縁壱達によって鍛えられ剣術が上がったリムルの実力はいかに。
リムルとヒナタが戦いを始める少し前。
「あぁ…。美しい。」
そう言いながらルミナスは全裸となって聖櫃に寄り添う。
すると、聖櫃に触れたルミナスの身体が灼かれる。
この聖櫃は純粋な霊子だけで構成されている。
低級の魔物であれば近づいただけで消滅し、人間であっても触れれば肌が焼かれる。
だが、櫃に触れる度に肌が灼かれても、ルミナスにはそれすら至福なのだ。
何故なら、聖櫃の中で眠る少女は、ルミナスにとって大切な存在だからだ。
そんなルミナスが至福の時を過ごしている最中だった。
「ルミナス様。」
ルイがルミナスにある事を報告する為に現れたのは。
「…チィ。…なんじゃルイ。」
ルミナスは至福の刻を邪魔され舌打ちをするも、ルイに問い掛ける。
「申し訳ございません。お耳に入れたき儀がございます。」
「何があった?」
「魔王リムルと魔王フォルテとの禍根を断つべくヒナタが独断で動きました。ですが、そこに七曜の老師達の思惑が介入している疑いがございます。」
そうしてルイは先程までのヒナタとの魔法通信についてなど今起きている事を詳細に説明した。
「…ヒナタめ。自重せよと言ったものを。」
「下らぬ雑じでルミナス様を煩わせおって。場を弁えず遠慮会釈もない男よ。」
そう言いながら控えていた執事と思き老人がルミナスにバスローブを丁寧に被せる。
「すまないねギュンター。だが放置しておけばヒナタをも失いかねんのでね。」
「人間の軽率な行動にかかずらうなどそれこそ下らぬ。警戒すべき魔王リムルと魔王フォルテと事を構えようとはな。」
「そうならぬよう貴公の領分にまで新言に来たのだよ。ヒナタを殺されてはルミナス様は…。」
「ルイよ黙るがよい。ギュンターその方もだ。」
「はっ。」
「申し訳ございません。」
(全く…此奴らの縄張り争いにはつくづく悩まされる。ロイを失った今、役割分担も改める必要がありそうじゃ。)
ルイとギュンター…二人のいつもの小競り合いに悩まされるルミナスだった。
そして話を聞き終えたルミナスは、バスローブ姿からいつもの黒いドレスへと一瞬で着替えた。
「…さて。ゆっくりもしていられぬな。二人共ついて来るがよい。」
「「御意。」」
二人を率いて部屋を出るルミナス。
その際、名残惜しそうな表情で聖櫃に安置された少女を見た。
(…待っていてね。)
そうしてルミナスが動き出した頃。
ヒナタとリムルは激しい剣の打た合いを繰り広げていた。
ガッキィン!ガキキキキキ!キィン!
互いに一歩も引かず両者の剣がぶつかり合う度に火花を散らす。
そんなリムルとヒナタの戦いをじっと見据えるフォルテ。
「…やはりヒナタは強いな。
覚醒したリムルは前回ヒナタと戦った頃とは比較にならない力を得ている。
そんなリムルと剣を交え合えるヒナタの強さにフォルテは感心した。
そして、激しい剣の打ち合いを続けていたリムルとヒナタが同時に一旦距離をとる。
(この短期間でとんでもない成長性ね。以前の君は
ヒナタのユニークスキル
その力はフォルテのゲットアビリティプログラムに類似している。
格上相手であれば解析結果は〝失敗〟か〝成功〟となり、格下相手ならば〝対象外〟となる。
つまり、魔王へと進化する前のリムルはヒナタに及ばない存在だった。
(真なる魔王へと至った今、君は信じられない程に強くなった。人間からすれば理不尽なほどに。)
そう思いながらリムルを見据えるヒナタ。
(…本当に理不尽。だってこんなのはルミナス様以来。まだニ度目だもの。)
簒奪者-鑑定開始-………鑑定結果:妨害
そう。ヒナタの
妨害したのは当然
(つまり君はルミナス様と同じ高みに至ったという事なのね…。いろんな意味で戦いたくない相手だわ。それにフォルテ。彼は君より厄介な相手ね。)
ヒナタは横目で戦いを見守るフォルテを見る。
(以前からフォルテの力は分からなかった。あの時何度も
ヒナタはイングラシアでフォルテの分身体と戦った際、リムル同様に
(そして今、彼の力は私では測れないほどの……強大な存在となった。)
簒奪者-鑑定開始-…………鑑定不能
フォルテはヒナタの
(規格外…。彼はリムルやルミナス様をも凌駕する存在となっている。本当に…敵対する事にならなくて良かったと思えるわ。)
そう思いながらヒナタは七曜の老師達から授かった
(なんだ?急に降参か?)
