転生したらフォルテだった件   作:雷影

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今回はシンシヤが捕食していたある者達が登場します。


46話 自分達のもう一つの可能性

子供達の野外訓練が妖魔により中止となってから数日が経過。

 

フォルテはフォルテシティにあるネットコロシアムにゴブタ、紫苑、ガビルそして…猪八戒達を集めていた。

 

「フォルテ様。全員集まりました。」

 

「ああ。良く集まってくれた。」

 

「今日は何か特殊な訓練をすると聞きましたが…。」

 

「その通りだ。今回お前達に戦ってもらう相手はこいつらだ!」

 

フォルテがそう言って指を鳴らすと、ゴブタ達の反対側から何者かが現れる。

 

「…えっ⁉︎」

 

「なんと⁉︎」

 

「あれは⁉︎」

 

現れた者達を見たゴブタ、ガビル、シオンは驚き思わず声を上げた。

 

現れた者達は紫色に染まったゴブタに身体に無数の目がある大鬼(オーガ)だった頃のシオンそして、紺色の身体に金の角と槍を手に持つガビルと身体中がひび割れガビルの水渦槍(ボルテクススピア)を持つ豚頭魔王(オーク・ディザスター)だった。

 

「フォルテ様!あの我輩のような者は一体⁉︎」

 

「あれは、向こうの世界でシンシヤが捕食したお前達のもう一つの姿だ。」

 

嘗てフォルテがシンシヤを解析した時の事、向こうの世界でシンシヤが捕食したイジスによって鏡世界で作り出された者達も解析できていたのだ。

 

「つまり、あの者達は向こうの我輩達が望んだ姿と言うことですかな?」

 

「正確には、イジスによって無意識に望んでいたことを形にした存在だ。」

 

「そんな!フォルテ様!私はあんな姿を望んでいません‼︎」

 

シオンはもう1人の自分と呼べる存在を否定する。

 

「…シオン。里を滅ぼされ仲間達を殺された時のお前には正常な判断力は無かった筈だ。…その心の隙をイジスは突いた。そして向こうのお前は望んだ……何を犠牲してでも仇を討つと。」

 

フォルテの言葉に思い当たる節があったシオンは思わずはっ!と目を見開く。

 

「…フォルテ様。我々の前にこのもう一つの我らと呼べる者達を合わせた理由はやはり戦わせる為でしょうか。」

 

「その通りだ猪八戒。これからどんな脅威や敵が現れるかわからない。もしかしたら、こういった自分の偽物と戦う可能だってある。」

 

「なるほど…分かりました。」

 

「それにしても、本当にこれが自分なんですか?」

 

猪八戒達が理解してくれた中、ゴブタがもう1人の自分に対して興味津々に見ていた。

 

「ああ。ゴブタの方は弱い自分を変えるために牙狼族の力を取り込んで雷属性のスキルを得た。その影響で新種族雷子鬼(ヴァジュラ)に進化したのがあの姿だ。」

 

「へぇ〜!おいらにもこんな可能があったんっすね。」

 

「シオンの方は、イジスによってある答えを導き出しそれを実行した。」

 

「……それは何ですかフォルテ様?」

 

「同胞達の無念を背負う事だ。霧散し漂っていた同胞達の魂全てをその身に宿した。同胞(オーガ)の集合体…それがあの姿百目鬼(ドドメキ)だ。」

 

「同胞達の……確かにリムル様やフォルテ様と出会えず、若様や姫様達と落ち延びなければ私は同じ道を選んでいたかも知れません。」

 

「それが運命の分かれ道と言うんだろう。」

 

「次は我輩の方ですな!」

 

ガビルが自分のあったかも知れない姿を見ながら声を上げる。

 

「この我輩…何か尖っているような感じでありますな。」

 

「その通りだガビル。あの姿は嘗てのお前がオーク達に敵わず水渦槍(ボルテクススピア)の力を引き出せなかったことを悔やみ、水渦槍(ボルテクススピア)と同化して変異進化を遂げた龍戈族(トリシューラ)だ。」

 

「なんと⁉︎水渦槍(ボルテクススピア)と同化ですと!」

 

「……なんかこっちのガビルさんの方が強そうっすね。」

 

「私もそう思います。」

 

「がーん!」

 

ゴブタと紫苑の言葉にショックを受けるガビルだった。……まぁ解析した時に見た記憶でも調子に乗らない風格ある存在になっていた。

けど、俺は今のガビルの方がガビルらしいと思っている。

 

「次は俺の存在……。」

 

猪八戒は嘗ての己を見る。

 

「フォルテ様。……この俺の姿……これが俺の望んだ姿なのですか……。」

 

