収穫から数日が経過。
今日も朝からミリムがご機嫌に朝食を食べている。
「んー美味ーなのだ!この街の食べ物はやっぱり全部好きなのだ。」
「そう言ってくれるのはやはり嬉しいな。」
ミリムと一緒に朝食を食べるフォルテ。そんな俺達の光景を見てくれている朱菜達。
「なぁフォルテ。リムルはどこなのだ?」
「ん?リムルは先に食べて仕事に向かったぞ。」
リムルはベスターの研究室に行っている。ベスターが遂に自身の研究成果としてフルポーションを完成させたそうだ。
リムルはそれを確認しに向かったのだが、ミリムを連れて行くと研究室が大惨事になりかねない。
そこで今日は俺がミリムの相手をすることにした。…まぁ基本ずっといるから変わらないのだが。
「そうだ。ミリム朝食を食べ終えたら一緒に制作工房に行ってみないか?」
「制作工房?」
「ああ。可愛い服などがいっぱいあるぞ。」
ミリムを連れて制作工房に来た俺。
「おお〜〜〜〜〜〜っ凄いのだ!服だらけなのだ!」
俺とリムルの記憶から引き出した様々なデザインを朱菜が見事に再現してくれたのだ。
「どうだミリム。」
「これ全部着てみていいのか!」
「ああ。気に入った服があればミリムにやるよ。」
「わぁ〜!」
「ミリム様これなんてどうでしょう?」
「ミリムちゃんこの服はどうかな?」
「これなんかも可愛いと思う。」
朱菜、シズさん、アイリスがそれぞれいろんな服をミリムに勧めてミリムは着せ替え人形の用に色んな服を着せられていく。
ドレスにワンピース…それからチャイナ服など様々な服を着ていくミリム。
「はぁ〜可愛いですミリム様。」
「うん。とっても似合ってるよ。」
「素敵です。」
「そうか!なぁフォルテはどうだ?」
「ああ、よく似合っている。可愛いぞ。」
それを聞いてミリムはより機嫌が良くなり笑顔を見せる……なんか本当に可愛いな。
「わぁ!ミリム可愛いです!」
そんな時、シンシヤも工房にやって来た。
「おお!シンシヤも来たのだ。一緒に色んな服を着るのだ!」
「はーい!」
シンシヤを加えて楽しい着せ替えを続ける女子達……異世界でも本当、女性は可愛いものや服には時間をかけるよな。
それから充分服選びを楽しんだミリムとシンシヤを連れて街を散歩に出かけた。
「うむ!色んな服を着れて楽しかったのだ!」
「はい!楽しかったです!」
「それは良かった。」
かなりの時間を工房で過ごした。そろそろリムルも戻ってくる頃だろうと思っていると、街の一角に皆が何かを見に集まっていた。
「なんだ?」
「行ってみるのだ。」
人集りから覗き込むと、リグルドの前に複数の獣人らしき魔人達がいた。
その魔人達のリーダーらしき男が声を上げる。
「俺は魔王カリオン様の三獣士。黒豹牙フォビオだ。獣王戦士団の中でも最強の戦士よ。」
別の魔王の配下!そんな奴が何故この広場に。
フォビオは街を見渡しながらリグルドに言う。
「ここはいい街だな、獣王様が支配するに相応しい。そう思わんか?」
「ご冗談を…。」
そうリグルドが答えた瞬間、フォビオの炎を纏いし拳がリグルドの顔面に迫る。
誰もが殴られる…そう思った瞬間
ガシィ!
リグルドの顔面ギリギリでその拳を受け止めたフォルテだった。
「お前…何の真似だ?」
「なっ!貴様⁉︎」
自分の拳が止められた事に驚き一旦距離を取ろうとしたが。
(うっ…動かない!)
止められた拳を強く握り締められ動くことが出来ずにいた。
フォルテもいきなりリグルドを攻撃された事に怒り…フォビオを睨むが、自分より強い怒りのオーラを背後から感じ手を離してやった。
いきなり離されよろめきながらフォルテを睨むフォビオ。
「お前…何者だ!」
「俺のことより自分の身の心配をした方がいいぞ。」
俺がそう言いながら後ろを見る。それに釣られてフォビオも俺の見る先に眼を向けると、集まっている街の住人達の中から凄まじい怒りのオーラを放っているミリムの姿が。
「なぁ!魔王ミリム⁉︎」
ミリムの姿に驚くフォビオ
ミリムは我慢しながら俺を見る。……分かったよミリム。
「死なないように頼む。」
俺がそう言った瞬間、ミリムは凄まじい勢いでフォビオに向かっていく。
「くっ!
