転生したらフォルテだった件   作:雷影

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ゴールデンウィーク中になんとか投稿できました。

遂に魔国連邦(テンペスト)へ向かうヒナタ。
そんなヒナタとファルムスでの戦いに備えリムルとフォルテ達が話し合う。


141話 迫り来る者達と暗躍する者達

ヒナタが魔国連邦(テンペスト)に向かって来ると同時にファルムスに各国の神殿騎士団(テンプルナイツ)が集結していると知ったリムルとフォルテは幹部の皆を集め議事堂で緊急会議を始める。

この会議には、シズさんとギャルドにも参加してもらっている。

 

そして、ディアブロと蒼影から改めて報告を聞く事に。

 

「改めて報告致します。フォルテ様のお陰で一命を取り留めたレイヒムが私の元に転移した後、ラーゼンからの報告で“悪魔の謀略によって大司教が殺害された”という伝聞が魔法通信によって拡散されました。それに呼応し周辺各国の神殿騎士団(テンプルナイツ)がファルムスへ向けて動き出しました。その目的は…」

 

大司教殺しの悪魔討伐。」

 

ディアブロの報告に代わる様に蒼影が口を開いて報告を始める。

 

「ヨウム殿の後ろ盾になっている悪魔が(くだん)の大司教殺し。…そう周知されている以上、他国やファルムスの有力貴族からのヨウム殿への援軍は期待できません。逆に新王エドワルドにとっては神殿騎士団(テンプルナイツ)が援軍となる。俺に先ほど配下から報告がありました。動き出した神殿騎士団(テンプルナイツ)の総数は三万を超えます。」

 

「三万か…多いな。」

 

「ああ。新王エドワルドの軍に加えて三万超えの神殿騎士団(テンプルナイツ)を相手にヨウムは勝たないといけない訳だな。」

 

もちろんリムルとフォルテから援軍も出すが、本気の殺し合いに発展すればファルムスの軍に決定的なダメージを与えかねない。

 

「レイヒムを使者として送り出した私の落ち度です…。」

 

今回の事態を招いたのは自分のミスだと悔やむディアブロ。

 

「そうだディアブロ!お前の失態だぞ!」

 

そんなディアブロに対して指差して声を上げたのは紫苑だった。

 

「与えられた任務を放棄するなら私がもらってしまうからな!」

 

ディアブロに厳しく言い放つ紫苑。原初の悪魔に対して堂々と言えるのには頼もしさを感じていると、今度は朱菜が口を開いた。

 

「そうですよ。貴方も小さな失敗で落ち込んでいる場合ではありません。分かりにくいですが、今のは紫苑なりの激励です。」

 

「しゅ、朱菜様!」

 

朱菜の言葉に慌てる紫苑。

 

「買い被りです!私はこの新参者に第一秘書として先輩の威厳を見せつけただけですので!」

 

「分かっている。…そう言う事にしておきます。」

 

「紫蘭まで!」

 

紫苑を元にしその角の欠片を核にしてフォルテに生み出された紫蘭には、紫苑の考えている事が大体分かるのであった。

 

「紫苑も中々に粋な事をするな。」

 

「ああ。なら俺達はこの先の現実的な話をするか。」

 

そう話し合ってディアブロへと視線を向けるフォルテとリムル。

 

「ディアブロ。誰だって失敗はあるしお前の正体がバレたのは別にそこまで問題じゃないだろう?」

 

「え?ですが…。悪魔の関与と騒がれては任務の続行は…。」

 

「いいか?失敗した時はそれをどうやって挽回するかが大事なんだ。責任を取って辞めますじゃ誰でも簡単に出来るだろう?」

 

「リムルの言う通りだ。今問題なのはレイヒムに重傷を負わせ死んだ事にした犯人が誰なのか。それがお前でないと証明すればいい話だ。」

 

リムルとフォルテにそう言われ呆気に取られるディアブロ。

 

「では、このまま私が作戦を続行しても…?」

 

「当たり前だろ。この作戦はお前が最後まで全うしろ。それとも無理そうか?」

 

「いいえ。とんでもございません。リムル様とフォルテ様より与えていただいた仕事、是非とも最後まで私にお任せてください。」

 

ディアブロは嬉しそうに笑顔を浮かべながら跪きながら言う。

 

「よし!きっちり汚名を返上してくれ。」

 

「お前なら問題なくできるだろう。」

 

「クッフフフ。当然です。」

 

ディアブロは立ち上がりいつもの調子に戻った。

 

「フフフ。フォルテ様の器の大きなに感謝して頑張りなよディアブロ。」

 

「ええ。もちろん分かっていますよウルティマ。」

 

ウルティマの言葉にもいつもの調子で返すディアブロの姿を見たフォルテはもう大丈夫だろうと思った。

 

「さて、次はヒナタの現状だな。」

 

「では、俺が報告します。」

 

フォルテの言葉を聞いた蒼影がヒナタに関して報告を始める。

 

「聖騎士団長ヒナタを含む5名が魔国連邦(テンペスト)に向かっています。上位の実力者の様で蒼華(ソーカ)達の追跡は振り切られました。」

 

「なんと!」

 

蒼華(ソーカ)の追跡が振り切られと聞いて驚くガビル。

 

「ヒナタと共にいる4人は、ギャルドと同じ六大隊長の誰かなのだろうな。」

 

「ああ。俺を含む隊長の皆ならヒナタ様を1人では行かせられないからな。」

 

フォルテの言葉にギャルドは頷き答えた。

魔王の元にヒナタが1人で向かおうとしているのを六大隊長の仲間達が見過ごす訳がないと分かっているからだ。

 

「本当ならギャルドに西方聖教会の事や他の六大隊長について聞きたいけど…。」

 

「ギャルドはあくまでも魔国連邦(テンペスト)で保護している身だ。ヒナタや他の仲間の情報を話す訳にはいかない立場だからな。」

 

「…理解してもらい感謝する。」

 

リムルとフォルテはギャルドからヒナタ達についての情報を聞く事はせず、ギャルドは2人に頭を下げた。

すると、朱菜が代わりとばかりにある提案をする。

 

「リムル様、フォルテ様。西方聖教会の事ですが、ルミナス教の高僧だったアダルマンから話を聞いてみるのはどうでしょう?」

 

「アダルマンってあの死霊(ワイト)だよな。」

 

「確かに、朱菜の言う通りそれが良いな。」

 

