転生したらフォルテだった件   作:雷影

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遂に惨劇が始まった。ファルムスの所業により魔国連邦(テンペスト)で多くの血が流される。


54話 惨劇の魔国連邦(テンペスト)

魔国連邦(テンペスト)四方印封魔結界(プリズンフィールド)魔法不能領域(アンチマジックエリア)の二重結界に覆われ更にジャミングマンによる妨害電波によって通信を遮断された上に弱体化され援軍すら呼べない事態に追い込まれた。

 

そんな魔国連邦(テンペスト)に急ぎ向かう二人の男がいた。

 

「急ぐぞ杏寿郎!」

 

「はい!魔国連邦(テンペスト)の皆を救わねば!」

 

縁壱と杏寿郎は餓鬼討伐後に寄った町で、ファルムス王国が魔国連邦(テンペスト)に戦を仕掛けようとしている噂を聞いて急ぎ戻っているのだ。

 

走り続ける二人……そんな二人の目に見えて来たのは巨大な結界に覆われている魔国連邦(テンペスト)だった。

 

「あの結界は⁉︎」

 

「いかん!」

 

ピラミッド型の結界を見た縁壱と杏寿郎は更に速度を上げる。

 

結界内…魔素が浄化され弱体化した紫苑達が省吾達に劣勢に追い込まれていた。

 

「フッ…フッハハハハ!」

 

ゴフダを切り裂きながら狂気の笑みを浮かべながら笑う恭弥。

そんな恭弥に対して立ちあがろうとするゴブタ。

 

「まだ死なないのか?ゴキブリ並の生命力だな。さっさと死ねや!」

 

恭弥がその狂気を剣をゴブタに振るその瞬間、間一髪のところを白老が刀で防いだ。

 

「しっ…師匠。」

 

「不肖の弟子に代わって、ワシが相手をしてやろう。」

 

「なんだよ爺い?邪魔すんなよ!」

 

そう叫びながら距離を取る恭弥。

 

「爺い呼ばわりとは、先達に敬意が足りんぞ小僧。」

 

「へぇ〜ただ年取っただけの爺いに敬意なんてもんがあるかよ!」

 

そう叫びながら白老に斬りかかる。

 

打ち合う二人の姿を見守るゴブタは、白老の動きがいつもと違うことに気付いた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「だっ大丈夫っす。それより…師匠の動きが、いつもより遅いっす。」

 

「普段の力が出せていません。この結界は…魔物の力を弱めてしまう。」

 

朱菜は四方印封魔結界(プリズンフィールド)による魔素の浄化によるものだと気付いていた。

 

「師匠…。」

 

弱体化による影響は強い魔物ほど影響が大きく、動きが鈍っている白老をゴブタは心配の眼差しで見ることしか出来なかった。

 

ある程度打ち合い距離を取る白老。

 

「何のこれしき!」

 

「天眼を使うまでもないよ。爺いにはあの世がお似合いだ。」

 

本来の力を発揮できれば、白老が恭弥に負けることはない。……だがリムルの命である人を傷付けない命と弱体化に隙ができ、白老は恭弥の剣に斬られ倒れた。

 

「あっ!」

 

「しっ師匠!」

 

白夜が来たれたことに朱菜とゴブタは声を上げる。

 

血を流し倒れる白老必死に向かうとするゴブタだが、恭弥との戦いでの傷と弱体化により力が出ず途中で倒れてしまった。

 

「しっ…師匠……。」

 

涙しながら倒れたゴブタに対し、人の心すら無い恭弥が容赦なく頭を踏みつける。そしてその狂気に満ちた目が朱菜を捉える。

 

「省吾には後で謝っておくさ。お前の玩具を壊してごめんってね。」

 

そう言いながら朱菜へと剣を向ける恭弥。

 

その時、朱菜を守る為にゴブゾウが身を挺して前に出る。

 

「はぁ?あっはははは!はっはははは‼︎」

 

そんなゴブゾウを嘲笑いながら恭弥がその狂気を剣を振るった。

 

 

そんな戦闘の中、希星(キララ)は自分の力が無力かされたショックから立ち直れず今だに座り込んでいた。

 