「マブダチのフォルテとその子分に何するのだ!」
フォビオが何か必殺技を出したが、ミリムの覇気により上空に巻き上げられミリムの一撃で沈んだ。
一瞬の出来事にフォビオの配下達は声も出ない状態の中、シンシヤが無邪気に笑いながらミリムの元に。
「ミリム様凄いです!」
「うむ!当然なのだ!」
倒れているフォビオを見る……うん。泡吹いてはいるが生きてはいるな。
「ちゃんと生きているようだし、ミリムはだいぶ手加減ができるようになったな。」
「それもフォルテのお陰なのだ。」
ミリムに俺の特訓をしてもらう代わりに、俺はある程度ミリムに力の加減を覚えてもらう為に色々と説明と手加減の練習に付き合っていたのだ。
「それに俺が許可するまでよく我慢してくれたありがとうミリム。」
俺がそう言うとミリムは嬉しそうな笑みを浮かべた。
そんな俺達の元に、騒ぎを気付いてリムルが駆け付けて来た。
「フォルテ!…この状況は一体。」
「リムル。俺が説明する。」
ことの事態を説明。
「なるほどな。…フォルテお前ミリムに甘くないか?」
「いや今回は向こうがいきなり手を出したのが悪い。俺が止めなかったらリグルドは大怪我していた。…それに俺達の為にミリムは怒ってくれた。」
「そうだよパパ!ミリム様は悪くないです!」
「シンシヤ……はぁ。分かったよ、今回はミリムにお咎め無しな。」
「済まないなリムル。」
その後、昼食にサンドイッチを食べるミリム。その中で意識が戻ったフォビオと話をすることにした。
改めてフォビオを見る……ミリムに一撃で倒されはしたが、実力はうちの紅丸以上はある。本人自身三獣士と名乗っていたしな。
「それで、君達は何しに来たんだ?」
「フン!下等なスライム風情に答える義理はない。」
リムルを侮辱する発言に紅丸達がザワつく。
「落ち着けお前達。」
「はっ…。」
俺が鎮め紅丸は答える。
「はっ!こんな下等な魔物に従うのか?雑魚ばかりだと大変だな!」
「下等と言うが俺やフォルテの方がお前より強いぞ。」
「相手の実力も見抜けないのによく威張れるな。」
リムルと俺の発言に対しフォビオは鋭い視線を向ける。
「言葉には気をつけろ。」
「そもそも先に手を出したのはそっちだ。お前の態度次第では、今すぐ俺達は敵対関係になる。」
「このジュラの大森林全てを敵に回す判断をその魔王カリオンではなくお前が下すのか?」
「…ちっスライムと餓鬼風情が吹かしやがって…。ミリム様に気に入られているからって調子にのるなよ!」
「おいお前!私の友達に舐めた口聞くじゃないか。」
「ミリム。すまないが今は静かに待っていてくれ。晩飯にうまいのご馳走するから。」
「おぉ!分かったのだ。」
「さて、なんなら
「俺達がこの森の三割を支配しているのは確かな事実だ。」
「そちらがその気なら戦争もやむなしだと考えている。」
「故に、よく考えて返事をするんだな。」
「…フォビオ様。」
部下の1人がフォビオに声をかけるか。
「チィ!謎の魔人達を配下へとスカウトするように、カリオン様に命じられてやって来たんだ。」
「なるほど…それは俺達の事のようだな。」
やはりあの戦いをミリム以外の魔王も見ていたと言う訳か。……何やらまたミリムの怒りのオーラを感じリムルと同時に振り返る……ミリムの大人しくサンドイッチを食べていた。再びフォビオに顔を向ける俺達。
「まぁ話はわかった。」
「ならお前達もう帰っていいぞ。」
「え?」
俺達の言葉に予想外とばかり少し驚くフォビオ。紅丸達も同じだった。
「リムル様?フォルテ様?」
「よろしいのですか?」
「紅丸、紫苑。フォビオは魔王カリオンの配下…しかも最強の戦士の1人なんだ、殺したりしたらそれはこちらから魔王カリオンに宣戦布告するようなものだ。」
「フォルテの言う通りだ。お前達も魔王カリオンに伝えてくれ。日を改めて連絡をくれれば交渉には応じると。」
