シオンの料理を食べた後、俺は森でオークがこの辺りにまで来ていないか蒼影とシャドーマンを連れて辺りを偵察していた。
「この辺りにはまだオーク達は来ていないか。」
「はい、フォルテ様。我らの分身体からもこの近くでオーク共は発見されておりません。」
「これより更に範囲を広げております。」
「そうか…。ソウエイ、一つ聞いていいか?」
「はい。」
「里を襲って来たオーク達はどの程度の強さだった? 数で攻めているがオーク単体の強さがどの程度か確認しておきたい。」
「……オーク単体では進化前の我らでも驚異はありません。ですが一つ気になることがありました。」
「なんだ。」
「仲間の死を気にせず攻め続けてきたオーク達から放たれる
異様な禍々しい感じの
俺の脳裏にあるチップが浮かび上がったが、この世界に存在するはずがないなと思った。
「ん? フォルテ様、俺の分身から連絡が。
「何? ソウエイ、シャドーマン、すぐに戻るぞ。」
「「は!」」
俺達はすぐに町に向かった。そして、俺達が戻った時には何故かゴブタがスーパーサ◯ヤ人かと思うような金の
「決まりだな。勝負有り、勝者ゴブタ!」
そしてゴブタはランガとリグルドに胴上げされている。そしてリムルは倒れたリザードマンを連れて帰るように他のリザードマン達に言う。
「覚えてろよー!」
そう言いながらリザードマン達は去って行った。
「どういう状況だこれは?」
「あっフォルテ、帰ってきたのか。」
「リムル、この状況はなんなんだ?」
「あぁ実は……。」
リムルの話によれば、
「それにしてはゴブタのやる気は尋常じゃなかったが。」
「勝ったらクロベエに頼んでゴブタ専用の武器を作ってやるって言ったんだ。後……負けた時は労いでシオンの手料理をご馳走するって言った。」
「……成る程。」
そりゃやる気にもなるよな。まさに背水の陣。それにしても、あのガビルと言ったリザードマンは調子に乗っていたようだが、実力は中々あるようだった。
それをスキルを使い熟し一撃で倒したゴブタの実力は素晴らしい。毎日ハクロウ、カーネル、ヤマトマンの訓練に耐えているだけはある。
俺は胴上げが終わったゴブタの元に行く。
「ゴブタ、見事な一撃だったな。」
「フォルテ様! ありがとうございますっす‼︎」
「俺からもお前に特別な褒美をやろう。」
そう言って俺はゴブタの頭に手を置き、俺のユニークスキル
「⁉︎ フォルテ様、いいんすか⁉︎」
スキルを与えられたゴブタは驚く。
「言ったろ褒美だと、試しに使ってみろ。」
「はっはいっす!」
ゴブタは腕に意識を集中すると、俺の時とは違いリムルの擬態と同じように黒い霧がゴブタの腕を包むとその腕がソードとなった。
「すっ凄いっす! 腕がこんな武器になるなんて! フォルテ様ありがとうっす!」
「無事に使えるようでなりよりだ。だが使えるだけではだめだから、これからそのスキルを使い熟さないとな。」
「その通り。」
俺がゴブタにそう言うと、カーネルとヤマトマンがこちらに歩みよる。
「先程のゴブタの一撃は確かに見事。だからこそフォルテ様はゴブタにそのスキルを与えられた。これからの特訓には更に武器の使い方を追加しよう。」
「拙者も武器に関する訓練を強化しましょうぞ。」
「ほほほ。ゴブタはやはり鍛えがいがありますのう。」
ハクロウ達はゴブタの訓練をより厳しいものにするべく話し合いを始め、そのようすに先程まで喜んでいたゴブタは顔を青く染めていた。
後にやるべきだったかな、これ…。すまんゴブタ。
「20万………とんでもない数の軍勢だな…。ベニマル達の里を襲った数千の軍勢は別働隊だったわけか。」
「はい。本隊は大河に沿って北上しており、本隊と別働隊の動きから予想できる合流地点はここより東の湿地帯…つまり
「成る程……どうりでこの近くにはオーク達が来てないわけだが、ベニマル達のいた里は進路の妨げになっていない……何故わざわざ別働隊を向かわせたのか……。」
「そもそもオークの目的ってなんなんだろうな。」
「ふむ…オークはそもそもあまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に本能以外の目的があるってんなら、何がしかのバックの存在を疑うべきだろうな。」
「バックの存在…。」
「たとえば魔王……とかか?」
リムルの言葉に皆が沈黙する。
「お前達の里に来たというゲルミュッドとかという魔族が絡んでいるとしたら……まっ今のところなんの根拠もないが。」