朱菜の提案に二人も納得した。

 

「アダルマンなら封印の洞窟で働いております。思念伝達ですぐに来る様に伝えましょう。」

 

「頼む。」

 

ガビルが思念伝達でアダルマンと連絡している間、フォルテに鬼クノイチからある情報(データ)が送られてきていた。

 

(……これは。)

 

その情報(データ)にフォルテは深刻な表情を浮かべたが、まずはアダルマンから話を聞く事を優先した。

 

 

やがてガビルから連絡を受けたアダルマンが執務室に入って来たのだが、リムルとフォルテの前で跪いて両手を合わせて崇めながら挨拶を始めた。

その際、骸骨であるアダルマンの姿がどこか輝いている様にフォルテには見えた。

 

「まさに天佑!恐悦至極!今回こうして拝謁の僥倖を賜りましたこと誠にありがたく…。」

 

「挨拶長っ!」

 

「相変わらず丁寧に挨拶するな。」

 

朱菜から俺達の事を神と崇めている事は聞いていたフォルテ。

フォルテが先にアダルマンと接触した際も、同じ様に崇めながら挨拶されていた故に、フォルテは慣れていた。

 

「お褒めいただき光栄にございます。」

 

「お前は見どころがある!」

 

「同感です。」

 

「僕も気に入ったよ。」

 

紫苑、ディアブロ、ウルティマの三人からは、リムルとフォルテを崇めるアダルマンへの評価はかなり上がっていた。

 

「アダルマン。今はそのへんで。」

 

「しかし朱菜様!この感動をお伝えするには…!」

 

「朱菜の言う通り。今は時間もないからそろそろ本題に入って。」

 

「はっ…ははっ!」

 

朱菜とアイリスの笑顔から発せられる圧を感じたアダルマンはすぐに西方聖教会について語り始めた。

 

「私は嘗て西方聖教会において枢機卿を務めておりました。」

 

「枢機卿って、1番偉い人じゃんか。」

 

「では、やはり貴方はあのアダルマンなのですね。」

 

アダルマンが元枢機卿と知ってリムルは驚き、ギャルドはアダルマンの名は知っていた様で目の前の死霊(ワイト)がそのアダルマンと知って驚愕していた。

 

「神聖法皇国ルベリオスは神ルミナスを頂点と定める宗教国家です。法皇は神の代弁者でありその正体は不明。国を統治しているのは法皇庁と言う組織です。私がいた頃、西方聖教会はこの法皇庁の下部組織に過ぎませんでした。西方聖教会とはルミナス教の仏教のみを目的とし、武力などを所有しない組織だったのです。そして、魔物の脅威から信者を守るために神殿騎士団テンプルナイツが結成され、各国もこれを歓迎しました。すると今度は、本国と各国の間で摩擦が起きるようになりました。そこで登場したのが法皇直属近衛師団ルークジーニアス。異常な強さで、テンプルナイツに命令する権限を持ち、法皇庁の最高権力者である執政官でも彼らにはあくまで要請することしかできません。それから状況が変わり、聖騎士団(クルセイダーズ)と言う戦力を得て教会の力が大きく向上したそうです。」

 

「どうしてなんだ?」

 

「はい。その理由は七曜の老師と呼ばれる者達の存在にあるかと。」

 

「七曜だと。」

 

「偉大なる英雄(笑)ルベリオスの最高顧問とされる老人共でして、私がいた頃は、この七曜が法皇に次ぐ権力者だったのですが、こいつらは胡散臭い奴らでして…。西方聖教会はすっかり腐敗し私を罠にかけ挙句の果てに…!

 

「色々あったのね…。」

 

「アダルマン…。」

 

そう言うアダルマンが怨念が籠った黒紫の妖気(オーラ)が溢れている様にリムルとフォルテには見えアダルマンに同情した。

 

「失礼しました。改めて、私は七曜の老師に嵌められ命と信仰を失う事になりましたので…。友人のガドラの秘術“輪廻転生(リインカーネーション)”により復活出来ましたが、ご覧の通り死霊(ワイト)に転生してしまったのです。」

 

「そうだったのか…。」

 

「ともかく、形骸化していた聖騎士団(クルセイダーズ)を、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)が最強の騎士団に鍛え直し、ルベリオスは法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)聖騎士団(クルセイダーズ)と言う両翼を得たのです。」

 

「成る程な…。(アダルマンの話を纏めると、ルベリオスに関係する部隊は傘下の国々に駐屯している神殿騎士団(テンプルナイツ)に、神と法皇にのみ忠誠を誓う法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)。そして、西方聖教会所属の聖騎士団(クルセイダーズ)か。)」

 

アダルマンのお陰で西方聖教会の戦力についてある程度把握する事が出来たフォルテだった。

 

「アダルマン。お前のお陰で西方聖教会がどの様な戦力を有しているのか知る事が出来た。礼を言う。」

 

「なんと有り難きお言葉!」

 

「でも意外だったな。正直なところ、情報のソースは古いものだけかと思っていたんだが、最近の事情にも明るくかったな。」

 

リムルがそう思うのも仕方ない。アダルマンはカザリームの呪法に縛られジスターヴから離れる事が出来なかったのだから。

 

「私もクレイマンの幹部でしたので、ある程度の情報は与えられていたのです。」

 

思わぬところでクレイマンが役にたったのだった。

 

「どうか警戒してください。法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)聖騎士団(クルセイダーズ)には“十大聖人”と呼ばれる仙人級の者達がおります。くれぐれも油断を召されぬようにお願い申し上げます。」

 

「やはりな…。」

 

この世界の仙人とは人間が過酷な修練を積んだ果てに至る存在進化。

魔王種に近い進化であり、聖人は仙人から更に進化した存在で覚醒魔王に値する。

 

魔国連邦(テンペスト)に滞在している煉獄杏寿郎とナバール=ポーラーは仙人であり、継国縁壱は聖人へと至っているのでリムルとフォルテは存在を知っていた。

 

法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)の中でも三武仙と呼ばれる者達。そして、ご存知でありましょうが聖騎士団(クルセイダーズ)の6名の隊長達と坂口 日向(ヒナタ・サカグチ)です。」

 

「いや、恐らくヒナタは既に聖人へと至っている。」

 

「ああ、間違いなくな。」

 

ヒナタと戦ったリムルとフォルテはヒナタが既に聖人へと至っていると確信していた。

 

