転生したらフォルテだった件   作:雷影

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壱と参の彼らも現れる。そして憤怒の魔人……あのラスボスがある姿で登場する。


44話 憤怒の魔人と壱と参の鬼

ゼロとゼロワンが仲間となってから更に半月が過ぎた。

二人の働きにより仲間となった電脳魔獣(ウィルス)達の統率がとれ、飼育施設も順調に進んでいる。

 

更に、電脳世界に発生する電脳魔獣(ウィルス)種に新たに…ゼロウィルスが加わっていた。ゼロとゼロワンの崩壊した一部の残留データがこの世界の一部に組み込まれたようで稀に発生する。

 

その時現れるゼロウィルスはゼロの姿なのだが、色が灰色で髪も白髪となっている。まるで抜け殻の様な存在。だが強さだけは以前のゼロ達に匹敵している。

その姿は心を得る前のゼロとゼロワンそのものだった。

 

だがそんな以前の自分と呼べる存在にゼロとゼロワンが負けるはずもなく。電脳魔獣人(ウィルスノイド)となって進化した二人は見事に倒していた。

電脳魔獣人(ウィルスノイド)となってからは更にバトルチップも自在に使えるようになり、意思がある二人はチップデータを駆使した戦術を使いながら、より思考を巡らせる様になっていた。

 

そんな二人の為にと、フォルテはゼロウィルスを電脳魔獣支配(ウィルスドミネート)で支配下に入れ、二人の専属部隊を結成した。

 

ゼロウィルスの数は発生自体が稀少なので今はまだ6体しかいない。

それでも、あのロックマンとブルースと互角に戦える力を持っているのだからこれだけでもかなりの戦力にはなる。

 

流石にゼロとゼロワンの様な意思は芽生えはしないが、フォルテやゼロ、ゼロワンの指示には従ってくれる。

 

ゼロとゼロワンもトリルやアイリス達と触れ合い、紅丸達との訓練でより感情…心について多くを学んでいった。

 

 

そんな日々の中、電脳之神(デューオ)に任せていたヒカリタダシプログラムの復元及びプログラムの完成が完了した。

 

「ワイリープログラムも用意出来ているのか?」

 

《無論。悪之科学者(Dr.ワイリー)による作成は完了している。》

 

「ならば始めてくれ。」

 

《了解した。》

 

 

……フォルテの意識内で光と闇…二つのプログラムが一つに重なり合う。

 

それと同時に二つのプログラムからなる膨大な情報(データ)がフォルテの身体の隅々までインストールされていく。

 

インストールが完了すると同時に電脳之神(デューオ)に告げる。

 

《光と闇のプログラムの融合により新たなシステムプログラムが完成。フォルテへのインストールによりアルティメットスキル電子変換(スペクトル)を獲得。》

 

スペクトル……それはアニメ版…映画の世界で光正とワイリーが共同開発した未来型ネットワークシステム。

人間を特殊な電子データに変換して電脳空間と現実世界を自由に行き来できるようにするという驚異の計画。

 

だが、計画の途中でワイリーが他国に自分の研究を売り込み離脱。

このプロジェクトは解散となった。その後…20年の時が過ぎた頃、破棄されたワイリープログラムがある者と融合し強大な電脳生命体へと変貌し地球の存亡を賭けた戦いが起こってしまった。

 

そんな電子変換(スペクトル)を俺はアルティメットスキルとして手に入れた。

 

電子変換(スペクトル)により物質(マテリアル)精神(スピリチュアル)星幽(アストラル)、魂、霊子などあらゆる物を非物質化…電子データに変換できるようになった。

 

これにより、フォルテがその気になればこの世のあらゆる物を電子データに変えることが可能になり、逆に電脳世界(サイバーワールド)を現実世界に実体化させることも可能となった。

 

だが電子データにする物によっては膨大なエネルギーを消費しなければならない為今はおいそれと使えない。

それでも、今までフォルテが用意した擬似電脳化を組み込んだ転移魔法陣がなければ行けない者達や資材も、フォルテの意思で大勢を電脳世界(サイバーワールド)に電子データ化して転送できるようにはなった。

 

そして、それだけではない。

 

電子変換(スペクトル)に関する情報(データ)及び闇の妖気(ダークオーラ)暴風大妖渦(カリュブディス)の複製魔核を参考に創り上げた擬似魔核へのインストールに成功した。擬似魔核は混沌の魔核(カオスコア)へと変異した。》

