転生したらフォルテだった件   作:雷影

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遂に始まったクレイマン軍との戦い。罠に嵌め一方的な状況が続く中、それぞれの戦いが始まろうとしていた。


78話 因縁の地で(前編)

紅丸達の罠に嵌り、一方的に倒されるクレイマンの軍勢。

その様子を崖から見ているフォス達。

 

「…避難民に扮した獣人族(ライカンスロープ)を囮にしてクレイマン軍の兵を誘い込み、ぬかるんだ落とし穴に嵌めて動きを封じる。そして、その落とし穴から、抜け出そうとした者を仕留めていく。」

 

「ここまで一方的な戦いになるなんて……。」

 

「クレイマン軍は、本来の力を半分も出せていないだろうな。」

 

「私達獣人族も、今後は戦い方を見直す必要がありそうです?」

 

「そうだな。我らは真正面からの勝負を好むが、戦術次第でこうも戦況が変わるとは……。」

 

フォス達はこの戦の戦況を見て、改めて戦術の必要性を理解した。

 

「俺達がクレイマン軍の立場だったらって考えると恐ろしいぜ。」

 

「この作戦を立案した紅丸様とカーネル様と哭陽(コクヨウ)様は恐ろしい方々です。魔国連邦(テンペスト)と友誼を結べて良かったです。」

 

「本当にな。味方で良かったよ。」

 

その時、フォス達獣王戦士団が戦っている場所の一角から何やら味方の声が聞こえてきた。

 

「あそこだけやけに騒がしいな。苦戦してるのか?」

 

「行ってくるです。」

 

フォスが様子を見に行くと、三人の魔人によって戦士団の仲間達が倒されていた。

 

「(獣王戦士団と互角に戦えてるです⁉︎あの魔人達、他のクレイマン軍兵士より強いです‼︎)加勢するです!」

 

フォスの言う通り、この三人は他の兵士達よりも強い。何故ならこの三人は黒妖耳長族(ダークエルフ)であり、クレイマン配下の中でも魔王カザリームの古参の配下であったアルヴァロ、

サイラス、ジョイスだった。

 

特にアルヴァロは元五本指筆頭であり、彼だけ頭から角が生えている。

 

「やられたね。優勢だと思ったらこんな罠が仕掛けられてるなんてさ。」

 

「負け戦だな。この分では前線はもっと悲惨だろう。」

 

「せめて、ここにいる者達だけでも救わねば……。」

 

その時、アルヴァロは背後から迫る気配を感じた。

フォスがアルヴァロに攻撃を仕掛けたのだ

 

迫るフォスだが、その攻撃をサイラスが防いだ。

攻撃を弾かれたフォスは後ろに跳び引き距離を取る。

 

「新手かよ⁉︎」

 

「子供だと⁉︎」

 

「(こっちに被害が出る前に叩くです‼︎)はぁ‼︎」

 

フォスは一気に決めようとアルヴァロ達に向かって突っ込む。

その時、何者かがフォスに蹴りを叩き込む。

フォスは咄嗟に両腕で蹴りを受け止め防いだ。

 

「こんな所で会うなんて奇遇ねフォス。」

 

フォスは自分を蹴った人物を見て驚き戸惑う。

 

「ステラ‼︎」

 

そう。ステラだったのだ。

 

「何で此処に⁉︎」

 

「何でって、私達竜を祀る民は仕方なくクレイマン軍に付いたのよ。卑怯者のクレイマン側に付かなきゃならないなんて、我慢できないし、そもそもクレイマンなんてどうでもいいんだけど、私この人達の事は気に入ったのよね。」

 

ヤムザによって連れて来られた竜を祀る民達。その中の一人としてステラも参加していた。そして、戦いが始まる前にアルヴァロ達と出会っていたようだ。

 

「だから、義によって助太刀する事にしたのよ!あんたがこの人達に手を出すなら……私が相手になるわ‼︎」

 

そう言ってフォスに襲い掛かるステラ

 

「本気です⁉︎ステラ‼︎」

 

「当たり前でしょうフォス‼︎」

 

ステラの拳を防ぐフォス

 

「あんたも本気出しなさいよ!つまんないじゃない。

正々堂々勝負しようじゃないの。

 

ステラのその言葉に、フォスは反応した。

 

「でなきゃその新しい装備も台無しでしょ‼︎」

 

ステラの拳が迫る!それに対しフォスも拳を繰り出し相殺する!