そして、アダルマンの話を聞いた朱菜、紅丸、蒼影が口を開く。

 

「では、ヒナタと共にいる4人はやはり…。」

 

「十大聖人の聖騎士団(クルセイダーズ)隊長に間違いないな。」

 

神殿騎士団(テンプルナイツ)が動いているという事は、法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)と三武仙も…。」

 

「我が神よ。ここはこのアダルマンが元枢機卿としてヒナタとやらを諌めてみせましょう。彼女の信仰もリムル様とフォルテ様へと鞍替えする様に説得を…。」

 

「あ〜待て待て。そういうのはいらないから。」

 

「その気持ちだけは受け取っておく。今は下がっていてくれ。」

 

リムルとフォルテがそう言うと、アダルマンの話を聞いていたディアブロが笑い出した。

 

「クッフフフ…。成る程。その手がありましたが。」

 

「素晴らしいアイデアです。」

 

どうやらアダルマンの提案をディアブロと紫苑が実行しようと思った様だ。

 

「何言ってんだお前ら!余計話が拗れるわ!」

 

「ギャルド…なんか済まん。」

 

「いや、気にするな…。」

 

フォルテの謝罪に苦笑いを浮かべるギャルドだった。

こうして、アダルマンのお陰で西方聖教会についての情報を得たのだった。

 

「さて、情報が出揃ったし本格的に対策を考えるとするか。」

 

「そうだな。」

 

リムルとフォルテがそう言うと、漫画を読んでいたヴェルドラが漫画を閉じて起き上がる。

 

「フッ、我の出番か。」

 

「いや、ヴェルドラ達には最終防衛ラインを任せたい。」

 

「何⁉︎」

 

「カッコいい響きだろう?最終防衛ラインだ。」

 

「はっ…!」

 

「ヴェルドラ達は俺達の最強の切り札だ。魔国連邦(テンペスト)の危機にこそ、その力を発揮して欲しい。」

 

「ここを任せられるのは、君達しかいないと思うんだが。」

 

「無論だとも。我らもそうではないかと思っておった!」

 

リムルとフォルテに頼られ上機嫌で再び漫画を読み始めるヴェルドラだった。

 

(よし。これでこいつの暴走は回避出来た。)

 

『アゲンスト、ヴェルキオン。ヴェルドラの事は任せたぞ。』

 

『うむ!』

 

『我に任せよ。』

 

リムルはヴェルドラを大人しくさせられ安堵し、フォルテは念には念をと思念伝達でアゲンストとヴェルキオンにヴェルドラの事を任せるのだった。

 

「ではヨウム殿への援軍を発表する。ゴブタを隊長とする狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)100名。緑色軍団(グリーンナンバーズ)4000名とそれを指揮する紅炎衆(クレナイ)が100名。最後にガビル率いる飛竜衆(ヒリュウ)が100名。総数4300名の予定だったが更に、雷蔵率いる稲妻衆(イカヅチ)100名とランサー率いる螺旋衆(スパイラル)100名を加えた4500名を援軍とする。」

 

「うん。うん。」

 

「意見はあるか?」

 

「ちょっ…自分っすか⁉︎」

 

「何か問題か?」

 

「あっいえ…何でもないっす…。」

 

「ひょっとして、ビビってるっすか?」

 

「ちッ、違うすっよ!」

 

雷蔵にそう言われ声を上げて否定するゴブタ。

ゴブタは実力があるのだが、どうしても臆してしまうところがある。

 

「援軍の指揮は白老が執る。何かあれば俺と哭陽と鵺鬼(ヌエ)がすぐに援護に出向く。」

 

「お任せくだされ。」

 

「了解っすよ。」

 

少し不安そうにしているゴブタを見たリムルは、ゴブタを安心させる為に嵐牙(ランガ)を呼ぶ。

 

嵐牙(ランガ)起きてるか?」

 

「我が主よ。出撃ですか?」

 

リムルの呼び掛けに応え影から姿を現す嵐牙(ランガ)

 

「お前もたまには運動した方がいいだろう?ゴブタについて守ってやれ。」

 

嵐牙(ランガ)さんがついてくれるなら安心っすよ!」

 

嵐牙(ランガ)がついてくれる事になりゴブタはとても喜んだ。

 

「お任せを!紫苑殿に手加減の手ほどきを受けております!」

 

「えっへん!」

 

「お…おう…。」

 

自信満々に胸を張る紫苑の姿を見たリムルは少し不安を感じた。

 

「雷蔵も雷牙と共に頼んだぞ。」

 

「任せてくださいっすよ。」

 

「我らの力を見せてやるぜ!」

 

フォルテも雷蔵と雷牙に激励の言葉を述べると、雷蔵は落ち着きながらも自信を持って返事をし、雷牙もテンション高めで答えるのだった。

 

「それでディアブロ。作戦はどうするつもりなんだ?」

 

「3万の援軍は想定外でした。当初の計画では新王側の戦力は総数で1万程度だろうと見繕っておりましたが…。」

 

そう言ってディアブロは当初の予定だった計画の流れを話す。

 

「まず新王エドワルドが軍を動かそうとした段階でエドマリスに理由を問う書簡を送らせました。新王はエドマリスが結んだ契約を履行する義務はないとエドマリスを処刑し約束の無効を主張。」

 

「俺達が怒り軍事行動を起こせば西側諸国で団結して対抗しようと考えた訳だな。」

 

「現在エドマリスはヨウム殿に守られ二ドル領に匿われております。」

 

「二ドル領には5000の兵がいます。それに加えてリムル様とフォルテ様が転移魔法で4500を一気に送り込む…というつもりでしたが。」

 

「3万の援軍が来るんじゃ心もとないか…。最悪さ、今回は諦めるって手もある。債権を放棄すれば戦争は回避できるだろ?」

 

「ダメです!そんな事をすればリムル様とフォルテ様が軽く見られてしまいます!」

 

リムルの提案を声を上げて否定する紫苑に続く様にディアブロも口を開く。

 

「クッフフフ…。作戦を諦めるなどとんでもない。リムル様、私に任せてくださるのでしょう?」

 

「ああ。だけど無関係な犠牲者は出したくないんだよな…。」

 

「問題ございません。それが我が王の望みとあらばその意に従うのが臣下の務めですので。」

 

「どうするつもりだ?」

 

「犯人を見つけます。この私にありもしない罪をなすり付けようとした犯人をね。」

 

そう言い放つディアブロからは、アダルマンよりも凄まじい黒紫の妖気(オーラ)が溢れ出している。

 

(あ…これはかなり怒っているぞ。)

 

(リムルの前で恥をかかせられたからな…。)

 

「やって来る3万の中には犯人に繋がる者がいるかもしれません。優しく問いただしてみるとしましょう。」

 

(アカン…これは優しさなんて一欠片も持ち合わせていない…。)

 

(犯人が地獄を見るのは確定だな。)

 

ディアブロの様子から犯人が惨たらしい末路を迎えるであろうとリムルとフォルテが思うのだった。

 

「お前が出るなら心配はいらんな。白老。新王の兵を相手に犠牲者を出さずに制圧可能か?」

 

「問題ないでしょうな。」

 

(え?)

