転生したらフォルテだった件   作:雷影

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いよいよ聖魔激突へと入りますが、しばらくは原作と殆ど変わらない展開が続きます。


143話 聖魔激突(前編)

フォルテとヒナタ達との密会から数日が経過。

ヒナタとの話し合いを終えたフォルテは直ぐにリムル達にヒナタとの話し合いで決まった事を報告し、レナード達を迎撃するフォルテ側の人員を追加したりなど早急に準備を開始した。

 

そうして全ての準備が終わり、蒼影とシャドーマンの二人にはヒナタ達の動向を監視してもらいながら護衛を任せていた。

 

「ヒナタの一団は予定通り今日の夕刻には魔国連邦(テンペスト)に達すると思われます。」

 

「ヒナタ達を狙う様な輩も今のところは現れる様子はなかった。」

 

「そうか。2人共ご苦労。」

 

「流石は蒼影とシャドーマンだな。」

 

「いえ、この程度。」

 

「造作もありません。」

 

報告を聞いたフォルテとリムルに褒められ謙遜する蒼影とシャドーマン。

 

「およそ二週間。ヒナタ達を襲撃する様な輩は現れずか…。」

 

「やはりそう簡単に尻尾は出さない様だな。」

 

紅丸とカーネルは、ヒナタ達の移動中にも襲撃があるかもしれないと警戒していた。

 

「なら、やはりレナードが率いる聖騎士団(クルセイダーズ)が行動を起こし事態が悪化するのを待っているのだろう。」

 

「別動隊の動きは?」

 

「はい。旧道を使い隠密行動を取っております。」

 

「最初期に補足していなければその存在に気付けなかった可能性が高い。」

 

「見事な軍事行動だ。流石はヒナタが鍛え上げた聖騎士団(クルセイダーズ)と言ったところだな。」

 

「このまま気付けなければ間違いなく聖浄化結界(ホーリーフィールド)を張られ一気に戦況が不利になっていたでしょうね。」

 

「そうだな。」

 

「紅丸の言う通りだな。ふむ…。」

 

リムルとフォルテ達は話し合っている中、旧道を利用し隠密行動をとりながら魔国連邦(テンペスト)へと向かうレナード達。

 

「思ったより魔素の濃度が低いな。」

 

「ああ。(やはりヴェルドラの復活と新たな竜種誕生は狂言だったのか…?だとするとヒナタ様…。)」

 

ヴェルドラ達が魔素を抑えたり、フォルテの異空間で解放している事など知らないレナードは、偽ギャルドの言葉通り魔素濃度が低い事からヴェルドラ達の復活は七曜の老師達の言う通り狂言だった可能性が高いとより信じてしまっていた。

 

そして、七曜の老師達が言っていた通り、ヒナタがリムルとフォルテに惑わされているのだと強く思ってしまった。

 

(そうだ。ヒナタ様が裏切るなど考えられない。あの方を救えるのは自分しかいない…。)

 

ヒナタを救い身の潔白を証明する為に、レナードは更に強い覚悟を決める。

 

旧道を抜け聖騎士団(クルセイダーズ)を整列させたレナードは、皆に指示を出す。

 

「これより包囲作戦を開始する。各部隊は指定の位置へ散開せよ!」

 

レナードの指示に従い聖騎士(ホーリーナイト)達が一斉に動き出したその時だった。

レナードの背後から人鬼族(ホブゴブリン)が飛び出し斬り掛かり、偽ギャルドが咄嗟に炎獣牙槍(レッドスピア)で受けて防いだ。

 

「くっ…!」

 

「なっ!待ち伏せだと⁉︎」

 

レナードが周囲を見回すと、散開しようとした聖騎士(ホーリーナイト)達の行手には、紫苑と紫蘭が率いる紫克衆(ヨミガエリ)達が立ちはだかっていた。

 

「まさか、ヒナタ様が俺達を売ったんじゃ…!」

 

「総員 迎撃だ!」

 

偽ギャルドはこの事態すらヒナタのせいにしようと声を上げる中、レナードは構わず聖騎士(ホーリーナイト)達に指示を出しながら霊子聖砲(ホーリーカノン)を放つ。

 

 

 

そして、この事態はすぐに蒼影とシャドーマンを通じてリムルとフォルテに報せる。

 