当然のヒナタの行動に訝しむリムル。
ヒナタから凄まじい七色の光が放出され鎧が生成される。
「何だありゃ⁉︎」
その光景を目の当たりにしたリムルが声を上げる。
(…あれは精霊力を具現化させた様だな。対魔に特化した聖属性武具を生成したか。)
フォルテは
やがてヒナタの全身に鎧が装着されるのが完了した。
青いサファイアの様な宝石が胸部の中心部に埋め込まれた白銀の鎧で、その背から妖精の様な光の羽が生えている。
そして、ヒナタは腕を真横に上げると掌から光と共に剣が出現した。
「後はもう、純粋になる力と力の勝負。全身全霊をかけて挑むわ。」
リムルの今の力を改めて知ったヒナタは自分の全力をもってリムルに挑む事を決め構える。
一方のリムルは、ヒナタが新たに手にした剣を警戒した。
(あの剣…今まで見たこの世界の武器の中でも断トツの性能だろうな。)
《
(だよな…。改めてヒナタは隙がない。)
リムルと
ヒナタが持つ崇高な武器だ。
(
リムルは今手にしていた刀を鞘に収めると、代わりに懐から横笛を取り出した。
(…横笛?)
突然刀を仕舞い横笛を取り出したリムルの行動が理解出来ず訝しむヒナタ。
そんなヒナタの事など気にせずリムルは横笛を吹き鳴らす。
フュ〜フュルル〜ル〜ル〜♪
リムルが横笛を…星斬りの笛を吹き鳴らした瞬間、星斬りの笛が金色の光を放ちながら太刀…斬星剣となった。
(っ⁉︎横笛が剣になった!)
横笛が太刀へと変わった事にヒナタは目を見開いた。
リムルは斬星剣を手に取ると、刀身に黒炎と黒雷を纏わせる黒炎雷を使用し構える。
「さあ、これで準備は出来た。」
(やはりリムルは斬星剣を使ったな。これで武器は互角となった。)
斬星剣を
互いに本気で戦う準備が完了すると、ヒナタがリムルに斬り掛かり此処ら更に激しい戦いが始まる。
そうしてヒナタとリムルが激闘を繰り広げている一方、紫苑と紫蘭と対峙しているレナードは二人から発せられる強大な
「〝服従〟か〝死〟…だと?」
「
(
紫苑と紫蘭の強大な
「似た様なものだがなハズレだ。」
「貴様等の仲間と戦っている紅丸達は
そう言って紫苑は剛力丸・改を地面に突き刺し、それに続く様に紫蘭が鞘から鉄砕牙を引き抜いた。
「私達は
「だからお前達が考えているよりも優しくないぞ?」
一度死んだ紫苑が進化した種族で半精神生命体となり、敵に対する残虐性が増した。
(エドマリス達があんな姿にしたのがその証明。)
紫蘭はその紫苑の折れた角を格としてフォルテが生み出した故に紫苑と同じ進化を遂げた様だ。
故に、二人はレナード達に向けて何処か邪悪さを感じる笑みを浮かべていた。
「
「お前達の神などに興味はない。」
「それより質問に答えるがいい。」
紫苑と紫蘭の言葉を聞いたレナードは二人を睨みつける。
「…汚らわしい邪悪なる魔物め。神を冒涜する愚かな考えその身ごとこの世から抹消してやる!」
神ルミナスを冒涜されたと判断したレナードは怒りの声を上げ他の
「
全方位から放たれた高密度の
「⁉︎」
「なっ…!」
そしてそのまま撃ち返された
「ぐあっ!」
(馬鹿な…っ。
実際ヤムザも
だが、撃ち返した紫苑と紫蘭は何事もなかったかの様に立っている。
「〝服従〟か〝死〟かさっきそう問うた筈だが…。」
「これが答えか?」
紫苑と紫蘭はさっきほどより更に強い殺気を込めた冷たい眼差しでレナード達を見る。
その目を見てレナード達は背筋に寒気を感じた。
