転生したらフォルテだった件   作:雷影

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今回は別世界の存在…作品のキャラをフォルテやリムルのように転生してきたことにして登場させることにしました。
そのキャラ…人物はタイトルを見ただけで分かる人がいると思います。


39話 陸と肆の鬼

リムルがイングラシアに着いた頃。フォルテは封印の洞窟内を探索していた。何故今更そんなことを思う者もいたが、それはあの暴風大妖渦(カリュブディス)がきっかけだった。

 

ヴェルドラの魔素溜まりから発生したあの大怪魚。そのヴェルドラが300年間封印され続けたこの洞窟内には今もヴェルドラの魔素が充満している。

だからガビル達にヒポクテ草の栽培を任せている。それに魔鉱石も採掘でき魔物もある程度発生し続けている。

 

だからこそ、この洞窟内で魔素が溜まってしまった場所から暴風大妖渦(カリュブディス)に匹敵するかもしれない強力な魔物が発生する可能性があるのだ。それに、俺やリムルのように魔物や魔人に転生してくる異世界人が現れるかもしれないからな。

 

フォルテは洞窟でまだ探索できたない奥へと向かった。

 

「かなり奥まで来たが異常はないようだな。この辺りの魔素がかなり濃いから警戒していたが…。」

 

フォルテは今日の探索を終了しようとした時、電脳之神(デューオ)が何かを探知した。

 

《この奥より三つの強い生命反応を確認した。》

 

「魔物か?」

 

《この瞬間に誕生した可能性が高い。》

 

「なら確認するしかないかな。」

 

フォルテは生命反応が感知された場所へと向かう。

 

向かった先には人らしき存在が倒れていた。

 

「アイツか?」

 

フォルテはゆっくりと歩みその姿を確認する。

 

「っ!こいつは⁉︎」

 

倒れている者の額から紅丸達のような角が生えており、雷神のような格好に背にある連鼓には憎の一文字が書かれていた。…その姿を俺は知っていた。

 

「此奴は…憎珀天!」

 

憎珀天。それは漫画鬼滅の刃に登場する悪鬼…半天狗の分裂体。人を喰らいながら生き続ける異形の鬼達。その鬼達の中で最強格に君臨する上弦の6体の鬼…その一柱が上弦の肆である半天狗だ。

 

半天狗本体に戦闘能力は無いが、追い込まれ命の危機を追いやられる時強力な分裂体を生み出し自身を守らせる。本体自体の大きさも野鼠程度しか無く素早い動きで逃げ回るから、本体を探し出し倒すのに恐ろしく手間が掛かる。

 

そんな半天狗の分裂体で最強の存在がいま目の前で倒れている憎珀天だ。

 

「何故憎珀天が……転生してきたのか?なら本体もいるのか……とりあえず調べさせてもらうか。」

 

俺は倒れている憎珀天の頭に手を乗せる。

 

電脳之神(デューオ)。」

 

《了解した。》

 

電脳之神(デューオ)による解析が開始された。

 

《………解析が完了した。この憎珀天は本体が倒され肉体を維持できずに消滅する寸前の未練によって世界の言葉に導かれこの世界へと転移したようだ。》

 

なるほど…まぁ本体が倒され柱も倒せなかった敗北だったからな。未練もあるだろうが、このまま目覚められても厄介だから今のうちにチップ化しておくか。

 

フォルテは憎珀天をチップへと変換しそのチップをエンブレムに納めた。

 

《チップ化した憎珀天の更なる解析完了。憎珀天から四体分のエネルギーが抜けている。》

 

「何⁉︎」

 

憎珀天から四体分のエネルギー……まさか!

 

憎珀天は元々半天狗の四体の分裂体が合体した姿。その元の四体が抜け出たのか⁉︎

 

「なら奥にいるのはそのうちの二体か!」

 

俺は急いで奥へ向かった。

 

そして奥に倒れる二つの影。近づいていくと見えてきた姿は…緑の髪の男で歯がギザギザで肘や膝以外は手脚が細い。

もう一人は白い髪に右額と左頬に花の紋様が浮かび上がっている。

 

「…妓夫太郎…堕姫…だと。」

 

上弦の陸…二人で一人の兄妹鬼…此奴らまでこの世界に来ていたのか!

 

俺はそっと二人の頭に手を添え解析した。

 

解析した際に見えたのは妹を思う兄の想いとそんな兄を思う妹。…兄妹の絆の姿だった。

 

「……ゴスペル。」

 

「ハッ!」

 

フォルテの影からゴスペルが姿を現した。

 

「この二人を町に連れ帰る。女性の方を丁寧に運んでやってくれ。」

 

「承知しました。」

 

 

フォルテが妓夫太郎を背負い、ゴスペルが堕鬼を背に乗せ運んで行った。

 

その様子を気配を消して見ていた四つの存在。フォルテは気付いていたが後回しにした。

 

 

 

 

………俺達は負けた。あんな餓鬼と柱に。その事で妹と口論となり互いに罵詈雑言を吐き合っていた。

 

【ふざんけんじゃねぇぞ!お前一人だったらとっくに死んでる!どれだけ俺に助けられた⁉︎出来損ないはお前だろうが…!弱くて何の取り柄もない。お前みたいな奴を今まで庇ってきたことが心底悔やまれるぜ…。】

 

俺の言葉に妹はショックだったのだろう…黙り込んでいた。それでも俺は感情のままに暴言を吐き続けた。……あの餓鬼が止めるまでは。

 

【お前さえいなけりゃ俺の人生はもっと違っていた!お前さえいなけりゃなぁ!何で俺がお前の尻拭いばっかりしなきゃならねぇんだ!お前なんか生まれてこなけりゃよか…⁉︎】

 

俺の口をあの餓鬼が塞いだ。

 

【…嘘だよ。本当はそんな事思ってないよ。全部嘘だよ。仲良くしよう。この世でたった2人の兄妹なんだから。君たちのした事は誰も許してくれない。殺してきたたくさんの人たちに恨まれ、憎まれて罵倒される。味方してくれる人なんていない。だから、せめて2人だけは……お互い罵りあったらだめだ。】

 

俺達を倒した此奴は…俺達兄妹の事を思ったのかそう言いやがった。餓鬼の言葉を聞いた妹は涙を流しながら声を上げた。

 

【うわああ〜ん!うるさいんだよ!私たちに説教するんじゃないわよ!クソ餓鬼が!向こう行け!どっか行け!悔しいよぉ…!悔しいよ!何とかしてよ。お兄ちゃん!死にたくないよお兄ちゃん!お兄ちゃん!おに…。】

 

その言葉を最後に妹が灰となって消えた。

 

【梅!】

 

