんを連れ戻しに来たのではないと分かると、バラクはリムル達がこの国に来た理由をすぐに察した。
「我が国は、最果ての守りの任を負う代わりに、各国から援助を受けています。安全保障上、今の状況を思わしくないと考えているはず。」
「正解ですよ。俺達の目的は、ギルドがどちらに与するか調査する事。」
「アスラン殿下の独立宣言を黙認する事は出来ないが、状況次第では手を組む事をギルド本部は考えているそうだ。」
「ふむ。俺の立場からしたら、それは歓迎出来ん話だな。」
リムル達の話に、バラクはそう口を開いた。
「夫は、サウザー王太子殿下の腹心ですので、御容赦下さいませ。」
「それは当然の事だと、俺達も分かっている。」
「ただ、私達は判断する立場ではないの。」
「その点はご理解して頂けますか?」
フォルテとシズさんとリムルはそう答える。
「無論だ。貴殿達の行動を邪魔もせぬし、むしろ協力しようと思う。明日、サウザー様にお目通ししよう。あの方と接すれば、貴殿達も正しい解答が得られるだろう。」
「それは有難い申し出だが、遠慮させてもらおう。」
「俺達の立場的にも問題になりますから。」
「そうか、残念だが無理強いはすまい。」
「それでしたら是非、ゼノビア王女にお会い下さいませ。」
シフォンさんがそう声を上げる。
「ゼノビア王女殿下?」
「アスラン殿下とサウザー殿下の妹君です。ゼノビア様は今、病にふせっていらっしゃいますの。リムル様とフォルテ様は高名なお医者様だと、兄から聞き及んでおります。あの人を褒める事が滅多にない兄が、〝ウラムスが助かったのは、リムル先生とフォルテ様のお陰だ〟と。きっと、快癒の手立てが見つかると存じますわ。」
『これは…断れないよなフォルテ…。』
『そうだな。』
リムルとフォルテに必死に頼むシフォンさんに、二人は承諾した。
翌日、リムルとフォルテはパウロに、ギルドの調査に行く様に話していた。
「でもよ、俺は調査とかした事ないぜ?」
「いいから行け。ギルドの酒場にでも行って、話を聞くんだよ。」
「それで、適当に愚痴でも言っていればいい。」
「愚痴?」
「ああ。貴族の知り合いの護衛で此処まで来たが、ワガママな上に偉そうで困っているなど、適当に言えばいい。」
「なるほど!」
フォルテの説明を聞き、理解したパウロ。
「分かったなら、さっさと行ってこい!」
「うぐうぐ……ぷっはぁぁぁ‼︎任せてくれ、リムルさん、フォルテさん‼︎」
リムルに行くように言われ、グラスの水を飲み干してから、グラスを俺達に渡してギルドへと走って行くパウロ。
パウロが走って行くのを見届けるリムルとフォルテ。
「蒼影、居るか?」
「シャドーマンもだ。」
「「此処に。」」
二人の呼び掛けに応え、二人の影から姿を現す蒼影とシャドーマン。
「パウロを尾行して、話を全て聞きとってくれ。」
「護衛も頼んだぞ。」
「承知!」
「お任せ下さい。」
リムルとフォルテの命に応え、蒼影とシャドーマンはその場で分身体を生み出し、本体は二人の影に戻り、分身体達はパウロを追うのだった。
そうして、俺達はゼノビア王女殿下に会いに向かったのだが………。
「そりゃ、後宮は男子禁制だろうけどさ。」
「…まさかこんな服装を着るとは。」
「お似合いですよ。」
そう。リムルとフォルテは女装させられているのだ。
シズさん似であるリムルはまだ分かるが、ゴスペル首領の姿をしているフォルテまでもが女装する事に。当然ながら仮面は外している。
顔も整った美形故に、化粧を施されてしまった。
そんな二人の姿を見て、シズさんはふふっと含み笑いをしていた。
仕方ないと色々諦めて後宮を進みゼノビア王女殿下の元に向かっていると、ゼノビア王女殿下の部屋の方から、二人の従者を連れた医者らしき男性がこちらに向かってくる。
その者の姿を見たシフォンさんは、小声で俺達に話し掛ける。
「少し不快な思いをすると存じますが、何卒御容赦下さいまし。」
「これはこれは、侯爵夫人。ゼノビア姫の御見舞いですかな?」
「ええ、グスタフ侍医長殿。」
(侍医長……何か妙な気配を感じる気がするな。)
フォルテはグスタフから、言葉に出来ない不穏な気配を感じた。
「それはそれは、後程私の所に寄ってほしいものですなぁ。健康状態をお調べいたしますぞ。」
「侍医長殿のお手を煩わせるなど、恐れ多い事で御座いますわ。」
「ぐっふっふ、遠慮は無用ですぞ。」
グスタフとシフォンさんが会話続けいると、グスタフがリムル達に気付いた。