そして紫蘭のスーツから無数の目が開き、その目を見た結界の外で戦っていた
「なっ⁉︎」
「これは⁉︎」
突然の事態に偽ギャルドとレナードは声を上げる。
「安心しろ。少し眠って貰っただけだ。」
そう言った紫蘭のスーツの上から開く無数の眼は普通の目ではなく、瞳に三つの勾玉模様があり赤く発光している。
それはNARUTOに登場する写輪眼だった。
何故紫蘭に無数の写輪眼があるのかそれは、
それにより紫蘭はユニークスキルとして写輪眼を獲得し、フォルテが知る全ての万華鏡写輪眼を使用可能な上に、その全てが視力が低下しない永遠の万華鏡写輪眼となっている。
紫蘭は自身の身体に無数の写輪眼を展開しその瞳術で
そんな事を知る由もないレナード達だったが、紫蘭の身体から現れた無数の写輪眼が原因である事は状況から察し警戒を強める。
「おい…いいかお前ら、私達が優しく言っているうちにさっさと軍門に降れ。」
「馬鹿め!一度攻撃を防いだぐらいで優位に立ったつもりか?」
(ギャルド…。)
紫苑の言葉を聞いた偽ギャルドは声を荒げる。
その様子を見たレナードはギャルドに僅かな違和感を感じた。
「
偽ギャルドの余裕の笑みを見た紫苑と紫蘭はどこか呆れた表情を浮かべていた。
二人は本物ギャルドを知っている。
故に、目の前の偽ギャルドの態度がギャルドとは似つかないと呆れていた。
「ふん…。」
紫苑は呆れながら剛力丸を地面に突き刺ししゃがむと小石を拾って紫蘭に渡した。
「…いいか。私達はリムル様とフォルテ様からこう命じられている。」
「なるべくならお前達を殺さぬ様にと」
(魔王リムルと魔王フォルテが…?)
紫苑と紫蘭から自分達を殺さぬ様にとリムルとフォルテが命じていると聞いてレナードは内心驚いていた。
「今なら殴らずにおいてやるしなんなら私の手料理を振る舞ってやる。どうだ?」
(手料理…?)
何故か手料理をご馳走すると言われ少し困惑するレナード。
「…我々
「まあ聞け。私達はお前達を殺さずに実力の差を見せつけ降伏させたい。」
「お前達は私達を討伐したい。そこで一つ提案なのだが…。」
「惑わされるな!」
紫苑と紫蘭が話を続けている最中に偽ギャルドが声を上げ遮るのだが…。
「これ以上奴らの妄言に…!」
ビュッ!ブシュッ!ボゴッ!
偽ギャルドが声を上げている最中に紫苑と紫蘭が同時に小石を指で弾き飛ばして偽ギャルドの両耳を削ぎ落とした。
「なっ…。」
ビキビキ……ボゴォン!
レナードは背後に振り向くと、弾丸の如く弾き飛ばされた小石が偽ギャルドの背後の岩に激突し砕け散る様を目の当たりにした。
「「人の話を聞かぬ耳など必要あるまい?」」
「貴様ぁぁ…!」
(狙って耳を削いだというのか⁉︎)
両耳を削がれた偽ギャルドは忌々しいとばかりに紫苑と紫蘭を睨み、レナードは小石で偽ギャルドの両耳を削いだ事に驚いていた。
「…その提案とやら聞くだけ聞こう。」
レナードの言葉に紫苑と紫蘭は笑みを浮かべる。
「フッいいか?今からお前達の最大の攻撃を私達に向けて放ってみろ。」
「耐え切ったら私達の勝ちだ。大人しく私達の軍門に降るがいい。」
「どうだ?」
(……は?)
紫苑と紫蘭の提案にレナードは耳を疑った。
自分達に向かって最大の攻撃を放てというのだから仕方ない。
(そうだ…良く考えればさっきの投擲もおかしい。あの精度と威力なら頭を狙う事だって出来たはず。……まさか本気で私達を殺したくないのか?)
