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リムルとフォルテがゼノビア姫を連れ出したその夜。
その中にはパウロもおり、アスラン派閥が出陣の準備を終えたのだ。
「集まったようだな。」
そこに、バラクも現れた。
「ああ、行くぞ!」
おおおう!
アスラン殿下に声に応えて、冒険者達が一斉に声を上げる!
その時だった。アスラン殿下達の前にアラビアのトーブの服装の紅丸とサルタンの服装の蒼影が姿を現した。
カーネルは、全身をローブマントで包み隠しながら蒼影の隣に立っている。
コリウス王国内に適した服装で現れた紅丸と蒼影そして、ローブマントで身を包んでいるカーネルの存在に気付いた冒険者達の声を上げる。
「何だ、テメェ?」
「おいおい、まさか邪魔しようってのかい?俺達を舐めてると痛い目見るぜ?」
そう言って前に出るパウロを、蒼影は見据えていた。
そして、パウロはリムルから貰った棒を振り回しながら口を開く。
「へへっ、どこの誰だか知らんが、この俺、空拳改め、棒将のパウロ様が相手をしてやる。命が惜しければ黙って………」
だが、パウロが喋り終わる前に、蒼影が素早い身の熟しでパウロに接近し拳の連撃を叩き込む
「プギャ、ギャギャギャッ⁉︎」
最後は蹴り飛ばされ
「やり過ぎではないか?」
倒れるパウロを見ながらカーネルは蒼影に言う。
「こいつは大将達の悪口を言っていたからな。少々お仕置きしてやったのさ。」
「なるほど、それなら文句はないな。」
蒼影の話に納得する紅丸。
「テメェら、いい度胸じゃねーか!」
「オラァァン!パウロを倒したからって、いい気になってんじゃねーぞぉ!」
いきなりの攻撃に冒険者達が声を荒げ、今にも紅丸達に攻撃を仕掛けそうだった。
その時だった。
「やめろ、お前ら。」
「君達ではその者共に勝てぬ。」
アスラン殿下とバラクが冒険者達の前に出て止めた。
二人は紅丸達の強さを一目見て理解したのだ。
「どうせ逆臣グスタフが雇った刺客だろうが、邪魔をするなら容赦せん。」
「刺客ではないが、邪魔はさせてもらう。」
「この後、用事があるものでな。悪いが、貴様と遊んでいる暇はないのだ!」
そう言って、アスラン殿下と紅丸は互いに剣を抜いて同時に斬り掛かる。
その一方で、バラクは蒼影に問いかける。
「君だね?我が家の周辺を監視していたのは。」
そう。バラクは蒼影とシャドーマンの監視に気付いていたのだ。
「……ほう、気付いていたか。」
「認めるか!」
蒼影が否定せずそう言うと、バラクは剣を抜いて蒼影に斬り掛かる。
アスラン殿下対紅丸、バラク対蒼影。
両方とも凄まじい斬撃の応酬により、剣がぶつかり合う度に火花が飛び散る。
「す、スゲェ……。」
「俺達が入る隙なんてねーぞ。」
「あの男、強い!」
「あっちもだ。無双のバラクさんを相手に、互角に戦ってやがるぜ。」
アスラン殿下とバラクの実力を知る冒険者は、その二人と互角に戦う紅丸と蒼影の姿を見て、紅丸達が自分達では敵わない強者だと漸く理解した。
「ハァァァァァ!」
アスラン殿下が力強く剣振い、紅丸がそれを受け止める。
鍔迫り合いとなり剣から凄まじい火花が飛び散る。
「チッ、(思っていた以上にやるもんだ。大将達が来る前に決着をつけたかったが、剣だけでは難しいか。)」
そう言いながらアスラン殿下の剣を押し返しながら払う紅丸。
押し出されたアスラン殿下は、直様構え直し態勢を整える。
(蒼影から聞いてはいたが、コイツの実力は本物だったか。それよりも、俺の実力を蒼影に測られていたのが嫌になるね。)
そう思いつつ笑みを浮かべる紅丸。
「何が可笑しい?」
「フッ、いや。お前が強いから、少し嬉しくなったのさ。」
「抜かせ!」
アスラン殿下が再び紅丸に斬り掛かる。
(剣術でここまで紅丸と戦えるとは、アスラン殿下の実力は素晴らしいな。)
その様子を見ていたカーネルは、アスラン殿下の実力に感心するのだった。
一方、バラクと蒼影の戦いは、蒼影が傷だらけになりながらもバラクと対等に戦い、鍔迫り合いの最中で蒼影が左手に持つ苦無でバラクに斬り掛かる。
それに対して瞬時に反応したバラクは跳び退きながら回避したが、歳もあり息が上がっていた。
「フッ、確かに強いが、俺の敵ではないな。」
「な、何をほざく、貴様は満身創痍ではないか!」
バラクがそう叫ぶと、蒼影が煙と化して霧散し、煙が晴れると奥に無傷の蒼影が立っていた。
「なっ⁉︎」
これにはバラクも驚いた。
「俺は分身を得意としている。本来なら複数の分身体で相手をするのだが、貴殿に敬意を表して、一対一のまま戦ってやろう。」
蒼影は無数の分身体を見せた後、再び一人となった。
「卑怯な……!」
バラクには、これ以上戦う体力が残っていなかった。
「……俺の……負けだ。」
バラクは膝を突き、敗北を認めたのだった。
一方のアスラン殿下と紅丸は、紅丸がアスラン殿下を押し始めていた。
「仲間は降参したぞ。どうする?」
紅丸の言葉に、アスラン殿下はバラクの方へと目を向ける。
そこには確かに、降伏したバラクの姿があった。
「くっ……!勝負はこれからだ!」
だが、アスラン殿下は止まる訳にはいかなかった。………ゼノビア姫を救う為にも。
「でやぁぁぁ‼︎」
「はぁぁぁっ!」
再び剣をぶつけ合う両者!……その時だった。
「紅丸!蒼影!」
「お待たせしました〜〜〜っ‼︎」
上空から紅丸達の名を呼ぶ大怪盗に扮したリムルとフォルテが飛んで来た。