 

フォルテの手には何処か機械的な球体が握られていた。……これが変異した混沌の魔核(カオスコア)だ。

 

何故これを創り出したのか。それは……チップ化していたある精霊の器にする為だ。

フォルテは胸のエンブレムマークから一枚のチップを取り出す。…チップに描かれているのは青い炎の炎の巨人(イフリート)だった。

 

「さぁ…出て来い爆炎の奪還者(ジーンフリート)!」

 

チップに描かれている者を解放する。チップから蒼炎が燃え上がり、フォルテの前で形を成していく。

そして、姿を現したのは……青い炎の炎の巨人(イフリート)……いや進化した個体である爆炎の奪還者(ジーンフリート)

 

このジーンフリートは赤いヴェルドラ同様にシンシヤの中にいた存在。

赤いヴェルドラをチップ化する際、此奴もチップ化していたのだ。

 

ジーンフリートとは、向こうの世界で生まれたイフリートのもう一つの可能性。

自由を求めたイフリートがシズさんから完全に主導権を奪還して進化した姿…それがジーンフリート。

 

イジスによって生み出されたが、リムルに勝てないと判断されオリジナルのシンシヤに捕食された。そしてリムルの時と同様に赤いヴェルドラの元に居たのだ。

 

シンシヤが複製される時に同じように複製され不安定だった此奴を俺は解析しチップ化した。……そして今此奴を解放した。

 

解放されたジーンフリートは、ゆっくりと目を開けフォルテを見据える。

 

「外に出られた気分はどうだジーンフリート…。」

 

フォルテの問いに、ジーンフリートはその場で跪いた。

 

「解放していただき感謝しますフォルテ様。」

 

フォルテに対し忠誠を誓う様な礼儀正しい姿にフォルテは少し驚いた。

 

「俺を認めるのか。」

 

「無論です。不安定だった私を姿を変えたとはいえ救って頂きました。その後はずっとフォルテ様を見続けました。フォルテ様の日常…その光景から私に足りなかった本当の意味を教えてくれました。」

 

なるほど。どうやらジーンフリートはリムルの中のイフリートと同じ様に、俺の中から色々学んだのだな。

 

「なら丁度いい。ジーンフリート…お前は更に強くなりたいか?」

 

フォルテの問いにジーンフリートは顔を上げて答える。

 

「勿論!強くなり…出来ればフォルテ様に仕えたい所存でございます。」

 

ジーンフリートの顔を見るフォルテ…その瞳は曇り無く透き通っていた。

 

「…いいだろう。ならこれをお前に与えたいと思っている。」

 

フォルテは混沌の魔核(カオスコア)をジーンフリートの前に出し見せる。

 

「ッ⁉︎……なんと凄まじい妖気(オーラ)!」

 

「この魔核は、俺の知る強大な電脳生命体の力を再現したものだ。これを器にすればお前は間違いなく強大な力を得て更に進化するだろう。」

 

フォルテの言葉にジーンフリートは目を見開く。

 

「私にその様な力を……フォルテ様感謝します!必ずやフォルテ様の力となることを誓います。」

 

「ああ。期待しているぞ。」

 

フォルテの手に握られていた混沌の魔核(カオスコア)が青い炎の光に包まれ宙に浮いた。その様はまさに人魂である。

 

そして混沌の魔核(カオスコア)はそのままジーンフリートの中へと入った。

すると、ジーンフリートから黒紫の炎が燃え上がりそのまま包み込んだ。

 

ウォオオオオオオ!

 

ジーンフリートを包む黒紫の炎から、手枷に鎖で拘束された憤怒の魔人の幻影が咆哮を上げる姿が見えた。…その姿はエグゼ5のラスボスであるネビュラグレイだ。

 

フォルテはそのまま、ジーンフリートにその名を与える。

 

「ジーンフリートよ。今日よりお前の名は憤怒の魔人(ネビュラグレイ)だ!」

 

名付けによりフォルテの魔素を吸収したジーンフリート…いやネビュラグレイは幻影として現れていたオリジナルの憤怒の魔人(ネビュラグレイ)と一つに重なり合いながら炎の中で融合していく。

 

 

