ドワルゴンでの仕事を終え、
朝食を食べながらドワルゴンでのことをトリルとカーネルと
「ドワルゴンでは上手くいったようでなによりです。」
「ああ。」
「でも最後で朱菜達を怒らせるとは……。」
「だから今リムル様達はあんな状態なんだ。」
「……これから後六日間。」
「大丈夫かな?」
カーネルとトリルはリムル達を心配するのだった。
「まぁ大丈夫だろ。」
「死ぬことは無いからな。」
「だよね。」
そう言いながら、フォルテと
……この時、意識を取り戻したリムル達が羨ましそうな眼差しでフォルテ達を見ていたのは言うまでもない。
朝食を終えた後、議事堂に皆を集めたフォルテはガゼル王から聞いたファルムス王国について相談し、その後は白老と黒死牟に剣技の特訓をつけてもらった。
そして昼食となりリムルと共にゴブイチの元に向かった。
「良し!美味いの食うぞ‼︎」
「……まぁリムルにとって朝食は今は地獄だからな。」
ゴブイチがいる厨房に入る俺達。
「ゴブイチくーん♪」
「ゴブイチすまない飯を食いに来た。」
「大仰なやつじゃなくてジャンクなやつ……って。ん?…誰⁇」
厨房にいたのは青い髪のツインテールの女の子だった。
「あんた達こそ誰よ!」
俺達を警戒し構える様子からしてまだ街に来て間もないようだな。
「あー俺達はゴブイチとダチでさ、時々ここで食べさせてもらってんの。」
「そうなの?ゴブイチさんなら、しばらく戻ってこないわよ。」
「えーまじかよ⁉︎」
「なら仕方ないな。」
俺とリムルはそれぞれ食材を手に取る。
「ちょっと!勝手に触ったら駄目なのよ⁉︎」
「俺達はいーの。」
「まぁ見ていろ。」
女の子が首を傾げる中、リムルは慣れた手つきで具材を切りパテを焼きバンズに挟んでいく。
「凄いわ!これが料理…。」
「いやまだだ。皮を剥いていないこの芋を…くし切りにして油でも揚げて……完成だ‼︎」
そこに出来上がったのは見事なハンバーガーセットだった。
「俺特製、牛鹿のハンバーガーとフライドポテトっ‼︎」
「見事だな。なら次は俺だな。」
そう言ってフォルテは中華鍋火を入れ油をしいて、細かく刻んだ牛鹿は肉と野菜を炒める。
「この人も凄い…。」
女の子はフォルテの調理姿にも魅入っていると、炒めた具材を一旦皿に移した。
「これで完成?」
「いや。ここからが本番だ。」
フォルテは卵を割って溶き、中華鍋に再び火を入れ熱した後にその溶き卵を注ぎ入れる。
半熟になった頃合いに炒めた具材と魔黒米を入れ、中華鍋を振るいながら一気に炒める。
フォルテが鍋を振るう度に米と具材が宙を舞う。
その光景に女の子は更に魅入ってしまった。
ある程度振るい、具材が一つになった頃合いにフォルテは瓶に入った何やらスパイスらしいものを加える。
「フォルテ…それってカレーのスパイスか?」
「ああ。ちょっとした工夫だ。」
スパイスを加え更に炒めて具材が完全に混ざり合った頃合いを見て皿に移す。
「完成だ。魔黒米の
炒めた魔黒米の炒飯からカレーの食欲を唆る匂いがリムルと女の子の鼻を刺激する。
「なんて食欲を唆る香りなの!」
「やっぱフォルテの料理は美味そうだな。」
すると女の子はいきなりフォルテの手を取る。
「私に料理を教えてくれない⁉︎」
「えっ⁉︎」
「私、ミリム様に召し上がってきていただきたくて料理を覚えたいの‼︎都でもこの料理が食べられれば、ミリム様もきっとお喜びになるわ‼︎」
「ミリム?お前ミリムのとこの…。」
「なるほど。」
そこに用事を済ませたゴブイチが帰って来た。
「どうだいステラ皮むきは……っリムル様⁉︎フォルテ様⁉︎」
「え⁉︎リムルとフォルテ……ってこの国の盟主の……。」
「おう。スライムのリムルだ。」
「