紫苑と紫蘭の提案を聞いたレナードは二人が本気で自分達を殺すつもりがないのだと気付き始めた。
「…いいぜ。その提案受けてやる。」
「ま…待てギャルド。少し話を…。」
「五月蝿いわ!さっさとやるぞ‼︎」
レナードは偽ギャルドを声を掛けるが偽ギャルドは怒号を上げレナードの言葉を遮りそうまま
「お前ら俺に霊力を同調させろ!」
「「「「はっ!」」」」
「レナード!制御は任せるぜ。」
(うっ…。確かに戦いの最中に迷っている場合ではない。あの
偽ギャルドに誘導されたレナードはやはり魔物である紫苑と紫蘭を倒す事を決め
同調した霊力を取り込んだ偽ギャルドは、シズさんや本物のギャルドも扱う極大魔法を放つ。
「喰らえ!
偽ギャルドが放った極大魔法の業火を見て紫苑と紫蘭は笑み浮かべる
「フフフっ!」
「不足なし!」
紫苑と紫蘭は多重結界を自身の身体に展開し、紫苑は
そして魔力感知で偽ギャルドの放った
「戦意を挫くにはこうするのが手っ取り早かろう!」
「フンッ!」
そして同時に
「信じられん…。」
皆の霊力を集約させた
「さぁ約束だ。」
「私達の軍門に降るがいい。」
紫苑と紫蘭はもう一度レナードに言う。
(完敗だ…実力が違いすぎる。これ以上の戦闘は……。)
「…ふっ巫山戯るなよ化け物が!
レナードは実力差を認め投降しようと考えるが、偽ギャルドは認めず叫んだ。
「これでもまだ認めないのか?」
「実力差が分からない愚か者だな。はぁ…このまま戦うなら本物に殺すしかなくなるぞ?」
「くっ…!」
紫苑と紫蘭に呆れられた態度でそう言われ苛立つ偽ギャルド。
「止せギャルド!これ以上奴等を刺激するな!全滅するぞ⁉︎」
「馬鹿が!
レナードは偽ギャルドを宥めようと肩に手を置き説得するも、偽ギャルドはその腕を振り払いながらレナードに向かって声を更に荒げる。
(おかしい…。何だこの違和感は?ギャルドは短気だが潔い男だ。こんな…。)
全く話を聞かず状況がまるで分からない愚か者の様な偽ギャルドの態度にレナードは自分の知る本当のギャルドとの違いに漸く気付き始めた。
「ふむ…。」
レナードと偽ギャルドが揉めている間、紫苑と紫蘭は展開されている
その際に、紫蘭の持つ鉄砕牙の刀身が真紅に染まる。
「「ふんっ!」」
そして二人は勢いよく剛力丸と鉄砕牙を振るって
「
「ば…馬鹿な…。」
「夢か?これは夢なのか…?」
「聖なる結界を魔物が…。魔物が壊したというのか⁉︎」
魔物である紫苑と紫蘭によって
そして崩壊してゆく
「やはり純粋に法則を弄った〝特殊結界〟だったな。」
「法則を弄るのは私達の得意とするところ。」
紫蘭と紫苑はそう言ってレナード達に笑顔を向ける。
「私達はな、料理が得意なんだ!」
?…⁇
結界を壊して自信満々に料理が得意だと言う紫苑を理解出来ないレナードだった。
「(料理…はよく分からないが恐らく自らの望む結果を付与する
「そんなバカな…。自分の望む結果を出せるだと⁉︎」
紫苑のユニークスキル
紫苑が料理が上手くなりたいと願って得たスキルでどう料理しても望んだ味をイメージすればその味となるのだが、その能力は自分の望む結果を対象に上書きする確定結果。
その規格外の権能によってエドマリス達を肉塊にした際、その肉塊の姿がエドマリス達の本当の姿として確定し人間の姿に戻れなくなった。
そして今、
ユニークスキルの枠に収まらないとんでもないスキルで、フォルテは紫苑からこのスキルを複製して吸収し、その際に紫蘭にも
「ありえん…こんな化け物が何で…。」
紫苑と紫蘭の力をようやく理解した偽ギャルドはその場に力無く座り込んだ。
そしてレナードも改めて紫苑と紫蘭の実力を理解し剣を下ろしてその場で座り降伏した。
「降伏する。部下達には寛大な処遇を期待したい。」
「心配はいらないぞ。リムル様とフォルテ様はお優しいからな。」
「本当ならお前達の主ともリムル様とフォルテ様は話し合いを望んでおられたのだがな。」
紫苑と紫蘭はそう言って頭を横に向けるとレナードもそれに釣られて同じ方向に顔を向ける。