「そう言うが可能性が無いわけではないからな。シズさんから見ても今のオーク達の侵攻はやはり異常な事態だと思うか。」
「うん。私も何度かオークと戦ったことはあるけど、こんな大軍勢での侵攻は私の知る限り今までなかった。オーク達の背後に魔王の誰かがいてもおかしくないと思う。」
英雄と呼ばれていたシズさんの言葉に皆が考え込む。その中でベニマルが語り出す。
「…魔王が絡んでいるか分からんが、
「前に話していた数百年に一度生まれるユニークモンスターか……確かにこんな軍勢を統率できる存在となるとそれしか考えられないな。」
「いないと楽観視するよりは警戒するべきかと思います。」
「そうだな。」
「「…っ!」」
「どうしたソウエイ、シャドーマン?」
「偵察中の分身体に接触してきた者がいます。」
「リムル様とフォルテ様に取り次いでもらいたいとの事。」
「俺達に?」
「誰だ? ガビルでもうお腹いっぱいだし変なヤツだったら会いたくないんだけど。」
「変……ではありませんが大変珍しい相手でして、その…
ソウエイが口にした存在に皆が驚く。
「ドライアド様が最後に姿を見せたのは数十年以上前ではなかったか?」
「か、構わん。お呼びして。」
「は。」
ソウエイが分身体を通してドライアドにリムルの言葉を伝えてもらった直後、
会議中の机の中央に緑の魔力の光と共に蔦が生え、そして緑の髪の女性が現れた。
「〝魔物を統べる者達〟及びその従者たる皆様、突然の訪問相すみません。
私は
「俺はリムル=テンペストです。初めましてトレイニーさん。」
「フォルテ=テンペストだ。それでトレイニーさん、わざわざソウエイとシャドーマンに頼んでまでこの場に来た理由はなんだ。」
「はい。本日はお願いがあって罷り越しました。リムル=テンペスト、フォルテ=テンペスト…魔物を統べる者達よ。貴方達に
「
「俺達に?」
「ええ、そうです。」
笑顔そう言うトレイニーさんの前にベニマルが出る。
「いきなり現れてずいぶん身勝手な物言いじゃないか、
「そうですわね。貴方方…元オーガの里が健在ならそちらに出向いていたでしょう。まぁ、そうであったとしてもこの方達の存在を無視することは出来ないのですけど。」
その言葉と共にトレイニーさんは俺達を見る。
「
「トレイニーさん。その口ぶりから察するに、やはり
「ええ。
そう言いながらトレイニーさんは机にあったポテチもどきを口にする。
そして、その言葉を聞いた一同はどよめいた。
「
「なるほど、なら返事は少し待ってくれ。」
「こう見えても俺達はここの主なんでな。鬼人達の援護はするが率先して藪をつつくつもりはないんだ。」
「情報を整理してから返答する。」
「…承知しました。」
「先程トレイニーさんが
俺が皆にそう聞くとシュナが声を上げる。
「
そう言いながらシュナはソウエイにあることを確認する。
「ソウエイ、わたくし達の里の跡地は調査して来ましたか?」
「……はい。」
「その様子ではやはり…無かったのですね…。」
「はい…同胞の者もオークの者もただ一つも。」
「無かったって何がだ?」
「死体です。」
「何?」
「死体⁉︎」
ソウエイの言葉に皆が驚く。ベニマル達同胞やオーク達の死体がない。その事実に俺はある事が頭によぎった。人間だってそうだ。一線を超えてそれをせざるを得ない場合もある。
「なるほどな…20万もの大軍が食えるだけの食料をどうやって賄っているのか疑問だったが…。」
「奴らには兵站の概念などありはしませんからな…。」
「それってまさか…。」
「奴ら、死体を…。」
「ユニークスキル
トレイニーさんがそう言うと、
豚頭帝が生まれながらにして所有するスキルであり、その支配下の者全てに影響を及ぼしイナゴのように周囲にあるもの全てを喰らい、その力を我が物にする。俺の
「ですが、今回現れた
「そ、それは一体?」
リグルドがトレイニーさんに問うと、トレイニーさんは手から木でできた小さな物を取り出した。
「これは
そう言ってトレイニーさんは木で模したそれを俺達に見せた。それを見た俺はまさか⁉︎と驚きながらそれを手に取った。
「……トレイニーさん。これ紫色でしたか?」
「はい。その通りです。」
「フォルテ、それ…。」
「ああ…。カーネル、間違いないよな。」
「はい。そのチップ、見間違えるはずがありません。」
間違いない、まさかこの世界にこれがあるなんて…。 だが、これを作れるような人物は1人しかいない。まさか、この世界にいるのか…?