リムルはスライムの姿を見せてまた人型に戻る。
「なぁゴブイチ。この娘此処で使ってやってくれないか?ミリムの為に料理を覚えたいんだと。」
「はぁ…リムル様がそうおっしゃるのでしたら。」
唖然としていた女の子はリムル達の話で我に戻る。
「本当⁉︎私に料理を教えてくれるの⁉︎」
「ああ。頑張れよ。」
「ありがとう‼︎あたし頑張るわ‼︎」
「なら俺からも時間があれば教えてやろう。」
「え⁉︎いいの‼︎」
「ミリムの為だと聞いたからな。」
「本当にありがとう‼︎」
フォルテの言葉を聞いた女の子は祈る様に何かを想像しながら自分の世界に入ってしまった。
後から聞いたら、あの女の子はステラと言う名で竜を祀る民だった。
ステラに料理を教える約束をした後、リムルとフォルテは朱菜のいる織物工房へと向かった。
「シュナいるかー?」
「この前言ってた件だが…。」
「リムル様!フォルテ様!」
朱菜はすぐ俺達の元に駆け寄る。
「言ってくださればそちらに伺いましたのに。」
「いやーついでに何着が服を見繕ってもらおうかなって思ったさ。」
リムルと朱菜が話を始めた時、フォルテは奥にフォスと…黄緑の髪の女の子が一緒にいた。
その女の子の背に翼が生えており、足が鳥の鉤爪となっているからおそらく
そんな
「なにしてるです⁉︎」
「スライムで寝るのは究極の寝所作りに必要なのぉ。」
「どういう意味です?」
「前に野生のスライムで寝ようとしたら溶かされかけたの。でも、意思のあるスライムなら溶かされず寝る事が出来るの‼︎」
……確かに。本来スライムは意思をもたず、ただ捕食するだけだからな。
朱菜や紫苑それにシズさん達がリムルを抱っこしたり、枕代わりにする光景はリムルだから出来ることなんだよな。
「駄目です!無理です!そんな事許されるわけないです!」
それを聞いたフォスは必死にその女の子を止めるのだった。
「フレイ様は膝枕してくれたの。」
「してくれたです⁉︎」
フレイ?……魔王の一人で
ミリムから聞いた事があるが……なるほど
「そうなの!だからチャンスはゼロじゃないの!だからネムは此処で働くの、リムル様で寝られるチャンスを待つの‼︎」
諦めずに努力しようとするその姿はいい。あの子の名はネムと言うのか。
「あっ!フレイ様への偵察指令も忘れないようにしなきゃなの。」
……やはり偵察に来ていたか。まぁ街で悪さする訳でもないからいいか。
それに俺はネムも諦めずに努力しようする姿が気に入った。
フォルテはネム達に近寄る。
「やる気が出たようだな。」
「フォルテ様⁉︎」
「この人がそうなの?」
フォスは驚き、ネムは首を可愛く傾げる。
「ネムと言ったな。そのやる気の良さがいいから特別にこれをやろう。」
フォルテはそう言って掌からチップ化したあるものを具現化。
現れたのは……リムルのスライム姿のビーズクッションだった。
「おお!」
ネムは出て来たビーズクッションに抱きついた。
「すべすべで柔らかいの。」
「気に入ったようだな。」
このビーズクッションは以前湖で取って来たサラサを詰めたあのクッションだ。
「すみませんフォルテ様!」
フォスは必死に謝っている。
「気にするな。それにネムにはしっかりと頑張ってもらわないといけないからな。仕事との働き次第では願いを叶えてやる。」
フォルテの言葉を聞いたネムは目を輝かせてフォルテを見る。
「本当なの⁉︎」
「ああ。それに、リムル以外にも意識のあるスライムはいるからな。」
フォルテがそう言って直後、工房にシンシヤがやって来た。
「ママ!配達終わりました!」
「まぁシンシヤご苦労様です。」
「おっ!シンシヤお疲れ様。」
「あっ!パパ!」
リムルをパパと呼ぶシンシヤにネムとフォスは首を傾げた。
