転生したらフォルテだった件   作:雷影

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遂に豚頭帝との決戦!リムルとフォルテ達の運命は如何に!


15話 罪深き者を救う者

オーク軍との戦い。紅丸(ベニマル)達の活躍によりオーク軍の数が減っていく中、俺とリムルはついに豚頭帝(オークロード)を発見した。

二体の豚頭将軍(オークジェネラル)を引き連れ立つその姿は他のオークよりひときわ大きく、妖気(オーラ)も尋常ではない。

 

「見つけたな。」

 

「あぁ。今ベニマル達にも連絡したところだ。」

 

 

俺達が豚頭帝(オークロード)を見てる中、豚頭帝(オークロード)の目が薄らと赤くひかり、身体から黒紫の妖気(オーラ)が溢れている。

 

「腹が減った!何でもいい…喰いたい‼︎」

 

豚頭帝(オークロード)の前に紅丸(ベニマル)紫苑(シオン)白老(ハクロウ)そして影移動で蒼影(ソウエイ)が現れる。シャドーマンには首領達を守るように命じている。

 

皆が豚頭帝(オークロード)の元に集結した事を確認したリムルはゆっくりと仮面をつける。

 

豚頭帝(オークロード)よ。引導を渡してやる!」

 

「あぁいくか。ん⁉︎」

 

リムルと共に豚頭帝(オークロード)に向かうとした時、後方から高速でこちらに向かってくる何かを感じ振り返る。

その何かは俺とリムルの間を割って通過し、豚頭帝(オークロード)の前に落ちた。土煙が立ち込む中、煙の中からペストマスクを被った魔人が現れた。

 

そいつはオークの記憶にいた今回の黒幕である魔人。

 

「どういう事だ⁉︎このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!」

 

そうゲルミュッド。まさか戦場に出て来るとは、記憶で見た限りだと表には出てこないと思ったが。

 

「もう少しで俺の手足となって動く、新しい魔王が誕生したというのに!」

 

「新しい魔王だと?」

 

「そうだ!だから名付けをしまくった!種を撒きまくったんだ!最強の駒を生み出す為にな‼︎」

 

「その為に…。」

 

「我らの里にも。」

 

「来たと言うことか!」

 

ゲルミュッドの目的を知り、その名付けを断った事を逆恨みして自分達の里を…仲間をオークに襲わせたゲルミュッドに更に怒りを燃やすベニマル達。

 

そんな中、こちらに向かって走ってきたガビル達がゲルミュッドを見て声を上げる。

 

「おお!これはゲルミュッド様!もしかして吾輩達を助けに!」

 

「役立たずの鈍間が!貴様もさっさと豚頭帝(オークロード)の糧になれ!」

 

「はぁ⁉︎」

 

「役に立たない無能の分際でいつまでも目障りな奴よ!豚頭帝(オークロード)に喰われ力となれ!俺の役にたって死ねるのだ、光栄に思うがいいぞ。」

 

「ゲ⁉︎ゲル⁉︎ゲル⁉︎」

 

ゲルミュッドの言葉に困惑するガビル。

 

「やれ!豚頭帝(オークロード)‼︎」

 

ゲルミュッドがそう命令するも、豚頭帝(オークロード)は動かない。

 

「どうした⁉︎」

 

「魔王に進化とは……どういう事だ……?」

 

「チィ!本当に愚鈍なヤツよ。貴様が魔王豚頭魔王(オークディザスター)になってこのジュラ森を支配するのだ!それこそが私とあの御方の望みだ!」

 

 

ゲルミュッドの話を聞いた俺とリムルは、ゲルミュッドの背後にはオークの進軍をゲルミュッドに指示した黒幕がいることを知った。

 

「やはりこの戦いには何か別の奴が糸を引いているようだな。」

 

「そうだな。まぁあんな小物ぽい奴がこんな事思いつくとは思ってなかったけど。」

 

ゲルミュッドの話を聞いても豚頭帝(オークロード)は動こうとはしない。

 

「何をぼけっとしている豚が‼︎ はぁ…仕方ない。手出しは厳禁だが、俺がやるしかないか!」

 

そう言ってゲルミュッドは魔力を手に集約し始める。その目標はガビル

 

「え!あぁ⁉︎」

 

自分が狙われていることに更に困惑してガビルは動けない。

 

「ガビル様!」

 

「お逃げください!」

 

「死ね!」

 

ゲルミュッドは魔力弾をガビル達に向かって放った。

 

そしてガビル達に魔力弾が命中する。だが、ガビル本人は部下達に救われ無傷であった。

 

「ぐ!お前達‼︎」

 

「ガビル様が…無事でよかった…。」

 

その言って部下達は倒れた。

 

「おぉ…おお…おおお…うっウアァァァァァ‼︎」

 

自分の為に倒れた部下達の姿にガビルは悲しみの叫びが辺りに響く。

 

豚頭帝(オークロード)の養分となって俺の役に立つがいい!」

 

ゲルミュッドが再び魔力を集約する。あの魔素量は、喰らったら確実にガビル達は死ぬ。

 

「フハハハハ!上位魔人の強さを教えてやる!死ね‼︎」

 

ゲルミュッドは集めた魔力を無数の魔力弾に変える。

 

死者之行進演舞(デスマーチダンス)!」

 

無数の魔力弾が一斉にガビルに向かって放たれる。

 

「ゲルミュッド様ー!」

 

ガビルか悲しみの声でゲルミュッドの名を叫びながら、死を覚悟して目を瞑った。

そして無数の魔力弾はガビル達の()()爆発。そして爆煙が立ち込む。

 

「あのトカゲを食え豚頭帝(オークロード)!使えぬヤツだったが一応この俺が名を与えた個体の一つだ。貴様を魔王に進化させるだけの力はあるやも知れん……ん⁉︎」

 

ゲルミュッドは煙が晴れて見えてきた光景に驚く。

ガビル達の遺体が転がっているばすが、そこにはガビル達の前に立つマントに身を包んだフォルテが障壁(バリア)を展開してゲルミュッドの攻撃からガビル達を救っていた。隣にはリムルもいてゲルミュッドに問う。

