勝手な行動により、ウルティマの評価を下げたラキュア……その罪が裁かれる時。
リムルとフォルテがラキュアを追跡している頃、紫苑達は隣国の軍勢と応戦していた。
「やあっ!」
「たあっ!」
紫苑と紫蘭の二人は、武器を使わず格闘戦を仕掛ける。
「ぐえっ!」
「おわっ!」
「うっ…。」
「がはっ!」
二人は次々と襲い掛かる敵兵を殴り蹴り倒していく。
「どうした?この程度か?」
「さあ、掛かってこい!」
紫蘭と紫苑は構えながらそう言うと、二人の男が前に出る。
「ん?」
「親玉達のお出ましか。」
その二人は兵を指揮する指揮官だった。
「「フッ。」」
指揮官二人から兵士達とは違う唯ならぬ気配に、紫苑と
紫蘭は笑みを浮かべた。
その頃、朱菜はトワさんを連れて崩壊していく遺跡から
脱出しようとしていた。
「ハァ ハァ…。」
「トワ様。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。
「お兄様にお任せしましょう。」
狂鬼化したヒイロを心配するトワさん。
そんなトワさんに、朱菜は安心させる為にそう言いながら脱出を目指す。
そして、狂鬼化したヒイロを相手に、紅丸は互角の戦いを繰り広げていた。
「くっ…。」
吹き飛ばされ回転しながら着地した紅丸。
「うおーっ!」
そんな紅丸にヒイロは斬り掛かり、紅丸を斬り飛ばした。
だが紅丸は、柱に着地してそのままヒイロに斬り掛かる。
ヒイロは紅丸の刀を受け止め地面に叩きつけると、長巻の柄を突きながら蹴りを放つ。
紅丸は転がりながら回避し、迫るヒイロの長巻を受け止める。
「うぉーっ!」
「ぐおっ!」
紅丸はそのままヒイロを殴り飛ばし、ヒイロは壁に激突して突き抜け更に奥の壁を突き抜ける。
紅丸は壁を突き抜けたヒイロを追いかけると、土煙の中からお返しとばかりにヒイロが真横から紅丸の顔面を殴り飛ばした。
「うおっ!」
殴り飛ばされた紅丸は、壁にぶつかるとゴムボールの様に跳ねて天井にぶつかり地面に叩きつけられた。
「ハァ…ハァ…流石だな。」
「うおーっ!」
紅丸が立ち上がりながらそう口する中、ヒイロが紅丸に向かって拳を放つ。
紅丸は飛び上がり回避すると、ヒイロの拳が地面を砕き穴が開いた。
「そんな様になっても...」
紅丸は砕かれた瓦礫を足場にして跳ねながらヒイロに迫り斬り掛かる。
ヒイロは再び紅丸に殴り掛かるも、紅丸は咄嗟に離れて躱した。
そして、ヒイロの拳から繰り出された風圧で瓦礫の殆どが吹き飛ばされた。
「魂はどこまでヒイロらしい!」
そう言いながら、着地し落下する瓦礫を躱しながらヒイロに迫る。
「だが!」
「うおぉっ!」
ヒイロの長巻と紅丸の刃がぶつかり合う。
その一瞬…紅丸は里でのヒイロとの誓いを思い出した。
「うおぉぉぉぉぉぉ‼︎」
ヒイロが吠えると周囲に炎の
「う〜!」
紅丸が再び斬り掛かり刃がぶつかり合うと、今度は幼き日の殴り合い笑いあったあの日の光景が浮かんだ。
そして、ヒイロの長巻と紅丸の刀が弾け飛び地面に突き刺さると、二人はそのまま殴り合いを始める。
互いに凄まじい拳の応酬を繰り広げる中、ヒイロの拳が紅丸の腹に決まり、紅丸は後ろに押される。
「くっ…戻ってこい兄者!」
紅丸の叫びにヒイロは一瞬反応するも、すぐに紅丸に襲い掛かる。
紅丸とヒイロが激闘を繰り広げている頃、リムルとフォルテはラキュアを追い詰めていた。
「どうした?追いかけっこはもうお終いか?」
「なら、観念したらどうだ。」
「抜かせ!」
リムルとフォルテの言葉に対して、ラキュアは叫んだ。
そして、ラキュアが前方を見ると、分岐点が見えた。
「フハハハ…ハッ!」
ラキュアは分岐点目掛けて魔力弾を放ち線路を変えた。
