転生したらフォルテだった件   作:雷影

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ラージャの問題を解決したフォルテ達。
だが、ラージャで暗躍する者がこれを見過ごす筈がなかった。
そして、ラージャの女神の誰なのか、今明かされる。
(読者の方々の殆どは知っていると思いますが…。)


103話 紅蓮の絆 女神

リムルとフォルテがラージャの問題を全て解決してから十日が経った。

 

「こ…、これは如何にした事か?」

 

とある男がラージャへと向かう道中でとんでもない光景を目の当たりにした。

それは……ラージャの民達によるジュラの森の開墾だった。

 

「ジュラの森の開墾?」

 

男はジュラの森が開墾されている事に驚き、嫌な予感を感じラージャに急ぎ向かった。

そして、…ラージャの湖の水を見て更に驚愕した。

 

「くっ…。湖が浄化されている⁉︎」

 

毒によって濁っていた筈の湖の水が完全に浄化され元の清らかで澄んだ湖に戻っていた。

 

「どういう事だ?どういう事だ?訳が分からない?こんな事がある訳がない⁉︎起こる訳がない⁉︎」

 

ラージャの湖が浄化されている事に頭を抱える男。

すると、丁度トワさんが鉱山で働く鉱員達を労いに来ていた。

 

「ご苦労様です皆様。」

 

「トワ様。ご機嫌麗しく。」

 

「安心しました。」

 

トワさんが来ている事を知った男は振り向くと…。

 

「ウフッ。ウフフフ。」

 

其処には元気に笑顔を浮かべるトワさんの姿があった。

 

「女王が元気になってる⁉︎」

 

トワさんが元気になっている事に驚愕する男。

 

「おや?これはこれはラキュア殿。」

 

その時だった。謎の男…ラキュアにモブジが声を掛けた。

 

ラキュアは声を掛けられ青ざめながら振り返りモブジを見る。

 

「モ…モブジ様。ご無沙汰しております。また色々な品を集めてまいりました。」

 

「それはそれは。ささっ、まずは旅の疲れを癒やされるがよかろう。」

 

どうやら、ラキュアと呼ばれるこの男は商人?らしい…。

 

「はあ…、その…何だか雰囲気が変わりましたね。」

 

「ハハッ。この10日ほど、色々あってな。その話は夜にでもゆっくりと。では、後ほど。」

 

モブジはそう言ってトワさんの元に向かった。

ラキュアと呼ばれる商人は、手にした帽子を震えながら握り締めていた。

 

(最悪だ。一体何があったというのか…。)

 

この状況を、ラキュアは汗を流しながら喜んではいなかった。

 

翌日。モブジから話を聞いたラキュアは、自分の馬車の中で激しく貧乏揺すりをしながら苛立っていた。

 

「くっ…何ということだ。大鬼族(オーガ)の生き残りとスライムとフォルテとか言う餓鬼のせいでー、計画が台無しにされただと?あのお方の望みを叶えてこそ、私の地位も高まるというもの…クソーッ!

 

そう言って机を叩くラキュア。

このラキュアと呼ばれる商人は、トワさんの事、そして…湖の毒に関して関わっているのは間違いない。

 

ラキュアが机を叩いた事で、机に置いてあった箱が倒れ、中に入っていた紫の宝珠が転がってきた。

それを見たラキュアは、邪悪な笑みを浮かべる。

 

「そう…。必要なのは混沌と悲劇。」

 

 

 

 

 

それから数日が経過し、リムルの元にディアブロが報告をしに一時的に帰って来た。

 

「お前さあ。いちいち帰ってこなくてもー、思念伝達で報告してくれていいんだぞ?」

 

「そうですよ。第二秘書。」

 

「何をおっしゃいますかリムル様。このディアブロ、お側に駆け付けることなどー、手間でも何でもございません。」

 

「ハァ…。」

 

 

 

 

リムルがディアブロの報告を聞いている頃、フォルテは自室でラージャの湖にあった魔法陣の解析を続けていた。

 

「……やはりこの魔法陣はウルティマが作ったものに間違いない様だな。」

 

