転生したらフォルテだった件   作:雷影

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ミュウランが魔国連邦(テンペスト)にやってきた。そして魔国連邦(テンペスト)を狙って暗躍する者達も動き出す。


51話 謀略のファルムス王国

イングラシアからリムルがもうじき正式に帰国する為、皆お祝いの為の準備を着々と進めていた。

そんな皆の様子を見ながら議事堂に向かうフォルテ。

 

「ん?あれはヨウムか。」

 

議事堂の前にヨウムと緑の髪の美しい女性がいた。

 

「久しぶりだなヨウム。」

 

「おお!フォルテの旦那!」

 

「…この人がフォルテ。」

 

久しぶりのフォルテとの再会に喜ぶヨウム。そしてフォルテをじっと見る女性。

 

「その女性は?」

 

「ああ。彼女はミュウラン。俺達の新しい仲間だ。」

 

「初めましてミュウランと言います。」

 

ミュウランはそう言ってフォルテに頭を下げる。

 

「……なるほど、魔導師(ウィザード)か。それもかなりの実力者。」

 

「流石はフォルテの旦那だ。見ただけで分かるなんてな。」

 

「それでヨウム。お前が彼女を連れて帰ってくるとはな。」

 

「なっ⁉︎違っ…まだ彼女じゃねえよー!」

 

「まだか……フッ。」

 

顔を赤くしながら声を荒げるヨウム。そんなヨウムを見たフォルテは小さい笑みを浮かべるのだった。

 

 

「それじゃあ俺はミュウランにこの町を案内しに行くわ。」

 

「分かった。俺は仕事を済ませに行く。」

 

フォルテがそう言うと、ヨウムは頷く。

 

「それじゃあ行こうぜミュウラン。」

 

「ええ。」

 

ヨウムはミュウランを連れて町へと向かう。そんなヨウム……いやミュウランの後ろ姿を見つめるフォルテ。

 

《解析が完了した。》

 

「……成る程、やはりか。」

 

その後、仕事を終わらせたフォルテは会議室に紅丸達を集めてファルムス王国ついて説明した。

 

「ファルムス王国…厄介な国ですね。」

 

「まだ動きがある訳ではないが、ガゼル王が欲深い王だと言っていた。…ならきっとこの国を狙ってくるだろう。蒼影、シャドーマン。ファルムス王国の動きを調べておいてくれ。」

 

「「御意。」」

 

「それでだが…。」

 

フォルテの真剣な眼差しに皆が息を呑む。

 

「以前リグルドやリグルにも言ったが、向こうから攻めてくるならば反撃していい。そして最悪の場合は……殺害も許可する。」

 

「……フォルテ様。」

 

「ガゼル王の話からファルムス王国の者達が話の分かる者達ではないと判断した。欲深いファルムスの者が攻めて来て大切な皆にもしものことがあれば……いやあってはならない! リムルに悲しい思いはさせたくない……皆もそうだろ。」

 

フォルテの言葉を聞いた紅丸達は皆頷いたのだった。

 

それから、攻められた場合の対処方法や住民達の避難場所や避難ルートなどを相談した。

 

会議が終わった後、ヨウム達のことが気になりフォルテは訓練場に向かった。

 

訓練場に着くと……何故かグルーシスが地面に埋まっていた。

 

「……ふっ。ぶははははっ! ほら見やがれいいザマじゃねぇか!」

 

その様子を笑うヨウム。

 

「面白いから人呼んで来ようぜミュウラン。」

 

「それでも英雄かっ! 早く手ぇ貸せ‼︎」

 

「はぁ……。」

 

あまりにも可愛そうに見えたので、フォルテは近寄りグルーシスを穴から引き上げた。

 

「大丈夫かグルーシス。」

 

「フォルテ様⁉︎ ……いつから見てました?」

 

「ついさっきだ。……それで何故ああなっていたんだ?」

 

ヨウムの話によれば、白老との特訓でボコボコにされてたグルーシスにミュウランを紹介したそうだが、ヨウムがミュウランに負けたと知って笑った。

そこで、ヨウムがグルーシスにミュウランと勝負するように言った。

グルーシスが勝てばヨウムはグルーシスを兄貴と呼ぶと言い、グルーシスも自分が負けたらヨウムの舎弟になると決めたそうだ。

 