……そんな希星の前に着物の帯が伸び迫る。

 

帯の存在に気付いた希星。

 

「…何……帯?」

 

そう呟いた瞬間、帯が希星を包むように巻き付いた!……そして希星の姿が消えたのだった。

 

 

その一方、弱体化の影響を受けながらも省吾と戦い続ける紫苑。

 

「へぇ!弱ってるくせに結構楽しませてくれるんじゃねーか。」

 

「ほざけ!」

 

必死に戦う紫苑とまるでゲームを楽しんでいるかのように笑いながら力を振る省吾。

 

その戦いの余波で建物などが破壊される。

 

そんな戦闘から子供達を路地裏で避難させていたのは、スケロウ、ヤシチ、カクシンの三人だった。

 

「心配いらん。何があっても、某が皆を守る。」

 

「ほら泣くな。これで何も見えないぜ。もう怖くないだろ。」

 

子供達を守る為に見張るカクシン、安心させる為に優しく抱きしめるヤシチ。

そしてスケロウが皆を落ち着かせる為に声を掛け続ける。

 

「紫苑様に任せれば大丈夫だよ。紫苑様は強いんだから。」

 

その紫苑は、省吾と戦闘を繰り広げていた。リムルを悲しませない為に追い返す前提の戦いゆえに弱体化の影響下でも本気を出せない紫苑。

 

そんな紫苑に対して省吾が容赦なく攻撃を続ける。

 

「トドメだ!」

 

省吾がトドメとばかりに、最後の一撃を放とうとしたその瞬間、紫苑が見事なカウンターを決めて省吾の頬に傷を負わせた。

 

紫苑さんカウンターに距離を取る省吾。その時、省吾の背後からファルムス兵を引き連れたフォルゲンが現れた。

 

「…時間だ」

 

その呟いた省吾は次を瞬間とんでもないことをファルムス達に向かって叫んだ。

 

「おーい、魔物に襲われている!助けてくれ〜!」

 

「なっ⁉︎」

 

そう叫んだ省吾はすぐさまその場から逃げるように去っていった。そして、残された紫苑はファルムス兵が向かってくる前に子供が一人取り残されていることに気付いた。

 

省吾の声を聞いたフォルゲンは無表情のまま声を上げる。

 

「魔物が国を興したと聞いて調査に来てみればこの騒ぎは何事ぞ!」

 

ファルムス兵が恐怖で動けない子供に迫る。

 

「逃げろ!」

 

紫苑は子供を助ける為に駆け出す。

 

「人類の法に従い、我らは無垢なる民である貴君達に加勢います!」

 

明らかな茶番の言葉を発したフォルゲンはそのまま子供と紫苑に向かって剣を抜く。

 

それに合わせるように兵達も一斉に武器を掲げ声を張り上げる。

 

おおおお!

 

迫る兵に座り込んでしまった子供を抱えて背を向ける紫苑

 

そんな紫苑にフォルゲンの正義の無いも無い剣が振り下ろされる。

 

「うおおおお!」

 

紫苑がフォルゲンの剣に斬られた事が合図になったかのように、ファルムス兵が次々と住民達を襲う。

 

うわぁ! きゃあ! 誰か! 助けて!

 

ファルムス兵により住民達が襲われる。

 

あるものは切り裂かれ、あるものは刺し貫かれる。子供を庇う母や子供も関係なく次々とファルムス兵が情け容赦なく刃を振るう。その時のファルムス兵の人間の顔は邪悪そのもの……罪なき民を切り殺しながら嘲笑う兵達。どちらが魔物でどちらが人間なのか分からなくなるような光景となっていた。

 

襲撃前にある程度住民の避難を開始していたが五百という兵の数から守りきれずに、避難が遅れている場所から次々と犠牲者が出てしまった。更に、突如出現した無数のジャミングマンによる攻撃により避難ルートがいくつも遮断されてしまっていた。

 

そして、居住地区の寺子屋にもファルムス兵が迫っていた。

 

「魔物如きが学びをするなど烏滸がましい!」

 

「魔物の餓鬼など殺すが一番だ!」

 

兵達が邪悪な笑みを浮かべながら剣を振り上げる。その時、子供達を守る為にリリナが兵達の前に立ち塞がる。

 

「子供達には手を出させません!」

 

「なんだ?…魔物のくせに中々の美女じゃねぇか。」

 

「こんな上等な女は滅多にいないぜ。」

 

「だが残念だ。……こんな女も今は殺さないといけねぇからな!」

 

兵がリリナ目掛けて剣を振り下ろした……その瞬間!兵達は背後から凄まじい気配を感じた。

 

その者は手から牙を模したバチを創り出し握ると、背中の雷神の太鼓を模した連鼓を叩いた。

 

ドン!