そして、レナードの目に映ったのは聖霊武装を纏いリムルと全力で戦うヒナタの姿だった。
(ヒナタ様と…魔王リムル⁉︎)
二人が戦っている事に驚きながらレナードは七曜の老師達の言葉を思い出す。
〝魔王リムルと魔王フォルテを討つのだ。〟
〝ヒナタは魔王リムルと魔王フォルテに取り入ろうとしている。〟
〝もしもそれが正しければヒナタは全力で阻止しに来るだろう。〟
(いや…ヒナタ様が本当に魔王リムルと魔王フォルテに取り入ろうとしていたならば二人が戦う理由はない。そして七曜の老師の懸念が杞憂ならばヒナタ様も魔王リムルも互いに争いを望んでいない。)
レナードは七曜の老師の言葉が間違いならば、ヒナタとリムルとフォルテは互いに争う気がなく話を望んでいた事を思い出し、そんなヒナタとリムルが戦っている理解が分からずにいた。
「では何故…何故二人は戦っているんだ?」
レナードの問い掛けに対し紫苑と紫蘭はフォルテから言われた通りのセリフで返答する。
「何を訳の分からない事を言っている?お前達が軍を率いて攻めて来たから戦わざる得なくなったんだろ?」
「フォルテ様とリムル様は話し合いを求めていたが、攻めて来た者と戦うのは当たり前の事。お前達も分かった上で仕掛けて来たんだろが?」
(うっ…⁉︎私はヒナタ様の潔白を証明する為に
紫苑と紫蘭の言葉を聞いてレナードはようやく七曜の老師に騙され利用された事に気付いた。
「だ…駄目だ!ヒナタ様!私のせいで交渉が‼︎」
レナードの必死に叫ぶも時既に遅し。
ヒナタとリムルの戦いは止まらない。
ガキィン!ガキガキィン!ガキィン!キィン!キィン!キィン!
凄まじい剣技による応酬を繰り広げるヒナタとリムル。
高速で繰り広げられる剣と剣の激突により周囲に火花が飛び散る。
(
(本当に凄い成長ぶりね。身体能力だけじゃない…技量も以前とは比べ物にならないくらい上がっているわね。)
剣を交えながらリムルはヒナタは強さを改めて実感し、ヒナタは真なる魔王に進化し急激な強さを得たリムルの実力を再認識していた。
そんな二人の戦いを見守るフォルテ。
二人の戦いを見据えながら周囲の警戒も怠らない。
(…今のところまだ怪しい者の気配は無いな。それにしてもやはりヒナタは強いな。)
ヒナタの戦い振りを見ながらフォルテはそう思った。
(シズさんの元で全てを学びそこから10年弛まず鍛錬に励み磨いてきた技は本物だ。……本当に大したものだ。)
普通の高校生だったヒナタ。
この世界で生きゆく為に自分を鍛え聖人にまで至った。
聖人に至るには肉体のみならず精神的にも鍛え上げなければならない。
……それが10年で聖人へと至ったのだからヒナタがどれだけ凄いのかはいやでも分かる。
(転生した俺やリムルとは違いヒナタは転移した普通の人間だ。現代人であるヒナタがスキルの力もあったとはいえ聖人へと至った…七曜の老師共はそれ故にヒナタの存在が邪魔になったのだろうな。)
フォルテは七曜の老師共がヒナタを消そうしている理由の一つがその強さにあると改めて理解した。
そして、…自分達ではヒナタを倒せないからリムルとフォルテと戦わせているのだろうと改めて理解した。
(魔王になる前のリムルが敵わない訳だ。
そう思いながらフォルテはリムルの戦いを見守る。
そんなフォルテの予想通り、リムルはヒナタと互角に戦い続けている。
(流石はシズさんの弟子だな…人類最強の守護者と言われるだけはある。あの闘気を纏った斬撃を喰らったらヤバいな。)
《是。彼女の持つ剣も法則を書き換える特殊な波長があり、こちらの多重結界も破られしまいます。致命傷にはなりませんが大幅に魔素量が減少するでしょう。》
(…だよな。魔王に進化してからもフォルテと一緒に縁壱達の鍛錬をしっかりやっておいて良かった。)
その成果によってリムルは未来攻撃予測を習得し、全集中の呼吸も修得した。
因みに、リムルの適性は黒と青…つまり日と水で
「なら、こっからは俺が攻める番だな。」
そう呟いてリムルは呼吸を整える。
ヒュゥゥゥゥゥゥ!