「そちらは?」
「リムル様とフォルテ様と仰るのですが、とても珍しい薬を持参しておられますの。少しでも、姫様の為になるならばと、無理を言って来て頂いたのです。」
それを聞いたグスタフは苛立ち声を上げる。
「下らん。何処の馬の骨とも分からん詐欺師を呼び込むとはね。不愉快だ。陛下に奏上し、貴女方の愚かさを罰してもらわねばなりませんな!」
グスタフはそう声を荒げながら、俺達の間を割って入りながら去っていった。
「大丈夫なんですか?」
「あんな事を言っていたが。」
「平気よ。さ、行きましょう。」
グスタフが去った後、リムル達は改めてゼノビア姫の部屋へと向かった。
部屋の中に入ると、部屋の中には美しい薔薇の様な花が咲いている植物が沢山あり、その中央にベットが置いてあり、従女二人が植物の世話をしていた。
そのベットの上には、目を閉じた女性が居た。
すると、女性はリムル達の気配に気付き口を開く。
「あら?どなたかしら?」
「良かった、起きておられたんですね。ゼノビア様、本日は招待したい方達をお連れしましたの。」
「その声はシフォンね。貴女が誰かを紹介したいとは、珍しいわね。」
そうベットに居るこの女性こそが、コリウス王国の姫であるゼノビア姫だった。
(この姫様、目が見えない様だな……。)
フォルテはずっと目を閉じているゼノビア姫の様子を見てすぐに気付いた。
そんな中、シフォンさんがリムル達の紹介をする。
「こちらは、リムル様とフォルテ様ですわ。私の姉を治療して病を癒して下さった、とても素晴らしい緒方達ですの。」
「ただいま紹介にあずかりました、リムルと申します。」
「同じく、フォルテと申します。本日は我々に、姫様を診察する許しを頂ければ、と。」
二人はゼノビア姫に向かって頭を下げる。
「よろしくてよ。でも、痛いのは嫌なので、優しくお願いしますわ。」
(年齢は18才と聞いてはいたが、そうは見えない。そして、化粧で誤魔化している様だが、あまり食事は摂ってはいない様だな。)
フォルテはゼノビア姫に対して解析鑑定を行って状態を確認していた。
リムルも、大賢者からゼノビア姫の状態を聞いていた。
「奇遇な事に、私達も痛いのは苦手です。」
そうリムルは言って、ゼノビア姫の隣へと移動するリムルとフォルテ。
「では、失礼致します。」
フォルテがゼノビア姫の手を取り診察を開始し、再び解析鑑定を行う。
(………鑑定結果は問題ない。異常が無いと出ているが、どう見てもおかしい……。)
《原因は不明。血液を摂取して、成分を調べる方が良い。》
『任せたぞリムル。』
『分かった。』
フォルテ下がり、次にリムルがゼノビア姫を診察する。
その際、リムルは自分の指から極小の針を出現させ、さりげなくゼノビア姫の腕から血を採取した。
その後、リムルは診察を続けながら、大賢者が血液の解析を実行。
解析結果は、
《大賢者からの血液検査が届いた。やはり、極度の栄養失調による衰弱状態だった。》
(やはりそうか。……鑑定では異常が無いと出たが、何かによって鑑定が妨害されている様だな。)
《原因は現状不明。対症療法として、アピトの蜂蜜を薬として提供する事を推奨する。》
なるほど。ウラムスさんの病も、本来ならアピトの蜂蜜を摂取するば完治する筈だったからな。
(それにしても、…あのグスタフって侍医長は怪しいな。)
ゼノビア姫のこの状態がもし、あの侍医長の仕業だとしたらとフォルテは考えながらアピトの蜂蜜を取り出した。
「こちらが薬となります。」
「これは万能薬です。毎食後に服用なさって下さい。」
「……苦いのは嫌ですよ?」
フォルテとリムルが蜂蜜を出しながら言うと、ゼノビア姫は心配そうに言う。まぁ、誰しも苦い薬は嫌なものだ。
「私達の大好物で御座います。毒味してもらって大丈夫ですので、感想をお聞きになって下さい。」
そうして、従女の一人が毒味として蜂蜜を口にする。
「…まあっ!」
従女はアピトの蜂蜜の美味しさに歓喜の声を上げた。
「紅茶に入れて飲むのも美味しいですよ。クッキーやケーキにかけるのもアリかな。」
「…リムル。」
「…口調。」
リムルの口調が崩し出したので、フォルテは軽く肘打ちしながら、シフォンさんと注意する。
「あ、美味しいかと存じます。」
そして、従女の方が紅茶にアピトの蜂蜜を入れゼノビア姫に渡し、ゼノビア姫はゆっくりとその紅茶を口にする。
「まあ、美味しい!」
ゼノビア姫もアピトの蜂蜜の美味しさに歓喜した。すると、ゼノビア姫に変化が起こる!
