訓練場にてフォルテと剣を交える者がいた。
「流石シズさん! ここまでの剣捌きは見事だ!」
「ありがとう! ハクロウさんとの稽古のおかげもあるけど、なによりこうしてフォルテ君が稽古の相手をしてくれるから私も頑張るよ!」
シズさんは英雄としてハクロウの耳にも入っていた人。ハクロウはシズさんと手合わせした後、シズさんにも稽古をつけてくれていた。
ハクロウの剣技は誰もが知る凄まじいものだ。そんなハクロウは稽古を受けて続けていたシズさんの剣の腕はみるみる上達して、今ではハクロウと渡り合える程までとなった。
そして、ハクロウはゴブタ達の稽古に集中する日が多く、こうして俺がシズさんの稽古の相手をする日がある。
それに最近のシズさんにはまた新しい力を手にしたそれは……。
「それじゃあ進化した彼の力、見せてもらいましょうか。」
「うん。さぁ出て来て『サン』!」
シズさんの声に応えるように、シズさんの身体から炎の柱が上がる。それは、前のような荒れ狂ったような炎ではなく、暖かい金色の炎。
炎の中から現れたのはイフリートだが、炎と髪が金色に輝き全身が太陽のような温かい炎に包まれている。額に角が生え腕と肘に赤い宝玉更に首元には赤い炎のスカーフが巻かれているその姿は、まるで『ボクらの太陽』の主人公の形態の一つである『ソルジャンゴ』そのものだった。
シズさんが自分の中のイフリートに名を付けようと考えていた事を知った俺とリムルは一緒に考え、太陽を意味する『サン』でどう?との案が出たところ、シズさんがそれにしようと気に入ったので、3人で一緒に名を付けた。
その結果、
炎の力は今までとは比べ物にならないくらい強力になっている。
その温度は最高で6000度を超える程にまで上昇させることが可能となった。
そんなサンの炎が俺に迫る。 俺は躱し続けるが、炎がぶつかった大地は熱に耐え切れずに溶けていく。
「この炎……本当に太陽並みだな。本当にサンも強くなったな。」
「これもリムル様とフォルテ様 そしてシズのおかげです」
俺がサンの炎に感心しているとサンが答えた。サンがまだイフリートだった頃、ずっとシズさんとセレナードが話しかけていた。その結果、2人の心に触れたサンに自我がついに芽生えた。
自我が芽生えてからは、シズとセレナードと何度も話をし信頼し合える存在となった。しっかり者で何事にも真面目に取り組み、言葉も丁寧で敬語もしっかりとする。その姿を見たリムルは俺が働いていた会社の上司なんかより立派だなぁと言わせるほどだった。
「サンよ、今日はお前の太陽の守護者としての力も見せてもらうぞ!」
「はい!」
サンは自身の拳に炎を纏い向かって来る。 振われる拳の炎が球体となって迫る。 名付けるなら『
いや、これはやばい‼︎ 他の魔物や人間が受けたら身体が消し炭になるどころか消滅する‼︎
躱し続けるなか、シズさんも隙を見て斬りかかってくる。 息の合った見事な連携…⋯本当にシズさんとサンが息を合わせればこれだけ強いんだな…!
