転生したらフォルテだった件   作:雷影

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お待たせしました。
ラージャ小亜国にやって来たリムルとフォルテ。
トワ女王を救う為に動き出す。


102話 紅蓮の絆 トワ

ラージャ小亜国へと向かうリムルとフォルテ達。

空を飛ぶ飛竜(ワイバーン)とヴェルドラと共に空を駆ける嵐牙(ランガ)とゴスペル。

 

しばらく空を飛び駆けて行くと、ヒイロが口を開いた。

 

「見えてきたぞ。あれがラージャ小亜国だ。」

 

「わあ…。」

 

朱菜が声を上げると雲を抜けた先に見えたのは、周囲が崖に覆われながらも無数の滝が流れる神秘的な国だった。

 

「美しい国ですね。」

 

「ありがとうございます。ただ、以前よりは活気がなくなってきているのでございます。」

 

フジがそう説明した直後だった。

 

グウゥゥ。

 

フジのお腹の音が鳴った。

 

「し…失礼いたしました。」

 

「フフフ。いい鳴りっぷりですね。こんな事もあろうかと…はい!」

 

その音を聞いた紫苑は笑顔で風呂敷に包まれた御重を取り出した。

そう…紫苑はまたあのクッキーを持参していたのだ。

 

風呂敷を外して御重の蓋を開けると、お約束で凄まじい紫の瘴気が放たれた。

その瘴気に包まれた飛竜(ワイバーン)は悶絶した表情を浮かべると、意識を失い落下した。

 

「え?いや〜!」

 

「な…何だ?」

 

「様子がおかしい。行くぞゴスペル!」

 

「俺達も追うぞ嵐牙(ランガ)!」

 

「「ハッ!」」

 

落下する紫苑を乗せた飛竜(ワイバーン)の元へと急ぐリムルとフォルテ。

 

追い付くと、嵐牙(ランガ)とゴスペルが飛竜(ワイバーン)の顔に軽く体当たりをかました。

 

その衝撃で目覚めた飛竜(ワイバーン)はすぐに体勢を立て直して水面ギリギリを飛びながら滝を突き抜けてなんとか飛翔した。

 

「ふう…ん?」

 

「……これは。」

 

その際、リムルとフォルテは滝の水を浴びたが、それによりこの水の異変の原因に気付いた。

 

《滝の水を解析した。この水の中にある毒は、自然界には存在しない組成の毒だと判明した。》

 

電脳之神(デューオ)の解析結果を聞いたフォルテは、リムルの方へと顔を向けると、リムルも水に混ざったこの毒の組成に気付いた様だ。

 

だが、まずはこの国の女王トワと会って話をしてからだ。

 

 

その後、ラージャ小亜国に到着したリムルとフォルテは客間に案内されそこでヒイロからモブジと大臣を紹介された。

 

「宰相のモブジと大臣だ。あちらがジュラテンペスト連邦国の盟主、リムル=テンペスト殿とフォルテ=テンペスト殿だ。」

 

「「ん…。」」

 

「これはこれは、大したおもてなしも出来ませねが、ラージャ小亜国を代表し歓迎致します。」

 

「御足労頂きありがとうございます。」

 

モブジと大臣がそう言った後、大臣がじっとリムルを見ていた。

 

「その…リムル殿は魔物、スライムだと聞き及んでおりましたが…。」

 

(どうやら、リムルが人の姿になれる事までは知らないんだな。)

 

「ああ。これは?」

 

リムルは二人の前で本来のスライムの姿に戻る。

 

「「なっ!」」

 

「こっちの方が話しやすいか?」

 

「し…失礼しました。我らに合わせていただいていたとは知らず…。どうかお戻りください。」

 

「そう?」

 

「「はい。」」

 

「んじゃ。」

 

そうして人の姿に戻ったリムル。

 

ヒイロはモブジと大臣に問いかける。

 

「トワ様は?」

 