やがて炎が弾け飛び姿を現したのは、手枷と足枷をし鎖がその手足を拘束するように絡み付くように巻き付き、背には六つの鋭い楔が突き刺さっている爆炎の奪還者(ジーンフリート)の姿と憤怒の魔人(ネビュラグレイ)の姿が混ざり合った人型へと進化した。

手足が赤い憤怒、身体が憎悪を表す様な紫の炎が燃え、頭はジーンフリートをベースにネビュラグレイの角と憤怒の顔が合わさったものへと変わっていた。

 

《個体名ネビュラグレイは、炎の上位精霊から混沌の上位精霊へと進化が完了した。》

 

電脳之神(デューオ)がそう告げた後、ネビュラグレイは今の自分の姿を確認する。

 

「これが…今の私……力が漲ってくる!」

 

進化したネビュラグレイは、新たな自分の姿と力に歓喜した。

 

この進化により、ネビュラグレイは今の人型(混沌の上位精霊)の姿と憤怒の魔人(ネビュラグレイ)の姿そして人魂と自在に姿を変えられるようになった。

 

「これからを期待しているぞ。…ネビュラグレイ。」

 

「はっ!」

 

その後、ネビュラグレイは人魂となってフォルテのエンブレムへと戻った。

 

こうして、フォルテは新たに創り上げた上位精霊を仲間とした。

 

……それから一週間後。

 

縁壱と杏寿郎が餓鬼討伐から帰ってきた。……ある者達を連れ帰って。

議事堂の会議室。用意された席に座りフォルテと対面する縁壱と杏寿郎。

 

「久しぶりだな縁壱、杏寿郎。」

 

「ああ。」

 

「皆元気そうでなによりだ。」

 

「それで俺に頼みたいこととはなんだ?二人の頼みだから俺ができる範囲のことはする。」

 

「そう言ってくれると助かる。」

 

「実は三人ほどこの街に住まわせたいのだ。」

 

「三人?…構わないがその三人とはどんな奴なんだ。」

 

フォルテの問いに縁壱と杏寿郎は顔を見合わせ頷く。

 

「入って来てください。……〝兄上〟。」

 

縁壱の言葉と共に会議室の扉が開いて三人の者達が入って来る。

 

一人は額と首元から頬にかけて縁壱と同じ炎の様な痣があり、顔も縁壱と瓜二つの侍。だが…目がなんと三対六眼であり真ん中の左右の目には、右眼に壱、左眼に上弦と刻まれていた。

 

その侍は…縁壱の兄であり鬼となった者。黒死牟…人間だった頃の名は継国巌勝(つぎくにみちかつ)だ。

 

もう二人は、紅梅色の短髪の細身ながら筋肉質な体格の男性と花の形の瞳をし額に可愛らしい角がある鬼人と思しき少女だった。

…男性の瞳には右眼に上弦、左眼に参と刻まれていた。

 

そう。…猗窩座(あかざ)と人間時代の恋人だった恋雪その人だった。

 

「黒死牟に猗窩座…それと恋雪。…なるほどそう言うことか。」

 

フォルテは彼らを見て色々納得した。

 

そして縁壱が説明する。

 

「あれから、餓鬼を討伐しながら更なる情報を集めていた。そんな時だった。ある村に着いた時、私の顔を見た村人達が急に驚き出した。そして…兄上らしき情報を得たのだ。」

 

目撃された森に向かい。探索を続けて一週間後。…縁壱は巌勝を見つけたのだ。

 

その日は赤い月の夜……そうあの日と同じだった。…二人が最後に出会ったあの夜と。

 

「……縁壱。」

 

「…兄上。」

 

森の中に広がる草原。そこで向かい合うかつての兄弟。

 

「……お前もやはりこの世界にいたのだな。」

 

巌勝そう呟く中、鬼の姿のままの兄の姿を見た縁壱は目から涙を流した……あの夜の日のように。

……フォルテと出会った縁壱は知った。何故兄が鬼となったのか…。

 

フォルテの世界で語られた兄の思いと真実。自分の力のせいで兄は道を踏み外した……その事実に縁壱は自分を責めた。

再会をした後、ずっと身近にいながら兄の変化に気付けずにいた自分を。

 

「兄上…申し訳ありません…。」

 

泣きながら謝罪する縁壱。それに対して巌勝は内心戸惑っていた。

何故縁壱がこの世界にいるのか…何故あの頃と同じ若い姿なのか……何故泣いているのか。

 

自分があの死に際に思ったからなのかと巌勝が思っていると、縁壱が刀を抜いた。

 

