転生したらフォルテだった件   作:雷影

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この投稿で二年目に入りました。
UAも41万以上となっていて、読んでくれた方々やお気に入り登録してくれた皆さんありがとうございます。
皆さんからの感想いつもありがとうございます。
今年も投稿を続けられる様に頑張っていきます。
今回はタイトル通り、ソフィア達にある人の始まりの記憶を少し見る事に。


109話 平和な日々①(月が導く世界の記憶)

魔王達の宴(ワルプルギス)から1ヶ月。

魔王となってから色々あった。ラージャでのウルティマの配下であるラキュアの暴走に、異世界から仲間となったシャドウやソフィア達。

 

シャドウは任務がなければマリアと共になるべく過ごしてもらう様にした。

シャドウとマリアにはこれから良い人生を過ごして欲しいからだ。

 

ジェラルドの回復薬とシャドウ・アンドロイドの開発も順調に進んでいる。

 

ソフィア達は、白老達の元で新たなに得た身体に慣れる為に手合わせを繰り返している。

 

そんな日々を過ごす中で、今回はソフィア達と共に(みずち)から得た深澄(みすみ) (まこと)の記憶……女神との出会いの記憶を思念伝達で共に見ているフォルテ。

真のご両親が女神の世界の人間だった事、女神との契約で自分達の大切な者…娘か息子を一人勇者として差し出す事を、向こうの地球の神である月読命(ツクヨミ)から教えられ、姉達の為に自分が異世界に行く事を決意。

そして、女神の元に召喚される前に、月読命から加護を授かり女神の元に召喚される。

……その際、月読命から女神が性格に問題あると聞いていたが……想像以上だった。

 

転移した真を待っていたのは、眩い光だった。

 

『ッ‼︎うわ眩し…。』

 

『あら、もう来たのォ?』

 

光が収まると、そこに広がるのは白い宮殿であり、その奥の玉座と思しき場所に顔はハッキリと見えないが女神と思われる女性がいた。

 

『月読爺さんの力も結構弱くなってんのねぇ。あんなマゾみたいな世界にいたらしょうがないか。』

 

真の目も慣れ、漸く女神の姿を確認出来た。

 

『実はこっちの世界で、私がちょっと目を離した隙に魔族やら亜精霊が好き勝手始めちゃってさぁ。種族間のバランスが崩れて私の美しい世界の住民・ヒューマンが大ピンチなのよぉ。んでそっちでは深澄とか名乗ってたっけ?あんたの両親との間に交わした契約を思い出してね。あんたをこの世界に呼んで、勇者としてヒューマンを手伝わせようかとーーん?』

 

女神は途中で話すのをやめてある事に気付く。

 

『アハハハハハハハ!あんた本当にあの二人の子供ぉ⁉︎不細工ね〜どこの醜いアヒルの子よ!』

 

水瓶に映った真の顔についてだった。確かに真はイケメンではないが、ごく普通の一般的であり、女神の言う様な不細工ではない。

にも関わらず、真の顔をディスり続ける女神。

 

『白鳥成分ゼロ!ちょっと確認…あ、やだちゃんと血は繋がってる。悲っ惨ね〜!あら、長女と次女は良い線いってるじゃない。こっちをよこしなさいよね。私の好みを忘れてこんなのを候補に挙げてくるなんて、月読爺さん耄碌してるの確定よね。アハハハハ!』

 

余りの女神らしからぬ発言と態度の数々に、真も言葉が出ない。

 

『あんたに力与えるとかマジ無理。さっさと視界から消えてくれる?存在がキモイしって言っても、もう来ちゃってるもんなぁ…。召喚にもクーリングオフシステムを作って欲しいわね。』

 

『あ、あんたな⁉︎そっちの都合で呼んでおいてそれはねぇだろ!』

 

余りにも酷すぎる女神の罵詈雑言に、さすがに真も声を上げる。

 

『うっわ野蛮!声すら醜いとか。』

 

『ギャアッ眩しっ!』

 

真の言葉を遮る為に、自身の輝きを強くして黙らせる女神。

 

『ホーント他に保険かけておいて正解だったわねぇ。』

 

『ほ、保険?』

 

『私の世界に相応しい勇者は別に手配したから、あんたは私の世界を汚さないよう世界の果てでじっとしてなさい。いいわね!

