子供達の野外訓練が妖魔により中止となってから数日が経過。
フォルテはフォルテシティにあるネットコロシアムにゴブタ、紫苑、ガビルそして…猪八戒達を集めていた。
「フォルテ様。全員集まりました。」
「ああ。良く集まってくれた。」
「今日は何か特殊な訓練をすると聞きましたが…。」
「その通りだ。今回お前達に戦ってもらう相手はこいつらだ!」
フォルテがそう言って指を鳴らすと、ゴブタ達の反対側から何者かが現れる。
「…えっ⁉︎」
「なんと⁉︎」
「あれは⁉︎」
現れた者達を見たゴブタ、ガビル、シオンは驚き思わず声を上げた。
現れた者達は紫色に染まったゴブタに身体に無数の目がある
「フォルテ様!あの我輩のような者は一体⁉︎」
「あれは、向こうの世界でシンシヤが捕食したお前達のもう一つの姿だ。」
嘗てフォルテがシンシヤを解析した時の事、向こうの世界でシンシヤが捕食したイジスによって鏡世界で作り出された者達も解析できていたのだ。
「つまり、あの者達は向こうの我輩達が望んだ姿と言うことですかな?」
「正確には、イジスによって無意識に望んでいたことを形にした存在だ。」
「そんな!フォルテ様!私はあんな姿を望んでいません‼︎」
シオンはもう1人の自分と呼べる存在を否定する。
「…シオン。里を滅ぼされ仲間達を殺された時のお前には正常な判断力は無かった筈だ。…その心の隙をイジスは突いた。そして向こうのお前は望んだ……何を犠牲してでも仇を討つと。」
フォルテの言葉に思い当たる節があったシオンは思わずはっ!と目を見開く。
「…フォルテ様。我々の前にこのもう一つの我らと呼べる者達を合わせた理由はやはり戦わせる為でしょうか。」
「その通りだ猪八戒。これからどんな脅威や敵が現れるかわからない。もしかしたら、こういった自分の偽物と戦う可能だってある。」
「なるほど…分かりました。」
「それにしても、本当にこれが自分なんですか?」
猪八戒達が理解してくれた中、ゴブタがもう1人の自分に対して興味津々に見ていた。
「ああ。ゴブタの方は弱い自分を変えるために牙狼族の力を取り込んで雷属性のスキルを得た。その影響で新種族
「へぇ〜!おいらにもこんな可能があったんっすね。」
「シオンの方は、イジスによってある答えを導き出しそれを実行した。」
「……それは何ですかフォルテ様?」
「同胞達の無念を背負う事だ。霧散し漂っていた同胞達の魂全てをその身に宿した。
「同胞達の……確かにリムル様やフォルテ様と出会えず、若様や姫様達と落ち延びなければ私は同じ道を選んでいたかも知れません。」
「それが運命の分かれ道と言うんだろう。」
「次は我輩の方ですな!」
ガビルが自分のあったかも知れない姿を見ながら声を上げる。
「この我輩…何か尖っているような感じでありますな。」
「その通りだガビル。あの姿は嘗てのお前がオーク達に敵わず
「なんと⁉︎
「……なんかこっちのガビルさんの方が強そうっすね。」
「私もそう思います。」
「がーん!」
ゴブタと紫苑の言葉にショックを受けるガビルだった。……まぁ解析した時に見た記憶でも調子に乗らない風格ある存在になっていた。
けど、俺は今のガビルの方がガビルらしいと思っている。
「次は俺の存在……。」
猪八戒は嘗ての己を見る。
「フォルテ様。……この俺の姿……これが俺の望んだ姿なのですか……。」
「違う。猪八戒の場合は、ゲルミュッドが望んだことを具現化させたようだ。」
「ゲルミュッドが望んだ事……まさか⁉︎」
猪八戒はゲルミュッドがあの時自分に命じたことを思い出した。
「ああ。あの姿は……ガビルを喰らって進化した姿だ。」
「えっ⁉︎我輩喰われたのでありますか⁉︎」
