転生したらフォルテだった件   作:雷影

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クレイマンの狙いが分かり、ユーラザニアの為にリムルとフォルテが動く!


73話 会戦前夜(前編)

クレイマンの目的が、魔国連邦(テンペスト)ではなくユーラザニアであり、自らの覚醒の為に避難民を皆殺しにしようとしている事を知ったリムルとフォルテ達。

 

三獣士の面々は顔を顰める。

 

中々に狡賢い様だなクレイマンは、リーガル達と連んでいるだけはある。

魔王達の宴(ワルプルギス)を3日後の夜に設定したのも、他の魔王達から干渉を受けずに、獣王国の惨殺を終わらせるつもりなのだろう。

 

重い空気が立ち込む中、ヴェルドラとラミリスは呑気に漫画を読んでいた。

 

「お主は、この中では誰が推しだ?」

 

「ん…………推し?」

 

「我はこいつが好きでのう。」

 

「……兄者。」

 

「今はそれどころでは……。」

 

漫画のキャラについて語り合うヴェルドラとラミリス。

そんな二人の様に、アゲンストとヴェルキオンは溜め息を吐いていた。

………フォルテの知識から色々学んだ二人は、まだある程度常識的だった。

 

 

そんな中、フォルテは電脳之神(デューオ)と共に、クレイマンがユーラザニアの民を皆殺しにした場合の予測をしていた。

 

《この方法での成功確率は78%だと判明した。》

 

(やはりな。効率は悪いが、確実に大量の魂を得られるからな。)

 

フォルテはリムルを見ると、リムルも同じ結論にたどり着いた様だ。

互いに頷く二人。

 

クレイマンの思い通りなどさせるものか!それに、ユーラザニアの民達も救いたい。

 

断固阻止だ!

 

「ユーラザニアに残っている民は、顔も名も知らぬ者達だが、俺達と友誼を結んでいる。」

 

「だからこそ、遠慮なく介入する。ユーラザニアの民を救い、クレイマンの計画を阻止する!」

 

「リムル様、フォルテ様…………!」

 

リムルとフォルテの言葉を聞いたアルビス、スフィア、フォビオ達三獣士は二人に向かって頭を下げる。

 

そして、リムルは紅丸に、フォルテはカーネルに命令する。

 

「紅丸。」

 

「カーネル。」

 

「「はっ!」」

 

「阻止しろ。」

 

「クレイマンの軍勢を倒せ。」

 

「ああ、任せろ!…………じゃなくて、お任せを。」

 

「必ずや、敵を阻止してみせます。」

 

こうして俺達は、クレイマンの目論みを阻止する為の作戦を検討する。

 

「一番の問題は、どうやっても間に合わない事だな。」

 

そう。今から普通に送り出しては、間に合わずクレイマンの軍勢によって、ユーラザニアが蹂躙されてしまう。

 

「転送魔法で全員を送れたら早いんだけどな。」

 

「でも、転送魔法で軍を送るのは、危険が大きすぎます。」

 

「その通りだ。……普通ならな。」

 

朱菜が言う様に、転送魔法は物質を送ることはできるが、有機物を送る事は難しいのだ。何故なら、転送時に大量の魔素を浴びてしまう為、有機物が変質してしまうからだ。

 

だが、魔人や魔物なら自力で結界を張って身を守れる者達もいる。

故に、転送魔法に結界で保護する完全転送術式を組み込む必要があったが、俺と電脳之神(デューオ)が既に完成させていた。

前々からこんな自体を想定して作成をしていたのだ。

更に、エクストラスキルの空間支配を併用して、消費魔力の大幅削減も実現した。

 

それだけでなく、究極能力(アルティメットスキル)電子変換(スペクトル)を組み合わせれば、大国一つを電子データ化して転送する事も可能だ。

魔力もフォルテなら、虹之鳳翼(フェニックスエール)で回復する。

 

フォルテはリムルに思念伝達で話しかける。

 

『リムル。こっちは対象者を保護する完全転送術式が完成しているが、リムルの方はどうだ?』

 

『こっちはたった今、智慧之王(ラファエル)先生が同じ術式を完成させてくれたよ。』

 

『流石は智慧之王(ラファエル)だな。なら、問題はないな。』

 

フォルテとリムルは互いに頷く。その様子に、朱菜が二人に声をかける。

 

「リムル様?フォルテ様?」

 

「朱菜の言う通り。転送魔法で軍を送るのは、普通は危険すぎる。」

 

「普通は?」

 