丁度のその時だった。

 

「フォルテ様!只今!」

 

ウルティマが帰って来たのは。

 

「ウルティマ。…戻って来たか。」

 

「遅くなってごめんねフォルテ様。例の物は見つかったけど、宝物庫の整理に時間が掛かっちゃったんだ。」

 

申し訳なさそうに謝るウルティマ。

 

「そうか…。ウルティマ、戻って来て早々に悪いが聞きたい事がある。」

 

「聞きたい事?」

 

「ラージャ小亜国についてだ。」

 

「…え?」

 

ラージャの名に思わず声を上げて驚くウルティマ。

 

「どうして…フォルテ様がラージャの事を……。」

 

「十日ほど前に、ラージャの使者が来たんだ。」

 

フォルテはウルティマにラージャ小亜国と交流する事になった事を話した。

 

「それでな、女王のトワさんの身体を蝕む呪毒を解析したんだが、……ウルティマの毒と一致してな。……話してくれないか。」

 

フォルテがそう問うと、ウルティマは気不味そうに目を逸らした。

 

「え〜と…それは……ねぇ……。」

 

「前にも言ったが、俺と出会う前の事だから怒ったりはしない。ただ理由を知りたいだけだ。恐らく、(ブラン)(ジョーヌ)との依代を得る競争(ゲーム)の為の候補の一つだったと俺は思っている。」

 

フォルテに見抜かれいる…。ウルティマはもう諦めて素直に話す事にした。

 

「流石はフォルテ様。…分かったよ。あれは数十……ううん。数百年ぐらい前だったかも。お願いされたんだ。」

 

「お願い?」

 

「うん。それが、ジュラの大森林に接する小国…ラージャ小亜国の初代女王だったんだ。人と魔物が交わる国だったんだけど、武宗国家ドワルゴンより弱小だったから、狂暴な魔物から攻められ、人間達からは体のいい労働力として狙われていたんだ。国を興した当時は特産品も無く、土地は痩せて食料生産量も多くなかったんだ。」

 

「……嘗てのラージャはそこまで貧困だったんだな。」

 

「そりゃあ当然だよ。虐げられてきた者達が逃げ込む様な国だったから豊かな訳がないもん。あの時の初代女王は逼迫していたよ。毎日必死に祈ってて、だから僕がその願いに応えてあげる気になったんだ。」

 

「なるほど。…苦難を乗り越えようと、民達の為に祈る初代女王の感情は、ウルティマ好みだからな。」

 

「そうなんだよね。女王の感情を感じて気まぐれで行ってみたんだけど、そうしたらその女王は僕を見て何って言ったと思う?フォルテ様。」

 

ラージャの伝説…民の為に祈っている中で姿を現すウルティマを見た初代女王のからすれば……。

 

「女神と呼ばれたんだな。」

 

「正解。僕を見て女神って言ったんだ。笑っちゃうよね。」

 

悪魔のウルティマが女神……女王の立場から見たらそう思っても仕方ないだろうな。

 

「それで、ラージャを救う力が欲しいって言うからー、少し遊んであげる事にしたんだ。」

 

そう言って、ウルティマはラージャの初代女王との契約を話し始めた。

 

「…なら、君の覚悟を見せて欲しい。」

 

そう言ってウルティマは女王の前であのティアラを取り出した。

 

「これは?」

 

「このティアラには膨大な魔力が貯蔵されているんだ。無くなっても時間が経ったらまた溜まる。深い所には、結構いい物が埋まっているみたいだからね。ほら。」

 

ウルティマはラージャの地下に金鉱脈が眠っている事を女王に教え、ティアラを渡した。

 

「感謝します。それで、覚悟とは一体?」

 

「僕とゲームをする覚悟さ。」

 

「ゲーム?」

 

「そうだよ。それを使えば君が呪われるんだ。しかもね、その呪いは遺伝して代々受け継がれていくんだよ。」

 

「子孫に?」

 

「当然でしょ?大いなるメリットには、最悪なる代償が必要だもん。願いが大きれば大きいほど、呪縛は侵食していくよ。どうする?」

 