 

紅丸と白老の会話を聞いて心の中で声を上げるリムル。

 

「不意打ちで一気に決める方が簡単でしたがそれでは兵の訓練にもならん。」

 

(あれ…?)

 

「そうだな。ガビル、回復薬は大量に用意しておけよ。」

 

(あれれ…?)

 

「承知!お任せあれ!」

 

(俺を置き去りに話がどんどん進んでいく…。)

 

リムルが指示するまでもなく、紅丸達によってファルムス王国攻略の作戦が進んでいく中、フォルテが声を上げる。

 

「なら念には念を入れてウルティマ、俺が生み出した眷属(エージェント)を二万率いてディアブロを手伝ってやってくれないか。」

 

「フォルテ様がそう言うなら任せて。」

 

フォルテの頼みに笑顔で答えるウルティマ。

 

「ディアブロもそれで構わないか?」

 

「ええ、構いません。フォルテ様の心遣いに感謝致します。」

 

「リムル様、ファルムス王国攻略に関しては大丈夫そうですね!」

 

紫苑が笑顔でそう言う。

 

「あ…ああ!そうだね!みんな、頑張って…。」

 

「「「「「「はっ!」」」」」」

 

こうして、ファルムス王国に対する対策は無事に決まった。

 

 

「んで、ヒナタ達の相手を誰がするかだな…。」

 

「ん?…リムル。レイヒムが目を覚ましたそうだ。」

 

思念伝達でレイヒムが目を覚ました報告を聞いたフォルテがリムルに伝える。

そして、目覚めたレイヒムを議事堂に呼ぶと、レイヒムはリムルとフォルテに向かって頭を下げて見事な土下座をした。

 

「申し訳ございません!リムル様!フォルテ様!私が不甲斐ないばかりに‼︎」

 

「いや。お前のせいじゃないから落ち着け。」

 

「レイヒム。…お前を襲ったのは誰だ。」

 

必死に謝罪するレイヒムに対してリムルとフォルテは優しく声を掛け誰に襲われたのかを問う。

 

「は、はい。私を襲ったのはギャルド殿の偽物です。」

 

「やはりか…。」

 

教会内でレイヒムが襲われたのならそうではないかとフォルテは予測していた。

すると、レイヒムから報告を聞いている最中に蒼影が立ち上がり今得た情報を報告する。

 

「リムル様 フォルテ様、緊急事態です。聖騎士団(クルセイダーズ)に動きがありました。」

 

「ヒナタ達に何か?」

 

「いえ、イングラシア王国を見張っていた北槍(ホクソウ)からの報告でたった今200騎の人馬が出陣したと。」

 

「何だと⁉︎」

 

「この国を目指しているのは間違いないようです。」

 

「ヒナタと合流するのか?」

 

「不明です。ヒナタの到着は早くても2週間後と予想されますが、後続部隊の到着も似た時期になりそうです。」

 

「ふむ…。」

 

蒼影からの報告を聞いてどうするかと考えるリムル。

すると、同じく報告を聞いていたフォルテが予想していたかの様に口を開いた。

 

「遂に動いたか…。」

 

「フォルテ?その口ぶり…ヒナタの後から出陣した部隊について何か知っているのか?」

 

「ああ。アダルマンを呼んでいる間に鬼クノイチから映像が送られてきた。ビデオマン!」

 

フォルテの呼び掛けに応え両腕がビデオのテープて繋がっており、身体がブラウン管テレビの画面を思わせる黒と緑を基調した色合いで、頭部がRCA端子を象った平成初期の頃の懐かしさを感じさせるナビであるビデオマンが転移で皆の前に現れた。

 

「おっ、ビデオマンか…なんか見ていたら懐かしいな。」

 

ビデオマンを見て平成の頃を思い出し懐かしむリムル。

 

「ビデオマン。早速だが皆に鬼クノイチから送られてきた映像を見せてくれ。」

 

「了解した。録画再生!」

 

ビデオマンの頭部にある映写機から映像がモニターの様になって皆の前に映し出される。

 

そのモニターに映し出されたのは、聖騎士団(クルセイダーズ)の1人であろう金髪の男性だった。

 

「ッ⁉︎レナード…!」

 

映し出された人物を見たギャルドは思わず声を上げた。

 

そして、レナードと呼ばれる人物に背後から声を掛ける怪しげな白い司祭服に身を包み顔も白いヴェールで覆い隠している三人の人物が現れた。

 

【レナードよ。】

 

【これは…七曜の老師様。】

 

レナードは振り返ると同時に跪く。

 

「あれが七曜の老師か…。」

 

リムルの映像で見る七曜の老師の姿に何か胡散臭さを感じた。

 

【お前だけに知らせたいことがあるのだ。秘密は守れるか?】

 

【はっ。】

 

【実はな、ヒナタと魔王ヴァレンタインが繋がっておった。】

 

「「なっ⁉︎」」

 

七曜の老師の言葉にリムルとギャルドは驚いた。

 

【我らがヴァレンタインを始末したのだが、彼奴(あやつ)め死ぬ間際に命乞いをしながらそう漏らしおったのだ。】

 

その言葉を聞いたリムルはすぐに嘘だと分かった。

魔王達の宴(ワルプルギス)で一度出会った事があるヴァレンタインの態度から考えて命乞いなどする筈がないからだ。

 

だが、それを知らないレナードは驚きながら頭を上げた。

 

【ヒナタ様が魔王ヴァレンタインと⁉︎】

 

【話はそれで終わりではない。】

 

【信じられぬが今度は魔王リムルと魔王フォルテに繋がろとしておるのだよ。】

 

この七曜の老師達の言葉を聞いた皆は、七曜の老師がアダルマンの言う通り信用出来ない敵だと理解した。

 