変質者の力と精霊之心で更に力を高められるから、この先のシズさんの成長も期待が高まる。
それからしばらく稽古を続けた俺とシズさんは稽古を終え、セレナードが入れてくれた水を飲んでいる。
「ありがとうセレナード」
「たいしたことではありません。むしろフォルテがいつもシズの稽古に付き合ってくれるので感謝しています」
「そうか。それにしても、トリルだけでなくシズさんやサンの成長も凄いな。
精霊と心通わせればこれだけ強くなるんだと身をもって知ったよ。」
「はい。人と精霊……まるで
「そうだなぁ。でも、シズさんの
「そう見えますか?」
「ああ。シズさんにとってもセレナードは大切な存在だと俺はそう感じるし思っているよ。」
「そう言われると嬉しいですねぇ。……私自身もフォルテのことを大切な存在だと思ってますよ」
「ん? 何か言ったかセレナード?」
「いいえ。それよりこの後、今度は私の特訓相手をしてくれませんか?」
「お! それはいい。裏の王の手合わせとは是非とも願いたいな。」
そして俺はセレナードと手合わせを開始する。その様子をシズさんは優しい笑顔で見守っていた。
手合わせを終えた俺はシズさんと一緒にリムルの元に向かっていた。
「やはりセレナードは強いなぁ。全ての攻撃を跳ね返されるから下手な攻撃ができない」
「そう言うフォルテ君だって、セレナードと同じ能力で跳ね返すからお互いイタチごっこ状態だったよ」
「…返す言葉がない。セレナードの反射を破ろうと威力を上げると本当に被害が出てしまうからなぁ…。本当に何処かに被害が出ない、良い訓練場となる場所を探そうか…。」
俺はそう考えながらリムルが居る執務室に入ると。
「畑!やっるぞー‼︎」
リムルが窓の外を見ながら大きな声を上げそう叫んでいた。
「……何ごとだ?」
翌日、俺達は畑に集まっていた。そして、リムルが皆に説明する。
「古来より、飯の美味い土地は良い土地だど言う。うちも是非そうありたい。まぁ兎も角、今日は皆も力を貸してくれ!」
「「「「分かりました‼︎」」」」
「街で売ってるような野菜も、俺達で作れるのかなぁ?」
「お手伝い楽しそう!」
「いっちょ、みんなで頑張ろうぜ!」
「腹が減ってはなんとやらと言いますからなぁ」
「子供達を飢えさせたくはないですな!」
「その通りだ息子よ」
「そうだろそうだろ! あっははははは!」
「わかります! 美味しい物いっぱい食べたいですよね。」
そう言うシオンの持つ鍋からはこの世のものとは思えない叫びと紫の湯気?が上がっていた。…シオンよ、また勝手に調理したな…。
「じゃあ、植え付け開始だ‼︎」
「「「「おー‼︎」」」」
こうして畑での植え付けが始まった。
季節柄、ちょうど街の自給率向上の足掛かりとして畑を沢山耕す事になっていた。そんな訳で今日は戦闘訓練を休んで畑仕事だ。
鍬を握り地面に振り下ろし耕していく。
鍬を使うなんて学生時代の農業体験以来だが、この身体だから疲れを感じず耕し続ける事ができた。
そして一反耕し終えた。
「こんな感じでいいか」
「フォルテ君お疲れ様」
そこにお茶を持ったシズさんとアイリスが来てくれた。
「ありがとうシズさん、アイリス。」
「もう一反終わらせたんだ、凄いね。」
「まだ一反だけだ。まだまだ耕す畑はあるからな」
「フォルテ君は真面目だね」
「本当にフォルテは良く頑張っているよ」
「そう言われると嬉しいな。そういえば、今日の2人は畑仕事だからもんぺ姿なんだな」
畑仕事は土や泥で汚れる為、流石の俺も前世で着ていたような作業服を着ているが、シズさん達は昔を感じさせるもんぺ姿となっている。
「うん。シュナ達が作ってくれたの」
「どうかな…」
「うん似合っているよ2人とも」
そう答えると2人は笑顔となる。
「うおおぉぉぉぉ‼︎」
突如悲しみが混じったような叫び声が聞こえ振り返ると、ゴブタが涙を流しながら力強く鍬を振るって畑を耕していた。
「凄いぞゴブタ!」
「硬い地面があっという間に耕されて耕されて…」
「「まるで鍬が体の一部みたいだ!」」
「うおおぉぉぉ‼︎ 自分にはこれがお似合いってことすっかー!?」
泣きながら高速で耕していくゴブタ…。
「なんかおら間違ってただか?」
「いや何があった」
リムルに話を聞けば、以前のガビルとの一騎打ちの御褒美である武器が何故か鍬になっていたと。