ウルティマは女王にティアラの力と呪毒の代償についてしっかりと説明していた。

 

……それを聞いた上で、初代女王が出した答えは…。

 

「民を守れるのなら、民を救えるのなら…民が豊かに暮らせるのならば、(わたくし)の身など…。王家の覚悟を受け継ぐ子らも、きっと同じ事を思うでしょう。」

 

そう言ってティアラを冠る初代女王。

 

「いい表情だね。それを使い続ければ、いずれは僕の魔力に染まるんだ。そうなれば僕の勝ち。僕は依代を手に入れて、この世に顕現できるってわけ。」

 

「つまり、染まりきらなければー、(わたくし)…私達の勝ちということですね。」

 

初代女王はウルティマとの契約…ゲームのルールを理解した。

 

「魔力を…力を感じます。」

 

「ウフフ…。末代まで頑張って僕を楽しませてよ。」

 

「これで民を…。」

 

「もしかしたら君の子孫がゲームに勝つかもしれないけど、それはそれで楽しめるよね。」

 

こうして、ラージャの初代女王はウルティマと契約し、ティアラを授かったのだった。

 

 

 

 

 

「…っと言う訳なんだ。」

 

「成る程。つまり、何代にもわたって苦しみ悩みながらもそれを乗り越える姿を楽しみたかったと言う訳か…。」

 

如何にも、ウルティマらしい契約だ。

 

「だって…慈善事業じゃないし、ただで力を貸すのは……ちょっとねぇ。」

 

ウルティマの言い分もまぁ…少しは分かるな。

 

「それにしても、ラージャの金鉱脈もウルティマが教えていたとはな。……どうして教えたんだ?」

 

「それは、あの国の場所が最悪だったから……なんだよね。」

 

「場所?……そう言う事か。」

 

ラージャ小亜国がある場所は、ジュラの大森林に隣接している上に、突然金が採掘され豊かになるラージャを他国が見過ごす筈がない。

 

「流石フォルテ様。もう分かったんだね。」

 

「…人間の欲には限界がない。ラージャが突然豊かになれば、他国が黙っている訳がない。…ラージャは戦乱の時代を迎えたんだろう。」

 

「その通り。森からの脅威と欲望塗れの人間達の野心。それが集中する場所にラージャはあった。鉱山から産出される黄金は国を富ませるけど、人の欲望も引き付けるからね。それが大いなる災いになるのは、僕の目論見通りだった。それに、急に国が発展すれば他国が黙っちゃいないと分かってた。」

 

そこまで計算して金鉱脈を教えたのか。……自分が楽しむ為に人間の感情を理解している。……流石は原初の紫であるウルティマといったところか。

 

「…それで、目論見通り楽しめたのか。」

 

「…うん。ティアラを渡した時、僕は[女王は高潔な魂だから必要以上にティアラに頼ったりしないだろう]と予想はしていたんだ。それは正解で、女王は欲望に呑まれる事はなかったんだ。他の者なら、ティアラに頼りまくって直ぐに破滅してしまう者が殆どなんだけど。」

 

確かに……欲望に塗れた者やティアラの力の虜になった者ならそうなるだろうな。……という事は、他にも似た様なティアラを与えた者達がいたのか。

 

「それでも、ティアラを使って国を富ませて、弱い立場の魔物や人を受け入れ続けた事で、女王の魂は大いに擦り減ったんだ。そして呪毒は女王の身体に刻まれ、次代へと受け継がれた。」

 

「……初代女王が国を富ませたが、金鉱山を狙った他国の脅威が無くなった訳でない。そして、国の危機に女王達が決意してティアラを使う……という訳だな。」

 

実にウルティマらしいとフォルテは思った。

そして、ウルティマは不安そうにフォルテに話しかける。

 

「フォルテ様……その……怒ってる?」

 

「………いや。話を聞く限りウルティマに落ち度は無い。ゲームのルールとティアラの代償も女王にしっかりと説明している上に、相手がそれを知って同意したんだ。それに金鉱山も欲に目が眩んだ他国が原因で、ウルティマが直接関わった訳じゃ無い。それどころか、金鉱山のお陰で