「眠っておられる。チクアン殿がついておる。」

 

「ならば先に報告を、ジュラの大森林の開墾の件だがー、暴風竜ヴェルドラ様に許可をもらえた。」

 

「な…何と!」

 

「お会いできたのか?」

 

「ああ。目の前に既におられる。」

 

ヒイロがそう言って顔を向けると、モブジと大臣も同じほうに顔を向けた。

 

「ん?」

 

そこにいたのは、漫画を読んでいるヴェルドラの姿だった。

 

「あの方が…。」

 

「ヴェルドラ様?」

 

モブジと大臣は訝しげにヴェルドラを見ていた。まぁ無理はない。

 

「ほう。我を疑っておるようだな。…ならばフンッ!」

 

ヴェルドラはその場少しだけ妖気(オーラ)を放出した。

 

「のおぉぉ⁉︎」

 

「ひぇぇぇ‼︎」

 

ヴェルドラから放たれる凄まじい妖気(オーラ)に当てられたモブジと大臣は怯えて悲鳴を上げた。

 

「ヴェルドラ!」

 

「もういい!」

 

「うっ…うむ。」

 

リムルとフォルテの声に、ヴェルドラはすぐに妖気(オーラ)を引っ込めた。

 

「すまない。」

 

「大丈夫ですか?」

 

フォルテとリムルはモブジと大臣を心配し声を掛ける。

 

「えっええ大丈夫ですじゃ。」

 

「この凄まじい妖気(オーラ)…やはり本物のヴェルドラ様。」

 

二人は目の前にいるのがヴェルドラが本物だと理解した。

 

「ヒイロ。良く許可を取ってきた。」

 

「全くじゃ。」

 

「リムル殿とフォルテ殿の口添えあってのことだ。」

 

「それほどでもないけど。」

 

「あまり勝手なことはしないように気をつけてくれ。それなら問題ないだろうヴェルドラ。」

 

「うむ。騒々しくせぬのなら、我としては問題はない。」

 

ヴェルドラの言葉を聞いたモブジと大臣は、すぐに口を開いた。

 

「も…もちろんですとも。」

 

「あ…有難き幸せ。皆も喜ぶでしょう。しかし、大規模な開墾となると専門家が必要ですな。早急に…。」

 

それなら、心配いらないのよさ!

 

大臣がそう言った時だった。客間内に謎の声が響いた。

突然の事にヒイロは思わず立ち上がる。

 

「この声…。」

 

「間違いないな。」

 

リムルとフォルテは声を主を知っている。

 

すると、客間内に一枚の葉が何処からともなく落ちると、宙に緑の発光体が出現した。

 

「な…何事だ!」

 

「あ〜大丈夫大丈夫。」

 

「知り合いが来たようだ。」

 

突然の事態に戸惑うモブジ達をリムルとフォルテが落ち着かせる。

 

発光体が客間の奥につくと、蔦が伸びていき姿を現したのは、トレイニーさん、ベレッタ、スペルと、トレイニーさんの肩に乗るラミリスだった。

 

「トレイニーさん?」

 

「何故ここに?」

 

リムルとフォルテが問いかけるが、トレイニーの名にモブジと大臣が反応した。

 

「トレイニー?もしや樹妖精族(ドライアド)の?」

 

「ま…まさか…。わしの目が黒いうちにお目にかかるとは…。」

 

「「ありがたや ありがたや。」」

 

モブジと大臣はそう言ってトレイニーさんに手を合わせて拝むのだった。

 

「冥土へのいい土産できた。」

 

「長生きはするもんじゃ。」

 

だが、それに声を上げる者がいた。

 

「ちょっとあんた達!」

 

そうラミリスだった。モブジと大臣はラミリスの存在に全く気付いていなかった。

 

(あたし)が見えてないわけじゃないでしょうね?」

 

声を上げながらモブジ達の前まで飛ぶラミリス。

 