 

「なぁこれが全力か?この程度の技でどうやって死ぬんだ?」

 

「確かに並のやつならこの攻撃で倒されていただろうが、俺達の前ではただの魔力弾の雨だ。」

 

「きっ貴様ら⁉︎」

 

ガビルは自分達を救ったフォルテとリムルの背中を見ていた。

 

「あっ貴方…貴方様方は…。」

 

「ほれ!」

 

リムルは自分が作った薄い膜に包まれた回復薬をガビルに渡した。

 

「回復薬だ、部下達に使ってやれ。」

 

「はっはい!しっかりしろ!我輩の為にこんな!」

 

ガビルは部下達に回復薬を使いながら部下達に声をかける。そんなガビルに俺は声をかける。

 

「心配するな。リムルの回復薬ならその程度の傷はすぐ治る。回復したら部下達と共に少し離れていろ。」

 

その言い終えた後、俺はベニマル達に念話で指示を出した。

 

『ベニマル。殺さない程度に痛め付けて構わないが、そいつには聞きたいことがある。』

 

『分かりました。』

 

『済まないな。本当なら里の…仲間の仇を取らせてやりたいが…。』

 

『大丈夫です。俺達も色々聞きださないといけないことはわかっています。それにこうして俺達に機会を与えてくださるフォルテ様には感謝しています。』

 

そうベニマルが念話を言い終えると、シオンとハクロウとソウエイは頷く。

そしてベニマル達はゲルミュッドに向かって歩き出す。

 

「ようゲレ…じゃなくてゲルミュッドか。オーガの里で全員に突っぱねられた「名付け」は順調なようだな。」

 

「き……鬼人!」

 

ゲルミュッドはベニマル達を前に後ずさる。

 

「お前が我らの里をオーク共に襲わせた事は既にフォルテ様から聞いている。」

 

「なっ⁉︎」

 

「違うと言うなら言ってみるがいい。明確な仇が分かっている以上、ワシらは容赦はせぬぞ。」

 

「くっ……ああそうだよ!それがどぉした⁉︎上位魔人をなめるなぁつ‼︎」

 

ゲルミュッドはやけくそになって魔力弾をを放つがベニマル達はすぐ躱して背後に回りこんだ。

 

「お前の方こそ鬼人(俺達)をなめすぎだ。」

 

そして、ゲルミュッドの片耳を切り落とす。

 

「ギャアアァァァ⁉︎み……みみっ耳がぁぁ‼︎」

 

耳を切り落とされたゲルミュッドは醜く転がりもがき苦しむ。そんなゲルミュッドにベニマルは冷たい声で言う。

 

「そんなもんじゃないぞ。親父は俺と(シュナ)を逃がすために死んだ。親父だけじゃない多くの仲間が生きたまま喰われた。……そんな程度の痛みじゃなかったはずだ‼︎

 

ベニマルの怒りにゲルミュッドは更に怯え恐怖する。

 

「くっクソが!」

 

ゲルミュッドはなんとか逃げようと後ずさるが、更に背後に回り込んでいたシオンにぶつかる。そしてシオンの冷たい笑みを見て自分が追い詰められていることを理解し始める。

 

「こんな…こんなバカな!こっこの俺が追い詰められて……⁉︎」

 

そしてゲルミュッドはベニマル達によって裁きの刑を受け続ける。

 

「フォルテ君!」

 

「フォルテ様!」

 

その時、ゴスペルに乗ったシズさんが俺達の元に来てくれた。

 

「シズさん!ゴスペル!来てくれたか。」

 

「無論です!」

 

「この辺りのオーク達はあらかた倒したよ。」

 

「流石はシズさん。ゴスペルもよく頑張ってくれた。」

 

「勿体なき言葉です!」

 

「フォルテ君状況は?」

 

「今回の黒幕であるゲルミュッドが突然現れた。そして勝手に色々話し出して大体の目的がわかった。ゲルミュッドは自分の意のままに動く新たな魔王を誕生させようと各地で名付けをしていた。そしてその候補があの豚頭帝(オークロード)だった。」

 

俺は豚頭帝(オークロード)の方を見る。ゲルミュッドがベニマル達に攻撃されているが、今も動こうとせず沈黙している。

 

「あれが豚頭帝(オークロード)……フォルテ君の話だと豚頭帝(オークロード)はゲルミュッドの配下なんだよね。なんで助けようとしないの?」

 

「今の豚頭帝(オークロード)は自分の自我すら失いかけている。分析してみたが、数多の種族を喰らい得た力とダークチップの闇の妖気(オーラ)によって意識が侵食されて混濁しているようだ。」

 

「……なんだか可哀想。」

 

「ああその通りだ。」

 

俺はオークの記憶から豚頭帝(オークロード)が何を願っていたか、何故あんな力を得たかを知った。だからこそ、俺は奴をあの苦しみから救ってやりたい。

 

 

 

 

「うおぉおっ死者之行進演舞(デスマーチダンス)ぅぅ‼︎」

 

ゲルミュッドは無数の魔力弾でベニマル達の動きを抑えて離れる。

 

あんな化け物共の相手などこれ以上できん!だが奴らの隙をついて逃げるのは俺では不可能……こうなれば奴らにこれを!