「…それで結果があれだった訳か。」

 

「はい。…おいお前。」

 

グルーシスはミュウラン向かって声をかけるか。

 

「お前の勝ちだ!」

 

「すっ…素直なのねぇ。」

 

「さっきの通りだ。あの状態じゃもう勝ち目はないからな。強いなあんた、大したモンだ。」

 

「だろ。でグレーシス、さっきの約束だが…。」

 

「ああ。お前が兄貴分って事で良いぞ。」

 

「いや…冗談のつもりだったんだが…。」

 

「約束は約束だ。だが、正直に言っておく。カリオン様がお前を殺せと俺に命令したなら、俺は迷わずお前を殺しに行く。悪いが、それが俺の中の絶対的ルールなんだ。」

 

まぁ当然だな。グルーシスにとって本当に仕える相手がカリオンなのだから。

 

「…分かった。肝に銘じておく。」

 

その後、宿に戻って皆で酒を飲んでいる。

 

酒を飲みながら、グルーシスはヨウムに言った。

 

「俺もお前たちの一行に加わるぜ。他の国も見てみたいしな。」

 

「それは構わないが…いいのかよ?」

 

「俺は見聞を広めるのが任務だから、好きにさせてもらうさ。」

 

「成る程…分かった。カリオンには俺から言っておくから安心しろ。」

 

「フォルテ様…ありがとうございます。」

 

安心したグルーシスは更に酒が進んだ。

 

「…にしても、まさか落とし穴から抜けられなくなるなんてよ。」

 

「単純な魔法の組み合わせよ。大したものじゃないわ。」

 

ミュウランはそう言うが補助魔法であそこまで巧みな罠を作り出すのは見事なものだ。

 

「いやいや大したもんっすよ!」

 

「ゴブタ君?」

 

フォルテがそう思っていると、ゴブタがミュウランとヨウムの間に割って入って来た。……その顔は何故かゴ◯ゴ13似になっている。

 

「自分は確信したっす。姐さんの魔法があればあのジジイも倒せると!

 

ゴブタの言葉にヨウムとグルーシスは反応し、ゴブタの目線に合わせて話しかける!

 

「おいおいジジイってハクロウ殿のことか?」

 

「シッ!声がデカイっすよ‼︎」

 

「なんか作戦でもあんのかよ?」

 

日頃、白老に扱かれ続けているヨウムとグルーシスもやはり白老に一矢報いたいのか必死にゴブタの考えた作戦を聞いている。

 

話し合う三人を見ているうちに、ミュウランが夜風に当たり行った。

それに気付いたヨウムはミュウランの後を追い毛布を被せる。

 

二人で夜空を眺めるヨウムとミュウラン。その様子を少し離れた場所からフォルテが見守っていると、ミュウランが決意したように話しかけようとした瞬間…ミュウランに通信する者がいた。

 

『お久しぶりですねミュウラン。そちらは変わりありませんか?』

 

その声を聞いた瞬間、ミュウランは駆け出し森の方へと向かった。

 

そんなミュウランを密かに追いかけるフォルテ…。

 

「あれは魔法通信の類だな。……やはりミュウランは魔王クレイマンの配下だったか。」

 

初めてミュウランと会った時、電脳之神(デューオ)にミュウランの解析を任せた。そして、解析結果でミュウランが魔人であることを確認した。

 

それからこうして密かに監視していたのだ。そして今、クレイマンとミュウランの通信を傍受している。

 

内容から、やはりミュウランは内偵として魔国連邦(テンペスト)に潜入したと知り、そして……ミュウランが無理矢理クレイマンに従わらせられている事を知った。

 

『少々溺れているようですが、それに目をつぶれる位にはね。』

 

クレイマンの言葉にミュウランは怯えるように一瞬震えた。

 

『預かっている心臓を返して解放してあげようかと思えたほどですよ。』

 

「…それは私が用済みということでしょうか?」

 

『ミュウラン。折を見て、最後の命令を下します。その時までそのまま潜伏していなさい。』

 

「最後…ですか?」

 

『ええ。最後です。』

 

ミュウランとクレイマンの通信を聞いてより警戒しなければとフォルテが思った。

 