 

「この勝負受けて立つですっ‼︎」

 

「そうこなくちゃね‼︎」

 

こうして、フォスとステラの真剣勝負が始まった。

 

その頃、紅丸達から出撃の許可を得た三獣士の一人スフィアが技術(アーツ)飛翔走で空を翔ていた。

 

「ほう。翼もないのに空を翔るとは見事だな。」

 

スフィアの飛翔走に感心するランサー。そして、ランサーにこの場を任せガビルが助太刀する為に追いかける。

 

「フッハハハハ!助太刀いたすぞスフィア殿!」

 

「おうガビルさん。悪いな。一番ハズレくじを引く事になるかもだぜ。」

 

「構わぬ!お前達心せよう!」

 

「「「おう!」」」

 

ガビルの声に応えるカクシン、ヤシチ、スケロウ達。

 

スフィア達が向かっているのは………竜を祀る民の神官団がいた。

 

「ミッドレイ様、やばいですね。完全に負け戦ですよこれ。先手を取っていた筈が、始まってみれば後手後手………あったまた一部隊落とし穴にやられてる。」

 

ヘルメスが龍眼で状況を見渡しながらそうミッドレイに言う。

 

同じように龍眼で戦場を見ていたミッドレイは、頭に血管を浮かばせていた、

 

「弱い……弱すぎる!魔王クレイマン配下共!こんなにも弱かったのか!」

 

余りにも一方的にやられているクレイマンの軍勢を見てそう声を上げた。

その時、脳裏にヤムザに言われた事が浮かんだ。

 

  貴君らは後方で医療班として働きたまえ。

 

「デカい態度で我ら竜を祀る民を巻き込んでおきながら、とんだ無能指揮官ではないかヤムザめ…!」

 

「まぁ奴の悪口には全面的に同意したいですけどね。ヤムザが有能な指揮官だったとしてもかなり厳しいでしょう。」

 

「なにぃ?」

 

「そもそもクレイマンは、魔国連邦(テンペスト)の援軍が間に合う事を想定していなかった。相手の裏をかき、罠まで用意してた敵の作戦勝ちです。」

 

「馬鹿め!姑息な作戦など力で打ち破れば済む話ではないか!」

 

脳筋が言うような事を言うミッドレイ。

 

「個人の喧嘩や決闘ならいざ知らず、こんな集団戦ではどれだけ軍を統率出来るかが勝敗を分けるんですって!今回は、罠まで用意していた敵の作戦勝ちですって!」

 

「ふん!そんな事、何度も言われなくても、見れば誰でも分かるであろうよ。」

 

ミッドレイの言葉を聞いて、ヘルメスはやれやれとため息を吐くのであった。

 

(しかし本当に、魔国連邦(テンペスト)は一体どうやって援軍を間に合わせたんだ?考えられるのは転送魔法か転移魔法だけど、転送魔法は物質を別の場所に送れるが、有機物を送るのには向かない。人を移動させる転移魔法は、魔素による変質を防ぐ為に、対象者を結界で保護する術式を組み込む必要がある。少人数なら兎も角、軍隊のような大人数を転移させるには、とんでもない魔素(エネルギー)が必要だ。……もしそれをやったなら、やった術者がいる訳で……いや、それは流石に無いか……。)

 

ヘルメスはどうやって軍を送ったのか考えていた。…まぁ無理もない。普通なら不可能な事を、リムルとフォルテはやったのだから。

 

(まぁた小難しい事を考えおって……ん⁉︎)

 

ミッドレイは考えこむヘルメスを見ながらそう思っていると、こちらに近づく気配を察した。

 

「ふん。ワシはああいう者共の方が、余程分かりやすくて好ましい。」

 

「え?」

 

ミッドレイの言葉に、ヘルメスも接近する者達に気付いた。

 

「来るぞ……あれは強いぞ。」

 

ミッドレイ達に迫る者達……そう。スフィアとガビル達だ。

 

「気は進まんが、向かって来るなら仕方がない。…相手をしようではないか。」

 

そう言って肩を回し、手を鳴らすミッドレイ。その顔は戦士の顔となっていた。

 

「やる気満々じゃん。はぁ…了解ですよ。」

 

ヘルメスも構える!