 

ゲルミュッドは懐から数枚のチップを取り出してベニマル達に投げようとした瞬間、ゲルミュッドの体が無数の極細の糸で捕らえられ動きを封じられる。

 

「なんだ…かっ体が…っ」

 

「そのダークチップをベニマル達に投げて闇の妖気(オーラ)で精神を侵食されている隙に逃げるつもりだろうがそうはいかん。」

 

ソウエイの言葉に動けない体を恐怖で震わすゲルミュッド。

 

「フォルテ様より殺すなと言われているが、貴様には我らが失った同胞と同じ数だけ報いを受けてもらう。……死んだ方が良かったと後悔するような痛みと苦しみを味わうがいい。」

 

ゲルミュッドはこのままでは不味い。背後の豚頭帝(オークロード)に助けを求める。

 

「おい!豚頭帝(オークロード)!俺を助けろ!」

 

「……腹が減った…。」

 

「クソが!俺を助けろ豚頭帝(オークロード)!いや……ゲルドよ‼︎

 

名を呼ばれた豚頭帝(オークロード)ゲルドは目を見開く。そしてゆっくりと動き出した

 

「このクズが!ようやく動き出したか。」

 

ゆっくりとゲルミュッドに近づく豚頭帝(オークロード)ゲルド。

 

「こいつを助けるつもりなら相手になるぞ。聞いた限りじゃ黒幕はこいつとその背後にいる存在らしいが、俺達の里を直接滅ぼしたのは貴様らオーク共だ。やるとなれば手心を加えるつもりはない。」

 

ベニマル達は豚頭帝(オークロード)ゲルドに対して構える。

 

(これは逆にチャンスだ…ゲルドが鬼人共を喰えばとんでもない強化が見込める!…そうとも、俺はこんなところで死ぬような男じゃないんだ‼︎)

 

ゲルミュッドは自分は助かると、希望を持ち高笑いした。

 

「ふははははは!此奴の強さを思い知るがいい!やれゲルド!この俺に歯向かったことを後悔させ〝ズバ‼︎〟

 

ゲルミュッドは豚頭帝(オークロード)ゲルドによって首を斬り落とされその命は消えた。

豚頭帝(オークロード)ゲルドはゆっくりとゲルミュッドの遺体に近づきそれを喰らう。

 

バキ!ゴリッ!グチャ!グチャ!バキ!ボリ!ゴキ!

 

その際に、ゲルミュッドの握っていたダークチップまで食らう。それと同時に大量の闇の妖気(オーラ)豚頭帝(オークロード)に取り込まれる。

 

「不味い!」

 

俺は豚頭帝(オークロード)に向かって飛び出しその背に腕を突き刺す

 

「フォルテ⁉︎」

 

「フォルテ君⁉︎」

 

「フォルテ様何を⁉︎」

 

オーク達から分析したこの闇の妖気(オーラ)は本来のダークチップのダークオーラより劣るが、ゲルミュッドの力と共にこれ以上取り込めば危険だ‼︎

 

電脳之神(デューオ)!俺が取り込める限界まで豚頭帝(オークロード)の闇の妖気(オーラ)を吸収する!」

 

《いかに暗黒耐性があり、劣るとはいえこれ程の膨大な量の闇の妖気(オーラ)を取り込むのはこちらも危険だが?》

 

「構わない!今の豚頭帝(オークロード)にこれ以上の闇の力を与える方が危険だ‼︎」

 

《……わかった。》

 

能力吸収(ゲットアビリティプログラム)‼︎」

 

フォルテが豚頭帝(オークロード)ゲルドからその膨大な闇の妖気(ダークオーラ)を吸収し始める妖気(オーラ)はフォルテの体を包むように纏わりつきながら取り込まれいく。

 

「ぐっ!」

 

暗黒耐性があるからある程度闇の侵食に耐えているがやはりきつい。

 

フォルテが豚頭帝(オークロード)の闇を取り込む姿にリムル達は戸惑いを顕にする

 

「フォルテの奴!豚頭帝(オークロード)の闇の妖気(オーラ)を吸収しているのか⁉︎」

 

「そんなフォルテ君!」

 

「フォルテ様!無茶はおやめください‼︎」

 

「しかし何故フォルテ様は⁉︎」

 

「フォルテ様自身闇の妖気(オーラ)の危険性は知っているはずじゃ。」

 

「では何故?」

 

皆がフォルテの行動に戸惑う中で、大賢者がリムルに伝える。

 

《告。フォルテ=テンペストは豚頭帝(オークロード)が保持する闇の妖気が更に増大し、それに伴う魔王種への進化及び闇の侵食による暴走を防ぐべく豚頭帝(オークロード)の闇の妖気(オーラ)を吸収していると思われます。》

 

「!彼奴…無茶しやがって…。」

 

「リムルさん?」

 

「フォルテの奴、豚頭帝(オークロード)がゲルミュッドの力と闇の妖気(オーラ)の力で更に進化することや、それに伴う闇の侵食による暴走を防ごうとしているんだ。」

 

「「「なっ⁉︎」」」

 

リムルの言葉に皆が驚く。

 

そんな中、フォルテの闇の妖気(オーラ)吸収は続く。

 

《闇の妖気(オーラ)の吸収50%……侵蝕率20%。》

 

耐性の効果で侵蝕はかなり抑えられているが、やはりこれだけの闇の妖気(オーラ)を取り込むのはきついな……突き刺さした腕の黄色の部分が紫に染まっていく。そんな中、電脳之神(デューオ)から更なる事態を知らされる。

 

《吸収60%……侵蝕率36%……豚頭帝(オークロード)から腐食妖気(オーラ)が新たに発生した。これにより身体が15%腐食。》

 

腐食だと⁉︎……よく見ると、腕のアーマー部分が溶けかけている。

 

豚頭帝(オークロード)の進化が開始されようとしている。》

 

(!進化は止めらなかったか、ならせめて暴走は阻止しなければ‼︎)

 

フォルテは闇の侵食と腐食に耐えながら闇の妖気(オーラ)を限界まで吸収を続ける。

其れにともないフォルテの体は闇の妖気(オーラ)により紫に染まりながら腐食で溶けていく。

 

《吸収70……73……77……侵蝕率48%……腐食33%……これ以上は危険だ。》

 

電脳之神(デューオ)の警告を聞きやむを得ないと判断した時、吸収中の妖気(オーラ)の中から光る球体が見えた。

フォルテはそれに触れた時、豚頭帝(オークロード)の声を聞いた。

 

     俺が皆を…同胞を救うのだ…。

 

その言葉を聞いた後、意識が戻ったフォルテは豚頭帝(オークロード)から飛び退いた。

 