「今いいところなんじゃ!」

 

「な…何を〜!」

 

「ブンブンうるさいの、ちょっと後にしてくれんかの?」

 

モブジと大臣に羽虫の様に扱われるラミリス。……知らないって事がこれほど恐ろしいと思うことはないな。

 

「ちょっと、リムル!フォルテ!こいつらに説明してよ!」

 

全く相手にされず悔しがるラミリスはリムルとフォルテに自分を説明するよう声を上げる。

 

「え…え〜と。こちらは…。」

 

リムルがモブジ達に説明しようとしたが、先にトレイニーさんがラミリスの紹介を始めた。

 

私達(わたくしたち)精霊の女王であり、魔王でもある…。」

 

「ラミリス様で〜す。」

 

「「ま…魔王?」」

 

モブジと大臣は魔王と聞いて唖然となった。

 

「トレイニーちゃんより偉いんだからね。分かった?」

 

「「失礼いたしました。」」

 

「フン!」

 

モブジと大臣は、すぐさま頭を下げてラミリスに謝罪した。

 

「ヴェルドラ様にトレイニー様、そして魔王…。」

 

「盟主たるリムル殿とフォルテ殿もまたー、魔王として正式に認められたそうだ。特にフォルテ殿は、

魔王ギィ・クリムゾン殿にその力を認められ、凶戦士帝王(バーサークカイザー)の称号を与えられたそうだ。」

 

「ああ、何と…。」

 

「それは…。」

 

大臣とモブジはヒイロから聞かされた更なる情報に驚くしかなかった。

 

「本題に入りますが、ラージャの窮状は理解しています。開墾も大切ですがー、同じくらい農業の準備もしておくべきです。」

 

「おお、ごもっとも。」

 

「お〜なるほど。そうですな。」

 

トレイニーさんそう言うと、モブジと大臣はすぐさま駆け寄り、アドバイスを素直に聞き入れていくのだった。

 

「トレイニーさんって何処にでも現れるな。」

 

「まぁ、これでラージャの農業問題は任せられる。」

 

「そうですね。」

 

リムルとフォルテと紅丸がそう話していると、客間の扉が開きチクアンと呼ばれていたエルフが入って来た。

 

「女王様がお目覚めになりましたぞ。」

 

「分かった。リムル殿。フォルテ殿。ぜひトワ様に。」

 

「ああ。」

 

「うん。」

 

リムルとフォルテはヒイロに連れられトワ女王の元に向かう。

 

(……ん?)

 

その時、チクアンを見たフォルテは、夢想家(ネガウモノ)でチクアンから濁った紫の魂が見えたのだった。

 

チクアンの事を気にしながら、フォルテのトワ女王のいる私室に着き女王と対面した。

 

「トワ様。ジュラ・テンペスト連邦国の盟主リムル=テンペスト殿とフォルテ=テンペスト殿にお越しいただいた。」

 

ヒイロがリムルとフォルテをトワ女王に紹介する。

 

「ようこそ。遠路はるばる。すみません。この様な格好で……ゴホッ、ゴホゴホッ……。」

 

ベッドの上でそう言いながら咳き込みトワ女王。

 

(あの人がトワ女王か…。美しく優しそうな人だが、かなり衰弱している様だな。)

 

フォルテはトワ女王の容体が良くないと一目で理解した。

 

「リムル殿とフォルテ殿ならば、トワ様の治療も出来るかもしれません。」

 

「いきなり来た魔物を信じろって言ってもー、無理かもしれないけど…。」

 

「信じます。」

 

「えっ…そんな簡単に?」

 

「良いのか?」

 

「ヒイロが連れて来たか方を、疑う訳がありません。」

 

「トワ様…。」

 

「じゃあ、少し調べさせてもらう。」

 

トワ女王の了承を得たので側まで近寄るリムルと

フォルテ。

 

その際、トワ女王の頭の上のティアラに目が向いた。

 