「それを可能にする新たな術式の開発に、たった今成功した!」

 

「まあ!」

 

「なんと………⁉︎」

 

「たった今って………⁉︎」

 

「流石。」

 

「クフフフフフッ………。」

 

リムルの言葉に朱菜、紫苑、フォビオは驚き、紅丸とディアブロは笑みを浮かべる。

 

「まぁ。俺よりも、フォルテが先に開発には成功していたんだけどね。」

 

「俺のスキルと組み合わせれば、より確実に皆を転送できる。」

 

「流石ですフォルテ様。」

 

「やっぱりフォルテ様はすごいね。」

 

カーネルとウルティマが笑顔でそう言う。

 

「全軍を転送できるなら、クレイマンの軍勢を阻止する事は可能だ。」

 

俺とリムルを敵にした事こそ、クレイマンの敗因だな。

 

「後は、お前達の覚悟だけだ。」

 

「リムルの言う通りだ。術式は完成したが、まだ安全性の確認は出来ていない。それでも、俺とリムルを信じてくれるか?」

 

「悩むまでもない。俺の忠誠はリムル様とフォルテ様に捧げた。忠実な家臣である以上、死ねと命じられたら死ぬだけです。」

 

「フォルテ様とリムル様の命令に従うだけです。それに、お二人だからこそ、この身を預ける事ができます。」

 

「信じるぜ。俺達が、リムル様とフォルテ様を疑うなんて出来ねえし。」

 

「一度助けられた身だ。部下達に文句なんざ言わせませんよ。」

 

「あらあら。これは私も同意しないとダメな流れだわ。リムル様とフォルテ様のお力に頼らせて下さいませ。」

 

紅丸、カーネルそして、三獣士達の言葉を聞いたリムルとフォルテは、答える様に頷く。

 

「お前達のその命、預からせてもらう。」

 

「これで、クレイマンの策の上を行く!後はお前達次第だ!必ず勝て!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

リムルとフォルテの言葉に皆が頷く。

こうして会議が終わり、この場には、フォルテ、リムル、シズさん、アイリス、ヴェルドラ、アゲンスト、

ヴェルキオン、リグルド、紅丸、カーネル、朱菜、紫苑、白老、嵐牙、ゴスペル、ディアブロ、ウルティマ、ラミリス、トレイニーさん、トライアさんが残った。

 

「ふぅ…………皆、長い会議お疲れ様。」

 

「明日からはクレイマン軍との戦い…よろしく頼む。」

 

「ええ。お任せ下さい。」

 

「クレイマンの居場所を特定出来れば、空間魔法で殴り込んで終わらせられるんだけどな。」

 

「傀儡国ジスターヴに居る可能性が一番高い………だが。」

 

「クレイマンが魔王達の宴(ワルプルギス)に参加するのであれば、すれ違いになりそうです。」

 

「朱菜の言う通りだ。」

 

故に、正確な情報を得てから、確実にクレイマンを倒せる様にしたい。

そう思っていると、紫苑が手を上げ声を上げる。

 

「はい!」

 

「紫苑!」

 

「ウフッ!こちらが魔王達の宴(ワルプルギス)に乗り込んで、クレイマンと文句のある魔王達を全て斬り捨ててしまうのはどうでしょう?」

 

成る程。確かに良い案だ。クレイマンが来ると分かっている場所だからな。

 

「クレイマンならまだしも、他の魔王とまで揉めるのはダメだろう。」

 

「そ………そうですか。」

 

「だが、決して悪い案ではないな。クレイマンも、まさか俺達が乗り込んで来るとは想定していない筈だからな。

ラミリス。俺達も参加出来るか?」

 

フォルテがラミリスに聞いてみると、丁度トレイニーさんとトライアさんにデザートを食べさせてもらっていた。

 

「えっ?魔王達の宴(ワルプルギス)に?」

 

「ああ。こっちからクレイマンに会いに行ってみるのも、面白いかなって思ってさ。」

 

「正式な招待がなければいけないとかルールはあるのか?」

 

「うーん………多分大丈夫だと思うけど。でもね、付き添いは二人までだよ。昔色々と問題があったから、そう決まったの。ん?うぐっ!うぐぐぐ…………!」

 

ラミリスがそう言い終えると、トレイニーさんによって口を拭かれる。

 

付き添いは二人までか……。

 

フォルテが誰を連れていこうかと考えている間に、リムルが皆に聞く。

 

「どう思う?」

 

「クフフフフフッ…………。」

 