 

鼓の音が響いた次の瞬間、兵の足元の地面から何かが勢いよく飛び出した。

土煙が辺りを包むなか、煙の中から現れたのは五つの首も木龍……そう石竜子(トカゲ)だ。

 

ぎゃあ! なんだ⁉︎ 竜だと⁉︎

 

飛び出した石竜子によりファルムス兵は手足を食い千切られた者や吹き飛ばされた者が出た。

 

離れた場所に立っていた兵は石竜子の登場に驚き戸惑うが、石竜子の下から声が聞こえてくることに気付いた。

 

「弱き者をいたぶる鬼畜。不快…不愉快…極まれり。」

 

煙が晴れると同時に左右の瞳に上弦の肆と刻まれた目を持つ雷神のような姿の子供が鋭い眼光を放ちながらファルムス兵を睨んでいた。

 

「極悪人どもめが。」

 

その凄まじい眼力に兵達は思わず後退る。

 

そう、子供達とリリナを助けたのは憎珀天だった。

 

「憎珀天さん!」

 

リリナは憎珀天の登場に声を上げる。その声に応えるように憎珀天はリリナと子供達に目を向ける。

 

「……此処は儂に任せろ。お前達はこの中でしばらく待っておれ。」

 

ドン!

 

憎珀天が再び鼓を叩くと、リリナと子供達を守る為に樹木がリリナ達を覆い隠す。……これから起こる事を子供達に見せない為にも。

 

リリナと子供達が隠されるのを見たファルムス兵が思わず声を上げる。

 

「なっテメェ!」

 

「何しやがる!」

 

ファルムス兵の声を聞いた憎珀天は再びファルムス兵を鋭い眼光で睨む。

 

憎珀天に睨まれた兵達はまるで金縛りにあったかのように動けなくなった。……眼力。その目から放たれる凄まじい威圧に兵達は押し潰されそうな感覚に支配された。息が詰まり…心臓が痛む。

 

「何ぞ?貴様、儂のすることに何か不満でもあるのか?」

 

憎珀天は睨みながらファルムス兵達に問う。

 

「のう…悪人…どもめら。」

 

憎珀天の問いにファルムス兵達は答えない……いや答えられない。

 

憎珀天の放つ声が…言葉と共にくる威圧に押し潰されそうになっているからだ。

 

兵の殆どがその威圧の重さに耐え切れず立つことが出来なくなりその場に跪いてしまっている。

 

だが、耐えている者いた。その者が憎珀天に向かって声を上げる。

 

「まっ…魔物が!我らが悪人だと?我らのどこが悪人だと言うのだ!」

 

兵の叫びに憎珀天は静かに言い放つ。

 

「弱き者をいたぶるからよ。先ほど貴様らは罪なき子供達と庇う女子を斬ろうとした。なんという極悪非道。これはもう鬼畜の所業だ。」

 

……この言葉とやり取りは前世で憎珀天が同じように言っていた。その時は憎珀天こそが悪だった…だが、今回は明らかにファルムスの者達が悪そのもの

 

憎珀天の言葉を聞いたファルムス兵は馬鹿にするような笑みを浮かべながら声を上げる。

 

「はっ!罪なき子供だと?魔物の存在そのものが悪なのだ!」

 

「そうだ!忌まわしき魔物を駆除して何が悪い!」

 

「寧ろ魔物など一匹でも駆除することこそが正義だろが!」

 

……憎珀天の威圧で動けないにも関わらず、このような聞くに堪えない人間とは思えない返答だった。

 

ファルムス兵の醜い答えを聞いた憎珀天はゆっくりと口を開いた。

 

「……よく分かった。お前達は儂ら鬼以下の存在だという事がな。」

 

そう言って憎珀天が鼓を叩く。

 

ドン!