「気になりますか?」

 

「あ…、ああ。」

 

「膨大な魔力を使う事が出来る代物らしいな。…確かにとんでもない力を感じる。」

 

「分かりますか?このティアラがあるから国や民を守る事が出来るのです。」

 

「だが、代償として…。」

 

「ティアラの呪毒を受けるか…。」

 

リムルとフォルテはそう言ってトワ女王に向かって手を掲げる。

 

「代償はつきものですから。」

 

リムルとフォルテはトワ女王にかけられた呪毒を解析する。

 

《呪毒の解析が完了した。この呪毒は呪いをかけた術者しか解除は不可能。

そして、この呪毒をかけた者は……。》

 

電脳之神(デューオ)の解析結果を聞くフォルテ。

 

(……やっぱりか。そうじゃないかと薄々は思ってはいたが。)

 

フォルテもティアラの呪毒をかけた術者が誰なのか分かっていた。

 

《トワ女王の生命力で呪毒に抵抗でき、ティアラを使わなけば徐々に快方に向かうだろう。》

 

(そうか…。)

 

《だが、生命力の回復が著しく遅れている。対症療法として、アピトの蜂蜜を滋養強壮薬として摂取されば回復するだろう。》

 

リムルも叡智之王(ラファエル)から同じ事を聞いた様で、すぐさまアピトの蜂蜜を取り出した。

 

リムルとフォルテは皆に説明し、念のため従女の方に毒味もしてもらい問題ないと理解してもらった後、従女の方がトワ女王に食べさせた。

 

「美味しい。」

 

「さっき説明した通り、魔国連邦(テンペスト)特製の蜂蜜だ。」

 

「百薬の長と言っていい逸品だからー、毎食後にスプーン一杯分くらい食べるようにしてくれ。」

 

「何だか体の中から温まるようです。」

 

そう言って胸に手を当てるトワ女王。頬がほんのりと赤くなり、顔色も良くなってきた。

 

「確かに顔色が良くなっている。こんなすぐに?」

 

その効果にヒイロも驚いていた。

 

「呪毒は簡単には除去できそうにないが、ティアラの魔力を使わなければ体調は良くなるよ。」

 

「ほ…本当か?」

 

「ああ。」

 

リムルの言葉を聞いたヒイロが思わず声を上げる。

 

「ありがとうございます。ですが、この力を使わなければ民達が鉱山の毒で…。」

 

「それも、俺達がなんとかするさ。」

 

「え?」

 

「任せてくれ。」

 

フォルテがそう言うのだった。

 

 

その後、リムルとフォルテ達はトワ女王に、鉱山の毒が流れているという湖に案内してもらった。

 

其処には、湖の周囲の木々がその毒の影響で灰色となって枯れている光景が広がっていた。

 

「何百年にもわかった採掘の影響でー、鉱山の毒がこの湖に流れ込んでくる…。」

 

「と言う事だったなトワさん。」

 

「はい。昔は清らかな水をたたえていたそうですがー、今では死の湖となっています。そのうち瘴気を発するほどの猛毒になりかねないのです。」

 

確かに、湖の水をよく見るとまるでガソリンが流れ込んできている様な禍々しい毒が溶け込んでいるのが分かる。

 

「リムル様とフォルテ様なら、鉱山全体の毒を取り除きー、湖の水を完全に浄化する事が出来るのではないですか?」

 

朱菜がそうリムルとフォルテに問いかける。

 

「ああ。」

 

「俺達なら可能だ。」

 

「本当ですか?」

 

リムルとフォルテの言葉にトワ女王は反応する。

 

「けど、ちょっと待ってくれ。」

 

そう言って顎に手を当てながら考えるリムル。

リムルもこの湖の毒について既に知っているのだ。

 

「滝の水を解析したんだが、どうもおかしい。」

 

「どういう事だ?」

 

