転生したらフォルテだった件   作:雷影

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明けましておめでとう御座います。
今年も〝転生したらフォルテだった件〟をよろしくお願いします。
紫苑達の為、希望を現実にする為にファルムス王国への反撃が始まる。


60話 希望への反撃

皆の準備が完了し、議事堂の前に住民達が集まった。

 

そんな住民達の前に出るリムルとフォルテ。

 

「この3日間、何もせず心配をかけた。」

 

「詳しい事はまた改めて話すが、今後について簡潔に話す。」

 

「俺達は……。」

 

「「魔王になる。」」

 

リムルとフォルテの言葉に住民達は目を見開く。

 

「その力で〝奪われた命〟を取り戻す‼︎」

 

「俺達は魔素を消し去る敵の結界の解除に先駆けて新たな結界を張った。」

 

「死んだ者達を蘇らせるのに必要な魂の拡散を防ぐ為だ。」

 

「俺達が魔王になる為にファルムス軍を討ちに行っている間は、朱菜達に新たな結界を張ってもらう。」

 

「だが、その結界は朱菜達だけで維持するのは難しい。」

 

「皆の力が…祈りが必要だ。」

 

「だから皆………。」

 

「「協力してくれ‼︎」」

 

「「「「「「おおおおおお!」」」」」」

 

俺達の声に応え皆が声を上げてくれる。

……皆の思いに応える為にも、必ず紫苑達を蘇生させてみせる。

 

 

その後、皆速やかに作業に取り掛かり着々と反撃の準備が整っていく。

 

そんな皆の様子を見て周っていたフォルテ。……すると、リグル達の元に駆け寄ろうとするステラ、フォス、ネムの姿が目に映った。

 

そして、三人の前にゴブエモンが出て問う。

 

「こんな時になんの用だ?」

 

「あたし達も結界の外に連れてってもらえないかしら⁉︎ミリム様の事で都に戻りたいのよ‼︎」

 

…ステラもミリムのユーラザニアへの事を知って気が気じゃいられないのは仕方ない。

 

「私からもお願いするです!」

 

必死に声を上げるステラの後ろでフォスも頭を下げて一緒に頼み込む。

 

「こんな時にお願いできる事じゃないですが、ステラはただミリム様の事が気掛かりで。」

 

「フォス…。」

 

「ネムもお願いしたいのぉ。何が起きているのかフルブロジアでも聞いてくるの。」

 

「お前らな。この状況でそんな我儘……「いいぞ。」っ⁉︎」

 

ゴブエモンが注意しようとした時、フォルテが三人の願いを聞き入れた。

 

「フォルテ様!」

 

「自分の主を思うのは当然だからな。フォスだって本当なら今すぐにでもユーラザニアに戻りたいだろう。それを押し留めてステラだけでも都に帰そうとしている。だからこそだ。」

 

「ありがとうございますフォルテ様!」

 

「感謝するわ!」

 

「ありがとうなのぉ。」

 

こうして、ステラとネムは帰還の準備を始めた。

 

 

 

そして、皆の準備が完了した。

 

「出撃準備が整いました!」

 

皆が結界の前に集結した。

 

「よし。」

 

「会議で言った通り、東方面の魔法装置は紅丸、カーネル、黒死牟。西の魔法装置は白老、リグル、ゴブタ、ゲルド、無銘、雷蔵、雷牙、紫蘭。南方面はランサー、カビルとその配下達。北方面は蒼影、シャドーマンらが破壊。残りの者達は、外敵の侵入に備え町の外周の警備だ。」

 

「そして俺達は、ファルムスの連合軍を潰す!」

 

「今回は遠慮はいらない叩き潰せ!」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

皆が返事に応えリムルとフォルテが結界に穴を開ける。

解析が完了しているので二人にとってはこの結界など意味がない。

穴を開けるなど造作もないのだ。

 

「「出撃だ‼︎」」

 

こうして皆結界の外へと飛び出し出撃する。

 

 

皆が出撃した後、リムルとフォルテがファルムスの連合軍へと向かって飛び立つ。……その際、フォルテが6体の分身を作り出し皆の元へと放った。

………またリーガルが何か仕掛けてくるかもしれないから用心してのこと。

 

町の残った皆が祈りの準備を始め、朱菜、ミュウラン、アイリスがすぐにでも新たな結界を張れるように待機。

そんな三人を守る為に、警護にあたるヨウムとエレン達。

その中には希星(キララ)の姿もある。

せめてもの償いの為にと彼女も警護に参加している。

 

……彼女の狂言師(マドワスモノ)は味方だと頼もしい限りだ。

皆には彼女の狂言師を無効化する特別な個別結界をフォルテが施した。

間違って皆を巻き込まない為の保険である。

更にこの個別結界なら人間のヨウムやエレン達も朱菜達の新たな結界内でも活動することができる。…皆の祈りと合わさり朱菜達の結界内の魔素濃度が高まるからだ。

 

町の皆の安全を確認した。その一方、上空の分身が二つの反応を確認し透明化(インビブル)して接近。

目視できる距離まで近くと、見えてきたのは有翼族(ハーピィ)とは少し違う鳥系の魔人の女と、鳥人間のような魔人の男が町を監視するように飛んでいた。

 

「……あの鳥頭の方はどこかで見たような………あっ!」

 

フォルテは思い出した。リムルがイングラシアに行っている間に町で騒ぎを起こそうとして蒼影に半殺しにされた魔人と同じだった。毛色が微妙に違うが間違いない。

 

「確か…ケーニッヒ二世だったか。」

 

怪しいからチップ化して捕獲し、そのまま保管したままだったから忘れていた。

 

「……監視しているってことはクレイマンかリーガルの配下ってことか。」

 

このまま始末するのもいいが、せっかくの情報源だ。

 

フォルテは透明化したまま接近し2人の首筋に手刀を叩き込んだ。

 

「かっ⁉︎」

 

「ぐえ⁉︎」

 

2人の意識を刈り取りチップ化して封印。そのまま本体に送信した。

 

「全部終わったらゆっくりと情報を引き出そう。」

 

こうして謎の魔人2人は知らないうちにフォルテに捕まるのだった。

 

 

その頃、封印の洞窟前で出陣の準備をしていたガビル達の元にスケロウ達とランサーが到着した。

 

「ガビル様〜!」

 

「ん?」

 