「ディアブロ?」

 

「素晴らしい案です。その時は是非、この私がお供をいたしましょう。」

 

「バカめ、ディアブロ!お供はこの私です!譲りません!」

 

「まあとはいえ、戦いになるならば、打ち破れば済む話。そもそも、リムル様とフォルテ様だけで十分でしょう。」

 

「その通り!バカだと思っていたが、新参にしては見所があるぞ!」

 

そう言ってディアブロの背中を推し叩く紫苑

原初の悪魔にその態度を取れるとは、紫苑も中々度胸がある。

それに、二人共良い笑顔を浮かべて、なんか意気投合しているしな。

 

そんな紫苑の頭の上に、スライム姿のリムルが乗る。

 

「待て待て。慌てるな。まだ決定じゃない。それに、お前にはファルムス王国を任せたから、どっちにしろ連れて行かないよ。」

 

「そうですね。承知しました。」

 

「しかし…………やはり危険ではないですか?」

 

「いや。ミリム様が裏切ったとは思えないが、少なくとも魔王カリオン様を討ったのは事実。」

 

「そうだ。ミリムが俺の予想通り、操られている振りをしているのか、本当に操られてしまったのかを、魔王達の宴(ワルプルギス)に参加して直接確かめるのも悪くないからな。」

 

「そうよねぇ。ミリムがクレイマンなんかの言いなりになるなんて、まずありえないと思うよ。だって、ミリムって我儘だし。」

 

「ミリム様がリムル様とフォルテ様を裏切るなど、絶対に考えられません!」

 

「…紫苑。」

 

「根拠はありませんが、間違いないと確信します!」

 

朱菜、紅丸、フォルテ、ラミリスがミリムについて話し合う中、紫苑がミリムは裏切っていないと声を上げた。

 

根拠はないか…紫苑らしいな。

 

紫苑の言葉を聞いた後、リムルとフォルテが口を開く。

 

「まあ実の所、俺はフォルテの言った通り、ミリムが操られた振りをしているんじゃないかと思っている。」

 

「だからこそ、俺達自身この眼で確かめる必要がある。俺やラミリスが言った通り、クレイマンが原因と言う可能性があるからな。」

 

「でしょ!でしょでしょ!やっぱり、名探偵ラミリスさんの読みは正解だったって訳よね!」

 

「流石です。」

 

「素晴らしいです。ラミリス様。」

 

「ふふん!」

 

ラミリスを褒めながら拍手するトレイニーさんとトライアさん。

本当……二人はラミリスの事になるとこうも変わるんだな。

 

そんな中、リムルは紫苑から降りて口を開く。

 

「だからこそ、魔王達の宴(ワルプルギス)に参加して、色々と探ってみようと思うんだが…………。」

 

そう言って、リムルが周囲を見ていると、紫苑が目を輝かせながらリムルを凝視する。………連れて行かないとまた暴れるだろうな。

 

「よし!紫苑と嵐牙を連れて行く!」

 

「はっ!ありがとうございます!」

 

「お任せください!我が主!」

 

「フォルテは誰を連れて行くんだ?」

 

「俺か?俺はシズさんとウルティマを連れて行く。」

 

「え?」

 

「わぁ!ありがとうフォルテ様。」

 

フォルテの言葉にシズさんは驚き、ウルティマは喜ぶ。

 

「シズさんを連れて行くのは、魔王レオン・クロムウェルが参加する可能性が高いからだ。」

 

「っ‼︎」

 

「良い機会だから、シズさんレオンに言いたい事を言ってやるんだ。」

 

「フォルテ君……うん。ありがとう。」

 

「グアッハハハハっ‼︎」

 

「「「「うん?」」」」

 

突然、ヴェルドラが笑い声を上げた。

 

「やる気になったか。リムル、フォルテよ!水臭いぞ。我達も共に行こうではないか!魔王など、恐るるに足らぬわ!」

 

確かに、ヴェルドラ達を連れて行けば、他の魔王達も迂闊には手を出さないだろう。

だが、今回は連れて行くのは無しだ。

 

「まあ待てよ、ヴェルドラ。」

 

「悪いが、ヴェルドラ達には街に残って防衛を頼みたい。」

 

「何⁉︎我らならば、魔王どもなど一捻りで…………!」

 

リムルとフォルテの言葉に驚き、ヴェルドラは声を上げるが、アゲンストがヴェルドラの肩に手を置く。

 

「落ち着くのだ兄者。」

 

「リムルとフォルテには何か考えがあるのだろう。」

 

