武装国家ドワルゴへとやって来たフォルテ達。
英雄王ガゼル・ドワルゴと会談をする事となり、今は場所を移し国を一望できるテラスらしき場所にいる。
席に座り互いに向かい合うガゼル王とリムル、フォルテ。
「ガゼル王にまずは感謝を。」
「カイジン達の罪を取り消してくれた事に感謝する。」
「他の大臣どもを納得させる為には、国外追放とするのが最適だったからな。」
「あ………最初から許すつもりだったってことか。」
「それに、貴様達のような怪しげな者達に、我が国内で自由にさせるのは面白くないと思ったからだ。」
「確かに。ガゼル王から見ればそうなるな。」
喋る不思議なスライムと、見たこともない魔人……正体不明な者を自分の国で自由にさせるのはリスクが大きいからな。
「とはいえ、カイジンやガルム達を手放すなど断腸の思いであったわ。」
「ガゼル王の気持ちは分かるな。カイジン達が来てくれたおかげで色々助けられている。ガルムは防具類に用意、ドルドとミルドは建設関係で大いに役立ってくれている。」
「それに、カイジンが俺達の手の届かない分野を取りまとめくれているので、どうにかこうにか集団としてやっていけてるんだ。」
「そうか…。奴らも我が国で燻っておるよりは、自由にその腕を振るえる環境に身を置く方が良かろうて。ベスターはどうした?来ておらぬのか?」
「ああ。もちろん誘ったんだが……。」
【う〜ん…………。折角ですが、成果を出すまではガゼル王に出す顔を持ち合わせておりません。】
「…っと言っていたよ。」
「ハハハハッ!ベスターらしいのう。奴もまた、その才を存分に発揮できる場を得たという事か。ハハハハッ!」
ベスターの行動に納得して笑うガゼル王だった。
「ベスターはああ言っていたが、充分な成果を俺は出していると思っている。」
フォルテの言葉に、ガゼル王は真剣な表情でフォルテを見る。
「ほう。フォルテがそこまで言う成果とは気になるな。」
「アイリス。」
「はい。」
フォルテの声に応えるように、アイリスはガゼル王にある書類を渡す。
「こちらをどうぞ。」
「うむ。」
書類を受け取ったガゼル王はそれを読む。
「………ほう!これは。」
ガゼル王の反応にドルフも書類を覗き読む。
「まさか…魔装兵⁉︎」
そう。エルフと共同開発していたあの魔装兵の設計図だ。
「……あの頃のものより安全性など過去の問題点が解消されているな。」
「信じられません。我らドワーフとエルフの技術を持ってしても、ここまで精密な設計図は出来ません。」
「これをベスター1人でやってのけたのか?」
「いや。ある妖精が完成させた物をベスターが更に改良した設計図だ。」
「妖精?」
「…魔王ラミリスだ。」
フォルテの口から告げられた名にガゼル王とドルフは目を見開いた。
俺はシズさんの経緯などを話した。もちろんシズさんと相談して決めたことだ。
魔王レオンに幼少期に召喚されたシズさんの人生……学院の子供達を救う方法……その方法と魔王ラミリスとの出会いを。
「……成る程。そのような経緯であったか。」
「まさか、魔王が我が国の魔装兵を自己流で完成させていたとは…。」
「子供達を救った方法は内密に頼む。」
「分かった。このようなことが知られれば、各国が動き出すからな。」
「異世界の子供達の為にもここだけの話として胸にしまっておきます。」
「やはりガゼル王には話して良かった。」
フォルテとガゼル王の会話を聞いていたシズさんも笑みを浮かべた。
「魔王といえば、リムル、フォルテよ。」
「んっ?」
「改めて聞きたい事がある。」
「ああ。」
「あの
ガゼル王はさっきほどよりも真剣な表情でフォルテ達に問う。無理もない、あの
フォルテはガゼル王に何故ミリムが
「まさか…そんなことがあったとは。」
「お前達には驚かされてばかりだな。」
「俺達自身もそうなるなんて思わなかったよ。」
「本当に自由だったなミリムは。」
「成り行きで最古の魔王二人と知り合いになるとは……。リムル殿とフォルテ殿は本当に不思議な緒方だ。」
「フフンッ!」
ドルフの言葉に何故か自慢げとなる紫苑。