【し…しかし!ヒナタ様は誰よりも熱心なルミナス教の信徒です。神や我々を裏切るなど…。】

 

映像の中のレナードは七曜の老師達の話を聞いて立ち上がり戸惑いながらも声を上げたその時だった。

 

【レナードか?こんなところで声を上げてどうした?】

 

レナードの背後から偽ギャルドが現れた。

 

【ギャルド…。】

 

【…仕方ない。其方にも聞いてもらおう。実は……。】

 

七曜の老師達は偽ギャルドにレナードに話した内容を伝えた。

 

【成る程な…。】

 

【⁉︎信じるのかギャルド⁉︎】

 

【いや、俺はヒナタ様の実力なら魔王ヴァレンタインの討伐は可能だと思っていた。正直何故討伐に出向かないのかと気になっていたんだ。お前もそうは思わなかった?レナード。】

 

【そ、それは……ッ。】

 

偽ギャルドの言葉にレナードも同じ事思っていたので口を紡いでしまう。

その光景を見ていた本物のギャルドも偽物が言う事にも一理あると顔を顰めた。

 

【まぁ落ち着け。我らも確信しているわけではないのだ。】

 

【だが…はっきりさせる方法がないでもない。】

 

【そ…その方法とは?】

 

【聞けば後戻りは出来ぬぞ?】

 

【構いません。】

 

七曜の老師がレナードにそう言うとレナードは真剣な表情で応える。

その表情を見た七曜の老師がレナードに近寄りながら言う。

 

【リムルとフォルテを…。】

 

【魔王リムルと魔王フォルテを討て。】

 

七曜の老師の言葉に目を見開くレナード。

 

【さすれば答えが出よう。】

 

【ヒナタが本当に魔王と繋がっておれば死に物狂いで止めに動くであろうからな。】

 

【し…しかし、向こうには邪竜ヴェルドラと新たな竜種2体が!】

 

【狼狽えるな。】

 

【落ち着いて考えてみよ。】

 

【邪竜は本当に復活したのか?】

 

【新たな竜種など本当に生まれているのか?】

 

【全てが狂言であったとは思えぬか?】

 

七曜の言葉を聞いたレナードは確かにと思った。

普通に考えたら七曜の言葉の方が信憑性が高いと思うのも無理はない。

 

【ではヴェルドラは復活していないと?】

 

【その可能性が高い。】

 

【レイヒムもヴェルドラを目撃しなかったそうだ。】

 

【法皇様もヒナタに唆されておるだけやもしれぬのだよ。】

 

【ヒナタは一度魔王リムルと魔王フォルテに遭遇したそうだな。】

 

【その時に惑わされたのだと我らは睨んでおる。】

 

【それにヒナタへと用意されたあの伝言(メッセージ)も魔王リムルと魔王フォルテがヒナタを自分の元へと呼び込む為に仕組んだ物やもしれん。】

 

【魔王リムルと魔王フォルテに操られているのだとすれば…。】

 

七曜達の言葉を聞いて目を開くレナード。

 

【危険な賭けですね。ですがヒナタ様が魔王リムルと魔王フォルテの下へ出向いている今、やるなら急がねばならない。どうする?レナード。】

 

偽ギャルドはそう言ってレナードに問う。……まるでレナードを誘導しているかの様に。

 

そして、偽ギャルドの言葉もありレナードは覚悟を決め七曜の老師達へと再び跪く。

 

【私はあの方に憧れ聖騎士(ホーリーナイト)を志しました。ヒナタ様の潔白はこのレナードが証明してみせましょう!】

 

【よかろう。その覚悟しかと見届けた。】

 

【レナードよ。】

 

【はっ!】

 

【任せたぞ。】

 

……そこで映像が終わった。

 

「…ビデオマンご苦労。下がっていいぞ。」

 

「はっ!」

 

フォルテに命じられ頭を下げて退がるビデオマン。

そして、フォルテが皆に向かって口を開く。

 

「さっき見た映像の通りだ。アダルマンの話にもあった七曜の老師という者達がレナードと呼ばれる者を唆して出陣させた。」

 

「ええ。どうやら今回の黒幕は七曜の老師という訳ですね。」

 

「クッフフフ。私に罪をなすり付けた犯人が判明するとは、流石はフォルテ様。」

 

フォルテが齎した映像によって今回の騒動の黒幕が七曜と判明した。

 

「アダルマンが毛嫌いしていた七曜の老師…そいつらがレナードって奴を唆して俺達を襲わせようとしているのは分かった。じゃあその目的は…。」

 

「ヒナタと俺達を戦わせる事。何も知らずにレナード達が魔国連邦(テンペスト)で軍事行動を起こせば戦闘は避けられないからな。先にこちらに向かっているヒナタ達は陽動で動いていると俺達なら判断した筈だ。」

 

「確かに、フォルテ様のおっしゃる通りかと。」

 

フォルテの言葉に紅丸が答え皆が頷く。

 

「七曜の老師達は私の時の様にヒナタの命を狙っておるのでしょう。リムル様とフォルテ様の二人と戦わせて負ける様にと…。」

 

「七曜の老師…!俺だけでなくレナードを利用しヒナタ様を嵌めようとは!」

 

アダルマンが自分の時の様に七曜がヒナタが死ぬ様にリムルとフォルテの二人と戦う様に今回の騒動を引き起こしていると話すと、ギャルドは七曜に対して怒りの声を上げた。

 

「なら、この事をヒナタに説明してレナードって奴を説得してもらえば…。」

 

「いや、七曜の目的がヒナタと俺達を潰し合わせる事なら下手に行動するとルベリオスとの戦争を起こそうとする可能性がある。」

 

「確かに。あの者達ならやりかねません。」

 

フォルテの言葉にアダルマンもあり得ると頷く。

 

「じゃあどうするんだよ⁉︎」

 

「……ここは七曜の描いた通りに動きながら奴らの魂胆を叩き潰す!」

 

フォルテがそう力強く言う。

 

「蒼影、シャドーマンはヒナタがブルムンドに到着次第俺に知らせろ。」

 

「はっ!」

 

「承知!」

 

「シズさんとギャルドはヒナタとの対話の際に共に来てもらいたい。ヒナタに状況を説明するにあたって二人の力を借りたい。」

 

「うん!」

 

「ああ。ヒナタ様の為なら…!」

 

