転生したらフォルテだった件   作:雷影

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お待たせしました。
タイトル通りシンシヤのもう1人の父であるあの人物…スライムが登場します。


139話 シンシヤの父様

ルベリオスの両翼会議が終わった頃。

魔国連邦(テンペスト)ではフォルテがいつも通りの業務を熟していた。

 

「これで今日の分の仕事は終わりだな。」

 

「お疲れ様フォルテ様。」

 

書類処理を終えたフォルテにウルティマがコーヒーを差し出す。

 

「ありがとうウルティマ。」

 

フォルテはウルティマが出したコーヒーを手に取り口にする。

 

「ふぅ。相変わらずウルティマの淹れるコーヒーは美味いな。」

 

「えへへ。」

 

フォルテにそう言われて笑みを浮かべて照れるウルティマ。

 

フォルテが自分でコーヒーや紅茶を淹れる姿を見ていたウルティマは、フォルテに喜んで貰おうと密かに練習をしていたのだ。

そして、コーヒーや紅茶を淹れる練習が面白いとウルティマの気持ちが高まり練習の範囲は広がり今では色んな料理やお菓子作りをフォルテや朱菜達とする様になっていた。

この様子を見た配下のヴェイロンとゾンダとシェードマンは目を見開いて驚いていた。

 

 

 

ウルティマが淹れてくれたコーヒーで一息ついたフォルテは、ある事を思い出しウルティマに尋ねる。

 

「そういえば、フォス達はそろそろイングラシアに到着する頃だと思うが、あれから問題はないか?」

 

「うん。僕の“分身”もついているからね。」

 

今から一ヶ月ほど前に、フォス達には西方諸国の調査を任せていた。

護衛として東華(トウカ)を潜ませていたが、フォルテは念には念にとウルティマにも密かに護衛を頼んだいたのだ。

ウルティマはフォルテからリリスモンの身体を依代として与えられた状態で名付けを行った事で、フォルテとリムルと同じ強化分身を獲得していた。

その強化分身をウルティマは上手く応用し、魔素で仮初の肉体を作る様に猫の姿に擬態した分身を作り出してフォス達の調査に同行していたのだ。

 

「ブルムンドでファルムスの流民を人身売買しようとしたコックル男爵から子供を救おうとしたと聞いた時は少し驚いた。」

 

「まぁね。自分の為じゃなく他人の為に頑張って力を振り絞るあの子達は見ていて良かったよ。」

 

「そうか。ウルティマがコックル男爵の悪魔召喚に配下が拒否する様にしてくれたんだろ?」

 

「うん。」

 

「良くやってくれた。東華の助力もあって流民達を救えたそうだからまぁなんとかなって良かった。……その後は、ディアブロと共にコックル男爵の仕置きも行ってくれたんだったな。」

 

「勿論♪」

 

ウルティマは笑顔で答える。

 

 

その後のコックル男爵は、転移で逃げたがディアブロとウルティマを前にして手を出していけない存在だと本能で理解し座り込んでしまった。

 

「クフフフフ。この私に手間をかけさせるとは万死に値する愚行です。」

 

「それに、僕のお気に入りの子達まで壊そうとしたのも許せないよね。」

 

(っ危険だ!コイツらは絶対に相手してはならない予感が…。)

 

「しかし、我が主達は寛大な御方。役目を与えてあげましょう。」

 

ディアブロがそう言うと、コックル男爵の背後に無数の悪魔達が現れる。

 

「有効活用してやるから、リムル様とフォルテ様のご慈悲に感謝するがいい。」

 

「僕からも、とっておきのお仕置き(拷問)をプレゼントしてあげるね♪」

 

ディアブロの恐ろしさ顔とウルティマの冷徹な笑みを見たコックル男爵はこの世の終わりを見た。

 

「いや…いやだぁー!

 

こうして、コックル男爵は原初の悪魔である2人の裁きを受けたのであった。

 

 

 

 

「その後は、ゾンダとヴェイロンを使ってフォス達を鍛えてあげたそうだな。本当にウルティマは気が利くな。」

 

「フォルテ様の為だからね♪」

 

(夢の中でカリオン達を模した幻影と戦う…夢の中だから疲労なく経験が積める。本当に良く考えた特訓方法だ。)

 

フォルテはこの方法を魔国連邦(テンペスト)でも取り入れようかと考えるのだった。

 

(……幻影ではなく本人そっくりの鏡像とも戦えれば、自身でも気付け無かった欠点などを見つけ改善する良い経験にもなるな。)

 

フォルテは考えを飛躍させある者を仲間にしようと決意した。

それは、平行世界に存在する夢幻鏡魔塔(ループルーペ)と繋がる鏡面世界に存在するある魂を複製した存在。

フォルテはその魂の存在を迎え入れる為に様々な準備を済ませた後、リムルとシンシヤに声を掛けとある場所へと転移して連れて行った。

 

 

 

 

そうして、リムルとシンシヤを連れてフォルテが向かったのは、ハンドレッド戦でフォルテが防衛の為に作り出した魔国連邦(テンペスト)のミラー・ワールドだった。

 

 

「ハンドレッドが攻めて来る前に一度来たけど、複製とはいえ本当に全く同じだよな。」

 

「そうですねパパ。」

 

リムルとシンシヤは、ミラー・ワールドの魔国連邦(テンペスト)の再現度の高さに感服しながら辺りを見渡した。

 

「さて、俺とシンシヤを此処に連れて来たのには何か理由があるんだろうフォルテ。」

 