「……眩しい。」
ゼノビア姫の閉ざされていた目が開いたのだ。
そして、開かれたゼノビア姫の目に映ったのは、リムルとフォルテの美しい顔だった。
「リムル……様?……フォルテ………様……?」
「ふふっ。」
「ああ。」
「リムル様。フォルテ様。」
ゼノビア姫の視力が回復したのだ。
「シフォン、見える……見えますわ!」
「姫様!」
ゼノビア姫の視力が回復した。それを目の当たりにしたシフォンさんはゼノビア姫に駆け寄り、従女達は涙する。
シズさんも良かったと呟きながらゼノビア姫を見ていた。
アピトの蜂蜜…やはり素晴らしい効能だ。
そして、ゼノビア姫はリムルとフォルテに向かって感謝の言葉を述べる。
「リムル様、フォルテ様、ありがとう……ありがとう御座います!」
リムルとフォルテは感謝の言葉を聞きながら、笑顔を浮かべるのだった。
ゼノビア姫の目が見える様になったその日の夕方。
修練場にて二人の男が剣を交えていた。
「は! ふん! はぁ!」
「ふっ! はあ! せぃや!」
二人の戦いは激しく、周囲の者達は見入っていた。
そして、金髪の青年の一撃が決まり、相手の剣を弾いて勝負は決まった。
「だいぶ良くなったぞ。精進を続けろ。」
「は!ありがとう御座います。」
「アスラン殿下。」
金髪の青年が相手を労いながら笑顔を浮かべた丁度その時、紫の髪の男が駆け寄る。
金髪の青年…彼こそが、コリウス王国の王子である
アスラン殿下だった。
「カールか、どうした?」
「例の商人を捕えました。」
「本当か?」
「えぇ、これで動かぬ証拠が……。」
カールと呼ばれる男が、アスラン王子に何やら話していると、配下の1人が慌てながらアスラン王子の元に駆け寄る。
「殿下!」
「ん?」
配下の者は、その場で跪いてアスラン王子に報告する。
「申し上げます!ゼノビア姫が!」
「⁉︎どうした?何があった?」
「突然病状が回復なさり、視力も戻られたとの事です。」
その様子を、柱の影から蒼影とシャドーマンが見ていた。
その夜、リムルとフォルテは蒼影とシャドーマンの報告を聞いていた。
「アスラン王子ですが、自分ならば、勝率は五割、といったところでしょう。」
「拙者も同じといったところ。」
「マジか?正直舐めてたな……。」
鬼人である蒼影と、
「紅丸とカーネルならどうだ?」
「一切の制限がなければ。」
「アスラン王子…噂に違わぬ実力なのは間違いないな。」
「ふむ……どんな人物だった?」
「豪気で、仲間思い。覇者の風格を備えた、好青年という印象を受けました。」
「なら、アスラン派を推すのが正解かもしれないな。」
蒼影とシャドーマンの話を聞いたフォルテはそう考える。
「パウロの方はどうだった?」
リムルがパウロについて蒼影に聞くと、蒼影は顔を顰めながら口を開く。
「……酒場に入るなり酒とツマミを頼み、リムル様と
フォルテ様の悪口三昧でした。」
「悪口?」
「はい。」
蒼影とシャドーマン曰く、パウロはこう言っていたそうだ。
『ガキの癖に生意気でよぉ、人使いが荒いわ、ケチだわ、な〜にが我が主だ。もう1人もずっと仮面を付けて、何考えているか分からない怪しい奴だわ。』
………っと言っていたらしい。
「「ほっほ〜う。」」
それを聞いたリムルとフォルテは、パウロに呆れるのだった。
シズさんは苦笑いを浮かべていた。
「ですが、そのお陰で疑われてはいません。」
「一応、予定通りではあるわけだ。」
「なら、俺達は一つ用事を済ませてくる。お前達は引き続き、パウロの監視を頼む。」
「承知。」
「御意。」
フォルテの言葉に従い、蒼影とシャドーマンは再びパウロの監視に向かった。
「じゃあシズさん、少し行ってくる。」
「うん。リムルさん、フォルテ君、気を付けてね。」
リムルとフォルテは目を閉じ、意識を分身体へと移した。
こんな事もあろうかと、後宮ないの分身体を潜ませていたのだ。
フォルテの分身体は常に