「違う。猪八戒の場合は、ゲルミュッドが望んだことを具現化させたようだ。」

 

「ゲルミュッドが望んだ事……まさか⁉︎」

 

猪八戒はゲルミュッドがあの時自分に命じたことを思い出した。

 

「ああ。あの姿は……ガビルを喰らって進化した姿だ。」

 

「えっ⁉︎我輩喰われたのでありますか⁉︎」

 

「それがゲルミュッドの望みだったからな。」

 

「確かにそんなこと言ってたっすね。」

 

「……それで、ガビル殿を喰らった俺の姿があれなのですね。」

 

「その通りだ。ガビルを喰らい進化した姿……豚頭渇望王(オーク・デザァト)だ。」

 

それぞれの自分の別の可能性を改めて見るゴブタ達。

 

「こいつらはあくまで再現した存在だから意志はない。だから遠慮なく戦ってくれ。今の自分が別の自分とどこまで戦えるのか試してみろ。」

 

「分かったっす!」

 

「心得たのである!」

 

「あれが私の心が生み出した存在……なら倒してみせます!」 

 

「まさに己と向き合う……この機会を与えてくださったフォルテ様に感謝!」

 

フォルテの言葉に従い武器を手に取り構えるゴブタ達。そして、もう一人の自分との対決が始まった。

 

 

 

 

 

「ちょ⁉︎なんなんすか⁉︎これ本当は自分じゃないっしょ!」

 

雷子鬼(ヴァジュラ)の攻撃から必死に逃げ回るゴブタ……まぁ無理もない。黒稲妻を連発して放たれているのだから。

 

シオンと百目鬼(ドドメキ)との戦闘は、戦闘力ではやはり鬼人のシオンが優勢だが、百目鬼(ドドメキ)の異常なタフさに苦戦していた。

 

「馬鹿な!あれだけ斬ってもすぐ元通りになるなんて⁉︎」

 

「シオン。百目鬼(ドドメキ)大鬼(オーガ)達の魂の集合体だ。つまり、300人分の命がある。」

 

「っ⁉︎……つまり300回倒せば良いのですね。」

 

百目鬼(ドドメキ)の強さはその残機…命の数なのだ。

 

攻略方が分かったシオンは百目鬼(ドドメキ)に真正面から挑むのだった。

まぁシオンならゴリ押しでいきそうだな。……それにあの鍛練も役立つはず。

 

ガビルの方は空中で激しい槍の槍術を互いに繰り出し互角の戦いを繰り広げている。…だが、やはり龍戈族(トリシューラ)が僅かに押している。

 

槍術の合間に繰り出す手刀や蹴りにガビルは危険を感じて躱していた。

そのガビルの直感は正しく、手刀と蹴りを掠めた箇所が槍の一撃を受けたような傷を負っていた。

 

「ヌゥウ⁉︎なんと鋭い!彼奴の攻撃全てがまるで槍のごとき鋭利さを持っている。」

 

『その通りだガビル。』

 

フォルテは念話でガビルに話しかける。

 

龍戈族(トリシューラ)水渦槍(ボルテクススピア)とお前が同化…一体化した姿。その一体化によりユニークスキル螺旋体(スパイラルボディ)を獲得している。』

 

螺旋体(スパイラルボディ)ですと?』

 

『それによって龍戈族(トリシューラ)の攻撃全てに刺突属性が付与されている。』

 

『なんと!…まさに全てを傷付ける尖りですな。だが!我輩とて昔の我輩ではない!リムル様とフォルテ様によって強くなったことを証明してみせますぞ!』

 

ガビルはそう言って龍戈族(トリシューラ)に立ち向かう。

 

ガビルもいい感じに頑張っている。フォルテは猪八戒の方を見る。

 

「フン!」

 

「はぁ!」

 

豚頭渇望王(オーク・デザァト)水渦槍(ボルテクススピア)と猪八戒の巨大中華包丁が激突!凄まじい衝撃が辺りに広がる。

 

力なら電脳猪人帝(サイバーオークカイザー)である猪八戒が圧倒的。

豚頭帝(オークロード)豚頭魔王(オーク・ディザスター)猪人王(オークキング)の三体分の力があるのだから。

更に使用している中華包丁型の武器には魔鋼と暴風大妖渦(カリュブディス)の鱗を合わせたカイジンと黒衛兵が鍛え上げた一級品の代物。

 

だが何故か拮抗している。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。」

 

猪八戒は息を切らしている。本来ならこれくらいで息を切らすことはあり得ない。

 

「大丈夫か猪八戒。」

 

「フォルテ様…何故か俺まで喉が乾いてきました。」

 