「えっ?……リムル様の娘……でもリムル様はスライム……。」
「……分裂なの?」
「まぁ不思議に思うよな。」
こうして魔王フレイの配下であるネムは朱菜の工房で働くことになった。
それから数日経過経った頃、フォルテは訓練所に向かった。
最近フォスが白老との個別訓練で頑張っていると聞いたからだ。
「最近だと白老から気闘法を学ぶ為に基本から鍛え直していると聞いたが。」
始めは鍛え過ぎて手足が筋肉痛になって大変だったそうだが…。
訓練場に着くと他の皆が弁当を食べる中で何故かステラが白老と、カーネルがフォスの相手をしていた。
「はぁ!」
「やぁ!」
フォスが双剣で斬りかかりステラが連撃で攻めるが、カーネルはサーベルで全て受け止め白老は巧みに躱していた。
「あまい!」
「ハァ!」
ステラは白老に足を取られてその場に倒れ、カーネルは横薙ぎでフォスを払い飛ばした。
「いたたた……まだよ!」
「私もまだいけるです!」
すぐさま立ち上がる二人。そんな二人にフォルテは声を掛ける。
「頑張っているなフォス。ステラ。」
「あっフォルテ様!」
「えっ⁉︎」
「これはこれはフォルテ様。」
「今日も訓練に来られたのですね。」
「まぁな。にしても、フォスが訓練しているのは分かるが何故ステラもいるんだ?」
ステラとはあれから時間がある時に色々と料理の基本などを教えていた。ゴブイチから学んでいる分、ステラの料理の腕は確実に上がっていた。
……紫苑と比べても、その学習力には凄かった。ミリムに美味しい物を食べてもらいたい彼女の気持ちが現れているようだった。
そんなステラが何故か訓練場で白老の相手をしていたので気になった。
「私は皆に差し入れを持って来たのよ。」
「ああ。なるほど…。」
「私もより強くなりたいから、差し入れを持って来るついでにこうして稽古にも参加させてもらっているの。」
闘志を燃やすステラの姿に、フォルテはステラの力に興味を持った。
「なら今度は俺と手合わせしてみるか。」
「えっ!いいの⁉︎」
「ステラの実力も知りたいからな。」
こうしてステラとフォルテの模擬戦が行われることに。
互いに相手を見据えるステラとフォルテ。
その様子を見守るフォスとゴブタ達。
「ステラとフォルテ様の試合…気になるです!」
「フォルテ様相手にあの子どこまでもやれるっすかね。」
審判を務める白老が二人の間に立つ。
「では……始め!」
「はぁ!」
開始の宣言と同時にステラはフォルテに向かって駆け出し拳を振るう
フォルテはすぐさま躱すと、ステラはそのまま連続で拳で殴り掛かる
だがフォルテは全て躱していく。
(なるほど。拳のキレもいいし中々の速度だ。……だが攻撃が単調過ぎる。)
ステラの攻撃を躱し続けながらステラの攻撃パターンを見極める。
(……ここは一ついつもと違うやり方を試してみるか。)
そうフォルテが決めた後、ステラの攻撃を飛び引きながら躱し着地した瞬間、フォルテの姿が突然消えた。
「あっ!」
ステラはフォルテの姿がだけでなく気配が消えたことに一瞬驚く。
「これは隠形法!」
気配が消え追えないステラは背後を警戒する………だがなんと、ステラの周囲に無数のフォルテが現れ消えるを繰り返す。
「ええ⁉︎なんなのこれ⁉︎」
突然の展開に戸惑うステラ、この様子を見ていた白老は顎に手を置きながらフォルテの動きを理解した。
「流石フォルテ様ですじゃ。瞬動法と隠形法を組み合わせて無数の残像で相手を翻弄させる技のようですじゃ。」
「分身体とは違い気闘法を組み合わせた残像ゆえに魔素の消費も抑えられる。」
「フォルテ様…凄いです。」
白老、カーネル、フォスはフォルテの気闘法の技に感心する。
その一方で、ステラはフォルテの気配が追えず無数の残像に翻弄されてしまい兎に角目の前の残像を手当たり次第攻撃していた。