「フォルテ大丈夫か‼︎」

 

「フォルテ君‼︎」

 

「「「フォルテ様‼︎」」」

 

皆が心配して俺の元に駆け寄る。

 

「…皆……済まない、心配かけたな……。」

 

俺の身体は黄色の箇所は殆ど紫に染まり、腐食で至る所が溶けていた。

 

《闇の妖気(オーラ)の吸収85%、侵蝕率55%、腐食率42%……吸収した妖気(オーラ)により暗黒耐性が暗黒無効に進化した。これにより闇の侵蝕も阻止され侵蝕部の回復を実行、続けて腐食耐性を獲得。最後に豚頭帝(オークロード)の魂への接触によりユニークスキル精神侵入(スピリチュアル・プラグイン)を獲得した。》

 

無理な事をした分、新しいスキルや耐性が進化したが、豚頭帝(オークロード)の進化は止められなかったか。

 

「リムル…済まん。豚頭帝(オークロード)の闇の侵食による暴走は阻止したが、進化は止められなかった。」

 

「馬鹿!そんなことはいい!いきなりあんな無茶をして……でもありがとうな。」

 

「フォルテ君。皆の為だってわかるけど、皆はフォルテ君の事が大事なんだよ。」

 

「リムル…シズさん…ああ。」

 

「フォルテ回復薬だ。しばらくはそこで休んでいてくれ、後は俺達の出番だ。」

 

リムル達は豚頭帝(オークロード)を見る。

 

豚頭帝(オークロード)は自身の妖気(オーラ)に包まれまるで繭のような姿となる。そして世界の声がこの戦場にいる皆に聞こえるように響き渡る。

 

《確認しました。個体名ゲルドが魔王種への進化を開始します。》

 

妖気の繭が胎動する……そして周りに腐食の妖気が溢れ出す。

 

リムル達は距離を取り離れる。やがて妖気の繭は弾け中から新たな魔王が生まれた。

 

《成功しました。個体名ゲルドは豚頭魔王(オーク・ディザスター)へと進化完了しました。》

 

その姿は先程までのでっぷりとした腹の体型から、引き締まった腹筋と強靭な腕を持った筋肉質な身体となり先程より一回りほど巨大化した。

そしてその身体から感じる魔素量は先程とは比べ物にならないくらい増大している。

 

「これが…魔王か。」

 

「覚醒していないけど、魔王に進化したのは間違いないよ。」

 

「魔王ゲルド…放置するわけにはいかないよな。」

 

ウオオァァァァァア‼︎

 

「俺は豚頭魔王(オーク・ディザスター)‼︎この世の全てを喰らう者なり‼︎名をゲルド…魔王ゲルドである‼︎」

 

 

「……!我らが父王よ。」

 

「王よ。」

 

「魔王ゲルド様。」

 

オーク達は魔王に進化したゲルドに皆一斉に跪く。

 

「リムル……彼奴を止めないといけない。」

 

「ああ。此奴を今殺しておかなければ、本当の災禍になる。」

 

「シオン!」

 

「はい!承知しています!」

 

シオンが豚頭魔王(オーク・ディザスター)ゲルドに向かって走り出す。

 

「おい?」

 

「ここは俺達にお任せを、どうやら舐めてかかれる相手じゃなさそうです。」

 

「薄汚い豚が魔王だと⁉︎思い上がるな‼︎

 

シオンの剛力丸が魔王ゲルドに迫るが、魔王ゲルドは片手に持つ巨大な出刃包丁でシオンごと簡単に払い除ける。

シオンはすぐに体制を立て直し魔王ゲルドに再び斬りかかる。魔王ゲルドは出刃包丁を振り上げる。その時、背後から気配を感じ振り向くその瞬間、ハクロウが魔王ゲルドの首を斬り落とす。

 

皆がやったと思う中、フォルテはまだだと呟く。

 

ハクロウが着地すると同時に背後からの気配を感じ飛び避ける。そこには胴と首が切り離された状態で出刃包丁を振るう魔王ゲルドの姿が

その後すぐに、胴から黄色の触手が伸びて斬られた首を引き寄せ再び繋ぎ合わせる。

 

その光景にハクロウは驚く。

 

「首を断たれてなお動きよるか!」

 

「凄まじい回復能力だな。」

 

リムルもその回復能力には驚く。

 

「…美味そうな餌だ。ああ…腹が減っタ。」

 

首が完全に繋がった直後、魔王ゲルドの足元から無数の糸が絡み付き繭状にして閉じ込めた。

 

「操糸妖縛陣!これでもう逃げられん。やれベニマル!」

 

「腹が減ってるならこれでもくらってな!黒炎獄(ヘルフレア)!」

 

ベニマルがオーク軍を焼き払った黒炎を魔王ゲルドを焼き尽くす為に圧縮して放った。魔王ゲルドが球体(ドーム)に捕らわれながら黒炎によって焼かれる。

 

その後にゴスペルとランガが前に出る

 

「ランガよ!ベニマルの黒炎が消えた直後に我らの一撃を叩き込むぞ!」

 

「はい親父殿!」

 

やがて、魔王ゲルドを包む黒炎が消えかける。その瞬間にゴスペルの雷属性の黒獣之息吹(ブレスオブゴスペル)とランガの黒雷が魔王ゲルドに直撃

 

その一撃でランガは魔素切れとなり身体が縮む。

 

「魔素切れか?」

 

「面目ありません。」

 

「俺の影に潜ってろ。」

 

「後は任せろランガ。」

 

「はっ…親父殿お気をつけて!」

 

そう言ってランガはリムルの影に潜る。

 

やがて煙が晴れていくと、魔王ゲルドは倒れていた。

 

「やったか…。」

 

「いや…まだだ。」

 

倒れていた魔王ゲルドはゆっくりと起き上がる。

 

「何⁉︎」

 

「これが、痛みか…。」

 

その身体には何箇所かに火傷があるが魔王ゲルドに致命的なダメージ無かった。

 

「嘘だろ…。」

 