(ッ⁉︎この呼吸音は…!)
リムルから響く呼吸音を聞いたヒナタは警戒を強めた。
何故ならヒナタはこの呼吸に似た呼吸音を聞いた事がある…フォルテの分身体と戦ったあの時に。
そうして呼吸を整えたリムルがヒナタに向かってゆきながら斬星剣を振るった瞬間、黒炎雷を纏った刀身から浮世絵の様な水流が吹き出す様にヒナタには見えた。
ヒナタは咄嗟にリムルの斬撃を受け止めるも、そこからリムルが更に連続攻撃仕掛ける。
水の如き流麗な剣捌きでヒナタに連撃を繰り出すリムル。
その水流の如き連撃を捌きながら受け流すヒナタ。
(やはり呼吸が変わった瞬間に動きも変わった。フォルテの時と違ってまるで水流れに身を任せている様な流麗な剣技だわ!)
ヒナタはリムルの猛攻を防ぎながらもリムルの呼吸と剣技がフォルテの時のものとは違うとすぐに気付いた。
防戦を続けるヒナタに対しリムルは攻めてを緩めずそのまま技を繰り出す。
「水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き!」
リムルは水を纏い連続の最速突きを放つ。
その際宙に無数の水紋が広がる様に現れリムルはその水紋の中心を狙う様に突き出す。
迫る連続突きに対しヒナタも連続突きを繰り出す。
そうして互い繰り出した突きが寸分の狂いもなく切っ先がぶつかり合う。
ヒナタもイングラシアで二人と戦ってからただ日々を過ごしていた訳ではない。
あの日から更に自分を追い込む様な過酷な鍛錬を積んでいたのだ。
(おいおいマジか…!)
リムルはまさか自分の繰り出した型に匹敵する速度で突きを繰り出しながら相殺されるとは思わず内心で驚いた。
そうしてリムルの型を防ぎ切ったヒナタは反撃に出る。
ヒナタから繰り出さられる斬撃に対しリムルは慌てる事なくその攻撃を見据える。
「水の呼吸 参ノ型 流流舞い!」
リムルはまるで川の流れに身を任せるかの様な足運びでヒナタの攻撃を躱した。
「くっ!」
ヒナタは躱されても諦めずに連撃を仕掛けるも、リムルは流れる様な足運びでヒナタの攻撃を躱し続けて翻弄する。
その際には未来攻撃予測も使用しヒナタの剣筋を予測しながら躱している。
そうしてヒナタの斬撃全てを躱し二人は互いに距離を取る。
(…動きに全く迷いがない。あの呼吸と剣技…リムルとフォルテの元には私も知らない相当の達人達がいるのね。)
ヒナタはリムルの繰り出した剣技を見て、リムルとフォルテの元にはシズさんや自分以上の達人がいるのだと理解した。
そんな二人の戦いを冷静に見守るフォルテ。
(現状だとリムルが少し優位だが、まだ身体能力差で押している感じだな。やはり縁壱達からの鍛錬がまだ足りなかったな。)
リムルが縁壱達から全集中の呼吸を学び鍛錬を始めたのは
それに対しヒナタはこの世界に来てからずっと鍛錬を積んできた。
その技量差を今の状況が表している。
(もしヒナタが縁壱達の鍛錬を受け全集中の呼吸を修得すれば更に強くなれる。……ん?)