その時、俺は自分が人間だった頃を思い出した。遊郭の最下層である羅生門河岸そこで生まれた俺は母親に何度も殺されかけそれでも必死に生きていた。

枯れ枝のように弱い体だった…俺は醜かったし汚かったいつも垢まみれフケまみれ…ノミがついたひどい匂いで美貌が全ての価値基準だった遊郭では殊更忌み嫌われた……怪物のように。この世にある罵詈雑言は全て俺のためにあるようだった。

 

そんな中、俺の中で何かが変わり始めたのは…妹が…梅が産まれてからだ。

梅は俺の自慢だった。年端のいかない頃から、大人がたじろぐほど綺麗な顔をしていた。梅のような妹がいることが、俺の劣等感を吹き飛ばしてくれた。

 

俺は喧嘩の強さを活かして取り立ての仕事を始めた。子供のころから遊び道具だった鎌を手に取り立て、誰もが気味悪がり自分の醜さが誇らしくなった。

俺たちの人生は、これから良い方向に加速していくと思っていた……梅が13になったあの事件が起こるまでは。

 

梅が客の侍に傷を負わせてしまい、その報復で梅は縛り上げられ生きたまま焼かれた。…俺が仕事から帰ってきて見たのは、黒こげとなった梅の姿だった。

 

俺が悲しみの叫びを上げる中、背後からその侍に斬られた。楼主と侍が結託して俺を始末する為に梅を利用した。その時の怒りで俺は楼主と侍を鎌で始末した。

 

傷つき今にも死にそうな妹を抱えながら俺は歩き続けた。…誰も助けてはくれない。いつもの日常……いつだって助けてくれる人間はいなかった。

やがて力尽き倒れた俺達に対して容赦なく雪が降り始めた。

 

どうしてだ……禍福はあざなえる縄の如しだろ!良いことも悪いことも代わる代わるこいよ!

 

この世を怨みながら息絶えようとしていた俺達を救ったのがあの鬼だった。

 

【どうしたどうした?可哀想に。】

 

当時上弦の陸だった上弦の弐の童磨。俺達は童磨に助けられ鬼となって生き延びた。

 

俺は鬼になったことに後悔はねぇ。俺は何度生まれ変わっても鬼になる。

 

《確認しました。鬼の身体を作成……成功しました。》

 

だが心残りがあるならば梅が俺の妹なんかに産まれなかればと思ったことだった。

 

そして地獄の間に立っていた時だった。

 

【お兄ちゃん!やだ!此処嫌い。何処なの?出たいよ。何とかして!】

 

後ろ振り向けば…梅は人間の姿に戻っていた。

 

俺はそれを見て理解した。神か仏か…どちらかが俺の心残りを叶えようとしていることを。

 

俺は前へと向かって進むことを決め梅を突き放した。

 

【お前とはもう兄妹でも何でもない。俺はこっちに行くから、お前は反対の方…明るいほうに行け。】

 

俺の言葉を聞いた梅は俺の思いを理解した。だが梅を俺にしがみつく。

 

【うっ…おい!】

 

【やだ…やだ!離れない!絶対離れないから…。ずっと一緒にいるんだから!何回生まれ変わっても私、お兄ちゃんの妹になる。絶対に!私を嫌わないで叱らないで、1人にしないで…置いていったら許さないわよ!】

 

わああ〜ん!

 

梅の泣き声が辺りに響く。

 

【ずっと一緒にいるんだもん…。ひどい… ひどい!約束したの覚えてないの⁉︎忘れちゃったの⁉︎】

 

梅の言葉に俺は…梅と交わしたあの雪の日の約束を思い出した。

 

俺たちは2人なら最強だ。寒いのもはらぺこなのも全然へっちゃら約束する。ずっと一緒だ。絶対離れないほら、何も怖くないだろ。

 

俺は梅を背負いながら地獄に向かった。燃え盛る地獄の炎中を突き進む。

 

そうだ…俺達兄妹はずっと一緒だ。

 

《確認しました。ユニークスキル兄妹之絆を獲得しました。》

 

俺の耳に時々聞こえた謎の声……それが聞こえなくなった瞬間、俺達は炎の渦に呑まれた。

 

 

…意識が戻り目が覚めると見知らぬ天井が見えた……俺は生きている⁉︎

 

俺はその場から飛び起きた!

 

「梅…梅!」

 

俺は妹を…梅を探す!辺りを見回し、隣のベッドで眠る梅の姿が!また鬼の姿に戻っていた。

 

「梅!」

 

俺が声を上げると、それに反応するようにゆっくりと目を開く梅。

 

目を覚ました梅は俺を見る。

 

「……お兄ちゃん。」

 

まだ意識がハッキリしていたない梅が俺を呼ぶ。

 

「……梅。」

 

「お兄ちゃん…お兄ちゃん!」

 

意識が完全に戻った梅は飛び起きながら俺に抱きつく!

 

「ごめんなさい!ごめんなさいお兄ちゃん!」

 

泣きながら謝る梅。…どうやら最後に俺に言った言葉を気にしているようだ。

 

「大丈夫だ。俺は気にしてない。俺こそ済まなかった。俺達はずっと一緒だって約束したのにな。」

 

「お兄ちゃん…。」

 

再び戻った二人の絆。その時、部屋の扉が開き桃色の髪の鬼の少女か入って来た。

 

「まぁ!目が覚めたのですね良かった。」

 

笑顔を向ける鬼の少女だが……本当に鬼なのか?俺達とは違う気配がする。

不思議に思い警戒していると、更に二人の鬼が入って来た。

 

「どうしたシュナ?」

 

「あっお兄様。お二人が目を覚ましたのです。」

 

「おお!そうか。ソウエイすぐにフォルテ様に知らせてくれ。」

 

「わかった。」

 

入って来た赤い髪の鬼が青い髪の鬼に何やら指示すると、青い髪の鬼がその場から消えた。何かの血鬼術か?

 

「さて、少し聞きたいことがある。」

 

赤い髪の鬼が俺達に話しかける。

 

「お前達はフォルテ様の話では異世界人と聞いているが、普通の人間ではないな。」

 

「異世界人?…言ってることがわからねぇがお前も鬼なんだろ?俺達とは何か違うようだがな。」

 

「鬼?お前達は異世界の鬼だということか。」

 

「まぁ異世界にも私達みたいな鬼がいたなんて…。」

 

何やら驚いているようだが……此奴らは、無惨様から血をもらっていないことは確かだな。

 

妓夫太郎とベニマルが話をしている間に、再び扉が開き誰かが入って来た。

 

「待たせたな。」

 

「いや。そんなことはありませんよフォルテ様。」

 

入って来たのは妙な冠り物をした餓鬼だったが、発する気配が尋常じゃない!

