転生したらフォルテだった件   作:雷影

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謎の吸血鬼によりバラバラとなったラプラス…その後、どうやったか知らないが何故か生き残ったラプラスは、……遂に待ち望んだ人物との再会を果たす。


68話 訪れる者達

西方聖教会。

その発端はルミナス信仰の国外布教を目的として、神聖法皇国ルベリオスの下に作られた組織だった。

 

現在、聖騎士団長ヒナタ・サカグチの統率のもと、もはやルベリオスの下部組織とは言えないほどの影響力を得たが、ただ一人…神ルミナスの代弁者たるルベリオスの法皇、その言には耳を貸すと知られていた。

 

そんなルベリオスでラプラスがバラバラにされてから三日後。

イングラシアの自由学園では、子供達が笑顔で外で遊ぶ中、給湯室で美しい耳長族(エルフ)の女性がお茶を出す準備をしていた。

 

女性がお茶の準備を終えたその時だった。

 

「いや〜………マジで死んだかと思ったわ。」

 

なんと吸血鬼族(ヴァンパイヤ)にバラバラにされた筈のラプラスが窓から入って来たのだ……しかも五体満足な状態で。

 

「ん?」

 

窓から入ったラプラスは目の前の女性を見て止まった。

 

「…誰やあんた?(なんやエライべっぴんさんやけど、なーんか懐かしいような…。)」

 

ラプラスはその女性を見て何かを感じていた。

 

「フッ…馬鹿が。」

 

女性はラプラスを見て軽くそう呟いた。

 

(えっ今バカ言われた?)

 

「こちらへどうぞ。主がお待ちです。」

 

いきなりバカと言われて戸惑うラプラスをよそに、女性はラプラスを主の元へ案内する。

 

その道中、ラプラスは女性に問いかける。

 

「なぁアンタ、主が待ってる言うてたけど、ワイが誰だか知っとんのか?」

 

「…中庸道化連のラプラス殿でしょう?主より伺っていますので。」

 

「……そか。」

 

 

こうして、ラプラスは依頼主のあの方の待つ部屋に案内された。

 

「やあラプラス、大変だったみたいだね。」

 

部屋に着くと、ラプラスの依頼主が労いの言葉をかける。

 

そして、先程の女性がカップに紅茶を注いでいく。

 

「それで、西方聖教会の正体は掴めたのかい?」

 

「いやぁ…それがなんと……警備が厳重過ぎて無理やったわ‼︎

 

依頼主の問いに、頭に手を当てながら可愛らしく首を傾げて答えるラプラス。

 

「ふ〜ん、それで?ヒントくらいは掴めたんだろ?」

 

巫山戯ている様なラプラスの態度に動じずに、()()を読みながら依頼主はそう言う。

 

「なんや…苦労して手に入れた情報やから高く売りつけたろ思ったのに。」

 

ラプラスはわざとらしくがっかりした様に頭を下げる。

 

「あはは。君は嘘つきだからね。」

 

「酷いお人やなぁ。…ホンマ同情してまうで、知らずにあんさんの計画に巻き込まれとるあのスライムには。」

 

そう言って顔を上げ依頼主を見るラプラス。

 

「流石……自由組合総帥(グランドマスター)の顔と、ひん曲がった野望を同居させとる変人。…ユウキ・カグラザカ殿や。

 

 

そう…ラプラスの依頼主であり今回の騒動を裏から操っていたのが、シズエ・イザワの教え子の一人である神楽坂優樹だった。

 

「お褒めに与り光栄だけど、依頼料の引き上げは無しだぜ?」

 

「………ホント敵わんわ。」

 

頭を掻くラプラス。

 

「まあそう言うなって、約束の報酬はもう準備できてるからさ。」

 

優樹の言葉を聞いたラプラスが勢いよく顔を上げる!

 

「えっ⁉︎ほな…っ。」

 

「ああ。僕の中にいた君達の会長の魂は無事に人造人間(ホムンクルス)に定着したよ。」

 

「会長が…遂に復活!」

 

その言葉を聞いたラプラスは歓喜に満ちていた。

 

「どこや!早く会わせてーな‼︎」

 

「落ち着けよ。さっきからそこにいるって。」

 

「は?」

 

優樹が指差す方に振り向けば、先程の耳長族(エルフ)の女性が立っていた。

 

「えっまさか……このべっぴんさんが…。」

 

まさか、自分を案内していた女性が会長だったと思わず、それを知ったラプラスは……笑い出した。

 

「ぶわはははははっ!なんですのんその格好?趣味を変えはったんですか⁉︎似合ってる言うたらおかしいけど……前とイメージが全然違いますやん⁉︎」

 