「弟達よ……。」

 

「アゲンストとヴェルキオンの言う通りだ。」

 

「この街の防衛というのも、立派な仕事だ。………というか、一番重要な役割だぞ。」

 

「ぬ?一番…………。」

 

「そうだ。万が一、俺達が街を離れている間に、リーガル達が街に攻めて来た時に守ってくれる存在が必要だ。その重要な役目をヴェルドラ達に任せたい。」

 

もし、リーガル達が戦場ではなくこの街を狙ってきたら、戦力の大半を送り出した街では守り切れない可能性が高い。だが、ヴェルドラ達とグレイガ、ファルザーそして、ゴスペルがいれば大丈夫だ。

そう思っていると、ラミリスが口を開く。

 

「ちょっとリムル、フォルテ。師匠は私の配下として来て貰えば良いじゃん。それなら、私も安全だし。」

 

「いや?我は別にお前のお守りでついて行きたい訳ではないのだが?」

 

「うえええ〜っ⁉︎そんな………冷たいよ師匠!」

 

というか、いつからヴェルドラはラミリスの師匠になったんだ?

 

「ヴェルドラ。実は、君の噂を流す手筈になっている。それは、さっきの会議でも話し合っていたから、知っているよね?」

 

「ぐっ…………うむ!無論であるぞ。(マズイ…………聞いていなかったなどと言えぬではないか。)」

 

「……兄者。」

 

挙動不審のヴェルドラの姿にヴェルキオンは、呆れた表情を浮かべながら呟く。

まぁずっと漫画を読んでいたのだから聞いていなかったのだろう。

アゲンストもヴェルキオンと同じ様な表情で兄ヴェルドラを見ている。

そして、リムルに続いてフォルテが口を開く。

 

「それでだ、噂を知ったクレイマンはこう思う筈だ。"リムルとフォルテはヴェルドラの威を借りた小物"だと。」

 

「何だと⁉︎クレイマンめ!許さんぞ‼︎」

 

「フッ!身の程を知らぬ虫が!やはり、私が出向き殺した方が良さそうですね。」

 

フォルテの言葉を聞いたヴェルドラは怒り、紫苑も拳を鳴らしながら怒りを燃え上がらせる。

 

「はぁ………やれやれ。落ち着け紫苑。」

 

「兄者もだ。フォルテの言葉はあくまで例えよ。」

 

紅丸とアゲンストが二人を落ち着かせる。

 

「会議にヴェルドラ達を連れて行って、警戒されてしまっては意味がないだろ?」

 

「ほほう。そう言う事か。」

 

「流石、リムル様とフォルテ様です!」

 

「クフフフフフッ……………リムル様とフォルテ様を侮る時点で許し難い。私の手で粛清してやりたいですが、ここは………ウルティマと先輩を立てるとしましょう。」

 

「ほう。話が分かりますね。」

 

「任せておいてよディアブロ。」

 

そう言って紫苑とウルティマそしてディアブロがサムズアップする。

こういうところは意気が合うようだな。

 

「相手を油断させて、有利に交渉を進めるつもりですね?」

 

「それも危険ではないでしょうか?」

 

「私も朱菜の言う通りだと思うよ。」

 

朱菜とアイリスが心配する。

 

「大丈夫だ。実はヴェルドラは、俺とフォルテのスキル暴風竜召喚で呼び出す事が出来る。」

 

「何と⁉︎そうであったか!」

 

「更に言うなら、アゲンスト、ヴェルキオン、ゴスペル、グレイガ、ファルザーは俺のスキルで召喚できる。」

 

「やはりな。フォルテもリムルと同じ様なスキルを得ていたのだな。」

 

「そうだと我も思っていた。」

 

「だから、フォルテ様は親父殿を連れて行かずに、街の防衛に残したのですね。」

 

「ああ。それに、ゴスペルには先に話していたからな。」

 

フォルテの言葉にアゲンスト、ヴェルキオン、嵐牙は納得した。

 

「万が一の時は、お前達に助けを求めるから、それまで大人しくこの街を守っていて欲しいんだ。」

 

「クア〜ハハハハッ!なるほど!我らは遅れて現れるヒーローだな。」

 

「ちょっと。流石にそれはずるくない?」

 

ラミリスの言葉も一理あるかもな。何たって、追い詰めたと思ったらいきなり竜種が三体現れるのだから。

ゲームで例えるなら、ラスボス倒したら、それより強すぎる裏ボスが三体も現れる………あまりにも酷すぎる展開だ。

 