凄まじい闘気……これは無惨様以上だ。

 

「この二人には俺が直接聞きたいことがある。ベニマル、シュナ。済まないが部屋の外で待機していてくれ。」

 

「はっ!」

 

「畏まりました。」

 

ベニマルと朱菜はフォルテの命に従い部屋から出ていった。

 

「さてと……一つ確認するが、お前達の名は妓夫太郎と堕姫…いや梅であっているか。」

 

「っ⁉︎お前なんで俺達の名を!」

 

俺の名だけじゃなく梅の…鬼の時の名までいい当てやがった。

 

「やはりそうか。……妙な誤解とか作りたくないからお前達には俺の事など全てを話すがその前にこれを読んで見ろ。」

 

そう言って妙な餓鬼が何処からともなく二冊の本を取り出し俺に渡した。

 

「この本が何だって…なっ⁉︎」

 

「お兄ちゃんどうしたの…え⁉︎」

 

俺達は驚いた……何故ならその本に描かれていたのは俺達を倒したあの兄妹が描かれていたからだ。

 

この本はフォルテが前世で読んだ鬼滅の刃を紙に転写したものだ。リムルは途中までしか読んでなかったそうだから、皆で紙を作り最終巻まで全て転写しておいたのだ。

 

「鬼滅の刃…なんだこの本は⁉︎」

 

「……読んでみろ。」

 

俺達は言われるがままに本を読んだ。……内容は、あの時の戦いが描かれ更に俺達の過去まで記されていた。……地獄に向かう瞬間まで。

 

「なんだこの本は⁉︎何故俺達のことがここまで細かく記されている!」

 

あの戦いには、柱やあの餓鬼共しかいなかった。いや…仮に隠れている奴がいたとしても無事に生き残れる訳がない!それに俺達が人間だった頃を知る奴が生きている訳がない!

 

俺の叫びに餓鬼はゆっくりと口を開いて答える。

 

「俺はお前達と同じこの世界とは違う世界で死んで生まれ変わった異世界転生者だ。」

 

そこから話される内容に俺達はただ驚くしかなかった。

このフォルテと呼ばれる餓鬼がいた世界で俺達が架空…空想の存在として語られていたこと。この世界で異世界からこちらの世界にやって来た異世界人や俺達のような転生者が、この世界にくる際に魔素と呼ばれる力の影響で特別な力を得てくること…その際に世界の言葉と呼ばれる謎の声が聞こえることを聞いた。

 

「成る程な。……確かに何か妙な声が頭に聞こえたような気がした。」

 

「私も。」

 

普通なら信じられない話だが、俺達は既に鬼となっていたんだ。それに地獄の入り口にも立っていた…こんな妙な出来事もすぐに受け入れられた。

 

「だがお前のいた別世界の日本で俺達が作り話の存在として知られているとはな。」

 

「世界は一つじゃない。この世界があるように似たような世界が無数にあったとしてもおかしくない。」

 

「そうか。」

 

俺がある程度納得した時、梅が奴に問う。

 

「ねぇ…それじゃあ私達はもう鬼じゃないの?姿は全く変わってないけど…。」

 

梅の言葉に俺も思った。地獄に行く前の梅は人間の姿に戻っていたが、今は鬼の姿だ。

 

「ああ。お前達はこの世界で新たな種へと生まれ変わっている。〝血鬼人(けっきじん)〟それがお前達の種族名だ。」

 

憎珀天と二人を解析して知った。

 

「血鬼人はお前達の前世である鬼だった頃の能力を引き継いでいる。固有スキルとして血鬼術、瞬間再生を備えている。そして弱点だった日光も平気となっている。」

 

更にエクストラスキルで超速再生、完全記憶も取得している。つまり本当に限りなく不死に近い鬼となったわけだ。

 

フォルテの言葉に二人は目を見開く!鬼にとって日の光の克服は悲願だった。少し浴びただけで灰になる運命だったのだから。

 

「マジかよ…。」

 

「私達…日の光の中動けるの…。」

 

「まぁ信じられないのも無理はないがお前達をこの町まで運ぶ時日の光には一応気を付けたが大丈夫だった。」

 

そう言って俺は部屋の窓を覆うカーテンを開き日の光を入れる。

日の光が差し込み二人は咄嗟に腕を上げ庇う……だが身体に変化は起きない。

 

「本当だな……。」

 

「…日の光を浴びても崩れない。」

 

二人は信じられないと言った表情を浮かべながも喜びの笑みを浮かべていた。

 

「後、食事も普通の食事ができる。人間を食えば強くなる能力も普通の食事からできるようになっているから、人間を食うなんてことも必要なくなっている。」

 

「普通の食事…。」

 

妓夫太郎は呟く。まぁ数百年間ずっと人間を喰い続けたからな…。人間の食事も鬼の身体が受け付けない状態だった。

 

そんな中、くぅ〜とお腹の鳴る音が響いた。音の発生先は梅でお腹を押さえながら顔を赤くしていた。

 

「…腹が減ったなら丁度いい、少し待っていろ。」

 

フォルテは念話でシュナに連絡を取り準備させていたものを持ってくるように頼んだ。

 

しばらくして扉が開きお盆を持ったシュナが部屋に入って来た。

 

「お待たせしました。」

 

そう言いながら朱菜はお盆の上にあったお椀を二人に手渡す。

 

「熱いから気を付けてください。」

 

シュナは離れると二人はお椀の蓋を開ける。立ち昇る湯気から香る野菜の匂い……昔は不快に感じた匂いが、今は懐かしく食欲を掻き立てる。

 

お椀の中は色とりどりの野菜のスープだった。

 

「では私はこれで失礼致します。」

 

朱菜は一礼して部屋から出ていった。

 

「肉ばかり食べていただろ。久しぶりに野菜を食べてもらおうと思ってな。うちで育てた野菜は美味いぞ。」

 

フォルテの言葉を聞いた後、二人はスプーンを手に取り野菜とスープを掬い上げる。そして、恐る恐るスープを口にする。

 

「「っ!」」

 

その瞬間、全身に衝撃が駆け巡る。野菜の旨味と甘味が口いっぱいに広がった。数百年ぶりの野菜の味……その美味しさに梅は思わず涙していた。

 

「…美味しい。野菜ってこんなに美味しかったんだね。」

 

「ああ…本当に美味いな。」

 

「そうか。喜んでもらえたなら作ったかいがあったな。」

 

フォルテの言葉に二人は顔を上げる

 

「えっ!このスープはアンタが作ったの⁉︎」

 

「ああ。お前達に食べてもらおうと思ってな。」

 

「…なんでだ。なんで俺達の為にそこまでする⁉︎」

 

此奴の世界で空想の存在だったとしても、俺達がやってきたことは知っている!鬼としての悪行の数々…そんな俺達の為になんで!