二人の声に、紅丸とアスラン殿下も剣を止め目を向ける。
そして、リムルとゼノビア姫を抱き抱えたフォルテがアスラン殿下達の前に降り立つ。
「ゼノビア⁉︎」
突然現れた怪しげな者達。そのうちの一人がゼノビア姫を抱き抱えている姿に、アスラン殿下は声を上げる。
だが、グスタフの魔法と呪いにより、ゼノビア姫は目覚める事が出来ない。
「貴様ら、ゼノビアに何をしたっ⁉︎」
ゼノビア姫が反応しない原因が俺達と思ったアスラン殿下が声を上げる。
そんな中、フォルテはゼノビア姫を優しく下す。
《ゼノビアの解析が完了した。状態は
「サトル!」
「ああ、分かっている。」
リムルとフォルテはゼノビア姫に向かって手を翳し、
「ゲホッ、ゲホッ。」
呪いが除去され、ゼノビア姫は咳き込みながらも起き上がる事が出来た。
「流石はオジサマ達ですわね。まさか、こんな簡単に目覚めさせて頂けるとは。」
「オジサマじゃなくて、サトルでお願いします。」
「俺もタクトでお願いしま〜す。」
「そうでしたね、大怪盗サトル様、タクト様。」
「あ!」
「あらら〜。」
「大怪盗?」
ゼノビア姫の言葉に首を傾げる紅丸。
ちなみに、フォルテが口調や態度を変えているのは、思念伝達で皆に伝えてあるのだった。
「はい!サトル様とタクト様がそう名乗られたのです。私を城から攫う手筈も見事なものでしたもの。まさに、大怪盗と称されるのに相応しい緒方達です。」
「あ、あは、あははははは。」
「いや〜それほどでもないっすよ。」
ゼノビア姫にそう言われ、リムルは頭を掻きながら照れる。
フォルテも同じ様に頭を掻きながら照れている仕草をする。
すると、状況を理解出来ないアスラン殿下が二人に向かって声を上げる。
「貴様ら、俺達にも分かる様に説明せよ!」
アスラン殿下の言葉に、リムルが真剣な表情で答える。
「サウザー王太子は
「だから、陽光の下でも平気だし〜、ゼノビア姫から精気を吸い取る必要なんてないんですよね〜。」
フォルテもお調子者の口調のまま、リムルに続いてそう言った。
「なっ⁉︎」
二人の言葉にバラク達は驚く。
「何ィ⁉︎それでは何故、妹が苦しむ必要があったのだ⁉︎」
アスラン殿下は詰め寄りながらリムルとフォルテに向かって叫ぶ。
「大兄様はアスラン兄様と同じく、私を案じてくれていたのですわ!」
「それでは誰が、お前が倒れる様に仕向けたのだ⁉︎」
「そんなの、グスタフ侍医長に決まっているじゃないですか〜。」
「それはまことか?」
フォルテがそう答えると、誰か別の者の声が聞こえ皆が声のする方に振り向くと、そこには従者二人を引き連れた
サウザー王太子がこちらに向かって歩んでいた。
「「はっ⁉︎」」
サウザー王太子の登場に、アスラン殿下とバラクは驚く。
(良いタイミングだ。蒼影とシャドーマンの報告通りだ。)
フォルテがそう思う中、皆の前まで来たサウザー王太子が口を開く。
「……その反応、演技ではないな。では本当に、グスタフめが黒幕だと?」
「兄上こそ!俺はずっと兄上がグスタフの手に落ちたものとばかり……。」
「見くびるでないわ!だが、グスタフがゼノビアを手にかけていたのだとすれば、私も偉そうな事は言えぬがな。」
そう自嘲するサウザー王太子。
「サトル様とタクト様は、お兄様方の仲を取り持って下さろうとしているのです!私を苛む者は、グスタフなのですわ!」
ゼノビア姫の言葉を聞いたサウザー王太子は口を開いた。
「……そうだな、私は直接、お前の口から聞くべきだったやも知れぬ。カールめに、アスランに叛意アリと聞かされて……。」
「カールですと⁉︎」
カールの名に、アスラン殿下が反応する。
「我が友が兄上に……っ!俺もカールから兄上が
(なるほどな。そのカールとやらがサウザー王太子とアスラン王子が争う様に仕向けていたと言う訳か。)
二人の会話を聞いて、フォルテはカールとやらが騙していた事を知った。
「フッ、笑えんな。兄弟揃って、あの男に踊らされていたとは。」
サウザー王太子は自嘲気味にそう言った。
「カールは何処だ⁉︎」
「探せ!探し出して、ヤツの身柄を捕らえよ‼︎」
カールとバラクはカールを探し出すよう皆に向かって声を上げて叫ぶ。
その時だった、何処からともかく誰かの笑い声か聞こえてきた。
「ハーーーッハッハッハッ‼︎」
皆が周囲を見渡すと、一人の冒険者が
「あっ、あれは⁉︎」
皆が冒険者の指差す方向に顔を向けると、
「ハッハッハッハッ!残念残念。もう少しで、愚かな者どもによる最高の争いが楽しめたものを。」
「カール!」
「ぬけぬけと姿を現しおって!」
どうやらあの男がカールらしいな。
サウザー王太子とアスラン王子が声を上げるなか、カールは
「もしや……。」
アスラン殿下の脳裏に、ルベリオスから来た男の事が過った。
「ルベリオスから来たと言うあの男もお前の差し金か⁉︎」
「ご名答。用は済んだんで、さっさと消えてもらったがな。」
「己れ、無事で済むと思うな‼︎」
サウザー王太子が声を荒げる。
「フッ、雑魚共が。私の舞台で踊るだけの価値しかないくせに、大言壮語を吐くものだ。」
「貴様ッ‼︎」
カールが笑みを浮かべながらそう吐き捨てると、サウザー王太子は声を上げながら跳躍し、落下の勢いを加えた拳を放った。
サウザー王太子の拳はカールの顔面に見事に決まり、凄まじい衝撃が周囲に広がる。
皆が衝撃に耐える中、バラクは信じられないものを目にした。
「な、何ぃ⁉︎」