そして、ミュウランを心配して追いかけて来たヨウムがミュウランをみつけた。

 

「大丈夫か? どうしたんだよ急に走り出して…。」

 

振り返るミュウランの瞳は悲しみに染まっていた。

 

『忘れないでくださいミュウラン。貴方の弱みはもはや心臓だけでは無いのです。貴方は私の呪法の支配下にある。この私を出し抜こうなどと目論むだけ無駄ですよ。』

 

ミュウランはクレイマンに心臓を奪われ……更に愛する者の命までクレイマンに握られたのだ。

 

『見たくはないでしょ? 自分の手で愛しい男を殺す様を。』

 

クレイマンとの通信が終えたミュウランは、ヨウムと共に宿へと帰って行った。

 

「……魔王クレイマン。命をなんだと思ってやがる。」

 

人の大切な者を人質に無理矢理支配する……人形傀儡師(マリオネットマスター)と呼ばれているとミリムから聞いてはいたが、どうやら配下の者達まで人形……道具としか見ていないようだ。

……ミュウランの仮初の心臓がそれを表していた。

 

 

その後、フォルテは会議室にカーネル、D(ダーク)ロックマン、D(ダーク)ブルースそして黒死牟達を集めミュウランについて話した。…仮初の心臓に隠された秘密も。

 

「まさか…心臓を盗聴機として使っているとは。」

 

「そのクレイマンって魔王はある意味リーガルより性格悪いね。」

 

「全くだな。」

 

そう。ミュウランの仮初の心臓は暗号化された電気信号をクレイマンの元に送信していた。

 

「定期的にミュウランに報告させていたのはそれに気付かせない為だろう。配下を完全に道具としか見ていない奴がやりそうな事だ。」

 

「…フォルテ様。ミュウランをどうなさいますか?」

 

カーネルがそう問う。

 

「……直接この町の者達に危害を加えている訳じゃない。あくまで内偵だ。しばらくは監視して様子を伺う。」

 

「でもそれだとこっちの情報がクレイマンに知られるけど?」

 

「ああ。だから他の電脳魔人(サイバーノイド)達にはしばらくの間、電脳世界(サイバーワールド)で過ごしてもらう。表向きに知られている情報だけ与えてクレイマンを欺く。」

 

「ミュウランの仮初の心臓の盗聴機に関していかが致しましょうか?」

 

「それも既に手は打ってある。」

 

ミュウランと最初に会った時、彼女から妙な波長が放たれていることを感知したからこそ電脳之神(デューオ)に解析を頼んだのだ。

 

「宿でミュウランに接触した際にその電気信号が改変されて送られるようにした。これからクレイマンに送られる情報の半分は偽の情報へと変換されて送られる。」

 

「成る程。半分が本物の情報を与えるのはミュウランからの報告と内容に違いが無いようにする為ですね。」

 

「そうだ。下手に全部偽の情報にすると勘付かれるからな。そして、D(ダーク)ロックマン、D(ダーク)ブルースは透明化(インビブル)を使ってミュウランを監視してくれ。何か動きがあればその場で捕縛だ。」

 

「捕まえるだけ?」

 

「……もし町の者に手を出したならば違うがな。」

 

「ふ〜ん。分かったよ。」

 

「了解しました。」

 

こうしてミュウランに対しては決まった。

 

「さて次は黒死牟、猗窩座、憎珀天、妓夫太郎、梅。」

 

名を呼ばれた黒死牟達はフォルテを見る。

 

「ファルムス王国についてはもう知っているな。」

 

「無論。」

 

「もちろん。」

 

「はい。」

 

「ああ。」

 

「ええ。」

 

皆は頷く。

 

「いずれその国が攻めてくると俺は予測した。紅丸達と対策案を考え準備はしたが……もしそれが間に合わなかったり、予想外の一手を打たれる可能もある。だからこそ、お前達には積極的に敵の殲滅を任せたい。」

 

フォルテの鋭い眼差しが黒死牟達を見据える。

 

「紅丸達も最終手段として俺から許可は出した。だが…紅丸達の本当の主人はリムルだ。リムルのことを思って判断が遅れる可能性もある。」

 

「それで…私達と言う訳ですね。」

 