魔力弾が坑道にぶつかり爆発し、爆煙によってリムルとフォルテはラキュアとは反対の線路に入ってしまった。
「くっ…。」
「違う線路に入ったか。」
爆煙を抜け顔を上げた二人は、周囲を見て反対の線路に入った事を理解した。
「ギャハハハハハ!」
「あっ…。」
「上か。」
ラキュアの高笑いが聞こえ、上の線路に顔を向けるとラキュアの姿があった。
「新参の魔王如きが!貴様らが暴風竜ヴェルドラ達の威を借りているだけだとー、とっくに調べはついておるのだ!」
笑いながらそう自慢げに叫ぶラキュア。
クレイマンの様に、俺達が流した偽情報を信じ込んでいる様だ。
「それはいいけど。」
「前は見た方がいいぞ。」
リムルとフォルテは前を指差しながらそう言った。
「はい?」
ラキュアは二人に言われ前を見ると……その先は火山の噴火口だった。
「うわあぁぁッ!」
ラキュアはそのままトロッコと一緒に火口へと落下した。
トロッコはマグマの海に落ちそのまま溶けていった。
その様子を嵐牙とゴスペルに跨ったリムルとフォルテが見ていた。
すると、翼の羽ばたく音が聞こえ前を見ると、そこには悪魔の翼を生やしたラキュアが飛んでいた。
「フフフ…フッハハハハ!フッアハハハハハハ‼︎」
ラキュアは高笑いしながら上の火口へと向かった。
「やっぱ飛べるよな。」
「悪魔だから当然だな。」
リムルとフォルテがそう呟くと、嵐牙とゴスペルは風操作で空を駆け出しラキュアを追う。
ラージャの上空に紫と青と黒紫の光が飛んでいく。
その一方で、朱菜とトワさんは遺跡から脱出し地上に戻っていた。
「今です。トワ様。」
朱菜が安全を確認し移動を始めたその時だった。
岩石が砕ける音と共に近くの崖が崩れ、中からヒイロと紅丸が飛び出した。
「「ハァ、ハァ、ハァ…。」」
そして、走る朱菜とトワさんの前に着地した。それにより二人は足を止めてしまう。
「ハアッ!」
紅丸は刀で斬り掛かり、ヒイロは腕を交差して受け止める。
そんな中、崩れた崖の岩が朱菜とトワさん目掛けて落下してくる。
「「ハッ…。」」
迫る岩に二人は気付き顔を上げる。すると、ヒイロもそれに気付いた。
ヒイロは紅丸を吹き飛ばすと、拳から炎を放って朱菜とトワさんに迫る岩を消し飛ばした。
「あっ…。」
「兄様、正気に?」
「はっ…⁉︎」
朱菜はヒイロが正気に戻ったのではと声を上げ、紅丸もヒイロの様子を見る。
「ハァ…ハァ…。」
だが、ヒイロは俯きながら呻き声を上げながら苦しんでいた。
「ハァ…ハァ…。いや、戻りきってはいないんだろうが…。」
すると、ヒイロの足元から溶岩が滲み出ると、光が伸び出てきてヒイロはそれを掴んだ。
「ううううっ……うおぉぉぉぉぉぉ‼︎」
ヒイロが咆哮すると、無数の火球が周囲に放たれた。
火球は周囲を無差別に攻撃するも、朱菜とトワさんは結界で防いだ。
紅丸は咄嗟に顔覆ったがすぐに顔を上げると、ヒイロは躍び跳ねながら街に向かっていた。
「ここから離れろ!」
紅丸は朱菜とトワにそう言ってヒイロの後を追いかける。
朱菜とトワさんは頷き移動を開始した。
「ハァァァァァ!」
ヒイロは咆哮しながら火球で周囲の街を破壊する。
建物が崩れ、周囲が炎き包まれ市街地への被害が拡大していく。
住民の避難が完了していたのが、不幸中の幸いであった。
ヒイロはそのまま唸り声を上げなら進んでいく。
そんなヒイロの後を追う紅丸。
「くっ…。これ以上は被害が大きくなるばかりだ。止まれ!ヒイロ!フン!」
紅丸が背後からヒイロへと斬り掛かる。
「うおっ!」
それに気付いたヒイロは振り返りながら手に持つ光の刃で紅丸に斬り掛かる。
互いの刃がぶつかり合い火花散る中、その上空では、
リムルとフォルテはラキュアと対峙していた。