「お〜い!」

 

「おおっ!お前達!」

 

「リムル様とフォルテ様が結界の外に出してくれたんだ!」

 

「そうかそうか!よくぞ無事で!」

 

「ガビル様こそ……。」

 

「無事で良かった……。」

 

「おっ……お前達!」

 

すると、抱き合って泣き始めるガビル達。

 

「うおおおおっ!我ら生まれた時は違えど、死ぬ時は一緒だぞ〜!」

 

「「「ガビル様〜!」」」

 

「お前達〜!」

 

抱き合って泣き続けるガビル達。……そんな四人の背後に蒼華とランサーが立つ。

 

「もう良い。」

 

「それは全てが終わってからでいい。」

 

「おっ?おう。」

 

二人に言われ前に立つガビル。

 

「では参る。」

 

「御意。」

 

そう言って蒼影、シャドーマン達は消える。

 

「おお。」

 

そして、ガビル達も出陣する。

 

「では皆の者!準備は良いか!」

 

「「「「「おーうっ!」」」」」

 

ランサーの声にガビルの部下達が応え、それに続くようにガビルが声を上げる。

 

「我ら龍人族(ドラゴニュート)の力を見せつけてやろうぞ!」

 

うおおおおおっ!

 

「いざ、出陣である!フン!と〜う!」

 

「フン!」

 

ガビルとランサーは同時に飛び立ち、交差しながら空へと舞い上がる。

 

「ガビル様とランサー様かっくい〜!」

 

「当然至極!」

 

「よしっ!俺らも続くぞ!」

 

そう言ってスケロウ達と龍人部隊も出陣した。

 

 

そして戦いが始まった。

 

東方面で魔法装置を守る神殿騎士団(テンプルナイツ)

 

「ん?おいあれ!」

 

「ん?」

 

そのうちの一人が紅丸、カーネル、黒死牟の三人の接近に気付いた。

 

「総員!戦闘準備!」

 

騎士の声に、周囲の騎士達が紅丸達目掛け走ってくる。

 

「止まれ!それ以上近づくと、容赦はせんぞ!」

 

騎士の一人がそう声を上げながら紅丸達に向かって剣を構える。

 

「容赦しないのはこの俺だ。悪いな。俺の八つ当たりに付き合ってもらって。」

 

そう言う紅丸の目が怒りで赤く光っていた。

 

「紅丸は悪くない。これは戦争。向こうも死ぬ覚悟はできているだろう。」

 

カーネルはそう言ってサーベルを装備する。

 

「……戦の始まりだ。」

 

黒死牟はその六つの眼で騎士達を見据える。

 

そして紅丸が刀を手に取ると鞘から引き抜く。引き抜く際刀身が黒炎に包まれる。

 

そして三人が駆け出す。

 

紅丸に斬られた者は次々と黒炎に焼かれ骨すら残らず消し炭と化していく。

 

カーネルは豪快にサーベルを振るい騎士達を次々と両断

黒死牟が騎士達を通過し通り過ぎれば、騎士達の首や胴が切断

二人が通る度に血飛沫が舞い上がる。

 

そしてあっという間に騎士達の殆どが全滅し、最後に残った最初の騎士が恐怖で後退る。

 

「きっ聞いてないぞ!こんな化け物………!」

 

そう言った瞬間には紅丸に両断され燃えて消えた。

 

紅丸が目を開けると辺りが黒炎が燃え広がり、カーネルと黒死牟に斬られた騎士の死体と血溜まりが広がっていた。

 

そして、紅丸が目的の魔法装置を切断して破壊!

 

まさに一瞬と呼べる戦闘であった。

 

「任務完了。……さて、情けなくも困ってる奴等はいねーだろうな?」

 

紅丸がそう言っている頃、南方面を担当するガビルとランサー達の戦闘も始まろうとしていた。

 

「グハハハハハッ!龍人族(ドラゴニュート)の戦士達よ!我輩に続け‼︎」

 

「我らが力を示すのだ!」

 

ガビルとランサーが叫びながら敵陣に向かって行き、部下達もそれに続く。

 

そして上空から迫るガビル達を発見した兵が声を上げる。

 

「あっ!敵襲!た……体勢を整えよ!対空防御陣形!」

 

騎士達が体勢を整え始めたところに、龍人達が一斉に息吹(ブレス)を放つ。

 

「ど……龍人族(ドラゴニュート)だと⁉︎こんな大量に!」

 

騎士達は上位種であると知り動揺する。

 

そして、ガビルは水渦槍(ボルテクススピア)を掲げて声を上げる。

 

「我輩の名はガビル!見知りおく必要は無い。冥土の土産にするが良い!」

 

「我輩はランサー!貴様達の罪。その身をもって償うが良い!」

 

ガビルとランサーは上空に向かって急上昇。そのまま電脳態となりガビルが飛竜、ランサーが水晶竜形態となって急降下

 

飛竜降下(ドラゴダイブ)!」

 

水晶降下(クリスタルダイブ)!」

 

急降下の速度を加えた突進により騎士達が吹き飛ばされ、刃のような翼に切り裂かれる。

そして、そのまま魔法装置に突進し粉砕した

 

蒼影達の担当する北の方は、蒼華達が敵の注意を惹きつけその隙に、蒼影とシャドーマンが粘鋼糸で騎士達を絡め取りそのまま締め上げ引き裂いた。

 

「申し訳ありません蒼影様、シャドーマン様。」

 

二人に跪き報告する蒼華。その背後には既に倒した騎士達が倒れていた。

 

「この者達は、想定していた程の強敵ではありませんでした。」

 

「その様だな。」

 

「ああ。」

 

二人はそう答えながら、魔法装置を細切れにして破壊した。

 

「やはり異世界人が居るのは、リムル様とフォルテ様の読み通り…。」

 

「西だな。」

 

 

 

そして、西方面の敵陣営にその異世界人である恭弥と省吾が居た。

 

「チッ!おい!まだあの町から誰も逃げ出していないのか⁉︎」

 

「本日も、敵影は確認されておりません!」

 

「くそっ!」

 

苛立ちながら騎士に問い、その報告に毒付く省吾。

そのまま報告した騎士に八つ当たりをするように肩をぶつける。

 

「邪魔だどけ。」

 

「うわっ。」

 

「おい、もう三日だぞ。ブルムンドの商人や冒険者はあの町と心中するつもりなのか?なぁ恭弥よう。」

 