しばらくこちらを見つめた後、フォビオは静かに立ち上がり部屋から出て行く。その際、フォルテとミリムをもう一度だけ睨みながら見た。
「……きっと後悔させてやる。」
その言って立ち去るフォビオ……あの様子では伝言を伝えるか心配だな。
さて俺達はミリムに魔王カリオンについて聞かないとな。
リムルは再び人化してミリムに問う。
「なぁミリム。魔王カリオンについて話が聞きたいんだが。」
「それはリムルやフォルテにも教えられないぞ!お互い邪魔をしないという約束なのだ!」
おいおいミリムよ。……それもう秘密があると自白してるぞ。
そんなミリムにリムルは聞きに入る。
「それはカリオンだけとの約束か?それとも他の魔王も関係してるのかな?」
「いや、それは…。」
「教えてくれないか〜残念。親友として知っときたかったんだけどなー。ほら、俺達が知らずに邪魔しちゃうかもしれないしさ。」
「うむ…確かに…でも約束……でもマブダチ……。」
言おうか悩むミリムの姿にリムルは後一押しと見る。
「そうだ!今度俺達がミリム用に新しい武器を作ってやるよ。親友の証としてさ。なぁフォルテ。」
「そうだな…俺的にもミリム専用の武器を作ってみたい。」
「新しい武器⁉︎やはりマブダチから一番なのだ!なんでも聞くがいい!」
新しい武器に釣られてしまったミリム……チョロいとリムルは思っているだろうな。
そんな訳でミリムから色々と話を聞き出した。
ミリムを含めた魔王四人の企み…傀儡の魔王を誕生させるという計画だった。
「魔王クレイマン、カリオン、フレイそしてミリムがゲルミュッドを使って傀儡となる魔王の誕生を目論んだと。」
「単なる退屈しのぎだったのだ。」
「ミリムにとってはそうだったのだろうが、他の三人の魔王からしたら俺達はその計画を邪魔した存在というわけだ。」
フォルテの言葉に紅丸達が続く。
「ええ。想定していた状況とは違いますが、他の魔王もここへ干渉してくるでしょうね。」
「大変なことです。トレイニー様にも相談せねばなりません。」
「大丈夫です!リムル様とフォルテ様ならば他の魔王など畏れるに足りません!」
「と言う訳で、秘密は全て話したのだ。約束の新しい武器を頼んだぞリムル、フォルテ!」
「わかっているミリム。ちゃんと作ってやるから待っていてくれ。」
魔王ミリムの来襲とともに巻き起こった暴風は、より勢いを増して俺達を飲み込んでいく事になる。
俺達がフォビオと話しをしている頃、ブルムンド王国では大臣のベルヤード男爵と自由組合連合のブルムンド支部ギルドマスターのフューズが俺達のことについて話し合っていた。
「魔物街と、そこに住む
そう。
そう蒼影とシャドーマンだ。二人はリムルとフォルテからの伝言を伝えた。
その後、再調査し本当に
「だが信じるしかないな。我々はそのリムルと言うスライムとフォルテと言う新種の魔人に救われたのだと。」
「そうだな。彼らとの関係を今後どの様にするか。そのスライムと魔人を善意の存在とみなして接するか、脅威として排除を試みるか。」
「排除と簡単に言うがそれはそもそも可能なのかね?」
「……正直に答えていいのか?」
「答えを聞くまでもないな。」
「はぁ。…一度会に行ってみるか。俺がこの眼でリムルとフォルテとやらを見極めてみるさ。」
「よし出発するぞ。お前達が会ったと言うスライムと魔人に会いにな。」
「「「はぁ…。」」」
ギルマスの言葉に溜息を吐くカバル、ギド、エレンだった。
それと同じ頃、領土の一部がジュラの大森林に接する大国であるファルムス王国。
その国でも
「森の調査ねぇ…。こりゃアレか、強欲な伯爵サマにとって俺達は捨て駒かよ。」
フォビオの問題から数日が経過。
ミリムはすっかり俺達の国で餌付けされていた。
そんなミリムの為に食糧調達に来ているフォルテ。
「フォルテ様がわざわざ来なくてもよかったんじゃないすっか?」