「本当ならお前達にはもうそんなことはさせたくない。……だがファルムスが攻めて来てそうなってから後悔したくない。それと、できれば梅には戦意を失った敵の捕縛を任せたい。梅の能力なら確実に捕えらるからな。」

 

フォルテは最悪の事態を考え…黒死牟達に任せる決断をした。

そして黒死牟達の答えは……。

 

「分かった……引き受けよう。」

 

黒死牟の言葉にフォルテは黒死牟を見る。

 

「元々……この世界については旅をしてある程度知っていた。」

 

「ああ。そう言う奴らがいることも。」

 

「ワシたちも当然覚悟は出来ている。」

 

「寧ろそう言うのが俺達の仕事だ気にするな。」

 

「お兄ちゃんの言う通りだよ。」

 

「皆…感謝する。」

 

こうしてフォルテはファルムスの侵攻に対して準備を着実にしていた。

 

 

 

 

そんな噂のファルムス王国では、ファルムス王が部下達と共に会議を行っていた。

 

「英雄ヨウムとな?」

 

「はっ!そのヨウム一行が豚頭帝(オークロード)とその軍勢を打ち破ったとの噂でございます。」

 

ファルムス王国の王宮魔導師長ラーゼンの報告に周りの者達が騒めく。

 

「英雄とは馬鹿馬鹿しい話ですが。」

 

「実際豚頭帝(オークロード)の出現は自由組合から報告がありました。」

 

ファルムス王国の王立騎士団団長フォルゲンがそう王に伝える。

 

「全てがデタラメと言うわけではないと言うことか。」

 

「その英雄ヨウムですが、どうやら魔国連邦(テンペスト)を根城にしているようです。」

 

「むう?魔国連邦(テンペスト)……例の魔物の国だな。」

 

「はい。あの街ができたことによりこのファルムス王国への商人の流入が減少財政状況が悪化しております。この国を経由することなく、安全にドワルゴンに向かうことができるからです。」

 

「むう。」

 

「これはファルムス王国とって死活問題であります。魔物の国を放置しておけばいずれは西側諸国にも知れ渡り手出し不可能となりましょう。叩くなら今ですぞ。」

 

「しかも、進化した魔物は厄介です。人型ともなると知恵がまわる。もしもその国が人類の敵対的な立場となれば、新たな魔王誕生の礎となる可能もあります。」

 

「ふむ…すぐに動かせる戦力はどれくらいだ?」

 

「約二万五千です。」

 

「少し足らんな。」

 

王達は魔物の国を攻める為に話を進める中、大臣の一人が王に話しかける。

 

「恐れながら申し上げます陛下。件の魔物の国は既にドワルゴンやブルムンドとの国交を結んでいるとのこと。それに魔物の国で被害にあったという報告もありません。非のない新興国に侵攻すれば、先の二国ばかりか評議会からも問題視されるでしょう。」

 

大臣の言葉に一瞬静まるが、フォルゲンがすぐに口を開いた。

 

「非のない……果たして本当にそうだろうか。」

 

「え?」

 

「相手は人ならざる魔物だ。ドワルゴンやブルムンドが騙されていないとどうして言い切れる?」

 

「しっ、しかし……。」

 

「もしも邪悪な存在ならば聖教会が公布を出すはず。今はまだ正邪を見極める時期かと……。」

 

「そのことについて皆皆さんにお伝えせねばならぬことがあります。」

 

「大司教レイヒム殿…。」

 

「会議の直前に聖教会本部から連絡が入りました。既に神託は下っているのです。」

 

そう言いながらレイヒムは本部から届いた書面を皆に見せる。

 

魔国討つべし それが神のご意志に他ありません。」

 

レイヒムの言葉と書面により、他の大臣達はもう話すことはできなかった。

 

「卿等の言い分は理解した。だが教会と魔物、どちらが信用に足るかなど比ぶべくもない。」

 

そう言いながら立ち上がるファルムス王。

 

「余はこのファルムスの王として余の親愛なる国民を脅かす存在を野放しにすることはできぬ。」

 

王の言葉をこの場にいる者達は聞き続ける。

 

「余自らが先頭に立ち、忠実なる将兵の力をもって神の威を示してくれようぞ。」

 