リムルはフォルテがこの場所に2人を連れて来た理由を尋ねる。

 

「ああ。俺は今までシンシヤを解析してシンシヤが向こうの鏡面世界で捕食した鏡像体や夢幻鏡魔塔(ループルーペ)から得た鏡像体の情報(データ)を再現して紫蘭達を創り出したのは知っているだろう。」

 

「ああ。確か平行世界の俺が戦ってきた奴らだったな。」

 

「そうだ。そしてシンシヤも朱菜の願いが形となって生まれたリムルの複製体と呼べる娘だ。」

 

「はい!母様の力でママから生まれたのが私です!」

 

シンシヤは自分の生まれるきっかけである朱菜をママと呼び、自分の本体を生み出してくれたイジスを母様と呼び分けていた。

シンシヤにとって朱菜もイジスも母親なのだから。

 

「…実はな、イジスがモークシャンに唆されて眠っていたシンシヤ本体に妄想鏡(メガロマニア)を使って新たな夢幻鏡魔塔(ループルーペ)を創り出した情報(データ)を最近手に入れた。そして、…シンシヤの理想からリムルの複製が誕生した事を知ったんだ。」

 

「俺の⁉︎」

 

「パパの⁉︎」

 

フォルテの言葉に驚くリムルとシンシヤ。

 

「俺は向こうの世界の夢幻鏡魔塔(ループルーペ)接続(アクセス)出来るからな。新たな戦力増強の為にたまに接続(アクセス)して情報(データ)を得ていた。」

 

「それで俺の複製体の情報(データ)を得たと。」

 

「その通りだ。そして、シンシヤの理想からリムルの鏡像が命を得た事を知った。つまり、シンシヤのもう1人の父親だな。」

 

「私のもう1人のパパ!」

 

「まぁ雷蔵達と同じで中身は全く違うがな。」

 

「それで、…その俺のそっくりさんはどうなったんだ?」

 

「…モークシャンと共にリムルに挑んだのだが、向こうのシンシヤに存在を否定されて一度は消えた。」

 

「えっ…?」

 

フォルテの言葉にシンシヤは思わず口を開いた。

 

「眠っていたシンシヤはエミルスを夢の中の存在だと勘違いしていたからな。シンシヤに否定されたもう1人のリムルはそのまま魂だけの存在となって鏡面世界の中に留まる事になった。」

 

「んで、その魂をフォルテが解析して複製したってところか?」

 

「ふっ。流石リムル。その通りだ。」

 

そう言ってフォルテが掌に見せたのは薄桜色の髪と赤い瞳のリムルの姿が描かれたチップだった。

 

「このもう1人のリムルの実力は本物だし仲間にしたいと俺は思った。」

 

「それで俺とシンシヤを呼んだのか。」

 

「ああ。勝手にリムルのそっくりさんを作ったら怒るし問題になるだろう。」

 

「そりゃそうだ。」

 

「それで、…どうする?」

 

フォルテは改めてリムルとシンシヤに問う。

 

「う〜ん。見た目は俺そっくりの中身は別人だからな…。」

 

「私…会いたいです!」

 

「シンシヤ?」

 

悩むリムルの隣で声を上げるシンシヤ。

 

「だって向こう(本当)の私の願いで生まれたもう1人のパパなんですよ!それなのに…そんなパパを否定して悲しませたなんて…。」

 

シンシヤは平行世界の…もう1人の自分の行いを自分の事の様に悔やんでいた。

 

「だから、もう1人のパパと会いたいんです!そして謝りたい!」

 

「…はぁ。シンシヤの頼みならしょうがないか。それに、フォルテの言う通り戦力にもなるし。」

 

シンシヤの必死に願う姿を見たリムルは、溜め息を吐きながらシンシヤの想いを汲み取る事にした。

 

「なら決まりだな。お前もこれで納得してくれるか?…“エミルス”。」

 

フォルテがそう言うと、掌にあったもう1人のリムルのチップが光輝くと、フォルテの前に半透明な姿でもう1人のリムルであるエミルスが現れた。

 

「まぁ、シンシヤが望むのなら仕方ねぇ。」

 

「えっ?」

 

「もう1人のパパ⁉︎」

 

突然半透明の姿であるが、エミルスが現れた事に驚くリムルとシンシヤ。

 

「実はエミルスの意思は最初からあったんだ。」

 

向こうの鏡面世界に存在するエミルスの魂を複製したフォルテは、複製したエミルスにこちらの世界の情報などを共有し先に勧誘していたのだ。

 

「よお。こっちの世界のリムル=テンペスト。平行世界だろうがお前は変わらない存在の様だな。」

 

「えっ?あっ…おう。なんかこの俺のそっくりさんって俺への当たりが強くない?口調もヤンキーみたいに横暴だし。」

 

「まぁ、向こうで平行世界のリムルと戦った存在だからな。性格はリムルを鏡写しにした様な感じだ。」

 

「そうなんだ。じゃあエミルスって名前は?」

 

「エミルス自身が名乗っている名だ。SLIME(スライム)の鏡写しにした呼び方だ。」

 

エミルスについてリムルに説明するフォルテ。

すると、シンシヤがエミルスに向かって声を上げる。

 

「父様!」

 

「と、父様?」

 

シンシヤに父様と呼ばれて戸惑うエミルス。

 

「はい!パパとは違うもう1人のパパだから父様です!」

 

「…なぁシンシヤ、お前は…俺をリムルの偽物だと思っていないのか?」

 