 

鼓の音が響くと同時に石竜子(トカゲ)達が一斉にファルムス兵に襲い掛かる。

 

「「「ぎゃあぁああああ!」」」

 

そして…五頭の石竜子達によって寺子屋を襲ったファルムス兵達は喰い殺されていった。

 

 

その一方、別の場所南東地区では四人の鬼がファルムス兵を次々と葬っていた。

 

「カッハハハハ!喜ばしいのう。またこうして別れられるとは。」

 

喜びを司る空喜(うろぎ)が空からファルムス兵達をその蹴爪で鎧ごと切り裂いていく。

 

「ウハハハハ!楽しいのう。こうして自由に戦えるのは。」

 

楽を司る可楽(からく)がヤツデの葉の形をした巨大羽団扇を振るい、ファルムス兵を吹き飛ばしまた、風圧でファルムス兵を地面に叩きつけながら押し潰していく。

 

「腹立たしい…実に腹立たしい!リムル様とフォルテ様の町でこのような所業を行うとは!その罪その身で償うがいい‼︎」

 

怒りを司る積怒(せきど)が錫杖から電撃を広範囲にファルムス兵を焼き焦がしていく。

 

「……このようなことになり、哀しいのう…。」

 

哀しみを司る哀絶(あいぜつ)は哀しげな表情を浮かべながら、槍で容赦なくファルムス兵を刺し殺していく。

 

憎珀天がユニークスキル喜怒哀楽で彼ら四人を呼び出していた。

憎珀天達も四方印封魔結界(プリズンフィールド)の影響で弱体化しているが、フォルテからの命令で容赦をする必要がない為弱体化していてもファルムス兵如きに負ける筈がなかった。

 

それは他の鬼達にも同じであった。

 

北西地区では警備隊がファルムス兵と交戦していた。

 

「くっ!」

 

「どうした?魔物の力とはこの程度か!」

 

追い返す為に戦う警備隊と違い、殺しにきているファルムス兵の攻撃が警備隊員を斬り裂く。

 

「ぐあ!」

 

幸い傷が浅かったようで、傷口を押さえながら剣を構える警備隊員。

 

そんな警備隊員に邪悪な笑みを浮かべながらゆっくりと迫るファルムス兵。

 

「へっへっへっへ。」

 

迫るファルムス兵達からは邪悪な闇の妖気が溢れ出るように放たれていた。

 

ファルムスが勢いよく走り出しながら警備隊員に再び剣を振るおうとした瞬間!…振るい上げた手が何かによって切断された。

 

「ぎゃあああ⁉︎手が!手がぁぁぁぁ⁉︎」

 

切断された手首を掴んで喚き叫ぶファルムス兵。そんな中、ファルムス兵の手を切断した物体がクルクルと回転しながらカーブを描くように戻る……その物体は鎌だった。

 

回転する鎌はそのまま持ち主の手に戻る。

 

そこにいたのは両手に鎌を持つ妓夫太郎だった。

 

「てめぇら…この町での所業の数々……覚悟はできてるんだろうなぁ?」

 

妓夫太郎が自分の血から生成した血鎌を構える。

 

弱体化しているはずの魔物とは思えない殺気にファルムス兵は危機感を感じていた。

 

「くっ!おい!全員アレを使え!」

 

リーダーらしき者がそう声を上げると、兵達は一斉にある物を取り出した。

それは紫の基盤に血だまりのような水晶(クォーツ)が埋め込まれているチップ……ダークチップだった。

 

ダークチップを見た妓夫太郎は少し驚いた。

 

「ダークチップ…フォルテ様が言っていたチップか…。」

 

ダークチップに関して妓夫太郎はフォルテから教えられていた……その危険性も。

 

ファルムス兵達が一斉にダークチップを握り締めると、チップから闇の妖気(ダークオーラ)が溢れ出しファルムス兵の体に吸い込まれるように吸収される。

 

「うおおおお!」

 

「力が漲る!」

 