 

『いい訳あるか!なんだよそれ!僕なりに覚悟して元の世界を捨てて此処に来たのに…!』

 

身勝手過ぎる女神に怒りの声を上げる真。

だが、女神は聞く耳を持たない。

 

『ああそうだ。あんたに力渡すなんてすっごく嫌だけど、妥協して「理解」を与えるくらいならまあいいかな。今後のためにも。』

 

まったく真の事など考えず、自分の事しか考えない女神。

 

『ちょっと聞いてる?あんたが魔族や亜人と話せる様に、ヒューマン以外の言葉を「理解」出来る様にしてあげるって言ってんの。』

 

そう言って、女神は指先から真に向かって光を放った。

 

『だから、できるだけ低位のオークやゴブリンにまじって暮らすのよ。結婚も勘弁してよね。』

 

女神の放った光が、真の頬を殴る様にぶつかると、真の全身が薄っすらと光った。

 

『間違っても、私のヒューマンにあんたの醜い(たね)を散蒔くんじゃないわよ!』

 

『酷い言い草っ⁉︎』

 

『じゃ、行け。』

 

女神がそう言った瞬間、真の足元に穴が開きそのまま落下。

そして、女神が最後に真に言った言葉は…。

 

『あ〜あ。落としただけじゃ死なないだろうな〜。あの世界の人間って本当にしぶといのよね。また湧かれたらたまんないわ!』

 

『嘘だろぉぉぉぉ⁉︎ゴキブリ扱いかよ!ちくしょおおお‼︎』

 

こうして、女神によって空から世界の果てへと捨てられた真だった。

 

その様子を、記憶の中とはいえ見ていたソフィアと

ナバールは、顔を引き攣らせていた。

 

「これが私達の世界の女神の姿……。」

 

「…クズノハの言っていた通り、女神の加護はなかったのね。それに、クズノハが女神を嫌っていたのも納得ね。」

 

ナバールは自分達が信じていた女神の本性と呼べる姿を知って愕然とし、ソフィアは女神の真に対する数々の仕打ちを見て引いていた。

 

落下していた真は月読命に助けられ、真が元の世界の負荷から解放され、この世界では超人として力を発揮できる事を教えてくれた。そして、真を召喚する際に世界が繋がったのをいい事に、真がいた世界から二人攫っていた事を教えた。

 

「それが響…。」

 

「もう一人が智樹君って事ね。」

 

 

そして、真との通信で力を使い果たした月読命は眠りにつく前に、真にこの世界での自由を認めた。

その後、世界の果てに降り立った真は三日間荒野を彷徨い、ハイランドオークの女性をオルトロスから救った。

その際、飛び蹴りでオルトロスの腹を蹴り破り頭を一つ吹き飛ばした。

 

「……やっぱり化け物ねクズノハは。」

 

そして、ハイランドオークのエマから色々事情を聞いたり魔法を教わったりした。……その際、真がレベル1である事も分かった。

 

「レベル1⁉︎」

 

「オルトロスを蹴りで倒す化け物が⁉︎」

 

これにはナバールもソフィアも驚いた。ソフィアに至っては、二度も真と戦い負けているのだからこの事実は驚愕しかないだろう。

 

その後、エマを助ける為に蜃を説得しようと真は動いたが、魔法の試し撃ちで魔族を倒したうえに、蜃の棲家を荒らしてしまい怒れる無敵の蜃と戦う事に。

 

「無敵の蜃…この時にクズノハと出会っていたのね。」

 

赤い霧の中から襲ってくる蜃の攻撃を躱し続ける真は、月読命様から授かった力を無意識に発揮していた。

そして、炎のブリッドと呼ばれる魔法で蜃の体に傷をつけ一気に攻める。

 

『ヤケクソの正拳突き‼︎…からのぉ!裏拳‼︎

 

素手で無敵の蜃を圧倒する真の姿にナバールは目を見開いたまま口を開けて呆然となり、ソフィアはもう色々と諦めた様な表情を浮かべていた。

 

『とどめの必殺ーカエル飛びアッパー‼︎

 

そして最後に見事なアッパーを決めたが、蜃によって真の無意識に望んだ願望の幻影を見せられるが、同時に向こうの世界で自分が悲しませた人を思い出し、蜃の幻影を破った。

幻影を破った真が目にしたのは、腹を出して降伏する蜃の姿だった。

そして、蜃からあれが自分の願望だったと知らされショックを受けた。

 

その後、蜃の方から真と契約したいと申し出た。

 

『つまり?』

 

『私が真殿の仲間になると言う事。私も上位竜の一角。損はさせぬと約束する!』

 

『う〜ん。旅の道連れは多い方がいいのか…?』

 