向こうのシンシヤに否定された記憶もある故にエミルスを少し不安そうにこちらのシンシヤに問う。

 

「…フォルテさんから聞きました。父様は向こうの私の理想から生まれた事を。」

 

シンシヤは真剣な表情でエミルスを見つめながら話す。

 

「私も母様の力でママ(朱菜)の理想からパパの複製として生まれた存在です。でも私にはパパとは違う自分の意思…心があります。フォルテさんが作った紫蘭さん達もそうです。例え元なる人がいても、生まれた私達の心は私達自身のもの。私は偽物なんかじゃなくこの世界で生きる存在です!だから、向こうの私の理想で生まれた父様も、パパ(リムル)の偽物や贋作なんかじゃない私の父様です!」

 

「シンシヤ…。」

 

「だから、向こうの私に代わって言います。父様を否定する様な事を言ってごめんなさい!」

 

平行世界の自分の代わりに心から謝罪するシンシヤ。

 

「…別に謝らなくていい。あれは向こう(平行世界)のシンシヤが言った事だ。」

 

そう言ってシンシヤの頭に手を乗せるエミルス。

 

「お前が俺を本物だと思ってくれているならそれでいい。」

 

「父様。」

 

エミルスはほくそ笑みながらシンシヤの頭を優しく撫でた。

 

こうして、エミルスを仲間として迎え入れる事が決まった。

 

「じゃあ、これから色々と世話になるぜフォルテ。」

 

「ああ。」

 

「いや、俺もいるんだけど⁉︎」

 

「そうだったな…。まぁ一応よろしくなリムル。」

 

「やっぱり俺に対して態度がキツい⁉︎」

 

エミルスの生まれたきっかけがきっかけだけに、リムルと仲良くするにはまたまだ時間が掛かりそうだ。

 

「さて。早速だがエミルスの為の依代を用意するぞ。」

 

今のエミルスはこのミラー・ワールドの魔素で作った仮初めの肉体で一時的に実体化しているだけなのだ。

 

「リムル。お前の強化分身を頼む。エミルスの依代とし馴染むからな。」

 

「おっおう!」

 

リムルはフォルテに言われるがまま強化分身体を一体作り出す。

 

「エミルスからしたら嫌だろがどうだ?」

 

「……しかたねぇ。確かにお前の言う通り俺に馴染むならやはり元となったリムルの分身体だろうな。ここは素直に依代として頂いてやるよ。」

 

エミルスはフォルテの言っている事が正しいので、渋々とリムルの強化分身体を依代にする事を了承した。

 

「それだけじゃない。俺からもお前に用意したものがある。」

 

フォルテが手を翳すと、リムルの強化分身の真横に巨大な魔法陣が出現。

その魔法陣にはリリスモンやベルゼブモンの冠に酷似した紋様が描かれており、魔法陣から0と1の情報(データ)が放出されある存在へと形成されてゆく。

そうして姿を現したのは、長い顎と二つの尾を持つ巨大な鰐のデジモン。

嫉妬を司る七大魔王の1体であるリヴァイアモン。

本来の巨体が大きすぎるので、嵐牙クラスのサイズに圧縮している。

 

「おお!おっきなワニさんです!」

 

「おいおい。これってリヴァイアモンか⁉︎」

 

「そうだ。嫉妬を司る七大魔王デジモンのリヴァイアモンだ。」

 

「嫉妬だと?」

 

嫉妬という単語にエミルスが反応した。

 

「その通りだ。エミルスには七大魔王デジモンの力を与えようと思っていたんだが、エミルスと相性が良かったのがリヴァイアモンの嫉妬の力だった。」

 

「嫉妬ねぇ…。確かに俺にあった感情だろうな。シンシヤの理想から生まれた俺は、リムルが既に持っていた事に嫉妬していたのかもしれねぇ…認めたくねぇがな。」

 

エミルスは自分がリムルに対して嫉妬していたかもしれないと認めた。

 

「後、最後に必要なのは…。」

 

「我だな!」

 

フォルテの隣に現れたのは、褐色肌のマッシブ&マニッシュの野生味溢れる銀髪の男性…ヴェルドラ=アゲンストだ。

 

「アゲンストさん!」

 

「アゲンスト!なんで此処に⁉︎」

 

突然のアゲンストの登場に驚くシンシヤとリムル。

 

「うむ。実はな、フォルテに呼ばれておったのだ。エミルスに名付けする際共に頼むとな。」

 

アゲンストの話を聞いた2人はフォルテの方へと顔を向ける。

 

「エミルスの魂を解析した結果。アゲンストの魔素がエミルスの力を引き出すのに必要だと分かったからだ。シンシヤの理想から生まれたエミルスには、アゲンストの魔素との高い親和性があった。」

 

「なるほど。」

 

フォルテの説明に納得したリムル。

 

「では名付けるとするか!エミルスとやらよ。名付ける際、お前に我のファミリーネームであるアゲンストを授けてやろう。」

 

「あっ?俺にお前のファミリーネームだと?」

 

突然ファミリーネームを与えると言われたエミルスは訝しげにアゲンストを見る。

 

「うむ!兄者がリムルとフォルテとファミリーネームで繋がっているのだから、我も同じ様に繋がるのも良いと考えたのだ。」

 

「……ファミリーネームねぇ。まぁ貰っておいてやるよ。」

 

エミルスはそう言って仮初めの肉体からチップに戻った。

 

「じゃあ始めるぞ。」

 