ラージャ小亜国は救われていたんだからな。」

 

フォルテの言葉を聞いて、ウルティマはホッとし安堵した。

 

「寧ろ、初代女王からトワさんの代までよく呪毒に耐えてきたと思ったくらいだ。」

 

「フォルテ様の言う通りだよ。大いなる災いを前にして女王達がどう抗うのか、それを見守るのがゲームの醍醐味だったんだけど、予想以上に楽しませてもらったんだ。」

 

ウルティマは楽しそうにフォルテに話した。

 

「初代女王の子孫達は、キッチリと高潔ない魂を受け継いでいたんだからね。普通なら何代かに一人は馬鹿が生まれるのに、今に至るまで全員が人格者だった。これは本当に凄い事だから、彼女達がこのゲームに勝利すると僕は思ったんだ。」

 

「……確かに。それは凄い事だよな。」

 

ウルティマから改めて聞くと、いかに初代女王が人格者でも受け継がれる子孫達が必ず同じ様な人格者となるかは分からない。ウルティマの言う通りに、愚かな者が出てきてもおかしくないのだから。

 

「それで僕が負けちゃっても、それならそれで僕を楽しませてくれた訳だし、まあいいかなと思っていたんだ。」

 

「……どっちに転んでもウルティマが楽しめる結果になるからな。……なら、もう十分楽しめたんじゃないか?依代も俺が与えた事だし。」

 

フォルテがウルティマにそう問いかける。

 

「そうだね。……この数百年見事に耐えたしね。今の女王はトワちゃんって言うんだよねフォルテ様。すっごく良い子何だよね。」

 

「ああ。初代女王に負けないくらい民の為に力を尽くしていると思う。だからこそ、ティアラの呪毒を解除してくれないか?」

 

「うん。フォルテ様の頼みだからね。それに、僕もこれ程頑張ってきた女王達には感動していたんだ。だから、

ゲームの勝敗関係なく御褒美もあげようとも考えていたんだ。」

 

フォルテはウルティマと会話をしながら、彼女の様子を見ていた……()()()()()に付いてあえて話さず、ウルティマがそれを隠しているかを見極めながら。

 

「ありがとうウルティマ。ところで、ウルティマにもう一つ聞きたい事がある。」

 

「なにフォルテ様?」

 

「この魔法陣についてだ。」

 

フォルテはウルティマに向かって手を翳すと、掌に湖に展開されていた魔法陣を浮かび上がらせる。

 

「ッ⁉︎その魔法陣!どうしてフォルテ様が?」

 

その魔法陣を見た瞬間、ウルティマは驚いた。

 

「やっぱり、ウルティマが作った魔法陣なんだな。」

 

「……うん。随分昔に、ルミナスに嫌がらせしようと思って試作した呪毒の魔法陣なんだ。いつの間にか無くなっていたけど……この魔法陣を一体何処で見つけたのフォルテ様。」

 

ウルティマの様子から、本当に何も知らないんだと分かる。

 

「……ラージャ小亜国の湖の底に展開していた。そして、呪毒を撒き散らし、死の湖に変えていた。」

 

「……え?」

 

フォルテの言葉に、ウルティマは訳が分からないといった表情を浮かべた。

 

「そのせいでトワさん達歴代の女王は、定期的にティアラの力で湖を浄化しなければならない状況に追いやられていたんだ。」

 

フォルテの話を聞いたウルティマは、物凄く冷たい表情へと変わった。

 

「ヴェイロン!ゾンダ!」

 

ウルティマは配下の二人を呼んだ。

 

「はい。」

 

「お嬢様。」

 

「ラージャ小亜国の事をすぐに調べてに行って。…アイツの事もね。」

 

「はっ。」

 

「承知しました。」

 

ウルティマの命令を聞いた二人は、すぐさまラージャ小亜国の調査に向かった。

 

「やはりな。ウルティマがそんな契約違反な事はしないとは思っていた。」

 

「当然だよ。そんな勝てるって分かりきっているゲームほどつまらないものはないもん。……フォルテ様は、魔法陣の件は僕の仕業じゃないって信じてくれていたんだね。」

 