「…今の私にできるのは、あの日の決着をつけること。それが兄上の望みでもあるのですから。」

 

あの日……そう、私は縁壱との最後の戦いで縁壱は寿命で死に勝ち逃げに近い屈辱を受けた。……だがあの鬼狩り達との戦いで自分が真に望んでいることを理解した。……私は……お前の様になりたかったのだ。

 

巌勝も静かに己の一部である異業の刀を抜き構える。

 

互いに一分の隙もない構えながら動かない。

 

………そんな時、木から小鳥が飛び出した瞬間、それを合図とばかりに同時に駆け出す二人。そして互いの刀がぶつかり合う。

 

日輪の炎と三日月型の斬撃が激突

 

それから互いの呼吸と剣技が激しくぶつかり合うたびに、鋭い金属音が響きながら火花を散らす。

 

互いの刀がぶつかり合うたびに、……不思議と相手の感情が伝わっていた。

 

「…これは……縁壱の悲しみ…⁉︎」

 

「…これが兄上の心の叫び…。」

 

刀を交える事に伝わる両者の気持ち。これは縁壱が新たに得たユニークスキル和解者の能力だった。

 

この力を得るきっかけを与えたのはやはりフォルテだった。

 

それは、縁壱に兄である黒死牟の最後の戦いと思いが描かれた20巻を読ませた時の話。

 

「……これが兄上の本当の思い。私のせいで兄上は…。」

 

「縁壱。お前のせいじゃない。人はそれぞれ違う…まったく同じにはなれる筈がない。だが…お前の兄はお前に無意識に憧れていた。」

 

「…フォルテ殿。」

 

「お前達兄弟がもし再会できたなら、1度本気で戦ってみろ。」

 

「兄上と本気で…。」

 

確かに…兄上とは何度も手合わせはしたが、あの最後の日以外で本気で戦ったことはなかった。

 

「ある格闘家は己の拳は自身を表すと言った。格闘家が拳を交えれば相手の魂の叫び…思いが伝わると。」

 

「魂の叫び…。」

 

「お前達は対話より戦って語り合う方がいいと俺は思った。縁壱ならば、刀で語り合える筈だ。」

 

フォルテにそう言われ兄と向き合う為にと己が精神を高め得たユニークスキル…それが和解者。

 

和解者のスキルで自身の気持ちを刀に宿し対象に斬りかかることで斬撃を浴びた相手の心に自身の感情と思いを伝えられる。このスキル発動中は対象に痛みはあるがダメージを与えることはない。

 

「陸ノ型 常世孤月・無間!」

 

「肆ノ型 灼骨炎陽!」

 

剣技を出し合い刀を交える毎に…互いの心が流れ込む。

 

縁壱に伝わる…兄が自分を憐れむ心……だがそれがあの初めての稽古で変わっていった……兄上を凌ぐ力を持っていた事を知った兄上は私に対しての憐れみが嫉妬と憎悪へと変わってしまった。そこからあの再会で兄上は家族を捨ててまで私の剣技を得ようとした。……だが兄上は私の呼吸を物にできず痣の代償を悔やんだ。そこをあの男につけいられ鬼となってしまった。

 

……私と兄上……双子であるはずのこの違い……自分が何もなし得ず…何も残せない悲しみ……兄上は私になりたかったその心を……。

 

巌勝にも伝わる……縁壱の思いと悲しみが。縁壱に接する昔の自分の姿……父に殴られたあの夜に渡した笛……あの時見せた自分の笑顔の姿。

母が病死したあの夜に家を出た縁壱はただ走り続けた.。

そんな縁壱が出会った……妻となる女性と。

女性…うたとの生活は縁壱にとって掛け替えの無い物だった。……だがその生活は壊された。

うたが孕り臨月が近づき、縁壱が産婆を呼びに家を離れた……だがその夜……うたと腹の子は鬼に殺された。……悲しみの中、10日間も妻と子供の亡骸を抱いていた縁壱……。鬼狩りと出会い妻と子を弔ったその夜に、縁壱は夢を見た…愛する妻と子と過ごす自分を……もう叶わない日々を夢で。