ゼノビア姫の部屋の窓際まで近寄ると、指先から超小型
キラーズアイを放って部屋に潜入させた。
キラーズアイの目とリンクさせ部屋の様子を見ると、ゼノビア姫と従女の姿がなかった。
どうやら、食事か風呂にでも行っている様だ。
すると、リムルがスライムの特性を活かして鍵穴から部屋に侵入してきた。
本当に便利な体だな。
リムルも俺のキラーズアイに気付き、そのまま部屋に侵入し近くの棚の下に隠れた。
俺も、キラーズアイを近くの薔薇に潜ませてから、意識を本体に戻した。
そうして再び目を開けると、視線の先にはソファーに寝べりながら嵐牙とゴスペルがこちらを見ていた。
「ハッハッハッハッ!我が主達よ、怪しい者は近付きませんでした!」
「おお、警護ご苦労さん。」
「ゴスペルとシズさんもありがとう。」
「ううん。気にしないで。」
「主達の為ならば当然の事。」
こうして、ある程度のことを済ませたリムル達は、バラク達と一緒に夕食を食べていた。
しばらく食べていると、バラクが嬉しそうに口を開いた。
「それにしても……クックック、あの侍医長が悔しがる姿が目に浮かぶわ。」
「姫様が快復されたならば、あの者の栄華もこれまでですわ。」
バラクとシフォンがそんな風に会話をしていた。
(あの侍医長、色々とやっていそうだったからな。………このまま黙っているとは思えない。)
フォルテがそう考えている時だった。
「旦那様! 旦那様!」
バラクの従者が、声を上げながら慌ててこちらに走ってきた。
「何だ、騒々しい。」
「ほ、報告します!表玄関にアスラン王子が訪問されておられます!」
何と、アスラン殿下がやって来たと言うのだ。
「こんな時間に?」
シフォンさんも、こんな夜に訪問して来たことに不思議と感じていた。
それに対して、バラクは冷静に考え何故アスラン王子が来たのかすぐに気付いた。
「ふむ、目的はリムル殿とフォルテ殿だろうな。」
「え?」
「やはりそうか…。」
バラクの言葉にリムルは首を傾げるが、フォルテはバラク同様に気付いていた。
「……なるほど。姫様を癒したリムル様とフォルテ様に、感謝されておられるのかも。」
「でなければ、敵対派閥である俺の家に、やって来たりはせぬだろう。お通しするが、宜しいかな?」
「うん。」
「ええ。」
リムルとフォルテは頷いた。
しばらくして、アスラン殿下が現れた。
「スマンな、夜分に失礼するぞ。」
「久しぶりだな、アスラン殿下。剣の腕は鈍っておらぬだろうな?」
「ハッ!俺に指導した事があるからと、偉そうに申すでないわ!」
バラクとそんな会話をしたアスラン王子は、すぐにリムルとフォルテに目を向け歩み寄る。
「リムルとフォルテと言ったか、妹を救ってくれて感謝する。」
そう言って二人に頭を下げるアスラン王子。
その行動に、リムルとフォルテはもちろん、バラクと
シフォンさんも驚いた。
(アスラン王子。…蒼影とシャドーマンからの報告を聞いてはいたが、人柄も良い人物の様だ。)
フォルテはアスラン殿下が善き人物であると改めて理解した。
そして、アスラン王子は口を開く。
「妹を含めて俺達は仲の良い兄弟だったんだ。いずれ兄貴が王になった時、軍務卿になって支えるつもりだった。だが…。」
「……何かあったのですね。」
「兄貴………サウザー王太子は変わってしまったのだ。
三年前病に倒れてからというもの、ゼノビアの病状は悪化を続け、目の光まで失う始末。俺も兄貴も焦ったが、グスタフにもどうしようもないと言われてな。これが本当に病だったのなら、運命だと思えただろうさ。」
「違う、とでも?」
アスラン王子の話を聞いていたバラクはそうアスラン王子に問う。
どうやら、アスラン王子はゼノビア姫の病について何か掴んだ様だな。
「バラクよ、近頃陛下と面会が叶った事があるか?」
「……いいえ、御座いませんな。」
「どう言う事何だ?」
陛下…この国の王と会っていない?