ベニマルとランガそしてゴスペルのあの連続攻撃を耐える防御力……フォルテが吸収しきれなかった闇の妖気(オーラ)が魔王ゲルドをより強くしていた。そんな魔王ゲルドに1人の豚頭将軍(オークジェネラル)が近寄り膝をつく。

 

「王よ、この身を御身と共に。」

 

「……うむ。」

 

魔王ゲルドはそのまま豚頭将軍(オークジェネラル)を喰らい始める。

仲間を貪り食うその姿に、ゴブタ達は青ざめる。

喰い続ける事で魔王ゲルドの傷は瞬く間に治癒されていく。

 

「自己再生と回復魔法か…。」

 

「あの回復力…一撃で決めなければ、皆の魔素(エネルギー)が先に尽きる。」

 

 

豚頭将軍(オークジェネラル)を喰らい尽くし、完全回復した魔王ゲルドは声を上げる。

 

「足りぬ…もっとだ。もっと大量に喰わせろ‼︎」

 

魔王ゲルドは手を前に突き出し魔力弾を放つ。そして、ベニマル達の上空で無数に分裂し囲む。ゲルミュッドの死者之行進演舞(デスマーチダンス)だが、ゲルドの放った魔力弾の魔力とは比べものにならない。

 

魔力弾が一斉にベニマル達に襲いかかる。その時、ベニマル達の前にリムルが現れ全ての魔力弾をスライム化した手で捕食した。

 

「リムル様。」

 

「大丈夫だ任せろ。」

 

リムルは魔王ゲルドに向かって進む。

 

「リムルさん。1人で魔王ゲルドに挑むなんて、私も加勢に行った方が。」

 

「大丈夫だシズさん。リムルには奥の手があるからな。」

 

「奥の手?」

 

俺がシズさんと話しをしてる中、魔王ゲルドは自身の妖気を具現化させる。

 

「出番だぞ大賢者。お前に託す!さっさと敵を打ち倒せ!」

 

《了。自動戦闘状態(オートバトルモード)へ移行します。》

 

リムルの目が赤く光りだす。

 

「喰らい尽くせ!混沌喰(カオスイーター)

 

魔王ゲルドから四つの顔の妖気かリムルに襲いかかる。だが、リムルは全てを巧みに躱しながら魔王ゲルドの前に

そして黒炎を纏わせた刃で魔王ゲルドの左腕を斬り落とした。しかも魔王ゲルドの左腕の切り口に黒炎を燻らせ、再生を阻んでいる。

 

 

「凄い…。」

 

「リムルの奴、早速奥の手の大賢者に主導権を渡したな。」

 

「それってリムルさんのユニークスキルの?」

 

「ああ。俺の電脳之神(デューオ)と同じ自立型のスキルだから、主導権を一時的に渡して任せることができる。」

 

「リムルさん以上にリムルさんの身体と所持しているスキルの力を正確に発揮できるスキルだから奥の手なんだね。」

 

 

そしてリムル…いや大賢者が黒炎纏いし刀で魔王ゲルドに斬りかかる。

魔王ゲルドは出刃包丁で受けるが、黒炎が出刃包丁に燃え移る。

 

「馬鹿な⁉︎」

 

魔王ゲルドは即座に出刃包丁を捨てる。出刃包丁は黒炎の高熱に耐え切れずその場で溶ける。

 

魔王ゲルドはリムル(大賢者)の強さを理解した。

 

 ……認めよう。あれはエサではない…敵だ!

 

魔王ゲルドは黒炎に焼かれ続ける左腕を根本から引き千切る。そして魔力を放出し一気に再生させる。

 

「今こそお前を喰ってやろうぞ‼︎」

 

魔王ゲルドは両腕から死者之行進演舞(デスマーチダンス)を放つ。しかも先程までと比べものにならない無数の魔力弾がリムル(大賢者)だけでなく、俺達にも迫る。

 

「くっ障壁(バリア)展開!」

 

皆を守る為に俺が障壁(バリア)を張った直後に魔力弾は直撃!ゲルミュッドとは比べものにならない威力で、障壁(バリア)には亀裂が入った。

 

「フォルテ様!」

 

「ベニマル。ある程度は回復した大丈夫だ。」

 

リムル(大賢者)は両腕をスライム化させて魔力弾の雨を全て吸収して回避した。辺りは魔力弾により爆煙が立ちこめる。煙の中から魔王ゲルドが飛び出してリムル(大賢者)を捕える。

 

「ヌフハハハ!このまま喰らってくれるわ‼︎」

 

だが、この状況はすでに大賢者が予測した状況だった。

リムル(大賢者)の眼がイフリートのものに変わると、魔王ゲルドの足元に魔法陣が展開されそのまま炎の竜巻が魔王ゲルドを燃やす。

 

「あれは炎化爆獄陣(フレアサークル)!」

 

「流石大賢者だ。ここまでは見事だな。」

 

そう、俺は回復しながら電脳之神(デューオ)と共にここまでの展開を予想していた。大賢者の予想ではここで勝利のはずだが、俺達はそれとは違い先の展開を予測していた。

 

焼かれる魔王ゲルド……だが炎の中から無傷の魔王ゲルドが現れた。やはり炎への耐性を獲得したようだ。普通ならまずいと思うが、リムルは大賢者のおかげで魔王ゲルドの攻略方を導き出しているはず。

 

「俺には炎は通じぬようだぞ。」

 

「そうかよ。炎で焼け死んだ方が幸せだったかもしれないぜ。」

 

リムルが再び喋り出した。主導権を戻したということは、攻略方に気づいたようだな。

 

「俺はお前を敵として認めた。今こそ本気でお前の相手をしてやるよ。」

 

「ヌハハハハ!笑止!今までは本気でなかったとでも?お前はここで俺に喰われるのだ!飢餓者(ウエルモノ)で腐食させたものはそのまま我らの糧となる‼︎」

 

魔王ゲルドに捕まっているリムルは腐食の影響で溶け始めているように見える。だが、それは決して溶かされているからではないことを俺は知っている。

シズさんも、リムルが何をしようとしているのか気付いたようだ。

 