バラクが見たもの…それは、サウザー王太子の拳がめり込み陥没した筈のカールの顔が、サウザー王太子が拳を引くと同時に何事もなかったかの様に元に戻ったからだった。
「なっ…⁉︎」
「コイツはヤバイ相手かも。」
「人間でないのは間違いないな。」
サウザー王太子は唖然となり、リムルとフォルテはそう呟いた。
「グスターーーフッ‼︎コイツを殺すが、計画に支障はあるか?」
カールは両腕を真上に上げながらそう叫ぶと、上空に黒紫の空間の歪みが発生し、中からグスタフが姿を現した。
「やれやれ、御方は目立たぬ様にとの仰せなのじゃぞ。
それを事もあろうに、我等自身が動かねばならぬとはのう。」
そう言いながら地上へと降り立つグスタフ。
「さっさと終わらせて、証拠を隠滅するとしようぞ。」
「グスタフ、やはり貴様も!」
黒幕のグスタフが姿を現し、サウザー王太子は声を上げる。
「ふむ、ワシの手駒として優秀だったが、その力、返してもらうぞ。」
そう言いながら、グスタフはサウザー王太子に向かって手を翳す。
「ぐっ⁉︎ぐあぁぁぁぁ!」
すると、サウザー王太子の
(やはり、あの
サウザー王太子から
《グスタフ及びカールの解析が完了。二体共
「どうやら、奴らは
「ああ。そんな奴らが二体同時とはな。」
「
「化け物!」
「逃げろ!」
グスタフとカールが
まぁ無理もない。
「サトル様……タクト様……。」
心配そうに、リムルとフォルテに声をかけるゼノビア姫。
「大丈夫だ、約束は守るさ。」
「俺達に任せて。」
二人はそんなゼノビア姫を安心させようと笑みを浮かべて言う。
その後、リムルとフォルテは思念伝達で話し合う。
『とは言ったものの、二体同時に相手するのは、かなり厄介だよなフォルテ。』
『そうだな。どうにかして、一体ずつ倒せる状況に持ち込まないとな。』
フォルテがどうやって一体ずつ倒せそうかと考えていると、グスタフがカールに向かって口を開いた。
「この虫螻共だが、貴様一人で皆殺しに出来るな?」
「当然だ。」
「要となる大切な玉体を傷付けられては敵わぬ故、ワシが戦いの場を用意するとしようぞ。」
(玉体?)
グスタフの言葉にリムルが首を傾げたその時だった。
「っ!サトル!」
フォルテはグスタフがゼノビアの背後に瞬時に移動した事に気付き声を上げる。
フォルテの声に気付いたリムルが振り返ると、グスタフがゼノビア姫を捕えた上に、俺達を黒紫の膜の様な結界に閉じ込めた。
「ゼノビア!」
アスラン殿下が声を上げる中、ゼノビア姫を気絶させから結界から距離を取り、此方に向かって笑みを浮かべる。
フォルテは直様この結界を解析した。
(物理世界への影響を遮断する“隔絶結界”か。俺の
フォルテは、思念伝達で再びリムルに話し掛ける。
『リムル。この結界は俺達の力で解除可能だ。』
『ああ。俺も大賢者から聞いた。でも今は解除しなくていい。グスタフは玉体と言っていた。理由は分からないけど、ゼノビア姫を傷付けはしないだろう。これでカール一人を相手に出来る。』
『だが、時間をかけらないぞ。グスタフ達が
『どういう意味だ?』
『悪魔には依代がいる…恐らくだが、グスタフはゼノビア姫を自分より強い悪魔の為の依代にするつもりだろう。』
フォルテは原初の悪魔の一人である
グスタフの言葉から同等の悪魔の依代にするつもりだと予測したのだ。
『ッ!…ならさっさと倒さないとな。』
フォルテの予測を聞いたリムルは、険しい表情となる。
「おのれ、グスタフ!」
「お前は用済みって事さ。死ね!」
カールがサウザー王太子に向かって魔力弾を放った!
「兄上!」
だが、アスラン殿下がサウザー王太子を庇って魔力弾の直撃を受けた。
「ぐわ!」
「アスラン!」
宙を舞いながら地面に倒れるアスラン殿下。サウザー王太子はアスラン殿下の元へと急いで駆け寄り抱き上げる。
「なぜだ、なぜ、私を庇った⁉︎」
「ぐっふっふ。弱者が嘆く姿は、いつ見ても愉悦であるぞ。」
「もっともっと私を喜ばせてくれ!」
グスタフ達はアスラン殿下達の姿を見て嘲笑う。
「俺は……貴方を守る盾であり……貴方の敵を討つ剣でありたい……と、幼き頃より願っていた……。」
ボロボロになりながらも、必死に口を開くアスラン殿下。
「あぁ、アスラン、私はお前をーー。」
サウザー王太子は、自分を思うアスラン殿下の気持ちに気付けなかった事を悔やみ涙した……その時。
「はいはい、邪魔だよ。」
「ちょっと失礼しま〜す。」
リムルとフォルテが、ドラマの感動シーン的なところに割って入り、
「ん?」
「えっ⁉︎」
「「はあっ⁉︎」」
すると、アスラン殿下の傷が瞬く間に癒え、サウザー王太子とアスラン殿下は呆気に取られ、グスタフ達も驚愕した。
「き、貴様ら!何なのだ、そのふざけた効能の回復薬は!」
「何って、
「
「邪魔だから、これ飲んで引っ込んでて。」
リムルはそう言って、サウザー王太子にアピトの蜂蜜を渡した。
そして、思念伝達と紅丸に指示を出す。
『紅丸、蒼影、準備はいいか?』
『待ってましたよ。』
『万端です。』
『カーネル、シャドーマン、お前達も出番だ。』
『はっ!』
『御意!』
フォルテもカーネル達に指示を出し、カーネルは纏っていたローブマントを脱ぎ捨て、シャドーマンはカーネルの影から姿を現した。
カーネルとシャドーマンの登場に、サウザー王太子とアスラン殿下は、呆気に取られ空いた口が塞がらない。
そして、カールは二人を見た瞬間に警戒する。
(コイツら、……普通ではないな!……ならば!)