「リムル様、フォルテ達。どうやら別動隊が動いたようです。」

 

「この街の四方に向けて散開しようとしたらしく、紫苑と紫蘭がそれを阻止しました。」

 

「現在 交戦が始まったと。」

 

「…そうか。」

 

「遂に動いたか…。」

 

報せを聞いたリムルとフォルテはそう呟く。

 

同じ頃、街道を進んでいたヒナタの元にニコラウスから魔法通信で連絡が来た。

 

『ヒナタ様、聞こえますか?』

 

『ええ、何かあったの?ニコラウス。』

 

『落ち着いて聞いてください。ファルムス王国の内乱に三武仙が極秘に参戦したようです。』

 

『三武仙が?まさか法皇が勝手に動かしたの?』

 

『詳細は不明ですが…。ヒナタ様の命に……というのは余程の事かと。』

 

『え?何?』

 

突然ニコラウスの通信にノイズが入り出し聴き取り難くなる。

 

『兎に角…七曜に……くれ……。』

 

そして、遂にはノイズしか聞こえなくなり…途絶えた。

 

「ニコラウス⁉︎」

 

「ヒナタ様?どうかしましたか?」

 

「魔法通信が途絶えたわ。何者かに妨害されたようね。」

 

「えっ⁉︎」

 

ヒナタの様子から何かあったのかとアルノーが問い掛けると、ヒナタは魔法通信が途絶えた事を話しそれを聞いたリティスが反応した。

 

「少し待っていなさい。確認するわ。」

 

ヒナタは法皇ルイへと魔法通信を繋げる。

 

『ルイ聞こえる?』

 

『ヒナタか、聞こえている。何かね?通信の法術が荒いようだが。』

 

『余裕がないのよ。単刀直入に聞くけど法皇直属近衛師団(ルークジーニアス)の三武仙をファルムスへ向けて動かした?』

 

『何だと?』

 

ヒナタから問われた内容にルイは困惑した。

 

『私はそんな命令を出していない。内政干渉になるため内乱に手を出さないと君が会議で告げていたと記憶しているが?』

 

『ええそうよ。だから聞いているのよ。』

 

ルイから命令していないと確認が取れたヒナタは思考する。

 

(三武仙のサーレは反発はするけど規律を遵守する。一度受けた命令を無視して勝手な行動するのはありえない。法皇(ルイ)が出撃を命じていないのなら、やはり七曜か…。)

 

フォルテから神殿騎士団(テンプルナイツ)が七曜の企みで動いている情報を得てはいたが、三武仙まで動いているとはヒナタも思いもしなかったのだ。

その後、ヒナタはなんとかルイに今起きている事態を説明した。

 

『分かった。それでは私も……。』

 

バツン!

 

(ッ!やはり通信が切断された。)

 

ルイとの魔法通信も無理矢理切断されたその直後だった。

街道から外れた場所からレナード達の気配を感知した。

 

「この気配…レナード!」

 

「(遂に始まったようね。)…考えている場合じゃないわね。行くぞ!」

 

ヒナタ達は街道から出てレナード達の元へと駆け出す。

 

そしてリムルとフォルテ達の方では、フォルテがヒナタの魔法通信を傍受して内容を聞いていた。

 

「…やはりファルムス王国の内乱に三武仙が極秘に参戦しているそうだ。」

 

「そうか。ヒナタの魔法通信を妨害したのはやっぱり…。」

 

「七曜の老師共の仕業だろうな。」

 

フォルテはヒナタとの対話で魔法通信を傍受させてもらう事を了承してもらっていた故に、通信を妨害する必要はなかった。

つまり、今ヒナタ達の魔法通信を妨害しているのは七曜の老師達だという事なのだ。

 

「ヒナタは通信が切断された後すぐに戦場へと向かったようです。」

 

「じゃあいよいよだなリムル。」

 

「ああフォルテ。」

 

フォルテとリムルは互いに目を合わせ頷き合う。

 

「作戦通りリムルとヒナタで一騎打ちを行う。」

 

「承知。邪魔はさせませんよ。」

 

「頼んだ!」

 

「恩返しの機会を与えていただき感謝します。」

 

「へへっ。待ちくたびれたぜ。」

 

「足共は任せた。」

 