 

妓夫太郎の言葉に、フォルテは真剣な表情で答える。

 

「確かにお前達がやってきたことは向こうの世界…人間達の中では許されない。……だがな、お前達をそこまで追い込んだのも人間だ。それにお前達は一度死んでいる。ならその罪は死をもって償われたはずだ。…お前達兄妹の絆は本物だ…俺の元の世界では空想でも、今目の前にいるお前達は本物なんだ。」

 

「……お前…。」

 

此奴は俺達を否定しない…俺達を受け入れると言っているようなものだ。

 

「今はゆっくりと休め。明日には町を案内してやる。その後は、この世界でどうするか決めるといい。自由に旅をしたいなら必要な物も揃えてやる。」

 

フォルテはそう言って部屋から出ていった。

 

……今まで受けることがなかった思い遣りの優しさ。この感じたことない温もりに俺達はただどうするべきか答えが出せなかった。

 

 

翌日。

 

俺達はフォルテにこの町を案内されている。

肌が緑色だが人間に近い姿のホブゴブリン、ゴブリナ。豚の頭に体格の良い猪人(ハイオーク)や龍の頭と翼を持つ龍人(ドラゴニュート)。魚頭の魚人(マーマン)などもいた……玉壺のやつが喜びそうだな。

 

その他にも見たこともない者達が暮らし行き交いしている。

確かにこんな連中は俺達の世界にはいなかった。……鬼には様々な異形の姿の者もいたが全ては元人間だ。それに鬼なら徒党を組まず殺し合い共食いを始める。

 

……この町の者達は皆が笑い合い助けあっている。

 

「凄いねお兄ちゃん…。」

 

「ああ。」

 

「そうだろ。この町は皆が協力し合い助けあって一から創り上げた町だ。」

 

案内しながらフォルテは話す。

 

「この世界は弱肉強食こそが絶対なる真理だ。その点では鬼であったお前達のルールと変わらない。だが、俺とリムルはできるだけ差別ない皆が笑い会える町を作ろうとした。」

 

「……それでこの町ができたって訳だな。」

 

「……こんなに違う種族の者達がいて差別がまったくないのは信じられない。」

 

俺と梅はこの町の者の技術の高さと差別無く暮らしている光景にただ素直に驚いていた。

 

そんな俺達に出店の者が声をかけてきた。

 

「そこのお兄さんとお姉さんこれどーぞ。」

 

そう言って俺達に串焼きを渡して来た。

 

「この国にはまだ通貨が無くてな。俺の奢りってことで受け取ってやってくれ。」

 

フォルテがそう言い、妓夫太郎と梅は串焼きを受け取って一口食べる。

 

「うまい!」「美味しい!」

 

その串焼きの美味さに二人は思わず声を上げた。

 

「でしょ?リムル様とフォルテ様も絶賛した串焼きなんだから。」

 

「ああ。いつも美味い串焼きありがとうな。」

 

フォルテとゴブリナのやり取りを食べながら見つめる二人。

 

その後も、町を歩けば町の者達が次々と寄ってくる。

 

「フォルテ様のお客様でしょう!どうぞ。」

 

「おっおう。」

 

「…ありがとう。」

 

二人はリムルの形をした饅頭を受け取る。

 

「ウチの香ばしいリムル様煎餅も持ってくれ!」

 

「おいおい!ウチの三色リムル様も忘れちゃいねぇか!」

 

皆が笑顔で色んな物をくれる。……その行動に二人はただ素直に受け取るしかなかった。

 

 

 

町が一望できる丘の上まで来たフォルテと妓夫太郎に梅。

 

町を眺めながらもらった食い物を食べる二人の背を見つめるフォルテ。

 

やがて食べ終えた妓夫太郎がフォルテに話しかける。

 

「……この町はすげぇな。弱肉強食の世界で互いを支え合い、助け合うこの町の連中は暖かけぇ。取られたら取り返してきた俺達には眩しく感じるぜ。」

 

「お兄ちゃんの言う通りよ。お兄ちゃん以外でこんなに暖かく私を受け入れてくれるなんて……この町の魔物達の方が人間らしく感じたわ。」

 

「ああ。……できればもっとこの町のことを知りてぇな。」

 

この町の皆の優しさ、暖かさに触れた二人はこの町に残りたいと心から思った。

 

「…ならこの町で働くか。」

 

フォルテの言葉に二人は振り返る。

 

「いいのか?」

 

「ああ。もし残る事を選んだらやってもらう仕事も考えていたからな。」

 

フォルテはそう答え仕事の内容を説明しようとした時!訓練所から凄まじい爆音らしき音が響いた!

 

訓練所の方を見るとベニマルの黒炎が放たれている!

 

「これは!」

 

《例の四体のエネルギーを感知した。》

 

電脳之神(デューオ)からの知らせで奴らが動いた事がすぐにわかった。

 

「なんだ!」

 

「何があったの⁉︎」

 

突然の事態に驚く妓夫太郎と梅

 

「話は後だ!すぐに訓練所に向かう!」

 

「なら俺達も行くぜ。」

 

「うん!お兄ちゃん!」

 

フォルテを追って二人もついて行く。

 

 

 

訓練所に着いたフォルテ達。

 

「やはり彼奴か。」

 

「なんだ彼奴らは?」

 

「もしかして…鬼⁉︎」

 

三人の目に映ったのは、訓練所で暴れる四体の鬼の姿だった。

 

そのうちの一体…天狗の服装を着た鬼が右手に持つ天狗が使うようなヤツデの葉の形をした羽団扇を振るい猛烈な突風を起こす。

 

「「「「うわあああ‼︎」」」」

 

凄まじい突風にゴブタ達が吹き飛ばされる

 

「ウハハハハハ!楽しいのう。豆粒がバラバラと飛んでいきよった。」

 

上空ではガビルが有翼族(ハーピィ)のような翼と手脚が蹴爪になっている鬼と戦っていた。

 

「カッハハハハハ!喜ばしいのう。空で俺と戦える奴がいるとはのう。」

 

「空中戦で我が輩が負ける訳にはいかん!」

 

凄まじい空中戦を繰り広げる中、地上では凄まじい槍の応酬が繰り広げられていた。

 

「悲しいほどに強いのう…。」

 

「何が悲しいのだ!その槍術…中々にやる!」

 

ヤマトマン相手に互角の応酬を繰り広げる青い作務衣を来た十文字槍を持つ鬼。

 

そして、ハクロウとベニマルが相手をしているのは立浦文様柄の着物を着た鬼で、錫杖から電撃を放っていた。

 

「己れ!ちょこまかと!腹立たしい!」

 

「ほっほっほ!そうは言いおるが中々正確な攻撃を仕掛けくるのう。」

 