食糧調達部隊の隊長として
「気にするな。ちょっとした気分転換だ。」
畑の蓄えがあるとはいえ、もう時期冬になるのだからもう少し食糧を確保したいからな。後、ミリムがよく食うから。
それからは、ゴブタ達の活躍で
「流石だなゴブタ。俺が出るまでなかった。」
「いや。こんな事でフォルテ様に手伝われたら師匠にとんでもない目に遭うっすよ!」
「ははは。そうだな……ん?」
「どうかしましたか?」
「向こうの方で誰かが魔物に追われているようだな。」
俺がそう言うと、ゴブタ達も俺が見ている方に顔を向ける。
すると激しい音と共に奥で木々が薙ぎ倒しながら何か魔物が進んでいる。
「ほっとく訳にもいかないな。いくぞ。」
「了解っす!」
俺達は暴れている魔物の元に向かう。すると、開けた場所に複数の人間達が
そしてその中の人間達に身を覚えのある面々がいた。
それにゴブタも気付いてその人物に声をかける。
「あれ?カバルさんじゃないっすか。」
「それにエレンにギドも久しぶりだな。」
俺とゴブタの声にカバル達は振り向く。
「ゴブタ君!それにフォルテの旦那!」
俺達を見たカバルが声を上げ、ギドとエレンは安心したのか喜ぶ。他の知らない者達は突然現れた俺達に誰だ⁉︎と警戒していた。
「なんかよく魔物と戦ってるみたいすっけど、そんなに戦うのが好きなんすか?」
「そんな訳ないだろゴブタ。それより、あれやれるか?」
俺は迫る
「もちろんっす!」
ゴブタは小太刀を手に構える。そして
「今日の晩御飯っす!」
そして…見事に
その様子を見ていたカバル達と共にいる男が思わず言った。
「……嘘だろ。」
何も知らない者からすれば、ゴブリンが自分より遥かに上のはずの
「こいつめちゃくちゃ美味いんすよ。」
涎を垂らしながらそう言うゴブタに見ていた二人はえっ?と微妙な表情を浮かべたその時!
彼らの背後からもう一匹
「なっ⁉︎」「しまっ!」
突然の奇襲に対応できず二人はやられると思った…が。
ザシュ!
二人は襲われる事なく、
何が起きたんだと二人が目を見開く。そこには、魔素でできた刃を手に持つフォルテと呼ばれる者が立っていた。
そう。フォルテが
「大丈夫かそこの二人。」
「えっええ。」
「ああ。」
二人は声を出すのがやっとだった。先ほどのゴブタの小太刀とフォルテの魔素の刃の斬れ味に驚くしかなかった。
あの
「流石フォルテ様っす!」
「
「今夜はご馳走ッス!」
喜ぶゴブタ。そして早速
「貴方が魔物国の主の一人であるフォルテ殿ですか。」
「そうだがあんたは?」
「うちの上司です。」
カバルがそう答える。
その後ゴブタに
「俺がこの街というか国というか、フォルテと一緒にジュラ・テンペスト連邦国の代表をしているリムル=テンペストだ。」
「本当にスライムが⁉︎」
目に傷の男性は驚く中、カバルが俺とリムルの周りの者達について聞く。
「ところでリムルの旦那、フォルテの旦那。以前には見かけなかった方がおられるようですが。」
「ああ。紅丸に紫苑。蒼影に朱菜。」
「俺の側にいるのはカーネルとアイリスとトリル。」
俺達が皆を紹介し皆が頭を下げていると、食事を終えたミリムが入ってきた。
「それとミリムだ。」
「なっ!」
ミリムの名に傷の男は驚く。
「それでカバル達以外の方々は何者だ?」
フォルテの問いに傷の男が答える。
「…失礼。私はフューズと申す者。ブルムンド王国の自由組合支部長をしております。」
自由組合支部長とはまた随分な立場の人が来たな。
「私達の目的はリムル殿とフォルテ殿に会う為です。」
「俺達に?」
「今から十月ほど前になりますか、森の調査を依頼したコイツらから報告を受けました。」
カバル達を横目で見るフューズ。……彼らは美味しそうにポテチモドキを食べていた。
「まずはギルドの英雄の命を救っていただいた感謝を。お礼が遅くなり申し訳ない。」
シズさんのことだな。