リムルの言葉にヒイロがそう問う。

 

「この湖の流れ込んでいる毒は、自然界のものではない。……人工的な毒だと判明したんだ。」

 

フォルテの言葉にトワ女王とヒイロは目を見開いた。

 

そして、リムルはそのまま湖に入り、フォルテは浮遊し上空から湖を見渡す。

 

(この湖に溶け込んでいる毒は恐らく……。)

 

フォルテは毒の正体に気付きながらその発生源がこの湖の中にあると推測していた。

 

リムルとフォルテを心配しながら見守るトワ女王……いやトワ。

 

その視線に気付いたリムルは振り返り、安心させる為に手を振った。

 

そして、リムルは両手を、フォルテは片手を前に向かって翳した。

 

「「んっ!」」

 

次の瞬間、湖の水が勢いよく割れていき湖に一本の道が出来る。

その光景はまるでモーゼの奇跡。

トワとヒイロは驚く中、紅丸達は当然とばかりに平然と見ていた。

 

そして、割れた湖の道の先に紫の光が見えた。

 

「あそこか。」

 

フォルテは光の元に向かって飛び、リムルはゆっくりと歩み出した。

 

リムルより先に光の元に辿り着いたフォルテ。

フォルテの前にあるのは、祭壇の上に展開されている紫の魔法陣だった。

 

そして、フォルテは解析を行いこの魔法陣が誰が作ったものかを調べる。

すると、解析が終わる丁度その時に、リムルもやって来た。

 

「リムル。この魔法陣が原因なのは間違いない。」

 

「やっぱりそうか。」

 

リムルそう告げた後、フォルテは魔法陣に向かって手を翳す。

 

超吸収之神(ゴッドアビリティプログラム)!」

 

魔法陣が0と1に分解されながらフォルテに吸収され、

元凶だった魔法陣は消滅した。

 

「最後は任せたリムル。」

 

「ああ。」

 

フォルテがそう言うと、リムルも手を前へと翳した。

 

「喰らい尽くせ。暴食之王(ベルゼビュート)!」

 

リムルから膨大な魔素の霧が放たれ、それが暴風となって湖の水を全て喰らい尽くした。

 

湖が空になったそのすぐ後、浄化が完了しリムルは湖の水を一気に放出した。

勢いよく放出された水は、津波となってトワ達に降り注いだ。

 

「「うっ!」」

 

トワ達は思わず目を閉じ、水浸しになりながら顔を上げると…。

 

「うわ〜!」

 

其処には毒が完全に浄化され清らかで澄んだ水に溢れる湖の姿があった。

トワが思わず笑顔で声を上げると、湖からスライム状態のリムルを抱えたフォルテが飛び出した。

 

そして、トワの前に降り立つとリムルはすぐに人の姿へと戻った。

 

「よっと!へへッ。」

 

「フッ。」

 

リムルとフォルテはトワに向かって笑みを浮かべながら

サムズアップした。

そんな二人を見たトワは笑顔を浮かべた。

 

 

 

その夜、ラージャ小亜国の皆は飲んだり騒いだりでお祭り騒ぎだった。

……その中に何故かヴェルドラも混ざっていたが…まぁいいだろ。

 

その様子を城のベランダから見下ろすリムルとフォルテ達。

 

「みんな喜んでいますね。」

 

「ああ。」

 

「良かった。」

 

紅丸の言葉にリムルとフォルテはそう返した。

 

「ぷは〜。当然です。」

 

すると、酒を飲んで上機嫌の紫苑が口を開いた。

 

「ジュラの森の開墾の許可が下り、トワ様が快方に向かわれー、湖の毒が原因ごと浄化されたのですから。全てリムル様とフォルテ様のお陰です。」

 

「何故お前が自慢げなんだ?」

 

「何を言っているのですか紅丸?私はリムル様の第一秘書ですよ。つまり、リムル様と私は一心同体なのです。ウフフ〜フフフ!」

 