「どうした?もう逃げないのか?」
「ほ…ぼざけ!フンッ!」
リムルがそう言うと、ラキュアは手に複数の魔力弾を作り出し放った。
すると、フォルテがリムルの前に出て
魔力弾が
「こんな攻撃が俺達に通用するものか。」
「なっ⁉︎」
フォルテがそう言うと、ラキュアは驚愕した。…その時だった。
「ラキュア殿!加勢しますじゃ!」
ラキュアを助けに悪魔の翼を生やしたチクアンが駆けつけて来た。
その瞳は当然、ラキュアと同じく黒目で紫の瞳となっていた。
「やっと正体を現したか藪医者。」
「トワさんを苦しめた罪。貴様も償ってもらう。」
「奴の相手は我と親父殿にお任せを。」
「予定通り捕えてみせます。」
「分かった。」
「頼んだぞ。」
リムルとフォルテは、チクアンの相手を嵐牙とゴスペルに任せ二人の背から飛び降りる。
リムルは蝙蝠の翼を生やし、フォルテはそのまま
「「ハアッ!」」
嵐牙とゴスペルはそのままチクアンに向かっていく。
「犬畜生二匹如き、わしの敵ではないのじゃ!」
チクアンはそう言って無数の魔力弾を放つ。
だが、チクアンの魔力弾に向かってゴスペルは口を開き
「なっ⁉︎」
驚くチクアンだが、そこから更に嵐牙の攻撃が待っていた。
「ワオォォォ〜ン‼︎」
嵐牙が遠吠えすると、暗雲が集まり黒い竜巻が発生する。そう。嵐牙の
「あ、あ…あ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
迫る黒雷嵐にチクアンはなすべなく呑まれ竜巻からチクアンの悲鳴が響いた。
ラキュアも思わずチクアンの方に振り向いた。
やがて黒雷嵐が消えると、ズタボロとなったチクアンが姿を現し落下。
それをゴスペルが咥え止め、そのまま背に放り投げた。
嵐牙がそのまま近くの岩に着地した。
「良くやった。息子。」
「はっ!親父殿!」
フォルテの事前の命令通り、チクアンを殺さずに手加減出来た事を、ゴスペルは褒めるのだった。
その様子を見ていたリムルとフォルテ。
「嵐牙達の敵じゃなかったな。」
「それで、ラキュア。お前も同じ目に遭いたいんだな。」
リムルとフォルテはラキュアに向かってそう言う。
「舐めるな...新参の魔王如きが...!!」
ラキュアは言い返しながら紫の結晶体を取り出し握ると、光の剣の様な形状に変化させた。更に、左手で自分の懐を弄りながら何かを取り出した。
「あれは…ダークチップ。」
ラキュアが取り出したのはダークチップ四枚だった。それを見たフォルテは思わず声に出していた。
ラキュアはそのままダークチップを握り締めると、ダークチップから
「うおおーっ!」
同じ頃。
「「「「うわぁぁっ!ぐわっ!」」」」
隣国の将軍達もダークチップを使い力を増大させると、
本当の姿を表していた。
それを見ていたフォルテは、リムルに問いかける。
「リムル…やれるか。」
「ああ。ダークチップで強化されていようが、あんな奴はクレイマンと比べたら大した事はない。」
リムルはそう言いながら鞘から刀を引き抜き構える。
「なら、任せたぞ。」
フォルテはそう言って後ろに下がる。
リムルとラキュアの一騎討ちを見届ける為に。
リムルとラキュア。両者がしばらく睨み合う中、先に動いたのはラキュアだった。
「だあああーっ!」
ラキュアは叫びながらリムルに向かって光の剣を突き刺そと突っ込む。
リムルは顔を右側にずらしながら、刀でラキュアの攻撃を受け止めた。
「フンッ!」
ラキュアは再度リムルを突き刺そうとするが、リムルに簡単に払い除けられる。
ラキュアはなんとか斬り合い持ち込むも、リムルの剣術に敵うわけもなく簡単にあしらわれ、今度はリムルがラキュアに向かって刃を突き刺そうと突き出す。
「う…くはっ。」