 

そして、遂にミッドレイ達の元に辿り着いたスフィアが拳をミッドレイに向かって放った!

 

(!止められた!)

 

だがその拳をミッドレイは片手で受け止めた。そして、そのままスフィアを軽々と投げ飛ばす。

スフィアは宙で体制を立て直し着地する。

そして、ガビルがすぐにスフィアの元に駆け寄る

 

「スフィア殿!」

 

「…思った通りだ。気をつけなガビルさん。あいつら多分、敵陣営の中で最強だ。」

 

こうして、スフィアとガビルの竜を祀る民との戦いが始まった。

 

その一方、フォビオは森の中を駆けていた。自分を嵌めた者達の匂いを辿って。現在フォビオは偽装で黒豹牙の頃の姿をしている。

………自分を嵌めたあの二人と戦う間では。

 

「…………いた。ふっ!」

 

フォビオは獲物を見つけ加速する。

 

 

「おやおや。これはちょっとまずい流れですねぇ。」

 

「どうするフットマン?クレイマンに報告する?」

 

「それは無理でしょうティア。今は魔王達の宴(ワルプルギス)の真っ最中です。それに……。」

 

フットマンが振り返ると、そこにはフォビオが立っていた。

 

「私達にも少々野暮用ができてしまったようですよ?」

 

「よお。この前は世話になったな。涙目の道化(ティアドロップ)のティアに、怒った道化(アングリーピエロ)のフットマン。」

 

「おやおや?これはこれは、フォビオ様ではありませんか。」

 

「魔王に成り損なったフォビオ様!魔王ミリムに負けちゃったフォビオ様!あの時は…………あたい達の役に立ってくれて、ありがとう!」

 

ティアがあの時の事を穿り返し、フォビオを煽る。

 

「へっ。俺を覚えていてくれた様で何よりだ。理由も分からないまま殺されたんじゃ、可哀想だからな。」

 

「あれあれ〜?何を怒っているんだろう?」

 

「不思議ですねぇ。このお馬鹿さんは何を怒っているんでしょうねぇ?」

 

「何でかな?何でかな?」

 

「怒りの感情は大変に美味ですけど、我々には殺されなければならない様な理由など、ありませんねぇ。」

 

「だよねぇだよねぇ!」

 

ティアとフットマンは更にフォビオを煽る様に大声で話す。

それを聞いていたフォビオが叫ぶ。

 

「うるせぇ!確かに騙された俺は馬鹿だが、馬鹿は馬鹿らしく、落とし前をつけるのに理由なんざ要らねえんだよ‼︎」

 

「ふ〜ん。あたい達とやる気なんだ。弱い癖に、無理しちゃ駄目だよ。」

 

「ホ〜ホホホホッ!駄目ですよティア。せっかく、フォビオ様が冗談を言って笑わせてくれようとして下さってるのだから!」

 

フォビオを煽り続けるティアとフットマン。その時、フォビオが爪を伸ばし素早い動きで、二人の直前まで一気に迫った。

 

「あっ…………!」

 

「速い。」

 

フォビオがそのまま引っ掻き攻撃をするが、フットマン達はその場でジャンプして躱した。

 

躱した後、二人が身構えたその時、背後の空間が歪んで猪八戒とゲルドが現れそのまま巨大な肉切り包丁でフットマン達を攻撃する。

 

「あっ…………!」

 

「ほ?」

 

ティアとフットマンはそれに気付き、ティアは紙一重でゲルドの包丁を躱し、フットマンは白刃取りで猪八戒の肉切り包丁を受け止めた。

余りの衝撃に、フットマンの足元は陥没した。

 

「これはこれは……………。」

 

「久しいなフットマン。」

 

「俺達の事を覚えているか?」

 

「ええ。覚えていますよ。豚頭帝(オークロード)計画以来ですか?