「そう慌てる事もないさ。他の陣からも連絡はないし、地理的にも帰国にはこの西の街道を通るだろうからね。」

 

「ハンッ!それなら良いんだがな。この拳が暴れたくてうずうずしてるぜ。俺のスキル乱暴者(アバレモノ)は、人を殺すと力が増すんだ。うまい事パワーアップすりゃあのジジイの呪言にだって抗えんだろ。」

 

「ハハッ。まあその気持ちは分かるよ。」

 

恭弥の脳裏に白老を斬った瞬間が思い浮かぶ。

 

「自分の腕を信じている奴のその自信ごとぶった斬る感触…堪らかった。」

 

そう言って舌舐めずりする恭弥…その顔に浮かぶのは狂気の笑みだった。

 

「そういや希星(キララ)の奴は捕まっちまった様だな。」

 

「うん。自分のスキルを無効にされたショックで呆然としていたからね。」

 

「今頃、魔物共に酷い目に遭ってんじゃないか?」

 

「まぁ仕方ないんじゃないかな。あんな所で呆然としてた希星の自業自得だよ。」

 

「そうだな。」

 

希星の事を心配する事もなく、情けないとばかりに言う二人。

そんな二人の様子を、先程肩をぶつけられた騎士が不安げに見ていた。

 

「隊長。彼らのことですが…。」

 

「ん?ああ。異世界人等か。」

 

「やけに横柄な態度が目立ちますけど、もっと礼儀を弁えた者はいなかったのでしょうか?困りますよ。集団行動なのに。」

 

「まぁ、強力なスキルを持っているのは確かだからな。知ってるか?ショウゴ殿が召喚された時、その場で周囲にいた召喚士30人を惨殺したそうだ。」

 

「ええ⁉︎」

 

隊長の話に騎士は驚く。

 

「理由もなく突然暴れだしたんですか?兵士として扱うには危険すぎるでしょう。」

 

「理由がない事はあるまい。彼からしたら元の生活を唐突に奪われたわけだからな。だが、召喚儀式魔法に絶対支配の呪言を組み込む理由を再認識することになった事件だ。彼らは強力な兵士たり得るが、決して心から従っている訳ではない。」

 

そう。無理矢理召喚された者が素直に従う筈がない。

 

「異世界人は世界を渡る際、望みに沿ったスキルを得ると言われている。我の強い者の方が強力なスキルを得やすいってわけだ。」

 

「はぁ…。異世界人の強者は性格に難アリってことですか……そうでない者もいるでしょうけど…。」

 

「ふむ。改めてそう考えると合点がいくな。聖騎士団団長殿(ヒナタ・サカグチどの)の強さもそういうことなのかもしれん。」

 

「ちょっと隊長。それ本人の耳に入ったらどうするんです⁉︎失礼ですよ。」

 

「なに、彼女はこの遠征には参加していない多少の…「あっ!前方より敵襲!」ッ!」

 

騎士の一人から敵襲の知らせに隊長はすぐ行動を開始

 

「隊列を整えろ‼︎魔法部隊!身体強化の詠唱を急げ!」

 

「敵影は⁉︎」

 

「街道に敵影確認!その数………えっ?きゅ………九⁉︎」

 

見張りをしていた騎士の単眼鏡に入って来たのは…白老、ゲルド、リグル、ゴブタ、猪八戒、無銘、雷蔵、雷牙、紫蘭だった。

 

騎士が九と確認したのは、リグルとゴブタが相棒の星狼族(スターウルフ)に跨っているように、雷牙に雷蔵が跨っていたからだ。

フォルテの提案により雷牙は雷蔵の相棒となった。

そして、フォルテの名付けにより鬼人となった紫蘭の武器は紫苑が朝星棒(モーニングスター)から大太刀の剛力丸に変えたように、三日月形の死神の大鎌のような刃を両側に備えた大斧を背負っていた。

禍々しい黒紫の大斧の名は魂剥斧(ソウルアックス)と名付けた。

 

紫蘭達の姿を確認された直後、省吾と恭弥が崖から飛び降り街道に降り立った。

 

「たったこれだけか?チィ!………ん?なんだあの女生きていたのか?なんかイメチェンしてやがるし面白れぇ!」

 

「おっ。あのジジイも生きてたのか。しかも同じ顔がもう一人…双子だったか?フフッ。」

 

省吾と恭弥がそう呟いているうちに、騎士達も二人の元に集まった。

 

 

丁度その頃、蒼華が蒼影にゴブタ達の助力に向かう提案をしていた。

 

「助力に向かいますか?余力は十分です。」

 

「………いや。必要ない。あの様子ならな。」

 

蒼影は白老達のことを信じていた。

 

 

そして、西の白老達の戦闘が始まろうとしていた。

 

相棒の星狼族(スターウルフ)に乗ったリグルとゴブタそして…雷牙に乗った雷蔵の三人が前に出る。

 

「それじゃあ……派手に行くっすよ。」

 

「一発叩き込んでやるっすよ!」

 

「おう。遅れを取るな!」

 

リグルとゴブタが抜刀すると星狼族と雷牙が駆け出し、ゴブタと雷蔵を乗せた星狼族と雷牙が同時にジャンプ。そこからゴブタと雷蔵もジャンプし、ゴブタは鞘に仕込んだ弾を発射し雷蔵は黒稲妻を放った。

 

ゴブタの鞘は魔国連邦(テンペスト)の技術とリムルのスキルによって作られた特別製の鞘型電磁砲(ケースキャノン)だ。

 

二人の放った弾丸と雷が騎士達の中央に着弾し爆発!