紅丸、アルビス、スフィアの三人に対し声を掛けるリムルとフォルテ。

 

(紫苑は張り切っていたけど、聖騎士団(クルセイダーズ)が相手じゃ紫克衆(ヨミガエリ)では厳しいだろう…。)

 

(…とリムルは思っているだろうが、白老だけでなくシズさんや縁壱、黒死牟に鍛え上げられた皆なら大丈夫だろう。)

 

リムルは紫克衆(ヨミガエリ)が苦戦しているだろうと考えていたが、フォルテは紫克衆(ヨミガエリ)の成長を把握しているので逆に大丈夫だろうと思っていた。

 

そしてリムルは人間態へと変身する。

 

「じゃあ作戦通りヒナタ以外の十大聖人の足止めは任せる!」

 

「行くぞ!」

 

はっ!

 

リムルとフォルテの命に皆一斉に返事し応えた。

 

 

 

一方戦場の方では、聖騎士団(クルセイダーズ)紫克衆(ヨミガエリ)が激しい攻防を繰り広げていた。

 

戦場に争い合う声と剣と剣がぶつかり合う金属音が辺りに響く中、紫苑と紫蘭はゴブアとゴブゾウと共に戦況を見守っている。

 

そんな激戦の中、レナードは必死に戦っていた。

 

(魔王リムルと魔王フォルテを討ちヒナタ様の疑いを晴らす。その為にはこんなところで手子摺(てこず)っている訳には行かないというのに!)

 

七曜の老師に騙されているとはいえ、レナードは純粋にヒナタの潔白を証明する為にと戦っている。

すると、レナードの耳に仲間の聖騎士(ホーリーナイト)達の困惑の声が聞こえた。

 

「な…なんだコイツ‼︎」

 

「バ…バカな!こいつら攻撃が通用しないぞ!」

 

不死系魔物(アンデット)でもなかろうに一体どういうことだ⁉︎」

 

レナード達の目に映った光景は、聖騎士(ホーリーナイト)達によって確実に致命傷になる傷を負わされた筈の敵が、血を流しながらも何度も立ち上がって来る姿だった。

 

ファルムスの襲撃により死亡し蘇った三百名。

エクストラスキル“完全記憶”と“自己再生”に加えて“超速再生”を保有している彼らは、例え頭が吹き飛ばされようとも復活が可能な(まさ)に死を克服した者達で構成された部隊…それが紫克衆(ヨミガエリ)

 

そんな事を知る由もない聖騎士(ホーリーナイト)達は攻撃を続けるしかなかった。

そして、聖騎士(ホーリーナイト)の1人が人鬼族(ホブゴブリン)を斬り裂き倒したかと思った瞬間、斬られた人鬼族(ホブゴブリン)が前に倒れる直前に踏ん張り聖騎士(ホーリーナイト)に向かって勢い良く短剣を突き出した。

 

「あぁっ!」

 

聖騎士(ホーリーナイト)は咄嗟に躱した事で頬を薄く斬られだけで済んだ。

短剣を突き出した人鬼族(ホブゴブリン)はそのまま勢いよくうつ伏せに倒れた。

 

「ふんっこんな攻撃!…うっ⁉︎」

 

頬を斬られた聖騎士(ホーリーナイト)は振り返りながら構えた瞬間、突然強烈な睡魔が襲いそのままうつ伏せに倒れた。

 

「あぁ…。」

 

なんとか眠気に耐えらながら前を見ると、倒れていた人鬼族(ホブゴブリン)が立ち上がり振り返る姿を見た。

そして、先程与えた斬り傷が瞬く間に完治するのを目の当たりにした。

 

そうして動けなくなった聖騎士(ホーリーナイト)の手足を縛った後、大鬼族(オーガ)の1人が担いで運び戦場の隅へと放り投げられた。

 

「うっぐあ…。」

 

其処には他にも捕まった聖騎士(ホーリーナイト)達が沢山いた。

 

「エヘヘ、聖騎士(ホーリーナイト)さん。」

 

動けなくなった聖騎士(ホーリーナイト)に話しかけるゴブエ。

 

「この短剣にはね、強烈な睡眠薬がたっぷりと塗られているんだよ。」

 