「威力もかなりのものようだ。くらったら動きを封じられるな。」

 

ハクロウとベニマルは瞬動法で巧みに雷攻撃を躱していく。

 

可楽(からく)空喜(うろぎ)哀絶(あいぜつ)積怒(せきど)

 

半天狗の分裂体である喜怒哀楽を司る四体の上弦の肆だ。

 

憎珀天は本体が倒されかけた瞬間に、積怒が可楽、空喜、哀絶の三体を吸収して生まれた存在。フォルテが発見する前に、憎珀天からその四体が分裂していたのだ。

分裂体一人一人に意思があり独立していた。それにより憎珀天から分裂して勝手に動き出したようだ。

 

妓夫太郎達を連れ帰る時に感知はできていたが、封印の洞窟にはガビル達だけでなくベスターの研究所もあった。下手に戦闘をしたら洞窟が崩壊する可能があった為に放置した。そんな喜怒哀楽が訓練所で暴れ回っている。

 

四体の鬼の目に刻まれた数…肆。それを見た妓夫太郎達は驚く。

 

「肆だと⁉︎…まさか彼奴ら半天狗か!」

 

「どういうこと?なんで四人になってるのよ!しかも若返っているし!」

 

「妓夫太郎?お前達は半天狗の能力を知らなかったのか。」

 

「ああ。俺達の力では、まだ上の上弦には敵わないからなぁ。」

 

「なるほどな。…半天狗が追い込まれれば追い込まれるほど本体である自分を守る強力な分裂体を生み出す能力がある。それがあの喜怒哀楽を司る鬼達だ。」

 

「そんな能力だったのか。」

 

「じゃあ本体の半天狗もいるってこと?」

 

「いや。分裂体自体に独立した自我がある。喜怒哀楽が合体した存在がこの世界に転生した後に、奴らは分裂したようだ。」

 

俺が妓夫太郎達に説明している中、カーネル達も駆けつけて来た。

 

「フォルテ様!」

 

「大丈夫フォルテ!」

 

「これは中々面白いことになっているな。」

 

「あの鬼は敵ってことだよね。」

 

「カーネルそれに皆来たか。」

 

「ここ僕が片付けようか?」

 

「いや俺が片付けよう。」

 

D(ダーク)ロックマンとD(ダーク)ブルースがバスターとソードを構える。

 

「待て、普通に攻撃しても奴らは倒せない。よく見ろ。」

 

フォルテの言葉にカーネル達は喜怒哀楽達を見る。

 

「ぬん!」

 

「はあ!」

 

ハクロウとベニマルが積怒の両腕を斬り落とした

 

「くっ!」

 

それに積怒は更に怒り二人を睨みその瞬間、斬られた両腕が一瞬のうちに再生した。更に掌から錫杖が生えて、積怒はそのまま錫杖を掴み取り雷を放つ。

 

ハクロウとベニマルは即離れて回避した

 

「なんと一瞬のうちに再生するとは…。」

 

「あの再生速度は豚頭魔王(オークディザスター)…いや暴風大妖渦(カリュブディス)をも超えているな。」

 

躱しながら驚くハクロウとベニマル。

 

千槍撃(サウザンドスピア)!」

 

ヤマトマンの必殺技である槍の千本突きが炸裂!哀絶の身体は無数の槍の連撃により刺し傷による穴だらけ状態となったが、こちらも瞬時に再生した。

 

「なんという再生力。」

 

ヤマトマンが驚く中、哀絶はお返しとばかりに構える。

 

「激涙刺突!」

 

十文字槍から繰り出される五つの衝撃波がヤマトマンを襲う。

 

「ぬう!」

 

ヤマトマンは槍を使ってなんとか受け流しながら躱した。

 

空中戦を繰り広げるガビルと空喜。

 

「ガァアアアア!」

 

空喜が口から強烈な音波を放った。

 

「がっ⁉︎」

 

槍を突き刺そうと接近していたガビルはもろに受け後ろに弾き飛ばされる。

なんとか体制を整えたガビルは頭を振るう。

 

「なんと凄まじい音なのだ…頭の中でまだ響いてくるようだ。」

 

「ほう。俺のこの攻撃を耐えきるとは実に喜ばしいことだのう。」

 

空喜の発した音波…狂圧鳴波は、並の人間なら鼓膜が破れ意識を失ってしまう。

 

「カアア!」

 

空喜はそのままガビルに攻撃を仕掛けようと襲い掛かる!

 

「なんの!渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)!」

 

ガビルの水流の螺旋が空喜に向かう。

 

「ちぃ!」

 

空喜はなんとか回避するも左手脚が貫通して千切れた。

 

「やるのう!」

 

だがその手脚も瞬時に再生した。

 

激しい空中戦が繰り広げられる中で、その真下で戦うゴブタ達は可楽に苦戦していた。

 

「ほらほら!どうした?頑張れ。」

 

「「「やあああ!」」」

 

ゴブタ達狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)が四方から攻撃を仕掛けるも可楽は軽々と躱していく。

 

そんな中でゴブゾウが可楽の背後をとり切り掛かる。

 

「おっと!」

 

だが可楽に通じる訳もなく避けられたうえにそのまま踏みつけられた。

 

「ほらほらどうした? もっと頑張ってみろ。」

 

楽しげに笑いながらゴブゾウを踏む可楽……だが、その影からゴブタが飛び出した。

 

「たぁ!」

 

そして一閃!可楽の首を斬り落とした!転がり落ちる首。

 

「やったっす!」

 

ゴブタは倒したと確信した瞬間、首を失ったはずの胴体から蹴りを入れられそのまま蹴り飛ばされた。

 

「「「「ゴブタ!」」」」

 

他の仲間達がゴブタの元に駆け寄る。

 

「クハハハ!わしの影から飛び出してくるとは実に面白い。」

 

首だけになっても平然と喋る可楽。そして胴体が首を拾い上げそのまま切り口に合わせるとすぐさま繋がった。

 

そのあまりにも異様な回復力……いや回復と呼んでいいのかすらわからない再生力にカーネル達は唖然としていた。

 

「あれはなんなのですか…フォルテ様…。」

 

明らかに急所や致命傷を与えているのに瞬時に元に戻るその光景にカーネルが問う。

 

「……かつて、昔日本にいた鬼だ。」

 

「鬼って……あんな生命力尋常じゃないよ。」

 

「…フォルテの言う通りだったね。」

 

「あれでは攻撃するこちらが消耗するだけだ。」

 

「四体とも同じ再生力があるんだなぁ。……あれじゃあ柱じゃない鬼狩り共じゃ勝てない訳だ。」

 