ラキュアは咄嗟に下がって跳躍し、リムルの背後に回り込む。
そして互いに剣を振るいぶつかり合う。
リムルとラキュアがぶつかり合う中、紅丸は暴走するヒイロを止めようと、ヒイロの前に立ちはだかる。
進みながら火球を周囲に放ち続けるヒイロに対し、紅丸は火球を斬り落としながらヒイロに斬り掛かる。
ヒイロは手に持つ光の刃を炎の刃と化して紅丸に斬り掛かる。
ヒイロの炎の刃と紅丸の刃がぶつかり合い、周囲に凄まじい衝撃波が拡散する。
そして、上空のリムルとラキュアの戦いは決着がつこうとしていた。
「だあーっ!」
ラキュアは叫びながらリムルに斬り掛かるも、リムルがラキュアの光の剣を弾き飛ばし、媒体となっていた結晶体は宙で砕け散った。
そのままラキュアの喉元に刃を突きつけるリムル。………決着はついた。
「あ…ああ…。」
「もう終わりか?」
「う…。」
「言い残す事はないか?ないな?」
リムルはそのままとどめを刺そうとした時、ラキュアが声を上げる。
「ま…待て。私を殺してみろ。あのお方が黙っていないぞ。」
「あのお方ねぇ…。」
ラキュアの言葉に今まで黙っていたフォルテが口を開く。
「そうだ。我が主人にかかればお前達如きスライムと餓鬼など……。」
ラキュアは自分には
「そうか。……と言っているがどうするウルティマ。」
「ねえ、ラキュアさあ…。」
フォルテの声に応えて、今まで待機していたウルティマとディアブロがフォルテの隣に現れ、ウルティマがラキュアに向かって口を開いた。
……二人はとても冷たく暗い笑みを浮かべていた。
「おお!原初たる神よ!」
だが、それに気付いていないラキュアは、突然のウルティマの登場に驚きながらも歓喜の声を上げる。
「此処です!貴女様の忠実なるしもべ、ラキュアは此処ですぞ!……って、貴様!我が原初たる神である
「黙れ。」
「ヒッ⁉︎」
ラキュアはフォルテに向かって叫ぶが、ウルティマによって黙らされる。
「僕の主人であるフォルテ様に向かって偉そうに何言っているのかな。それと、今の僕の名前はウルティマだよ。」
「……は?えっ?」
ウルティマの言葉にラキュアは呆気に取られる。
「ヴィオレ……いえ、ウルティマ様……?まさか名を得たのですか?というより……受肉している⁉︎」
ラキュアはウルティマを見て既に依代を得て受肉している事に今頃気付いた。
「そうだよ。僕の主人であるフォルテ様から、この最高の依代と名前を授かったのさ。」
「へ?主人……?……ええええっ⁉︎」
ラキュアは驚愕した。自分の知らない間に、ウルティマが名と依代を得て受肉していた事に。しかも、与えたのが自分が馬鹿にして罵っていたフォルテだと聞かされたのだから。
「自分が対峙している者の実力に気付かないとは、実に愚かですね。」
驚愕するラキュアに向かってディアブロが口を開いた。
そして、ラキュアはディアブロを見てすぐにその正体に気付いた。
「あっ、貴方様はまさか…
「おや?私には気付いた様ですね。ですが、今の私は
ラキュアは開いた口が塞がらなかった。
まさかの
そんなラキュアに向かって、ウルティマは不機嫌気味に口を開く。
「君ってば、名前を得て受肉したからって…好き放題やってくれたみたいだね。」
「まっ…まさか、誤解です。トワに大いに魔力を使わせました。あの体がウルティマ様のものとなるのは後少しだったのです…」
ウルティマの言葉に、ラキュアはそう必死に弁明するも、それはウルティマの望んだことではないのだ。
ウルティマは使えないゴミを見る様な冷たい眼差しでラキュアを見ながら口を開いた。
「あのさあ、僕はね。彼女達の選択の結果として、望んで体を差し出して欲しかったんだ。」
「え?」