「それは豚頭渇望王(オーク・デザァト)の力で脱水状態になっているからだ。」

 

「脱水?」

 

「簡単に言うと、飢餓者(ウエルモノ)で辺りの水分を吸収している。つまり、お前から水分を奪っているんだ。」

 

「なるほど。なら早急に倒すまで!」

 

猪八戒は一気に勝負を決めようと突っ込む。それに対して豚頭渇望王(オーク・デザァト)水渦槍(ボルテクススピア)を構える。

 

渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)‼︎」

 

ガビルの必殺技である槍術による水流撃を放つ。しかも飢餓者で奪った水分で威力が桁違い上がっている。

 

「ハァアアア!」

 

だが猪八戒はその水流に向かって中華包丁を振り下ろし一閃

 

豚頭渇望王(オーク・デザァト)が放った渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)を両断。更に放たれた斬撃がそのまま豚頭渇望王(オーク・デザァト)を真っ二つした。

 

真っ二つに割れた豚頭渇望王(オーク・デザァト)は超速再生で復活しようとするが、それを猪八戒が逃さない。

 

混沌之行進演舞(カオスマーチダンス)!」

 

追撃に放たれた拡散魔力弾の雨をもろに受ける。様々な効果が付与された魔力弾の雨に、流石の豚頭渇望王(オーク・デザァト)も対応できず身体が穴だらけとなって弱った。

 

「これで終わりだ!混沌喰い(カオスイーター)‼︎」

 

猪八戒の身体から禍々しい赤黒い妖気(オーラ)の巨大な顔が出現。

いつもは無数の顔として使うが、今回は一気に喰らい尽くす為に巨大な顔として放った。

 

巨大な混沌喰い(カオスイーター)によって豚頭渇望王(オーク・デザァト)は一飲みにされた。

 

こうして猪八戒は勝利。

 

ゴブタとシオンの方は。

 

猗窩座から格闘技術を学んでおり、一撃一撃全てが確実に致命傷を与える技へと昇格した。

 

それ故に、シオンは剛力丸の斬撃から格闘戦に切り替え連撃を与え続け百目鬼(ドドメキ)の残機を削り切った。

 

ゴブタの方は、雷子鬼(ヴァジュラ)による黒稲妻の連続攻撃を躱し続け辺りを爆煙で包ませ視界を奪った。

 

辺りを警戒する雷子鬼(ヴァジュラ)……その影からゴブタが飛び出し後頭部に強烈な蹴りを入れて倒した。

 

力は上がっていた雷子鬼(ヴァジュラ)だが、白老やカーネル達に鍛えられたゴブタとの経験の差が勝敗を決めた。

 

ゴブタ自身もこういう時の戦闘では頭がよく回れる。

 

勝利した三人にフォルテが声を掛ける。

 

「三人とも良い戦いだったな。」

 

「フォルテ様!」

 

「ありがとうございます!」

 

「俺達もいい経験が出来ました。」

 

「後はガビルだけか…。」

 

ガビルの方へと顔を上げると、今も凄まじい激突を繰り広げている……気のせいか龍戈族(トリシューラ)の動きが良くなっているような…?

 

「やはり強い!水渦槍(ボルテクススピア)と一体化した我輩……実に見事な強さ。」

 

「お主こそ、我輩の攻撃を躱しながらこれだけの攻防を繰り広げるとは…我輩のオリジナルだけはある。」

 

……あれ?龍戈族(トリシューラ)が喋っている⁉︎今回創り出した者達は能力と強さだけを再現した存在だったはず!

 

フォルテはすぐに龍戈族(トリシューラ)を解析した。

 

《解析完了。龍戈族(トリシューラ)創生の際、残留していた意思データが入ったようだ。そして、オリジナルであるガビルとの戦闘により覚醒した。》

 

「なるほど。そう言うことか。」

 

もう一人…オリジナルとの戦いが残留していた龍戈族(トリシューラ)を目覚めさせたのか。

 

互いに構えたままの龍戈族(トリシューラ)とガビル。……その中で龍戈族(トリシューラ)がガビルに話しかける。

 

「あの森の盟主…リムルの言う通りだな。」

 

「ぬ?」

 

「全てを背負い、己が身一つで戦った我輩と違いオリジナルである其方の方が強い。」

 

「何を言っている?其方も充分強い。……いや下手をしたら我輩より強いのだ。」

 

「力の強さではなく…心の方だ。…我輩は一人で背負い一人で戦う為に水渦槍(ボルテクススピア)と同化した。…だが一人の強さには限界がある。頼るべき仲間と共に戦う。……誰かを信じる心……我輩が捨ててしまった強さだ。」

 

「其方…。」

 