話が美味すぎて悩む真。

 

『私は真殿の記憶に大いに興味がある!是非良い決断を!』

 

『ちょっ!僕の記憶どこまで見たの⁉︎なんか脅迫めいたものを感じるぞ!僕はどんな秘密を握られたのさ⁉︎』

 

『どうだろうか?互いに益のある事だと思うが?』

 

蜃は目を光らながらそう言ってくる。……完全にこの場の主導権を握っているのは蜃だった。

 

『くっ!この策士め…。いいさ分かったよ!今後とも宜しくだ!』

 

『ああ!こちらこそ末長く宜しく‼︎』

 

こうして、真はヤケクソながら蜃の前足を叩きながら契約する事にしたのだった。

 

最初は五分と五分の盟約を蜃が試みたが、真の力が強過ぎて押し負けた。

次に七分三分で試したがそれでも押し負け、八分二分の支配で漸く釣り合った。

そして、蜃は真の姿に引っ張られ人間の姿…分体だった(みずち)の元となった人の姿へと変わった。

 

「無敵の蜃が契約で支配されないと釣り合わないなんてね……流石はクズノハ。」

 

「彼は本当に響と同じ世界から来てレベル1なのか……。」

 

蜃が契約で真の仲間となった後、蜃が支配する空間である亜空に案内され霧の門を潜ると、そこに広がるのは青空が広がる自然豊かな世界だった。

本来の亜空は何もない闇の空間であり、その中では蜃の思うままだったそうだが、真との契約によって亜空は新たな世界へと生まれ変わった様だ。

 

その後、色々あってハイランドオーク達を亜空に招き入れそこで共に暮らす事となった。

 

「蜃気楼都市……噂で聞いた事がある。」

 

勇者パーティーの一員として行動していたナバールも、蜃気楼都市の噂を耳にした事があった様だ。

 

ハイランドオーク達を亜空に招く際に蜃が作り出した分体。

それが(みずち)だった。

 

それから数日が経過。

真は自分が火・水・雷・土・闇の五つの属性魔法が使える事を理解し、月読命様から授かった加護から得た能力も把握し、その能力に界と名付けた。

自身の周囲に半球状の可変式領域を作り出す能力で、その領域内では大抵の物事を即座に感知でき、任意強化や不可視化に加え、各種属性付加なのが様々な事が行える。

 

「なるほど。だからあの時、クズノハに私の居場所がバレていたのね。それにしても、向こうの神様…月読命だったかしら。相当の力を持った神様だったようね。」

 

ソフィアは、真の月読命から授かった能力を知り、月読命が神としてどれだけ強い力を持った存在なのか理解した。

 

その後、ある作業で手に怪我をした真。

界で治そうしたが治らない。どうやら真には回復適性がなく、回復魔法も受け付けない体質だったようだが、真の力がとんでもない存在を呼び寄せる事となった。

 

亜空の外に出ていた蜃が、ドワーフと思き男を抱えて戻ったきたが、それよりも大変な事態が起こった。

 

亜空の空間に亀裂が入り、罅割れが広がり無理矢理何かが侵入しようとしているのだ。

そして、亜空に侵入したのは……巨大な黒い蜘蛛の化け物だった。

 

「災害の黒蜘蛛!」

 

その蜘蛛を見たナバールは驚愕し声を上げる。

 

「…またとんでもないのが現れたわね。」

 

災害の黒蜘蛛。

異世界から来たというあらゆるものを食べる生きた災害。常に強力な飢餓に行動が支配されており、高い魔力を纏ったものを狙い、生物・非生物問わず全てを喰らい続ける。そして、どんな攻撃を受けても瞬く間に再生する不死の化け物なので、他の場所に向かうまで放置するしか対処法がないあらゆる種族・国家に恐れられている。

そんな黒蜘蛛が、真の血と魔力に引き寄せられ亜空に侵入したのだ。

 

真は1人で黒蜘蛛に立ち向かう事になり、界で短剣を強化して黒蜘蛛の足を一本切断した。

 

「あの硬い黒蜘蛛の足を簡単に…!」

 

ナバールは黒蜘蛛と一度遭遇し、響達と共に戦い敗北している。

故に、黒蜘蛛の足が凄まじい硬度を持っているのを知っていた。

 

足を簡単に切られ怯んでいる隙に、真は魔力を充填しつつ炎のブリッドを空中待機させ、界で短剣に火属性を付与した。

 