「誰が余計なマネをしろって命令したのかなあ。僕、監視しろとしか言ってないよね?」
「えっ、えっ、え?あの女が苦しめば苦しむ程、ウルティマ様がお喜びになるかと…」
ラキュアは、トワさんにティアラの魔力を使わせ依代として完成させればウルティマに褒められると本気で思っていたのだ。
だが、現実はウルティマの想いに反した行動を取り、怒りを買っただけだった。
「まったく興醒めだよ。馬鹿のせいでさ。」
ウルティマから向けられる冷たい眼差しに、ラキュアは大量の冷汗を流した。
「私はただ力を得て、い、いつか…いつか貴女様のお側に置いていただきたいと…。」
「無能はいらないよ。」
「あ…」
ウルティマの言葉に絶望するラキュア。
「それにさ、フォルテ様の事を新参の魔王如きとか、餓鬼呼ばわりして好き放題言ってくれたよね。」
「なっ⁉︎どっどうしてそれを…。」
「おや?気付きませんでしたか。フォルテ様が思念伝達で私達に貴方の所業を全て見せてくださっていた事を。」
「なっ……⁉︎」
ディアブロから語られた事実に驚愕し、顔を青ざめる
ラキュア。
「……僕、ここまで怒ったのは今までなかったかもね。だから、僕達の手で始末しないと気が済まないんだ。……覚悟してよね。」
そう言いながら、冷たく暗い笑みを浮かべながらラキュアを見るウルティマ。
「あっぁぁぁぁ……。」
ラキュアは自分の仕出かした事の重大さと、新参の魔王とフォルテとリムルを罵った事を心底後悔した。
そして、自分の死を悟ったラキュアは、なんとか逃げようと本能的にゆっくりと後ろへと後退る。
「おや?何処へ行こうというのです。」
「ヒッ⁉︎」
だがいつの間にか、ディアブロが背後に回り込んでおり、背後から声を掛けられたラキュアは小さな悲鳴を上げた。
ディアブロは、そのままラキュアの首を掴みながら持ち上げた。
「リムル様を侮辱して、逃げられると本当に思っていたのですか?」
「がっ……グゥアア…!」
ディアブロは黒い笑みを浮かべながらラキュアの首を
ゆっくりと締め上げていく。
そして、首を絞められていくラキュアは声を出す事が出来ない。
そんなラキュアの目の前に、ウルティマが近寄っていく。
「そう言えばさ。僕の側に置いて欲しいとか言っていたよね。」
そう言いながらラキュアの顔を見るウルティマ。
「僕ね。フォルテ様から貰ったこの依代の力をまだ使ってないんだよね。それに、まだ試していない拷問器具も沢山あるから良い事思いついちゃった。」
ウルティマは黒い笑みを浮かべる。
「僕の力を試す実験体として置いてあげるよ。そのくらいなら役に立つよね?」
その言葉にラキュアは更に絶望し紫の瞳が激しく震える。
そして、ウルティマの額に蝙蝠の紋様が浮かび上がった。
「ふ〜っ。」
ウルティマは、そのままラキュアの顔に向かって吐息を吐いて浴びせた。
「ヒッ…⁉︎ヒィギヤアアアアアア‼︎」
ラキュアがウルティマの吐息を浴びた途端、全身の血管が紫に変色しながら浮かび上がり、悲鳴を上げながらもがき苦しみ出した。
先程のウルティマの吐息。
あれは、ウルティマの依代にしたリリスモンの技であるファントムペインだ。
ファントムペインとは、リリスモンの必殺技の一つであり、その暗黒の吐息を浴びたデジモンは、暗黒の呪いが全身を蝕みながら末端からデータが消滅していき…死してなお、その苦痛から逃れられないと言われている。
そんなファントムペインをウルティマは使いこなし、呪いの強弱を操作できる様になっていた。
「大丈夫。呪いをかなり弱めたから死ぬ事はないから安心していいよ。そのかわり、……僕が呪いを解かない限りその苦痛が永遠と続くけどね。僕の温情に感謝してよね。」
「ガッ…カァ……ガハ。」