アスラン王子とバラクの会話にリムルとフォルテが不思議に思っていると、シフォンさんが口を開いた。
「国外に情報が漏れぬよう、隠し続けておりましたが、国王テドロン陛下も、病に臥せっているのです。」
「面会が叶うのはグスタフのみ。ありえんだろう?息子である俺が、父王陛下に御会い出来ぬなどと!」
「確かに、…それはおかしい話だ。」
「そう言えば、俺も。いや、言われてみれば、なぜ今まで陛下に会えぬ事を疑問に思わなかったのか?」
フォルテもおかしいと思う中、バラクもその違和感に今気付いた様だった。
「そうだ。それを重臣である貴様らが不自然だと感じておらぬ事こそが、この国の末期的状況を証明しているのだ‼︎」
アスラン王子の言葉に拳を強く握り締めるバラク。
だが、アスラン王子は更にとんでもない事を口にする。
「なぜ今まで黙っていたか不思議か?何、簡単な事よ。ゼノビアだけでなく、我が敬愛する兄君までもグスタフの手に落ちていたからだ。」
「なっ⁉︎その発言、いかに殿下と言えど聞き捨てなりませんぞ。」
「アスラン殿下は、サウザー王太子が黒幕だと御考えなのでしょうか?」
アスラン王子の言葉に声を上げるバラクとシフォンさん。
「貴様らも考えてみよう。病弱だった兄上が、突然別人のように力強くなったのが三年前なのだぞ。無関係だとは思えんだろうが?」
(三年前……ゼノビア姫が病に倒れたのと同じ頃か。)
(確かに、…何か関係があるかもしれないな。)
アスラン王子の話を聞いて、リムルとフォルテはそう思った。
「恥じるでないぞ。貴様達は、そう思い込まされていたのだ。兄上の〝
「
「そうとも、
確かに
「ですが、サウザー王太子は陽光の下で平然と活動なさっておられます。」
「
「では殿下は、グスタフ侍医長が
「いや、兄上は
「
「そんな物があるのか?」
確かに、ラノベなどで吸血鬼の血を呑んだら吸血鬼になる設定が幾つあったが、実際にそんなものがあるとはな…。
「我が古き友…カールがな、この事件が一国の王位継承争いなのではなく、魔王ヴァレンタインによる人類防衛圏の破壊工作なんじゃないかと疑っているのだ。」
「……魔王。」
(壮大な話となったな。にしても魔王か、……ミリムに
カリオンにクレイマン…そしてラミリスときて今度は
ヴァレンタインとは、俺達は魔王と関わる事が多いな。)
フォルテがそう考えていると、突然バラクが気合を入れて凄まじい
「ヌウウウンッ‼︎ハァ…まさか……この俺まで
「ほう、
(どうやら
フォルテは、バラクの
そして、バラクは
「むざむざと魔の者の手に落ちていた、この愚か者をお許し下さい。」
「あなた…。」
「シフォンよ、俺の手を取るがいい。」
そう言って、シフォンさんの手を取り再び
どうやら手を取っているなら他者にも使用可能の
「私達が
「もっと早く打ち明けて頂ければ……。」
「証拠を得るまで言い出せずにいたのだ。」
「決定的な証拠があるのですな。」
「
「おおっ!」
証拠も用意出来ているのか……だが、物事が上手く進み過ぎている様な気が……。
フォルテは事が上手く進み過ぎている事に違和感を感じた。
すると、アスラン殿下がリムルとフォルテに再び話しかける。
「リムル殿、フォルテ殿。改めて感謝する。貴殿らの薬があれば、ゼノビアが
「王女殿下は
「俺もそう思いたい。ともかく、優先すべきは逆臣グスタフを討つ事よ。」
「このバラク、微力ながらお力添えさせて頂きたく存じます。」
「期待しているとも。準備が出来次第、王宮へ攻め込む。グスタフを討ち、ゼノビアを救い出す。」
こうして、アスラン殿下が何を思って
だが、……やはり物事が進み過ぎている気がした。
リムルとフォルテは部屋に戻り、分身体に意識を再び移した。
その瞬間、凄まじい寒気が二人を襲った。
「ッ⁉︎…この寒気は一体⁉︎」
《凄まじい
「一体誰がこれ程の
《この場で解析鑑定を試みた場合、こちらの存在がバレる確率は60%だ。》
「……なら辞めておくとしよう。」
フォルテは危険は犯さず、鑑定を諦めキラーズアイに意識を移した。
キラーズアイの目に映ったのは、ゼノビア姫の手を取り安堵の表情を浮かべる青年の姿だった。
その顔立は、アスラン王子に似ている。
「ああ、ゼノビア。アスランが君を苦しめていたのに、私には何も出来なかった。不甲斐ない兄を許してくれ。」
「いいえ、大兄様。大兄様は何も悪くありませんわ。」
二人の会話を聞いていたフォルテ。すると、リムルが思念伝達で話しかけてきた。
『なぁフォルテ、ゼノビア姫が大兄様って呼んでいるあの人は…。』
『ああ、間違い。彼がサウザー王太子だな。』