フォルテはエミルスのチップをリムルの強化分身体へと埋め込む。

 

「「エミルス=アゲンスト!」」

 

フォルテとアゲンストが同時にエミルスに名付けると、2人の膨大な魔素がエミルスとリヴァイアモンを包み込む。

 

「ふぅ…。アゲンストのお陰で少し楽に名付けられたな。」

 

エミルスへの名付けでフォルテは魔素を七割消費したが、残りはアゲンストの膨大な魔素が補ってくれた。

エミルスは真なる魔王へと進化した後のリムルの複製体。

真なる魔王に名付けをするのと変わらないのだ。

 

エミルスが魔素の繭に包まれた次の瞬間、世界の言葉がフォルテ達に聞こえた。

 

《確認しました。個体名エミルス=アゲンストの進化を開始します。》

 

フォルテの魔素とアゲンストの魔素に加え、リムルの強化分身とリヴァイアモンの情報(データ)を依代にした事で、エミルスの進化が開始された。

 

そして、エミルスを包み込む魔素の繭が弾け飛びエミルスが姿を現す。

 

薄桜色の長髪に赤い瞳のリムルと瓜二つの顔立ちで、頭に王冠の様な黒いティアラを冠っている。

服装は、両手に黒いサポーターを身に付け裏地が赤く金の装飾が施された漆黒の女性用の軍服の様な服を着ている。

 

《成功しました。個体名エミルス=アゲンストは嫉妬粘性精神体(エンヴィースライム)へと進化完了しました。》

 

進化を終えたエミルスは、自分の姿を改めて確認する。

 

「へぇ〜、これが進化か。まぁ悪くねぇな。」

 

「わぁ!父様カッコいいです!」

 

「魔素量も先程とは比べ物にならないくらいに増大したな。」

 

シンシヤはエミルスの新たな姿に目を輝かせ、フォルテはエミルスの内包している魔素量が増大している事に感心していた。

 

「う〜ん。確かにカッコいいんだけど、…なんで女物の軍服みたいな感じなんだ?」

 

「あっ?なんだ喧嘩売ってんのか?なんなら、進化した力試しの相手してもらおうか!」

 

「ちょ⁉︎違うから!そんな意味で言ったわけじゃないから‼︎」

 

余計な一言を言ってしまったリムルは、必死に弁明するのだった。

 

その後、なんとかエミルスを落ち着かせたフォルテは改めてエミルスが進化した事で得た能力(スキル)などを確認する。

 

「……ふむ。やはりリムルの強化分身体を依代にした事で、リムルと同じスキルや耐性などを殆どの得ているな。」

 

「ああ。以前の俺にはなかった叡智之神(メーティス)なんてスキルまで得ていたのには俺も驚いたぜ。」

 

そう。リムルの智慧之王(ラファエル)と同等のスキルをエミルスは得ていた。

実は、フォルテがエミルスの魂を複製するにあたって、電脳之神(デューオ)と協力して創世之神(ゼウス)の創世の力も使って智慧之王(ラファエル)に匹敵するスキルが獲得できる様にしていたのだ。

その際、智慧之王(ラファエル)にも協力して貰った。

 

「…なるほど。本当に便利なスキルだな。俺の能力の把握をここまでサポートしてくれるんだからな。」

 

本来のエミルスは大賢者や智慧之王(ラファエル)の様なスキルは保有しておらず、地力で数多のスキルを使い熟していた。

そんなエミルスに叡智之神(メーティス)という究極能力(アルティメットスキル)がサポートしてくれる様になったのだ。

 

それから、リムルの暴食之王(ベルゼビュート)を獲得していた上に、新たなユニークスキル辰喰者(イントレーダー)を獲得して暴食之王(ベルゼビュート)と統合し新たな究極能力(アルティメットスキル) 辰喰之神(ヴリドラ)を獲得した。

 

シンシヤの捕食之王(プレデター)とリムルの暴食之王(ベルゼビュート)を合わせた様な能力を発揮し、竜を象った黒霧であらゆるものを呑み込む事が出来る。

 

他にもリムルと同じ究極能力(アルティメットスキル)である誓約之王(ウリエル)を保有しており、リヴァイアモンの能力を宿した嫉妬之冠(リヴァイアモン)を獲得していた。

 

これでまで、ウルティマと哭陽(コクヨウ)に七大魔王デジモンを依代として与えたが、2人共依代が人型だった故か依代にした七大魔王デジモンの服装や装備を身に纏う事ができた。

だが今回のリヴァイアモンは巨大な鰐の魔王。

故に能力だけを発揮する仕様になっているのだろう。

 

そして、フォルテが夢幻鏡魔塔(ループルーペ)を解析するなかで得ていた妄想鏡(メガロマニア)編集鏡(パラノイア)鏡界之母(アマルテイア)情報(データ)も与えた事により、究極能力(アルティメットスキル) 鏡界之王(シュピーゲル)をエミルスは獲得した。

 

その名の通り鏡面世界の束ねる王の力。

鏡に映る対象の理想とエミルスの想像力によって鏡像生物(オブジェクト)を生み出す事が出来る。

更に鏡に映った対象を複製したり、保有しているスキルを転写して得る事さえ可能。

 

「…なるほどな。その為にわざわざこの鏡面世界(ミラーワールド)を再現したって訳か。」

 

鏡界之王(シュピーゲル)の能力を理解したエミルスは、フォルテの考えを瞬時に理解した。

 

「流石はエミルス。俺の考えを瞬時に理解したか。」

 