そう。彼女達の目的はあくまで無力化する事。

なるべく聖騎士(ホーリーナイト)達を傷つけずに捕える為に武器に睡眠薬を塗っていたのだ。

 

「う…あぁ…。あ……うっ…。」

 

ゴブエの話を聞いた後、聖騎士(ホーリーナイト)はそのまま眠りについた。

 

そして、戦場にリムルとフォルテが紅丸達を率いて転移してきた。

 

「おぉっ!」

 

転移したリムルの目に映ったのは、紫克衆(ヨミガエリ)紅炎衆(クレナイ)と連携して着実に聖騎士(ホーリーナイト)達を無力化してゆく光景だった。

 

「足止めを命じた筈なのに、敵の半数近くも戦線離脱させるなんて…。」

 

そう言って紫苑と紫蘭の後ろ姿を見るリムル。

 

「でき過ぎだろう…。」

 

「当然だ。皆リムルの思っている以上に鍛錬しているからな。」

 

リムルの呟きに対しフォルテがそう言う。

そうしてフォルテも戦場を見据えると、ヤムザが聖騎士(ホーリーナイト)達を相手に善戦している姿を見つけた。

 

「ふっ!はぁっ!」

 

「ぐうぅ!」

 

ヤムザの剣技に押される聖騎士(ホーリーナイト)達。

そのままヤムザは聖騎士(ホーリーナイト)を斬り飛ばしながら、周囲の騎士達を次々と薙ぎ払う。

 

「くっ!己れ!」

 

仲間が次々とやられてゆくのを見ていた聖騎士(ホーリーナイト)がヤムザに向かって霊子聖砲(ホーリーカノン)を放つが、放たれた霊子聖砲(ホーリーカノン)はヤムザをすり抜けた。

 

「なっ⁉︎」

 

放った攻撃がすり抜けた事に聖騎士(ホーリーナイト)は驚き声を上げた次の瞬間、ヤムザが背後に回り込み斬り払った。

 

「くそ!」

 

「はあっ!」

 

ヤムザを狙って別の聖騎士(ホーリーナイト)2人が一斉に霊子聖砲(ホーリーカノン)を放つが、ヤムザが三人となって霊子聖砲(ホーリーカノン)はすり抜ける。

 

「落ち着け!残像を利用して攻撃を躱しているだけだ!」

 

「本体は1人!このまま攻撃し続ければ必ず当たる筈だ!」

 

ヤムザの戦い方を観察していた聖騎士(ホーリーナイト)の1人が皆を勇気付ける為にそう声を上げるが、そんな聖騎士(ホーリーナイト)の言葉を覆す出来事が起きる。

 

ヤムザが再び三人に増えて一斉に聖騎士(ホーリーナイト)達に攻撃を仕掛けた瞬間、三人のヤムザを相手にした聖騎士(ホーリーナイト)がそのまま斬り倒されたのだ。

 

「なっ⁉︎」

 

「ただの残像じゃないのか⁉︎」

 

「一体どういう事だ⁉︎」

 

残像が突然実体化した事に驚く聖騎士(ホーリーナイト)達。

そんな聖騎士(ホーリーナイト)達と違ってヤムザの戦いぶりを見ていたフォルテは笑みを浮かべていた。

 

「ヤムザは完全に幻影鏡像(ミラージュ)を使い熟しているな。しかも強化分身を上手く組み合わせて運用している。」

 

フォルテの言う通り、ヤムザはウルティマからの地獄の特訓によって幻影鏡像(ミラージュ)を使い熟せるようになり、フォルテから与えられた強化分身のスキルを組み合わせる事で聖騎士(ホーリーナイト)達を見事に翻弄していた。

 

「…あのヤムザがここまでの実力を身に付けているとは驚きました。」

 

そんなヤムザの戦いぶりを見ていたアルビスは、自分が戦ったクレイマン配下だった頃のヤムザとは比べ物にならないほどの強さを身に付けた姿に驚いていた。

 

「元々ヤムザにはそれほどの潜在能力があった。だがクレイマンの配下だった頃は自分の力を過信し氷結魔剣(アイスブレード)の力に頼り過ぎていた。俺の配下となってからは日々真剣に鍛錬に励み白老達の元で基礎的な剣術をしっかりと身に付けたからな。」

 