そんな中、朱菜が蒸留酒を乗せたワゴンを押して俺達の元に来た。
「お待たせしました。」
「来たか。」
「それは?」
「ちょっとした手土産だ。」
フォルテが合図すると、朱菜は四つのグラスに酒を注ぎガゼル王の元まで運ぶ。
「どうぞ。」
「うむ。」
「ドルフ様も。」
「ありがとう。」
朱菜からグラスを受け取ったガゼル王とドルフ。ガゼル王は受け取ったグラスを思わず見入ってしまう。
「これは………ドルドが作ったのか?」
「その通りだ。」
「うむ。」
リムルとフォルテも朱菜からグラスを受け取る。その間も、ガゼル王はドルドの作ったグラスをじっと見ていた。
「素晴らしいな。この薄さ、細やかな模様。これは解毒の刻印魔法か。気が利くな。」
グラスの底に刻まれた刻印が光ると、琥珀色の酒とグラスの模様がより際立つ。
「本来は、俺達が毒味をするべきだろうが…。」
「フッ。貴様らが毒を盛るなどとは思っておらぬわ。」
そう言いながら、ガゼル王はグラスの酒の匂いを嗅ぐ。
「品があるな。」
ガゼル王はそのまま酒を飲み、ドルフも続いて飲む。
「おお、これは………!」
「あっ………!」
「美味い……!」
「素晴らしい……!」
ガゼル王とドルフはその酒の美味さに感動した。
「じゃあ俺達も。」
「飲むか。」
リムルとフォルテも飲む。
(やはり美味い。これであのユーラザニアの果実で作ればより美味い酒になるのが楽しみだ。)
ちなみに、フォルテは先に何度か飲んでいたので耐毒抵抗できるようになっている。
(前世から余り酒には強くなかったから助かるな。)
下手に酔っ払う姿など見せたくないからな。
「成功するなよ!せっかくのアルコールを消してどうする!」
突然声を上げるリムル……どうやら大賢者により耐毒に成功したようだ。
「どうした?」
「あっ…いや何でもない。」
「まったく…これは林檎で作った蒸留酒だ。果実を輸入出来る目処が立ったから、これからは量産が可能だ。」
「輸入とは、このドワルゴン以外にも貴様達と国交を結ぼうという者が現れたのか。ブルムンド王国辺りか?」
「そこもだけど、果実は獣王………。」
リムルが答える前に、ガゼル王とドルフがリムルとフォルテに勢いよく詰め寄る。
「ユーラザニアか⁉︎」
「……そうだ。」
「誇り高い獣王が他国と取引を⁉︎」
「貴様ら、魔王ミリムと魔王ラミリスだけでなく魔王カリオンにも懐かれたのか⁉︎」
「恐るべし魔王たらし………!」
「いやいやいや。たまたま魔王カリオンの部下を助けてさ。」
「それが縁で、互いに交易することなった。まぁまだ、使節団を派遣する程度だかな。」
俺達の言葉を聞きながらガゼル王は椅子に戻った。
「だとしても、テンペストの重要性は一気に跳ね上がる!いずれはファルムス王国に代わる貿易の中心地になるかも!」
「うむ確かにな。」
「買い被りすぎだ。」
「まだ始まったばかりの交易だ。これからどう付き合っていくかが大事だ。」
「未来の話は兎も角、今飲んでいるのはファルムスから輸入しているどの酒よりも美味い。成果を期待しているぞ。」
ファルムス王国……ヨウムの出身地だったな。
リムルとフォルテがそう思っている時、ヨウムはくしゃみをしていた。
「ファルムス王国とはどんな国なんだ?」
フォルテの問いに酒を飲んでいたガゼル王は答える。
「まあ西側諸国でも、1・2を争う大国だな。我が国も、食糧はファルムスや帝国からの輸入に頼っておる。」
そこまで話したガゼル王は身を乗り出し、俺達に話しかける。
「………とはいえ、ここだけの話だが…………。」
「ん?」
どうやら余り聞かれたく話のようだ。俺とリムルも身を乗り出しガゼル王の話を聞く。
「俺はあの国王が好かん。」
「そうなのか?」
「理由は?」
「あの王は欲深すぎる。だから、是が非でもユーラザニアとの貿易に成功させろ。そして、兄弟子に酒を融通するのだ弟弟子達よ。」
「ああ……。兄弟子は今関係ないだろう。」
ファルムス王国…欲深いか………。
フォルテがファルムス王国について考えていた……その時!