リムルとフォルテはそのまま、二人の会話を聞き続ける。
「それにアスラン兄様のせいだと決まった訳でも……。」
「いいや!アイツが犯人に決まっているさ。グスタフも言っていたがね、ヤツはギルドを抱き込み、我が国に薬が届かぬ様にしていたのだ。もう何も心配は要らないから、今日はゆっくりと休むがいい。」
そう言って優しくゼノビア姫の頭を撫でるサウザー王太子。
「はい。ご心配をおかけしました。」
「構わないとも。」
……様子を見ている限り、妹想いの兄としか見えない。
にしても、アスランが薬を届かない様にしている?確かにアスラン王子は
『フォルテ、なんだか聞いてた感じと違うよな。』
『ああ。だが、グスタフが黒幕なのは間違いだろうな。』
アスランが薬を届かない様にしているとサウザー王太子に言ったのがグスタフらしいからな。
リムルとフォルテが念話で会話をしていると、サウザー王太子は部屋から出て行く。すると、部屋から出た途端に、サウザー王太子から凄まじい
(なるほど、妹の前では
フォルテは気付かれない様に、部屋から出たサウザー王太子の様子を伺う。
「ゼノビアが快復した今、遠慮はいらん。アスランと、ヤツを支持する者共を根絶やしにしろ。」
「はっ!」
アスラン派閥とサウザー派閥、二つの勢力による全面戦争が始まる。
だが、互いにゼノビアを苦しめているのが相手だと思い込んでいる。
フォルテがこの全面戦争の裏には何かあると考えていると。
「そこにいるのはどなたかしら?」
「えええっ⁉︎」
「なっ⁉︎」
ゼノビア姫に存在を気付かれしまった。
一体いつ気付いたんだ?
じっとこちらを見るゼノビア姫。
「ああ、昼間来て下さった方かしら?リムル様にフォルテ様と……。」
「違います‼︎」
「あら、それでは、貴方達のお名前は?」
「あ、えっと、サトルです……。」
「……俺はタクト。」
ゼノビア姫に名前を聞かれ、偽名の方を名乗るリムルとフォルテ。
フォルテの超小型キラーズアイには一応、音声機能も備わっていた。
「そう、サトルさんとタクトさんと仰るのですね。」
「は、はい。」
(疑われているな……なら。)
二人は意の決して、ゼノビア姫の側による。
リムルは本来のスライムの姿を、フォルテは分身体で窓から入り本来のフォルテの姿を見せる。
「まあ!その姿も可愛いですわね。タクトさんも、昼間と違って凛々しい姿ですわね。」
「ええっ⁉︎あの、俺はスライムでして、そのリムルさんとは関係ないので……。」
「俺はタクトだ。フォルテとは一体誰だ?」
「ウフフ、とても優しそうなオジサマ達です事。そういう事にしておきますので、私のお願いを聞いてくれませんか?」
「(オジサマってひょっとして……。)お願いとは一体なんだ?」
どうやら、ゼノビア姫には俺達から何かが見えている様だな。
「私は目が見えなくなりましたが、その代わりに、人の魂の形が視える様になったのです。サウザー大兄様やアスラン兄様は、泣き叫んでいる少年のよう。とても優しい方々なのです。」
(なるほど、それで俺達の事をオジサマと。前世の俺達の姿が魂の形となって視えていたんだな。そして、ゼノビア姫の視た通りなら、やはりサウザー王太子とアスラン王子は、真の黒幕に利用されているのだろう。)
「それに比べて、グスタフ侍医長は怖い方。とてもドロドロしていて、薄紫の闇のよう……。」
《ゼノビア姫の権能はユニークスキル“
「(人の本質を見抜く能力か…)だったら何故それを
サウザー王太子やアスラン王子に話さない?」
「言えませんわ。私がそれを口にしてしまえば、お兄様方が危険ですもの。」
「それって……。」
「父王陛下は、私が倒れてから一度も、御見舞いに来ては下さいませんでした。昔から、あの方は御自分の事にしか興味がないのです。そして、グスタフ侍医長は、父王陛下の腹心。」
「つまりグスタフが国王からの命令で動いていると?」
「はい。」
(もしそうなら、最低な父親だな。異世界でも、そんな腐った奴はやはりいるんだな。)
ゼノビア姫の話を聞いて、国王に対して怒りを滾らす
フォルテ。
その時だった、ゼノビア姫が部屋に近づく者の気配に気付いた。
「!隠れて!そして気配を消して下さいませ‼︎」
「え?あ、ああ。」
「くっ!」
ゼノビア姫に従い、リムルは棚の下に戻り、フォルテは窓から外に出てキラーズアイに意識を再び移した。
そして、扉が開き部屋に入って来たのはグスタフだった。
「………ふっ!」
グスタフは、眠っている振りをしているゼノビア姫に何かの魔法を掛ける。
《幻覚魔法:
ゼノビア姫を眠らせどうするつもりだ?