そう言って腰を振るう紫苑……そうとう酔っているな。

 

「さっぱり分からん。しかし、あの魔法陣。あれはなんでしょうね?」

 

そうリムルに話しかける紅丸。

 

「んん…古いもののようだったからな。ティアラの呪毒と同じ術者によるものだと思うが…。」

 

(…実際そうなんだがな。)

 

リムルの話を聞きながら、フォルテは心の中でそう呟いた。

 

「ティアラもー、“神より授かった”という伝説が残っているだけでー、はっきりとはしませんでした。」

 

(そうゆう自分に繋がる証拠は残さない様に注意していたからな…。)

 

「女神か何だか知らないが、その術者に聞くしかないな。まあそいつが、まだ生きていればの話だが。」

 

(生きているし、俺の秘書になっているぞ。)

 

リムル達の会話を聞きながら、心の中でそう言うフォルテだった。

 

呪毒と魔法陣を解析したフォルテは誰なのかは分かったが、本人に直接確認していないので、まだリムル達には知らせていないのだった。

 

(それに、何故湖に魔法陣を設置したのか……。)

 

「リムル殿。フォルテ殿。」

 

「ん?」

 

「ヒイロ?」

 

フォルテが考え込んでいると、ヒイロは話し掛けてきた。

 

「大したもてなしは出来ないが、せめてもの感謝を捧げたい。」

 

そう言って跪き頭を下げるヒイロ。

 

おお〜!

 

それと同時にラージャの人々がリムルとフォルテに対して歓声を上げる。

 

「これで十分だよ。」

 

「リムルの言う通りだ。」

 

「今、この国には返すものが殆どない。だが、いずれは…。」

 

「当然。貸しはいずれ返してもらう。」

 

「だからさ、今後もラージャと交流を続けてもいいかな?」

 

「はっ…。」

 

フォルテとリムルの言葉に、ヒイロは思わず顔を上げた。

 

「自分の身を犠牲にしてもー、国や民を守ろうとしているトワさんを見たらー、俺達も負けてられないと思った。」

 

「ラージャの皆とはこれからも良い交流をしていきたい。」

 

「ダメかな?」

 

「感謝する。」

 

リムルとフォルテにそう言われ、ヒイロは頭を下げて感謝した。

 

「イェーイ!兄者も飲みましょ〜。」

 

其処に、酔っ払った紫苑がヒイロの肩に腕を回して絡み始めた。

 

「おいおい…。紫苑…。」

 

そんな紫苑を何とか宥めようとする紅丸だった。

 

「それじゃあ俺達はちょっと…。」

 

「トワさんの様子を見に行ってくる。」

 

 

 

リムルとフォルテが向かっている頃、トワさんは私室のベランダから笑い合う民達の様子を見ていた。

その後、ゆっくりと私室に戻るとベッドに腰掛けた。

 

すると、ドアのノック音が聞こえてきた。

 

「トワさん。」

 

「はっ…。」

 

リムルの声が聞こえ振り向くと、リムルとフォルテがいた。

 

「具合はどうかな?」

 

「頂いた蜂蜜のお陰でどんどん元気になってきました。」

 

「それは良かった。」

 

「何から何まで本当に…。」

 

「いいっていいって。」

 

「紅丸達にも頼まれからな。それに、俺達も好きでやった事だ。」

 

リムルとフォルテがそう言うと、トワさんは少し顔を俯かせる。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

(わたくし)は、リムル様とフォルテ様が羨ましいです。同じ国家元首でありながら本音を隠さず、仲間と過ごしている貴方達が。」

 

「え?」

 

「トワさん?」

 

(わたくし)は…ずるいのです。ヒイロが必死になって仲間を庇い守りながら戦う姿を見てー、この方なら信用出来ると思ったのです。彼を助けたら、仲間になってくれたら…。」

 

「トワさん…。」

 

「だがそれは…。」

 