「それこそ当然だ。今までウルティマと共にいたんだ。

ウルティマがそんな契約違反をする様な奴ではないと俺は分かっている。」

 

「フォルテ様……。」

 

フォルテの自分を信じる思いに、ウルティマは心の底から嬉しかった。

 

その時だった。一枚の葉が部屋に落ちた。

そして、トレイニーさんの妹であるトライアさんが現れた。

 

「トライアさん。……何かあったのか?」

 

「はい。ラージャ小亜国が大変な事態となっています。」

 

 

 

 

 

フォルテがトライアさんから話を聞く少し前。

ヒイロが久々に大鬼族(オーガ)の里跡地に来ていた。

 

そして、同胞達が眠る丘の上に簡易的な墓をつくった。

 

「里を飛び出して随分経っちまった。」

 

ヒイロは仲間の武具を持ち帰りそれらでも、簡易的ながら墓を作った。

 

「ようやくお前達と此処に帰って来れたな。」

 

ヒイロは仲間達を労う為に墓に酒を掛ける。

 

「お前達のお陰で、俺は無事で此処にいる。それに…若様達も生きてらっしゃった。」

 

ヒイロは紅丸達と再会した時の事を思い出した。

 

「俺達が稼いで楽にしてやろう。美味い物を食わせてやろうって息巻いてたもんだよなあ……。」

 

そう呟きながら空を見上げるヒイロ。

 

「お前達…。皆いなくなっちまった。」

 

ヒイロは脱走した時、皆を守れなかった事を悔やんだ。

 

「皆…済まない。俺が…俺がもっと…。」

 

すると、ヒイロの隣に紅丸が現れた。

 

「あ…。」

 

「兄者が来ていると、リムル様とフォルテ様から聞いた。」

 

紅丸はその場でしゃがみ、皆の墓に手を合わせる。

そしてヒイロは立ち上がると、嘗ての自分の弱さを責めた。

 

「俺がもっと強ければ守れた。」

 

「ああ。」

 

「もっと、上手く皆を引っ張っていければ…。」

 

「そうだな。」

 

紅丸はヒイロの言葉を否定せずに受け止めながら立ち上がる。

 

「守られたのは俺だった。全てを託し俺を生かしてくれた。この命。この身が滅びようとも今度こそ俺が……俺が仲間を守り抜いてみせる。」

 

ヒイロの決意を聞いた紅丸は、ヒイロに向かって鞘に収めた刀を突き出した。

 

「兄者。」

 

「あ…。」

 

「兄者のそういう一本気なところー、嫌いじゃないぜ。ただ俺達や、リムル様とフォルテ様もいるって事を忘れるなよ。」

 

「…ああ。」

 

紅丸の言葉を聞いたヒイロは、笑みを浮かべて同じ様に突き出し、互いに誓い合うのだった。……その時だった。

 

「「ん?」」

 

二人の上空にラージャから飛竜(ワイバーン)に乗ったフジが飛んで来た。

 

「隊長!」

 

フジは上空からヒイロに向かって声を上げる。

 

「大変です。トワ様が!」

 

「ハッ!」

 

フジの報告にヒイロが驚愕の表情を浮かべている頃、

フォルテの前にトライアさんが現れた同じタイミングで、リムルもトレイニーさんからラージャの状況を聞いていた。

 

「倒れた?」

 

「湖が急に瘴気を発する程に毒されて…、民を救う為にティアラの魔力を使ったそうです。」

 

「そんな急に?」

 

話を聞いていたリムルは、突然に湖が毒に侵されたと聞いておかしいと思った。

 

「そもそも、毒を出していた妙な魔法陣は取り除いたのに…。」

 

《是。魔法陣は、フォルテ=テンペストが完璧に排除しー、湖に溶け込んでいた毒は全て浄化しました。》

 

リムルの問いに智慧之王(ラファエル)が答える。

すると、ディアブロがリムルの〝魔法陣〟という言葉に反応した。

 

「妙な魔法陣とは?」

 