自分が命より大切に思っているものでも…他人は容易く踏みつける。

鬼がこの美しい世界に存在している為に。

そうして鬼狩りとなった縁壱が呼吸と剣技を鬼狩り達に教えた。……鬼狩りとして生きていく中で私と再会した縁壱……そしてあのお方と対峙した。

あのお方…無惨様との戦いで技を完成させるも逃した縁壱……更に私が鬼になった責任を追及され鬼狩りを追放された。

 

……私はきっと無惨を倒す為に生まれた……だがしくじった。

 

縁壱から後悔と無念の悲しみが流れ込む。

 

そんな縁壱の心を救ったのが……あの兄妹の先祖だった。

 

縁壱が救った命…その子供の姿に自分の子の姿を重ねた縁壱は泣き続けた。

 

そして年月が過ぎ……あの夜の日で縁壱の命は終わった。

 

……何も成し得ていない。望む日々を……愛する者達を奪われ……尊敬する者の変わり果てた姿……悲しみと後悔………だがそれでも守れた命はあった…これが縁壱の心の声…。

 

互いの心を知った二人はいつの間にか刀を下げていた。

 

「……ふっ。私は愚かだな。お前の力に嫉妬し全てを捨てて得たのが変わり果てたあの姿だった。」

 

「…兄上。」

 

「お前は全てを持っているなど私の勝手な思い込み……愛する者を失いながら戦っていたお前と愛する者達を捨ててまで力を得ようとした私……結局、私はお前の様になれかった……いやなれる筈がないな。」

 

縁壱の心を知った巌勝……己の愚かさを今身をもって……いや心をもって知った。

 

「兄上…私達は双子でした。だが決して同じではない。私は私…兄上は兄上なのです。」

 

縁壱はそう言って巌勝に手を差し伸べる。

 

「縁壱…。」

 

「今からでもやり直せます。……だから兄上、一緒に来てくれませんか。」

 

縁壱の偽りの無い瞳を見て巌勝は刀を収め歩み寄りその手を取った。

 

「……済まなかった……縁壱。」

 

この異世界で縁壱と巌勝は真の再会を果たし和解した。

 

 

 

 

「……そうか。良かったな縁壱。」

 

縁壱の話を聞き終えたフォルテは笑みを浮かべた。

 

「となると、杏寿郎も似た様な状況だったのか。」

 

「うむ!俺がある村で餓鬼の討伐を終えた後の事だ……。」

 

村に戻ると傷だらけの村人達が集まりざわついていた。

 

「どうしたのだ?」

 

「大変なんだ!盗賊どもが娘達を攫って行ってしまったんだ!」

 

「なんと!それで、盗賊はどっちに向かったか分かるか。」

 

杏寿郎の問いに村長と思われる人物が森を指差した。

 

「あっちの森の方へと向かった!それを男が一人で追いかけて行ってしまったんじゃ。」

 

「それはまずい…。」

 

「嫁を目の前で連れ去られたんじゃ無理もない。あの紅梅色の短髪の男はそうとキレておったからのう。」

 

「紅梅色の髪……まさか!」

 

杏寿郎は村長に詰め寄る。

 

「村長。その男には他に特徴はなかったか?」

 

「えっ?ああ……全身に奇妙な模様を入れていたよ。後は相当な体術使いの様だった。」

 

「そうか…感謝する!」

 

杏寿郎は急いで森へと入りその者を追った。

 

森の中を走り続ける杏寿郎。奥へと走り続けて行くと、盗賊と思しき者達が倒れているのを発見した。

 

倒れている者達の武器は全て粉砕され、顔はほぼ陥没し胴に殴り蹴られた後がくっきり残っていた。

 

「……この見事な一撃はやはり…!」

 

杏寿郎は更に奥へと進む。

 

 

その頃。盗賊達はたった一人の男の猛攻に押されていた。

 

「なんだコイツは⁉︎」

 

「ばっ化け物!」

 

倒れた仲間達にそれをやった紅梅色の髪の男……その姿はまさに鬼だった。

拳は盗賊の血に染まり怒りの眼で盗賊達を睨む。

 

「術式展開。」

 

足元に雪の結晶を模した陣が展開される。

 

ゆっくり構えをとり……技を繰り出す。

 

「破壊殺・空式!」

 

その場で空拳を放ち、虚空に絶大な衝撃波となって盗賊達を襲う。

 

衝撃波となった拳撃を喰らった盗賊達はその場に倒れ気絶した。

 

その場の盗賊を一掃したその男は荷馬車に捕らわれていた娘達を助け出す。

 

「皆怪我は無いか。」

 