こうしてファルムス王国による魔国連邦(テンペスト)への戦が決定した。

 

会議後。大臣達が会議室を出るが、ファルムス王、ラーゼン、フォルゲン、レイヒムはその場に残っていた。

 

「さてレイヒムよ。先ほど大臣が言っていた通り、魔国の国でまだ被害の報告はないとのことだったな。」

 

「はい。」

 

「仮にの話だが、もし魔国連邦(テンペスト)とやらで我が国の民に被害がでればどうなる?」

 

「ええ!ええ!その時には西方聖教会から神殿騎士団(テンプルナイツ)が責任を持って救援に動くことでしょう。」

 

「よし、この戦は聖戦である!まずは先遣隊を発見し、騒動を起こさせよ。」

 

「王よ。ここは我らの力を見せつけるためにも、異世界人であるあの者ども向かわせようと思います。」

 

「なるほどのう。あの化け物どもならば、役に立つかもしれぬな。だが、油断は禁物だぞ。」

 

「万が一を考えて、少し暴れたら戻ってくるように命じて起きましょう。」

 

ラーゼンと王が話す中、レイヒムがある提案を王に持ち掛ける。

 

「王よ。もしよろしければ私の秘術を試させてもよろしいでしょうか?」

 

「秘術じゃと?」

 

「ちょっと失礼して。」

 

レイヒムはそう言って王に耳打ちで秘術について話した。

その内容を聞いたファルムス王は笑い声をあげた。

 

「おお!クッフフフフフフ。ヌッハハハハハ!それは面白い!よかろう許可するぞレイヒム。」

 

「ありがたき幸せ。必ずや、陛下に栄光をもたらすことをお約束いたしましょう。」

 

レイヒムの秘術により勝利を確信した王は更に邪悪な笑みを浮かべるのだった。

 

 

その後、とある一室にいる三人の異世界人である召喚者達にラーゼンが作戦を説明していた。

 

「スライムが治める国だと?俺を馬鹿にしてんのか‼︎」

 

そのうちの一人が、ラーゼンの話を聞いて怒りながら椅子を蹴り壊した。

 

「省吾、大人しくせい。話を最後まで聞くのじゃ。」

 

「スライムなんて雑魚だぜ!何で森の盟主とかになれるんだよ!」

 

「省吾さんには悪気は無いんですよ。僕たちの世界ではね、スライムは雑魚モンスターとして有名なんです。」

 

「兎も角。お前たちには、先遣隊として騎士五百名と共に魔国連邦(テンペスト)に赴いてもらいたい。よいな。」

 

そう言って部屋を出るラーゼン。このファルムス王国で召喚された異世界人である田口省吾(タグチ・ショウゴ)橘恭弥(タチバナ・キョウヤ)水谷希星(ミズタニ・キララ)はラーゼンが部屋から出て行ったのを確認すると自由に話し始めた。

 

「ちょっと旅行なんてちょー久しぶりなんですけど。」

 

「笑わせんな。マジでスライム何かのために軍を動かすのかよ。」

 

「まぁ。万単位の魔物を操るとなると、普通に考えても十分脅威だと思うよ。」

 

「どうだか…。大体この世界の人ってめちゃめちゃ弱えじゃねーか。」

 

「うっふふふ。それって省吾が強すぎるだけなんじゃ。戦いに向いたユニークスキルってほんとにデタラメだもんね。乱暴者(アバレモノ)。」

 

「いや〜僕からすれば、希星(キララ)の方が怖いけど。」

 

「だな。俺だってお前の方がやばいと思うぜ。」

 

そう言った後、省吾はラーゼンに対しての苛立ちを口にする。

 

「…それにしても、あのクソじじい好き勝手に命令しやがって。」

 

「ほんとまじにうざいよね。絶対いつか殺してやるし。」

 

「まぁまぁそう言わないでさ、少なくとも言うことを聞いていれば衣食住だけなら、この世界で最高のものを用意してくれるんだし。」

 

「はあ?そんなの当然だろが!この世界最高って言ってもよ、俺らの世界から比べればゴミみてなもんだぜ。」

 

「全くだし。お洒落な店もコスメ(化粧品)も無いし、テレビもネットもスマホすら無いんですけど。こんな娯楽の無い世界って本当うちからすれば滅んでも全然オッケーなわけ。」