「湖の底に描かれていた随分古そうなものでした。」

 

ディアブロの問いに答える紫苑。

 

「ほう…。古い魔法陣……もしや。」

 

ディアブロは魔法陣が誰が作ったものなのか気付いたその時だった。

 

「あの魔法陣はウルティマが試作品で作ったものだ。」

 

ウルティマとトライアさんを連れてフォルテがリムル達の元に現れた。

 

「フォルテ!……ん?あの魔法陣がウルティマが作ったものってどういう事だ⁉︎」

 

フォルテの言葉にリムルは驚き問いかける。

 

「……本当なら、トワさんの呪毒を解除して穏便に事を終わらせる予定だったが、こうも事態が急変したら話さない訳にはいかないからな。」

 

そうして、フォルテはリムル達に説明を始めた頃。

ヒイロもフジからトワさんの容体について聞いていた。

 

「それでまた、全身に呪いが広がって…。リムル様と

フォルテ様から頂いた蜂蜜で体はなんとかもっていますが。ただ、それとは別に…。」

 

「何だ?」

 

「隣国の軍隊が動き出したという情報が入ってー、もう皆パニックで…。」

 

フジの報告にヒイロは驚き紅丸を見る。

 

「うん。」

 

紅丸が頷くと、ヒイロはフジと共に飛竜(ワイバーン)に乗ってラージャへと急ぎ向かった。

 

 

その一方、フォルテはリムル達に説明し終えていた。

 

「……ラージャの女神ってウルティマだったのか⁉︎」

 

「そういう事だ。それで、トワさんの呪毒を解除するよう話がついたところでこの騒動が起きた訳だ。」

 

「マジか…。それにあの魔法陣もウルティマが作ったものだけど、誰かが勝手に持ち出したって訳か…。」

 

「ああ。今ウルティマの指示でヴェイロンとゾンダが調査に出ている。」

 

「それにしても、ラージャの女王との契約…実に貴女らしいですねウルティマ。」

 

「うるさいよディアブロ。」

 

ディアブロがウルティマに向かってそう言うと、

ウルティマは不機嫌な表情を浮かべながらそう言った。

 

そして、フォルテの話を聞いたリムルは一人でずっと考え込んでいた。

 

「う〜ん…。」

 

「リムル様?ラージャに急ぐのでは?」

 

考え込んでいるリムルに紫苑がそう尋ねる。

 

「そうなんだけど…。フォルテから教えてもらった

ウルティマの事。浄化した湖がまた毒に侵され、トワさんが倒れた途端に動き出した隣国…。」

 

「何者かが裏で暗躍している……そう思われるのですね

リムル様。」

 

「その通りだディアブロ。」

 

「偶然にしては出来すぎているからな。」

 

フォルテも同じ事を考えていた。

 

「それに、トワさんはひどく生命力を消耗していた。」

 

「……チクアンって医者も怪しいって事だな。」

 

「ああ。」

 

リムルとフォルテは互い目を合わせて頷く。

 

「蒼影!」

 

「シャドーマン!」

 

「「此処に。」」

 

二人の呼び掛けに直様姿を現す蒼影とシャドーマン。

そして蒼華達。

 

「なぜラージャを狙うのかを探ってくれ。」

 

「頼んだぞ。」

 

「御意。」

 

「早急に。行くぞ。」

 

「はい。」

 

シャドーマンと蒼影は、蒼華達を引き連れ情報収集に向かった。

 

「紫苑、皆を集めてくれ。」

 

「ラージャに向かう為に皆にもある程度説明をする。」

 

「はい!」

 

紫苑を抱えていたリムルを下ろして駆け出して行った。

 

皆が行動を開始する中、ウルティマはひっそりとある者に対して怒りを滾らせていた。

 

(………ラキュアの奴……!)

 




ラージャの女神がウルティマと判明し、密かに解決しようとしたフォルテだったが、ラキュアの企みによって事態が急展開となりリムル達にも説明する事に。
そして、ラキュアの勝手な行動に怒るウルティマ。
……ラキュアは知らぬうちに、己が主の逆鱗に触れたのだった。
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