「分かっているのです。打算なのですわ。」

 

それは、トワさんがずっと抱え込んでいた気持ちだった。

それを聞いたリムルとフォルテは…。

 

「それは誰だって同じだろ?」

 

「心の中では誰だって色々と計算しているものだ。」

 

「打算が悪いとも思わないけどね。」

 

「え?」

 

リムルとフォルテの言葉に顔を上げるトワさん。

 

そう。誰もが打算している。

紅丸達が仲間になった時も、クレイマンとゲルミュッドの暗躍でジュラの大森林に豚頭帝(オークロード)の脅威が迫っていた。

他人事ではない事態に、俺達も色々と悩み考えた。

 

「それに、名前を付けたからって心までは縛れない。」

 

「俺達の仲間達だってさ、俺達に向かって言いたい放題好き放題してるんだから。」

 

「まあ、個人差はあるがな。」

 

「そう…なのでしょうか?」

 

「そうそう。トワさんは真面目すぎるんだよ。そんなんじゃ責任感で押し潰されちゃうよ。」

 

「もっと気を楽に、自分の気持ちに素直になった方がいい。」

 

今までずっと民の為に己を犠牲にしてきたトワさんだからこそ、少しくらい我儘を許されてもいい筈だ。

 

リムルとフォルテの言葉を聞いたトワさんは、顔を上げ二人に笑顔を見せた。

 

「フフッ。リムル様とフォルテ様は優しいのですね。」

 

「それこそ打算だな。」

 

「今後、上手く付き合っていける様にってね。」

 

 

それからもトワさんと会話を続け、彼女が抱える心の負担を軽くしたリムルとフォルテだった。

 

 

 

 

 

その後、祭り騒ぎが一転し皆が酔い潰れ静まり返った後、フォルテは一人ベランダで誰かを待っていた。

 

「遅くなってすまないフォルテ殿。」

 

「いや、大丈夫気にするなヒイロ。」

 

そう、フォルテが呼んだ人物はヒイロだった。

 

「わざわざこんな夜遅くに呼び出して済まない。」

 

「いえ、それで俺に伝えたい事とは一体…。」

 

ヒイロがそう尋ねると、フォルテは真剣な表情でヒイロに話しかける。

 

「ティアラの呪毒の術者に心当たりがある。」

 

「なっ⁉︎」

 

フォルテの言葉に驚くヒイロ。

 

「ほ、本当ですか⁉︎」

 

「本人に聞いた訳ではないからまだ確証はないが、間違いないだろう。俺から呪毒を解除する様に説得する。」

 

それを聞いたヒイロは、フォルテに向かって頭を下げる。

 

「フォルテ殿…感謝します。」

 

「だが、その術者はとある理由で今は連絡が取れない。しばらく待ってもらう事になるがすまない。」

 

「いえ、フォルテ殿のせいではありません。」

 

「そこでだ、ヒイロに頼みたい事がある。」

 

「俺に出来る事ならば、何でも言ってくれ。」

 

トワさんが呪毒から解放されると聞いて、ヒイロは今まで以上に真剣な表情でフォルテに答える。

 

「俺から連絡があるまで、皆で湖の警護をしてくれ。」

 

「湖の?」

 

「そうだ。毒の元凶だった魔法陣は除去したが、…その魔法陣を仕掛けた人物の子孫又はその意志を引き継ぐ者がそれに気付いた場合、何をするか分からないからな。」

 

「はっ!」

 

「だからこそ、湖に見張りを配置した方がいい。後、怪しい奴の話を信じない様気を付けておけ。」

 

「フォルテ殿…。承知した。」

 

 

だがフォルテの注意も空しく、ラージャがとんでもない事態となる事を、この時の二人は思ってもみなかったのだった。

 

 

 




呪毒を解析して術者を特定したフォルテ。
ヒイロに湖を守るよう頼むが……運命は変わらない。
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