「お前に喰われる前に、俺がお前を喰ってやるよ。……俺はスライムだ。」

 

リムルは人化を完全に解き、スライムの体が魔王ゲルドに纏わり付く。

 

「ヌオ⁉︎ヌグウきっ貴様‼︎」

 

「喰うのはお前の専売特許じゃねぇんだよ!お前が俺を喰うのが先か、俺がお前の喰うのが先か、相手を喰い尽くした方が勝ちだ!」

 

「ヌアアァァァァア‼︎」

 

魔王ゲルドは自分に纏わり付くリムルのスライムを引き千切り腐食させる。だが、リムルの超速再生で瞬時に再生しながら魔王ゲルドをを包んでいく。

魔王ゲルドはそれでも諦めず自己再生で捕食された身体を回復するが、徐々にリムルに身体を包まれていく。

 

 

「………電脳之神(デューオ)精神侵入(スピリチュアル・プラグイン)の準備はできているか。」

 

《無論だ。魔王ゲルドの魂に接触したのでいつでも侵入は可能だ。》

 

そう、フォルテが魔王ゲルドから闇の妖気(オーラ)を吸収していたあの時、最後に触れた光こそ魔王ゲルドの魂だった。

 

オーク達の記憶と魔王ゲルドの魂から伝わった想いに俺は、このオーク達の王の魂を救うことを決めた。

 

フォルテが立ち上がると、シズがフォルテの元に来る。

 

「フォルテ君大丈夫なの?」

 

「シズさん、あぁもう大丈夫だ。殆ど回復はした……だから今から俺は魔王ゲルドの魂に入り込む。」

 

フォルテの言葉にシズは驚く。

 

「どうして⁉︎」

 

「闇の妖気(オーラ)を吸収したあの時、俺は魔王ゲルドの魂に触れた。そこで感じたんだ。魔王ゲルドの想いを…同族を、仲間を、子供達を救いたいという心を。」

 

「フォルテ君…。」

 

「このままリムルの捕食が進めば魂も完全に取り込まれる。だが、今ならまだ間に合う。せめてその魂だけは救いたい。」

 

フォルテの決意を聞いたシズはジッと彼をつめた後、その手を握る。

 

「わかったよ。フォルテ君の決めた事なら私は止めない。でも私も連れていって欲しい。」

 

「シズさん⁉︎」

 

「子供達を想う気持ちは私にも分かるもの。だから私も彼の心を知りたいの。」

 

「シズさん……わかった。」

 

フォルテはシズさんの手を握り返し、一緒に魔王ゲルドの魂に入に入る為に新たなスキルを発動する。

 

精神侵入(スピリチュアル・プラグイン)!」

 

フォルテとシズさんの身体が赤い光へと変わりそのまま魔王ゲルドの額の中に向かって侵入した。

 

「フォルテ様⁉︎」

 

「シズさん⁉︎」

 

突然のフォルテとシズの行動にベニマルとゴブタは声を上げた

 

魔王ゲルドの魂の中に入ったフォルテとシズさんが見たのは、何処までも広がる乾きひび割れた大地と枯れ果てた木々だった。

 

「ここは?」

 

「魔王ゲルドの記憶の世界……そして故郷の姿だ。」

 

「フォルテ⁉︎シズさん⁉︎」

 

リムルの精神もこの世界に入ってきたようだ。

 

「なんで2人が⁉︎それにここは……。」

 

「落ち着けリムル。此処は魔王ゲルドの記憶の中だ。俺とシズさんは、俺の新しいスキルで直接魔王ゲルドの魂に侵入したんだ。」

 

フォルテがリムルに説明する。すると、少し離れた場所から子供の泣き声が聞こえてくる。

 

わあぁん。えぇぇん。ひっく…ひっく。わあぁぁん。

 

そこにいたのは痩せ細り、腹を空かせているオークの子供達だった。

この光景を見れば分かる。この枯れ果てた大地ではまともな食べ物がないことを。今もお腹を空かせ泣く子供達の姿にシズさんは辛く悲しい気持ちで見ているのが分かる。戦争で食べ物の大事さを知るシズさん……此処が記憶の中でなければ助けに行っただろう。

 

泣き続ける子供達。そんな子供達の前に2人の大人のオークが現れた。

1人が子供達に近寄る。

 

「腹が減ったのか。少し待っていなさい。」

 

ミシミシゴキッ!

 

そのオークは自分の片腕を引きちぎり子供達に与えた。

 

「さぁ食べなさい。」

 

子供達は必死にその腕を食べる。

 

「しっかり食べて大きくなるのだぞ。」

 

己の腕を与えたオーク。その顔には左右に赤い2本の傷があった。その者こそ、魔王ゲルドの過去の姿。

そんなゲルドに跪くもう一人は、フード被ってずっと側にいた側近のオークだった。

 

「王よ、もうおやめください。この大飢饉の中、王である貴方まで失っては我ら豚頭族(オーク)にはもはや絶望しかありません。」

 

「…一昨日生まれた子が今朝飢えて死んだ。昨日生まれた子はもう虫の息だ。…この身はいかに切り刻もうと再生するというのに……これがすでに絶望でなくて何だというのだ。」

 

ゲルドはそう言いながら千切ったはずの腕を触っていた。進化する前から高い再生能力を持っていたようだ。側近の話から、ゲルドは子供達の為にその身を犠牲にずっと与え続けていたようだ。だが、それでも多くの子供や赤子が飢えて死んだ。

どんなに自分を犠牲にしても未来ある子供達が死んでいくのを見続けなければならない。ゲルドの言う通り、それは絶望だった。

 

「王よ……。」

 

「森に入り食糧を探す。」

 

「!しかしジュラの森は暴風竜の加護を受けし場所…。」

 

「その暴風竜は封印されて久しい、少しばかりの恵みを。」

 

そうしてゲルドは1人でジュラの森を目指したが、自身も何も食べず、子供達にその身を与え続けたゲルドの体力は限界だった。

 