笑いながらそう言うラプラス。それに対して女性…ラプラス達の会長が本来の口調で話し出す。

 

「うるさいぞラプラス。それが二百年ぶりに対面したこの俺……魔王カザリームに対する態度か。十年もかけてようやく肉体を手に入れたんだ。多少の不便は我慢するさ。」

 

なんと、ラプラス達の会長は魔王だった。

 

「いやいや……どうりで懐かしい感じがする思ったんや。」

 

そう言って、ラプラスは先程までのふざけた態度から打って変わり、礼儀正しくカザリームに頭を下げる。

 

「お帰りなさいカザリーム会長。中庸道化連一同待っとたでぇ。ワイもフットマンもティアも………クレイマンもな。」

 

ラプラスは嬉しそうにカザリームにそう言った後、優樹がラプラスに声をかける。

 

「感動の再会に水を差すようで悪いんだけどさ、魔王カザリームの完全復活とはまだいかないんだよね。」

 

「まぁな。正直なところ、全盛期の力には遠く及ばない。レオン・クロムウェル……忌々しい野郎だ。」

 

カザリームはそう言って拳を強く握り締める。

 

「まぁまぁ、やられちゃったんは二百年前の話やん?今は、呪術王(カースロード)カザリームの大復活を喜ぼうやないの。」

 

「その程度の年月で薄れる屈辱ではないがな。……だが、ボスに出会えたのは紛れもない幸運だった。」

 

 

そして、皆がソファーに座りカザリームの話しを聞き続ける。

 

「ーー十年前。俺の魂は本当に消滅寸前だったからな。肉体を失って消耗していたんだ。ボスに憑依できなければ、確実に死んでいただろう。」

 

「ボス……。」

 

「新しい体の性能に文句言うのは勘弁してくれよ。結構高くついたんだぜ?」

 

「分かっているわボス。」

 

カザリームは、自分が入れた紅茶を手に取る。

 

「魔導王朝サリオンの特注品だろ?脆弱だし、俺の趣味に合う外見ではないが、自分で動かせる物質体(マテリアル・ボディー)があるのと無いのじゃ大違いだ。」

 

そう言いながら、紅茶を冷まして飲もうとした時、震えながら必死に我慢していたラプラスが、遂に我慢できずに笑い出した。

 

「……フフッ。フフフッ……!ブッ……!ブフッ!ブッハハハハッ‼︎」

 

「おい!いつまで笑ってんだラプラスお前‼︎」

 

「いやいや、口調との違和感がきつ過ぎて笑えますよってに!」

 

「…わかったよ。力が戻りきらない今は、秘書のふりも続けなきゃならないのだし、当分はそれらしく喋る事にするわ。」

 

「ブワハハハハ!」

 

「ツボってんじゃねぇ‼︎」

 

ラプラスとカザリームがそんな話を続けている間に、シュークリームを食べ終える優樹。

 

「ところで、そろそろ本題に入らせてもらってもいいかな?西方聖教会、何か掴めたんだろ?」

 

「…せやな。会長がボスと呼ぶなら、あんさんはワイにとってもボスや。駆け引きは無しで語らしてもらいまっさ。」

 

そして、ラプラスは西方聖教会について語り出す。

 

「西方聖教会本部には怪しい物は何も無かった。そりゃ参拝者なんかも来るんや。わかりやすくヤバいもんが置いとるわきゃない。そんで、ワイは霊峰の頂上を目指すことにしたんや。法皇しか入れん奥の院ならなんかある思てな。そしたら……なんや偉そうな吸血鬼(きゅうけつき)のおっさんが出てきてな、赤い光線ぶっ放してきた思たら、ワイ…バラバラにされてしもてん!…あれはヤバいで、マジで死んだかと思ったわ。」

 

いやいや、なんで君生きてるの?

 

神妙そうに話すラプラスに、優樹はつっこんだ。

 

「コイツは殺しても、死なないだろうがね。」

 

「問題はその正体や。神聖なはずのあの場所に、なんで吸血鬼族(ヴァンパイア)がおったのか。しかも奴は教会の、祭服みたいなんを着とった。つまり、教会に属しとるっちゅーことや。」

 

「ルミナス教のお偉いさんが魔人……それも上位種族である吸血鬼族(ヴァンパイア)か。」

 

ラプラスの広告を聞き呟く優樹。そして、報告を聞いていたカザリームはその吸血鬼族(ヴァンパイア)が何者か分かった。

 

「…魔人どころではないかもな。」

 

「心当たりがあるのかい?カザリーム。」

 

「赤い光線を放ってきたと言ったな。」

 

「せや。」

 