「それでシズ殿は今は…。」
「この街で皆と仲良く過ごしている。そろそろこちらに来る頃だと思うが。」
俺がそう言った直後にタイミング良く扉が開いてシズさんとシンシヤが入ってきた。
シズさんの姿を見たフューズは立ち上がり、エレンは元気よく手を振った。
「シズ殿!」
「あっシズさん!」
「フューズさんとエレン!それにカバルにギド。皆元気そうで良かった。」
「シズ殿こそ元気なようで良かった。」
「本当!シズさんこの街での暮らしはどう?」
「うん。皆で手を取り合って頑張って来て、とても楽しい日々が続いているよ。」
シズさんは笑顔でそう言ってくれた。そんな中、カバルが手を上げて質問してきた。
「あの…シズさんの隣にいるその子供?」
「なんかリムルの旦那に似ているような?」
カバルとギドの言葉にフューズとエレンもそういえばとシンシヤを見る。
それに気付いたシンシヤは元気に皆に自己紹介する。
「初めまして!リムル=テンペストの娘シンシヤです‼︎」
シンシヤの発言にフューズ達は一瞬唖然とするが、すぐ驚愕の表情となった。
「ええええ⁉︎リムルさんの娘!」
「リムルの旦那!いつの間に子供なんて……いや旦那はスライムだよなぁ?」
「もしかして…分裂でやすか?」
「違うわ!てかお前達もそんなこと言うか⁉︎」
「…まぁシンシヤについては後で説明するとして、フューズの話の続きを聞かせてもらえるか。」
俺の言葉に我を取り戻したフューズが口を開く。
「はい。我々が…「その前に言わせてくれ。」?」
フューズが喋るのを遮り、今まで黙っていたもう一組の集団のリーダーらしき男が声を上げる。
「なんでスライムが喋ってんだよ。」
……まぁ事情を知らない者からすれば当然の質問だな。
「だっておかしいだろ!なんで誰もつっ込まないんだよ⁉︎スライムだぞ⁉︎そこのマントの奴と後ろの連中の方が明らかに強そうだろうが!なんでこんなプルップルのスライムが偉そうにしてんだよ!しかも娘って奴まで出て来るとか⁉︎」
ごもっともだな。てか…マントの奴って俺のことか?
リムルに対するその言葉に紫苑が冷たい目で見ながら男に言う。
「リムル様とシンシヤちゃんに無礼ですよ!」
「うるさい黙ってろおっぱい!」
あっ!お前その発言は…。
余りの暴言に紫苑は反射的に鞘に収まった剛力丸で男の頭を叩いた。
「あっつい…。」
「いや⁉︎ついじゃねーよ!」
「おい!生きてるか⁉︎」
リムルが紫苑に注意している間に俺が男の頭を回復した。
「ウチの紫苑がスマンな。ちょっと我慢が足りないところがあるんだ。」
「許してくれ。」
リムルと俺が紫苑に代わって謝罪する。
「酷いです!これでも忍耐力には定評があるんですよ。」
「あははは!我慢が足りぬとはまだまだだな紫苑。」
笑うミリム。……まぁ俺との特訓に付き合ってもらっているのが良い感じにミリムの心に余裕を生んでいるのだろうな。
男性が回復し終えた後、フューズの話を改めて聞いた。
「成る程な。ドワーフ王と同じ目的か。」
「ドワーフ王?来たのですか?」
「ああ。ガゼル王が俺達を見極めると言ってな。」
「それでフューズとやら。」
俺はフューズに話しかける。
「俺達は人間と貿易しようと考えている。」
「貿易?」
「ああ。ドワルゴンとは既に国交をひらいている。」
「ドワルゴンと⁉︎」
「この国を経由すれば商人達の利便性も向上すると思うけどどうかな?」
俺とリムルの話にフューズは待ったをかける。
「いやちょっと待ってください!ドワルゴンがこの魔物の国を承認したと言うのですか⁉︎」
まぁ信じられないのも無理はない。だからこそ証人に相応しい人物を用意していた。そしてその人物が扉を開けて入ってくる。
「その話、私が保証します。」
「ベスター大臣!」
「…元大臣です。」
そうドワルゴンの大臣だったベスターだ。
「貴方ほどの人物がどうして此処に!」