死んだ筈の魔王ゲルドと、そちらは確か息子の豚頭将軍(オークジェネラル)でしたか。いやいや、立派になったものですねぇ‼︎」

 

フットマンはそう言って、猪八戒の包丁から力を抜いて受け流すようにフォビオの方へと投げ飛ばした。

 

投げ飛ばされた猪八戒はフォビオの隣に着地し、ゲルドもすぐさま隣で構える。

 

「そうだ。かつて豚頭帝(オークロード)としてゲルミュッドに従った者だ。そして、息子は貴様と共に大鬼族(オーガ)の里を滅ぼした。」

 

「紅丸殿達に命じられて来た。助太刀するぞフォビオ殿。」

 

「おお!助かるぜ!猪八戒さん!ゲルドさん!」

 

「…これは俺達の戦いでもある。」

 

「父王の言う通り。相手にとって不足なし!」

 

そう言いって力強く構えると、フットマンが二人に向かって口を開く。

 

「ほほっ。どうです?その後の人生は?罪の意識に苛まれ、お辛いのでは?」

 

二人の心を揺さぶる為にそう言うフットマン。……だがそれに対して猪八戒とゲルドは笑みを浮かべた。

 

「ああ……………最高だとも。」

 

「「っ⁉︎」」

 

「俺達は、リムル様とフォルテ様と出会い救われた。そして、同胞達……子供達の笑顔を見る事ができた。」

 

「それに、こうして仲間達と一緒に陰謀の裏で暗躍していた連中を屠れるのだからな!」

 

そう。猪八戒達はリムルとフォルテに救われた。そして、信じ合える仲間達と共に、今フットマンとティアに立ち向かう。

 

「その通りだ。」

 

猪八戒とゲルドの言葉にフォビオも賛同し、偽装を解除し抑えていた魔素を解放する。

 

「なっ⁉︎」

 

「嘘⁉︎」

 

フォビオの姿と放たれる魔素に、フットマンとティアは驚愕する。

 

「フォルテ様のお陰で俺もこの新たな力を授けて頂いた!」

 

フォビオがそう言って腕を真上に掲げる。フォビオの周囲に無数の暴風大妖渦(カリュブディス)の鱗が出現する。

 

「フォルテ様から授かったこの魔王の……暴風大妖渦(カリュブディス)の力をお前達にぶつける!」

 

「やはり暴風大妖渦(カリュブディス)の……!」

 

「本当にものにしたっていうの⁉︎」

 

何故暴風大妖渦(カリュブディス)の力を⁉︎しかも我が物にしているフォビオの姿にフットマンとティアは信じられずにいた。

 

「今の俺は、蒼天牙のフォビオだ!暴風之乱鱗雨(テンペストスケイル)‼︎」

 

フォビオが腕を振り下ろした瞬間、鱗が一斉にフットマンとティアに襲い掛かる。

 

 

 

スフィアとフォビオが戦闘を開始した頃、クレイマン本陣のテントでは、伝令兵が現場を伝えに駆け込む。

 

「ほ…………報告します!後方にて三獣士、白虎爪スフィアを確認…………及び、東の森にて黒豹牙フォビオを確認しました!」

 

「なっ…………三獣士だと⁉︎奴らは避難民を連れて、魔国連邦(テンペスト)に居るはずではないか!」

 

「しっしかし、現に………っ!」

 

伝令兵の報告を聞き他の兵達が驚愕する中、ヤムザは冷静に戦況を考えていた。

 

(どうする?示指のアダルマンに頼るしかないか。だが、すぐにアダルマンをこの地に呼び寄せる事など叶う筈もない。もはや、立て直しだのと言える段階ではない。)

 

ヤムザも、この戦は負け戦だと理解していた。

 

(クレイマン様が認めるのは、優秀な部下のみ。負けが確定した時点で、生きて戻れても処刑されるだけだ。運良く生き残ったとしても、精神を破壊された操り人形になどなりたくないぞ。………となれば、自分の身の安全確保が最優先。忌々しいが、この場での敗北は認めよう。…………だが、最後に勝利するのは私だよ。)

 

ヤムザは、自分がクレイマンの操り人形と化す想像(イメージ)が浮かび、自己保身の為にこの戦場から離脱する事を決めた。

 

そして、ヤムザは立ち上がり部下達に向かって口を開く。

 

「お前達、時間を稼げ。」

 

「ヤムザ様、どちらに⁉︎」

 

「私は一度、傀儡国(ジスターヴ)に戻りアダルマンを連れて来る。」

 