「大丈夫で〜す!」
紫苑がリムルの頭の上に自身の胸を乗せて声を上げる……てかこいつ飲んでやがる⁉︎
「あっ紫苑……!」
「お酒飲んでる⁉︎」
「いつの間に……。」
俺とリムル、朱菜、シズさん、アイリスは突然の紫苑の行動に青ざめれる。
「リムル様とフォルテ様ならきっと〜、ユーラザニアとの貿易もババ〜っと素敵に纏めて下さいま〜す!」
「おい!」
「完全に酔ってやがる!」
「私達の食卓にも〜当たり前のように美味しい料理が並ぶようになりました!そこに美味しいお酒が加わるのも、約束されたも当然の話をなんです!リムル様とフォルテ様にお任せを〜!」
「「あっ!」」
「「「ああ〜‼︎」」」
紫苑はそのまま再び酒を飲み、そのままその場合に倒れる。
咄嗟にリムルがスライムの姿に戻って倒れる紫苑を受け止めた。
「セーフ………。」
「あ……………。」
「うぃ〜………。」
「ったくこの娘は本当にも………。」
「すみません!お見苦しいところをお見せして…。」
「「ハハハハッ!」」
「…リムルの秘書が申し訳ない。」
「よいよい。早く部屋に連れて行ってやれ。」
「しっ…失礼します。」
そうして、リムルは人の姿となって紫苑を背負って部屋に戻る。
朱菜とシズさんとアイリスもリムルと共に部屋に戻って行った。
フォルテだけは残ってガゼル王にファルムス王国について詳しく聞いていた。
「ファルムス王国は貿易で利益を得ている国……なら俺達の国がファルムスに代わる貿易の中心地になることは、ファルムス王国にとって利益を奪う存在でしかないな。」
「そうだな。」
「ガゼル王の話通りなら、いずれ必ず俺達の国を潰しに来るな。」
「恐らくな。」
「ファルムス王国からすれば無理もありません。」
「………帰ったら皆と相談するか。」
「まぁファルムスがどう動くか分からん現状、用心した方が良かろう。」
ガゼル王からファルムスについての話を聞けたフォルテは新たな防衛方法や、………覚悟を決める時が来たかもしれないと1人考えるのだった。
一夜明け、ドワルゴンとテンペストの友好宣言の日がやって来た。
リムルはスライム姿で王冠を被り、赤いマントを纏う……ある意味キングスライム。フォルテの軍服にいつもより豪華な宝飾を身につけている。
リムルとフォルテは
そして、挨拶開始時に紫苑がリムルを持ち上げる。
「えー初めましてドワルゴンの皆さん。ジュラ・テンペスト連邦国、略して
リムルがそう言い終えると、周囲から拍手と歓声が上がった。
そして歓声がおさまると、リムルの隣へとフォルテが前に出る。
「俺はフォルテ=テンペスト。リムルと同じジュラの大森林の盟主だ。人と魔物の共存…それは険しい道であり困難だ。だが、不可能ではないことはこのドワルゴンが証明している。俺は人と魔物は手を取り合う未来は実現すると確信している。何故なら……人も魔物も心があるからだ!心があるからこそ、相手を理解し分かり合い受け入れることができる!俺はその未来を掴む為にこの力を振るうことを皆に誓う‼︎」
フォルテがそう宣言すると、再び拍手と歓声が上がる。
なんとか挨拶を終えたリムルとフォルテ。…その後ガゼル王から言われたのは。
「短すぎる。謙りすぎる。情に訴えかけすぎる。はっきり言って0点だ。フォルテの方は、強い決意と意志を表していた分いい。まぁ20点だ。」