「賢いって言って欲しいね。」

 

「後、ラミリスの従者枠は一応埋まっているだろう。ベレッタとスペルの二人で。」

 

「あっ!そうだったわね。」

 

「お待ちください!」

 

その時、声を上げたのはトレイニーさんだった。

 

「リムル様、フォルテ様。その御役目、是非とも私に。」

 

トレイニーさんとトライアさんが頭を下げ頼みこむ。

 

「トレイニー…アンタって子は…。」

 

ラミリスは嬉しさで涙目になる。

 

「私からもお願いします。どうか、姉にラミリス様のお供をお許しください。」

 

トライアさんも必死に頼みこむ姿を見たリムルとフォルテは互いに頷く。

 

「じゃあトレイニーさん。」

 

「ラミリスを頼む。」

 

「はい!」

 

「トレイニー!」

 

ラミリスは嬉しそうに、トレイニーさんの頭を撫でる。

 

魔王達の宴(ワルプルギス)には、俺と紫苑と嵐牙。フォルテはシズさんとウルティマ。」

 

「そして、ラミリスにはトレイニーさんと、ベレッタかスペルが参加する。」

 

フォルテの言葉にベレッタとスペルはすぐに控え、トレイニーさんは頷く。

 

「切り札として、ヴェルドラ達を召喚だ!」

 

こうして、クレイマンの軍勢や魔王達の宴(ワルプルギス)に向けての話は纏まった。

 

皆がそれぞれ準備を行う為に動き出し、フォルテも開戦の為に、皆の現在の戦力を確認しに向かった。

そして、更なる戦力を増やす為の準備も…。

 

その一方、ミリムの支配領域である忘れられた竜の都では。

忘れられた竜の都の神官団を率いる神菅長のミッドレイが苛立っていた。

 

「ええい!忌々しい奴らよ!何が"協力しましょう"だ!舐めおって!」

 

「ミッドレイ様。ここは従わないとマズイですって。あのヤムザとかいう指揮官は、ミリム様からの命令書を持っていたじゃないですか。」

 

「黙れヘルメス。貴様に言われなくても分かっておるわ。」

 

「ユーラザニアを滅ぼすなんて、ほんとミリム様にも困った物ですよね。」

 

「不敬だぞヘルメス!ミリム様のなさる事を疑うでないわ!」

 

「いや、それはそうなんですけど………。(そうやって甘やかすから、ますます俺が苦労するんだよな…………。)」

 

このヘルメスという人物は、そうとう苦労しているようだ。

 

「しかしクレイマンめ。偉そうに…………!ミリム様に命令書を書かせるとは…………!」

 

「そうっすね。間違いなくミリム様の字でしたし、命令だから仕方ないっすけど………。クレイマンの軍の奴らに食われて、第3食糧庫も空になったすよ。これで残るは7つ、次の収穫時期まで苦労しそうっすね。」

 

「クソが!ぐぬう…………!」

 

ヘルメスの言葉に更に怒るミッドレイ……その頭は怒りで真っ赤となり、血管が浮かび上がっていた。

 

「ぷっ………!(赤い…………メロン。)くくくくっ…………!」

 

それを見たヘルメスは気付かれない様に口を手で覆い笑った。

そんな二人の元に、1人の男がやって来る。

その男こそ、クレイマンの軍を指揮する中指のヤムザだった。

 

「氷結魔剣士ヤムザ。ちっ!ヘルメス、我慢するのだぞ。」

 

「了解っす。」

 

「「フフフッ。」」

 

ミッドレイとヘルメスは、ヤムザに聞こえない様に話、笑みを浮かべる。

ヤムザは、林檎を片手にミッドレイ達に向かって口を開く。

 

「ミッドレイ殿。食糧援助とても助かります。何しろ、三万もの軍を養うには、どれだけあっても足りませんからね。」

 

「ハハハッ。お役に立てたのなら、光栄ですな。ですが、残念な事に我等としても、これ以上の援助は厳しいのです。民が食うに困ると、ミリム様が悲しまれますので………。」

 

ミッドレイが柔らかい口調で、ヤムザに向かってそう言うと、ヤムザは手に持つ林檎を握り潰した。

 

「何を言うか。その魔王ミリムが勝手に動いたのだ!その尻拭いをしてやろうという我が軍に対し、礼を尽くすのが当然だろうが。ん?」

 

そう言いながら、ヤムザは握り潰した林檎をミッドレイの頭に押し付ける。

それに対しミッドレイは………笑顔を崩さずに口を開いた。

 

