転生したらフォルテだった件   作:雷影

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本編100話目となります。
遂に引いたが魔国連邦(テンペスト)にやって来たが、来た場所で出会った相手が里の仇!
どうなるのか本編をどうぞ。


100話 紅蓮の絆 再会

ゲルドが襲撃を受ける少し前、フォルテが今日の仕事を終え、リムルの居る庵に来ていた。

 

「リムル。今日の分の書類の確認は終わったぞ。」

 

「ああフォルテ。いつもありがとうな。」

 

そう言いながら、地図を見て悩んでいるリムル。

 

「どうしたリムル?何を悩んでいるんだ。」

 

「いやねぇ…ファルムスでのディアブロの暗躍が、今のところは上手くいっているけど、ちょっと心配だなぁと思って…。」

 

「なるほど……まぁディアブロなら大丈夫だろう。寧ろ、一番執事(バトラー)として十分過ぎるぐらいの働きを出していると思うぞ。」

 

「それはそうなんだけど……そういえば、ウルティマは?昨日から姿を見てないけど?」

 

「ウルティマは一旦冥界にある物を取りに戻っている。」

 

「ある物?」

 

リムルはスライムボディから疑問符を出しながら聞いてくる。

 

 

 

昨日、特訓を終えたフォルテが、息抜きに遊戯王カードのデッキ作成をしている時だった。

 

「フォルテ様。頼まれていた仕事が終わったよ。」

 

「ウルティマ、いつも済まないな。」

 

「あれ?フォルテ様またその札遊びをしているの。」

 

「前世でも趣味でやっていたからな。気分転換に丁度良い。まだ自分用のデッキ…山札作りの段階だかな。」

 

「ふ〜ん。そうなんだ。」

 

そう言って、ウルティマはフォルテの隣に立ってカードを見る。

 

「……色々と種類があるんだね。」

 

「ああ。モンスター、魔法、罠の三種類を組み合わせ、いかにして対戦相手を倒すかが大事だからな。」

 

「へ〜。結構頭を使うんだね。……なんだか面白そう。」

 

ウルティマも遊戯王に興味を持った。

 

「なら、俺が教えてやろうか?」

 

「いいの!」

 

「勿論だ。」

 

そうして、フォルテはウルティマに遊戯王のルールやカードのテーマや組み合わせなどをある程度教えた。

 

「なるほどねぇ、ただ強い札…カードを使えばいいってわけじゃないんだね。」

 

「その通りだ。まぁ俺は、自分の好きなテーマ…モンスターを軸にして作っているがな。」

 

そう言って、フォルテが並べたカードは、漆黒の機械の

蛇竜が描かれた三枚と、漆黒の三つ首の機械龍が描かれたカードだった。

 

「確かに、フォルテ様にピッタリなカードだよね。」

 

「ウルティマならどのカードを使ってみたいと思う。」

 

「そうだね〜。」

 

ウルティマはフォルテが並べるカードをじっくりと見る。

 

「……このカードとかが気になるかな。」

 

そう言ってウルティマが選んだのは、七つの宝玉が埋め込まれた白と黒の龍神だった。

 

「中々良いカードを選んだな。何か理由があるのか?」

 

「え〜とね。この宝玉とかを見ていたら、僕も似た様な札と宝石を持っているのを思い出したんだ。」

 

「何?」

 

ウルティマの言葉にフォルテは反応した。似た様な札と宝石……それは一体?

 

「それはどんな物なんだ?」

 

「えっと、確か……こんな文字と宝石が描かれた二枚と、この六色の宝石だよ。」

 

そう言ってウルティマが紙に描いたのは、辰と巳の二文字とアメジストが刻印された龍の絵札と、紫、青、水色、緑、白、黄の六つのブリリアントカットされた宝石だった。

 

「……ウルティマ、もしかしてだが、この宝石の大きさは掌くらいじゃなかったか?」

 

「そうだけど、この宝石の事知っているフォルテ様?」

 

そう…フォルテは知っている。この絵札も宝石の事も。

 

「まぁ、本当に俺が知っている絵札と宝石かは直接見ないと分からないがな。それで、その絵札と宝石は何処で手に入れたんだ?」

 

「え〜っとね、確か…千年…二千年くらい前かな?ちょっと現世に遊びに出た時に、森の中で見つけたんだ。」

 