「しかもこっちの世界に来た影響で強くなっているのよね。……あれ?本体の半天狗がいないならあの分裂体は弱点がないってこと⁉︎」

 

「そう言うことだ。….まぁ殺せないが倒す方法はある。」

 

その言ってフォルテは歩みだす。

 

「ここは俺に任せろ。」

 

 

 

ゴブタを庇い守ろうと構える狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)

 

「クハハ。そいつを守ろうというのか?いいじゃろう。纏めて片付けやろう!」

 

可楽が再び羽団扇を振るうと、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は風圧で地面に押さえ付けられる。その凄まじい風圧で地面に羽団扇型のクレーターができる。その威力は重力と間違えてしまうほど。

 

「「「グッ…ガ……。」」」

 

「うっ…動けないっす!」

 

必死に踠くが動けないゴブタ達。

 

「クハハハ。中々楽しめたがそろそろ終わりじゃのう。」

 

可楽が羽団扇を掲げてとどめを刺そうとした時、紫の光輪が飛んできて可楽の腕を斬り落とした。

 

「おっ?」

 

可楽が飛んで来た方に顔を向けると、フォルテがゆっくりと歩み寄っていた。

 

「フォルテ様!」

 

風圧が止み立ち上がるゴブタ達。ゴブタ達の無事を確認したフォルテはベニマル達に念話で指示する。

 

 

『皆聞こえるな。此奴らの相手は俺がする。皆はその場から離れろ。』

 

『しかし…この者達の再生能力は異常です。フォルテ様の攻撃でもすぐに再生されるおそれが…。』

 

『心配するな。奴らの攻略法は既に用意できている。』

 

『おお!流石フォルテ様。』

 

『ではすぐ撤退しろ。』

 

『了解致しました。』

 

ベニマル達は指示に従いその場から離れる。…ゴブタに至っては全速力。

 

その場には残ったのは喜怒哀楽と対峙するフォルテのみ。…睨み合う両者。

 

「…此奴は妓夫太郎達を連れて行った奴か。」

 

「カッハハハハ、此奴の後を追って外に出られたんじゃったのう。」

 

「クハハハそうじゃのう。」

 

「…悲しいが事実じゃのう」

 

「…貴様らの相手は俺だ。」

 

フォルテの言葉を聞いた瞬間、空喜が先に動く

 

「カッハハハ面白い!なら俺が相手だ!」

 

「待て!空喜!」

 

積怒の言葉を無視して空喜がフォルテに襲い掛かる。

それに対してフォルテは両腕から紫の光輪を作り出し放った。

 

地獄光輪(ヘルズローリング)!」

 

迫る光輪に空喜は急停止しそのまま光輪を躱した。

 

「危ない危ない。じゃが俺には通じん!」

 

再びフォルテに向かおうとした瞬間……空喜の翼と腕が切り落とされた。

 

「なっ⁉︎」

 

突然のことに驚く空喜、切り落としたのは先ほど躱したはずの光輪だった。

 

フォルテは修行の成果で地獄光輪(ヘルズローリング)を遠隔操作できるようになっていたのだ。

 

翼を失い落下する空喜。だがすぐに再生を始める。このままだとすぐに復活だが、フォルテはそれを逃さない。

 

「フン!」

 

落下中の空喜に向かって飛び上がりそのまま胸部に腕を突き刺さした。

 

「カハ⁉︎」

 

貫かれた空喜は吐血

 

能力吸収(ゲットアビリティプログラム)!」

 

空喜はそのままフォルテの掌に粒子化して収束された喜の文字が書かれたチップへと姿を変えた。

 

そう。再生される前に存在其の物をチップに変えてしまえばいいのだ。

 

空喜がチップにされたことに目を見開き驚く可楽、哀絶、積怒

 

「空喜の奴…何をやっているのだ愚か者!」

 

「姿を変えられるとは…悲しいのう。」

 

「カカカッ!面白い能力じゃ!次はわしが楽しむ番じゃ!」

 

可楽が羽団扇を振るい突風を巻き起こす。

 

暗黒極波動(ダークネスオーバーロード)!」

 

だがフォルテは闇の波動を放ち突風を撃ち消した。

 

闇の波動がそのまま可楽達に迫る

 

「ちぃ!」

 

「おお!」

 

可楽達は三方向に別れて回避

 

闇の波動が着弾し凄まじい爆発と共に爆煙が辺りを包み込む。

 

「こんな煙わしが纏めて吹き飛ばしてくれる!」

 

可楽が羽団扇を振るい突風で爆煙を吹き飛ばす。

爆煙が晴れると、フォルテの姿がなかった。

 

「何処に?」

 

「可楽!後ろだ!」

 

積怒が声を上げた瞬間、可楽の頭をフォルテが鷲掴みにした。

 

闇之雷(ダークサンダー)。」

 

鷲掴みをした頭から黒紫の雷が可楽の全身を駆け巡るように放たれる。

 

「ガァァァァ!」

 

凄まじい雷撃を受けた可楽は黒焦げとなった。

 

「これで二体目。」

 

可楽もチップ化した。

 

「空喜に続いて可楽までも、何をしているのか!」

 

「残りはわしらだけ…悲しいのう。」

 

残る積怒と哀絶の方に振り向くフォルテ。

 

それに合わせるように積怒は雷を放つ。

迫る雷を躱すフォルテ。その瞬間、背後に周り込んだ哀絶が十文字槍からあの技を放つ。

 

「激涙刺突!」

 

繰り出された五つの衝撃波

 

「絶対防御。」

 

フォルテの周囲に透き通った結界が張られ哀絶の攻撃をそのまま反射

自分の攻撃をそっくりそのまま受けた哀絶の身体は穴だらけとなった。

 

その隙をフォルテは逃さずに哀絶の頭に手を乗せそのままチップ化した。

 

「残るはお前だけだ。」

 

フォルテは積怒に向かってそう言い放つ。

 

「己…腹立たしい…腹立たしい!」

 

怒る積怒は今までとは比べようのない雷を放った!その威力はカーネルの雷撃破斬(スクリーンディバイド)に匹敵する。

 

迫る雷だがフォルテは慌てずに次の手を使う。

 

「避雷針。」

 

フォルテの前に避雷針が設置された。そして積怒の雷の全て避雷針へと集まった。

 

「なに⁉︎」

 

そして全ての雷を受けた避雷針から雷が跳ね返され積怒は自身が放った雷をその身に受けた。

 

「ガッアアア!」

 

自身の雷で動けない積怒にフォルテは急接近!その手を翳す。

 

「くっ!……無念。」

 

そして、積怒もチップと化した。

 

「これで終わりだな。」

 

喜怒哀楽がフォルテによって倒された瞬間、皆がフォルテの元に集まる。

 

「流石フォルテ様っす!」

 