フォルテの頼みを快く引き受けるシズさんとギャルド。

 

「ヒナタには俺とシズさん達で七曜の暗躍を伝える。そしてリムルにはヒナタと本気で戦ってもらう。その決着後に七曜の老師共はきっと何かを仕掛ける筈だ。そこを捕らえる。」

 

フォルテは七曜の老師達の思わく通りに進んでいる様に見せる為に、リムルとヒナタで本気の一騎打ちをしてもらうと言った。

 

「リムルには大変な役割を任せる事になるが良いか?無理ならヒナタとは俺が戦う。」

 

「ん〜〜。」

 

フォルテの提案に悩むリムル。

すると、話を聞いていたレイヒムがある事を思い出したリムルとフォルテに向かって声を上げる。

 

「そういえばリムル様から預かっていたヒナタ様への伝言(メッセージ)が込められた水晶球ですが、リムル様がヒナタ様へ一騎打ちを望む部分しか再生されませんでした。」

 

「えっ⁉︎」

 

レイヒムの言葉にリムルや紅丸達が反応する中、フォルテ、ウルティマ、ディアブロの三人はその理由が分かった。

 

「七曜の仕業だな。」

 

「だね。」

 

「ええ。おそらくは。」

 

「…七曜の老師って奴らは本当に許せないな。」

 

自分の伝言(メッセージ)が七曜によって歪曲されていたと知ったリムルは、スライム姿のままだが怒りが込み上がっているのが皆感じていた。

 

「七曜はどうしても俺とヒナタを戦わせたいみたいだな。…分かった。フォルテの言う通りヒナタの相手は俺がする。」

 

「頼んだぞリムル。」

 

「ああ。後は、レナードって奴が率いてくる聖騎士(ホーリーナイト)達だけど、なるべく向こうにも被害を出さない様に相手をしないとな。」

 

「レナード達は七曜に騙され利用されているだけだからな。」

 

リムルとフォルテがそう決めると皆は頷く。

 

「じゃあ、レナード達聖騎士(ホーリーナイト)の相手を誰に任せるかを決めないとな。」

 

フォルテがそう考えながら呟いた瞬間、勢いよく手を上げる者がいた。

 

「はい!それなら私にお任せを!」

 

「えっ⁉︎紫苑⁉︎」

 

「お前がレナード達を相手するのか?」

 

「はい。私と紫蘭が率いる紫克衆(ヨミガエリ)なら相手にとって不足なし!我らが相手をしてやろうと思います!」

 

「アホか!紫克衆(ヨミガエリ)はCランクかBランク程度の実力しかないんだから相手の方がお前らに不足ありだよ。」

 

「いや、そうとも言えないぞリムル。」

 

「ええ。フォルテ様の言う通り、その策は有効だと思いますよ。」

 

「え?」

 

リムルが紫克衆(ヨミガエリ)では荷が重いと声を上げると、フォルテと紅丸は逆に任せらると言ってリムルに説明を始めた。

 

紫克衆(ヨミガエリ)の皆はエクストラスキル“完全記憶”と“自己再生”がある。普通の攻撃では死に難いから聖騎士(ホーリーナイト)達の油断を誘い隙をついて動きを封じられる筈だ。白老達にも鍛えられいるからな。」

 

「しかも、フォルテ様によって“超速再生”を得ていますからね。」

 

「なるほど。」

 

「その通りです!」

 

フォルテと紅丸の説明に納得するリムルと何故か誇らしげな紫苑。

 

「リムル様。いざとなれば俺の紅炎衆(クレナイ)が助けに入ります。ゴブア、いけるな?」

 

「はっ。」

 

会議室の扉の横に立つ赤い軍服に身を包んだ青い髪に赤いメッシュが入っている美しい大鬼族(オーガ)の女性が返事する。

 

紅炎衆(クレナイ)の隊長ゴブアです。」

 

紅丸の紹介により頭を下げるゴブア。

ゴブリナの頃から紅丸の配下として鍛えられた彼女は優秀でありフォルテも高く評価し期待していた。ゴブリナの時からも綺麗だったが、大鬼族(オーガ)に進化した事でより凛々しく美しくなった。

 

「私も紫苑様に負けぬ様に部下を鍛えております。その力を今、リムル様とフォルテ様の為に役立てる事をお許しください。」

 

「ああ。期待しているぞゴブア。」

 

「よし。それじゃあ紫苑と紫蘭に任せよう。」

 

「はい!」

 

「お任せください!」

 

「ゴブアだったな。フォローを任せるぞ!」

 

「はっ。お任せくださいませリムル様!フォルテ様!」

 

リムルとフォルテに期待され力強く返事するゴブア。

 

「後、念を入れてヤムザとゲルミュッドの2人も向かわせよう。」

 

「え?あの2人で大丈夫か?」

 

フォルテの言葉に心配になるリムル。

 

「ああ。ヤムザはウルティマに鍛えられ、ゲルミュッドは俺の名付けによって弱体化前の全盛期以上の力を得ている。力試しも兼ねて2人に任せてみる。」

 

「フォルテがそう言うなら、…任せてみるか。」

 

フォルテの言葉を信じ、リムルはヤムザとゲルミュッドの参加を認めた。

 

「残るはヒナタと一緒に行動している4人か…。」

 

「仙人級を相手に出来るのは紅丸達とカーネル達くらいだな。」

 

そう言いながら紅丸達とカーネルを見るリムルとフォルテ。

 

「当然俺が出ますよ。」

 

「情報収集は分身体でも可能ですし今は蒼華(ソーカ)達もそれなりに使える様になりましたので。」

 

「私もリムル様の秘書として常にお側に!」

 

紅丸、蒼影、紫苑の三人はやる気満々だ。

 

「待て、レナードと偽ギャルドの存在を忘れている。」

 

「あっ…そうだったな。紫苑は紫蘭と共に別動隊の監視をして欲しい。」

 

「はい!」

 

「分かりました。」

 

紅炎衆(クレナイ)も紫苑達の指揮下に入る様に。」

 

「構わないか紅丸?」

 

「ええ。聖人ヒナタの付き添いの4人は俺と蒼影が2人ずつ相手をすれば済みます。」

 

「お待ちくださいリムル様!フォルテ様!ここはこの不肖リグルドの出番かと!」

 

「えっ?」

 

「そういう事でしたら私もおります。」

 

「えぇっ⁉︎」

 

「俺もいますよ!ゴブタにだけいい格好はさせません!」

 