「……それはゴブタは泣くな」
「ゴブタ君に悪い事してしまっただよ」
「クロベエ。悪いがちゃんとした武器をまた作ってくれるか? ゴブタには後で伝えておく。」
「それは構わんだべが、今言わないんだべか?」
「…今は畑仕事に感情をぶつけているからな。仕事が捗るから後にしておいた方がいい。」
「確かに…ゴブタがあれだけ働く姿は滅多にないしな。」
リムルも納得してくれた。その間にも、ゴブタは泣きながら畑を耕し続けた。
ゴブタの活躍で畑も大半耕せた。俺は次にリムルと一緒に田んぼで田植えを始めた。苗を3〜4本取って、親指と人差し指、中指でつまんで張ってある糸の間に一定の間隔で植えていく。…知識としては知っていたがやってみると中々難しい…。まあ、この身体だから疲れ知らずで動けるが。
タイミングを合わせて植え続ける俺とリムル。そんな時、リムルが俺を見て手を止めた。
「どうしたリムル」
「いや……今更ながらフォルテがこうして畑を耕したり田植えをしているの見てたらなんかゲームとかでのイメージが無くなるなぁと思って…」
……確かに、今の俺はフォルテの姿で作業服を着て農作業をしている。
前世でのゲームや漫画にアニメなど、フォルテを知る者であるリムルからすればある意味凄い光景には見えるだろう。立場が違えば俺もそう感じていただろう。
「なんかイメージを壊したか?」
「いや⁉︎そう言う意味じゃなくてただ……人生…いやスライム生でこんな光景見るとはなぁと思って…」
「ふっ、それを言えば俺は異世界でそのフォルテに転生したんだ。俺自身の人生…こんな電脳生を送るとは思わなかったよ」
「確かに」
その言った後、お互いにこんな生を新たに受けたことを思い返してなんだか可笑しくなってきた。
「生まれ変わってフォルテになってこうして街の為仲間の為に畑を耕す……フォルテを知るロックマンとか見たらどんな反応するか」
「おいおい、それは当然口開けて唖然とするんじゃないか?」
「そうだな…」
「「ふっはははははは!」」
リムルと俺は久しぶりに心の底から笑った。
「笑ったらなんかスッキリしたな」
「ああ」
「お互いこの大切な仲間達との生活を大事にしないとな」
「もちろんだ。その為にも俺はもっと強くなるさ」
「頼もしいな。でもまずはこの田植えを終わらせようぜ」
「ああ!」
こうしてお互いに心がスッキリとなり田植えを再開し続けた。昔、祖母に農作業していると気持ちが落ち着いたり気分が良くなると言われたことがあるが、その意味が今ならわかる気がする。
田植えを続けて二反終わらせたちょうどその時、ベニマル達も田植えを終わらせようだ。
「ぐうぅぅぅ…! やはりこの作業は腰にきますね…。」
腰を押さえながらベニマルが言葉を洩らす。長い時間の中腰作業だったから仕方ない。
「ベニマルお疲れ様」
「良く頑張ったな」
「はい…。…ところで、何故リムル様とフォルテ様は平気なんですか?」
「いや…俺スライムだから腰とかないぞ?」
「俺は終わった後に
「……リムル様は納得ですが、フォルテ様はちょっとずるくないですか?」
「ベニマルも回復してやろうと思ったがいらないか…」
「すみません、お願いします!」
ベニマルを回復した後、皆の様子を一通り見回ってからリムルとゴブタが向かった春野菜の畑に向かう。
そこに広がるのは、見事に育った春野菜が広がり………何故かズタボロになったゴブタがモデルであろう案山子とまるで燃え尽きたように白くなって項垂れているゴブタの姿があった。
「何があったリムル」
「ああフォルテ、実はな……。」
リムルから事情を聞いた。
「成る程な…。丁度良い、そろそろ新たな仲間を生み出そうと考えていたんだが、リリナさんのパートナーにどうだ?」
「おお、良いねぇ!」
「私の為にそんな⁉︎」
「リリナさんがこの街での生産管理担当で良く働いてくれているのはこの春野菜達が証明してくれている。これからもリリナさんには期待しているんだ。」
「フォルテ様…、ありがとうございます!」
「じゃあやるか、『
俺は新たな
「さぁ目覚めろ、『ウッドマン』。」
俺が名を呼ぶと、彼はその目を開いた。
「…フォルテ様、生み出してくださりありがとうございます。」