闇の妖気(ダークオーラ)を吸収した兵達の纏う闇が更に増大した。

 

「…お前ら、そのチップ何処で手に入れた?」

 

「はっ!魔物に教えると思うか!」

 

「この力があれば弱体化した魔物など恐れる必要はない!」

 

「貴様もこれで終わりだ!」

 

ダークチップで一時的に力を得たファルムス兵達は剣を構えながら言う。

 

妓夫太郎も、今のファルムス兵が素直に教えることはないと判断した。その時、妓夫太郎の背後からある人物が声を上げる。

 

「お兄ちゃん!」

 

その人物は右額と左頬に花の紋様がある美女。妓夫太郎の妹である梅だ。

 

梅は妓夫太郎の隣りに立つと現状を報告する。

 

「この辺りの住民は一応避難が出来たわ。」

 

「そうか。良くやったな梅。」

 

「うん。後ね、町で騒ぎを起こしていたこの女も捕まえたの。」

 

そう言いながら、梅は自分の背から帯を生やして妓夫太郎に見せる。その帯の中には希星が眠っていた。

 

「そいつは出来した。ならこの連中は全員始末しても構わないな。」

 

妓夫太郎は再びファルムス兵を睨むように見る。

 

「おいおいなんだあの良い女よぉ!」

 

「兄妹のようだが、兄の目の前で妹を弄んでやるのも面白いな!」

 

梅の美貌を気に入ったファルムス兵がそんな外道な言葉を言った瞬間。

妓夫太郎の殺気が更に増大した。

 

「……てめぇら。俺の妹に何をするって?」

 

血鎌を握る妓夫太郎の力が増す。

 

「フォルテ様の言う通りだなぁ…お前達には情けをかける必要もねぇ!」

 

そう叫びながら妓夫太郎が素早い身の熟しでファルムス兵達の懐に飛び込み次々と鎌で斬り裂いていく。

 

ぎゃあ! ぐゎあ! がはぁ!

 

妓夫太郎の鎌に斬り裂かれ血に塗れながらファルムス兵達は次々と倒されていく。

その様子を見ていた梅も、先ほどのファルムス兵の言葉に嫌悪感を抱きファルムス兵を人間ではないと判断した。

 

「この世界でいろんな人や魔物を見てきたけど……お前達の様な心まで不細工な奴は人間ですらないわね!」

 

そう言って梅は背中から更に帯を生成してそのままファルムス兵達目掛けて帯を伸ばす。

 

梅の体から生成した帯は硬質と柔軟性を併せ持った腰帯剣と蛇腹剣を合わせたような鋭い帯だ。ゆえに触れた者全てを切り裂く。

 

「なっなんだこの帯は⁉︎」

 

「帯が俺の腕を!」

 

「駄目だ!帯が撓って斬れねぇ!」

 

梅の帯が蛇のような動きで迫り、ファルムス兵達を容赦なく切断していく。

 

妓夫太郎と梅の兄妹により北西地区の兵はこうして一掃されていくのだった。

 

 

 

 

南西地区。この地区のファルムス兵の殆どが一人の男に倒されていた。

 

「ひっヒィ!」

 

「ばっ化け物!」

 

「拳で剣を破壊するだと⁉︎」

 

「こんな奴がいるなんて聞いてないぞ⁉︎」

 

その男の拳によって、ファルムス兵の殆どは原型もない遺体へと変えられた。

ある者は頭部破壊され、ある者は内臓を潰された。

 

こんなことができる者……そう猗窩座だ。

 

 

ファルムス兵による惨劇が始まった時、猗窩座は恋雪と共に道場に住民達を避難させていた。

道場内にある程度住民達を避難させた後、門弟達に道場と住民達を守る事を任せて、猗窩座はファルムス兵の相手に向かおうとした。

 

そんな猗窩座…狛治の背中に恋雪はそっとしがみついた。

 

「狛治さん…。」

 

「恋雪…。」

 

恋雪にも、フォルテからこのような事態が起きるかもしれないと話は聞かされていた。……でも、また猗窩座が人を殺めてしまうことが辛く悲しい気持ちでいっぱいとなり、恋雪は猗窩座を掴んでしまった。……またあの時の猗窩座に戻ってしまうのではと思って。