「お久しぶりですフューズ殿。リムル様とフォルテ様の言う事は本当です。ガゼル王とリムル様達は盟約を交わしておられます。」
ベスターの口から言われた事でフューズも真実だと認めるしかなかった。
「信じてくれるか?」
「はっはあ…そう言う事でしたら我々としても協力はやぶさかではありません。ただし、貴方達が本当に人間の味方なのかどうか…しっかりと確かめさせてもらう事にしますが構いませんね。」
「もちろんそちらからしたら当然のことだ。なぁリムル。」
「ああ滞在を許可する。俺達が脅威でないと分かって欲しい。」
さて、次はさっきほどからじっと黙ってくれている男達だな。
彼らはファルムス王国からの調査団で、先ほど紫苑に頭を叩かれた男が団長のヨウムであり、今話している眼鏡の者がお目付け役のロンメルと言うそうだ。
彼らがこの街に来たのは成り行きだったそうだ。
「調査対象の
成る程やはり正規軍じゃなかったか。見た目からして荒くれ者の集団だったからな。
「よく逃げださなかったものだ。」
「そのために私が同行を命じられました。契約魔法という強制的に従わせる術がありますので、それで縛るのです。」
それでは逃げられることはできないな。その話を聞いたシズさんの表情は少し歪んだように見えた。…シズさんも召喚者だったから似たような彼らの話を聞いて昔を思い出したのかも。
「まっその魔法はもう解いちゃったんですけどね。」
「「へ?」」
俺とリムルの声が思わず重なった。
「えーと…ロンメル君はお目付け役じゃなかったっけ?」
「そんな簡単に解いて良かったのか。」
「そうですね…ですが私はこのヨウムについて行くと決めたのです。」
…お目付け役の人物にそこまで言わせるとは。
俺がヨウムを見ていると、リムルがヨウムに問う。
「術が解けてるなら、どうして逃げようとしなかったんだ。」
「ああ?」
「危険な調査に安い装備で送り出されたんだろ?聞くかぎりじゃ雇い主は成功報酬を奮発するタイプとも思えないけどな。」
「むしろ報酬さえまともに払うとは思えないな。」
「んなこた分かってるよ。
おっ…意外な答えが返ってきたな。
「あの町にゃ説教くせぇジジイや酒場のお節介なババやあとをついてまわるうぜえガキ共だっているんだ。……勘違いすんなよ。あいつらが死んだら寝覚めが悪いと思っただけだ。」
このヨウムって男。態度や言葉遣いは悪いが…結構いい奴なんだな。
「まぁあのタヌキ伯爵が困る姿は見てみたいけどな。ロンメルから聞いた話じゃ防衛の強化に充てるべき国の援助金も着服してたってんだぞ。」
「つまり何の対策もしていなかったところへ
「そもそもだな。危険極まりない調査にこんな若造使うか?もっと熟練の魔法使いの一人や二人抱えてんだろうが。結果だけ分かればいいって魂胆が丸見えなんだよ。」
それは本当に悪どいな。そんな奴なら確かに困らせても問題ないと思う。
ロンメルがヨウムに従う理由もわかったな。
俺は改めてヨウムを見る。
腕は立つが調子に乗らず、仲間に慕われるカリスマ性。顔も悪くないいい奴だ。
俺はリムルに目をやると、リムルも同じ考えを思いついたのだろうスライムの姿のまま軽く頷く。そしてそのままフューズに質問する。
「ちょっといいかなフューズさんとやら。」
「…はっはい!」
「
「いえ。この情報を知るのはブルムンド国王と一部の者達のみです。一般には発表されていませんよ。」
「なら好都合だなリムル。」
「ああ。よし決めたぞヨウム君。」
「あ?なんだよ。」
「君…英雄になる気はないかな?」
「「「……はぁ⁉︎」」」
突然のリムルの言葉にヨウム一同は驚く。
「英雄になれだって?この俺に…?」
「そうだ。」
「なに言ってんだアンタ達…。」
「別にこれは強制じゃないから断ってくれても構わない。あくまで頼んでいるだけだ。」
「つったって…。」
「そこのフューズさんが言ったろ?