「腹が減った…何でもいい飯が食いたい。」

 

そして力尽き倒れたゲルドの前に現れたのがゲルミュッドだった。

 

「あの方は俺に食事と名を与え、そして豚頭帝(オークロード)の持つ飢餓者(ウエルモノ)について教えてくれた。」

 

フォルテ達の背後からゲルドの声が聞こえ振り返るとそこには彼等に背を向けて立つ魔王ゲルドがいた。その大きな背で一体どれだけ多くのものを背負ってきたのだろう。

 

豚頭帝(オークロード)となった俺が喰えば、飢餓者(ウエルモノ)の支配下にある者は死なない…飢える仲間達を救えるのだと。邪悪な企みの駒にされていたようだが、それに賭けるしかなかった。」

 

それが魔王ゲルドが豚頭帝(オークロード)となってまで喰らう道を選んだ理由…。

 

「だから俺は喰わなければならない。お前が何でも喰うスライムだとしても、俺は喰われるわけにはいかない。」

 

 

同胞達を…皆を飢えから救う為に、魔王ゲルドは飢える力を受け入れ今もただ同胞を救う為に飢えている。

 

「腐食の過程が無くなった分、喰い合いは俺に分がある…お前は負ける。」

 

「俺は他の魔物を喰い荒らした。ゲルミュッド様を喰った……同胞すら喰った。同胞は飢えている…俺は負けるわけにはいかない。」

 

 

 

 

現実では、魔王ゲルドは完全にリムルに取り込まれ徐々にその身体はリムルに喰われている。それでも魔王ゲルドは抗う己に残っている闇の妖気を飢餓者(ウエルモノ)で増幅させ無理矢理回復力を上げている。

 

「この世は弱肉強食…お前は負けたんだ。」

 

「俺は負けるわけにはいかない。俺が死んだら同胞が罪を背負う。俺は罪深くともよい。皆が飢えることのないように、俺がこの世の全ての飢えを引き受けるのだ!」

 

魔王ゲルドの闇が更に増大し一気に回復する……だがそれは一時的なもの……無理な回復に身体が耐えきれずゆっくりと崩壊を始めそのままリムルに喰われていく。

 

「それでもお前の負けだ。だが安心しろ、俺がお前の罪も全て喰ってやるから。」

 

「俺の罪を喰う?」

 

「ああ。お前だけじゃなく、お前の同胞全ての罪も喰ってやるよ。」

 

「同胞も含めて…罪を…フン。お前は欲張りだ。」

 

そうだな…俺は欲張りだよ。

 

 

その直後、リムルを中心にゲルドの記憶世界が塗り替えられていく。

その影響か、魔王ゲルドは進化前……本来のオークの王の姿に戻っていく。

本来の姿に戻ったゲルドは目の前のその光景に目を見開く。

 

「おっおぉ……。」

 

ゲルドの前に広がるのは青々とした木々に澄んだ水が流れる川、何処からか聞こえる子供達の笑い声。それはゲルドが見たかった自然あふれる世界だった。

その光景にゲルドは涙を流しながらリムルに言う。

 

「強欲な者よ……俺の罪を喰らう者よ。……感謝する。俺の飢えは…満たされた。」

 

ゲルドはそう言いながら光の粒子となって徐々に消えていく……そんなゲルドの前にフォルテが現れゲルドに語る。

 

「魔王ゲルド。やっと飢える力から解放されたな。」

 

「お前は……。」

 

「俺はお前を飢えから解放したリムルの仲間だ。ゲルドよ、リムルに喰われているお前の肉体は間もなく完全に消える……だが、お前の魂はまだ救える。」

 

「……それはどういう…。」

 

「俺のスキルには魂を保護する力がある。つまりお前の魂を今喰われている魔王ゲルドの肉体から切り離し、お前を死から救える。」

 

その話にゲルドは目を見開く。

 

「お前はゲルミュッドに利用されているのを理解した上で飢える力を得た。それが同胞達や仲間を…子供達を救う為というお前の強い覚悟を俺は知った……お前の魂に触れた時、俺はお前はまだ死ぬべきではないと思った。だからこそ俺はお前を死から救いたい。俺の力なら新しい物質体(マテリアル・ボディー)も生み出せる。」

 

その話をゲルドはただ聞いていた。自分を……この罪深き自分を救いたいと言うフォルテの目を見て本気なのだと伝わったからだ。

 

「貴方の申し出はありがたい……だが俺は数えきれない程の罪を重ねた。そんな俺が助かるなど許されることではない……。」

 

「…死ぬことだけが償う道じゃない。」

 

俺の言葉にゲルドは顔を上げる。

 

「それに、魔王ゲルドとしてのお前はいなくなるんだ。これから生まれ変わって償う事は悪いことじゃないはずだろ。」

 

「しかし……。」

 

自分が許せないのかゲルドは返答できない。そんなゲルドの肩にシズの温かい手が触れる。

 

「自分が許せない気持ちはわかるよ。私も昔友達を殺めてしまった。そんな後悔の中で生きてきた私を救ってくれた人がいたの。その人と別れた後、私はその力で皆の為に戦ってきた。そしてちょっと前まで学校の先生もしてたの、今は訳あってあの子達と別れてこの森に来たの。私自分の寿命が尽きそうだった……そんな私をフォルテ君は救ってくれたの。だから貴方も、生きて償えるならその道を捨てないで欲しい。」

 

シズの優しい言葉が、ゲルドの心を癒していく。そんなシズの中からセレナードも現れ、ゲルドの頬を優しく撫でる

 

『ゲルド。貴方は確かに多くの罪を犯しました…ですが、それは私利私欲ではなく同胞を…仲間達を助けたいという貴方の覚悟からなったこと。フォルテの言う通り、今の貴方は消えこれから生まれ変わって罪を償う事は、決して許されないことではありません。』

 

セレナードの光輝く笑みを見たゲルドはセレナードに神の姿を見た。

 