 

恋雪の思いは猗窩座に伝わっていた。……猗窩座の背を掴む恋雪の手が震えていたのだから。

 

「恋雪心配するな。……俺はもうあの頃の俺には戻らない。この町を…フォルテ様とリムル様の夢と理想が詰まったこの町と皆を守る為に俺は戦う。」

 

猗窩座の強い意志のこもった声を聞いて、恋雪はゆっくりと掴んでいた手を離した。そして祈るように手を合わせる。

 

「狛治さん…気を付けて。」

 

「ああ。」

 

恋雪に見送られながら皆を助けに向かう猗窩座。…そんな彼の目に映った光景はまさに地獄だった。

 

笑いながら住民達を襲い斬り殺しているファルムス兵と、そんなファルムス兵から逃げる者…子供を庇う母親……家族の為に身を呈す者達の姿だった。

 

ファルムス兵の戦士とは思えない悪行の数々と人間とは思えない下衆の笑みと笑い声が猗窩座の怒りに火を付けたのだった。

 

 

 

そして現在。

怒りに燃える猗窩座の拳によって、この地区のファルムス兵の大半が原型のないひしゃげた遺体にされたのだ。

凄まじい殺気を放ちながらファルムス兵を睨む猗窩座。その拳は血塗れとなっている。

 

「なっなんだコイツは⁉︎」

 

「なんでこの結界内でこれだけ動けるんだよ⁉︎」

 

弱体化しているはずの魔物が異常なまでに強いことに戸惑い、その魔物の拳で次々と肉塊にされる仲間達の姿にこの場の兵達は恐怖し、猗窩座に睨まれ後づ去るのだった。

 

「……貴様らのような屑を見たのは久しぶりだ。貴様らのような連中に町の皆が何故命を奪われなければならない…。」

 

返り血で血に染まった顔でファルムス兵を睨む猗窩座。

 

「……フォルテ様が言うことは正しかった。貴様らに生きる資格は無い!」

 

怒りの声を上げながら猗窩座はファルムス兵に向かって行く。

 

猗窩座達によって魔国連邦(テンペスト)を襲うファルムス兵達が駆逐されて行くが、猗窩座達だけでは手が足りず他の場所では被害が拡大していく。

 

 

そんな状況の中、トリルとシンシヤは町中に出現したジャミングマンを倒し回っていた。

 

「たぁ!」

 

「ほいです!」

 

トリルがバスターで撃ち抜き、シンシヤが水刃で切り裂いたりしながら煉獄の握手(ジェイルシェイク)で捕まえながら捕食していった。

 

「くっなんて数だ!」

 

電脳世界(サイバーワールド)から皆を呼ぶにはこの変な虫を倒さないといけないのに!」

 

シンシヤは自身の大賢者からジャミングマンの妨害電波のせいで電脳魔人(サイバーノイド)の皆がこちらに転移できないことを教えてもらっていた。

トリルもフォルテからジャミングマンについて教えてもらっていた。

 

だからこそ二人はファルムス兵より先に、町中のジャミングマン討伐を優先していた。

 

だがやはり数が多く、二人だけではジャミングマン達を倒しきれずにいた。

 

「大技なんかだと威力が強すぎて町の皆まで巻き込んでしまう。」

 

「でもこの虫達をたおさないと町の皆が!」

 

倒して倒してもキリがないジャミングマンの群れにどうすればと二人が考えていたその時、別方からバスターが放たれ更にある者がソードでジャミングマン達が次々と倒していく。

 

「あっ!」

 

D(ダーク)ロックマン!D(ダーク)ブルース!」

 

「待たせたな。」

 

「良く持ち堪えたね。」

 

「二人共ミュウランの監視は⁉︎」

 

「今は緊急事態だからな。ミュウランはヨウムとグルーシスに任せた。」

 

「事情も紅丸達に説明した。」

 

魔法不能領域(マジックアンチエリア)が張られた後、リーガルの液体兵を倒してミュウランをその場にいたヨウムとグルーシスに護衛と見張りを任せ、この事態を紅丸達に報告した二人は、ジャミングマン討伐に動いている二人を感知して合流したのだ。

 

「さぁ!とっとのこの害虫共を片付けるぞ!」

 

「トリル!数には数だ!あのスキルを使え!」

 

「っ⁉︎分かった!超分裂形態(マスタースタイル)‼︎」

 

トリルが光だし六人のトリルが分裂するように出現!