カールは懐からある物を取り出す。
(ッ!あれは⁉︎)
それを見たフォルテは目を見開く。
カールが取り出した物は、……三枚のダークチップだったからだ。
カールはダークチップを手前に放り投げると、三つの召喚魔法陣が出現した。
そして、その魔法陣の中心で、ダークチップから
「さあ!出て来い
カールの呼び掛けに応える様に、ダークチップを依代に、三体の
「くっ、
敵か更に増えた事にサウザー王太子は苦渋の表情を浮かべた。
「さあ、コイツを相手にどこまで戦えるか見せてもらおうか!」
カールは勝ち誇った顔を浮かべながら声を上げる。
すると、フォルテが静かに皆の前に出る。
「ん?なんだ命乞いか?」
カールがそう言ってくるが、フォルテは静かに口を開いた。
「貴様…それを何処で手に入れた!」
仮面の左目の穴から赤い眼光を放ちながらカールを睨むフォルテ。
フォルテから放たれる威圧と鋭い眼光に、
「サトル。お前達はカールの相手を頼む。出来れば生かして情報を引き出したい。俺とカーネル達は
「あ、ああ。わかった。(フォルテのやつ、リーガルに関係する事になると偶にああなるんだよな。まぁ、リーガルに繋がる手掛かりが見つかったから無理ないか。)」
リムルは演技も忘れて素になっているフォルテの指示に素直に従う事にした。
そんな二人の会話を聞いたカールは怒りの声を上げる。
「貴様ら!調子に乗るな‼︎」
カールは魔力弾を拡散して放ち、リムルとフォルテ達はそれを回避。
その一方で、蒼影に蹴り飛ばされた事で、隔絶結界の外で倒れていたパウロが
(勝てるわけねーだろ?相手は
その時、パウロの脳裏にリムルとフォルテから貰った
(俺、英雄になりたかったんだよな。気付いていたよ。あの人達が俺なんかが逆立ちしたって勝てない実力者だって。)
パウロはリムルとフォルテの実力に気付いていた。
(あの棍棒や籠手だって、きっと
武器の質も理解していたパウロは、礼儀や態度が悪いだけで、やはり冒険者としては優秀な人材だった。
(今は不当に逮捕されて城にいるって話だが、あの人達なら悪魔を倒す事だって。)
〝人の言う事を聞け!無茶をするな、出来る事を確実にやれ!〟
〝もっと良く相手を見てから行動しろ。〟
パウロは二人に言われた事を思い出す。
(やってやるぜ。俺は、俺に出来る事をする。結果が失敗に終わろうとも、胸を張って生きれるようにな!)
パウロは棍棒を強く握り締めながら決意する。
一方、リムルとフォルテ達とカール共との戦闘は。
「消えろ!」
「ハァ!」
「フン!」
フォルテが妖刀
「ハァァァァァ!」
リムル達の方は、カールがリムル達に向かって魔力弾を放つも、リムルが
「なっ!」
(馬鹿なッ⁉︎カールの魔法を打ち消した、だと?)
これにはカールはもちろん、グスタフでさえ驚いた。
「ふっ。」
「ぐっ!」
その僅かな隙を蒼影が見逃す筈がなく、操糸妖縛陣でカールの動きを封じた。
「ハァァァァァ!」
そして、紅丸が思いっ切り刀を振るいカールを斬り裂いた。
「ぐわぁぁぁ!」
紅丸の斬撃により血飛沫を上げるカール。
その様子を見ていたグスタフは、ようやくリムル達が人間ではないと気付いた。
(奴等は人間ではなく、魔人!マズイ、マズイマズイマズイぞ!我等が神を顕現させる為にも、なんとしても、この依代だけは守らねば。)
その一方、リムル達がカールに一撃を入れるところを見ていたフォルテ。
(よし、これならリムル達だけでも奴には勝てるな。後は、奴が弱りきったら、奴の記憶からダークチップに関わる情報を引き出すだけだ。)
フォルテは、いつでもカールから記憶を引き出す準備が出来ている。
(だが、グスタフがこのまま黙って見ている筈がない。ならば……。)
フォルテが意識を集中させながらキラーズアイへと移した。
ゼノビア姫を連れ出した際、もしもの時を考えフォルテはキラーズアイをゼノビア姫の髪の中に忍ばせていたのだ。
キラーズアイに意識が移り、ゼノビア姫の髪から出てみると、グスタフが何かを始めようとしているのが見えた。
「
グスタフは隔絶結界を何重にも重ねて厚くする。
「根源たる負の感情よ、来たれ!」
グスタフは更に、コリウス王国の人々の内にある負の感情を自分の元へと引き寄せる。
「同胞たるカールよ、我が糧となれィ!」
グスタフの目が光ると同時に、カールに異変が
「ぐっ⁉︎うわぁぁぁぁぁ⁉︎」
カールから
(アイツ⁉︎仲間を!)
カールから引き剥がされた
「ぐっふっふ。この肉体では、力を完全に御せぬが。あの魔人共を屠るには十分であろうて。」
カールを吸収したグスタフをフォルテは解析すると、その
(これはマズイな。今のグスタフには俺でも勝てるかどうか……。)
フォルテの技は殆どが大技であり、コリウス王国内では本気を出して戦う事は難しいのだ。
「それでは始めようとしよう‼︎」
力を得たグスタフが、リムルとフォルテ達を始末する為に、結界に入ろうとする。
「ふん!」
だがその時、瓶が転がる音がした。
「ん⁉︎」
グスタフが音の聞こえた方に顔を向けると、
「愚か者が、ワシから逃れられるものか、暗黒魔法、
フォビドゥン!」
グスタフはパウロを追い、暗黒魔法を放った。
(マズい!)