ウルティマの話によれば、森の中で岩に突き刺さっていたそうだ。

 

「何かなって近づいたらね、その絵札からすっごい魔力を感じたんだ。しかも、僕好みの澄んだ紫だったから、持って帰る事にしたんだ。」

 

「なるほど。(確か…あのカード達には、アニメだと時空を超えて数枚異世界に渡った設定があったが……ウルティマが見つけたのはまさかアニメ最終回後に飛び散ったカードだったりするのか?)」

 

ウルティマが持っているというそのカードについて悩むフォルテ。

 

「じゃあ、宝石の方はどうやって手に入れたんだ?」

 

「宝石の方は、どこかの遺跡で死んでた冒険者が持っていたんだよね。」

 

「遺跡?」

 

「ずいぶん昔の事だから、どこの遺跡だっかは忘れちゃったけど、その冒険者が紫色の宝石を握り締めていて、宝石からすっごい力を感じたから僕が貰ったんだ。」

 

「残り五つは?」

 

「それはね、その冒険者が残したメモに同じ宝石があと六つある事を知ったから、僕のシモベ達に探させたんだ。……で、見つかったのが五つで、最後の一つがどうして見つからなかったから諦めちゃったんだ。」

 

「そうか…。(ウルティマの話を聞く限りだと、その冒険者が異世界人で俺が知る世界からその宝石ごと転移した…あるいは、その宝石自体が時空を超えてこちらの世界にきたかのどちらかだろうな。)」

 

フォルテはその宝石がどの様にしてこちらの世界にきたのかを考えた。

 

「その宝石、他の同じ宝石に近づけたらなにか変化はなかったか?」

 

フォルテの言葉に、ウルティマは少し驚く。

 

「やっぱりフォルテは宝石について何か知っているんだね。フォルテの言う通り、新しい宝石を見つけた後、保管してあった宝石に近づけたら、共鳴して周囲に物凄い魔力を放出したんだ。」

 

フォルテの知る宝石の特徴とやはり一致する現象も起こっていた様だ。

 

「ウルティマ、済まないがその絵札と宝石を持ってきてくれないか。直接見て確認してみたい。」

 

「うん。分かった。」

 

そうして、ウルティマはヴェイロンとゾンダの二人を連れて冥界の居城に一旦、絵札と宝石を取りに戻って行った。

 

「……マジか。」

 

話を聞いていたリムルは唖然となっていた。

 

「まぁ、そういう反応になるよな。それで、ウルティマは取りに戻るついでだからと、宝物の整理もしてくるそうだ。」

 

「……なんかもうなんでもアリに思えてきたな。もし、

ウルティマが取りに戻っている物が、俺やフォルテの予想している物だったから色々と大変だな。」

 

「もしそうなら、俺が何とかするからリムルは気にするな。」

 

「でもなぁ……。」

 

ウルティマが取りに戻っている物が物だけに、リムルは不安になるのだった。

 

「リムル様。」

 

「ん?」

 

そんな時だった。

朱菜がお茶を用意を持って、シズとアイリスと一緒に来てくれた。

 

「あまり棍を詰めるとお体に毒ですよ。」

 

「一緒に少し休憩しようリムルさん。フォルテ君。」

 

「そうだな。」

 

「ありがとう。朱菜、シズさん。」

 

そう言って朱菜達のいる縁側まで移動するリムルとフォルテ。

 

「一服するか。」

 

「はい。さあどうぞ。」

 

朱菜がリムルにお茶を差し出す。

 

「紫苑も。」

 

「フォルテもはい。」

 

シズさんが紫苑に、アイリスがフォルテにお茶を渡す。

 

「ありがとうございます。」

 

「ありがとうアイリス。」

 

「いただきます。」

 

フォルテ達はお茶を受け取りそのまま口にする。

 

「ふぅ……うん、美味い。」

 

「ん〜落ち着きます。」

 

紫苑もお茶を飲んで心を落ち着かせいた。

 

「身体の芯から温まるな。」

 

「そうだね。」

 

「ええ。」

 

フォルテ、シズさん、アイリスも、お茶を飲んで心を和ませていた。

 

「ふぅ…。」

 

カコーン

 

皆がお茶を飲む中、鹿威し(ししおどし)の音が辺りに響く。

 

「平和だなあ…。」

 