「うむ。相手の力を逆に利用する戦術は見事ですじゃ。」

 

「今までのフォルテ様とは違う戦い方でしたね。」

 

そう。今までは自分の技と力で攻めていたが、やはり戦術も必要だと思いバトルチップを組み合わせた戦術を試したのだ。

 

俺と喜怒哀楽の戦いを見ていた妓夫太郎と梅は。

 

「……只者じゃねぇとは思っていたが。」

 

「あそこまで強いなんて…。」

 

確かに戦術も見事だったが、フォルテのあの圧倒的な力があってこそだと俺と梅は理解した。

 

「さてと。次はこの四体を一体に戻すか。」

 

フォルテはそう言って憎珀天のチップを取り出す。その瞬間、喜怒哀楽のチップはまるで元一体に戻ろうとするように憎珀天のチップと一体化した。

 

《憎珀天のチップの安定化を確認した。実体化を実行するか?》

 

「ああ頼む。」

 

フォルテはそう言いながら憎珀天のチップに魔素を送り込み実体化させようとする。

 

電脳創造(サイバークリエイト)には実はある二つのスキルが統合されていた。

かつてシンシヤのいた時空と一時的に繋がったあの時に向こう側の空間を解析して得たスキル…妄想鏡(メガロマニア)編集鏡(パラノイア)

向こうの世界にいた鏡の魔女のユニークスキルだ。

 

妄想鏡(メガロマニア)は鏡から対象人物の無意識に問いかけ、その理想の姿を鏡の世界で実体化させる能力。

 

編集鏡(パラノイア)は自身の想像力から創り出せる。

 

この二つのスキルが統合している電脳創造(サイバークリエイト)で対象の情報と俺の情報を合わせることで電脳種の者達を生み出してきたが、それ以外の種の者達も創造可能となったのだ。

 

フォルテの魔素を吸収し続けていると、チップに書かれた憎の一文字が光り出し魔素が溢れ出る!

フォルテの手から離れ溢れ出た魔素が自然と形を成していく。

 

やがて人型の形を成し終えると魔素の霧が晴れその姿を現す。

 

雷神のような姿をした少年鬼……憎珀天

 

憎珀天の登場に周囲の者達はその凄まじい威圧感に身構える。

 

憎珀天はゆっくりと目を開き、上弦の肆と刻まれた両眼がフォルテを見据える。

 

静寂が辺りを支配する中、憎珀天はその場に跪いた。

 

「儂に新たな肉体を与えてくださり感謝する。…フォルテ様。」

 

「俺を主と認めると言うことか…。」

 

「無論。喜怒哀楽…儂の分裂体達の記憶を読んだ。あの圧倒的な力と戦術。何よりこの儂の不安定だった肉体を安定させ復活させたのだ。仕えるに相応しいお方だと判断した。」

 

「そうか。……ならばこれからは俺の…俺達の町の為に働いてもらうぞ。」

 

「はっ!」

 

こうして、憎珀天が俺の仲間となった。……やはり、電脳創造(サイバークリエイト)で創り出した者達は俺を主とある程度認めるようだ。

 

「なら俺達もお前の下に着くことにする。」

 

妓夫太郎が突然そんなことを言い出した。

 

「妓夫太郎?いや…別にそんなことしなくてもいいんだぞ。」

 

「あの強さを見ちまったらそうも言ってられぇんだよな。…それにこの町の者達の様子を見たら仕えたくなっちまった。」

 

「お兄ちゃんが決めたなら私も一緒よ。それに、私自身もフォルテ様の元で働きたいと思ってたからね。」

 

「二人共…。わかった。なら配下となった証に三人に同じ名前で名付けをするがいいな。」

 

「無論。」

 

「むしろ願ったり叶ったりだな。」

 

「私も。」

 

こうして、俺の元に陸と肆の鬼が仲間となった。三人の名付けにはかなりの魔素が消費した。更に憎珀天はユニークスキル喜怒哀楽でいつでも自在に積怒、可楽、哀絶、空喜を呼び出せるようになっていたので、四人にも名付けをした。

 

「ふっ…やはりこれだけの名付けだと魔素の消費が比べものにならない。」

 

シオンの料理で闇の妖気(ダークオーラ)を供給し続けていた俺でもベニマル達に匹敵するであろう妓夫太郎達の名付けには大量の魔素を消費した。

 

その翌日、妓夫太郎達は名付け影響で姿に変化が起こった。

 

憎珀天達は、額から広がっていた血管や目の下の罅が無くなった。

妓夫太郎は、細かった手脚は肉付きが良くなり梅毒による痣が綺麗に無くなっていた。

梅は、全身に広がっていた罅割れが綺麗に無くなった。

梅は元の人間だった頃の名にした。梅自身もそれを望んでいたので。

 

「ふむ。妓夫太郎達の名付けでの変化はそうなったか。」

 

その後、梅はシュナ達と一緒に着物作りをしてもらいながら試着をしてもらった。遊郭で一番売れっ子の花魁だっただけはあり、どの着物を着せても似合っている。

 

「梅さんとっても綺麗です!」

 

「本当に凄く綺麗。」

 

「ありがとう。シュナとハルナの作ったこの着物もとてもいいわよ。」

 

憎珀天と妓夫太郎には町の警護と盗賊や野盗など町に危害を加えようとするならず者達の相手をしてもらうことにしている。

 

そんな二人に俺は相棒を与えることにした。

 

「妓夫太郎、憎珀天。お前達に相棒を与える。」

 

「はっ。」

 

「それでどんな奴を相棒にしてくれるんだ?」

 

妓夫太郎の問いに答えるように俺は手を翳した。

 

電脳創造(サイバークリエイト)!」

 

掌から粒子化した魔素が放たれ姿が形成されていく。

霧のような体に手錠をした両手。大鎌を持ち鬼のような角のある悪魔…いや死神。

もう一体は、こちらも鬼のような角があり背には赤、青、黄、緑、白の球体をつけた連鼓がある。

 

「目覚めろキラーマン。エレメントマン。」

 

そう、キラーマンとエレメントマンだ。

 

「おっ俺達を創り出してくれて感謝するぜフォルテ様よ!」

 

「…俺も感謝。」

 

目覚めた二人がそうフォルテに言う。本来のエレメントマンは作った者が未熟で言語が話せなかったが、フォルテの創り出したエレメントマンはしっかりと話せる。

 

「キラーマンは妓夫太郎。エレメントマンは憎珀天と組むように頼む。」

 

キラーマンは妓夫太郎、エレメントマンは憎珀天の元に向かった。

 

「キラーマンだよろしくな。」

 

「妓夫太郎だ。お前の大鎌中々いいじゃねぇか。」

 

「そっちもいい鎌を使っているじゃねぇか。」

 