「今快復されるのは時期尚早。あの緒方の為にも、もっと魂を磨き上げておかねばならぬ。」
(あの緒方?国王かそれとも……誰か別の者の命令でグスタフは動いているのか?)
すると、リムルが棚から顔を少し出そうとしていた。
『ダメですわッ‼︎』
『え⁉︎』
その時、ゼノビア姫が念話でリムルを止めた。
「む?今、何か……いや、気のせいか。」
『俺の気配に気付いた?』
『リムルの気配に気付くとは、グスタフ…侮れない様だな。』
『その通りです。大兄様の今の強さも、恐らくは侍医長に与えられたもの。』
『アスラン王子の推測が半分当たっていた訳だな。』
『ですので、オジサマ達に兄様達を御救い頂きたいのですわ。』
『ゼノビア姫……。』
ゼノビア姫の頼みをどうするべきか悩んでいると、ゼノビア姫の記憶が、リムルとフォルテに流れ込んできた。
それは幼き頃のサウザー王太子、アスラン王子、ゼノビア姫の姿。
仲の良い三人の姿……それが今、グスタフにより自分は病に倒れ、サウザーとアスランが敵対し合う。
『……リムル。』
『ああ、分かっているよ。』
リムルとフォルテの気持ちは決まった。
『……ダメだね。』
『やはり……。』
『どうせ救うなら、ゼノビアも一緒だ。』
『まあ!』
『全力は尽くす。』
『約束するよ。』
『本当に、オジサマ達は優しい方ですわ。』
ゼノビア姫と約束している間、グスタフはゼノビア姫に向かって紫の光を放った。……どうやら何かの呪いの様だ。
ゼノビア姫に呪いを掛け終えると、グスタフは悪党らしい笑みを浮かべていた。
「ふっ。あの小娘と女も呼び出して、生贄にしてやる。」
そう言って部屋を出て行くグスタフ。
小娘って…恐らくリムルだな。そして女ってのは多分俺か…。
女装し化粧していたとはいえ、女と間違われるとはな……。
その後、意識を本体に戻したリムルとフォルテは、シズさん達と共に空間移動で
そして、リムルの庵に紅丸、蒼影、カーネル、シャドーマンを呼び先程の事を話した。
「アスランとサウザー、両王子を争わせて、グスタフというヤツに何の得があるんです。」
「ゼノビア姫の考えでは、国王の命令なんじゃないかって。」
「だが、今大事なのは両王子の争いを止める事だ。」
「では、いつ頃出発致しましょう。」
カーネルがそう問いかける。
「そうだな………明日だ。」
「ああ、間違いなくな。」
リムルとフォルテはそう言った。
リムルとフォルテは大賢者と
グスタフは、自ら掛けた呪いによってゼノビア姫の体調が崩れた原因を、俺達に擦り付けようとしている事、その後、犯罪者を呼び込んだとしてバラク達への責任問題をでっち上げ、それに反発したアスラン派閥が動き出した所を、
準備万端のサウザー派閥が一網打尽にする。
それが大賢者と
「紅丸、お前にはアスラン王子の足止めをお願いしたい。」
「お任せを。」
「蒼影、お前にはバラクさんを任せる。説得に応じればいいが、そうでなければ力づくで押し留めてくれ。」
「御意。」
リムルからの命令に頷く紅丸と蒼影。
「カーネルとシャドーマンは、もしも紅丸達に予期せぬ事態が起きた時に加勢を頼む。」
「承知。」
「了解しました。」
「ゴスペルと嵐牙は、シズさんと共にアマディ侯爵家の守りを頼む。奥方や家人に被害が及ばぬ様に守ってくれ。」
「仰せのままに!」
「承知!お任せを‼︎」
「うん。任せて。」
カーネル、シャドーマン、ゴスペル、嵐牙、シズさんも、フォルテの頼みに頷くのだった。
「それで、リムル様とフォルテ様は何を?」
「俺達?」
「少し野暮様を済ませるさ。」
紅丸の問いに笑みを浮かべながらそう答えるリムルと
フォルテだった。
その頃、コリウス王国のある建物の上に、…フードを被ったルミナスがいた。
「どうなっておる?どうしてあの者達が事件に巻き込まれておるのじゃ?面倒じゃな。何事も起きぬ様に放置するのが正解なのやもしれぬが、妾がここまで来てしまったという事実こそが鍵となっておる可能性もある。まあ、様子見じゃが……我等に罪を擦りつけようとしている者はこの際だし、状況次第では、仕置いてやろう。」