「そこで、ヨウムと仲間達が
「
俺とリムルの提案を聞いていた皆。その中でフューズさん先に声を上げる。
「…その計画ブルムンド王国も協力できるかもしれません。知り合いの大臣に掛け合えば周辺諸国へ噂を流すことくらいは出来るでしょう。」
「それはありがたい。後はヨウム次第だ。良い返事が欲しいが無理強いはいしない。」
俺の言葉にヨウムは考えるがそうすぐに答えられることではない。
「……しばらく外に出てもいいか。」
「ああ。」
「もちろんだ。」
ヨウムが町を見て周っている間に俺達はロンメルから本来のヨウムの計画を聞いた。
「
「なるほどな。」
「死んだことにすれば追手もないな。」
「はい。私は報酬を貰ったうえで彼らと合流する手筈でした。団員達を前にヨウムさんは言ったんです。」
『どうせファルムスに戻ったら元の強制労働だ。それが嫌なら俺に付いてきな。』
「あらー男前。」
「中々言えることではないな。」
「…でも不思議と説得力を感じたんです。その時にはもう、彼が仲間を大事にする男だと知っていたからでしょうか。」
そんな人材を捨て駒にするとは…その伯爵は見る目がないな。
それからしばらく経ち、町が見える俺達がよく来る丘の上で夕焼けを眺めるヨウムの姿が。
「考えはまとまったかな。」
「どうだった俺達の町は。」
そんなヨウムに俺とリムルが声をかける。
「……リムルさんそれにフォルテさん。」
ヨウムが俺達をさん付けでよんだ。
「この町は大したものだ。アンタ達が邪悪な存在じゃないってのは、この町の連中を見て分かった。」
ヨウムは町を歩き見て感じた。魔物である彼ら…様々種族が手を取り合い助け合い笑顔で過ごす姿。そして町の者達がリムルとフォルテを心から慕っていることを。
「…俺は調査団の頭だ。野朗共を守ってやらなきゃならねぇ。どっか余所の国でギルドに入りゃ食うには困らねえだろうと思った。30人もいりゃあ大きな討伐依頼もこなせる。…俺には俺のビジョンがあった。」
確かに。ヨウム達のような者達ならそれで生きていけるだろう。
「なのに英雄になれだぁ?話がデカすぎて胡散臭いことこの上ねぇよ……それでも決めたぜリムルさんフォルテさん。」
ヨウムは振り返りながら言う。
「あんた達はあの伯爵とは違う。仲間に慕われる奴の言葉には力がある。」
ヨウムはそう言って俺達の前に跪く。
「俺はアンタ達を信用することにした。今日からはリムルの旦那とフォルテの旦那と呼ばせてもらう。英雄でもなんでもなってやろうじゃねえか。」
「…ああ。こちらこそ引き受けてくれて嬉しいよ。」
「期待しているぞヨウム。」
こうしてヨウムは俺達の元で英雄になる道を選んだ。
その頃、傀儡国ジスターヴでは魔王クレイマンが自身の配下から報告を聞いていた。
「なるほど…魔王カリオンは黒豹牙フォビオを派遣…魔王ミリムはやはり自分自身で乗り込みましたか。…それで?」
クレイマンは配下に問うように聞くと、その者は怯える。
「調査報告の他にもう一つ報告しなければならないことがあるのでは?」
配下の女性は怯えながらゆっくりと口を開く。
「…魔王ミリムに見つかりました。」
「……互いに邪魔をしないという約束ですからね。…見逃されましたか。」
更に震えが増す女性。
「残念です。ミリムが八つ裂きにしてくれれば処分する手間も省けたのにねぇ?」
「もっ申し訳ございません!クレイマン様…。」
女性は震える手で胸を押さえる。
「まぁいいでしょう。次の命令があるまでジュラの大森林で監視を継続。死にたくなければせいぜい役に立ってみせなさい。逃げようなどと考えても無駄ですよ。」
そう言ってクレイマンはガラス瓶に入った心臓を見せる。
「貴女の心臓は私が握っているのだから。」
「……っ。」
「さっさと消えなさい目障りです。」
「…はい。」
配下の女性は怯えながらその場から立ち去る。
「あーあクレイマンたら酷いんだあ。」
突然クレイマンに声をかける者が、クレイマンがそちらに目を向けるて涙目の仮面をつけた女の子がいた。
「道具は大事に使わなきゃってラプラスも言ってたよ。」
「ティア!」