「うん。ウッドマン、今日から此処にいるリリナさんがお前のパートナーだ。生産管理と農業面で手伝ってやってくれ。」
「わかった」
その後、リリナさんとウッドマンは協力して烏対策の罠を設置したりしながら仕事に励んでくれた。
畑のとある場所で一緒懸命に荷物運びや手伝いをする2人がいた。
「猪八戒さんとゲルドさん、すみませんがこちらに水をお願いします」
「おう!」
「待ってろ、すぐに運ぶ。」
真面目な2人はテキパキと動く。その姿…ゴブタに見習って欲しいところだ。
「おーい猪八戒、ゲルド! せっかくだから2人も植えてみろよ!」
「いえ…俺は運び役で」
「息子よ。リムル様がああ言ってくださるのだやろう」
「父王…はい」
猪八戒とゲルドは苗を取り、耕した畑に植えていく。
「そうそう、等間隔にな。苗を潰すなよ。」
「2人とも中々上手だな」
「ありがとうございます」
「これでよし。夏には実がいっぱい食えるぞ」
「………実が」
「自然の恵み…」
苗を優しい瞳で見守る2人に優しい風が吹き苗が風で揺れる。
「……見に来てもいいでしょうか…たまに」
「成長を見守りたいので…」
「おう」
「皆で見に行こう」
皆が頑張って畑仕事を続ける中、シュナとハルナが昼食を持って来てくれたので皆で昼食にすることにした。
「ずっと中腰は流石に堪えるのう」
「何言ってるだ、誰よりも正確で早かっただぁ」
「ぬほほほ…、年の功よ。」
ハクロウとクロベエが話す中、ベニマルは子供達に昼食を渡していると1人の子供がベニマルに質問をした。
「ベニマル様! どうしたらベニマル様みたいに強くなれますか!」
「そうだな、まずは好き嫌いなんかせず何でも良く食べることだな」
そういいなが近くの手頃な石を手に取る。
「それから強い身体をつくるんだ」
そう言いながら手にした石を握り砕く。 それを見た子供達はベニマルに尊敬の眼差しを向ける。
「「「うぉぉおっ!! 分かりました、ベニマル様! ありがとうございます!!」」」
「おう、午後も頑張ろうな!」
「「「はーい!」」」
「しっかり食って強くなれよちびっ子共」
そう言って子供達を見送るベニマル。
「お兄様もどうぞ」
「ああ…っ⁉︎」
シュナから昼食を受け取ったベニマルは味噌汁を見て汗を流して眉を顰めた。
「いや…だからちょっと人参避けてくれって…。」
「あら、好き嫌いしてたら強くなれませんよ~? はいどうぞ。」
どうやらベニマルは人参が苦手らしい…。以外だが、子供達にああ言って自分が避けるのは良くないな。
「ベニマル。なんならこれを一緒に食うか?」
そう言いながらベニマルに見せたのは今朝にシオンが作った味噌汁?らしいもの…今でも湯気が立ち、鍋から叫び声が聞こえる。
それを見たベニマルは一瞬で顔を青褪めた。
「いえ……人参食べます」
そう言って小走りでその場を去った。こんな日くらいはいいだろうが、せめて人参は食えよ。
「あの…フォルテ様は大丈夫なんですか?」
シュナが心配そうな表情で聞いてくる。
「心配するな。それにせっかくシオンが頑張って作ったんだ。食べないと可哀想だ。」
「ならせめてこのおにぎりを」
「ありがとうシュナ」
シュナからおにぎりを受け取り、シオンの味噌汁?を完食しておにぎりを食べてる中、改めて自分の周りを見た。
苗を大切に植える猪八戒とゲルド。泣きながら鍬を振るうゴブタ…何故かその様子を木の影から見ているトレイニーさん。真面目に田んぼで田植えをしているガビル達。
みんなで育てる命を…自然の豊かさを見て感じた。
「さぁてと、俺ももうひと頑張りするか」
こんな日常がずっと続けばいいなと俺は思った。
そして、午後も皆の頑張りにより無事に植え付けが完了した。
「それじゃあ、無事植え付けの終了を祝って…乾杯!お疲れ〜!」
皆で植え付け完了の打ち上げを始めた。
「うっん…うっん…ぷっはー! 美味しい!」
「おっ、ロールキャベツ。」
「秋には無事に稲がなるといいなぁ」
「お疲れ様。良い働きぶりだったな2人共」
「貴殿もな」
「実に良い仕事だった」
「我輩の田植えでの手捌きはいいかでしたかな」
「やっははは、いや~実に見事でしたな。」
「うわー美味そうな匂い! たまんねぇ〜。」
「鍬捌きなら! 自分に任せて欲しいすね!」
「よっ、ゴブタ。」
皆それぞれに飲んで楽しむ中、俺は新たな仲間をトリル達に紹介する。