黒蜘蛛は足を再生させて攻めてくる度に真は足を斬り落とす。

だが、またすぐ再生されるので、真は炎のブリッドを弓の形にして炎の矢を放った。

 

矢は見事に命中し、真は更に空中待機させていた炎のブリットを炎の槍として放って黒蜘蛛を貫いた。

 

「あの黒蜘蛛を相手にあそこまでダメージを与えるなんて。」

 

「まぁ、クズノハだから出来る事でしょう。」

 

ナバールとソフィアが災害の黒蜘蛛を相手に優勢に闘う真の姿を見てそう言っていると、記憶世界の黒蜘蛛が不気味に笑い出した。

 

『蜃さんや。ある程度のダメージで去って行くんだよな?』

 

『主。これはひょっとすると……やり過ぎて気に入られたのかもしれん。』

 

蜃の言う通りの様で、黒蜘蛛は頬を赤らめながら笑っていた。

 

『ふざけんなぁぁぁ‼︎』

 

「あんな奴に気に入られるなんてね。…流石はクズノハって事かしら。」

 

ソフィアがそう言っている間に、記憶の中の黒蜘蛛は、真は打ち込んだ魔力を吸収して回復していく。

 

「あれだけの攻撃を受けても回復するなんて…。」

 

ナバールは、真のあれだけの攻撃を受けても、その魔力を吸収して回復する黒蜘蛛の回復力に改めて驚愕した。

 

『ったくこの世界の化け物ってのどいつもこいつも…貫くは炎、数多の槍。炎の槍連弾‼︎

 

真は両手から炎のブリッドを形態変化させ、無数の炎の槍と化して黒蜘蛛を刺し貫くが、黒蜘蛛はその槍の魔力さえも吸収して回復。

 

更に攻撃のパターンを変え、真の短剣を弾き界の障壁を破って真を刺した。

 

「まずい!」

 

ナバールは思わず声を上げた。

 

迫る黒蜘蛛の顔に真も喰われると思った。

 

『ぐっああああ⁉︎』

 

だが黒蜘蛛は真に喰らいつくと、なんと吸血鬼の様に真の血を啜り始めた。

そして、……真の中で何かが切れた。

 

『…おい。何嬉しそうに血ぃ啜ってやがる…?』

 

真は黒蜘蛛の口を無理矢理引き剥がし魔力を放出したのか……黒蜘蛛の前で大爆発が起こった。

 

蜃はエルダードワーフを引っ張りながら咄嗟に回避し難を逃れた。

 

黒蜘蛛は至近距離で爆発を食らって身体がズタボロになり吹き飛ばされるが瞬時に回復した。

 

そして、爆煙が晴れると完全に目が据わった真がじっと黒蜘蛛を睨んでいた。

そんな真の周りを、円を描く様に炎のブリッドが出現し、そのまま回転しながら黒蜘蛛目掛けて連続発射される。

 

『あれはブリッドの発射を次弾の始動と連動させている⁉︎術者の魔力が続く限りの永久砲台…!』

 

真が行なっているブリッドの攻撃に、蜃は驚いている。

 

上位竜(我ら)の中に似た様な術を使う奴もいるが、かなり複雑な術式だったと記憶している。どうやったらそれを、初級魔法のブリッドから編み出せるのか…。』

 

「確かに…。」

 

「私もあれを見た時は面白いと思ったわ。」

 

記憶の蜃の言葉に、ナバールとソフィアが同意するかの様に口を開いた。

 

そして、真は短剣を拾い今度は水のブリッドで弓を作り出した。

 

『まったく主様は…。これまで亜空と我らを気遣って加減をしていたのだろう。』

 

そう。今までは真なりに力を加減していたのだ。だが、今の真は完全に理性の箍が外れてしまっているので、水の弓を形成する水のブリッドの量が尋常ではない。

 

『もうその気もなくなったのか。ならば結果がどうあれ邪魔はしない。主の全力の一撃、確かに見届けよう。』

 

蜃がそう言った後、真の水の矢が黒蜘蛛目掛けて放たれた。

 

その一撃に黒蜘蛛は呑まれ凄まじい水流となって木々を薙ぎ倒し山を抉ったのだった。

 

『はっははは…これは笑うしかないな……。』

 

真の本気。その凄まじい力に蜃は苦笑いを浮かべ、戦いを見ていたエルダードワーフは顔を引き攣らせながら開いた口が塞がらなかった。

 

「……なんて力だい。」

 

「手加減なしの本気の一撃……あの時、湖を作っただけはあるわね。」

 