 

「「よし!」」

 

ゴブタと雷蔵は星狼族と雷牙の背に戻り着地、そのまま駆け出しリグルと共に騎士達への攻撃を開始

 

「ぐっ神の敵め!怪しげな術を!」

 

ゴブタ達の攻撃の余波で倒れていた騎士の一人が立ち上がりながらそう毒付くが、土煙の中からリグルが強襲

 

「うおおおおおっ!」

 

更に雷蔵が黒稲妻を放って騎士達を攻撃

そのまま応戦する中で、三人はアイコンタクトを取りその場からジャンプ。

 

その直後に。

 

「「烈震脚!」」

 

猪八戒とゲルドによる同一スキルによる振動攻撃が騎士達を襲う。

凄まじい振動が街道全体を揺らし騎士達は身動きが取れず、バランスを崩して倒れる者もいた。

 

振動が治ったタイミングで雷蔵を乗せた雷牙が着地。すかさず雷牙による追撃が放たれる。

 

「更に震えな!弦振砲(ハードロックカノン)‼︎」

 

雷牙が鋼糸の弦を震わせ、騎士達のみに指向性のある爆音を響かせる。

騎士達は今度は自分の身体自体が揺れまったく動けない。

その隙にリグル、ゴブタ、雷蔵が騎士達を攻撃

 

そして、紫蘭が魂剥斧(ソウルアックス)を力強く横振りし騎士達を襲う。

 

「はああ!」

 

紫蘭の大斧が右薙に騎士達を斬り裂き上下両断

更に大斧から斬撃が繰り出され、斬撃の範囲に居た騎士達をも両断した。

 

紫蘭の一撃に騎士達は恐怖したが、それだけではなかった。両断された騎士達の遺体から何かが抜け出ていき、魂剥斧に吸収されていく。

 

……それは騎士達の魂だった。

 

魂剥斧はフォルテが紫蘭の為にと自身の魔素を練り込んで作られた大斧である。それ故か、魂喰い(ソウルイーター)と言う能力を得ていた。

魂剥斧に斬られた者の魂は喰われ、魂剥斧の斬れ味と破壊力が上がっていく妖刀ならぬ妖斧と化していた。

 

魂を喰らい更に禍々しい妖気を纏う魂剥斧を見た騎士達は恐怖心に支配されていく。

そんな騎士達の隙を逃さずに、無銘が騎士達を間合いに入り斬り裂く。ゴブタ達も続くように、次々と騎士達を斬り倒していく。

 

そんな状況の中、省吾は楽しそうに笑い声を上げる。

 

「フッヒャハハハッ!良いねぇ!やるじゃねぇか!面白い俺が相手になってやるぜ!」

 

「おおっ!省吾様!お願いします!」

 

動き出した省吾。そして騎士達を倒していたゴブタが省吾が近づいて来ていることに気付いた。

 

「あっ!来たっすね………ゴブゾウ達の仇……!でも、相手はオイラ達じゃないっすよ。」

 

そうゴブタが言った直後、ゴブタの前にゲルドと紫蘭が省吾に立ちはだかる。

 

「安心するがいいぞ。俺と紫蘭殿があの者に鉄槌を下してやる。」

 

「もう一人の私…紫苑の無念を晴らす時だ。」

 

「頼むっすよゲルドさん、紫蘭さん。ゴブゾウはああ見えて気のいい奴だったんすよ。」

 

自分ではあの省吾に勝てないことを理解しているゴブタは、二人に自分の思いを託し騎士達との戦いに集中する。

そんなゴブタの思いの為にもと二人は構える。

 

「うお〜りゃあっ!」

 

そんなゲルドと紫蘭に向かって省吾は拳を振るった。

 

ゲルド、紫蘭と省吾の戦いが始まった頃、恭弥と白老が対峙していた。

 

「せっかく死ななかったんだから、尻に帆をかけて逃げればよかったのに。」

 

「ホッホッホ。こう見えても負けず嫌いなんじゃよ。それにな………若造が天狗になっておるのも不愉快じゃしのう。」

 

最初は笑いながら話していた白老だが、途中から言葉に怒気を含ませる。

 

「へぇ。それって僕の事じゃ無いだろう?」

 

「そう聞こえなんだか?それはすまなかった。お主が性格だけでなく、頭も悪かったとはのう。」

 

「ハハッ。一度斬られただけじゃ理解出来ないか。それとも、もうボケてるのか?」

 

そう言う恭弥の周囲だけがまるで違う空間となり、恭弥が剣を抜刀しつつ白老に接近し首を刎ねようと剣を振るった……だが、その一撃は白老の剣が受け止めた。

 

自分の一撃を止められたことが信じられないのか、恭弥は目を見開いて驚愕した表情を浮かべていた。

 

「なっ⁉︎」

 

「短気じゃな。じゃがのう、おあいこじゃ。ワシもそろそろ怒りを我慢するのが限界じゃからのう………!」

 

白老は表情を変えず冷静ではいるが、その体からは赤黒い妖気(オーラ)が溢れ出している。それはまるで、白老の怒りを表すようだ。

 

白老のその妖気(オーラ)に怯んだのか、恭弥はすぐに白老から距離を取る。

 

「笑わせるぜ。この前は手も足も出なかったくせに!イキがるなよジジイが‼︎」

 

恭弥は虚勢を張るように白老を挑発する。

 

「剣ではなくその力にじゃな。空間属性らしいのう。」

 

「へぇ。分かるんだ。」

 

「タネが分かれば、対処は可能じゃぞ。」

 

「面白いじゃん。それじゃあ、正々堂々と僕と剣で勝負しようじゃないの。」

 

「………よかろう。」

 

「キヒッ!」

 

正々堂々と言いながら構える恭弥だが、その顔は邪悪笑みを浮かべている。

恭弥の持つ剣に魔法文字が浮かび出し刀身が薄く光り出した。

 

「じゃあ………いくよ?」

 

そう言って恭弥が剣を振りかぶり、勢いよく振りおろすと、なんと刀身が射出し無数に分身したのだ。

 

(実態を持たぬ斬撃……スキルよる擬似刀剣(ダミーソード)か。)

 

迫る無数の剣を見ていた白老は冷静に攻撃を見極めていた。

 

「ひゃっはははぁ‼︎馬鹿がまた騙されやがったぜ!」

 

狂気の笑みを浮かべる恭弥。

 

だが、白老は慌てる事なく刀身が当たる直前に剣を振るい、全ての刀身を弾き落とした。

そして、鞘に剣を納めると同時に弾き落とした刀身が消えた。

 

「あ?…………嘘だろ?」

 

勝利を確信していた恭弥はその光景に唖然となっていた。

 

「ふむ。そんなつまらぬ騙し討ちをするとは………。どうやら買い被っておった様じゃな。」

 

「ジ……ジジイ!今何をした⁉︎」

 

「そうか。見えなんだが、所詮は二流以下といったところじゃのう。」

 

「何だって………⁉︎」

 

「二流以下と言ったのじゃよ。」

 