龍戈族(トリシューラ)…いやもう一人のガビルは本当の強さをオリジナルのガビルとの戦いで思い出したか。……このまま消えるに惜しいな。

 

「さぁこの一撃で終わりにしようぞ!」

 

「望む所!」

 

龍戈族(トリシューラ)とガビル…互いに構える。そして、同時に必殺技を放つ。

 

「「渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)‼︎」」

 

水流を纏わせた接近戦仕様による両者の激突

 

衝突の瞬間、凄まじい水飛沫が辺りに飛び散る。

飛び散った水飛沫が雨のより降り注ぐ中、中心部でボロボロになった二人の姿が。

 

互いに見つめ合う中……最初に声を出したのは龍戈族(トリシューラ)だった。

 

「……見事。」

 

そう言って落下する龍戈族(トリシューラ)をフォルテが飛び上がり受け止めるのだった。

 

「お前も見事だった。」

 

「貴方は…我輩を創り出して下さった……。」

 

「ああ。フォルテ=テンペストだ。」

 

訓練として始めた戦いで、自我に目覚めたもう一人のガビル…龍戈族(トリシューラ)を治療し、俺達は向き合う。

 

「まさか自力で自我に目覚めるとは思わなかった。……だが良い戦いだった。」

 

「我輩もオリジナルと戦い、大事なものを取り戻せた。偶然とはいえ、この機会を与えて下さったフォルテ殿に感謝する。」

 

「我輩も其方と戦えて良かったのである。」

 

「自分も違う自分と戦って良かった気がするっす。……向こう方が強かったっすけど…。」

 

「私も、もう一人の自分と戦って…リムル様とフォルテ様と出会えて良かったと改めて思いました。」

 

「俺もだ。自分の嘗ての過ち…それと向き合い乗り越えることが出来たと今なら思えます。」

 

ゴブタ、シオン、猪八戒はもう一人の自分と戦い、色々と自分と向き合ったようだ。

 

後は…。

 

龍戈族(トリシューラ)。…俺の仲間にならないか。偶然とはいえ自我に目覚めたお前は、ガビルと戦い…己と向き合えた。そんなお前を俺は仲間にしたい。」

 

フォルテの言葉を聞いた龍戈族(トリシューラ)は、フォルテを見つめた後、笑みを浮かべて跪いた。

 

「願ってもない。我輩自身それを望んでいた。フォルテ殿…いやフォルテ様の配下として我輩の力を使っていただきたい。」

 

「決まりだな。ならお前には新たな名を与える。別世界の同じガビルでも、お前はお前だからな。」

 

さて…どんな名をするか。ガビルに似た名がいいか………イビル……コビル……シビルいや違うな。

ノビル……ワビル……やはり違うな。同じ存在だからと拘る必要もないんだからもっと相応しい名を。

 

フォルテは考える。そして目を開き龍戈族(トリシューラ)を見る。その鋭い尖りを表す姿を。

 

「決めた。お前は水渦槍(ボルテクススピア)と同化し槍そのもので槍兵。故にランサーの名を与える。」

 

槍だからランスとも考えたが、ランサーの方が呼び易いしカッコいいと思った。

 

「ランサー…その名に恥じぬ強き者に必ずなって見せましょう。」

 

こうして、もう一人のガビル…龍戈族(トリシューラ)のランサーがフォルテの仲間となった。

 

ランサーは、やはりかなり強い魔物だったようで名付けにより魔素を四割ほど持っていかれた。

 

それにより、ガビルと似た進化を遂げ電脳龍戈族(サイバートリシューラ)へと進化した。

 

ランサーも龍戈族(トリシューラ)での姿と電脳態での姿を自在に変えられるようになった。

ランサーの電脳態もスワローマンに似た姿だが、ガビルが飛竜ベースに対しランサーの方は翼などが鋭い尖りとなっており水晶のような輝きを放っている。

言うなれば水晶竜だ。

 

ランサーをガビルの配下達に紹介した時。

 

「このガビル様もカッコいい!」

 

「然り。」

 

「別の姿でもやっぱ立派だぜ。」

 

スケロウ、カクシン、ヤシチはランサーをあっさり受け入れた。

 

そして蒼華はと言うと。

 

「………こっちの兄上の方がまともで良いと思います。」

 

「ガーン!」

 

蒼華にそう言われ再びショックを受けるガビルだった。




と言う訳で新たな仲間としてもう一人のガビルである龍戈族(トリシューラ)のランサーが登場。

まおりゅうで色んな皆のもう一つの姿が登場しましたが、このガビルはかなりまともな成長だったので気に入っていました。

今後もまおりゅうからキャラを登場させる予定です。
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