ナバールとソフィアは記憶の中の真の本気の一撃を見て若干恐怖を感じた。

 

『腹一杯になったか?変…態…。』

 

そして、攻撃を放った真は力尽きその場に倒れた。

 

『力尽きてしまったか…無理もない。防御力に称えられた上位竜〝砂々波(さざなみ)〟でも、致命傷を負うかもしれぬ一撃…。災害の黒蜘蛛とて耐えられるわけがあるまい。』

 

蜃はそう思っていたが…。

 

『…ん…?』

 

『アハ…アハアアア‼︎』

 

何処からともなく黒蜘蛛の声が聞こえてきた。

 

『アハアアアア‼︎』

 

そして、瓦礫の下から完全に再生した黒蜘蛛が姿を現し真を黒糸で絡め取ってしまった。

 

これには流石の蜃も予想外だった。

 

『まさかあれを喰らって復活するとは…一生の不覚!』

 

蜃は駆け出すが距離が離れ過ぎて間に合わない。

 

『奴まで遠すぎて間に合わない。まずいまずいまずい!

 

そして、気を失っている真は再び黒蜘蛛の口に捉えられる。

 

『主様!』

 

このまま喰われてしまう。誰がもがそう思ったその時だった。

 

美味しいぃぃぃぃ‼︎最高!貴方最高よう‼︎お腹一杯!こんなの初めてぇぇぇぇ!』

 

『…は?』

 

「…え?」

 

「…喋った?」

 

なんと黒蜘蛛が喋り出したのだ。

これには記憶の中の蜃はもちろん、ナバールとソフィアも思わず声を出していた。

だが、黒蜘蛛は蜃の存在に気付いていない。

 

凄い凄い凄い!こんなに痛くて、こんなに美味しくて、こんなに気持ち良くて、こんなに満たされたのなんて初めて‼︎』

 

『うわぁ…真性の変態か。

 

黒蜘蛛の変態地味た発言に蜃はもちろん、ナバールとソフィアも引いていた。

蜃は、真を下ろしてもらおうと黒蜘蛛に改めて話しかける。

 

『あー…喜んどるところすまぬが、ちょっと良いかな?』

 

もう離さない!ずっとずっと一緒にいるわあ!』

 

だが、真に夢中の黒蜘蛛は蜃に気付かない。

 

話を…聞け!

 

『あいたっ‼︎』

 

話を聞かない黒蜘蛛にイラッときた蜃は、真の足を掴んでそのまま黒蜘蛛の顔に蹴りを喰らわした。

 

『ちょっと何すんのよ!』

 

『主様を休ませてやりたかったものでな。』

 

『貴女今振り回してたわよね?足を掴んで…。』

 

『久しぶりじゃのう黒き蜘蛛よ。』

 

『…誰?貴女。』

 

『姿が変わったくらいで分からぬか?上位竜の蜃じゃよ。』

 

『知らないわねぇ。今までは兎に角お腹が減ってて、食べることしか考えられなかったし。』

 

そう。今までの黒蜘蛛は満たされぬ飢えのままに目につく全てを喰らい続けていただけ。故に、蜃は愚かナバール達と戦った事すら覚えていない。

 

「……その黒蜘蛛の飢えを満たすほどの一撃だったってことか。」

 

「クズノハだから出来た事ね。」

 

ナバールとソフィアは、真の絶大な魔力とその一撃の威力の凄さを知ったので、黒蜘蛛の飢えが満たされた事にも納得していた。

 

『それより主って?貴女その御方とどんな関係?』

 

『契約を結んだのじゃ。私と主の関係は契約によって結ばれた唯一無二のー…『ふぅん。五分の盟約ってわけね。』おい。話を聞け。』

 

『それならー、貴女を殺して、私と契約を結びなおせばいいわけね…。』

 

そう言って、蜃に対して戦闘体制を取る黒蜘蛛。

 

「これは…今までより厄介になったかもしれない。」

 

「そうね。本能のまま喰らっていた時と違って自我に目覚めた黒蜘蛛はただ攻めていた頃より強いのは間違いないわね。」

 

ただ喰らうために暴れていただけでも厄介だった黒蜘蛛が知恵を得た…つまり、より多彩な攻撃や敵の動き読んで仕掛けてくる様になったという事だ。

知恵を持ち思考し行動出来る敵殆ど厄介な存在はいない。

 

だが、蜃は臆する事なく話を続ける。

 