ウルティマの地獄の特訓後にゴブタ達と共に白老達の地獄の鍛錬に明け暮れるヤムザの姿を見てきたフォルテ。

ヤムザの成長を改めて確認して笑みを浮かべていた。

 

「さて…ゲルミュッドの方はどうかな。」

 

フォルテはそのまま鏡像生物(オブジェクト)から配下としたゲルミュッドの方へと顔を向けた。

 

「うおおおお!」

 

「ぐわっ!」

 

「があっ!」

 

「うわっ!」

 

金の装飾が施された漆黒の帽子と紳士服を着、眷属者(エージェント)とを模した漆黒のペストマスクを被った新生ゲルミュッド。

フォルテの名付けによって高身長になったゲルミュッドは、上空から無数の魔力弾を連射し聖騎士(ホーリーナイト)達を攻撃し、聖騎士(ホーリーナイト)達は上空から無数に放たれる魔力弾の雨に苦戦していた。

 

「……フォルテが同じ名前で名付けしたゲルミュッドの奴、無茶苦茶強くなったな。」

 

「そうですね。技のキレと威力ともに俺達が戦った本物のゲルミュッドとは比べ物にならないですよ。」

 

「あのゲルミュッドの鏡像生物(オブジェクト)とは思えません。」

 

リムル、紅丸、蒼影の三人は本物のゲルミュッドの実力を知っているで、フォルテの配下となって進化した鏡像のゲルミュッドの実力に驚きながらも感心していた。

 

「ゲルミュッドも中々にやるな。やはり上位魔人なだけはある。俺達が戦ったゲルミュッドも弱体化していなければ強かっただろうに。」

 

「えっ?俺達が戦ったゲルミュッドは弱体化していたのか?」

 

フォルテの言葉にリムルと紅丸、蒼影が反応し振り向く。

 

「ああ。…というかリムル、まさか気付いていなかったのか?ゲルミュッド自身が言っていただろう名付けをしまくったって。」

 

「えっ?……ああ!」

 

リムルもあの時のゲルミュッドの言葉を思い出した。

自分の手足となる魔王を誕生させる為に色んな種族に名付けをしまくった事を。

 

「当時の俺とリムルはヴェルドラから名付けをしてもらった事で膨大な魔素を得た上に、ヴェルドラとグレイザーから名付けに必要な魔素を借りていたから今まで無事だったが、名付けは本来危険を伴う行為。俺達の様に濫用は本来あり得ないからな。ゲルミュッドは無茶な名付けの濫用で大幅に弱体化していたんだ。」

 

「そっか…そうだったな。」

 

「リムル様とフォルテ様が普通に名付けをしている姿を見続けてすっかり忘れていましたよ。」

 

「ゲルミュッドの弱体化は当然だったという事ですね。」

 

フォルテに言われて名付けの危険性を思い出し納得したリムル達だった。

 

そんな聖騎士(ホーリーナイト)達との戦いを見据えていた紫苑と紫蘭がゴブアとゴブゾウに出撃する様に命じる。

 

「ゴブア。ゴブゾウ。」

 

「貴様らも速やかに参戦しろ。」

 

「えっ、あの…先日の作戦会議では私共は待機という事だったのでは…?」

 

「バカか貴様ら!目の前に勝利が転がっているのに何故それが分からんのだ!」

 

「フォルテ様も格上に挑み勝利してこそ壁を越えられると常日頃から言っていた。今がその時なのだ!」

 

紫苑と紫蘭の言葉を聞いたゴブアは感激し目を輝かせ、ゴブゾウは逆らったら駄目だと本能で察した。

 

「そうですね。仰る通りです。その機会この紅炎衆(クレナイ)に是非!」

 

「い…行くだす〜!」

 

そして二人は戦場に向かって走り出した。

 

 

 

「いいのか?紅丸。」

 

「よくはないですが、臨機応変というのは間違っちゃいません。」

 

「紅丸の言う通り、紫苑と紫蘭は勝てると判断したからああ命じたんだ。」

 

「確かに、ほぼ無傷で相手を無力化出来るんなら遠慮する必要はないか。」

 

紅丸とフォルテの言葉を聞いたリムルも紫苑と紫蘭の行動に納得した。

 

そうして戦いに参戦したゴブゾウを見ると、鎖鎌を見事に使い熟しながら聖騎士(ホーリーナイト)と互角の勝負を繰り広げている。

 