そう呟きながら笑みを浮かべるルミナスだった。
とある空間では、水晶に映るフォルテを見ながら、
ウルティマ…いや当時の
「ちょっと様子を見てみたら、まさかあの人がコリウス王国に関わるなんてね。流石の僕も予想外だったなぁ。……こうなると、コリウス王国の事は諦めるしかないよね。……まぁいいか。せっかくだし、部下達が本当に役に立つのか、ついでだから見極めよっと。」
リムルとフォルテの知らないところで様子を伺う者達。
そして翌日。
リムルとフォルテの予想通り、グスタフは動いた。
「侍医長、これはいったい⁉︎」
リムルとフォルテはグスタフが連れて来た憲兵に拘束された。
「その者達が持ち込んだ怪しげな薬のせいで、姫殿下は眠り続けておるのだ。ああ、御労しい。貴様ら、この責任をどう取るつもりじゃ!」
自分で眠らせ呪いを掛けている癖によく言えたものだな。
そのまま、リムルとフォルテは連行され、牢へと入れられるのだった。
「よし、これでアリバイは出来たな。」
「ああ。じゃあ行くか。」
そう。俺達は敢えて捕まり、牢の中にいるというアリバイを作ったのだ。
そうして、俺達は分身体へと意識を移した。
分身体に移した後、フォルテはキラーズアイへとそのまま意識を移した。
リムルとフォルテが来た事に、ゼノビア姫は直ぐに気付いた。
『まあ!本当に来て下さったのですね?』
『当然だろ。』
『約束だからな。』
リムルとフォルテの部屋を確認し、従女二人がこちらを見ていない事を確認した。
『……よし!』
『今だな。』
リムルは棚の下から飛び出し姿を変える。
フォルテも分身体に意識を戻し、
その気配に従女達が気付いて振り返る。
「な、怪しい奴!」
「まさか、姫様を狙った刺客では⁉︎」
従女の目の前にいるのは、黒装束の男と、左目だけある渦巻き模様の紫の仮面を被り、黒地に三日月模様が描かれた外套を装束した者が立っていた。
リムルは前世の姿である
フォルテは……NARUTOの敵キャラである組織の◯ビを模した姿だった。
「
リムルはすかさず、従女二人を糸で拘束した。
「なっ!」
「あっ!」
従女二人が拘束され動けなくなると、フォルテが姫様に前へと移動。
「それじゃあ!ちょっとの間、姫様を預かりますね〜!」
……フォルテからは想像できないほど、明るいお調子者の様な喋り方で話ながら、ゼノビア姫をお姫様抱っこで抱き上げる。
「ま、待ちなさい!」
「失敬な!何者なのです⁉︎」
「待てと言われて待つ泥棒がいないように、何者かと問われて答える不審者もいないだろ?だけど、俺達は優しいから教えてやろう。」
リムルはそう言うので、フォルテも名乗る。
「俺は、大怪盗リ……サトルだ!」
「僕は、大怪盗のタクトっていんで、どうぞ宜しくお願いしま〜す!」
「リ、サトル?にタクト?」
「違います。サトルです。大怪盗サトルね。そこんとこ、間違えない様にヨロシク!」
「それじゃあ、失礼しました〜!」
そう言って窓から飛び去るリムルとフォルテだった。
『あの……大怪盗というのは何でしょう?』
「…ノリです。」
「気にしないでくれ…。」
『は、はあ。ですが、何も言わない方が良かったのでは?』
「は、ハハハ、違いますとも。情報撹乱の為に、偽情報を流したのです!」
「まぁ、あんな感じに喋れば、俺だとは思わないだろうと考えた。」
『確かに、タクト様の喋り方と態度には、私も驚きましたわ。』
そんな会話をしながら、リムルとフォルテはゼノビア姫を連れてある場所に向かって飛ぶのだった。
大怪盗となってゼノビア姫を連れ出したリムルとフォルテ。
次回でコリウス王国での事件は解決する。
フォルテの大怪盗としての変装した姿は、……分かる人は分かるでしょう。
喋り方も一応変えて、同一人物だと思われない様にするフォルテだった。