「はい。この様な日々がずっと続くといいですね。」

 

「そうだな。」

 

「朱菜の言う通りだな。」

 

そうして、リムルとフォルテは朱菜達と共にこの平穏を満喫するのだった。

 

「あっ、そうでした!」

 

「「「「「ん?」」」」」

 

突然何かを思い出した紫苑が声を上げた。

 

「どうした?紫苑。」

 

何かを取り出そうとする紫苑に、リムルが問いかける。

 

「先日、リムル様からレシピを伺った、“クッキー”というものを焼いてきたのです。」

 

「ヒッ…」

 

「えっ!」

 

紫苑の言葉に朱菜は青ざめ、リムルは驚愕する。

 

「ぜひ、お茶うけにどうぞ!」

 

そう言いなが、曇り無き輝いた目で御重を持ってこちらに振り返る紫苑。

 

「おおっ!平和がいきなり破られた!」

 

「いや、…そこまで言わんでもいいだろ。」

 

紫苑が嬉々として御重の蓋を開けると、凄まじい紫の負の怨霊の様な瘴気が御重から解き放たれる。

 

すると、空が紫の暗雲に覆われ、紫の瘴気が風に乗る。

 

見た目は普通のクッキーなのだが、やはり紫苑が作ると全て紫色に染まってしまう。

 

それを見たリムルは柱に飛び引きへばり付き、シズさんとアイリスは引き攣った笑みを浮かべていた。

 

そして、朱菜はそそくさと立ち上がる。

 

「わ…(わたくし)は、機織りの途中でした。これで失礼します。」

 

その言ってこの場から立ち去ろうとする朱菜。

 

「あ…逃げる気だ。ま…、待て朱菜!」

 

リムルは朱菜を止めよう跳びつこうとするが、朱菜は滑らかな動きで躱した。

 

(ごめんなさい…リムル様。)

 

「ざ…残像だと?」

 

結局、朱菜はこの場から去って行った。

 

「さあ、どうぞリムル様。遠慮なさらず。」

 

そう言ってクッキー?の入った御重をリムルに押し付ける紫苑。

 

「うう…。」

 

「さあ!」

 

料理人(サバクモノ)のスキルがあるからって…食べ物には色合いも大事なんだよ〜。)

 

純粋に食べて欲しい紫苑と、何とかしようと必死なリムルだった。

 

……一方のフォルテは。

 

「リムル。いい加減食べてやればいいだろう。」

 

「リムルさん。大丈夫だよ。」

 

「普通に美味しいから。」

 

シズさん、アイリスと共に普通に紫苑のクッキーを食べていた。

 

(フォルテだけじゃなくて、シズさんと

アイリスも普通に食べているだと⁉︎)

 

その様子を驚愕した表情で見るリムル。

 

実は、紫苑はあれからもフォルテの指導を受けながら料理を頑張っていた。

その様子をずっと見守っていたシズさんとアイリスは、紫苑の為にと彼女が作った料理を試食した。

フォルテの指導と紫苑自身の努力の賜物で、下拵えなど全てがちゃんと出来る様になった紫苑の料理は、食感も普通となり食べられる様になっていた。

 

それ以降、シズさんとアイリスも普通に紫苑の料理を食べられる様になったのだった。

 

「召し上がって下さいリムル様。ささっ、どうぞどうぞ!」

 

紫苑は今も御重をリムルに押し付ける。

皆が食べている中、自分だけ食べないという選択が出来なくなったリムルは、覚悟を決めた。

 

「わ、分かった。分かったから落ち着け紫苑!」

 

「はい!」

 

そして、リムルは恐る恐るクッキー?を手に取り……食べた。

 

「どうだリムル。」

 

「……うん、美味しい。」

 

リムルの言葉に紫苑は満面の笑みを浮かべるのだった。

 

そして、丁度その時だった。

 

「リムル様。」

 

「フォルテ様。」

 

蒼影とシャドーマンが二人の前に現れたのは。

 

「森でゲルド殿が襲撃を受けております。」

 

「既に皆には報告し、救援に向かっております。」

 

「えっ?」

 

「ゲルドが襲撃されているだと?」

 

 

 

 

 

リムルとフォルテが蒼影とシャドーマンから襲撃の報せ聞いている一方、ゲルドは襲撃者と戦っていた。

 