「アダルマン………!」

 

「あの死霊の王(ワイトキング)を………!」

 

「しかし、あの者はあの場から動けないのでは……………。」

 

「奴ならば死霊を召喚し、軍勢を立て直せる。何としても連れてこよう。私が居ない間の指揮は任せたぞ。」

 

「「「はっ!」」」

 

部下達はヤムザの命令に従う。……それが嘘とは知らずに。

 

ヤムザがテントを出ると、中から何も知らない部下達の声が聞こえる。

 

「隊列を組み直す!ヤムザ様が戻られるまで、何としても持ち堪えるのだ!」

 

(馬鹿な奴らよ。自ら忠誠を誓った私は、他の指共と違い監視されていない。行方をくらませれば、クレイマン様とて追跡は困難だろう。五本指筆頭の地位は惜しいが、命あっての物種。何処か、別の魔王に取り入って……⁉︎)

 

そう考えながら転移魔法でこの場から離脱しようとするヤムザだが発動する瞬間、魔法陣が砕け散った。

 

もう一度ど試すが結果は同じだった。

 

(転移魔法が発動しない⁉︎空間封鎖……………敵の能力(スキル)か!)

 

ヤムザは直ぐにテントに戻る!

 

「おい!近くに敵が潜んで…………っ⁉︎」

 

テントに戻ったヤムザの目に映ったのは、既に倒されている部下達の姿だった。

 

「麻痺に…………毒⁉︎それに石化だと⁉︎馬鹿な⁉︎ついさっきまで何事もなかったというのに⁉︎」

 

ヤムザは直ぐにテントから出て前方を見に行くと、………部下達を倒すアルビスの姿があった。

 

「………見張りは何をしていった!三獣士が筆頭…………黄蛇角のアルビス……………‼︎…この辺り一帯がアルビスの制圧かに。」

 

獣身化し、辺りの敵を倒し尽くしたアルビスは、ヤムザの方に振り向きゆっくりと近づいていく。

 

もはや、戦闘は避けられないと悟ったヤムザは、背の氷結魔剣(アイスブレード)を掴む。

 

「仕方ない。本気で相手をしてやるとするか。(ここを生き延びて、私は必ず返り咲く!)」

 

そう言って飛び降り氷結魔剣(アイスブレード)を抜刀。

アルビスの前に降り立つと、ヤムザはアルビスに一騎討ちを申し込む。

 

「アルビスよ。獣王カリオン配下きっての魔人。勇猛なる三獣士の貴様なら、私との一騎討ちを引き受けてくれような?」

 

「ええ。良いですわよ。魔王クレイマン配下、五本指筆頭、氷結魔剣士ヤムザ殿。貴方に格の違いを教えて差し上げますわ。それこそが、クレイマンとカリオン様の格の優劣を証明するでしょう。」

 

互いに睨み合う両者。…そして、同時に動き駆け出す。

 

「はぁぁぁぁ‼︎」

 

アルビスが錫杖で連続突きを繰り出す

 

「ぐっ…………!ぬおおおお!」

 

ヤムザはその攻撃を全て弾き、アルビスに斬り掛かる。

互いに一歩も引かない互角の戦い

 

魔剣と錫杖の鍔迫り合いとなり、周囲に火花を散らす。

 

互いに後ろに跳び引き一旦距離を取る。……すると、ヤムザが笑みを浮かべた。

 

「ふっ。」

 

それが合図となり、アルビスの背後に敵兵が出現

 

「「「「ハァァァァ!」」」」

 

そのままアルビスに奇襲を仕掛ける。

 

「馬鹿め!その様な下作が通用するか‼︎」

 

アルビスは振り返りながらエクストラスキル天蛇眼(ヘビノメ)を発動

アルビスの目が光り、敵兵全てが石化し砕け散った。

この天蛇眼(ヘビノメ)は毒、麻痺、石化など、見た者にありとあらゆる状態異常をもたらすのだ。

 

因みに、リムルとフォルテもアルビスから解析し使うことが可能であり、フォルテは紫蘭に能力授与(スキルギフト)で与えている。

無数の眼を持つ紫蘭が使えば、周囲の敵を一度に纏めて無力化できる。

 

奇襲した敵を倒したアルビス。だが、それによりヤムザから意識を離してしまい、その隙をヤムザが逃す訳がない。

 

アルビスの背後を取ったヤムザ

 

(取った!)