「はっはい。」

 

「ありがとうございます。」

 

助けられた娘達は男に感謝し頭を下げる。そして男は娘達に問う。

 

「すまないが俺の妻…恋雪を知らないか?」

 

「あっ!その方は貴方が来る前に盗賊の頭に連れていか「てめぇ!動くな!」っ⁉︎」

 

皆が声のする方に振り向くと、盗賊の頭と思しき厳つい男が額に角を持つ鬼人と思われる女性の首元に剣を向けて捕らえている。

 

「恋雪!」

 

「狛治さん!」

 

紅梅色の男は声を上げる。それを見た盗賊の頭は下衆な笑みを浮かべた。

 

「なんだコイツはお前の女か?まぁ魔物にしては中々良い女だからなぁ。」

 

「恋雪を放せ!」

 

「動くんじゃねぇ!」

 

盗賊の頭は刃を首に近づける。

 

「くっ!」

 

「…そうだ。この女を放して欲しかったらこいつを首に巻きな。」

 

そう言って投げてきたのは不気味な赤い目がある首輪だった。

 

「その隷属の首輪を自分の首に巻け。そうしたらこの女とそこの連中は解放してやるよ。お前を従えた方がこの先いい仕事ができるからな。」

 

盗賊の頭はこの男を支配して更なる悪事をしようと考えたのだ。

 

「駄目!狛治さん!やめて!」

 

涙を流しながら叫ぶ恋雪。だが…狛治は首輪を掴む。

 

「…もう恋雪を二度と死なせない…その為なら。」

 

首輪を首へと近づける。……その様子を下衆な笑みを浮かべながら眺める盗賊の頭……その瞬間

 

頭の真横から炎が渦巻きながら通過⋯…捕らわれていたはずの恋雪が消えた。

 

「なっ⁉︎」

 

盗賊が驚き炎が通過した方を見ると、炎を模した羽織に焔色の髪の青年が恋雪を助け出していた。

 

狛治はその男を見て驚愕の表情を浮かべた……前世で自分が殺した相手なのだから。

 

「…杏寿郎⁉︎」 

 

「猗窩座!今だ!」

 

杏寿郎の声に我に返った狛治は首輪を投げ捨て盗賊の頭に殴り掛かる。

 

「はぁ!」

 

「ぐっはぁ!」

 

鳩尾に拳を喰らい盗賊の頭は気絶した。

 

こうして盗賊達は全員捕らえられた。村に娘達を連れて帰り、盗賊を引き渡した後…杏寿郎と狛治……いや猗窩座は森の中で会っていた…恋雪も連れて。

そして目の擬態を解除したのか、瞳に上弦の参の文字が浮かび上がる。

 

「猗窩座。お前もこの世界に来ていたのだな。」

 

「……ああ。」

 

歯切れが悪い猗窩座…無理も無い。自分が殺した相手との再会なのだから。

 

どこか辛そうな猗窩座の姿に恋雪が近寄る。

 

「狛治さん…。」

 

「うむ。…その人が猗窩座が人間だった頃の婚約者か。」

 

杏寿郎の言葉に猗窩座は目を見開く。

 

「何故その事を⁉︎」

 

「…とある理由で知った。話すかはこれからの話次第で決めよう。」

 

真剣な表情の杏寿郎に、猗窩座も真剣な表情となった。

 

「俺はお前を殺した男だ。……お前に殺されても文句は言えない。」

 

「…狛治さん。」

 

「だが…恋雪は関係ない!彼女は助けてやってくれ!」

 

杏寿郎に頭を下げる猗窩座

 

「いや!狛治さん!やっと…やっと一緒にいられるようになったのに!」

 

そんな猗窩座に抱きつきながら涙する恋雪。そんな二人の姿を見た杏寿郎は笑みを浮かべる。

 

「うむ!俺は別に猗窩座を殺しはしない!」

 

杏寿郎の言葉に猗窩座は驚き顔を上げる。

 

「なっ⁉︎俺はお前を殺したんだぞ!それにお前は俺を嫌いだと言っていただろ。」

 

「……確かに前の君が俺は嫌いだった。だがこの世界での君は嫌いではないぞ。それに君は人間の時…悪事をしていたがそれは父親を救う為だった。」

 

「……何故お前がそんなことまで。」

 

「だから俺は君達をどうこうする気は無い。君はこの世界では人を喰っていないのだろう。」

 