『頭の悪い蜘蛛じゃな。さっきから彼を主様と呼んでおろうが。』

 

『う?まさか親子の契約?貴女が子なわけ?』

 

『いや、支配の契約じゃ。主様優位のな。私はいわば下僕じゃよ。』

 

『下僕って…。貴女一応上位竜種なんでしょう?』

 

『あまりそこにこだわるな。先ほど、ずっと一緒にいると言ったな?』

 

蜃は見せつける様に気絶している真の顔に自分の顔を近づけ頬すりする。

 

『ならばこの姿、この関係を見てどう思う?』

 

『支配の契約…ヒューマンの姿……っ!そういうこと…。』

 

『そう。上位竜の私が契約でヒューマンの姿になっているということは、お前も主と契約すれば外見が変わるはず。主の器なら、私達を同時に支配するなど造作もないだろう。』

 

なんと、蜃は黒蜘蛛に真と契約するよう勧めたのだ。

 

『その姿で付き纏われたら主が心を病む。せめて見た目くらい近づけんか。』

 

『でも彼の合意は?』

 

『事後で良いじゃろう。』

 

『…貴女本当に下僕?』

 

気絶している真の了承無しに勝手に決める蜃に、本当に下僕かと思ってしまう黒蜘蛛だった。

 

『そうじゃ。望まれれば(とぎ)もしようぞ。』

 

『駄目。それは私が先よ。』

 

『まあ良かろう。じゃが名を与えられるのは私が先じゃ。そこは譲らんぞ。』

 

『本当に良いのね?私がこの御方と…。』

 

『ああ良い。さっさと契約の儀を始めるぞ。』

 

『うふふ。ありがとうセンパイ♪』

 

こうして、真が気を失っている間に黒蜘蛛との契約が行われた。

そして蜃の読み通り、支配の契約となり黒蜘蛛の姿が変化していき人の姿となった。

 

『!なっ…その姿…。』

 

『一生お仕え致しますわ。ご主人様。』

 

変化を終えた黒蜘蛛の姿は、黒髪の可愛らしい和服美人となっていた。

 

『ハアァ……主様。私も黒髪か欲しかったですぞ…。』

 

こうして真は知らぬうちに、黒蜘蛛が新たな下僕として加えられたのだった。

 

「……ここまででいいだろう。」

 

そう言って、フォルテは(みずち)から得た真に関する記憶を見るのをやめたのだった。

 

「どうだった?真の真実を知った感想は…。」

 

「まさか、響が無理矢理攫われていたなんてね。しかも、本人はそれを知らないって言うんだからタチが悪い。」

 

「私はそうね…。はっきり言って女神が馬鹿だったと言えるわね。もしクズノハが本当に勇者として呼ばれていたら、…魔族は間違いなく滅ぼされていたでしょうね。蜃と黒蜘蛛を同時に支配出来るクズノハを捨てていたなんて…。」

 

真と二度戦い、その強大過ぎる力を知っているソフィアはそう言いい、今回見せた記憶で真の尋常じゃない身体能力と無尽蔵とも言える魔力を目の当たりにしたナバールは同意する様に頷いた。

 

(みずち)から得た真に関する記憶はまだあるからな。また時間があれは残りも一緒に見る事にしよう。」

 

「ええ。そうしてくれると助かるわ。」

 

「私もそれで構わない。」

 

「さて、俺とソフィアはヴェルドラ達の元に行くが、ナバールは白老達のところに行くんだったな。」

 

「ええ。私なりにもっと剣の腕を磨きたいから。」

 

ナバールは白老達の剣術や技術(アーツ)に大変興味を持ち、日々鍛錬に明け暮れている。最近では、黒死牟、縁壱、杏寿郎から全集中の呼吸を学んでいる。

 

ナバールと別れたソフィアとフォルテは共にヴェルドラ達のいるエリアに向かった。

 

「おお!待っておったぞ!」

 

「さあ、今日も我らが相手となろう。」

 

「遠慮なく掛かってくるが良い。」

 

「ええ。じゃあ遠慮なくいかせてもらうわ!」

 

ヴェルドラ達の元に着くと、ソフィアがなんとたった1人でヴェルドラ、アゲンスト、ヴェルキオンに立ち向かった。

 

竜人となったソフィアはユニークスキル竜殺者(リュウゴロシ)を獲得していた。

その名の通り、竜を殺す事に特化したスキル。

自分に対する竜の攻撃や能力を無効化したり、対象の竜を解析しその竜の力を己の力として取り込み力を増大する事ができる。

そして、竜に対しての自分の攻撃全てに貫通効果が付与される。

当然、竜種にも効果を発揮するので竜殺しに相応しいスキルだ。

 