キラーズアイに意識を移しているので何も出来ないフォルテ。
迫る暗黒魔法がパウロに命中する……その時だった。
パウロに命中する直前に、何者かが割って入りグスタフの暗黒魔法を防いだのだ。
「っ⁉︎」
「そこでは大人しゅう見ておれ。その娘を助けようとした心意気に免じて、妾が貴様を守ってやろうぞ。」
「う。うんうん!」
グスタフが驚く中、フードを被った女性がそう言い、
パウロの素直に頷いた。
パウロはすぐさま離れると、グスタフは外套を纏った女性に向かって口を開く。
「何者だ⁉︎」
「貴様の様な小物に教える気などないわ!」
「何ィ⁉︎」
「やれやれ、今のあの者達では、貴様の相手は荷が重いやも知れぬ。妾が遊んでやる故、光栄に思うがよかろう。」
そう吐き捨てながら女性は外套を脱ぎ捨てると、腰まである美しい長い銀髪に、黒いドレスを着ており、閉じていた目を開けると、右目が赤て左目が青のオッドアイが
グスタフを見据える。
そう、パウロを助けたのはルミナスだった。
(あの女……只者ではないな。)
ルミナスの事をまだ知らないフォルテだが、ルミナスからいい知れぬ覇気を感じ取っていた。
「魔人か?小娘の癖に生意気なー!」
それに全く気付いていないグスタフはルミナスに右腕で殴り掛かり、ルミナスはその拳を受け止める。その瞬間、周囲に凄まじい衝撃が広がる。
グスタフは確かな手応え感じ笑みを浮かべていたが、すぐに唖然となった。
何故なら……。
「ぬるい。」
ルミナスはグスタフの拳を、右掌で軽く受け止めていたからだ。
「ば、馬鹿な!ワシの全力が⁉︎」
これにはグスタフも驚愕、人間の体で力を十分に発揮出来ないとはいえ、同胞のカールとコリウス王国の人々の負の感情を取り込んで強化された自分の全力の拳を受けて平然としているのだから。
「知らぬわ。」
ルミナスはそう言ってグスタフの右腕を左腕で殴り上げ、グスタフがバランスを崩したその一瞬をルミナスは逃さずグスタフの腹を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされ無様に転がり倒れるグスタフを見て、ルミナスは鼻で笑った。
その際、グスタフはルミナスの口から見える鋭い八重歯で正体に気付いた。
「ま、まさか、
(
様子を見ていたフォルテは、魔王ヴァレンタインが自分達に罪をなすり付けた者を裁く為に送った存在ではないかと考えていた。
その一方で、グスタフはルミナスに向かって口を開いた。
「お、お前は……何者なのだ……?」
「貴様が知る必要などあるまいよ。」
それに対してルミナスは、まるでゴミを見る様な目でグスタフを見ながらそう吐き捨てる。
(マズイ‼︎このままでは何も為せずに滅んでしまうぅーーッ‼︎そ、そんな事になったら、ワシは‼︎)
グスタフはこの事態を打開する策を必死に考え、ゼノビア姫の方へと目を向けた。
「ぐぅぅ!」
グスタフは掌の上で魔力弾を爆発させた
それによって発生した爆煙を煙幕とし、煙に紛れながら真上に跳躍し、そのまま建物の壁を蹴ってゼノビア姫の方へと向かう。
「くっ!」
パウロはゼノビア姫を魔物と前に出て両手を広げるも、
グスタフはその背後に回り込む。
「邪魔だ!」
グスタフはそのままパウロを背後から蹴り飛ばし、自分ごとゼノビア姫に結界を何重にも施す。
その際、フォルテのキラーズアイは蹴り飛ばされるパウロに巻き込まれてしまい、ゼノビア姫から離れてしまっていた。
結界内では、グスタフがゼノビア姫に向かってある召喚魔法を発動しようとしていた。
「我等が原初たる神よ!この者に宿りて、ワシに力をお貸し下さいませ‼︎」
グスタフの言葉に応える様に、魔法陣が強く光だした。
その頃、ルミナスはゼノビア姫を助けようとしてグスタフに蹴られたパウロの容体を確認していた。
「息はあるな。馬鹿な奴じゃ。」
その時だった、グスタフの結界から凄まじい紫の光の柱が立ち昇った。
(これは⁉︎)
《グスタフがゼノビア姫を依代に悪魔召喚を起こった様だ。》
(駄目だ…もう召喚は止められない!)
フォルテが見ている中、ゼノビア姫は完全に紫の魔力に包まれ球体となった。
その様子をグスタフは固唾を呑んで見ていると、球体に亀裂が生じ割れた。
中から現れたのは、フード被り外套を身に付けた別の女性…悪魔の姿だった。
「お、おおお!成功だ。」
それを見たグスタフは歓喜の声を上げる。
召喚された女性はゆっくりと降り立つ。
降り立った者を、フォルテは
《解析完了。召喚された悪魔は原初の悪魔の一人である
(やはり原初の悪魔だったか…!)
そう…ゼノビア姫を依代にして召喚されたのは、当時の
ウルティマである原初の悪魔の一人
「貴様は終わりだ。何者かは知らんが、我等に盾突いた事を後悔するがいい!」
そして、召喚された
「やあ、ルミナス。せっかくだから挨拶だけでもと思って、僕の方からわざわざ来てあげたよ。」
「
グスタフはルミナスの名で、自分が戦っていた者が誰かを知り驚愕した。
「ではこの者が滅んだとされる先代魔王、
(先代魔王?……滅んだって事になっているのなら何故今此処に?)
グスタフの言葉を聞いたフォルテは、何故滅んだとされるルミナスが生きていて、この場所にいるのか分からずにいた。
そんなフォルテが見ているとは知らず、ルミナスは舌打ちしながら口を開いた。
「チッ、やはり貴様か。
「あははははっ!嫌だよ。だって僕は、人が嫌がる事をするのが大好きなんだもん。特に、君のように抜け目の無い相手は、出し抜くのが、大変だもんね。どうせ一緒に遊ぶなら、僕も楽しみたいし、これからヨロシクね!」
「ヌケヌケと……。」
「ふっ!」
ルミナスが苛立ちながらそう呟くと
そして舞うように回転しながら両手に魔力弾を作り出しルミナスに迫る。
ルミナスはすぐさま飛翔する。
ルミナスはお返しとばかりに無数の魔力弾を
そんな
(信じられん。ワシは今、神々の戦いを見ているのじゃ!)