「くっ!どれが本物なの!」
何度も何度も攻撃を繰り返すが、拳や蹴りは残像をすり抜けるだけだった。
やがて動きに無駄が生じてきた………その時にフォルテが目の前に現れた。
「……え?」
突然現れたことに呆気に取られるステラ。
そんなステラの額にフォルテはデコピンを喰らわした。
その瞬間、デコピンを受けたステラは突進を受けたかと思う勢いで後ろに弾き飛ばされた。
「きゃあ!」
飛ばされたステラはそのまま地面を転がり倒れた。
「そこまで!」
それを見た白老が声を上げる。
「フォルテ様見事ですじゃ。」
「実に素晴らしい戦術でした。」
そう言いながら俺の元に来る白老とカーネル。そしてフォスはステラを心配して駆け寄る。
「大丈夫です⁉︎」
フォスが声を掛けると、ステラはゆっくりと起き上がる。
「っつぅ……なんて威力なの。」
ステラは涙目になりながら額を摩った。
「デコピンであの威力……もしかして。」
「そうじゃ。あれは気操法よる強化じゃ。」
フォスの問いに白老が答えた。
「ただのデコピンであれだけの威力なんて……。」
「しかも組み合わせであんな事ができるなんて凄いです!」
フォルテの気闘法の組み合わせに二人が感心していると、フォルテがステラに近寄る。
「ステラ。お前の力は中々に強いし技のキレもいいが、攻撃が読みやすいのが課題だ。さっき俺がやったような戦法を覚えて対策をした方がいい。」
「……小手先の戦法にここまでやられるなんて。」
「相手が必ず正々堂々真っ向勝負をするとは限らない。どんな戦法を使ってくるか実戦では分からないものだ。だからこそ、色んな戦法に対処できるように学ぶのが大事だ。」
「…分かったわ。」
「フォスも覚えておくように。」
「はいです!」
こうしてステラとの特訓で気闘法を使った戦法を試せたフォルテだった。
「さてと。……後はあそこで寝てるネムを起こすか。」
そう言ってフォルテが振り向いた先には、シンシヤとプロトにもたれ掛かったまま気持ち良く眠るネムの姿があった。
「ネム⁉︎」
「いつの間にです⁉︎」
「俺達が構えている間にはもう眠っていた。」
あれからネムは朱菜の元で頑張って働いていた。その過程で、織物工房に良く来ていたシンシヤと仲良くなり……今ではあんなふうに寝かせてもらえるようになっていた。
プロトはスライム姿で町を散歩している時にシンシヤからネムを紹介されて仲良くなったようだ。
「ネムそろそろ起きろ。」
フォルテはネムの体を揺さぶる。
「う〜ん!よく寝たの!…あっフォルテ様こんにちはなの。」
「ぐっすりと眠れたようだな。」
「そうなの!シンシヤとプロトのおかげなの!やっぱりスライムは最高の寝枕なの!」
そう言った後ネムはシンシヤとプロトの方へと振り向く。
「シンシヤ、プロトありがとうなの!」
ネムはとても良い笑顔で二人に礼を言った。
「ネムさんが気持ち良く寝れたなら良かったです。」
「僕も!」
シンシヤも笑顔で答え、プロトはプロトバグの姿となって可愛らしく手を振った。
「これから皆で夕食を食べに行く予定だが、一緒に行くか?」
「行くの!」
「えっ⁉︎……もうこんな時間⁉︎早く戻らないと!」
ステラは急いで空になった弁当箱を集めてゴブイチの元へと帰った。
翌日、リムルは紫苑の料理から解放され再びイングラシアへと帰った…向こうでの別れの準備の為に。
それから更に数日後。
リムルとフォルテのある意味お気に入りの場所である、
「ほら着いたぜミュウラン。」
英雄ヨウム達と新たに仲間に加わったミュウランを連れて。
「あれが魔物の国ジュラ・テンペスト連邦国だ。」
ミュウランは
遂に
……悲劇は確実に近づいている。