最初はヴェルドラ達をスキルの力で圧倒していたが、漫画の技術を身に付けたヴェルドラ達は己が力を制御しながらソフィアの攻撃を見極めて勝利した。

それからというもの、ソフィアはヴェルドラ達に勝つ事を目標にし、何度も挑む様になった。

 

挑んでくる度に強くなっていくソフィアに、ヴェルドラ達は良い遊び相手になると喜んでいた。

ソフィアも、自分の常識が通用しない竜種であるヴェルドラ達を相手に戦う事をとても楽しんでいた。

それと、ソフィアは固有スキルとして御剣(ミツルギ)瀑布(バクフ)夜纏(ヨマトイ)紅璃(アカリ)無敵(ムテキ)を獲得している。

これらは向こうの世界でソフィアが倒し喰らった上位竜の二つ名であった。

ソフィアの複製魂にはこの上位竜達の魂の一部が溶け込んでいた様で、ソフィアの固有スキルとしてその上位竜達の能力が使える様になっていた。

そのうちの一つである無敵だけは、無敵の蜃の分体だった(ミズチ)から情報(データ)を解析したフォルテがソフィアに与えた。

固有スキルとなった上位竜達の力を使い熟す為にも、

ソフィアはヴェルドラ達に挑んでいるのだ。

 

 

ソフィアが笑みを浮かべながらヴェルドラ達に挑んでいる一方。

フォルテはグレイガとファルザーに対峙していた。

 

「それじゃあ…始めるぞ。」

 

「ああ。」

 

「私達はいつでも構わない。」

 

フォルテがそう言うと、グレイガとファルザーは頷きながら答える。

そして、フォルテが強化分身で二人になると、それぞれのフォルテが形態を変える。

 

グレイガの前にいるフォルテはヘルメットとアーマーが紫に染まり、ファルザーの前にいるフォルテはヘルメットとアーマーそして身体のラインが薄緑に発光するデータが駆け巡る。

 

フォルテXX(ダブルエックス)とフォルテ究極形態(サイトスタイル)だ。

 

何故フォルテがこの二形態となってグレイガとファルザーに対峙しているのか、それはフォルテが新たに得たSX(サイトエックス)の力を使い熟す為だった。

 

SX(サイトエックス)とは、その名の通りXX(ダブルエックス)究極形態(サイトスタイル)が一つなったフォルテの超究極形態と呼べる力。

だが、二つの形態の力が一つになった分使い熟すのも難しい。

そこで、ヴェルドラ達とグレイガとファルザーにXX(ダブルエックス)究極形態(サイトスタイル)を使い熟す為の特訓相手をしてもらっている。

 

SX(サイトエックス)で元の二つの形態に変身でき、戦闘中に自在にXX(ダブルエックス)究極形態(サイトスタイル)に変えられるのだ。

 

グレイガとファルザーも、ロックマンの身体での超獣化形態での戦闘に慣れる為に、フォルテの相手を心良く引き受けてくれている。

 

「「いくぞ!」」

 

「ああ!」

 

「ええ!」

 

XX(ダブルエックス)究極形態(サイトスタイル)のフォルテと、グレイガとファルザーが同時に動きぶつかり合う。

 

こうしてフォルテとソフィアが鍛錬に勤しんでいる一方で、魔国連邦(テンペスト)にいる(ミズチ)は…。

 

「う〜ん!この干し柿は最高に美味しい♪」

 

休憩所で干し柿を食べていた。

 

「まさか柿に渋柿なるそのまま食べられない柿があったとは。だがその渋柿を干したものがこれほど美味しくなるとは驚きよな。」

 

(みずち)がいた世界…亜空には渋柿はなかったようで、渋柿の存在とそれを干した干し柿を知った時は大変驚いていた。

因みに、本体の蜃の姿と同じになった影響か、(ミズチ)の喋り方も蜃に似たものへと自然に変わっていた。

 

「おや?蛟殿ではありませんか。」

 

すると、干し柿を食べている(ミズチ)に話しかける者が現れた。

(ミズチ)が声のする方に顔を向けると、金髪で青い瞳そして両頬に刺青の様な模様がある二十代前半の青年が立っていた。

 

「おお。ランサー殿ですか。」

 

「こんなところで休憩ですかな?」

 