(これが原初の悪魔と滅んだとされる魔王の戦いか…!)
グスタフは二人の凄まじい戦いに目を見開いたまま見ており、フォルテはその戦いを見て血が騒ぐのだった。
苛烈さを増していき、鬩ぎ合うルミナスと
「ふっ、ふははは!」
笑いながら無数の魔力弾を放つ
ルミナスはそれを全て躱しながら右手に
それに受けて立つ様に、
両者が激突し凄まじい閃光が夜空に広がると、何事も無かったかの様に
「うん、腕は落ちてないようだね。感心感心。」
「喧しいわ!それよりも貴様、この落とし前はどう付けるつもりなのじゃ?」
「うーん、そうだね……。」
「か、神よ、ワシは、ワシは……」
顎に手を当てながらそう呟く
必死になって
「そうだね。僕のシモベのクセして、こんな簡単なお仕事も熟せないなんて残念残念。」
「お待ちを!次こそは必ず成功させて御覧にいれます。今回とて、貴女様を受肉させるという功績を……。」
「はあ?これは無理矢理この子の身体に、僕の力で顕現しただけなんだけど?」
グスタフは誇る様にそう言うが、
「へっ⁉︎」
(…やはりそうか。
供物が圧倒的に足りないからな。)
フォルテは、この召喚がグスタフの力だけではない事に気付いていた。
「キミの功績なんて皆無なのに、笑わせないでよね。」
「僕、失望しちゃった。証拠を残すくらいなら、僕の手で始末しなきゃならないんだもん。」
「し、始末?」
すると、ルミナスの方を見ると見当違いな事を口走った。
「お、おおおっ‼︎そうですとも、貴女様なら必ずや、
ルミナスの首をーー!」
「チッ、バーカ。」
「えっ?」
「ゴミは消えちゃえ。」
「ぐ、ぐ、くわぁぁ!」
そして、グスタフが倒れると同時に同化していた悪魔が姿を現した。
「そ、そんな⁉︎」
「アブァーーッ!」
悪魔は悲痛な叫びを上げながら身体が捻れて消滅した。
(やはりそうなるか……。)
普通に考えれば分かる事だというのに、まさかあんな見当違いな事を言うとはフォルテも思わなかった。
「お前の他にも種は蒔いてあるからね。それじゃあ、僕は帰るね、バイバイ。」
そう言って、
「フンッ!本当に気紛れで、厄介極まりないヤツじゃ。」
(まさか、この事件の裏に原初の悪魔が関わっていたとはな…。)
リムルが優樹から頼まれた
「さて、どうしたものか。」
ルミナスはグスタフが張った結界を見ながらそう呟いた。
そして、パウロの元に向かい回復を施した。
「……うっ。」
意識が戻ったパウロの前に立つルミナス。
「貴様、近う寄れ。」
「は、ハイ!」
ルミナスの言う通り近寄るパウロ。
そして、ルミナスは満面の笑みを浮かべた後、その瞳でパウロを見詰めながら口を開いた。
「よいか、貴様がコヤツを、その棒で殴り倒した。そうじゃな。」
「ハイ!俺がコイツを殴り倒しました!」
パウロは虚ろな目でそう答えた。
(…これは
「うむ、よかろう。」
そう言って、ルミナスは空間移動でこの場から去ったのだった。
とんでもない出来事を見届けたフォルテは、キラーズアイから意識を自分の身体に戻すと、
「…ただの人間に戻ったみたいだな。」
「グスタフが、カールと同化していた
「仲間割れでしょうか?」
リムルとカーネル、紅丸がそう話し合っていると、グスタフの張った隔絶結界が消滅した。
「おい!見ろ!」
すると、アスラン殿下がある方向を指差しており、リムル達はその方向へと向かうと、そこには、気を失って倒れているゼノビア姫と白目を剥いて倒れているグスタフの前に、棒を持って立っているパウロの姿があった。
「ん?」
「まさか、お前が倒したのか?」
「ハイッ!俺がやりました!」
本当は違うのだが、ここで真実を話すと色々と厄介の事になるとフォルテは分かっているので、真実はしばらく胸の中に閉まっておく事にしたのだった。
そして、リムルとフォルテは気を失っているゼノビア姫の元に直ぐに向かった。
特に、ゼノビア姫は一時的とはいえ原初の悪魔である
リムルとフォルテに続く様に、サウザー王太子とアスラン殿下もゼノビア姫の元へと駆け寄る。
「ゼノビア!大丈夫なのか?」
「兄上、落ち着いて下さい。ここはサトル殿とタクト殿の信じましょう。」
ゼノビア姫の安否心配するサウザー王太子とアスラン殿下。
そして、リムルとフォルテは解析結果が出ると、互い頷き合いながら笑みを浮かべて振り返りながら口を開いた。
「肉体的には問題無し。」
「精神的にも安定しているみたいですから、しばらくすれば目を覚ますと思いますよ。」
リムルとフォルテの言葉を聞いて安堵するサウザー王太子とアスラン殿下。
「……感謝する。」
「それで、大怪盗殿。大事な質問があるのだが、いいだろうか?」
「あ、いやぁ〜。」
「どうもすません。実は俺達まだ別のところでお仕事があるんで、ここらで御暇させていただきますね。」
「紅丸!蒼影!」
「カーネル!シャドーマン!」
リムルとフォルテはそう言ってサウザー王太子達から離れて紅丸達を集める。
その際、フォルテはキラーズアイを気付かれない様に回収した。
「じゃあ、これで、失礼するよ。」
「バイバ〜イ。」
そうして、その場から一瞬で去ってしまったリムルとフォルテ達を見ながら、サウザー王太子とアスラン殿下達は互いの顔を見合わせていた。
その後、牢屋に戻ったリムルとフォルテ。
「ご苦労さん。」
「ご苦労だった。」
分身体に労いの言葉を言って吸収し、リムルは本来の姿、フォルテはゴスペル首領の姿へと戻った。