「それは血を魔粒子化させて放出する〝血刃閃紅波(ブラッドレイ)〟と言う技だ。」

 

「知っとるんか会長⁉︎」

 

魔王ヴァレンタイン。〝鮮血の覇王〟の二つ名で呼ばれる奴の得意技だ。」

 

「魔王⁉︎…マジでか!」

 

「逃げて正解よラプラス。奴は全盛期の俺と互角だった男だからな。」

 

「ひょええええ!」

 

「昔、奴とは何度か殺り合った。その度に周辺の里や集落なんかが巻き込まれてな。それで話し合い…多数決で決着をつける風習が生まれたんだよ。」

 

「もしかして、それが魔王達の宴(ワルプルギス)?」

 

優樹がシュークリームを食べながらカザリームに問う。

 

「ええ。三名の票で発議というのは、魔王が七柱だった頃の名残でもあるのよ。」

 

「会長、口調がめちゃくちゃでっせ!」

 

「黙りなさいこのクソ野朗。」

 

「……じゃあそいつが魔王ヴァレンタインなのは事実として、なんで奥の院(そんなところ)にいたんだろうね。」

 

シュークリームを食べ終えた優樹が言う。

 

「一番ありえそうなのは、……法皇の正体が魔王だったとかかな。」

 

「あの男、ヴァレンタインは人間や亜人を餌としてか見ていない。そんな男が、人類の守護者を名乗っているのだとしたら……何かがあるのでしょうね。」

 

魔王ヴァレンタインの事を知っている故に、カザリームは何かあると推測する。

 

「んー…せやけど、どうやってヒナタの目を誤魔化しとるんや?法皇が魔王なんて知ったら、あの魔物絶対許さへん女が黙ってるはずないやん?」

 

「だから〝何か〟があるんだろう。どうあれ、この情報は使えるね。お手柄だよラプラス。」

 

良い情報を持ち帰ったラプラスを優樹は褒める。そんな優樹に、ラプラスは気になっていた事を尋ねた。

 

「ワイの報告は終わりやけど、クレイマンの奴は上手いこと覚醒できたんでっか?ファルムス王国になんやさせる言うてましたやん?」

 

そう…クレイマンを真なる魔王に覚醒させる為に暗躍し協力していたのは優樹達だったのだ。

 

「ああそれね。あの国って異世界人を大量に抱え込んでるじゃん?そろそろ力を削いでおこうと思って、魔物の国(テンペスト)の特産品の情報を流したんだよ。強欲な王なら必ず、仕掛けるだろうと思ってさ。」

 

魔国連邦(テンペスト)の反物がファルムスの王に渡ったのは優樹が情報を流したからだった。

 

「…結果は?」

 

ラプラスが尋ねると、優樹が呆れたような仕草をしながらラプラスに衝撃的な事実を伝えた。

 

「魔物二体を相手にまさかの全滅。ちょっと力を削ぐつもりが、殆ど削げちゃったよ。」

 

優樹の言葉にラプラスは目を見開いて驚いた!

 

「は…はぁぁあ⁉︎ファルムスの連中はそないに魔国(テンペスト)を舐めとったんか⁉︎」

 

「いや、そんなことないよ。五万の軍勢でもってノリノリで侵攻してたみたいだし。」

 

これには優樹も予想外だった。

 

「いやホント、あの人達って何なんだろうね。僕としては、二人で五万の軍勢を滅ぼした事より、ヒナタと戦って生き延びたり、分身でヒナタの剣技に打ち勝つことの方が驚きだよ。」

 

ヒナタの強さを知る優樹だからこそ、リムルがヒナタから生き延びたり、フォルテが分身体でヒナタの剣技に勝ったことが凄いと分かるのだった。

 

「…まぁその一人があのフォルテなら納得できるところもあるんだけどね。」

 

「?なんや、ボスは知ってるんですかあのフォルテの事?」

 

「勿論だよ。なんたって……僕が遊んだ事のあるゲームに出て来る最凶のボスキャラだからね。」

 

優樹も転移前にロックマンエグゼで遊んだ事があった。だからこそ、リムルからフォルテの姿と力を持って転生したフォルテ=テンペストの話を聞いた時は驚いた。

………転生としてフォルテがこの世界に現れた事に。

 

『あの時の君の驚きようは、今も覚えているよ。』

 

そんな優樹達の会話に、立体映像のDr.リーガルが現れ会話に入ってきた。

 

「おお!リーガルはんやないか。おひさー。」

 

ラプラスはリーガルに向かって手を振う。

 

『ああ、久しぶりだなラプラス。そして、こうして会うのは初めてだな魔王カザリーム。』

 