「うおーっ!」

 

襲撃者は飛び上がりながら手に持つ長巻を真上で回転させながら、落下の勢いと回転による速度を加えた一撃をゲルド目掛けて振り下ろす。

 

「はああ…。」

 

それに対してゲルドは、ユニークスキル美食者(ミタスモノ)で自身の胃袋に収納していた肉切り包丁を取り出しその一撃を受け止める。

 

受け止めた瞬間、周囲に凄まじい衝撃波が飛び、近くにいた猪人族(ハイオーク)が宙に浮いた。

 

自分の一撃を受け止められた襲撃者は、鍔迫り合い後に一旦ゲルドから距離を取り構える。

ゲルドも一旦距離を取り襲撃者を見る。

襲撃者の正体は……ヒイロだった。

 

何故ヒイロがここにいるのかは謎だが、事態は不味い状況と言っていいだろう。

ヒイロの前にゲルド…里の仇がいるのだから。

 

ヒイロは長巻を振るいながら再び構えると、ゲルド目掛けて突っ込む。

 

ゲルドの肉切り包丁と、ヒイロの長巻がぶつかり合う。

 

ゲルドが再び距離を取ると、ヒイロは逃すまいと全身を回転させながら長巻に回転の加速を加えて斬り掛かる。

 

ゲルドはその一撃を受け止めると、少し押された後でヒイロを斬り払った。

 

豚頭族(オーク)の残党め…。」

 

ゲルドに斬り払われ膝を突いていたヒイロは、そう口にしながら立ち上がる。

 

「あっ。」

 

「今度は魔国連邦(テンペスト)を狙っているのか!」

 

そう声を上げながら再びゲルドに斬り掛かるヒイロ。

斬り合う度に、ヒイロの一撃一撃の威力が上がっていく。

 

「とあーっ!」

 

飛び上がり、落下の勢いを加えたヒイロの一撃が、ゲルドの肉切り包丁の刃に喰い込む。

 

「ぐっ…。」

 

ヒイロの一撃に耐えるゲルド。

 

「斥候か?てめぇ!」

 

ヒイロの瞳が赤く染まっていく。だが、ゲルドはそれよりも、ヒイロの額に生えている角に気付いた。

 

「その角…。」

 

「うおーっ!」

 

ゲルドがヒイロの角に意識が向いてしまったその時、ヒイロがゲルドを蹴り飛ばす。

ふらつきながらも構えなおすゲルド。

 

ヒイロの赤く染まった瞳でゲルドを再び睨む。

 

「うりゃあーっ!」

 

そしてゲルドに再び斬り掛かる。

 

「ぬおーっ!」

 

ヒイロの凄まじい猛攻に、ゲルドは防戦一方となる。

ゲルドの仲間達は、ヒイロの連れて来た二名の者達と戦闘となり助けにいけない。

 

「ぐぐーっ!」

 

「うおーっ!」

 

再び鍔迫り合いの後、互いに距離を取ると、ヒイロがすぐさま動いた。

 

「里の仇!」

 

ヒイロは飛び上がりながら印を結ぶ。そう、紅丸も使用した事のあるあの魔法だ。

 

鬼王の妖炎(オーガフレイム)!」

 

ヒイロから放たれる炎がゲルドに迫る。

 

ゲルドは胃袋から盾を取り出そうとしたその時、ゲルドより二回りほど大きな身体の者が、ゲルドの前に現れた。

 

「父王!」

 

そう、ゲルドの父である猪八戒だ。

 

猪八戒は両腕を交差させてヒイロの鬼王の妖炎(オーガフレイム)を真っ向から受ける。

 

「父王‼︎」

 

鬼王の妖炎(オーガフレイム)が猪八戒に直撃すると、炎の竜巻となって呑み込んだ。

 

ヒイロがそのまま様子を伺っていると、竜巻の中から猪八戒の声が聞こえてくる。

 

「うおおおおー……はぁ!