白老に二流以下と言われた恭弥は怒った。

この世界で力を得て強い奴を倒してきた恭弥にとって、白老の言葉は自身のプライドを傷つけるものだった。

 

「舐めるなよ………クソジジイが‼︎」

 

自身のプライドを傷つけられ、余裕がなくなった恭弥が叫ぶ。

 

「では、お主に剣の神髄を見せてやろう。」

 

白老から再び赤黒い妖気(オーラ)を放たれ、額に第三の目が開いた。

 

「刮目し受けるが良い!」

 

「黙れ!雑魚のくせに偉そうにしやがって!」

 

そう叫びながら新たな刀身を生み出し白老に向かっていく恭弥

 

恭弥の攻撃は悉く躱されるが、恭弥はそれでも自分の勝利を確信していた。

何故なら、恭弥には白老の動きが遅くなっているように見えているからだ。

 

(はっ!どうやっても無駄さ。俺のエクストラスキル〝天眼〟は、周囲の動きを300倍の速さで認識出来る!耄碌したジジイの動きなど、止まって見えるぜ!斬ることに特化した切断者(キリサクモノ)と思考加速、この三つのスキルを全て解放すれば僕は、あのヒナタ・サカグチすら超える‼︎)

 

それが恭弥が勝利を確信している理由。

 

「斬り裂かれて死ね!」

 

そう叫びながら飛び上がり剣を振るおうとする恭弥。

 

「いや。まだ見えてはおらぬな。」

 

「あ?」

 

「そろそろお主の天眼にも、ワシの動きが追えるじゃろうて。」

 

そう言いながら抜刀術の構えに入る白老。

 

「は?何を言って………⁉︎」

 

白老の言っている事が理解出来ていない恭弥。

その次の瞬間、白老の抜刀術…居合斬りが恭弥に襲い掛かる。

 

朧流水斬(おぼろりゅうすいざん)!」

 

水を纏ったような斬撃が恭弥の首に迫る

 

(体が動かない………いや動けない⁉︎え…………えっ?)

 

恭弥は自分に何が起きているのか理解出来ずに、そのまま首を切断された。

 

(えっ?………思考加速が切れない…………。)

 

宙を舞う恭弥の頭。

 

「…知っておるぞお主。住人を殺める時、わざと急所を外し相手が苦しむのを楽しんでおったな。」

 

白老は恭弥に倒された後、恭弥の行動を見ていた。

子供を切り裂き苦しむ様を見て狂気の笑みを浮かべていたその姿を。

 

そんな恭弥の頭を白老は髪を掴み止め、体はそのまま倒れた。

 

「終わりじゃよ。引き伸ばされた時間の中、己の為した業を味わいながら逝くがよい。」

 

白老がそう言い終える頃には、恭弥は既に死んでいた。

だが白老が話していた間、思考加速で恭弥は首を切断された苦痛を永遠と思えるような時間の中で味わい続けながら逝ったのだった。

 

恭弥の敗因は、自身の力であるスキルによる慢心。

 

スキルを得て、自分の力を過信し己を鍛えることもなく、スキルに頼ってばかりの戦い。

更に、襲撃の時に白老に勝ったことを自分の実力だと驕ったことだ。

四方印封魔結界(プリズンフィールド)による弱体化と白老がリムルの命令を守り殺さないようにしていたからこそ勝てたにすぎない。

 

そんな恭弥があのヒナタを超えるなど……ありえない。

 

恭弥を倒した白老。そんな彼の元に上空からフォルテが降りて来た。

 

「実に見事だった白老。」

 

「フォルテ様!…分身体ですじゃな。」

 

「ああ。またリーガルが仕掛けて来るかもしれないからな。」

 

分身フォルテはそう言った後、うつ伏せに倒れている恭弥の遺体に目を向ける。

 

「…この男、恭弥と言ったな。戦い方を見ていたが、スキル頼りで動きは単調だったな。」

 

素人とまでは言わないが、剣術が未熟だった。

 

「フォルテ様のおっしゃる通りですじゃ。己の力を過信し腕を磨かなかった二流以下でしたのう。」

 

「もしコイツが剣術を鍛え己を磨いていたなら、白老も苦戦したかもな。」

 

天眼と思考加速で白老の動きが見えていても、研ぎ澄まされた感覚に体がまったく反応出来ていなかった。どんなに優れたスキルがあろうとも、使う者が未熟者では宝の持ち腐れだ。

 

「…だが、この男のスキルが強力なのには変わらない。」

 

フォルテはそう言って恭弥の遺体…体の方に手を向ける。

 

「せっかくだから試してみるか暴食者(グラトニー)!」

 

フォルテがシンシヤから複製した暴食者(グラトニー)で恭弥の遺体を取り込んだ。

 

《解析完了。エクストラスキル天眼に、ユニークスキル切断者(キリサクモノ)を獲得した。》

 

「初めて使ったが、やはり便利だな暴食者(グラトニー)は。」

 

リムルとシンシヤの十八番(おはこ)のユニークスキル。

その強力さを改めて理解した。

だがこれでこの男のユニークスキルを得ることが出来た。

 

「ほう。その者のスキルを得ましたか。流石はフォルテ様ですじゃ。」

 

「俺じゃなくリムルの力のおかげだがな。この戦いが終わったら、白老達にもこのユニークスキルを与えるつもりだ。」

 

「他者のスキルを得るだけでなく、その得たスキルを更に他者に複製し与えるなどフォルテ様しか出来ますまいて。」

 

まぁ俺と言うか、電脳之神(デューオ)のおかげなんだがな。

 

「この辺り一帯の捜索(サーチ)は完了した。リーガルの手下がいないことは確認出来たし、紫蘭達の方もそろそろ決着がつく頃だろう。白老、後は頼んだぞ。」

 

「無論ですじゃ。」

 

そう言ってフォルテの分身は消えた。

 

 

その紫蘭達の方では、リグル、ゴブタ、雷蔵達により騎士達の殆どがたおされていた。残った騎士達も…。

 

大地之槍(ガイアランス)!」

 

猪八戒が両腕を地面に叩きつけ無数の岩の槍が騎士達を刺し貫いた。

 

「これであらかた片付いたようじゃな。」

 

「はい。後は…。」

 

無銘と猪八戒はゲルドと紫蘭の方を見る。

 

「チィ!」

 

目に映ったのは、紫蘭にボコボコにされている省吾の姿だった。

 