「そうだな。お前の事はボスとラプラスから聞いていた。色々と協力してくれたと感謝している。」

 

『私も君達には感謝しているからね。』

 

そう言いながら、リーガルは優樹の方を見る。

 

「やあリーガルさん。クレイマンはどうんな感じだったかな?」

 

『君と私の協力を無碍にしたと悔みながらイラついていたよ。』

 

「だろうね。彼ならそうだろと思っていたよ。」

 

『だが、魔王ミリムの支配に成功した事は喜んでいた。…レオン・クロムウェルをこれで始末できると。』

 

「クレイマン…まったく。」

 

クレイマンの思いを知り、カザリームの笑みを浮かべた。

 

「それにしても、リーガルさんと初めて会った時も僕は驚いたな。」

 

『そうだな。君が驚いたように、私も君がいた元の世界で、私がゲームのキャラ…架空の存在となっている事を知った時は驚かされたものだ。』

 

「そうでしたね。でも、リーガルさんと出会えたのは幸運だったよ。僕達の計画にも賛同して貰えたしね。」

 

『君の計画も実に興味深かったからね。私も君と出会えて良かったと思っている。研究に必要な資材や費用の提供は感謝している。』

 

「どういたしまして。それで、注文していた物の開発はどうですか?」

 

『間も無く完成する。後は起動し耐久実験をするのみだ。』

 

「もうそこまで…完成するのが楽しみだよ。」

 

リーガルの言葉に笑みを浮かべる優樹。

 

「あの…すんまへんが、ちょっとよろしいか?」

 

優樹とリーガルが話し合っている中、ラプラスが恐る恐る手を開げながらクレイマンの覚醒について聞く。

 

「さっき二人の協力を無碍にしたって聞いたけど、じゃあクレイマンのは覚醒できんかったんか?」

 

「ああ。魂は一つたりとも残留していなかった。おそらくその二人のどちらか…あるいは二人に先を越されたらしいわ。」

 

そう言って紅茶を口にするカザリーム。

 

「というわけで、クレイマンの覚醒に必要な魂の回収は失敗。」

 

獣王国(ユーラザニア)の方も、魔王ミリムの暴走で住民が事前に退避したせいで魂の回収は出来なかったものね。」

 

「あららら…(ワイもてんやわんやしとったけど、アイツも大変やったんやな。…後で慰めに行ったろう。)」

 

そう思いながら、シュークリームでお手玉をするラプラス。

 

「私の好物で遊ぶな。」

 

『食べ物を粗末にしては駄目だよラプラス。』

 

それを見たカザリームとリーガルは注意する。

 

「まあでも、結果的にファルムスが負けてくれて好都合かな。」

 

「どういう事でっか?」

 

「五万もの軍勢をたった二人で屠った魔人だぞ?御大層な教義を掲げてる西方聖教会が、野放しにするわけにはいかないだろう。」

 

「そして、それほどの魔人二人を相手にするのなら、ヒナタが出ないわけにはいかない。」

 

優樹とカザリームの意図をラプラスは理解した。

 

「なるほど。西側諸国を掌握する上で、最も邪魔なんはルミナス教。西方聖教会の目を引き付けてくれる魔物の国の存在…。」

 

仮面を外しシュークリームを食べながらそう答えるラプラス。

食べ終わると再び仮面を被る。

 

「そう。むしろ都合が良いってこと。」

 

『そうだな。想定外の事は起きたが、私達の計画に支障はない。』

 

「ただ…。」

 

「一番の想定外は貴様の報告よラプラス。」

 

「ひょ?」

 

「西方聖教会をもっと調査したいところだけど、魔王ヴァレンタインがいるとなると迂闊なことは出来ない。もう一度潜入してもらうつもりだったのに。」

 

「(なんやワイが悪いみたいになっとる……理不尽…。)…まぁ、魔王をおびき出すだけやったらなんとかなるんちゃいます?」

 

ラプラスの言葉に、優樹達を一斉にラプラスに視線を向ける。

 

「クレイマン、魔王ミリム、魔王フレイ、魔王達は三人の連名で色々出来るんやろ?開けばええやん…魔王達の宴(ワルプルギス)を。

 

ラプラスの提案を聞いた三人は目を合わせる。

 

『なるほど…その手があったな。』

 

「…ラプラスにしては冴えてるじゃない。」

 

「せやろ?(さて…どう動くんかなあのぷにぷにとフォルテは…)」

 

 

ラプラス達がそんな暗躍をしている間、復活祭を終えたリムルとフォルテは会議室に皆を集め、ディアブロとウルティマを皆に紹介していた。

 

「諸君。もう知っていると思うが、改めて紹介しておこう。」

 