そうラキュアに向かって笑顔で言うウルティマだったが、今のラキュアにウルティマの言葉を聞く余裕などある筈もなく、耐え難く続く苦痛に、ラキュアは血の涙を流しながらそのまま悶絶した。
「おやおや。あまりの苦痛に気を失いましたか。」
「あれだけ弱めた呪いで気を失うなんてね。やっぱり無能は駄目だね。」
気を失ったラキュアに対して、ディアブロとウルティマはそう言うのだった。
「それにしても、あの力は強力ですね。下手をすれば私も只ではすまないでしょう。」
「ふふ。いつか試してあげようか?」
「ええ。そんな機会があればですがね。」
そう話しながら、互いに笑み浮かべるウルティマと
ディアブロだが、…目が笑っていない。
二人の間に黒紫の炎が燃え上がっている様に見える。
「ウルティマ。ディアブロ。今はそれどころではないからそれくらいな。」
「はーい。」
「はい。」
フォルテにそう言われ素直に従う二人だった。
(……やっぱ原初の悪魔なだけあって、ウルティマも相当やばいな。)
先程までのウルティマの行動を見ていたリムルは、ウルティマの恐ろしさを改めて理解し苦笑いを浮かべていた。
「ヴェイロン。ゾンダ。」
「はい。」
「お嬢様。」
ウルティマがヴェイロンとゾンダの二人を呼ぶと、二人はすぐさま現れウルティマに頭を下げる。
「このゴミと、ゴスペルの背の上にいるあのゴミを拷問室に運んでおいて。」
ウルティマは二人に、ラキュアとチクアンを拷問室に連れて帰る様に命じた。
「畏まりました。」
「直ちに運ばせていただきます。」
そして、ヴェイロンはディアブロからラキュアを、ゾンダはゴスペルからチクアンを回収すると、すぐさま転移し連れ帰ったのだった。
「さて…あとは。」
フォルテはそう呟きながらリムルを見ると、リムルは頷き二人はすぐさま思念伝達で紫苑達に連絡を入れる。
『皆、聞こえているな。』
『どうやら隣国の指揮官は、ラキュアの部下達に取って代わられていた様だ。』
そう。ラキュアがダークチップを使った際、リムルとフォルテは隣国の指揮官達の変化に気付いていた。
『では、こいつらは…。』
『ああ。始末して構わない。』
『『お任せ下さい!』』
フォルテからの許可に、紫苑と紫蘭は笑みを浮かべる。
「うおーっ!」
「「ハアッ!」」
悪魔の指揮官は紫苑と紫蘭に殴り掛かるが、紫苑の剛力丸で一刀両断され、紫蘭の
「「ふう…。」」
白老と無銘の方は、二人によって悪魔の指揮官は斬り捨てられていた。
「「お主では、荷が重かったようじゃのぅ。」」
「流石は師匠っす。」
「オイラ達も、もっと強くならないといけないっすね。」
白老と無銘が勝つと、ゴブタと雷蔵がそう言うのだった。
「「
「ぐおーつ!」
ガビルとランサーは、同時に放った
悪魔指揮官を撃破した。
蒼影とシャドーマンは、まるで必殺仕事人の様に糸で悪魔指揮官を絡め取っていた。そして……。
「ぐおっ!」
二人が糸を軽く引くと、悪魔指揮官はバラバラに切断された。
『リムル様。フォルテ様。』
『指揮官の始末が完了しました。』
蒼影とシャドーマンは、すぐさまリムルとフォルテに指揮官の始末が完了した事を伝える。
『ご苦労。良くやってくれた。』
『残っている敵兵達は、戦う意思がなければ、今日のところはそのまま帰していい。』
『分かりました。』
リムルとフォルテは蒼影達からの報告を聞いた後、思念を切った。
「これでラージャは守れたな。」
「ああ。後は…ヒイロだな。」
フォルテはそう言って真下を見ると、橋の上でヒイロと
紅丸が戦っていた。
ウルティマが弱めたファントムペインを放ち、ラキュアに地獄の苦しみを与えた。
これから先、ラキュアとチクアンはウルティマの様々な実験及び拷問の日々が待っている。
次回で紅蓮の絆編は終わる予定です。