「今日からリリナさんと共に生産管理と農業面の手伝いをするウッドマンだ」
「皆、よろしく頼む。」
「よろしくねウッドマン!」
「何かあれば遠慮なく聞いてくれて構わない」
「たまにはワシの訓練を受けてもいいぞ」
「拙者達にできる事があればいつでも言ってくれ」
その後は、トリル達に今日の警備についての報告を聞いた。流石に皆で畑仕事をすると街の警備が手薄になるので、カーネル達に今日の警備を頼んでいた。
トリルには畑仕事してもらおうと誘ったのだが、カーネルと一緒に警備をしながら今日の訓練をしてもらう約束をしていたようなので、秋の収穫の時は一緒に畑に行く事にした。
それともう一つ、トリルとアイリスの頼みで猪八戒の相棒のガッツマン(ゾアノ)の名をゾアノガッツマンに変えた。二人からすれば、ガッツマンと言ったらデカオのガッツマンをどうしても思い浮かべてしまうので、どうも呼び辛かったようだ。
「それで、今日の訓練の成果はあったか?」
「うん! カーネルソウルでの戦い方が大分わかってきたよ!」
「それは凄いじゃないか。この調子なら秋の収穫は一緒にできそうだな。」
トリルと話ながらリムルの元に向かうと、トレイニーさんがリムルから帽子を取ってスコップを片手に握っていた。
「ですから…待っていたんですよ私…お・さ・そ・い。」
え…リムル誘わなかったのか⁉︎ 自分から声をかけておくって言っていたのに…。
「
あぁ…だからあそこにいたのか…。
「あぁ、いや…収穫時には声かけますから!」
「リムル…だから俺から声をかけるって言ったんだ。」
「フォルテ! いや…色々準備に忙しくて…」
「仕事がなくなって休みもらったのに落ち着かなかくて畑仕事で喜んでいたのにか?」
「うっ…!」
「あー泣かせた泣かせた」
タイミング良くゴブタの言葉が余計にリムルの良心を締め付ける。
「はぁ…トレイニーさん、本当にすみません。いつもこのジュラで森を管理してくれているのに。」
「フォルテ様…」
「お詫びと言ってはなんですが、トレイニーさんにも俺の新たな仲間をパートナーにしてもらってもいいでしょうか」
「まぁ。それはなんとも嬉しい事です」
こうしてなんとかトレイニーさんの機嫌を直し、無事に畑仕事が終わった。
そして、あの打ち上げの後にすぐに梅雨が始まった。異世界にも梅雨があることはシズさんから聞いていた。
「今日も雨っすか、毎日これじゃあ気が滅入るっすね。」
「あらあらそんなこと言わないでください。雨は必要なんです。天からの恵みを大地がたっぷりと受け止めて、緑が繁り虫達が増え小動物が繁殖しまたそれが土に…そうして森は着々と大きくなっていくのですから。」
それが自然の摂理であり生命の源…トレイニーさんの言葉に皆が納得しているなか、まったく分からずとんでもないことを口走るゴブタ。
「へぇ〜だからちょっと太ったんすね」
その直後に土砂降りの雨が降り出した。
「おい、早く窓閉めろ!」
「はいっす!」
窓を閉めた直後、ゴブタが謎の蔦に締め上げられる。
「女性に対してあの発言は許せるものではない。フォルテ様、トレイニー殿のパートナーである私がゴブタ殿にきちんとした礼儀を教えたいのですがよろしいでしょうか」
そこにいたのは、花を模した頭部に美しい顔立ちにスマートかつ洗練された身体に薔薇の棘がある蔦を背中から二本生やした者がいた。
そう、トレイニーさんのパートナーにと新たに生み出したプラントマンだ。
「……許可する」
「⁉︎ モガモガ…!」
俺の言葉にゴブタは血相を変えるが、蔦に巻かれ口も塞がっているため身動きがとれない。
「うふふ、プラントマン頼みましたよ。」
「ええお任せを、トレイニー殿。」
「トレイニーでいいですよ」
そうしてプラントマンに隣の部屋へと引き摺られるゴブタ。
必死に争い周りに助けを求めるように動くが、明らかにゴブタが悪いため誰も助けない。
そして止めとばかりにシズさんが笑顔で言った。
「ゴブタ君。私、前にも言ったよね…。」
そのシズさんの笑顔と声に白くなったゴブタはそのまま、隣の部屋へと消えていった。
筋はいいが、本当に何処か抜けているゴブタ。そんなゴブタに呆れながら、俺は窓から今だに強く降り続けている雨の様子を眺めるのであった。
ゴブタは本当に一言余計なことを言うのがダメなんですよね。