「ん?どういう事だ?」

 

フォルテの目的が分からず問い掛けるリムル。

 

「このミラー・ワールドはハンドレッド戦の時とは違い、…“龍騎の世界”を再現している。」

 

「……えっ⁉︎」

 

フォルテの言葉を聞いてリムルが驚いた次の瞬間、何処からともなく魔物達が姿を現した。

しかも、ただの魔物ではない。

 

「あれって…⁉︎ディスパイダーにメガゼール!龍騎の鏡面魔獣(ミラーモンスター)じゃないか!」

 

そう。リムルの言う通り。

今リムル達を取り囲んでいるディスパイダー、メガゼール、デットリマーなどのモンスターは全て仮面ライダー龍騎に登場する鏡面魔獣(ミラーモンスター)達だった。

 

逢魔時王(オーマジオウ)の力で龍騎の世界の歴史を組み込んで鏡面世界(ミラーワールド)を再構築したから、発生する魔物は全て龍騎の鏡面魔獣(ミラーモンスター)になっている。」

 

「なにやってんだよフォルテ⁉︎」

 

リムルが声を荒げるのも仕方ない。

龍騎の世界の怪人である鏡面魔獣(ミラーモンスター)達は、物質世界(リアルワールド)から長時間出られないが、人間や魔物を鏡などの対象を映し出すものから獲物を狙って鏡面世界(ミラーワールド)に引き摺り込んで捕食する危険なモンスターだ。

 

「こんな奴らを野放しにしたらヤバイだろ⁉︎」

 

「落ち着けリムル。この鏡面魔獣(ミラーモンスター)達に物質世界(リアルワールド)に出たりする能力はない。俺が創世の力でその能力を失わせているからな。」

 

「じゃあ、コイツらを使って俺の新たな能力を試させてもらうぞ。」

 

そう言ってフォルテ達の前に出たエミルスが右腕を真上に掲げると、エミルスの目前に巨大な鏡が出現した。

 

すると、何処からともなくキュイイイイイインと音が鳴り響くと同時にエミルスの前に出現した巨大な鏡が波打つ。

 

「さあ出て来い!契約鏡魔獣(コントラクトモンスター)共!

 

エミルスの声に応える様に巨大な鏡から別の鏡面魔獣(ミラーモンスター)達が飛び出してきた。

そして、その鏡面魔獣(ミラーモンスター)達もリムルは知っている。

 

「ええ⁉︎ドラグレッダー、ダークウイング、ベノスネーカー、ドラグブラッカー、ゴルドフェニックス⁉︎」

 

エミルスが呼び出したのは、龍騎達が契約した鏡面魔獣(ミラーモンスター)である契約鏡魔獣(コントラクトモンスター)達だった。

 

「んな驚く事じゃねぇだろ。フォルテからコイツらに関する情報(データ)を貰っていたんでな。鏡界之王(シュピーゲル)で試しに創り出したってだけさ。」

 

フォルテがエミルスを勧誘する際に、龍騎に関する情報(データ)を先に与えていたのだ。

 

「さあ、思う存分奴らを叩き潰せ!」

 

エミルスの命令により、ドラグレッダー達は一斉に鏡面魔獣(ミラーモンスター)達に襲い掛かり蹂躙した。

 

「うわー!父様が呼び出したドラゴンさん達強いですね。」

 

「てか無茶苦茶強いな!」

 

「それは当然だろう。エミルスが創り出した個体だからな。野良の鏡面魔獣(ミラーモンスター)達とは強さの次元が違う。」

 

ドラグレッダー達が次々と鏡面魔獣(ミラーモンスター)達を蹴散らして行く中、増援とばかりにレイドラグーンとハイドラグーンの群れが現れた。

 

「おいおい!流石にあの数は不味いんじゃないか⁉︎」

 

リムルの言う通り、目視できる範囲だけでも数千の群れが迫って来ている。

 

「手を貸そうか?」

 

「いらねぇよ。あの群れは俺が始末する。」

 

フォルテの助力を断ってエミルスはハイドラグーンの群れに向かって手を翳し魔法を放つ。

 

「逆風系魔法…“生を払う風”!」

 

エミルスから凄まじい突風が吹き荒れハイドラグーン達を吹き飛ばしながら風の刃…風刃で切り裂く。

 

「“紅き稲妻”!」

 

更に上空から真紅の稲妻がレイドラグーン達に降り注ぎ粉砕。

 

「これで終わりだ。“壊滅の嵐”!」

 

そして、トドメとばかりに生き残った鏡面魔獣(ミラーモンスター)達に向かって真紅の竜巻が襲い掛かり全ての敵を呑み込み葬った。

 

「まぁ、こんなもんだろ。」

 

「父様凄いです!」

 

「うむ!あれぞ我の逆風系魔法。見事に使い熟しているわ!」

 

エミルスが自身の魔法を使い熟していることを褒め称えるアゲンスト。

アゲンストからの名付けによって魔素と因子を得た結果、魂の回廊が繋がりエミルスも究極能力(アルティメットスキル) 逆風之王(アゲンスト)を獲得していた。

それにより、ヴェルドラの暴風系魔法の亜種である逆風系魔法を扱えたのだ。

 

「これであらかた片付いたな。」

 

「ああ。」

 

フォルテの言葉にエミルスが返事を返すと、ドラグレッダー達がエミルスの前に集まる。

 

「お前らも御苦労。またなんかあれば呼んでやるから後は自由にしてろ。」

 