「うお〜!」

 

攻めるゴブゾウに苦戦していた聖騎士(ホーリーナイト)だが、僅かな隙を突いて反撃する。

 

「やぁっ!」

 

聖騎士(ホーリーナイト)の剣がゴブゾウの額を斬り飛ばした瞬間、背後から大鬼族(オーガ)の女性が迫る。

それに気付いた聖騎士(ホーリーナイト)が反撃しようと剣を振り上げるも、ゴブゾウが鎖鎌の鎖分銅で刃を絡め取り動きを封じた。

 

「あぁっ!」

 

そして大鬼族(オーガ)の女性が両手に装備した鉤爪で聖騎士(ホーリーナイト)の両手足を斬り裂いた。

 

「ぐあ〜つ!」

 

手足を斬り裂かれ動けなくなった聖騎士(ホーリーナイト)を背後からゴブリナの1人が睡眠薬を塗った短剣を突き刺す。

 

「うあっ…。」

 

刺された聖騎士(ホーリーナイト)は睡眠薬によって深い眠りについた。

 

こうして見事な連携で次々と聖騎士(ホーリーナイト)を無力化するゴブゾウ達。

ゴブゾウの額の傷もすぐに完治した。

 

「しかし凄まじい戦闘能力ですわ。この国にはまだ彼程(あれほど)の者達がいたのですね。」

 

「ああ、あれは厄介だぜ。俺でも手こずりそうだ。」

 

アルビスとスフィアは紫克衆(ヨミガエリ)の再生能力と戦闘技術を目の当たりにして高く評価しそう言った。

 

「リムル様。フォルテ様。この状況が続けばあるいは勝利も…。」

 

「そうだな。」

 

「まぁ予定より早く無力化出来るからいいか…。」

 

蒼影の言葉にフォルテは頷きリムルは苦笑いを浮かべながら呟いた。

…丁度そのタイミングだった。

レナードの気配を感知したヒナタ達が森を突っ切り戦場に着いたのは。

 

ヒヒーン!

 

ヒナタの騎乗する馬が嘶いた後、ヒナタは崖の下で繰り広げられる戦場の様子を見て驚愕した。

少し遅れながらもアルノー達も到着し戦場の様子を見て驚いた。

 

「これは…。」

 

「我ら聖騎士団(クルセイダーズ)が押されているというのか⁉︎」

 

「その様ね。それに、……フォルテは約束を守ってくれているわ。」

 

そう言うヒナタの目線の先には、手足を縛られ無力化されている聖騎士(ホーリーナイト)達の姿があった。

 

「まさか押されているだけでなく捕らえられているとは…。」

 

「戦っている相手はどう見ても大鬼族(オーガ)人鬼族(ホブゴブリン)に見えますが…。」

 

「…どう見ても普通じゃないですよね。」

 

アルノー、バッカス、フリッツの三人は、聖騎士団(クルセイダーズ)と戦う紫克衆(ヨミガエリ)紅炎衆(クレナイ)の戦闘能力の高さに普通ではあり得ないと驚いている。

 

「あそこで戦っているのは、…魔王クレイマンの配下だった五本指の1人中指のヤムザではありませんか⁉︎」

 

「ええ。どうやらリムルかフォルテの配下となったみたいね。」

 

ヤムザの存在に気付いたリティスが声を上げ、ヒナタは戦況を確認しながら周囲を見渡していると、リムルとフォルテを見つけた。

 

(リムル…フォルテ。)

 

ヒナタがリムルとフォルテを見つけた直後、アルノー達もリムルとフォルテ達の姿を確認した。

 

「あれは…1人いませんがまさか三獣士!それに…魔王リムルと魔王フォルテの側にいるのは鬼人ですか?」

 

「違うわね。あれは妖鬼(オニ)よ。」

 

ヒナタの言葉にアルノー達は反応しリティスが口を開いた。

 

「聞いた事があります。神通力を操る土地神級の魔物だと。」

 

「実際には大鬼族(オーガ)の進化系統の一つらしいけど、そこに至る者は極小数。特A級の危険度だと認識しなさい。」

 

ヒナタからの説明を聞いて冷や汗を流すアルノー達。

 