 

火炎之剛力(ヒートガッツ)樹木之盾(ウッドシールド)雷之友情(エレキブラザー)水之拡張(アクアカスタム)大地(グランド)忍者(シャドー)の六形態のトリル達だ。

 

オリジナルのトリルを合わせた七人が同時に構える。

 

「皆行くよ!」

 

「「「「「「うん!」」」」」」

 

トリルの声と同時に分裂体達は一斉に動き出した。

 

「さぁ僕達もやるよ!」

 

「ああ!」

 

「はいです!」

 

D(ダーク)ロックマン達もジャミングマン達に向かって行く。

 

 

 

 

北東地区で寺子屋を憎珀天が守っていたが、他の場所の被害が大きくなっていくのだった。

 

建物が壊され燃える中でファルムス兵による虐殺行為の数々……その中で逃げ場を失い追い込まれる子供が…。

 

「あっ…ああ…。」

 

「へっへっへっへ!」

 

涙目になり恐怖で体が震える子供を見ながら剣を振り上げるファルムス兵。

 

「恨むなら…魔物に生まれた自分を恨むんだな!」

 

振り下ろされる剣にもう駄目だと諦め目を瞑る子供

 

 

 

その時、炎の渦が割って入り子供が消えた⁉︎

剣は空を斬り壁に突き刺さった。

 

「なっ⁉︎」

 

兵が炎の渦が通過した方に顔を向けると、子供を抱えた焔色の髪の青年がいた。

 

「もう大丈夫だ。」

 

子供を助けたのは杏寿郎だった。

 

「さぁ早く逃げるんだ。」

 

「うっうん!ありがとう!」

 

子供はお礼を言ってすぐさま安全な場所へと走っていった。

 

「テメェ!何しやがる⁉︎」

 

「人間なのに魔物の味方をするのか!」

 

子供助けた杏寿郎に対して罵声を浴びせるファルムス兵。

 

そんなファルムス兵に対して杏寿郎は振り返りながら冷たい眼差しで睨む。

 

「君達は何故このような事をする。この町の者達が君達に危害を加えた訳でもない。何故に罪なき者達の命を奪う。」

 

真剣な表情でファルムス兵に問う杏寿郎だが、ファルムス兵達は馬鹿にするように笑い声を上げる。

 

「はははっ何言ってやがる!」

 

「どうしてだってよ!そんなもん魔物だからに決まってんだろ?」

 

「忌まわしい魔物が怪我しようが死のうが何か問題があるか?」

 

笑いながら下衆の笑みを浮かべてそう言い放つファルムス兵を見た杏寿郎。

 

「……良く分かった。俺は君達が嫌いだ。」

 

そう言って刀を抜き構える。

 

これまで…前世を含んで煉獄杏寿郎は鬼から人間を守る為に戦ってきた。

人間は儚くも美しい生き方をする。…そんな者達を守る為に……尊い命を守る為に戦ってきた。

 

だが、今この世界で人間の醜部分を改めて理解した。杏寿郎達が倒してきた鬼達も元は人間だった。……だがファルムス兵は鬼でもない人間としてその醜生き物としての姿を露わにしているのだ。

 

「……俺は今この町で生きる素晴らしい魔物達を守る為に……お前達を斬る!