「このクソアマが!」

 

省吾が再び紫蘭に殴り掛かるが、紫蘭は省吾の拳を全て躱してしまう。

 

「動きに無駄が多すぎる。まるで子供の喧嘩だ。」

 

そう言って省吾の溝内に拳を叩き込んだ。

 

「がっは!」

 

省吾は殴り飛ばされるが、なんとか踏ん張った。

 

「この野朗……なんで俺の攻撃が当たらないんだよ!」

 

「お前の攻撃は私の目に止まって見える。」

 

紫蘭の服の上から無数に開いている眼が、省吾の動きを見極めているので、省吾の攻撃が当たる訳がないのだ。

 

「力はあっても、使う者がお前のような若造では宝の持ち腐れだな。」

 

紫蘭の言葉に省吾は怒る

 

「ふざけんじゃねぇ!」

 

怒りのまま紫蘭に殴り掛かる省吾だが、ゲルドが紫蘭の前に出て大楯で省吾の拳を防いだ。

省吾のそのまま蹴りを放つが大楯を破壊することは出来なかった。

 

「ちぃ!」

 

ゲルドはそのまま省吾を弾き肉切り包丁で斬り掛かるが、省吾は跳び引いて躱した。

 

「邪魔すんじゃねぇよ!大体なんだお前よ!男なら素手で戦え!」

 

「意味が分からぬ。これは戦争なのだぞ?持てる力を出し切る事こそ相手への礼儀であろうよ。」

 

「偉そうに説教たれてんじゃねぇ‼︎この豚が‼︎自分だけ完全武装で恥ずかしくねーのかよ⁉︎」

 

「ますます意味が分からぬ。」

 

ゲルドの言う通りだとこの場にいる者皆が思った。戦い方だけでなく、頭の中まで子供のような奴だと。

 

「……へっ!なんてな。悪りぃ悪りぃ、邪魔な盾を捨ててくれないかと思って言っただけだし。それじゃあ体も温まってきたことだし、そろそろ本気を出すとするかな!へぇああああ‼︎」

 

省吾がそう言って自身のユニークスキル乱暴者(アバレモノ)の特殊効果の一つである金剛身体を発動

省吾の体から金色の光が放たれ紫電が迸る。

 

(身体強化か。)

 

「本気の姿で相手をしてやるから、少しは俺を楽しませてくれよ。」

 

「……来い!」

 

「行くぜぇ‼︎」

 

省吾は先程とは比べものにならない速度でゲルドの前に接近、そのままゲルドの持つ大楯に再び拳を叩き込む。

 

そして、先程は破壊できなかった大楯を今度は一撃で粉砕した。

 

「む……(暴風大妖渦(カリュブディス)の鱗で作られた盾を一撃で破壊するとは。)」

 

先程とは比べものにならない身体強化の力にゲルドは内心驚いていた。

 

大楯を破壊した省吾は手を緩めずにゲルドに猛攻を仕掛ける。

 

「ははははッ!どうしたどうした⁉︎手も足も出ねぇじゃねーか‼︎」

 

強化された俊敏さを活かして、ゲルドを翻弄する省吾

 

だが、ゲルドはただやられているわけではなかった。

 

「ははははは…ッ⁉︎なんだこれ⁉︎」

 

省吾の手足にゲルドの混沌喰い(カオスイーター)が喰らい付いたのだ。

そして、瞬く間に省吾の手足は腐っていく。

 

ぎゃあぁああああ!手ぇ……手が!足がぁあッ⁉︎」

 

「貴様の肉体強度はなかなかのものだ。だが腐食には弱いようだな。」

 

「ふ……ふしょくだと……?」

 

そう。ゲルドは省吾の身体強化の弱点を見極めていたのだ。

腐食により手足が腐り、その激痛にもがき苦しむ省吾。

 

「もはや戦える状態じゃないな……さっさと止めをさすか。」

 

「ええ。」

 

そう言って大斧と肉切り包丁を構える紫蘭とゲルド。

それに気付いた省吾は怯えながら命乞いを始める。

 

「ひぃ!ま………待て!ちょっと待ってくれ!」

 

そんな省吾の命乞いなど無視して二人が大斧と肉切り包丁を振り上げる

 

「まだ終わっておらぬのか?」

 

「白老殿。」

 

白老が声を掛けて来たので二人は白老の方に振り向く。

 

「今から止めを刺すところだ。」

 

紫蘭がそう答える中、白老がこの場に現れた事に省吾が声を上げる。

 

「クソッ!恭弥は一体何してやがる!」

 

「お主の友達ならここじゃ。」

 

そう言って白老は省吾に向かって恭弥の生首を投げる。

 

「なっ………⁉︎あっ、ああ…………!」

 

自分の隣に転がる恭弥の死に顔を見た省吾は、恐怖に支配され悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

うわあああああああ!

 

丘に向かって必死に逃げる省吾。

 

(ヤバイーーーヤバイヤバイヤバイヤバイ‼︎ちくしょう、なんで俺がこんな目に……!)

 

それは自分の慢心が原因であると理解できない省吾。

 

(何か、何か力を手に入れねぇと。力を手に入れるには……!)

 

今日は自分達のいたテントの中へと急ぎ入った。

中に入ると、自分と恭弥の荷物を漁っていく。……そして3枚のダークチップを見つけ出した。

 

「あのジジイがもしもの時はって渡していたが……まさか本当に使う事になるとはな!」

 

省吾はダークチップ3枚を握り締める。その瞬間、ダークチップから闇の妖気(ダークオーラ)が噴き出し省吾に吸収されていく。

 

「うおおおお!なんだこれは⁉︎力が漲ってくる!すげぇじゃねぇか…。」

 

闇の妖気による強化に、省吾はすっかりその力の虜となった。

 

省吾が闇の妖気に酔いしれていると…。

 

「省吾様!奴らがこちらに向かっています!」

 

生き残っていた騎士の一人がテントに入って来た。省吾の逃げる姿を見て思わず追いかけてきたようだ。

 

「……そうかなら丁度いいぜ。」

 

そう言って振り返る省吾さん顔が狂気の表情を浮かべていた。

 

「奴らとやるにはまだちょっと力がたんねぇ……お前死んでくれ。」

 

「えっ?」

 

次の瞬間!省吾は騎士の首を締め上げる。

 