先ほどまでの冷酷な表情が嘘だったかのような優しい笑みを浮かべるクレイマン。
「もうフレイの調査から戻ったのですか?早かったですね。気付かれませんでしたかティア。」
「そりゃあアタイも中庸道化連の一員なんだから!クレイマンはすぐ子供扱いするけど、少しは信用してよね。」
「はははすみません。貴方が無茶をしないか私は心配なのです。」
「あーまた子供扱いした!だからやめてよね!」
「分かりましたよ。ミュウランからの報告によると、魔王ミリムはよほどあの魔人どもを気に入ったようです。」
「へぇー。」
「これは思った以上に面白い展開です。愉快ですよまったく。」
「それならいいけど。実際はどうなの?魔王ミリムが興味を持つほど凄い魔人なの?」
「無視はできないという程度でした。私の敵ではなかったですし。…しかしラプラスがですね。」
「ラプラスが?」
「不気味さというのか…何かを感じたというのですよ。それにもう1人のこの魔人。」
クレイマンの水晶玉に映るフォルテをティアに見せる。
「なんか変わった奴だね?目付きも悪いし。」
「この魔人はあの人が語ってくれた危険な男そのものだったそうです。」
「ええ⁉︎あの人が話してくれたあの!」
「ですが……どうやら中身が違ったようですね。」
「どういうこと?」
「あの人の話した通りの存在なら、ミリムに戦いを挑んで周りの被害など関係なく戦い続けたそうです。しかし、実際にはミリムのお目付け役のような立場で行動していると報告でしたよ。」
「ふーん。確かに聞いた話の奴と違う感じだね。それにあの小狡いラプラスが言ってたんならやっぱりなんかあるんじゃないかな。少なくとも、魔王ミリムが興味を持った理由は知った方がいいよ。」
「確かに。もっと情報を集めて検討しなければいけませんね。」
「うん!それがいいよ。で!調査結果だけど!」
「伺いましょう。」
「魔王フレイはね、ジュラの森には関わらないみたい。悩みを探ってたらけっこうあっさりわかったよ。だって
「それでその理由は。」
「なんとびっくり‼︎あの
「⁉︎…
その名を聞いたクレイマンは目を見開く。
(
クレイマンの笑みを見たティアはクレイマンの様子から考えを読んだ。
「クレイマン。〝いいこと思いついた〟って顔してるよ!」
「おや分かりますか?」
「分かるよ!クレイマンの考えることなんて、仮面をつけてたってわかるんだから!」
そのいいながら、ティアは壁に飾られている仮面に目を向ける。…その仮面は何処となくラプラスやティアの仮面に似ている。
クレイマンは笑みを浮かべながらティアに言う。
「ではそんな貴女にまた一つ仕事をお願いしたいのですが。」
「ニッヒヒ!そう来ると思ってた!フットマンの奴も呼んでるから多少の荒ごとも大丈夫だよ。」
「流石ですね。」
「フレイに恩を売るんだよね?あっでも
「まさか、貴女達にそんなことはさせませんよ。あれの相手をするのは魔王ミリム…それとあのスライムとあの魔人ですよ。」
クレイマンの言葉にティアは首を傾げる。
「ミリムやあのスライム達にけしかけるの?でも
「ええ。ですが器なら話は違います。」
そう言ってクレイマンは水晶玉に映る対象を変えた。
「どうです?ぴったりだと思いませんか?
そこに映し出されていたのは…カリオンの配下フォビオだった。
そしてクレイマンは作戦をティアに説明した。
「任せてよクレイマン!それじゃあアタイは行くね。」
作戦を聞いたティアはフットマンと合流する為にすぐに行動を開始しその場から去った。
「…
『全くその通りだよクレイマン。』
クレイマンはもう慣れた様子で顔を横に向けると、半透明のあの人物が出現していた。
『
「貴方もそうですか。」
『それに、あのフォルテの力がどれほどのものかを知る為にも打ってつけの相手になるだろう。フットマンに改良したダークチップを持たせて置いて正解だった。』
「ダークチップを…ならより楽しいものが見れそうですね。」
互いに笑みを浮かべるクレイマンと謎の人物。
テンペストに新たな厄災が迫ろうとしている。
心を蝕むダークチップ……知恵…心がない
副作用が無いに等しい。