紅丸が蒼影と2人で4人の対象をすると言った瞬間、リグルド、朱菜、リグルが揃って自分達も戦うと声を上げた。

 

「あぁ…待て待て、お前達ではちょっと危険だと思うぞ?」

 

リムルは3人を心配しそう言うのだが、実際は3人ともかなりの実力へと成長しているのをフォルテは知っている。

朱菜の魔法は更に多彩となり、リグルドは進化してから身体を鍛え続け猗窩座の道場で日々鍛錬を積んだ結果、人鬼族(ホブゴブリン)でありながらその実力はAランクオーバーとなっており、リグルも同等の実力者へと成長している。

 

因みに、カーネル達にはフォルテが思念伝達で待機を命じている。

七曜が姿を現し敵対行為をしたら出撃して一掃出来る様に。

 

リムルが皆を落ち着かせていると、突然会議室の扉が開いた。

 

「なっ、何ですか⁉︎今は会議中でして…。」

 

「ええい!俺達も会議に参加したいんだって!」

 

「これスフィア。そう喧嘩腰で話さない。」

 

扉を開けて入って来たのは、三獣士のスフィアとアルビスの2人だった。

 

「よう!邪魔するぜ。俺達にも協力させてくれよリムル様。フォルテ様。」

 

「魔王リムル。魔王フォルテよ。何とぞ私共に恩返しの機会を与えてくださいませ。」

 

「スフィア。アルビス。」

 

「協力してくれるのか?」

 

「ああ、こんな時じゃねえと恩義に報いる事も出来やしねえし。」

 

「しかし、カリオンに断りもなく勝手な事は出来ないだろ?」

 

「ここで私共が何もしなければかえって叱られてしまいますわ。」

 

「確かに、カリオンならそうだろうな。」

 

カリオンと手合わせし交流した事があるフォルテはカリオンならばそうだろうとアルビスの言葉に納得した。

 

そして、アルビス達と共に戦った紅丸が後押しする。

 

「この者達なら信用できます。」

 

「頼めるか?」

 

「お任せを。」

 

「そのお言葉に感謝を。」

 

こうして、スフィアとアルビスの参戦が決まった。

 

「うん。」

 

そして、リムルとフォルテが皆に向かって声を上げる。

 

「じゃあ戦闘の際に絶対守って欲しい事がある。」

 

リムルの言葉を聞いた皆は、真剣な表情でリムルを見据える。

 

「優先すべきは仲間の命だ。」

 

「そして、自分が殺されたら意味がないと理解しろ。」

 

「今回も全員が無事に乗り切れる事を期待する!」

 

「皆分かったな‼︎」

 

はっ!

 

リムルとフォルテの命に皆が気合い入れた一斉に返事をした。

 

こうして、七曜の老師の暗躍に対抗すべくリムルとフォルテ達の戦いが始まった。

 

 

そして、リムルとフォルテが七曜に対抗する為に行動を開始した世界の裏では、西方諸国の北海に面した小国シルトロッゾ王国で歴史を動かす密談が行われていた。

 

「…それでどうなった?」

 

険しくも気品溢れる顔立ちの老人がある女性に問い掛ける。

 

「予定通りさね。ヒナタにはこちらの動きはバレていない。」

 

その女性はなんと法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)三武仙の1人である“荒海”のグレンダだった。

 

「それは重畳。」

 

「ハハハ!聖騎士団長殿は頭が切れると噂だが、存外大した事はない。」

 

「しかし、油断は出来ぬぞ?」

 

「うむ。下手な企みなど、純然たる武力の前には無力である。」

 

グレンダの報告を聞いて周囲の権力者達が口々にそう言い放つ。

 

「しかしダムラダ殿。流石に貴殿達の嘘は見抜かれた様じゃのう。」

 

気品溢れる顔立ちの老人が目の前の男に言う。

 

「フフフ。問題ありません。坂口 日向(ヒナタ・サカグチ)からの信用は失いましたが、代わりにアナタ方西方諸国の支配者からの信用を得ましたので。特に、ロッゾ一族の首領グランベル・ロッゾの信用をね。」

 

目の前の男…ヒナタにリムルとフォルテがシズを殺したなどの偽情報を渡した東の商人であるダムラダが笑みを浮かべながらそう言った。

 

「心にも無い事を。戦場を食い物にする武器商人が信用だと?“東”の目的は西側諸国に混乱を起こし武器を売る事であろうが。」

 

「これはこれはお見通しとは流石はグランベル(おう)です。」

 

「否定せぬのか?」

 

「しても意味は無いでしょう?」

 

「抜かしよる…まあいい。当面の目的が一致するのであれば、利用し合うのはお互いに有益であろう。」

 

「ええまさしく。暴風竜が魔王リムルに懐柔され、新たな竜種2体は魔王フォルテの力を認めた今、東の帝国が西側(こちら)に進出する。最大の障害は西方聖教会ですから。」

 

グランベルとダムラダの目的が一致し、一時的に協力関係を築いたのだ。

 

「神ルミナスの御旗(みはた)の下、西側諸国は脅威に対し一丸となってしまう。如何に東の帝国が強大でも落とすのは困難でしょう。ですのでヒナタ・サカグチの排除。おおいに賛成ですよ。我らにとっても西方聖教会は邪魔なのです。

 

「ほう?我らは眼中にないと?」

 

「とんでもない。五大老の皆様は利に聡い方々。帝国が西側を支配した後も共に経済を支配しようではありませんか。」

 

「帝国を西へ導けと申すのか?」

 

「悪くない話でしょう?」

 

「帝国は強大ですよ。アナタ方の計らいが無ければ困難ではありますが、それでも不可能ではない。それとも私共と敵対しますか?」

 

ダムラダと呼ばれる商人はグランベルに向かって笑顔でそう言うと、グレンダがダムラダの後頭部に何か金属の様な物が押し当てる。

 

「武器商人風情が、グランベル様に対して無礼じゃないかい?」

 

「ふふふ。拳銃ですか。西側にも流通しているとは驚きです。」

 

「へぇ、コイツを知っているのかい?その割にはえらく余裕じゃないか。」

 

そう。ダムラダの頭に突き付けられていたのは拳銃だった。

だが、拳銃を突き付けられてもダムラダは慌てる事なく冷静だった。

 

「当たり前ですよ。異世界人が西側にしかいないとでも?それに貴女の言う通り私は武器商人風情です。ですのでちょっと詳しいんですよ。」

 