「うう………。」
「…そう言われるのは仕方ないな。」
「国を治める者が、国民に謙るものではない。ましてや他国の住民に下手に出れば舐められるだけだぞ。こうなったらいいなどと甘えた統治は厳禁だ。素晴らしいものとは自然にやってくるのではなく自ら掴み取りに行くものなのだからな。その点に関してはフォルテは理解している。」
厳しいが、これはガゼル王なりの心からの忠言だ。その事はリムルも理解している。
「…肝に銘じて今後の課題にするよ。」
「せいぜい励め。危うくて見ておれんわ。」
「すまない。」
ガゼル王からの忠告を聞いたその夜。……リムルとフォルテはゴブタ達を連れてあの店に。
「ゴブタ!朱菜と紫苑とシズさんには気付かれなかっただろうな?」
「もちろんっすよ!」
気合いを入れて答えるゴブタ。
「よし!いざ約束の地へ‼︎」
「はいっす‼︎」
元気よくその店…
「……まったくリムルは。」
そんなリムルを心配しながら店へと向かうフォルテ。
店に入ると待っていたのは懐かしのエルフのお姉さん達だ。その中には、この店に戻ってきたあの
「いらっしゃ〜い。」
「待ってたわよスライムさん。」
心良く迎えてくれるエルフのお姉さん達を見たゴブタの目はハートとなっている。
「エルフのお姉ちゃん達元気だった〜♪」
「もちろんよ。」
ダークエルフのお占い姉さんがリムルを抱き締めると、この店で初めてリムルを抱き締めたエルフのお姉さんがリムルをすぐさま取り上げる。
「私、私…が先よ。ウフフフフ。」
エルフのお姉さんに抱き締められ、胸の谷間に挟まれているリムルのスライム姿の目が更に緩み切っている……まさにメロメロ状態だ。
そんなリムルとエルフのお姉さんの光景を見たゴブタは生唾を飲み込んだ。
「スライムさんご一行いらっしゃいました〜。」
「相変わらず可愛い♡」
「ずいぶんご無沙汰だったじゃない。私達のこと忘れちゃったのかと思った。」
「まさか!」
エルフのお姉さん達の久々のリムルを堪能する中、大人の色気の強いエルフのお姉さんがゴブタに声を掛けるとゴブタがすぐさま告白していたが、あっさり受け流されていた。
ある意味ゴブタは時々強い。
そんなゴブタを見ていると、ダークエルフに占いお姉さんがフォルテに寄り添って来た。
「フォルテ君もお久しぶりね。」
「ああ。あの時はありがとう。」
「無事に精霊女王さまに会えたんだね。」
フォルテと占いお姉さんがそう話をしていると、お店のママさんがリムルとフォルテに声を掛ける。
「お連れさん達はもう出来上がっているわよ。」
「ありがとうママさん。」
ママさんに言われ振り向いた先には、カイジンとカイドウ達がいて楽しんでいた。
「リムル殿。今日は俺まで呼んでくれて嬉しいよ。」
「カイドウさんにはお世話になったし、これくらいはさせてくれ。」
「やっぱりその姿の方がしっくりくるな。」
「人型はお気に召さなかったか?」
「いやそう言う訳じゃねぇが……どうも一致しなくてな……。」
「まぁカイドウさんはスライムのリムルしか知らないから仕方ないな。」
「今日は兄弟でゆっくり語り合ってくれ。」
「馬鹿野郎!」
「のは⁉︎」
リムルの言葉にカイジンが叫ぶ
「こんな場所で野朗と話してどうする?せっかく綺麗な姉ちゃんが居るんだ!俺達も楽しもうぜ!」