「まったく…フォルテお前の方が俺より欲張りじゃないか。俺もいいと思うぞ。お前を喰ったのは、それしか倒す方法がなかったからだ。でも、フォルテの力で生まれ変われるなら一緒にこの景色を現実にしないか。」

 

「この…景色を。」

 

「そうだゲルド。リムルと俺は皆が楽しく暮らせる街を作っている。俺達と一緒にオークの皆が楽しく笑い合える街を作らないか。」

 

俺はそう言いながらゲルドに手を差し伸べる。

 

「…本当に俺は許されるのか……同胞達と救われ笑い合えるのか…。」

 

「あぁ。俺達でそうするんだ。」

 

「…ありがとう…俺を罪から救う者よ。」

 

ゲルドはゆっくりとフォルテの手を取る。

 

…電脳之神(デューオ)始めるぞ。」

 

《了解した。能力吸収(ゲットアビリティプログラム)による魔王ゲルドの魂の保護を開始する。》

 

フォルテの手を取っていたゲルドが完全に粒子となって彼の手に収まり、そして彼等がいた記憶の世界は眩い光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

現実では、リムルに完全に取り込まれた魔王ゲルドが捕食され続けて、骨が剥き出しとなってきていた。

 

「フォルテ様!早く脱出を!」

 

「シズさん急ぐっす!」

 

シオンとゴブタは魔王ゲルドの中に光となって入ったフォルテとシズの為に声を上げる。

 

「フォルテ様…シズ殿…。」

 

ベニマルも心配しているが、2人を信じて待っていた。

 

やがて、魔王ゲルドの肉体が完全に骨だけになろうとしたその時!魔王ゲルドの宝玉から外へと光が飛び出した。

皆が光の先に顔を向けると、光は上空で型をなし消えるとそこにはフォルテとシズの2人が現れた。

 

「フォルテ様!」

 

「シズさん!無事でよかったすよ!」

 

フォルテとシズは目を開けると、皆が2人を見て安心していた。2人はリムルに目を向けると、魔王ゲルドの身体が完全に砕けリムルに吸収された。

 

豚頭魔王(オーク・ディザスター)物質体(マテリアル・ボディー)消失。」

 

朝日が登り日の光がリムルを照らす。リムルはスライムの身体を捻り弾けると中から人間体のリムルが姿を現す。

 

「魔王ゲルド……今は安らかに眠れ。」

 

ゆっくりと降りるリムルの左右にフォルテとシズが並ぶ。

そして、フォルテがゆっくりと右手を開くと、そこには光る一枚のチップがあった。そのチップに描かれているのはオーク達の為に自分を犠牲にして全ての罪を背負おうとした魔王ゲルドが描かれていた。それこそが魔王ゲルドの魂。

 

「後でお前の新たな肉体を作り出す。」

 

「今はゆっくりと休んでいて。」

 

フォルテ達が降り立つと同時に蜥蜴人族(リザードマン)達とゴブタ達が勝利の声を上げる!それと逆に豚頭族(オーク)達は魔王ゲルドの消失と飢餓者(ウエルモノ)の影響が消え悲しみの声を上げる。その中で、1人フードを被った側近のオークは顔をしたに下げ、涙を流した。

 

「……王よ。やっと…解放されたのですね…。」

 

フォルテ達の無事を確認して我慢しきれなかったシオンがリムルとフォルテをまとめて抱きしめる。

 

二つの柔らかい感触が伝わるが息が苦しい……ふと横を見ると、シズさんが笑みを浮かべているが…何か恐ろしいものを感じる。

 

なんとかシオンから離れ、スライムに戻ったリムルがシオンに抱えられた直後に近くで風の渦が発生し、中からトレイニーが現れた。

 

「流石はリムル様とフォルテ様。見事約束を果たして下さいましたね。」

 

「いいタイミングだなトレイニーさん。」

 

「おっおい⁉︎あれは樹妖精(ドライアド)様じゃないか⁉︎」

 

「え⁉︎」

 

トレイニーの登場にガビル達に連れて来られたゴブリン達や蜥蜴人族(リザードマン)豚頭族(オーク)達は驚く。そんな中、トレイニーの声が辺りに響き渡る。

 

「森の管理者の権限において、事態の収束に向けた話し合いを行います!日時は明日早朝、場所はここより少し南西の森よりの広場。参加を希望する種族は一族の意見をまとめ代表を選んでおくように以上です。」

 

戦後の話し合いはどの世界でも大変だ。ここはトレイニーに任せよう。

 

「それから、異論はないと思いますが…議長はリムル=テンペストとその補佐はフォルテ=テンペストとします!」

 

「「え⁉︎」」

 

トレイニーによって議長とその補佐にされたリムルと俺。明日からまた大変だ。

そんな気分を少しでも変えようと、俺とリムル達は湿地帯を見渡せる丘のうちにいた。

 

「まぁ話し合いがまだあるけど、一応終わったな。」

 

「そうだな。」

 

「ベニマル。豚頭帝(オークロード)を討ち滅ぼしたら自由にしてもらってもいいという約束だ。」

 

「皆今までご苦労だった。ありがとう。」 

 

俺達がそう言うと、ベニマルは決意した表情で俺達に言う。

 

「リムル様、フォルテ様、お願いがございます。」

 

「なんだ?」

 

「何卒我らの忠誠をお受け取りください。我ら一同、これからもリムル様とフォルテ様にお仕えいたします。」

 

「…いいのか。」

 

「異論はござらん。」

 

「貴方様達に会えて、自分達は幸運であります。」

 

シオンはリムルに抱きつく。

 

「私はリムル様の秘書権護衛ですよ。絶対に離れませんからね!」

 

「我らの命果てるまで!」

 

「皆……これからもよろしくな。」

 

こうしてベニマル達はフォルテ達の正式な仲間となった。

 

 

 

 




フォルテが闇の妖気を吸って豚頭帝を弱体化。そしてその妖気が後にフォルテの力となる。
そしてゲルドを救うフォルテ。全てを罪を背負うその姿はまさに王だったゲルドに豚頭族の未来を。
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