エミルスの命令を聞いたドラグレッダー達はそれぞれ何処かへと去っていった。

 

契約鏡魔獣(コントラクトモンスター)としてドラグレッダー達を創り出した事で、エミルスは新たに究極能力(アルティメットスキル) 鏡面英雄(ミラーライダー)を獲得していた。

 

このスキルよりドラグレッダー達を何処からでも自在に召喚できるだけじゃなく、龍騎〜オーディンまでのミラーライダーに変身出来る様になった。

そして、他者と契約鏡魔獣(コントラクトモンスター)を契約させてそのミラーライダーの力を与える事も可能。

 

「凄いです父様!凄くカッコ良かったです!」

 

シンシヤが尊敬の眼差しでエミルスを見ながら声を上げる。

 

「まぁ、あんな雑魚共が俺に敵う筈はねぇからな。」

 

「エミルスの実力なら当然だな。鏡界之王(シュピーゲル)も見事に使い熟していたしな。」

 

「まぁ、叡智之神(メーティス)のサポートもあったからな。」

 

「これならこの世界の管理も任せられる。」

 

フォルテが笑みを浮かべながらそう言うと、エミルスも笑みを浮かべた。

 

「やっぱりそう言う事かよ。まぁ、この鏡面世界(ミラーワールド)で俺の理想の街を作るのも悪くねぇ。」

 

鏡像生物(オブジェクト)が暮らす鏡国連合(マッドシティ)の再建だな。」

 

フォルテがエミルスを勧誘するにあたって、エミルスの願いである鏡国連合(マッドシティ)の再建を了承したのだ。

 

「お前は俺との約束を守った。だから、お前の力になってやるよ。」

 

「ああ。これから宜しく頼むぞエミルス。」

 

フォルテがエミルスに手を差し出すと、エミルスはその手を取って握手を交わした。

 

その後、フォルテはエミルスに更に強くなって貰う為に逢魔時王(オーマジオウ)でディケイドの力を与えた結果、エミルスは究極能力(アルティメットスキル) 破壊英雄(ディケイド)を獲得し仮面ライダーディケイドに変身できる様になり、能力も自在に扱える様になった。

 

そんなエミルスを連れて魔国連邦(テンペスト)に戻ったフォルテは、皆にエミルスを紹介した。

 

「…と言う訳で、今日から新しい仲間となったエミルスだ。リムルとは全くの別人だから気を付ける様に。」

 

「エミルス=アゲンストだ。まぁよろしく頼むぜ。」

 

フォルテに紹介されているエミルスの今の姿は、進化直後の軍服ではなく仮初めの肉体時でのリムルと全く同じ黒いロングコートの服装となっている。

エミルスの服には、軍服と同じく裏地が赤く金と赤の装飾が施されている。

進化した事で、今の姿と進化後の軍服姿に自在になれる様になった様だ。

 

「まさか、平行世界にリムル様の複製体が存在していたとは…。」

 

「だが、姿は同じでも内なる気配は全く違う様だ。」

 

紅丸と蒼影はフォルテからのエミルスの説明を聞いて驚きながらも冷静にエミルスを見極めていた。

 

「ほぉ。リムル様を複製した存在だけあって、リムル様に匹敵するかもしれない力を感じますね。更にリムル様の分身体を依代にした事で、その力が向上している様です。」

 

「それに僕と同じで七大魔王デジモンを依代として与えられたみたいだね。」

 

ディアブロもフォルテからエミルスの生まれたきっかけを事細かに説明された故に、エミルスがリムルの姿を模す愚者ではないと理解しその潜在能力の高さに興味を抱き、ウルティマは自身と同じ七大魔王デジモンも依代として与えられている事と、エミルスの感情と心の色に興味を持った。

 

「最初はリムル様を装う不届者かと思いましたが、シンシヤちゃんの理想から生まれた存在なら納得ですね。」

 

「中身の気配も、リムル様とシンシヤちゃんの両方に近い気がします。」

 

紫苑と朱菜も、フォルテの説明を聞いてエミルスを受け入れてくれた。

 

「…まったく、お人好しな連中だぜ。」

 

自分が戦った紅丸達とは違うとはいえ、こうも簡単に自分が受け入れられた事に呆れていた。

 

「あの〜、ちょっとエミルスさんに質問していいすっか?」

 

すると、突然ゴブタが手を上げてエミルスに問い掛ける。

 

「あっ?なんだ?」

 

「えっと、エミルスさんはフォルテ様が作り直した鏡の中で国を再建するんすよね?そうなったら、エミルスさんの国とリムル様とフォルテ様の国は別々の国になるんすかね?」

 

ゴブタにしては鋭い質問だった。

 

「いや。一応魔国連邦(テンペスト)所属国って扱いだ。」

 

「再建に辺りその辺りはエミルスと話し合って決めている。」

 

何せ…鏡の中に存在する魔国連邦(テンペスト)の鏡写しの国だからな。

 

「後、エミルスさんの能力(スキル)でオイラ達の鏡像を作るって聞いたんすっけど、それって雷蔵達や哭陽さん達みたいな存在を作るってことっすよね?」

 

「まぁ、そんなところだ。鏡に映った者の過去から現在の姿を鏡像生物(オブジェクト)として作り出す事もできるがそれだけじゃねぇ。夢幻鏡魔塔(ループルーペ)鏡面世界(ミラーワールド)でイジスが作り出した鏡像生物(オブジェクト)も作り出せる上に、俺の想像力で新たな存在の鏡像生物(オブジェクト)をも作り出す事もできる。こんなふうにな!」

 

エミルスが手を真上に翳すと魔素が集約して巨大な鏡から出現し、その鏡には以前リムルがイングラシアで捕食した天空竜(スカイドラゴン)に酷似したドラゴンが映し出されている。

 

「出てきやがれ!万華竜(カレイドスカイ)万華舞踏龍(マスカレイドスカイ)混沌亜銀河龍(カオスマタードラゴン)‼︎」

 

エミルスの声に応える様に3体の竜が鏡の中から飛び出し鏡が砕け散った。

 

キュアアアアア!