「がっ⁉︎…あっ………〝ゴキ〟!」

 

騎士の首がへし折れた。

 

《確認しました。ユニークスキル生存者(イキルモノ)を獲得。》

 

首がへし折れるその音は、テントの外にいた白老達にも聞こえていた。

そして、テントから出て来る省吾。

 

「鬼畜の所業よのう。そこまで堕ちたか。」

 

「情けをかける必要はないな。」

 

「どうやら買いかぶっていたようだ。貴様は武人ではない。」

 

「うるせぇ。俺は生きてえんだ。聞こえたか?世界の言葉が教えてくれたぜ。騎士の魂を代償として、生存者(イキルモノ)のスキルを得たってな。」

 

その言う省吾の腐っていた手足が瞬く間に癒えた。

 

「世界の言葉とは………此奴、新たな力を得ることが狙いじゃったか。」

 

「仲間殺しは、リムル様とフォルテ様が定めた最大の罪!」

 

「力を得る為だけに仲間を殺すなど、異世界人であろうともお前は人間ですらない。」

 

白老、ゲルド、紫蘭が省吾の所業にそう言い放つ。

 

「黙れよ、クソ虫共!勝てばいいんだろ、勝てば!はあっ!

 

省吾は声を上げると、凄まじい闘気(オーラ)を放出

闇の妖気(ダークオーラ)が混ざった闘気(オーラ)に周囲のテントが全て吹き飛ばされる。

 

「ハハハッ!ハハハハハハッ!見ろ!攻撃に特化した乱暴者(アバレモノ)と防御に特化した生存者(イキルモノ)の力!超速再生と各種属性無効で、今の俺は無敵だ!」

 

省吾は手に入れた力に酔いしれながら、ゲルド達に自慢するかのように笑いながら言い続ける。

その様子をゲルド達は冷静に、鋭い眼差しで見ていた。

 

「ハハハハハッ!骨を砕かれても、頭を斬り落とされても、すぐに修復される!どうだクソ魔物!これが!これこそが!この俺の力だ!フハハハハハハッ!」

 

「手を貸そうか?」

 

「…必要ない。」

 

白老の言葉にゲルドがそう答えて省吾の元に向かうとした時、ゲルドの肩を猪八戒が掴み止めた。

 

「父王?」

 

「息子よ。…この者の相手は俺がする。」

 

そう言う猪八戒の目には怒りが宿っていた。

かつて猪八戒は、同胞達を救う為に他の魔物達を喰い荒らしその罪を背負った。全ては同胞達…未来ある子供達を救う為だった。

 

だが、目の前の省吾はただ自分が生きる為だけに仲間を平然と殺した。

それを当然とばかりに得た力に喜び笑うその姿からは、反省も後悔も無い。

その行為すら罪とも思っていないことが、猪八戒の怒りに火をつけたのだ。

 

皆、すぐに猪八戒の気持ちを理解し頷いた。

 

そして、猪八戒がゆっくりと省吾に向かって歩き出した。

 

「はあ?四人まとめ相手をしてやっても良いんだぜ?」

 

「貴様は格闘技に自信がある様だな。ならば、俺も拳で貴様を叩き潰そう。」

 

「カッコつけるなよ!負けた時の言い訳が欲しいだけだろうが!」

 

省吾は拳に闘気(オーラ)を纏い猪八戒に殴り掛かる。

だが、猪八戒がそれより早く拳を振るい省吾を殴り飛ばした。

 

「ぐああああ!」

 

その剛腕から繰り出される一撃によって省吾は、まるで水切りの石のように地面に跳ね飛ばされる。

更に、猪八戒がその巨大からは信じられないような素早い身のこなしで省吾に向かって駆け出し跳躍

 

宙で省吾に接近し再び拳を叩き込む。

 

「ぐわああああああ!」

 

省吾を殴りながら地面に落下、着地地点は陥没した。

立ち込む土煙が晴れていくと、猪八戒が容赦なく省吾を殴り続けていた。

 

「がっ!……ごっ!……がはッ!」

 

殴られた箇所は骨が砕け内臓も潰され血飛沫が上がり猪八戒に返り血が飛びつく。

 

いかに省吾が闇の妖気(ダークオーラ)で強化されていても、豚頭魔王(オーク・ディザスター)猪人王(オークキング)の二つの力を合わせ持った電脳猪人帝(サイバーオークカイザー)である猪八戒の攻撃を耐えられる訳がない。

 

本来ならばこれで死んでいるだろうが、生存者(イキルモノ)によってすぐに再生する。

皮肉にも、省吾が得た力は省吾に生き地獄を味合わせる事になったのだ。

 

「その再生能力でどこまで耐えられるか試してやろう。」

 

そう言って猪八戒は更に混沌喰い(カオスイーター)を発動する。

六つの頭が省吾の手足と胴体に噛みつく。

 

「ああああああッ!やっ…………やめろッ‼︎」

 

再び腐食による苦痛に踠く省吾。その際、胴体に喰らい付いていた頭が省吾の腹の肉を噛みちぎった。

 

混沌喰い(カオスイーター)によって取り込まれた省吾の体の一部が猪八戒の暴食者(グラトニー)によって解析される。

猪八戒が暴食者を所持しているのは、以前に戦った自分のもう一つの可能性である豚頭渇望王(オーク・デザァト)を捕食した事で、再び得た飢餓者(ウエルモノ)と捕食者を統合したから。

 

電脳(サイバー)でもある猪八戒は瞬時に解析を行える。

そして、解析が完了し省吾のユニークスキルである乱暴者(アバレモノ)生存者(イキルモノ)を獲得したのだ。

 

「……なるほど。確かに強力なスキルのようだな。ならば…ハァアアアア‼︎」

 

猪八戒が雄叫びを上げると、猪八戒の体から金色の光が放たれ紫電が迸る……そう乱暴者(アバレモノ)の特殊効果である金剛身体だ。

 

「なっ⁉︎なんでお前が俺のユニークスキルの力を使えるんだよ⁉︎」

 

自分だけのスキルであるはずの乱暴者(アバレモノ)を猪八戒が発動している事に驚愕する省吾。

 

光が収まると、猪八戒は再び省吾を見る。

 

「貴様のスキルの力。貴様自身で味わうがいい!」

 

拳を掲げる猪八戒の姿に省吾か恐怖する。

猪八戒との力の差は歴然。それなのに乱暴者(アバレモノ)による身体強化された拳を受けたらどうなるか……

 

「やっ…やめろおおお〜‼︎」

 

猪八戒は容赦なく拳を振り下ろす。

 

ドゴォォォオン!