「いや、これは失礼。ついつい、自分達の事しか考えておりませんでした。我らに出来る協力は、何でも致しますので遠慮なくお申し付けくだされ。」

 

ミッドレイの言葉を聞いたヤムザは少しつまらなそうな表情を浮かべた。

 

(……乗らねぇか。カッ!となりゃ御し易いんだがな。)

 

(メロンならなかった。まぁここで怒ったら、それを口実にこの国を滅ぼしかねない奴らだもんな。)

 

ヘルメスはミッドレイが怒らなかった理由を理解した。

そして、ミッドレイの言葉を聞いたヤムザは口を開く。

 

「そうですか。では、あなたたちにも協力する機会を差し上げよう。物資の運搬程度には役立つだろ。」

 

「なっ⁉︎ちょ……ちょっと待ってくださいよ。食料を奪われた上に、人手まで取られるのは………!」

 

ヤムザの言葉にヘルメスが声を上げるが、ヤムザは躊躇いなくヘルメスの左腕を斬り落とした。

 

「あっ………!」

 

「黙れよ。ゴミめ。」

 

腕を斬られ断面を押さながら蹲るヘルメス。

そんな状態でありながらも、ヘルメスはヤムザを睨む。

 

「ほう。見るほどを知らぬか?見せしめに殺してやってもいいのだぞ?」

 

そう言って剣先をヘルメスへと向けるヤムザ。

 

(この野郎調子乗りやがって!)

 

ヤムザに怒るヘルメスその時、ミッドレイがヘルメスを蹴り飛ばした。

そのまま柱に激突し、ヘルメスは気を失った。

 

これにはヤムザも驚き目を見開いた。

 

「いやはや、すみませんなヤムザ殿。この馬鹿にはよく言い聞かせておきますので、ここは私の顔に命じてどうか許してやってくだされ。」

 

そう言って頭を下げるミッドレイ。

 

「フンッ!馬鹿な部下を持つと苦労するものよ。1度だけ許す。明日の朝には出立するので、貴様ら神官共全員速やかに準備せよ。」

 

そう言って、魔剣を納めヤムザはそのまま去っていた。

その後ろ姿をミッドレイは見届けた後、ため息を吐いてヘルメスの斬られた腕を拾って向かった。

 

意識を取り戻したヘルメス。

 

「あっああ……。」

 

「馬鹿者が、だから忠告したであろうが。」

 

「すんません……つい。」

 

「神聖魔法、傷病治癒(リカバリー)。」

 

ミッドレイは斬られた腕を断面に合わせて治癒魔法で繋げた。

 

「ふぅ………まあよい。神官団が抜けても、すぐに民も困りはせんわ。それよりもあの男………ミリム様の民を傷つけるとはな………!」

 

そう言って拳を握り締めながら、先ほどよりも頭を赤くしながら怒るミッドレイ。

 

「ミッドレイ様………。(あんたにも思いっきり蹴られましたけどね。)」

 

そう思っているヘルメスだった。

 

「いやほんとっすね。あいつ殺しちゃっていいすか?」

 

「馬鹿め!貴様では勝てぬ!」

 

「そうっすね。あの剣は厄介だし、他には何か隠してそうでしたしね…。」

 

「うむ。姑息な魔王クレイマンの腹心らしく、手の内を簡単には見せぬ様だな。男なら、全てを曝け出して勝利すべき物を!」

 

「そうっすね。」

 

ヤムザに腹を立て声を上げるミッドレイ……やがて落ち着きを取り戻すと、ヘルメスに手を差し伸べる。

 

「はぁ………出立に向けて準備するぞ。」

 

「はい。」

 

「しかし、ミリム様は何故戻って来ぬのだ。」

 

ミッドレイは夜空を見上げながらそう呟く。

 

「…まぁ、もうじきミリム様から何らかの連絡があるんじゃないすかね。」

 

「何故そう思うのだ?ヘルメス。」

 

「だって新月の晩って聞いたっすよ。三日後くらいでしょ?魔王達の宴(ワルプルギス)は……。」

 

そう言って、ヘルメスも夜空に浮かぶ三日月を見るのだった。

 

 

 




クレイマンは本当に相手が悪かった。
今までの作戦も、リムルとフォルテでなければクレイマンの筋書き通りに進んだ未来があったかもしれない。
魔王達の宴(ワルプルギス)に連れて行く者達も決まり、次は軍の準備だ!
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