「うむ。今日はフォルテ様とソフィアがヴェルドラ様達と鍛錬しておりますからな。私は御暇を頂いたのです。」

 

「そうでしたか。」

 

このランサーは、フォルテが名付けしたアナザーガビルである電脳龍戈族(サイバートリシューラ)だったランサーだ。

何故こんな完璧な人の姿になれるのかそれは、フォルテが解析して与えたソフィア達の世界の上位竜ランサーの力の影響だった。

 

ソフィア達の魂を回収した際に、向こうの世界で両断されたランサーの遺体を情報(データ)化して回収したフォルテはすぐさま解析を行なっていた。

 

そして、解析が完了した上位竜ランサーの力を適した者に与える事を考えていたフォルテは適合者を探す中で、偶然にも同じ名を与えていたこちらの世界のランサーがこの力に適合している事が判明した。

 

フォルテはランサーにその力を与える事にした。

 

「吾輩にその様な力を…!感謝しますフォルテ様!」

 

そして、フォルテがランサーに刃竜(ランサー)情報(データ)とヴェルドラ達の魔素と因子を与えた事により、ランサーも半竜種に進化したのだ。

称号は蒼刃竜となり、龍戈族(トリシューラ)、電脳態、人、竜の四つの姿に自在に慣れる様になった。

竜としての姿は二足歩行で鱗が鎧の様に変質し背には四枚の翼が生えており、右腕が鋭利な刃で左腕が滑らかな円盾を装備しているかの様な姿。

上位竜ランサーと全く同じ姿だが、向こうの刃竜(ランサー)は白銀の竜であったが、フォルテのランサーは元の龍戈族(トリシューラ)の色である紺青色となっており角が金色となり全身に光沢感がある。

人の姿の服装も刃竜(ランサー)と同じだが、白と灰色の部分が紺青色となり光沢感がある服装となっている。

 

それと新たなユニークスキルとして、剣刃者(ブレイド)を獲得している。

刃竜(ランサー)の力がそのままユニークスキル化したものであり、光の剣を無尽蔵に創り出し操る事が出来る。そして、光の剣に貫かれた者は剣に変えられ所有していたスキルも剣の能力となってランサーの力となる恐ろしいスキル。

剣にされる者の実力によって等級が決まり、相当の実力者なら特質級(ユニーク)伝説級(レジェンド)の物になる者がいるかもしれない。

更に、刃竜(ランサー)が生前に変えて集めた剣を再現して創り出す事も出来る。

 

そして、御剣(ミツルギ)の固有スキルを持つソフィアは生前の刃竜(ランサー)の剣の自在に創り出せる様になっている。

 

 

そんなランサーは、今は人の姿で(ミズチ)の前にいる。

 

「ランサー殿は人の姿に慣れる為の鍛錬の途中でしたかな?」

 

「うむ。龍戈族(トリシューラ)や電脳態での戦闘は慣れているのだが、人や竜の姿ではまた勝手が違うであるからな。先ほどまで猗窩座殿の元で格闘術の鍛錬をしていたところである。」

 

今まで元の姿に近い龍戈族(トリシューラ)や偶になる電脳態とは違い、人や竜の姿に慣れていないランサーは新たな姿と力に慣れる為に猗窩座から格闘術の鍛錬をつけてもらい、白老や黒死牟達の元で剣術を日々磨いているのだ。

 

「では次は白老殿達の元に向かうのですかな?」

 

「その通りである。」

 

「なら、私も一緒にいきましょう。私自身も剣術を磨きたいですからな。」

 

「そうですな。なら共にいきましょう。」

 

「うむ。」

 

こうして、(ミズチ)はランサーと共に白老達の元へと向かった。

因みに、(ミズチ)のユニークスキルとして幻霧者(ファントム)を獲得している。

本体の蜃の能力がユニークスキル化した物であり、特殊な霧を発生させて対象に幻術に掛ける事ができ精神攻撃耐性を持つ者にも有効。霧を使って異空間を作ることも出来る上に気付かれずに対象の記憶を読み取る事もできる。

 

密かに情報を集めるのに役立つ能力故に、蒼影達とは違う活躍が出来るとフォルテとリムルは期待しいるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




真のついて改めて知ったナバールとソフィア。
自分達の世界の女神の本性と呼べる酷すぎる姿に引くのは仕方ない。
そして、偶然にも同じ名前与えてフォルテのランサーに、向こうの世界の上位竜ランサーの力を与えて超強化しました。
半竜種となったランサーが、これからどう活躍するのかお楽しみに。
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