「そんな魔物まで従っているとは…魔王リムルと魔王フォルテ。……本当に敵対しないで良かったと思いますね。」

 

「…ええ。(リムルとフォルテの力は強大なのも理由の一つでしょうけど、フォルテと話し合ってリムルとフォルテが元人間として…魔物達をどれだけ大切にしているのか伝わってきた。……そんなリムルとフォルテだからこそ、仲間達は二人の配下となったのでしょうね。)」

 

フリッツの言葉を聞きながら、ヒナタはリムルとフォルテの強さだけでなく人柄に魔物達は惹かれているのであろうと思った。

 

「貴方達。…行くわよ。」

 

「「「「はい!」」」」

 

ヒナタの掛け声に答え返事をするアルノー達。

いよいよ七曜を引き摺り出す作戦の開始である。

 

一方戦場では紫苑と紫蘭が紫克衆(ヨミガエリ)に的確な指示を出していた。

 

「第二部隊は敵を森へ追い込め!」

 

「地形を使用しろ!」

 

二人の指示に従いながら聖騎士(ホーリーナイト)達を無力化してゆく紫克衆(ヨミガエリ)

そして、紫苑と紫蘭はリムルとフォルテに気付いて振り返る。

 

「あっリムル様!フォルテ様!」

 

「予定とは少し違いますが聖騎士(ホーリーナイト)達を確実に捕らえられております。」

 

「お、おう…。」

 

「ああ。二人共見事だ。」

 

「お褒めいただき光栄です!」

 

フォルテに褒められ嬉しそうに声を上げる紫苑。

 

「それでは私達もそろそろ行って参ります!」

 

「行くぞ紫苑!」

 

「えっ⁉︎」

 

そう言って紫苑と紫蘭は跳躍して戦場へと向かった。

 

「あぁ…。」

 

「…紫苑と紫蘭らしいな。」

 

「はぁ…やれやれ…。」

 

そんな二人に対してフォルテとリムルはそう呟くのだった。

そして…リムルとフォルテはある気配に気付いて口を開く。

 

「思ったより早かったな。」

 

「……ヒナタ。」

 

二人が振り向いた先には、アルノー達を引き連れたヒナタの姿があった。

 

一方戦場へと跳躍した紫苑と紫蘭の二人がレナード達の前へと落下。

 

「「「「「うわ〜つ!」」」」」

 

落下によって生じた衝撃波によって周囲の聖騎士(ホーリーナイト)達は吹き飛ばされた。

やがて衝撃波が止みレナードと偽ギャルドが顔を上げると、二人の目の前に紫苑と紫蘭が立っていた。

 

「こいつは大物だぜ。」

 

紫苑と紫蘭の姿を見た偽ギャルドは炎獣牙槍(レッドスピア)を持って構える。

 

(魔王リムル…いや、一配下がこれ程の妖気(オーラ)を放つのか…!)

 

レナードは紫苑と紫蘭から発せられる膨大な妖気(オーラ)を感知し警戒を強める。

 

「我が名は紫苑。リムル様の第一秘書だ。」

 

「私は紫蘭。フォルテ様の配下だ。」

 

紫苑と紫蘭はレナード達の前で堂々と名乗る。

 

「さてお前達。リムル様とフォルテ様はこうおっしゃられた。」

 

“服従”“死”か選択せよと。」

 

「この意味が理解出来たのならさっさと武装を解き私達の軍門に下るがいい。」

 

紫蘭と紫蘭の言葉を聞いた聖騎士(ホーリーナイト)達が騒めく中、レナードは微動だにせず口を開く。

 

「理解出来たとも。その上で答えはこうだ。」

 

レナードは声を上げて聖騎士(ホーリーナイト)達に指示を出す。

 

「散開!目標に対して聖浄化結界(ホーリーフィールド)を発動せよ!」

 

レナードの指示に従い聖騎士(ホーリーナイト)達は紫苑と紫蘭中心にして四方に分かれてから、ピラミッド状の結界を展開した。

 

その様子を遠くから見ていたリムルとフォルテ。

 

聖浄化結界(ホーリーフィールド)…その簡易版の様だな。」

 

「ああ。…お家芸だなほんと。」

 

フォルテとリムルはそう言いながらヒナタを見据える。

 