「今回俺達の窮地を救ったディアブロとウルティマだ。」

 

「新人だが、かなり強くて頼もしいから、俺の第二秘書として頑張ってもらうつもりだ。皆も仲良くするように。」

 

「皆様。ご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いします。」

 

ディアブロは礼儀よく皆に頼み、皆もそれに頷く。

 

「色々仕事を教えてやってくれ。」

 

「畏まりました。」

 

リムルが紫苑にディアブロに秘書の仕事を教えるように任せる。

 

「ウルティマの方は俺の秘書兼尋問官を任せる。秘書に関する仕事はある程度は俺が教えてある。」

 

「皆。これから宜しくね♪」

 

ウルティマは可愛らしい笑顔で皆に挨拶する。

その笑顔に、皆も自然と笑顔で答えていた。

 

「それとガビル、ランサー。」

 

「「ハッ!」」

 

リムルに呼ばれ二人は起立

 

「今日からお前達に、開発部門を任せる。役職は暫定的だが、お前達も幹部になる。」

 

「えっ⁉︎」

 

「期待しているぞ。」

 

リムルに幹部と認められ、ガビルは目を輝かせてやったー!…と言いそうになったが、なんとか耐えた。

フォルテに期待され、ランサーは礼儀良く頭を下げる。

 

「拝命します!このガビル、身を粉にして働きまする。」

 

「必ずや、リムル様とフォルテ様の期待に答えてみせましょう。」

 

ガビルの幹部入りを、スケロウ達が窓の外から喜んでいる。

 

「後、ヴェルキオンも開発に協力する。ヴェルキオン自身開発部でベスターから色々学び、自らの手で再現したい物があるからだ。」

 

「うむ。ベスターよ。これから色々と世話になる。」

 

「私如きが、竜種であるヴェルキオン様に教えることがあるとは思えませんが、お役に立てる用に努力します。」

 

ヴェルキオンに対して頭を下げならベスターはそう言うのだった。

 

そして、いよいよ本題に入る。

 

「では、今後の方針について伝えたいと思う。ヨウムや三獣士の皆さんにも関係あるから一緒に聞いてもらいたい。」

 

「なんでも聞きますよ旦那。」

 

「それはカリオン様の救出に関係あるのですね。」

 

「うん。俺達、魔王になることにしたよ。」

 

「はい。」

 

リムルの宣言に朱菜が笑顔で答える。

 

「…リムル言葉が足りないぞ。ガゼル王にも注意されただろう。」

 

フォルテは軽くため息を吐いた後、代わりに皆に話す。

 

「俺とリムルは外…世界に名実ともに魔王になることを宣言することにした。」

 

「ほほう。他の魔王に喧嘩を売る。そう言うことですかな?」

 

「ああ。その通りだ。」

 

「他の魔王にと言うか、相手は…クレイマンだ。」

 

「ほーう。」

 

フォルテとリムルの言葉を聞いてヨウム達とアルビス達は頷く。

 

「なるほどな。自分から魔王の席を奪うってわけですね。面白い!」

 

「その通りだ。俺はクレイマンを許すつもりはない。」

 

「奴は連合軍の襲撃の際ミュウランを操り被害の拡大を目論み、ミリムを使い友好国ユーラザニアを滅亡させた。何が目的で暗躍したか知らないが、奴は俺達の大切な者達の命を一度は奪った。」

 

そう言ってフォルテは手を前に翳し拳を握り締める!

 

「俺達は魔王クレイマンを叩く!」

 

そうして、リムルとフォルテは皆に考えを話した。ファルムス王国の後始末、西方聖教会の動きへの牽制の必要性、獣王国の皆との約束である魔王カリオンの救出についてを。

 

「リグルド。」

 

「はっ!」

 

「西側諸国との交渉を任せる。」

 

「御意。お任せくださいリムル様。」

 

「紅丸、カーネル。全員の進化結果をまとめろ。全戦力を持ってクレイマンを叩きのめす為に、自分達の力と能力を把握する必要がある。」

 

「了解ですリムル様。フォルテ様。」

 

「すぐに皆の能力を調べます。」

 

「紫苑。」

 

「はい!」

 

「捕虜の尋問を任せる。」

 

「お任せをリムル様。」

 

「…ウルティマ。」

 

「何?フォルテ様。」

 

「ウルティマも尋問に参加してくれ。」

 

そう言って、フォルテは大量の完全回復薬(フルポーション)をウルティマに渡した。

 

「死ななければ何をしても構わない。奴らが知り得る情報を吐かせろ。」

 

フォルテの言葉を聞いたウルティマは、……それはそれは素晴らしい笑みを浮かべていた。

 