そう言ってダムラダは懐に手を入れグレンダに向かって取り出した物を突き付ける。

 

既に量産に成功しているありふれた武器なんかは特にね。

 

そう。ダムラダが取り出した物も拳銃だった。

 

貴様ぁ…。

 

グレンダは忌々しそうにダムラダを睨む。

 

「あれを量産したと言うのか?魔物には通じずとも人相手には無双の武器じゃぞ…。」

 

銃が東で量産されていると知り騒めく五大老。

確かに魔物相手には普通に使ってもあまり効果がないが人間には脅威の武器。

リムルとフォルテの前世の世界でも、人間を最強へと至らしめた。

そして、グレンダとダムラダが使用しているのは現代でも使用されている自動拳銃なのだ。

 

「控えよグレンダ。魔王リムルと魔王フォルテに聖騎士団長ヒナタ・サカグチ。厄介な者達を抑え込むシナリオに有能な手駒は多いほどいい。今は協力する方か特だろう。」

 

「は…ッ。」

 

グランベルに従い銃を下ろすグレンダ。

それを見てダムラダも銃を仕舞う。

 

「魔王リムルと魔王フォルテは配下の悪魔を使いファルムスを落とそうとしておる。だが我らは彼の地(ファルムス)とイングラシアの均衡を崩したくない。ファルムスを魔王共の玩具にされては困るのだよ。」

 

「なるほど、目障りだと。私共としましても、魔国連邦(テンペスト)にドワーフ王国を経由する販路を奪われたのは面白くない。良き取引相手だった魔王クレイマン様も滅ぼされてしまいましたし…。魔王リムルには恨みがございます。しかし魔王の方はともかく、そちらはなぜ聖人ヒナタを排除しようとするのです?グランベル(おう)の立場なら利用する方が得策だと思得るのですが。」

 

「なに簡単な理屈よ。あの女は強すぎる。

 

グランベルは鋭い眼差しでそう言った。

 

「魔人ラーゼン。自由組合総帥(グランドマスター)ユウキ。そして閃光の勇者マサユキ。こうした英雄達と比べても、あの女の強さは際立っておる。制御不能の駒など要らぬ。貴殿もそう感じた故我らを利用しようと考えたのだろう?違うか?ダムラダ殿。」

 

「…恐ろしいお方だ。では、そちらをお任せするとしましょう。私は予定通りファルムス王国で暗躍している悪魔の排除を。魔王リムルの配下の悪魔が音頭を取っているとの事ですが、東には対悪魔の専門組織がございます。相手が上位魔将(アークデーモン)であろうとも何の問題もありませんとも。」

 

そう言ってダムラダは去って行った。

 

「…なんだいあの陰湿なクソ商人は!なめた態度を取って忌々しいったらないね!」

 

「そういうなグレンダ。あれでも、あの者は最大の敬意を払っておったのだよ。」

 

「ですがグランベル様…。」

 

「お前はあの者の本当の姿を知らぬのだ。横柄な態度はそれだけの地位にあるが故だ。」

 

「本当の姿?」

 

「東の裏社会を牛耳る秘密結社“三巨頭(ケルベロス)”。奴はその頭領の1人“金”のダムラダだなのだよ。」

 

「へぇ。噂には聞いた事があるよ三巨頭(ケルベロス)。」

 

「お手並み拝見と行こうじゃないか。(だがダムラダよ。そう簡単にはいかぬかもしれんぞ。何しろ貴様らが相手にする悪魔は、単なる上位魔将(アークデーモン)では無いのだからな。)」

 

グランベルはファルムスで暗躍するリムルの配下となったディアブロの正体を直感で気付いているようだった。

 

「分かっておるな?グレンダ。」

 

「ああ。奴が悪魔を討伐出来ればよし。もしもの場合はアタイが三巨頭(ケルベロス)を利用して悪魔の動きを封じる。三武仙のサーレとグレゴリーも悪魔討伐へ参加させれば完璧だ。」

 

「それで良い。では行け。」

 

「あいよ。任せな。全てはロッゾの為に。そして、アタイの自由の為に。

 

そう言ってグレンダは行った。

 

 

「…これで良いなマリアベル?」

 

グランベルはずっと抱き抱えていた少女へ問い掛ける。

 

「ええ、ええ御爺様。魔王リムルと魔王フォルテは聖人ヒナタを相手に手一杯。その隙にファルムスの内乱を西側諸国の介入によって鎮圧する。新王エドワルドの名の下にね。そしてエドワルドは御爺様に頭が上がらなくなるのよ。」

 

「そうだね。その通りだよマリアベル。」

 

グランベルはマリアベルの頭を優しく撫でる。

 

「我らロッゾが支配する箱庭に何人たりとも介入は許さん。」

 

ロッゾ一族。

シルトロッゾ王国の王族でもあるその一族は、ファルムスやイングラシアの様な大国まで枝葉を伸ばす。

西側諸国に根を張る支配者の家系である。

そして対魔物の互助組織として立ち上げられた評議会。

西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)を創立したのは彼ら一族の尽力によるものなのだ。

 

マリアベルは立ち上がりワイングラスを手に取りグランベルへと笑みを見せる。

 

「世界はロッゾの為に!」

 

「「「「「世界はロッゾの為に!」」」」」

 

マリアベルがグラスを掲げると、グランベルを含めた五大老が同じ様に一斉にグラスを掲げた。

 

ここは世界の中心。…暗がりの中。彼らは世界の支配を目論む。

 

 

 

 

だが、彼らは知らない。

彼らより深い闇の深淵で暗躍するリーガル達と、この世界どころか異世界人達の世界での現代技術すら遥かに超えた魔王フォルテの超科学技術(オーバーテクノロジー)による開発技術と電脳世界を。




七曜の暗躍…フォルテが用意した鬼クノイチによってリムル達は知る事が出来、七曜の暗躍に対抗する為に動き出す。
そして、その事実をヒナタに伝え協力してもらう為にフォルテが動く。

七曜の暗躍の裏で暗躍するロッゾ一族だが、彼らの暗躍より更に深いところでDr.リーガル達が暗躍し、フォルテは高度な科学技術を持って電脳世界を発展させていた。

世界を手に入れ様とするロッゾ一族よりもやばい悪の科学者と魔王の暗躍が、ロッゾ一族が築き上げた経済を支配するだろう。
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