「フォルテ様、リムル様? その小さな物に心辺りが? カーネルも知っているようですが?」
「拙者も知っている…いや、我のオリジナルが雇われていた者が作りし物だな。」
「皆さんかなり深刻な表情をしていますが、それはそんなに危険な物なんですか?」
俺達の様子にベニマルが疑問を感じ、シャドーマンはデューオと俺の記憶からその力の危険性を知っている。そしてシュナが心配そうに問いかけてきた。
「ああ…これは〝ダークチップ〟と呼ばれるものだ。」
「ダークチップ?」
「フォルテ様、それはどういった物なのでしょう? リムル様やカーネル殿、それにシャドーマン殿もかなり危険視されてるようですが…。」
「そうだな……わかりやすく言うなら心を蝕む悪魔の力だ。」
「心を…蝕む?」
俺はダークチップのことをこの世界の皆にもわかるように説明した。
「ダークチップの中には強力な闇の力があり、その力を取り込んだ者は全ての力が信じられないぐらいに強化される。だが、その強大な力ゆえに使用した者の心も闇の力に次第に蝕まれて正常な判断ができなくなり、やがて悪意に支配されるか闘争本能のままに戦いを求めてしまう。」
「そんな力がその小さな物に⁉︎」
「そうだ。だが、このチップの真の恐ろしさは使った者を離さない…いや離れなくすることだ。」
「それは一体?」
「このチップを使った者はその力の虜となり、その力に依存させる強い中毒作用がある。つまり、……一度でも使えばその力なしでは生きていけない身体となる。」
俺の説明に皆が静まりかえる。まさかこんな小さな物にそれだけの危険性があるなど誰も想像していなかったからだ。
「トレイニーさんの話だと、
「それを踏まえると、オーク達の目的は
「そうなると俺達も狙われる可能性が充分あるな。」
「そうだな。
「1番奴らが食いつきそうなエサを忘れてませんか?」
「んー?」
「いるでしょう最強のスライムが。」
「確かに。」
「いやいや、俺よりもフォルテの方が奴らにとってのご馳走じゃないか?」
「リムル様もフォルテ様も他人ごとではなくなったのでは? それに……この度の
トレイニーさんの言葉に俺達は反応してしまった。
「……シズさん。魔王レオンって奴はこんな事する奴なのか?」
「いいえ。レオンはこんな事するような魔王ではなかった…はずだと思う。」
シズさんも距離を置いてから数百年経っているからな…。だけどその魔人がダークチップを持っているなら情報を聞き出す必要がある。
「改めて
ダークチップの影響があるなら見過ごせないし、ここは依頼を受けるしかないな。俺はそう思いリムルに確認しようとした時、シオンが声を上げながらリムルに抱きついてきた。
「当然です! リムル様とフォルテ様ならば
「まぁ! やはりそうですよね。」
いや、シオン勝手に決めちゃって…まぁ受けるつもりだったから良いが…。リムルの方を見るとなんか仕方ないなと諦めたような顔をしていたが、すぐスライムの姿に戻って皆に言った。
「
「ああ、俺もそのつもりだったからな。皆もそのつもりでいてくれ。」
「「もちろんです、リムル様、フォルテ様!」」
こうして俺達は
いよいよオーク達との戦争。
ダークチップを作れる存在と言ったら…あの人物しかいませんよね。