「…俺エレメントマンよろしく。」

 

「憎珀天だ。」

 

キラーマンと妓夫太郎は互いに気に入り、エレメントマンと憎珀天は握手を交わした。

 

(それにしても、鬼滅の鬼である三人までこの世界に現れるとは……他にもこの世界に来ている者がいるかもしれないな。)

 

フォルテのその予想は当たっていた。

 

クレイマンに協力するある男の何処にある隠れ家。

そこでは研究用のバイオカプセルが無数に並び、その中にはダークチップが一枚ずつ浮かんでいた。

 

「ふむ…ダークチップの安定量産は今の所は順調に進んでいる。」

 

そのバイオカプセルが並ぶ中央の玉座に座る謎の男。

 

「この世界来た時に得たスキルとやらで闇の妖気(ダークオーラ)を私自身で生み出せるようになったが、器たるチップの開発には少し時間が掛かってしまった。まぁそれも今この時の為だと思えばこの苦労など安い物だ。」

 

男は笑みを浮かべる。

 

「貴様の研究が進むのは良いが、私の為の研究を疎かにしている訳ではあるまいな。」

 

そんな男に声を掛けて別の者の声が響く。

 

「ふっ。私がそんなことをするはずがないのは君も知っているだろう。」

 

男が首を横に向けるとその先には、スーツの様な小洒落た洋服を着て白い帽子を被った美青年が立っていた。

 

「まぁ確かに。貴様の化学知識には私も驚かされた。だからこそ私は貴様と手を組んだのだ。……私をこの世界に召喚した貴様をな。」

 

「私が召喚魔法に興味を示し改良した召喚魔法で君を召喚した日は忘れはしない。」

 

「それは私もだ。私の意志を託したあの小僧が私の意志を拒み私の願いは消えてしまうはずだったが、貴様の召喚魔法でこの世界に呼び出され私は自身の願いを遂に叶えられた。」

 

「…日の光の克服だったな。」

 

「今の私は遂に不変の存在となった。私をこの世界に導いた貴様だからこそ、私は貴様に協力するのだ。」

 

「ああ。君の細胞は素晴らしい。これまで研究したあらゆる細胞や組織…遺伝子をあらゆる面で超越した存在だ。…それで配下となる新たな者達は上手くいっているのかい。」

 

「まだ三割と行ったところだ。人間以外に魔物共にも私の血を与えてはいるが、今の私が望むような駒にはまだ成長していない。」

 

「まぁ気長にやっていくといい。この世界の魔王に君の存在を知られるにはまだ早いからな。」

 

「魔王か……この私がその魔王の力を得たらより完璧な生物へと進化するはず。……その時が楽しみだ。」

 

「その通り。では君に頼まれていた研究の現段階の成果を見てもらおうか。」

 

男が玉座のスイッチを押すと、奥に更に並ぶバイオカプセルが明かりに照らされる。

 

そのバイオカプセルの中にはなんと小洒落た洋服の者と同じ顔の者達が無数にいた。

 

「培養の過程に戸惑ったが、魔導王朝サリオンから手に入れた人造人間(ホムンクルス)の技術でようやく造るができた。」

 

「ふっ、素晴らしい。流石と言っておこう。」

 

小洒落た洋服の男はカプセルの一つに触れる。

 

「最強の駒を作るならば私自身を複製すればいいのだ。分身などもあるらしいが、それより私の細胞から造り出した個体の方が戦力になる。」

 

「まだ肉体の安定には時間かかかる。後は実用実験も必要だが、着実に君の手足は増えている。」

 

「ああ楽しみにしている。……安定した後は確か、何体かをあの者達に譲るんだったな。」

 

「ああ。向こうの知る技術と引き換えにな。」

 

「…肉体が滅びても生きながらえられる…妖死族(デスマン)の創り出せる禁呪……それを手にした時私はより完璧な生命体になれる!」

 

その時を想像したのか、今まで紳士的だった態度が急変し感情的となり不気味な笑みを浮かべていた。

 

暗躍する者達の計画が進む中、とある小国のある店では魔国連邦(テンペスト)の噂が広がっていた。

 

「魔物の国?」

 

「ああ。なんでも英雄ヨウムって奴がジュラの大森林に現れた豚頭帝(オークロード)を倒したって話だ。」

 

侍の男が店の亭主から話を聞いていた。

 

「でだ、そのヨウムに協力したのがジュラ大森林に町を作った魔物達だとよ。」

 

「なるほど。」

 

「町の主がスライムと妙な冠をした魔人の子供らしいが、町に様々な魔物達が暮らしいるらしい。確か、…鬼人も住んでいるそうだ。」

 

「…鬼人か。わざわざ話してくれてありがとう亭主。」

 

「いいってことよ。それじゃあ私は戻るんで、食べ続けている相方さんにもよろしくな。」

 

そう言って亭主は店の奥へと戻った。

 

「…聞いていただろ。」

 

侍が目の前の者に声をかけるが、その者はスープを呑んでいて喋れない。

やがてスープを呑みきると、器から口を離す。

 

「美味い!」

 

器を下ろすと同時に大きな声でそう言った。あまりの声に他の客達は思わずギョッと声の方へと顔を向けた。

 

「…いつも言っているだろう。もう少し声を落とさないと周りの者達の迷惑となる。」

 

「そうでしたね。」

 

「だが…お前の様な者と出会えたなら炭吉の子孫もきっと大丈夫だな。」

 

「俺も全集中の呼吸を編み出し、五つの基本の呼吸を考案し教授した貴方に会えて光栄です。」

 

「そうか。…話を戻すが魔物の国をどう思う?」

 

「噂を聞く限り善良な者達だと思います。…そこに住む鬼人も俺達の知る鬼とは違うと思います。」

 

「そうだな…。だがこの世界にも〝鬼〟が出現していることについて何か知れるかもしれん。」

 

「なら…。」

 

「ああ。行ってみるとしよう…魔物の国へ。」

 

こうして額に炎のような痣を持つ侍と、炎を思わせる焔色の髪の青年が魔国連邦(テンペスト)へと向かって歩き出した。

 

 

 

 




鬼滅の刃から上弦の陸である妓夫太郎と堕鬼こと梅と上弦の肆の半天狗の最強分裂体である憎珀天を仲間にしました。
妓夫太郎達は鬼滅を見て地獄でなく幸せになって欲しいと思い選びました。
憎珀天は戦力としても活躍出来ると選びました。

読んでくださった方から他にも鬼滅から登場するである人物達が分かってしまっていると思いますがどうなるかはこれからも見守っていて欲しいです。

フォルテ側の戦力が上がった分。あの男にも強力な戦力がないといけないと考えあの男…鬼を協力者にしました。
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