そんな事を考えながら戦闘狂の笑みをフォルテが浮かべいると、森の方からレナード達を引き連れた紫苑と紫蘭が笑顔で戻ってきた。
(どうやら紅丸達の“話し合い”は終わった様だな。)
フォルテがそう思った通り、紫苑達に続く様に紅丸達もアルノー達を連れて戻って来たのだが……何故かリティスは蒼影を見ながら頬を赤らめ惚けていた。
(……あれは堕ちたな。)
それを見たフォルテは戦いの中でリティスが蒼影に惚れてしまった事を悟った。
その様子を見ていたリムルもなんとなく察し、ヒナタもアルノー達の状況から現状を理解した。
(大勢は決したみたいね…。ならば…。)
ヒナタはある提案をする為に声を掛ける。
「リムル。」
「ん?何だ?」
「次で終わりにしましょう。私と貴方の戦いを。ただし先に言っておくわ。この技はとても危険なのよ。それでも私の提案を受けてくれるかしら?」
ヒナタは自分の最強の一撃を放ちリムルがその攻撃を躱すか防ぐ事を提案した。
(確かに、そろそろこの戦いに決着をつけるには丁度良い頃合いだ。)
ヒナタの提案を聞いていたフォルテも納得し、リムルがフォルテに視線を向けるとフォルテは頷き応えそれを見たリムルは小さく頷き返しヒナタに視線を戻した。
「その攻撃に耐え抜いたら俺の勝ちって事だな。分かった。」
「フッ。君ならそう言ってくれると思っていたよ。」
リムルが提案を受けてくれた事に対し、ヒナタは穏やかな笑みを浮かべた。
そんなヒナタの笑みを見たリムルは少し戸惑った。
リムルはイングラシアで戦った時のヒナタしか知らないから、ヒナタが女性らしく笑みを浮かべる姿を想像出来なかった。
フォルテはシズさんとヒナタの再会の時に見ていたので今は二人を見守りながらほくそ笑んだ。
「ただしこれで恨みっこなしだ。お前が負けたらもうこの国に手出しをしないって誓えよ。」
「分かった約束するわ。」
「フォルテ!万が一俺が倒れたら後は任せたぞ。」
「…何言っているんだリムル。お前の勝利を疑う者など誰もいないぞ。」
フォルテの言葉に紅丸達が一斉に頷く。
「分かった。なら俺の勝利を其処で待っていてくれよ。」
互いに信じ合うリムル達の姿を見たヒナタは、本当に信頼し合っているのだと思いながら笑みを浮かべた。
「では、いくわよ。」
「ああ。」
そうしてヒナタはリムルに対し最強の一撃を放つ準備を始める。
「神へ祈りを捧げ奉る。我は望み聖霊の御力を欲する。」
(この詠唱は…
リムルの詠唱から
「(本来なら気付かれない様準備してから必殺の一撃として放つ技…。君達にこれを見せたら簡単に真似されそうで嫌だったんだけどね。でも、だからこそ…これで決める!)我が願い聞き届け賜え…万物よ尽きよ。」
ヒナタはそう思いながら詠唱を続け右手に凝縮された膨大な霊子エネルギーを
(
フォルテはヒナタの必殺の一撃を見てその凄まじさを一瞬で理解した。
それは対峙しているリムルもだ。
そうして準備を終えたヒナタは構えると、リムルに向かって駆け出し必殺の一撃を繰り出す。
「
迫る虹色の輝きを纏った刃に対しリムルは……微動だにせず動かない。
「嘘だろまさか…避けずに受けるつもりなのか⁉︎」
あの一撃を躱ず真っ向から受けようとしているリムルの姿にアルノー達は信じられず声を上げる。
そうしてヒナタの斬撃がリムルに命中するまさにその瞬間、リムルは
アルノー達とアルビス達が必死に衝撃波に耐える中、フォルテと紅丸達は平然と立って見守っている。
やがて衝撃波が止み土煙が立ち込む中、見守っていた紅丸が口を開いた。
「…やっぱ何でもアリだな。流石ウチの大将だ!」
土煙が晴れると其処にはあの
「おぉ!」
「うっそぉ……。」
その光景にアルノー達は信じらないとばかりに見入っており、スフィアとフリッツは思わず声を漏らしていた。
そんな皆の反応とは違い、フォルテは意外だった様な表情を浮かべてリムルを見ていた。
(まさか真正面から受け止めるとはな。リムルの事だからギリギリで躱すか斬星剣の能力で霊子を吸収して威力を抑えながら防ぐと思っていたんだが、……まさか
そう。リムルは自身の魔素七割と
(…まぁこれは恐らく
フォルテがそう思っていると、その予想が当たっていた事を証明する様に
《
「…やはりか。」
リムルが新たに獲得している
フォルテは分身でのヒナタとの戦いで霊子をある程度解析し
今回
(
この霊子の解析
「ぷはっ。うおっ…。」
そんな事を知らないリムルはヒナタの
「フフっ。」
「ん?」
するとヒナタの笑い声が聞こえリムルはヒナタの方へ顔を向ける。
「ふふふっ…あはははははっ!」
そしてヒナタはさっきまで毅然とした姿からは想像できない女の子らしい笑い声を上げた。
「凄いね君!あの状況でワザと受けたね?」
「ん?」
ヒナタの言葉を聞いたリムルの表情が一瞬固まる。
(……やはり
フォルテは思念伝達でリムルに話し掛ける。
『リムル……その件は後でいいだろう。まぁ後で
『フォルテ…はぁ、分かったよ。』
フォルテに言われ納得出来ない部分もあるが、今は言う通りにしてしようと決めるリムルだった。
「今のに耐えられてしまった以上私の負けね。どうせもう戦えないもの。」
「ヒナタ様…。」
ヒナタが負けを認めた事でアルノー達は戦いは終わったと判断しヒナタの元へと向かう。
「そうだな。それじゃあ俺の勝ちって事で……お?」
リムルそう言ってた瞬間だった。
リムルの背後でヒナタが捨てた
《告。対象への思念干渉と
《すぐ爆発する!》
「えつ⁉︎」
(しまった!)