 

現代人である彼らからすれば、勝手に召喚され好き勝手に利用されているのだから理解できないこともない話である。

 

故に恭弥はこれから起きる戦争を利用しようと考えていた。

 

(省吾や希星は不満みたいだけど、これは逆にチャンスだな。戦争となれば僕たち操る奴を殺して自由になるチャンスがあるかもしれない。)

 

恭弥が笑みを浮かべている頃、王は一人ある物を持っていた。それは……魔国連邦(テンペスト)で作られた美しい反物だった。

 

「彼の国の富はすべて直に我がものとなろう。」

 

 

 

欲に目が眩んだファルムス王国の動きに合わせるようにあの男……リーガルも動き出していた。

 

リーガルは隠れ家にある研究所で、ある巨大な装置の最終調整を行っていた。

それは巨大な白い柱状の機械で内部には青白いサーバーのようなものがあった。

 

「これで最終調整は完了した。」

 

「これが貴様が自分の世界に恐怖と混乱に与える為に作り出したものか。」

 

「これはこれは…なんと素晴らしい装置でしょうか。」

 

最終調整を終えたリーガルの背後から、白い帽子を冠った美青年と白衣を来た眼鏡の怪しい人物が声を掛ける。

 

「おや?貴方達が来るとは…そちらの方も順調と言うことですか。」

 

「無論だ。」

 

「私の方も遺伝子の掛け合わせが上手くいったところです。」

 

「それはなによりだ。」

 

「それでリーガル。完成したその装置を何処で試すのかは決まっているのか。」

 

「ええ。今回はこれを使ってファルムス王国に少しだけ手助けしようと思ってね。」

 

「おや?あの国には充分な軍資金を与えましたよ。」

 

「それにより軍備など兵を充分集められたはず。」

 

「ええ。ですが…あのフォルテがいますからね。町からフォルテを引き離し隔離しなければならないのでね。」

 

「それほどまでの存在か…そのフォルテとやらは。」

 

「ええ。貴方達の天敵と呼べる存在より厄介な存在だと思ってもらった方がいい。」

 

「なら折角ですから私の実験体を一体をそのフォルテとやらにぶつけても宜しいですかね。」

 

「……それは面白い。良いのかね倉田博士。」

 

「ええもちろん。」

 

リーガルと倉田明宏……悪の科学者が互いに邪悪な笑みを浮かべるのだった。

その様子を白い帽子の者が面白いものを見るような笑みを浮かべていた。

 

 

そんな暗躍が進められていると知らないフォルテ達。

 

今日はゴブタ達が昨日考えた作戦を実行しようとしていた。

 

「ほう。模擬戦とな?」

 

「今日という今日は、イヤンと言わせてやるっすよ!覚悟は良いっすか⁉︎じじ……師匠!」

 

(絶妙にキレのない挑発だな……。)

 

ヨウムがそう心で思っていた。

 

「その意気やよし! 久々に実践に即した稽古をつけてやろう!」

 

ゴブタのやる気ある姿に白老も答えるように闘気(オーラ)を放つ。

 

その様子を見守るフォルテ、カーネル、シズさん。二人には事前にゴブタ達の作戦を説明している。

 

「さてと、ゴブタ達の浅知恵が上手くいくかな。」

 

「設置型の魔法陣はゴブタの前に配置されているようですね。」

 

「白老ならまずゴブタから狙ってくると予んでのことだろうな。」

 

「ずっと鍛えてもらっていたから自分から先に攻撃されるのも分かるんだね。」

 

フォルテ達がそう話しているうちに白老達は木刀を手に持ち構える。

 

「では始めるとするかの!」

 

模擬戦開始と同時に白老はゴブタに向かって即座に移動!

木刀を振るが、ゴブタは紙一重で躱した。

 

「液状化。」

 

その瞬間、ミュウランが魔法を発動し白老の足元の地面が液状化し足が沈んでいく。

 

「ぬっ?」

 

「かかった!今の内に一斉に……。」

 

ヨウム達はチャンスと白老に攻撃を仕掛けようとしたが、液状化かした地面からはもう白老の姿が消えていた。

 

「「あれ?」」

 

「あのジジイ何処に………?」

 

ゴブタがそう言った瞬間、ゴブタの背後に白老が姿を現した!