「そうだぞリムル殿。お姉ちゃん達に失礼ってもんだ!」
そう言ってカイジンとカイドウは互いのジョッキをぶつける。
……やはり兄弟だな。
そうフォルテが思っていると、後ろからエルフのお姉さん達の声が聞こえた。
「ゴブタちゃん凄〜い!」
「上手ね〜。」
「「ん?」」
リムルとフォルテが振り返ると、椅子のような物の上で逆立ちしていた。
「そうすか〜?このくらい全然余裕っすよ〜。」
特訓でのバランス感覚がこんなところでいかされるとは。
そんなゴブタの足に高そうなグラスを置くエルフのお姉さん。
「あっ!ちょ……っこれは流石に危ないっすよ。」
「そのグラス、とっても高価な物なの。だから落としちゃダメよ。もしも割ってしまったら……そうね。ゴブタちゃんの体で支払ってもらおうかな。」
そんな事を言われたゴブタは興奮し過ぎて耳と鼻から血を噴き出して倒れた。
「きゃーッゴブタちゃん⁉︎」
「ちょっとしっかり‼︎冗談だからね!」
………長居するとゴブタは失血死するな。
ゴブタがエルフのお姉さん達に看病してもらっている間に、リムルとフォルテはママさんに話しかける。
「ママさん。」
「少しいいか?」
「なあにスライムさん、フォルテ君?」
「試しにこれを店に置いてくれないか?」
そう言って、リムルとフォルテは酒瓶を取り出しカウンターに並べる。
「何これ?」
「うちで作った新商品の酒だ。ガゼル王にも卸すから、あんまり沢山は渡せないけどお得意様限定で出してみてよ。感想が聞きたいから。」
「あらまあ。でも良いの?」
「一人一杯のサービスで、いくらまで出せるのかリサーチして欲しいからな。」
「あらあら、スライムさんとフォルテ君は強かなのね。カチカチになって演説していたのが嘘みたいだわ。」
「えっ⁉︎みっ見てたの⁉︎」
「リムル…見られていて当たり前だろう。」
「あれは…まぁね。演技だよ演技!初心っぽく見えただろ?」
「うふふ。そういう事にしておきましょう。でもね、私は好感を持ってたわよ。やっぱり人を惹きつけるのは誠実さだと思うの。その点、スライムさんなら満点だった。私も見てみたいわ、人や魔物や……
ママさんはそう言ってくれながら俺達の前に酒を置いてくれた。
「フォルテ君も力強いあの言葉は信じられると私は思えたわ。」
「…ありがとさん。」
「そう言ってもらえるなら良かった。」
リムルとフォルテはママさんが出してくれた酒を飲む。
そうして皆が楽園で楽しむ。そんな中、リムルが占いエルフのお姉さんに再び占ってもらった。
「スライムさん女難のそうが……。」
「まっさかー。」
………やはりこのお姉さんの占いは良く当たる……。
夜が更……とことん楽しんだリムル達は宿に向かって帰っていた。
「おっとっとっと。おいおいしっかりしてくれよ兄貴!幾らなんでも飲み過ぎだじょ〜。」
「お前こそ〜。」
カイジン達は完全に酔っ払い、ゴブタは貧血状態。
「ほら、ゴブタお前もしっかりしろ!」
「ちょっと…貧血で目が回るっす………。」
「ったく…良いかお前達。宿に帰る時、誰にも見つからないようにするんだぞ。今夜見た夢は、俺達だけの必要だからな。」
「「「はい!」」」
「…はいっす。」
念には念をと皆にそう言うリムルだが………それは無駄だった。