「それがゲルミュッドの望みだったからな。」
「確かにそんなこと言ってたっすね。」
「……それで、ガビル殿を喰らった俺の姿があれなのですね。」
「その通りだ。ガビルを喰らい進化した姿……
それぞれの自分の別の可能性を改めて見るゴブタ達。
「こいつらはあくまで再現した存在だから意志はない。だから遠慮なく戦ってくれ。今の自分が別の自分とどこまで戦えるのか試してみろ。」
「分かったっす!」
「心得たのである!」
「あれが私の心が生み出した存在……なら倒してみせます!」
「まさに己と向き合う……この機会を与えてくださったフォルテ様に感謝!」
フォルテの言葉に従い武器を手に取り構えるゴブタ達。そして、もう一人の自分との対決が始まった。
「ちょ⁉︎なんなんすか⁉︎これ本当は自分じゃないっしょ!」
シオンと
「馬鹿な!あれだけ斬ってもすぐ元通りになるなんて⁉︎」
「シオン。
「っ⁉︎……つまり300回倒せば良いのですね。」
攻略方が分かったシオンは
まぁシオンならゴリ押しでいきそうだな。……それにあの鍛練も役立つはず。
ガビルの方は空中で激しい槍の槍術を互いに繰り出し互角の戦いを繰り広げている。…だが、やはり
槍術の合間に繰り出す手刀や蹴りにガビルは危険を感じて躱していた。
そのガビルの直感は正しく、手刀と蹴りを掠めた箇所が槍の一撃を受けたような傷を負っていた。
「ヌゥウ⁉︎なんと鋭い!彼奴の攻撃全てがまるで槍のごとき鋭利さを持っている。」
『その通りだガビル。』
フォルテは念話でガビルに話しかける。
『
『
『それによって
『なんと!…まさに全てを傷付ける尖りですな。だが!我輩とて昔の我輩ではない!リムル様とフォルテ様によって強くなったことを証明してみせますぞ!』
ガビルはそう言って
ガビルもいい感じに頑張っている。フォルテは猪八戒の方を見る。
「フン!」
「はぁ!」
力なら
更に使用している中華包丁型の武器には魔鋼と
だが何故か拮抗している。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
猪八戒は息を切らしている。本来ならこれくらいで息を切らすことはあり得ない。
「大丈夫か猪八戒。」
「フォルテ様…何故か俺まで喉が乾いてきました。」
「それは
「脱水?」
「簡単に言うと、
「なるほど。なら早急に倒すまで!」
猪八戒は一気に勝負を決めようと突っ込む。それに対して
「
ガビルの必殺技である槍術による水流撃を放つ。しかも飢餓者で奪った水分で威力が桁違い上がっている。
「ハァアアア!」
だが猪八戒はその水流に向かって中華包丁を振り下ろし一閃
真っ二つに割れた
「
追撃に放たれた拡散魔力弾の雨をもろに受ける。様々な効果が付与された魔力弾の雨に、流石の
「これで終わりだ!
猪八戒の身体から禍々しい赤黒い
いつもは無数の顔として使うが、今回は一気に喰らい尽くす為に巨大な顔として放った。
巨大な
こうして猪八戒は勝利。
ゴブタとシオンの方は。
猗窩座から格闘技術を学んでおり、一撃一撃全てが確実に致命傷を与える技へと昇格した。
それ故に、シオンは剛力丸の斬撃から格闘戦に切り替え連撃を与え続け
ゴブタの方は、
辺りを警戒する
力は上がっていた
ゴブタ自身もこういう時の戦闘では頭がよく回れる。
勝利した三人にフォルテが声を掛ける。
「三人とも良い戦いだったな。」
「フォルテ様!」
「ありがとうございます!」
「俺達もいい経験が出来ました。」
「後はガビルだけか…。」
ガビルの方へと顔を上げると、今も凄まじい激突を繰り広げている……気のせいか
「やはり強い!