「任せてよフォルテ様♪」

 

「紫苑も遠慮はいらん。奴らから知り得る情報を聞き出せ。」

 

「はい。わかりました。」

 

紫苑も良い笑顔で答える。

 

それを見ていたリムルは少し心配だった。

 

「ヨウム、ミュウラン。」

 

「おう。」

 

「紫苑とウルティマの様子を見てくれないか?情報を聞き出すのはいいが、やり過ぎて王に死なれると困るからな。」

 

「任せてくれ旦那。…俺の国になるんだからな。」

 

「うん。三獣士の諸君にも、協力をお願いしたいのだが。」

 

「願ってもない事ですわ。ジュラの森の盟主様。」

 

「避難民を受け入れてくれた恩は忘れねぇ。なんでも言ってくれよ。俺達はあんた達の命令で動くぜ。」

 

「獣人は信頼には信頼で、恩には命を以って報いる。獣人全体としても、俺個人としても、リムル様とフォルテ様には返しきれぬ恩を得た。好きなように使ってください。俺達はこの命を以って、貴方達に報いましょう。」

 

「…わかった。お前達の命、カリオンに返すその時まで預かろう。」

 

「今は休んで、英気を養い来たるべき戦いに備えていてくれ。」

 

「はい。」

 

「おう!」

 

「ははーッ!」

 

アルビス達も理解してくれたので、皆が動き出そうとした時だった。

 

「「ん?」」

 

「どうしましたか?リムル様、フォルテ様。」

 

「…誰か来る。」

 

二人は万能感知にて、接近する者達を検知した。

外に出て向かってくる者達を確認すると、それは手勢を連れたフューズ達だった。

 

「お久しぶりですリムル殿、フォルテ殿。」

 

「ああ、そうだな。」

 

「それで、どうしてフューズ君達が?」

 

「それは、商人のヨルマイル殿から、魔国連邦(テンペスト)がファルムス王国の襲撃を受けたと知らせを聞いて、安全保障条約に従い馳せ参じていた……のですが、その途中で使者の方と出会い色々と事情を聞き確認しに来ました。」

 

ああ…上手く送り出した使者と出会えたか。…それでも、内容が内容だけに確認する必要はあるな確かに…。

 

「それで、…リムル殿、フォルテ殿。魔王になられたとは本当ですか?」

 

フューズが真剣な表情でリムルとフォルテに尋ねる。

 

無理もない。新たな魔王が誕生…それも二人共なれば。

 

力強い眼差しでリムルとフォルテを見るフューズ。

そんなフューズに、二人は頷いた。

 

「ああ。その通りだよ。」

 

「それが、俺達の覚悟だ。」

 

迷いの無い真剣な眼差しでフューズを見ながら答えるリムルとフォルテ。

 

その眼差しに、フューズは軽くため息を吐いて頭を掻いた。

 

「まぁ。事情は聞きましたから俺がどうこう言う事ではありません。」

 

「ありがとう。」

 

「感謝する。」

 

俺達は互いに笑みを浮かべる。すると、電脳之神(デューオ)から更なる来訪者が来た事を知らされる。

 

《上空より30騎の接近を確認した。》

 

フォルテも感知したので向かってくる方に向くと、上空より天翔騎士団(ペガサスナイツ)を率いるガゼル王の姿を発見。

 

ベスターから俺達の事は知らせてもらっている。故にガゼル王自ら来たのだろう。

 

そして、ガゼル王が俺達の前にゆっくりと着地し、ペガサスから降り立つ。

 

「ー久しいなリムル、フォルテ。なんでも魔王になったらしいな。」

 

「まぁね。色々あってさ。」

 

「今後について、幹部の皆と対策会議をしていたところだ。」

 

「ほう。ならば俺も参加しよう。…何かやらかすと思っておったが、まさか魔王とはな。」

 

「皆を救う可能があったからこそ魔王になった。」

 

互いに握手を交わしながら、ガゼル王はリムルとフォルテの目を見る。

………その曇りなき眼を。

 

「…そうか。では魔王になった経緯の説明も頼むぞ。ファルムス王国軍が進軍中、なぜか()()()()になったその理由もな。

 

ガゼル王の言葉にフォルテは瞬時に理解した。リムルは少し首を傾げた。どうやらまだリムルはガゼル王の意図が分かっていないようだ。

 

「え…?いや待ってくれ。そうじゃなくて俺達がー『リムル。』⁉︎」

 

フォルテが念話でリムルに説明する。

 

『ガゼル王は、俺達が五万の軍勢を虐殺した事実を有耶無耶にしようとしてくれているんだ。』

 

『あっ…!』

 