 

3体の竜は咆哮を轟かせながらエミルスの真上に留まる。

 

エミルスが呼び出した天空竜(スカイドラゴン)に酷似した竜は、全身が赤く翼の膜が炎色で宝石の破片が散りばめられているかの様に輝いている。

そして姿は殆ど同じだが、大きさが違い万華竜(カレイドスカイ)が全長10m位で万華舞踏龍(マスカレイドスカイ)が全長20mで、混沌亜銀河龍(カオスマタードラゴン)が全長40m位の巨体を誇っている。

それから、万華竜(カレイドスカイ)万華舞踏龍(マスカレイドスカイ)の鱗は万華鏡の様になっていて、混沌亜銀河龍(カオスマタードラゴン)の鱗には銀河が宿っているかの様に輝いている。

 

「うひゃあ⁉︎」

 

突然のドラゴンの出現に驚き声を上げるゴブタ。

皆はすぐ構えるも、万華竜(カレイドスカイ)達から襲ってくる気配がない事が分かると構えを解いた。

 

「このドラゴンって…俺が捕食した天空竜(スカイドラゴン)の鏡版か⁉︎」

 

「そうだ。イジスが天空竜(スカイドラゴン)を真似て生み出しやがった竜だ。他の2体はその進化体だ。」

 

リムルが万華竜(カレイドスカイ)達を見て声を上げるとエミルスは答えた。

 

「……なるほど。このドラゴン達には物理・魔法・属性攻撃の全てを反射する特性がある様だな。それに対抗するには複数の性質を合わせた攻撃でなければならない。」

 

「つまり、下手に攻撃すれば反射された自分自身の攻撃でやられる可能性もあるという事ですね。」

 

「とんでもないドラゴンだな。」

 

フォルテの解析結果を聞いてカーネルと紅丸は万華竜(カレイドスカイ)達の特性に脅威を感じていた。

 

「じゃあ、コイツらを戻すぞ。」

 

エミルスがそう言って指を鳴らすと、万華竜(カレイドスカイ)達の前に鏡が出現し、万華竜(カレイドスカイ)達は鏡を潜って鏡面世界(ミラーワールド)へと戻って行った。

 

「これで満足したか?」

 

そう言いながらゴブタを見るエミルス。

ゴブタは壊れたブリキ人形みたいに首を勢いよく縦に振って何度も頷いた。

 

「それにしても、あれだけの存在を生み出して平然としているとは、魔素量はリムル様より多い様ですね。」

 

万華竜(カレイドスカイ)達を生み出すのにかなりの魔素を消費している筈のエミルスが平然としている姿を見て紅丸はそう言った。

 

紅丸の言う通り、エミルスが万華竜(カレイドスカイ)達を生み出すのにはそれだけ膨大な魔素が必要なのだが、その問題は事前に解決していた。

それは、エミルスの鏡界之王(シュピーゲル)の転写の能力を試す為にエミルスが作り出した鏡にフォルテを映した結果、転写によってフォルテの能力(スキル)を複数得ていたからだ。

フォルテが抵抗しなかったので叡智之神(メーティス)によって虹之鳳翼(フェニックスエール)真大魔王(バーン)電脳凶皇(フォルテ)電子聖獣(データウェポン)眷属者(エージェント)の五つ能力(スキル)が選ばれエミルスへと転写された。

そうして、エミルスは虹之鳳翼(フェニックスエール)無限供給(インフィニットレイヤー)によって無尽蔵の魔素を得たのだ。

 

こうして、皆へのエミルスの紹介は終わった。

その際エミルスはフォルテを見据えながら、フォルテとの最初の邂逅を思い出していた。

 

(シンシヤの理想によって生まれたのにそのシンシヤに否定され消えた後、鏡面世界で眠っていた俺は、突然現れやがったイジスの生みの親と呼べる黒妖耳長族(ダークエルフ)の女クリシェをぶっ飛ばし、クレイマンの鏡像生物(オブジェクト)のモークシャンを殴り倒して再び眠りついた。そんな俺の意識が再び目覚めた時に出会ったのがフォルテだった。)

 

エミルスの魂を複製したフォルテは、自身の魔素で作り上げた仮初めの肉体をエミルスに一時的に与えた。

 

「うっ…此処は?」

 

「目覚めた様だな。」

 

「ん?なんだテメェは?」

 

「俺の名はフォルテ…フォルテ=テンペスト。平行世界のリムルの仲間だ。」

 

「なに?」

 

リムルの名が出てフォルテを睨むエミルス。

そんなエミルスに対してフォルテは臆する事なく説明した。

 

「…つまりなんだ?イジスの鏡面世界とお前の異空間がなんらかの干渉を引き起こした事でシンシヤが複製されてお前の世界に現れ、お前は夢幻鏡魔塔(ループルーペ)接続(アクセス)した事で俺の存在を知り、俺を複製してこの世界に連れて来たって事か?」