「お主こそ、我輩の攻撃を躱しながらこれだけの攻防を繰り広げるとは…我輩のオリジナルだけはある。」
……あれ?
フォルテはすぐに
《解析完了。
「なるほど。そう言うことか。」
もう一人…オリジナルとの戦いが残留していた
互いに構えたままの
「あの森の盟主…リムルの言う通りだな。」
「ぬ?」
「全てを背負い、己が身一つで戦った我輩と違いオリジナルである其方の方が強い。」
「何を言っている?其方も充分強い。……いや下手をしたら我輩より強いのだ。」
「力の強さではなく…心の方だ。…我輩は一人で背負い一人で戦う為に
「其方…。」
「さぁこの一撃で終わりにしようぞ!」
「望む所!」
「「
水流を纏わせた接近戦仕様による両者の激突
衝突の瞬間、凄まじい水飛沫が辺りに飛び散る。
飛び散った水飛沫が雨のより降り注ぐ中、中心部でボロボロになった二人の姿が。
互いに見つめ合う中……最初に声を出したのは
「……見事。」
そう言って落下する
「お前も見事だった。」
「貴方は…我輩を創り出して下さった……。」
「ああ。フォルテ=テンペストだ。」
訓練として始めた戦いで、自我に目覚めたもう一人のガビル…
「まさか自力で自我に目覚めるとは思わなかった。……だが良い戦いだった。」
「我輩もオリジナルと戦い、大事なものを取り戻せた。偶然とはいえ、この機会を与えて下さったフォルテ殿に感謝する。」
「我輩も其方と戦えて良かったのである。」
「自分も違う自分と戦って良かった気がするっす。……向こう方が強かったっすけど…。」
「私も、もう一人の自分と戦って…リムル様とフォルテ様と出会えて良かったと改めて思いました。」
「俺もだ。自分の嘗ての過ち…それと向き合い乗り越えることが出来たと今なら思えます。」
ゴブタ、シオン、猪八戒はもう一人の自分と戦い、色々と自分と向き合ったようだ。
後は…。
「
フォルテの言葉を聞いた
「願ってもない。我輩自身それを望んでいた。フォルテ殿…いやフォルテ様の配下として我輩の力を使っていただきたい。」
「決まりだな。ならお前には新たな名を与える。別世界の同じガビルでも、お前はお前だからな。」
さて…どんな名をするか。ガビルに似た名がいいか………イビル……コビル……シビルいや違うな。
ノビル……ワビル……やはり違うな。同じ存在だからと拘る必要もないんだからもっと相応しい名を。
フォルテは考える。そして目を開き
「決めた。お前は
槍だからランスとも考えたが、ランサーの方が呼び易いしカッコいいと思った。
「ランサー…その名に恥じぬ強き者に必ずなって見せましょう。」
こうして、もう一人のガビル…
ランサーは、やはりかなり強い魔物だったようで名付けにより魔素を四割ほど持っていかれた。
それにより、ガビルと似た進化を遂げ
ランサーも
ランサーの電脳態もスワローマンに似た姿だが、ガビルが飛竜ベースに対しランサーの方は翼などが鋭い尖りとなっており水晶のような輝きを放っている。
言うなれば水晶竜だ。
ランサーをガビルの配下達に紹介した時。
「このガビル様もカッコいい!」
「然り。」
「別の姿でもやっぱ立派だぜ。」
スケロウ、カクシン、ヤシチはランサーをあっさり受け入れた。
そして蒼華はと言うと。
「………こっちの兄上の方がまともで良いと思います。」
「ガーン!」
蒼華にそう言われ再びショックを受けるガビルだった。
と言う訳で新たな仲間としてもう一人のガビルである
まおりゅうで色んな皆のもう一つの姿が登場しましたが、このガビルはかなりまともな成長だったので気に入っていました。
今後もまおりゅうからキャラを登場させる予定です。