「なぁヒナタ。好き勝手に暴れてくれてるが、言うまでもなく此処は俺達の領土だ。」

 

「軍事行動を取った時点でお前達に害意ありと判断した。先制攻撃を許すほど俺達は甘くない。」

 

「それが当然でしょうね。けれど何故レナード…。うちの副官が命令違反をしたのか私にも分からないのよ。」

 

「よく言うよ。レイヒムを殺してその罪を俺達に擦り付けようとしたくせに。」

 

「レイヒム?」

 

「ああ。そっちに呼び出されたファルムスの大司教だ。」

 

「死んだ…殺された…?そう…そういうことね。」

 

………この会話は七曜を欺く為の演技なのだが、戦場である事とリムル、フォルテ、ヒナタが真剣となっているので傍から見たら演技とは思えない緊迫した空気が漂っている。

 

「俺達の伝言は受け取ってくれたんだろうな?」

 

「ええ。」

 

「その答えがあれか…。」

 

そう言って横目で戦場を見るフォルテ。

 

「そうね…少し違うけど。それを言っても信じてはくれないでしょう?」

 

「信じてもいい。だがその前に、あの集団を止めて国に戻すのが条件だ。」

 

「それは…。」

 

「何を言う!この状況でこちらの戦力を戻せばヒナタ様どうなる!ヒナタ様を呼び出した貴様らが何もしないと誰が保証出来るのだ!」

 

ヒナタが言葉を紡ぐ前にアルノーが話に割って入り声を上げる。

ヒナタを思う気持ちが全面に出ている良い演技だ。

 

すると、アルノーの前に紅丸が立ち口を開く。

 

「今この場で話していいのはリムル様とフォルテ様とヒナタ・サカグチのみ。呼ばれていない者は大人しくしていろ。」

 

「へぇ…。そうかよ!」

 

そう言ってアルノーは一瞬で紅丸の前まで移動し斬り掛かるが、紅丸は瞬時に刀を鞘から引き出しその刃でアルノーの剣を防いだ。

 

アルノーは攻撃が防がれたと分かった瞬間、すぐ紅丸から距離を取った。

 

「ヒナタ様の交渉を邪魔したくなかったからな。少し脅すつもりだったが反応されるとは。」

 

「邪魔をしたくないというのは同意だ。話なら向こうで聞こう。」

 

「いいだろう。」

 

紅丸はアルノーを連れて森へと向かう。

 

「アルノー!」

 

それを見たフリッツは呼び止めようと声を上げるのだが。

 

「お待ちなさいな。貴方達も退屈でしょう。」

 

「仲間の心配してる場合じゃねえんじゃねぇの?」

 

アルビスとスフィアがフリッツ達の前に出る。

 

「三獣士…何でここに…。」

 

「しばらく私達が相手をしてさしあげますわ。」

 

「おう!十大聖人の実力見せてくれよ!」

 

「応じるしかあるまい…。」

 

「うっ…。」

 

バッカスからそう言われフリッツは共にアルビスとスフィアと戦う事となり、アルノーの様に森へと向かった。

 

「ふん…。」

 

その様子を見ていた蒼影も動き、一瞬で残っていたリティスの前へと移動。

 

「あっ!」

 

「行くか?」

 

「ええ。」

 

そうして蒼影もリティスと共に森へと向かい、残ったのはリムルとフォルテとヒナタの三人だけとなった。

 

「俺は二人の戦いを見届けさせてもらおう。」

 

フォルテはそう言ってリムルの側を離れ二人の戦いを見守る。

 

「じゃあ…始めるか。」

 

リムルは鞘から刀を抜いて構える。

 

「そうね。」

 

リムルとヒナタ。

……二人の一騎打ちが今始まる。

 

 




遂に始まるリムルとヒナタの再戦。
七曜を欺く為全力で戦う事には変わらない。

今回の話で改めて、紫苑の率いる紫克衆(ヨミガエリ)の強さが良く分かりますよね。
何度倒そうが瞬く間に傷が癒えて反撃して来る敵。
……聖騎士団(クルセイダーズ)からしたら本当に訳が分からず恐ろしい敵ですよね。
無力化が目的故に強力な睡眠薬を塗った短剣でしたが、これが即効性の猛毒だったら……ちょっと考えただけでも恐ろしい。
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