『ベスターなら必ず、全てを正しく伝えている筈だ。気分次第で万の軍勢を滅ぼせる存在は、核兵器以上の脅威だ。』

 

実際、ミリムは天災級(カタストロフ)として世界に恐れなれる魔王だ。

実際、獣王国(ユーラザニア)を消滅させた。

そんな、ミリムのような新たな魔王が誕生した事実を、ガゼル王達は有耶無耶にしようとしてくれている…俺達を信じて。

 

今の俺ならば、ミリムがやった事と同じ事が可能だろう。

漫画のフォルテも闇ナビと化し、GS(ゴスペルスタイル)となって街を跡形も無く消し去れるほどの一撃を放とうとしたからな。

 

『…確かに、真実を告げれば混乱を煽ることになるな。』

 

リムルも理解したようで頷いて答える。

 

「ああ。もちろんだ。」

 

「フューズも今はそれで理解してくれ。」

 

フォルテはフューズにそう伝える。

 

「ええ。分かっていますよ。ファルムス軍は行方不明。今はそれでいいです。ただ、この後の対策会議には俺も出席させてもらいますよ。」

 

「もちろんだ。」

 

「是非出席してくれ。」

 

フューズとリムルとフォルテは互いに笑みを浮かべるのだった。そんな俺達にガゼル王が声を掛ける。

 

「リムル。フォルテよ。貴様らはあの男を信頼しているのだな。」

 

「ああ。」

 

「フューズも俺達の事を信頼してくれている。」

 

「ふん。ならば問題はそちらの者共よな。」

 

ガゼル王もやはり気付いていた。新たな来訪者の気配に。

 

フォルテとガゼル王が横に首を向けると、フードを目深く被った集団がこちらに向かっていた。…リムルだけは何故か気付いていなかった。

 

「何者だ貴様達は。」

 

ガゼル王の問いに答えるように、先頭の人物がフードを外すと、金髪の糸目の男が顔を見せガゼル王に声をかけた。

 

「これはこれは、地底に隠れ住むのがお好きな帝王ではありませんか。意外ですな。臆病なあなたが、魔王二人に肩入れなさるとは。」

 

「ふん。貴様か。馬鹿みたいに高い所が好きな耳長族(エルフ)の末裔よ。神樹に抱かれた都市より下りてきたのか。…いや、その体は恐らくは……。」

 

「ああ、人造人間……ホムンクルスを利用した物だ。魔王を名乗る者達の前に出るには、用心せねばね。」

 

どうやら、この耳長族(エルフ)の男性とガゼル王は知り合いのようだ。それにしても、人間と殆ど区別がつかないほど精巧にできた人造人間(ホムンクルス)とは、是非その作り方を教えてもらいたいものだ。

ネビュラグレイやウルティマ達のような精神生命体の依代研究に役立つからな。

 

フォルテとリムルがそんな事を考えていると、ガゼル王が軽く彼らの事を紹介してくれた。

 

「紹介しよう。こやつらは、魔導王朝サリオンの者達だ。相変わらずだなエラルド。」

 

「お前もなガゼル。それで、そちらの者達が…。」

 

「あっ。どうも初めまして。この森の盟主をやっているリムルです。よろしく。」

 

「同じく、盟主のフォルテだ。」

 

リムルとフォルテが自己紹介した次の瞬間!エラルドの糸目が見開いた。

 

「ぐぬぬぬぬ………!貴様らか!

 

「「え?」」

 

体を震わせたかと思った次の瞬間、リムルとフォルテに向かって指差しながら声を上げるエラルド

 

「貴様らが、私の娘を誑かした、魔王ですか!」

 

「あっ、へ………え?」

 

「娘?」

 

もの凄い剣幕でリムルとフォルテに迫るエラルド。

その迫力にリムルは答えられず、フォルテは何の事か分からず首を傾げる。

 

「覚悟は出来ているんでしょうね⁉︎」

 

そう叫ぶと、エラルドはリムルとフォルテから距離を取り、魔法の詠唱を始め出した。

 

「炎よ!燃えよ、爆ぜよ、荒れ狂え!集いて弾け、暴威を撒き散らせ!我が敵を爆散せすべよ!一欠片の肉片すらも残さず、塵となるまで焼き尽くせ!」

 

エラルドの詠唱に合わせて、エラルドを中心に魔法陣が展開され宙に巨大な火球が出現……てかいきなり何やっているんだこの男は⁉︎

 

フォルテはすぐにガゼル王達の前に立つ

 

《あれは超高等爆炎術式だ。》

 

電脳之神(デューオ)がすぐ解析し報告する。

 

エラルドの詠唱により更に巨大化していく火球……その時

 