「お手伝いしましょうか?」
「ああ、すみませ………ああああ!シュッ、シュッ………!」
リムルが振り向くとそう……朱菜がいたのだ。
笑顔のままだが……その笑顔から恐怖を感じる。
《笑顔の裏側に凄まじいエネルギーが荒れ狂っているのを感知した。》
「なっななっななな………⁉︎」
「何故ここにですか?」
「ハッ!うんうんうんうん!」
「ゴブゾウが全て話してくれました。」
「なっ⁉︎ゴッゴブゾウ⁉︎お前どうして〜⁉︎」
「ほえ?おら朱菜様に何処行くか聞かれたて、お答えしただけっす。」
曇りの無い純粋な目でそう言うゴブゾウだった。だが…ゴブゾウが話す前からこの未来は決まっていた。
「それにドワルゴン出発前に既に、フォルテ様からも話を聞いていました。」
「なぁ⁉︎」
朱菜の言葉にリムル達は一斉にフォルテへと振り向く。そこには、シズさんとアイリスによって捕まっているカイジン達の姿もあった。
「……まぁそう言う事だリムル。」
ドワルゴンに向かう前。
あれは紫苑の説教を終えた後、フォルテは会議室に朱菜達を集めた。
「フォルテ様。お話とはなんでしょうか?」
「…実はドワルゴン出発前に朱菜達に話しておこうと思ってな。」
「私達にですか?」
「ああ。リムルと初めてドワルゴンに行った頃の話だ。」
フォルテは話したドワルゴンでのカイジン達との出会いに夜の蝶そしてシズさんとの出会いのきっかけの占いを。
「そうですか…。」
その話を聞いた朱菜から怒りの闘気が滲み出ていたが、自分達と出会う前のこと故に責めたりするのは違うと分かっているのでなんとか自分を抑えていた。
「あの
「ああ。……でだが、今回再びドワルゴンに行く訳だが……ゴブタとの約束もあるからリムルは朱菜達には内緒で間違いなく夜の蝶に行くだろう。だが俺は、流石に内緒にするべきでは無いと思った。」
こういう内緒にした行動は必ずバレて大変な事になる……前世の世界でも良くある展開だ。
「だからこそ、俺から頼む。今回だけはリムル達の行動を許してやってくれ。」
フォルテは頭を下げて朱菜達に頼む。
「……頭を上げくださいフォルテ様。」
朱菜にそう言われて頭を上げるフォルテ。
「フォルテ様の気持ちは分かりました。私達に内緒にせず話して下さったのですから。」
「朱菜…。」
「フォルテ様に関しては私達は納得しましたし許します。……ですが、やはりリムル様達から直接言って貰わないと。ですから、フォルテ様に頼みがあります。」
「頼み?」
「……その夜の蝶と言うお店でのリムル様の行動を監視して貰いたいのです。あまりにも緩み過ぎていないか心配ですから。思念伝達でフォルテ様の見た様子を私達にも伝わるように。」
その時の朱菜は笑顔だったが、滲み出ている闘気が凄まじかった。
「…分かった。」
「よろしくお願いします。」
「……という訳だ。」
「えっ?………じゃあ店での事は全部……。」
「俺の目を通して朱菜達に全部筒抜けだったって事だ。」
フォルテの言葉にその場にいた者全員の顔が青ざめた……そんな時。
「酷いですリムル様!」
「ハッ!」
路地裏から剛力丸を背負った紫苑が現れた。
「置いて行くなんて………あんまりです!」
「いっ…いやだってそのえ〜っと………ふぇ⁉︎」
リムルが言い訳をしようとするが、紫苑が地面を蹴る!