 

「「あっ!」」

 

目の前に白老が突然現れたことにヨウムとグルーシスが声を上げる。

ゴブタもその声を聞いて振り返るが時既に遅し。

 

「ジジイじゃと?」

 

「わああ!よよよよよ……!」

 

「ふんっ!」

 

「イヤンッ!っす………!」

 

白老の容赦ない一撃がゴブタの脳天に叩き込まれゴブタは倒れた。

その様子にグルーシスとヨウムは驚く。

 

「嘘だろ……⁉︎」

 

「なんで普通に動けんだよ⁉︎」

 

「瞬動法じゃ。教えた筈じゃがのう。」

 

驚くヨウムに瞬動法で隣移動した白老がそう言う。

その白老の姿を見たヨウムは青ざめるしかなかった。

 

「ええ………⁉︎」

 

「遅いわい。」

 

白老は持ち手の部分でヨウムの溝内を打ち込んだ。

その一撃を喰らったヨウムは腹を押さえながら座り込んでしまう。

 

その隙にグルーシスが白老に攻撃を仕掛けるが受け止められる。

だが、二人は突然闇に包まれた。

 

暗幕弾(ブラインド)か。本来なら敵の視界を奪える良い一手だが…。」

 

「魔力感知のある白老殿には通じません。」

 

「でも何かまだ手があるみたい。」

 

フォルテ達がそう言った後、ミュウランが次なる魔法を放った。

 

閃光音響弾(フラッシュバン)

 

暗闇の次は凄まじい閃光が白老に放たれ、激しい音が響き渡る。

 

閃光で視力を奪いながらあの凄まじい音で耳も使えなくする魔法。

決まれば確かに敵の隙を作れる……だが。

 

「ぐおおおおお!目が!目がぁぁぁぁ!」

 

「嘘でしょ⁉︎ちょっとまさか……。」

 

閃光を凝視したのはグルーシスだった。目を押さえながらのたうち回るグルーシス。

 

「何をやっているのよこの馬鹿っ‼︎」

 

ミュウランもこれは予想外だったらしく声を上げる。

 

「ほっほっほ。どうやら閃光を凝視したらしいのう。」

 

「ええ…そのようです。」

 

ミュウランは呆れてしまったようで頭を押さえるのだった。

 

「いい手だったが……。」

 

「味方が作戦を理解してなかったようですね。」

 

「アハハハ……。」

 

俺とカーネルも呆れてしまい、シズさんは苦笑いを浮かべるのだった。

 

その後は、ゴブタ、ヨウム、グルーシスの三人は白老にボコボコにされ正座させられるのだった。

 

三人の前に立つ白老は微笑んでいるが……目が赤く光っているように見えた。

 

「…………さて。説明してもらえるかの?どういうつもりでわしを罠に嵌めようとしたのかを。」

 

「あっいや………。」

 

白老からの質問に冷や汗を垂れ流すヨウム達。

 

そんな重い空気の中、ミュウランが代わりに説明しようと声を出す。

 

「あの…………。」

 

「ああ、お嬢さんは良いんじゃよ。どうせ、この馬鹿共に唆されただけじゃろう。」

 

そう笑顔で白老はミュウランに言い、再びヨウム達を見る。

 

まぁいい経験になったろう……そうフォルテが思った時!フォルテがあることに反応した。

 

「ッ⁉︎これは…。」

 

「フォルテ様?」

 

「どうしたのフォルテ君?」

 

「………リムルの護衛につけていた俺の分身体が倒された。」

 

フォルテの言葉にカーネルとシズは目を見開く。分身とはいえフォルテが倒されたのだから。

 

分身体の強さは暴風大妖渦(カリュブディス)と戦った頃の強さ……それでもかなりの力を持っていた分身体を倒す者がいたのだ。

 

「一体何者が……。」

 

「相手は分かっている。……シズさんの元教え子でシズさんの元から去っていた者。」

 

「……ヒナタ。」

 

シズさんは静かにその名を呟くのだった。

 

 




次々と動き出す者達……そしてフォルテの分身体の元にあの麗人…ヒナタが現れる。
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