 

強化された猪八戒の一撃により更に地面が陥没

 

ドゴォ!ドゴォ!ドゴォ!バゴォ!ドゴォ!

 

そこから再び容赦なく省吾を殴り続ける猪八戒。

一撃一撃が先程とは比べものにならないほどの威力を発揮し、陥没している場所が殴るたびに亀裂が生じ、省吾の身体は原型が潰れていく。

 

「やベ………やべて、やべてください!……ぐっ!がぁ!」

 

潰された瞬間に再生していくが、永遠と続く苦痛に耐えきれずに省吾は弱音を吐くが猪八戒は止まらない。

 

しばらく殴り続けた後、最後の一撃とばかりに拳を振り上げ、そのまま省吾に叩き込む。

 

「フン!」

 

ドッゴオオオオ!

 

「ぎゃあああああ‼︎」

 

その一撃に省吾が声を上げ、陥没した地面が更に陥没しながら地割れが発生した。

 

だが、この一撃を受けても省吾の傷はすぐに回復してしまった。

そんな省吾の頭を鷲掴みにして持ち上げる猪八戒。

 

「うっ……冗談だったんです………本気じゃなくて、ちょっと調子に………。助けて…助けでください……。」

 

「……呆れた男だ。」

 

あれだけ調子に乗って、仲間すら殺し反省すらしていなかったのに、ここに来て醜い命乞いをする省吾の姿に皆が呆れていた。

 

「ここまで醜く腐った男とは思わなかった。」

 

「猪八戒よ。」

 

紫蘭も省吾のことなどもはやどうでもよくなり、白老が猪八戒に声を掛ける。

 

「今、終わらせる。戦意を失った者を甚振る趣味はない。」

 

猪八戒の言葉に助かったと思ったのか、省吾が安堵の表情で顔を上げる。

だが省吾の前にあるのは、ゲルドの物より巨大な肉切り包丁を手に持つ猪八戒の姿だった。

 

「一撃で頭を割ろう。安心しろ痛みはない。」

 

包丁を振り上げる猪八戒。

その姿を見た省吾は恐怖で歯をガチガチと鳴らした。

 

「うっ、うぅ………!」

 

「その苦痛から解放してやろう。」

 

「ひ…ひいいいっ!」

 

恐怖に耐えきれず逃げ出す省吾だが、猪八戒が逃すはずがなく容赦なく包丁を振り下ろす。

 

だが、その攻撃が何かの結界に阻まれ弾かれた⁉︎

 

「ふむ。生き残ったのは省吾のみか。儂としたことが、魔物共の力を見誤っておったようじゃな。」

 

猪八戒の攻撃を阻んだのは老人の魔法使いだった。

 

「らっ、ラーゼンさん!俺を助けに…。」

 

「当然じゃ。お前はファルムス王国の大切な戦力なのじゃからな。」

 

ラーゼンと呼ばれるその老人は猪八戒達を見据える。

 

「…なるほど。省吾達では勝てぬ訳じゃ。鬼人族に豚頭帝(オークロード)……いや少し違うようじゃな。信じられんほどに強い。まさか災厄級(カラミティ)までおるとは思わんだ。」

 

ラーゼンはどうやらある程度魔物の強さが分かるようだった。

 

「このままでは武が悪い。一度退くとするわい。」

 

「逃しはしない!」

 

逃げようとするラーゼン達に向かって駆け出す猪八戒

 

「止まれ!猪八戒!」

 

「ぬっ⁉︎」

 

額の目を開いた白老の声にすぐさま止まりその場から跳び退く猪八戒

その瞬間、猪八戒がいた場所が爆発した。

 

罠魔法(トラップ)じゃ。魔法障壁と同時に仕掛けたようだの。あやつ、只者ではないぞ。」

 

爆発と同時に白老達から距離を取るラーゼン。

 

「カカカッ!鋭いのう!この罠を見抜くか。警戒すべきはお主の方じゃったか。」

 

「狸め。最初からワシを警戒しておった癖に。」

 

「そんな事は無いぞ鬼人よ。強さで見れば、そちらの豚頭帝(オークロード)に目が行くのが自然じゃろうて。では、失礼するとしよう。生きておれば、戦場でまた会えるやも………「それは無い!」ん?」

 

ラーゼンの言葉に白老が叫ぶ。

 

「貴様が向かう戦場には、我らが主達が向かわれるからのう。」

 

「主達………。片方はあの魔女、ヒナタ・サカグチにやられた筈では………生きているのか?」

 

「貴様達はやり過ぎたのじゃ。決して怒らせてはならぬお方達を激怒させた。…同情するぞ。楽に死ねぬじゃろう。」

 

「カカカッ!つまらんハッタリよ。一応は、忠告としてこの耳に留めておこうぞ。では、さらばじゃ!」

 

そう言って、ラーゼンは省吾を連れて転移魔法で逃げて行った。

 

ラーゼン達が逃げ去った後、猪八戒が白老に尋ねる。

 

「良かったのか、あの魔法使いを逃して?」

 

「良くは無かろうが、戦えばここにいる全員、死んでおったやもしれぬ。」

 

「ん?」

 

「奴め、自らの死をトリガー(引き金)にした核撃魔法を仕込んでおったからな。」

 

「なんと⁉︎」

 

「この目が無ければ見破れんかったやもしれん。まあ、リムル様とフォルテ様であれば問題あるまいが……。」

 

そう言って額の目…天空眼を閉じる白老。

その直後、ゴブタ達の手により最後の魔法装置が破壊された。

 

 

四つの魔法装置が破壊され弱体化を発生させていた四方印封魔結界(プリズンフィールド)が解除される。

 

それを見た朱菜、ミュウラン、アイリスは頷き合いすぐに新たな結界を生み出した。

そして、町の皆が一斉に祈り出す。

紫苑達の為に……リムルとフォルテの為に。

 

 

 




四方の魔法装置を見事に破壊した紅丸達。
異世界人の省吾と恭弥は確かに強いスキルを持っていたが、その力を過信していたのが大きな敗因。
次回、ファルムス本陣にリムルとフォルテの裁きが下る。
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