 

猪八戒は炎の竜巻の中で交差させていた腕を左右に振り広げて炎の竜巻を吹き飛ばした。

 

「なっ…ちぃ!」

 

それを見たヒイロは驚くも、猪八戒を睨むとすぐに構え直した。

 

「うう…。」

 

猪八戒の鬼王の妖炎(オーガフレイム)で焼かれた身体は、超速再生で瞬く間に癒えた。

 

「父王……。」

 

「大丈夫だゲルドよ。それよりも、あの男は……。」

 

猪八戒は目の前にいる男…ヒイロを見据える。

……額に生えたその角を。

 

猪八戒もヒイロの正体に気付いでいた。

ヒイロは突如現れた猪八戒を観察し、その身体から溢れる凄まじい妖気(オーラ)から、豚頭族(オーク)の親玉だとすぐに気付いた。

 

そして、猪八戒の背後にいたゲルドがヒイロに向かって口を開く。

 

「“(かたき)”と言ったな。やはり大鬼族(オーガ)の……。」

 

ゲルドの言葉に、ヒイロは保っていた理性が限界を迎える。

 

「ううう…。」

 

ヒイロは全身から炎が荒ぶり、歯軋りすると長巻の刃が炎を纏う。

 

「うおーっ!」

 

そして目が完全に赤く染まり、叫び声を上げながら猪八戒達目掛けて駆け出す。

 

「うおおおーっ!」

 

ヒイロが大鬼族(オーガ)の生き残りだと知った猪八戒は、両腕を下ろした。

 

「ゲルド…息子よ。後は任せた。」

 

「父王…。」

 

ゲルドは猪八戒の使用としている事をすぐに理解した。自分が同じ立場ならば間違いなく同じ事をするのだから。

 

「うおおおーっ!」

 

猪八戒へと迫るヒイロ。その時、ヒイロの背後から蒼華が苦無を投げる。

 

「はっ!」

 

ヒイロは苦無に気付くと振り返りながら全て叩き落とした。

 

「フンッ!」

 

そして、苦無を手に持った蒼華が残像を出しながら高速でヒイロに迫る。

 

「何者かは知らんが…。」

 

蒼華はそのまま苦無でヒイロに斬り掛かるが、紙一重で躱される。

 

「うおっ!」

 

「うわあーっ!」

 

ヒイロは蒼華の腕を掴むとそのまま蒼華を上空へと投げ飛ばした。

蒼華は翼を出してなんとか空中で体勢を整えるも、猪八戒に向かうヒイロをもはや止める事は出来ない。

 

「うおおーっ!」

 

ヒイロは猪八戒目掛けて飛び上がり、荒ぶる炎を纏いながら渾身の一撃を放つ。

 

「てあーっ!」

 

里の皆の思い込めたヒイロの一撃。

猪八戒は敢えて抵抗せずに目を閉じてその一撃を受けようとする。

………自分の犯した罪を償う為に。

 

迫るヒイロの刃……だが、その刃が猪八戒を届く事はなかった。

何故なら……。

 

ガキーン!

 

間一髪のところを紅丸が割って入りヒイロの一撃を防いだからだ。

 

「なっ…。」

 

紅丸の登場に驚く猪八戒。

 

紅丸はヒイロの刃を受け止めながら顔を見てすぐヒイロに気付いた。

 

「兄者?」

 

「はっ!」

 

紅丸の声で我に返ったヒイロは飛び引くと、構えながら改めて紅丸を見る。

 

「まさか…。」

 

「お前…。」

 

紅丸とヒイロは、互いに目の前にいる者が信じられなかった。

 

「兄者……なのか?生きていたのか。」

 

紅丸は、思わず刀を下ろして前に出る。

 

「若?これは夢か?お前こそどうして…。里は滅んだはず。」

 

「ああ。だが生き延びた。救われたんだ。名前も貰った。今の俺は“紅丸(ベニマル)”だ。」

 

「ハハハ…。これは夢じゃないな。夢にしちゃ出来すぎてる。」

 

目の前にいるのが本当に若…紅丸と知ってヒイロは、顔に手を当てながら喜んだ。

 

「俺もだ。“ヒイロ”。それが俺の名だ。」

 

「ヒイロ?そうか。兄者も名持ち(ネームド)になったのか。」

 

紅丸は嬉しそうにヒイロに近寄る。

 

「ああ。これほど嬉しい奇遇があるものか。」

 

ヒイロと紅丸は嬉しそうに互いの長巻と刀をぶつけ合った。

 

 

 

そして、ヒイロは紅丸から事情を聞くことにした。

無理もない。仇である筈の猪八戒を庇ったのだから。

 