 

「その通りだ。」

 

フォルテの説明を聞いたエミルスはとても不快だった。

リムルのコピーとして生まれたエミルスは、自分達が本物であると証明する為にリムル達に戦いを挑んだ。

そんなエミルスが、今度は自身の複製体となって生まれた事を不快に感じない訳がなかった。

 

自身を複製した元凶であるフォルテに向かって怒りながら睨むエミルス。

そんなエミルスに向かってフォルテは口を開く。

 

「エミルス。俺はお前をリムルの贋作…偽物とは思っていない。」

 

「んっ!」

 

フォルテの言葉にエミルスは反応し話を聞き続ける。

 

「確かにお前はシンシヤの理想からリムルの複製として生まれたが、リムルはリムルでエミルスはリムルじゃない。その心が何よりの証だ。」

 

そう言ってフォルテはエミルスの胸部に拳を押し当てる。

 

「たとえ姿が同じでも、エミルスの心は…魂はエミルス自身のものだ。俺はエミルスという存在に惹かれた。だからこそ複製してまでお前をこの世界へと導いた。この世界でエミルスはただ1人。お前の存在は贋作なんかじゃない。エミルスという本物の存在だ。」

 

フォルテの言葉を聞き終えたエミルスは、胸な熱い想いが込み上がった。

 

「お前…。」

 

シンシヤに存在を否定されたエミルス。

そんな自身の存在を贋作ではなく本物だとフォルテが認めていると知ったエミルスのフォルテに対する怒りが鎮まっていた。

 

「それと、エミルスが生まれたあの時のシンシヤは眠っていた。故に全てが夢だと思い込んでいた。夢ではなく現実だったと知ればシンシヤはエミルスを否定する事はなかった筈だ。」

 

そう言ってエミルスへと手を差し出すフォルテ。

 

「だからこそ、こっちのシンシヤに会ってみないか?俺はリムルの複製としてではなくエミルスという1人の粘性体(スライム)を仲間にしたいと思っている。」

 

真剣な表情でエミルスを見据えながら勧誘するフォルテ。

そんなフォルテの鋭い眼差しを見るエミルス。……その赤い瞳から嘘ではなく本心から言っているのだと理解した。

 

「……本物か。まさか平行世界で俺の存在を認める奴がいるとはな。いいだろう。取り敢えずはお前を信じてやるよ。」

 

そう言ってエミルスはフォルテの手を取り握手を交わした。

その後、仲間になる条件などを提示し今に至る。

 

 

 

(フォルテ。……アイツには感謝しねぇとな。)

 

そう思いながらフォルテを見据えながらほくそ笑むエミルス。

すると、シンシヤがある事を思い出しエミルスに問い掛ける。

 

「そういえば、父様のスライムの姿ってどんな姿なんですか?」

 

「あっ?俺のスライムの姿?」

 

「そういえば見た事がないな。なぁ、どんな姿なんだ?」

 

「是非見せてください父様!」

 

リムルとシンシヤにそう頼まれるエミルス。

リムルだけなら断っていたが、シンシヤに頼まれては断る事が出来なかった。

 

「…はぁ。分かったよ。」

 

そう言ってスライムの姿へと変わるエミルス。

その姿はリムルとシンシヤと全く同じだが、薄桜色のスライムだった。

シンシヤのスライムの場合、兎の耳の様な可愛らしい2本の突起物が生えていたが、エミルスの場合は人間態の時にも冠っていた黒いティアラを冠っている。

 

「わあ!父様のスライムの姿は綺麗ですね!」

 

「やっぱり髪の色と同じなんだな。」

 

シンシヤはエミルスのスライム姿に目を輝かせ、リムルはその色にどこか納得していた。

 

リムルのスライム姿の色は水色で長髪は蒼銀で、シンシヤのスライム姿は桃色で短髪を蒼銀から桃色に変えられる。

だからこそ、薄桜色の長髪のエミルスは、薄桜色のスライムだとリムルは思っていたのだ。

 

「…もういいか?なら、戻らせてもら…おゎ⁉︎」

 

エミルスが人間態に戻ろうとした瞬間、朱菜に捕まり抱き上げられた。

 

「…おい。」

 

「すみません。あまりにも可愛らしくてつい……。」

 

朱菜は申し訳なさそうにしながらエミルスに笑みを浮かべて見せる。

 

「……はぁ。もうしばらくこのままでいてやるよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「朱菜様ずるいです!私にも抱かせてください!」

 

朱菜がエミルスを抱き上げているのを見ていた紫苑は、自分にもエミルスを抱かせて欲しいと朱菜に抗議するのだった。

 

その様子をフォルテはほくそ笑みながら見守るのだった。

 

 

 

それから数日後。

ルベリオスからヒナタが魔国連邦(テンペスト)に向かって旅立ったと蒼華から連絡が届いたのだった。




まおりゅうからエミルス登場。
フォルテの手により複製されたエミルスだったが、フォルテがエミルスをリムルの贋作…偽物としては見ずエミルスとして見てその存在を認めた事で関係が良好となりました。
エミルスの最初の姿はまおりゅうの魔国連邦対鏡国連合で登場した姿で、進化後はメインストーリー27章で登場した姿となりどちらの姿にも自在になれる様になっています。
エミルスのスライム姿は、今年のまおりゅうのスライム大量発生イベントの公式イラストに登場しました。
フォルテの手によって、まおりゅうの頃より格段と強くなってエミルスのこれからの活躍をお楽しみに。
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