「黙って行くなんて酷いです!」
頬を膨らませている紫苑。そんな紫苑の隣に笑顔のまま朱菜が並び立つ。
「では……ゆっくりと
そうして、皆正座させられリムルは朱菜と話を始めた。……その様子をお咎め無しのフォルテは見守るのだった。
「……やはりこう言う行動を内緒にするのはよくないな。」
「そうだね…。」
そんなフォルテの左右にシズさんとアイリスは自然と近寄っていた。
「そういえば、フォルテ君ってあんな店は苦手だったのかな?」
フォルテの目から様子を見ていたシズさん達は、夜の蝶でのフォルテの行動も知っている。
「…前世から経験がないからな。リムルみたいに楽しむとか俺には無理だった。」
「そっか…。」
「そうなんだ。」
それを聞いて更にフォルテに近寄るシズさんとアイリスだった。
「すみませんでした!もうしません‼︎」
その一方で、スライムの可愛さを活かして情に訴えかけている……リムルそれはガゼル王に指摘された過ちだぞ。
朱菜と紫苑はその可愛さにうっとりした。
「わかりました。一週間紫苑の朝ご飯で許してあげます。」
その言葉に一瞬ホッとしたリムルだが、すぐ絶望に落ちた。
「いいのですか朱菜様!」
「ええ。頑張ってね紫苑。」
リムルのこれからの一週間を想像したのかカイジンとゴブタ達は青ざめながら口を手で押さえた。
何も知らないカイドウさんだけは、分からない様子で皆の表情を見ている。
「あの……3日に負かりませんかね。」
「一週間です。」
「……はい。」
リムルが諦めていると、ドワルゴンの夜明けをむかえた。
その一方で、とある町でヨウム達に接触する者がいた。
「ようイサーク。どうした?」
「姐さんがちょっと話があるってんで、聞いてもらえませんかね。」
「姐さん?」
ヨウムが首を傾げると、その者はフードをとり素顔を見せる。
その者は緑の髪の美しい女性だった。
「私は魔法が得意なので、英雄の貴方のお役に立てると思います。聞けばヨウム様の元には、魔法使いは少ないようですし。」
女性の言葉に不安げな表情を浮かべるロンメル。
「……残念だが、魔法使いは間に合っている。」
「女が何の役に立って言うんだ?」
カジルの言葉に眉を顰めた女性はヨウム達を挑発する。
「ふ〜ん。なら本物の
「ふ〜ん。」
こうしてヨウムと女性は戦うことになり、森で戦闘が行われた。
白老達に鍛えられたヨウムは英雄と呼べる身体能力を得たが、絡めての技に対しての対応がまだ弱かった。
「何っ⁉︎ぐっ……!」
女性の仕掛けた罠に嵌り落とし穴へと下半身を沈めたヨウム
すぐさま脱出しようとするがそれを女性は逃さない。
「
地面を固定され抜け出せなくなったヨウム。
「くぅ!動けねぇ!」
「あんな単純な魔法にあの様な使い方が⁉︎」
「
女性が更に発動した魔法により、ヨウムの周囲から空気がなくなり真空状態になり呼吸ができなくなったヨウムは苦しむ。
「終わりよ。呆れた。まさか状態異常への対策も取っていないなんて。対魔法戦が全然なってないじゃないの。」
女性はそう言いながら魔法を解除し、ヨウムは呼吸する。
「あ〜負けだ負けだ。よっ。」
自分の負けを認めたヨウムは穴から抜け出し、女性に近寄る。
「あんた強いな。名前は?」
「…………ミュウラン。」
「よろしくなミュウラン。」
ヨウムは笑いながら手を差し出しミュウランに握手を求める。
ミュウランは少し戸惑いながらもヨウムの手を取り、二人は握手を交わした。
実は出発前から予想し朱菜達に話ていたフォルテだった。
……こういう隠し事は何故か必ずバレる。ならば素直に先に話すのも一種の手段なのかもしれない。
ヨウムに接触したミュウラン………テンペストに悲劇がゆっくりと近づいている。