「炎よ!燃えよ、爆ぜよ、荒れ狂え!集いて弾け、暴威を撒き散らせ!「この……アホタレがァァァァァ‼︎」我が敵を爆散せすべ………ああああっ!」

 

詠唱中のエラルド目掛けて、エレンが突っ込んでいき、杖をまるでゴルフスイングの様にしてエラルドを打ち飛ばした。

 

打ち飛ばしされた事で魔法は中断され、エラルドはそのまま地面に倒れた。

そんなエラルドの元に、カバルとギドが心配そうな表情で側まで来ていた。

そして、倒れていたエラルドは何とか起き上がり、そんなエラルドに対して怒りながらエレンが近寄る。

 

「ぐっ……痛った……!」

 

「ちょっとパパ!何しに来たのよ!」

 

「え?あっ、エレンちゃん!無事だったのか!」

 

「無事も何も、私は自分の意思でここに来たのよ!」

 

そう言いながら、杖でポカポカとエラルドを叩くエレン。

 

「……やっぱりエレンの父親だったか。」

 

なんとなくだがそんな気はしていた。

 

「いや〜ハハッ!すまんなぁ。娘が魔王に攫われたと報告を受けたもので、つい慌ててしまったのですよ。」

 

いや、それでもあの魔法は駄目だろ。……()()の魔法なら。

 

「親バカは治らんな。エラルド。」

 

「親バカなどではない。エレンちゃんが可愛いから…仕方ないのだ。」

 

「それを世間一般では……いや、何を言っても無駄よな。」

 

エラルドの親バカっぷりに流石のガゼル王も呆れるのだった。

 

「リムルさん、フォルテさん。パパを紹介してもいい?」

 

「あっああ。」

 

「頼む。」

 

エレンが改めて父であるエラルドを紹介する。

 

「こちら、魔導王朝サリオンの大公爵エラルド・グリムワルトです。」

 

「どうぞお見知りおきを。ジュラの大森林の盟主にして、魔物を統べる者達よ。」

 

娘のエレンに紹介されたエラルドは、先ほどの態度とは打って変わり、貴族らしい礼儀で頭を下げる。

 

「じゃ…じゃあこちらも改めて、リムル=テンペストです。」

 

「フォルテ=テンペストだ。それで、まさか要件はエレンの件だけとかで?」

 

「当然……そんな訳は無い。」

 

だろうな。それだけの為にわざわざ人造人間(ホムンクルス)の身体まで用意してこの場に来る必要はない。

 

「今後貴国との付き合い方を考える上でも、自分の目で見ておきたかったのだよ。娘が気に入った…貴殿達という人物をな。」

 

「なるほど。」

 

「それで判定は?」

 

「まだわかりません。ただひとつ、ハッタリが通じる相手ではないと理解しました。」

 

「やはり、先ほどの魔法は見せかけか。」

 

「ええ。必要最低限の魔素量(エネルギー)に満たないハリボテです。」

 

電脳之神(デューオ)が解析した時から分かっていたが、先ほどの魔法は見た目ほどの魔素量(エネルギー)がなかったからな。

 

「試させてもらった非礼をお詫びします。」

 

「それは仕方ないさ。新たな魔王の誕生に自分の娘が関わっているのだから。」

 

エラルドは親バカだが、それ故に娘を大事に思っている。だからこそ、俺達を試した。

 

エラルドと話している間に、エレンがガゼル王に挨拶に向かった。

 

「ご無沙汰しています。ガゼル王。」

 

「エリューンか?見違えたぞ。」

 

「エレンちゃんに手を出すことは許さんぞガゼル‼︎」

 

……仕事は出来る様だが、やはり親バカ過ぎるな。

エレンが怒ってエラルドに平手打ちし、エラルドの頬に赤い手型がくっきりとついた。

 

「そうでした。失礼ついでと言ってはなんですが、先ほど言っておられた会議に私も参加させて頂けますかな?」

 

そうだな。…俺達もこの人が信頼出来る人物か判断したいからな。

 

フォルテとリムルは互いに頷いた。

 

「分かりました。席を用意します。」

 

「感謝します。」

 

「リグルド。会議室ではこの人数は無理だ。中庭で会議をする事にする。」

 

「はっ。すぐに準備に取り掛かります。」

 

こうして、俺達の会議は来訪者により大きな会議になるのだった。




打倒クレイマンに向けて動き出したリムルとフォルテ。
そんな二人の元にフューズにガゼル王そして、魔導王朝サリオンからエラルドがやって来た。
彼らも参加する会議が始まろうとするのだった……その前に、ヴェルドラ達のことを説明しないといけないのだが。
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