すると、丁度そのタイミングで俺達の元に兵士がやって来た。
「来い、サウザー王太子がお呼びだ。」
そう言って俺達は牢屋から出されてサウザー王太子の元へと連れて行かれた。
「おぉ、待っていたぞ、リムル殿、フォルテ殿。」
そこにはアスラン殿下もおり、俺達の姿を見て手を上げながら話しかけてくる。
「アスラン殿下?」
「すまないが、妹がまたも衰弱してしまったのだ。出来れば、貴殿らが持つ秘薬を分けて欲しいのだが、頼めるだろうか?」
「え?」
そう頼んでくるアスラン殿下に、フォルテは不思議と感じた。
(おかしい…最初に渡した分が量的にもまだあるはずなんだが……。)
「もちろん、いいですよ。」
フォルテがそう思っている間に、リムルは承諾してアピトの蜂蜜を取り出す。
(……あっそう言う事か。)
アピトの蜂蜜を見てフォルテは気付いた。
リムルからアピトの蜂蜜を受け取ったアスラン殿下。
すると、サウザー王太子が近寄りアピトの蜂蜜を確認する。
「むう、やはりな。私が貰った物と同じ、だ。」
「やはりそうでしたか。」
「え?……あ!」
そう、リムルがサトルとしてサウザー王太子にアピトの蜂蜜を渡していた……全く同じ容器で。
サウザー王太子とアスラン殿下が俺達を見る。
二人はアピトの蜂蜜で俺達がサトルとタクトだと確信していた。
その後、応接間に案内されたリムルとフォルテ。
其処には、元気な姿のゼノビア姫とその護衛としてパウロとバラクが立っていた。
サウザー王太子とアスラン殿下そして、俺達が席に着くと、ゼノビア姫が口を開いた。
「リムル様とフォルテ様のお陰で、私、自由の身になれました。」
「貴殿達には何から何まで世話になった。感謝する。」
「我等は貴殿達に恩義を感じている。その事をどうか忘れずに、何かあれば頼って欲しい。」
「は、はぁ。」
「うん。」
もう正体がバレている事は間違いないので、リムルと
フォルテは頷いた。
「こちらこそ、微力ながら御役に立てた様で、何よりです。」
「もしも、また秘薬が必要とあらば、ミョルマイルと言う商人を尋ねて下さい。」
「フフッ、最近台頭したと言う、魔物の国と取引のある商人か。」
「そういえば、その国の盟主の名も、リムル=テンペストと、フォルテ=テンペストというらしい。奇遇な事もあるものです。」
バラクが笑顔でそう言った。
(もう完全にバレているな。)
「やっぱり、すげぇお人達だった。」
パウロは俺達の正体を知って思わずそう呟くのだった。
「ところで、貴方達兄弟を争う様に仕向けたのは、
やはり、この国の国王だったのか?」
フォルテがそう問いかけると、ゼノビア姫が答える。
「それについてなのですが、実は……兵士が拘束しようと向かった時には、既に父王は
ゼノビア姫が聞いた状況だと、玉座の上で薔薇に搦め捕られた状態で苦痛の表情を浮かべながら亡くなっていたそうだ。
……まるで、薔薇に養分を吸い尽くされた様な姿で。
この話を聞いたフォルテは、誰がやったの見当はついてた。
「残されていた資料から、父が
(自分の息子の身体に乗り移ろうとは、……ゼノビア姫が言っていた以上に最低な王だな。)
アスラン殿下から聞いた内容に、フォルテは心の中で怒っていた。
「結果的に良かったのであろうよ。罪状からすれば死罪以外にはあり得なかっただろうからな。」
「本当に全部解決したって訳だ。」
サウザー王太子の話も聞いて、全てを聞き終えたリムルも安心してそう言った。
「はい、ありがとう御座います。リムルさ……いえ、大怪盗サトル様、タクト様。」
「だからそれは、やめてくれって。」
リムルがそう言うと、その場にいた皆が一斉に笑った。
「そういえば、ゼノビアから聞いたのだが、フォルテ殿のその姿も本来の姿ではなく仮初の姿なのだそうだな。」
「出来れば、私達にも本当の姿を見せていただきたい。」
アスラン殿下とサウザー王太子がそう願い出る。
そう、フォルテはまだゴスペル首領の姿のままなのだ。
「そうだな。ここまでバレたらもう隠している必要も無いな。」
そうして、フォルテは皆の前で本来のフォルテの姿に戻った。
フォルテの本来の姿に、ゼノビア姫以外の皆は一瞬驚いた。
「話には聞いてはいたが、それが本当の姿なのだな。」
「だが、漂う風格から侮れないと一目で分かる。流石と言うべきだ。」
サウザー王太子とアスラン殿下は、フォルテの本来の力を見ただけで感じ取っていた。
「確かに、大怪盗であったあの様なお調子者がフォルテ殿だとは普通は思まわないな。」
「全くだな。」
「……もう忘れてくれ。」
アスラン殿下とサウザー王太子にそう言われ、大怪盗タクトとして演じていた事を今になって恥ずかしくなったのか、フォルテは少し頬を赤らめながらそっぽを向いた。
そんなフォルテの姿に、皆が再び笑い出すのだった。
時は少し遡り、瓦礫などが宙に浮かぶとある空間。
その一部が開き、夕焼けに照らされた黄金の国が見える。
そして、空間内に突き刺さる柱の内の一つに腰掛ける黄色の髪の女性が、右手に魔力を集束させながら口を開く。
「はぁぁん……懲りない奴だな
そう言いながら、集束させた魔力をその国に向かって放つと、魔力弾により国は大爆発し跡形も無く吹き飛んだ。
別の空間では、ユニコーンを模した肘掛けが付いた豪華な玉座に座り、右側に少年の様な従者、左側に青年の様な従者を控えさせた、白髪に赤い瞳の女性が優雅にワインを飲んでいた。