「……ああ。」

 

猗窩座の上弦の参と刻まれた瞳に偽りが無いと確信した杏寿郎はある提案を持ち掛ける。

 

「猗窩座。恋雪さんと一緒に魔国連邦(テンペスト)に来る気はないか?」

 

魔国連邦(テンペスト)?……あの噂の魔物の国か。」

 

「うむ。あの国の主とは知り合いで拠点にさせてもらっている。それに妓夫太郎達も暮らしているぞ。」

 

「妓夫太郎⁉︎アイツもこの世界に来ていたのか!」

 

「妹と共にな。今は魔国連邦(テンペスト)で楽しく暮らしている。あの国ならお前達も平和に暮らせる筈だ。」

 

杏寿郎の誘いに猗窩座と恋雪はお互いの顔を見て頷いた。

 

「わかった。その誘い喜んで受けよう。」

 

杏寿郎の誘いを受けた猗窩座はこうして恋雪と共に魔国連邦(テンペスト)にやって来たのだった。

 

 

 

「その道中で縁壱殿と合流して共に来たと言う訳だ。」

 

「成る程。」

 

話を聞いたフォルテは黒死牟、猗窩座と恋雪の方へと目を向ける。

 

「縁壱と杏寿郎から話は聞いたが、この町で暮らすなら受け入れる。」

 

フォルテの言葉に黒死牟達は頷く。

 

「分かった。……ならまず黒死牟に頼みがある。」

 

「……なんだ?」

 

「お前の呼吸を俺に教えて欲しい。俺は日と月の二つの呼吸の適性がある。」

 

フォルテの言葉に黒死牟の六つの目が見開かれる。

 

「俺はこの国の主。皆を守る為に強くならなければならない。その為にも黒死牟の月の呼吸が必要だ。」

 

フォルテの鋭いながら偽りの無い眼を見た黒死牟。

 

「……分かった。」

 

「感謝する。それと猗窩座には、この町で道場を開いてみないか。」

 

フォルテの言葉に猗窩座はもちろん恋雪も目を見開いた。

 

「……今度こそ真っ当に生きて恋雪の父の素流道場をこの世界で復活させるのもいいだろう。」

 

縁壱と杏寿郎からフォルテの話を聞いていた猗窩座。……それでも自分達の為にここまでしてくれる者がいる事に驚くしかなかった。

 

「……恋雪の父の言葉を少し借りるなら、鬼だったお前は鬼狩り…炭治郎に倒された。この世界で生まれ変わり己を取り戻したお前なら大丈夫だ。」

 

「……フォルテ…いやフォルテ様。」

 

猗窩座は俺にその場で跪き、恋雪も頭を下げる。

 

「ありがとうございます。」

 

「…私からもありがとうございます。」

 

二人から自然と涙が流れていた。

 

その様子を見ていた黒死牟もフォルテに跪いた。

 

「……強大な力を持ちながら皆の為に更なる高みを目指し……他者の為に助力する器の広さ……素晴らしい。……私は貴方に仕えよう。」

 

「俺もフォルテ様の為に…。」

 

「……分かった。お前達の忠誠を受け取ろう。」

 

こうして猗窩座と黒死牟が仲間となったので、二人にも名付けをした。人間だった頃の名も加えて狛治・猗窩座と巌勝・黒死牟と名付けた。

 

勿論恋雪にもその名をそのまま与えた。因みに、彼女が何故鬼人として転生したのか聞いてみた。どうやらもしまた猗窩座が鬼になってしまったら自分も鬼になってでも支えようと思ったらしい。それが世界の言葉に届いて鬼人として転生したようだ。転生してまだ自分の力を把握できてないようだから、朱菜に恋雪さんの指導を頼んだ。

 

……彼女も猗窩座を……狛治を支えられる女性として強くなるだろう。

 

 

 

 

 




黒死牟と猗窩座その妻恋雪が登場。猗窩座には魔国連邦(テンペスト)で前世の誓いを叶えてもらいましょう。黒死牟と縁壱の2人は前世での溝を埋めて真の兄弟として頑張ってもらいたいと思います。
そして憤怒の魔人…ネビュラグレイはシンシヤの中にいた爆炎の奪還者(ジーンフリート)にネビュラグレイを再現した複製魔核を与えて進化させました。
これからは、フォルテの精霊として活躍してもらいます。
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