 

その声を上げた杏寿郎は炎を纏ってファルムス兵達に斬りかかる。

 

 

杏寿郎がファルムス兵と闘い始めた頃、別の場所で縁壱もファルムス兵による惨殺を目の当たりにした。

 

辺りに横たわる町の住人達……その所業を行なったファルムス兵達の邪悪な笑みと笑い声を聞いた縁壱は怒り、その怒りが身体から凄まじい闘気となって放たれる。

 

縁壱の闘気に気付いたファルムス兵達が一斉に縁壱の方へと顔を向けた。

そんなファルムス兵達に縁壱は問いかける。

 

「失われた命は回帰しない。二度と戻らない。何故奪う?何故命を踏みつけにする?何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っているんだ。どうして分からない?どうして忘れる?」

 

縁壱の闘気に呑まれ答えることができないファルムス兵達。

 

「お前達も痛みや苦しみにもがいて涙を流していただろう。何故それを他者に与えるのだ?」

 

それでも問い続ける縁壱に対して兵達はようやく声を上げた。

 

「はっ…魔物の命がどうなろと構わないだろうが!」

 

「魔物は魔物!我ら人間に討伐される悪なのだ!」

 

「我らが神の前では魔物は全て悪なのだ!」

 

ファルムス兵の反省すら無い悪意の言葉を聞いた縁壱も覚悟を決めた。

 

「そうか…。」

 

縁壱が刀を抜く……その時、縁壱の隣に黒死牟が並び立つように歩みながら現れた。

 

「兄上…。」

 

「……縁壱。……いいのだな。」

 

「はい。私に迷いはありません。」

 

「……そうか。……なら共に……行くぞ。」

 

黒死牟も刀を抜き構える。

 

縁壱と黒死牟……いや巌勝が共に構える姿は前世での鬼殺隊の頃以来の姿だろう。

 

ゴオオオオオオオ!

 

ホオオオオオオオ!

 

二人の呼吸が重なって辺りに響いていく……そして二人の姿が消えた。

 

 

 

 

次に二人が姿を現したのはファルムス兵達の中央

 

そして次の瞬間、赫い炎と三日月型の斬撃が重なり軌道上のファルムス兵達を一瞬のうちに斬り裂いた。

 

ファルムス兵達は何が起きたのか理解できていない。

 

そこからは、縁壱と黒死牟の二人による連携による高速斬撃によりファルムス兵達は一瞬で倒されいく。

 

太陽の縁壱と月の黒死牟……戦国の世を生きた最強の剣豪であるこの二人に、ファルムス兵達が勝てる筈がなかった。

 

 

 

魔国連邦(テンペスト)で起きた惨劇を黒死牟達血鬼の活躍により被害を抑えていく中、中心部で暴れ回ったファルゲン達が生き残った住民達に去り際の言葉を声を上げて言い放つ。

 

「この街は魔物に汚染されておる!我らは人類の法を守る者として、魔物の国など断じて認めぬ!故に西方聖教会とも協議し、この国への対応を考えるものなり!時は今日より一週間後!指揮官は英傑の誉れ高いエドマリス王その人である!降伏して恭順の意を示すならばよし!さもなくば……神の名の下に、貴様達を根絶やしにしてくれようぞ!」

 

そう叫びながら血のついた剣を下へと振るうフォルゲン。

そのまま去っていこうとしたその時

 

 

ドォオン!

 

何かが住民とフォルゲンの間に落下!辺りは土煙に覆われる。

 

「何事だ⁉︎」

 

突然の事に戸惑うフォルゲン。そんな彼の目に映ったのは、土煙の中から緑の光の柱が立ち昇り、その光の柱からフォルゲン達を睨む獅子の如き立髪を持つ巨大な魔狼の幻影だった。

 

その巨大な魔狼の幻影に睨まれたフォルゲン達は恐怖を感じていた。

 

グオアアアアア!

 

魔狼の幻影が咆哮を轟かせると、光の柱の中へと吸い込まれる。

フォルゲンが光の柱の中にいる人影を見つけたその直後、人影が姿を変えていき光の柱が弾ける。

 

光の柱の中から現れたのはボロボロのスカーフを首に巻き、先ほどまでいた魔狼のような強靭な手脚を併せ持ち鋭い尾を生やしたフォルテの姿……ゲームや漫画にもなかったフォルテの新たな姿……フォルテグレイガビースト

 

その赤き鋭い眼光がフォルゲンを捉えていた。

 

 

 

 




惨劇の中で皆を守る憎珀天達…そしてこの世界の人間であるファルムスの所業に怒る杏寿郎と縁壱。

その惨劇の中に降り立った獣化したフォルテ…本来ならないグレイガの姿で、その赤い目に宿るものは…。
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