「また失敗したのね、あの子。」
そして、八つの水晶が並ぶ部屋に降り立つ
「………さて。次は何処から芽が出るかな?」
そう言う
「…僕としては、やっぱり君に呼ばれたいけどね。会える日を楽しみにしてるからね。」
そう言って、
其処に映っていた者は……フォルテだった。
時は現在へと戻り、別の場所…ルミナスがあの氷の棺に眠る女性の前に立っていた。
「多少の面倒はあったが、片付けて来たぞ。」
ルミナスの脳裏に浮かぶのは、玉座に座るテドロン王の姿だった。
「しくじりおったか!クソが!」
アスラン殿下達の父であるテドロン王は、グスタフ達の失敗を知り苛立ちながら玉座の肘掛けを叩いた。
「こうなれば余自らの肉体に、悪魔を受肉させて見せようぞ!」
「馬鹿め。その様な愚かな行為に手を染めるから、
突然聞こえくる声に、テドロン王が顔を上げ見た先には、ソファーに仰向けで寝そべるルミナスの姿だった。
「この国は狂王への備えでもあるゆえ、大人しくこの地を守っていたならば、死の間際に褒美をくれてやったものを。」
「な、貴様、何者だ!」
突然現れたルミナスに、テドロン王は声を上げる。
「貴様こそ、妾を誰じゃと思うておる。」
ルミナスがソファーから起き上がり顔を見せると、ルミナスの顔を見たテドロン王はすぐにその正体に気付いた。
「あっ⁉︎貴方は四方の守護ーー!」
「慈悲はやらぬ。禁忌に触れた事、地獄で反省するがよかろう。」
ルミナスはテドロン王に向かって手を翳し魔法を発動する。
すると、テドロン王の周囲に薔薇の蔦が生え、テドロン王を搦め捕る。
「ぐ、うぅ、ぐわぁぁぁぁぁ!」
そして、薔薇がテドロン王の命を吸い取りながら綺麗な赤い薔薇を咲かせながらもすぐに散らせるのだった。
命を吸われ嘆き声を上げるテドロン王……その様は、美しくも残酷な光景だった。
こうして、テドロン王を始末し終えたルミナスは、氷の棺の中で眠っている女性に向かって再び口を開いた。
「安心して、眠っているが良い。」
ルミナス優しい眼差しで見据える氷の棺の中の女性の顔立ちは、……どこかクロエ・オベールに似ていた。
この事件の裏に、こんな事があったと知らないリムルと、偶然にも、ルミナスと
サウザー王太子は近く戴冠する事が決まり、アスラン王子は軍務卿としてそれを支える事となった。
そして、病が完治したゼノビア姫のユニークスキルは失われていた。
恐らく、
フォルテは思った。
そして……。
「パウロ、本当に残るのか?」
「騎士団長にスカウトされたからな。」
「期待しているぞ。」
「はっ!」
グスタフからゼノビア姫を助けた勇気を認められ、
アスラン殿下にスカウトされたのだ。
まぁ、パウロの実力なら大丈夫だろう。
「ま、精々頑張れよ。」
「皆、元気でね。」
「またいつか必ず会おう。」
リムル、シズさん、フォルテは皆に別れの挨拶をし、
コリウス王国を出発した。
これにて、リムルのコリウス王国での任務は終了した。
「………と言う事があった訳だ。」
「なるほど。」
フォルテはコーヒーを飲みながら、オルタにコリウス王国での出来事を語り終えた。
「あの後、リムルと別れて俺は
「フォルテ様とリムル様は大変だったのですね。」
コーヒーを飲み干したフォルテは、カップを机の上に置き、
「そういえば、ゼノビア姫のユニークスキルが失われたのは、やはりウルティマが一時的に依代にしたからだったのか?」
「まぁ、そうだね。」
フォルテの問いに、ウルティマは軽く頬を掻きながら答える。
「なら、また会う時には、このユニークスキルをゼノビア姫に渡さないとな。」
そう言うフォルテの目が薄らと赤く光っていた。
実は、真なる魔王となり、色々と得た
(魂の形…人の本質を見抜く力はこれから色々役立つだろう。)
因みに、フォルテはこのユニークスキルを複製し、アクアに
それにより、アクアは自身のユニークスキル
ちなみに、フォルテもアクアから複製し
そして、現在のコリウス王国では。
「新しい魔王が二人も誕生しただと⁉︎」
「その名は、リムル=テンペストとフォルテ=テンペスト。」
「まあ!」
新たな魔王の誕生にアスラン殿下は驚くも、サウザー王太子がその新たな魔王の名を言うと、ゼノビア姫は嬉しそうに声を上げた。
「ほお。あの強さなら、魔王というのも納得よな。」
「これでは嫁げそうにもありませんわね。残念です。」
リムルとフォルテが魔王となった事にアスラン殿下は納得し、ゼノビア姫はどちらかに嫁ごうとしていたので少し残念そうにしていた。
「何にせよ、目出度い事よ。我が国としても、是非とも国交を結ばせてもらおう。」
サウザー王太子達がそう話している一方でパウロは。
(ヤベエ……俺、魔王様達を相手に生意気な口を利いちゃったし、金を借りたまま返してないぞ………どうしよう?)
リムルとフォルテに生意気な口を聞いたり、金を借りたまま返していない事を気にして冷や汗をかいていた。
泣く子も黙ると恐れられるコリウス王国のパウロ騎士団長はこの後、〝魔王達から借りパクした男〟として、名を馳せる事になるのだった。
コリウス王国でのウルティマの暗躍とルミナスの裁き。
リムルの知らないところ…しかもすぐ側でそんな事があったなんて、改めて驚きますよね。
キラーズアイから全てを見ていたフォルテ。
この時は、まさかそのウルティマが自分の配下になるなんて想像もしなかった事でしょう。
次回は、転スラ劇場版の話に入ります。