「里を滅ぼした豚頭族(オーク)を庇うとは、どういう訳だ?」

 

「話せば長くなるが、和解したのさ。こいつらは猪八戒とゲルド。魔国連邦(テンペスト)の、うちの大事な仲間さ。」

 

「仲間だと?」

 

ヒイロは長巻を握り締めながら猪八戒とゲルドを睨む。

ヒイロの連れの二人はまた戦闘になる事を予想し、剣をすぐに抜刀出来る様に握って構える。

 

「「んっ…。」」

 

しばらく二人を睨んだ後、ヒイロは自分を落ち着かせる様に一旦目を閉じた。

 

「いや、お前がそう言うなら豚頭族(オーク)はもはや仇ではないのだろう。」

 

そう言って、改めて猪八戒とゲルドを見るヒイロ。

 

「非礼を詫びよう。心から。」

 

二人に対し頭を下げて謝罪するヒイロ。

それを見た連れの二人も頭を下げて謝罪する。

 

「いや…。我らが大鬼族(オーガ)の里を滅ぼしたのは事実。」

 

「父王の言う通り。何度謝っても許される事ではない。」

 

猪八戒とゲルドも、ヒイロに対して頭を下げる。

二人は…いや猪人族(ハイオーク)達は誰一人として犯した罪を…過ちを忘れてはいない。

だからこそ、自分達を救ってくれたリムルとフォルテの為、自分達を許してくれた紅丸達の為に持てる力の限り魔国連邦(テンペスト)の皆の為に尽くすと誓ったのだから。

 

互いに頭を下げて謝罪した後、ヒイロが頭を上げと、連れの二人がヒイロに話し掛ける。

 

「隊長。」

 

「これはどういう…。」

 

「ああ。この紅丸という男は、大鬼族(オーガ)の里で幼なじみだった。」

 

ヒイロが二人にそう話して間に近寄る紅丸。

ヒイロの話しを聞いた二人は、もう一度紅丸に頭を下げるのだった。

 

「兄者?」

 

「ん?」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、声のする方にヒイロが顔を向けると、その先にいたのは、リムルを抱き抱える朱菜と、紫苑、蒼影、白老、黒兵衛だった。

 

「まさか…本当に?」

 

紫苑は、ヒイロが生きていた事に驚き、信じられずにそう呟いていた。

 

それはヒイロも同じで、紅丸だけでなく紫苑達が生きていた事に驚きながら、皆の元へと向かう。

 

「お前達…それにお師匠も!」

 

「うむ…。」

 

「兄様。」

 

「おお…立派になったべ!」

 

「久しいな。」

 

皆がヒイロの再会を喜ぶ中。

 

「うっ、うう…。」

 

紫苑は嬉しさの余り啜り泣いていた。

泣き続ける紫苑を見ながら笑みを浮かべるヒイロ。

 

そんな中、ヒイロに近寄る朱菜。

 

「生きておられたなんて…。」

 

朱菜はヒイロの左手を取って、自分の右頬に当てる。

……本当にヒイロが生きて自分の前にいるのを確認する様に。

 

ヒイロが生きている事を改めて理解した朱菜は涙を流し、紫苑と同じ様に啜り泣いた。

 

その様子を、白老達と共に駆けつけていたゴブタ、雷蔵、ガビル、ランサー達が見守る中、ヤシチ、スケロウ、

カクシンの三人は感動して涙を流していた。

 

リムルも、朱菜の腕の中で皆の様子を嬉しそうに見ていた。

 

フォルテは、シズさんとアイリスと共に、少し離れた場所から優しい笑みを浮かべながら朱菜達の再会を見守っていた。

 

 

……そんな中、ヤマトマン達と共にいるヤムザは、ヒイロの顔を見て、“何処かで見た様な”と思いながら首を傾げていた。

 

……自分が始末したと思っていた大鬼族(オーガ)の脱走兵がヒイロだと知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紅丸達と再会し笑顔のヒイロ。
自分以外の里の皆はいなくなってしまったと思っていたヒイロ。そして、同じようにヒイロが生きていた事に紅丸達が喜び、紫苑と朱菜が涙する姿から本当に良かったと思いました。

そして、ウルティマが持っている絵札と宝石……それが意味するものとは一体?
それを取りに冥界に戻っているウルティマ。……戻って来た時どうなるのか……お楽しみに。

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