「そうきたか!」
そして
(何処かで仕掛けてくるとは思っていたが、まさかヒナタが最初に捨てた剣に細工をしていたとは!)
あの
やがて宙に浮かんだ
(間に合わない!)
二人の戦いの邪魔にならない様に距離を取っていたフォルテは間に合わ光線がリムルに命中する誰もが思った瞬間だった。
ヒナタがリムルを押し除け身代わりとなって光線を喰らって胸部を貫かれた。
「「ヒナタ!」」
リムルは胸を貫かれたヒナタを抱き抱え、フォルテのすぐさま駆け寄る。
「ゴフッ!」
ヒナタは自分で治療を試みるも、重傷故に動く事は出来ず吐血した。
「おい…おいしっかりしろヒナタ!すぐ回復してやる!」
リムルはすぐさま
「駄目だリムル!シズさんからヒナタの特異体質を聞いただろ!」
「あっ!」
フォルテの言葉にリムルは思い出す。
二人はシズさんからヒナタに関してある程度話を聞いていた。
その中でもヒナタの特異体質について教えてもらった際には驚いた。
ヒナタは魔法への強い抵抗力を持つ特異体質あり、魔素を自動で分解してしまうので、通常の魔法は効かず魔素とは異なる物質である霊子を操る神聖魔法などの限られた魔法しか受け付けず、しかも自分の意思でオンオフが出来ないのだ。
つまり…ヒナタには魔素を使った
その事を思い出したリムルは自分ではどうにも出来ないと悔しい表情を浮かべるしかなかった。
「ヒ…ヒナタ様には神聖魔法でなければ効果がないのです!」
アルノーは慌てて駆け寄りながらリムルにそう伝える。
「ならぼさっとしてんな!」
「早くヒナタに神聖魔法の治療を!」
「ッ!リティス来てくれ!治癒魔法を!」
「は、はい!」
アルノーに呼ばれ急ぎヒナタの元に向かおうとするリティス……その時だった。
ガジッ!
「え…?」
リティスが謎の光のリングに拘束された。
「うおっ!」
「うわ!なんだこれ⁉︎」
「は、はずれぬ…!」
拘束されたのはリティスだけでなくアルノー、フリッツ、バッカス達も光のリングに捕らえられた。
「リムル様。フォルテ様。」
「ああ…。」
「遂にお出ましか。」
紅丸と蒼影がリムルとフォルテを守る様に前に立つと、リムル達の前に黒い渦が出現し何者かが姿を現す。
「魔王リムル。魔王フォルテよ。お初にお目にかかります。」
そう言いながら渦から現れたのは、白基調の司祭服に身を包む白ヴェールで顔を覆い隠した二人の老人だった。
「我らは七曜の老師と申す者。」
「此度は命令違反を行ったヒナタ・サカグチを始末しに参りました。」
遂にリムルとフォルテの前にこの騒動の元凶である老害…七曜の老師が姿を現した。
………
リムルとヒナタの戦いは、互角の攻防となりました。
やはりリムルが縁壱達の稽古を受けたのが
呼吸と型は使える様にはなりましたが、10年技を磨いてきたヒナタとの差はやはりありました。
原作通りの流れとなって七曜の老師が現れましたが、……この後の展開がどうなるのか……お楽しみに。
次回はエドワルドとディアブロの話…ウルティマも同行しています。