 

そのままアルビスに一撃を叩き込みアルビスに迫るヤムザの攻撃。

だが、その攻撃は何者かによって阻まれた。

 

「なっ⁉︎」

 

「あっ……………。」

 

「そういう卑怯な作戦は、男らしくないっすね。」

 

ヤムザとアルビスが驚く中、ヤムザの攻撃を阻んだその者は、二人の間に降り立つ。

 

「ちっ…………!何者だ⁉︎」

 

「ゴブタっすよ!こういう場合に備えて、隠れ潜んでいたっす!」

 

そう。そこに居たのは、ゴブタだった。

 

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)!」

 

ゴブタの掛け声に答える様に、アルビスの影に潜んでいた狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)達が次々と飛び出す。

 

(この上更に援軍だとぉ……しかも、なんだアイツらの姿は⁉︎)

 

ヤムザが見たのは、相棒の星狼族(スターウルフ)と下半身が一体化している人鬼族(ホブゴブリン)達の姿だった。

 

希少能力(レアスキル)同一化。相棒の星狼族(スターウルフ)と一体化する彼らの新たな力だ。

 

「あら?私にも内緒で?道理で何か変な気配を感じると思っていましたわ。」

 

「へへっ!紅丸さんから命じられていたんすよ!………っていうか、最初からオイラ達に気付いてたっすよね?」

 

「雑魚が!邪魔するな‼︎」

 

ヤムザはそう言って、氷結魔剣(アイスブレード)から魔法を放つ。

それに対して、ゴブタも小太刀から魔法を放った。

 

二人が放った魔法は拮抗し砕け散る

 

「この氷結の剣と同等の威力だと⁉︎雑魚のくせに生意気な………!」

 

自分の魔法攻撃が、ゴブタに防がれた事に驚きながらも怒るヤムザ

その時、ヤムザの背後から黒雷が放たれ迫る。

 

「なに⁉︎」

 

ヤムザは咄嗟に飛び引き回避する。ヤムザがいた場所は、黒雷によって粉砕された。

 

「ありゃ?躱されちゃったすっか。いけると思ったんすっけどね。」

 

黒雷を放ったのは、雷牙に跨る雷蔵だった。

 

「雷牙に雷蔵!来てくれたんすね!」

 

「こっちもあらかた片付いたすっからね。」

 

「故に手助けに来てやったのだ。」

 

雷牙と雷蔵が率いる雷子鬼族(ヴァジュラ)稲妻衆(イカヅチ)も加勢に現れた。

 

雷蔵が放った黒雷の威力に、ヤムザは冷や汗を流した。

 

(馬鹿な!あの攻撃を、あの雑魚に似た奴が放ったというのか⁉︎奴ら全員が同じような攻撃を使えるなら、武が悪すぎる……!)

 

雷蔵達の力に危険を感じるヤムザ。他の雷子鬼族(ヴァジュラ)達にも、フォルテが創生した弦牙狼(ギターウルフ)は相棒としてついており、こちらも同一化している。

 

「フハハハハハ!」

 

「「ん?」」

 

突然笑い声を上げるヤムザ。そんなヤムザに首を傾げるゴブタと雷蔵。

 

「一騎討ちに助っ人を潜ませるとは、三獣士も落ちたものよ!」

 

「その一騎討ちに、部下に奇襲させてる奴が何言ってるすっか?」

 

雷蔵の言葉にゴブタ達は頷き、ヤムザは雷蔵を睨む。

 

「まぁ、元々この戦いはアルビスさんの戦いなのは間違いっすからね。俺達は、これ以上邪魔が入らないように他の敵を掃討するっすかね。」

 

「それがいいすね!」

 

雷蔵の言葉に賛同するゴブタ。ぶっちゃけ、ゴブタはヤムザに勝てないこと思っていたから助かったと思っていた。

 

「あら。何なら譲って良いわよ。」

 

「いえいえ!オイラ達は周囲の敵を相手してるっすから、どうぞお好きに戦って下さいっす!邪魔して失礼したっす!」

 

「ふっ。」

 

ゴブタはそう言ってアルビスから離れ、雷蔵と共に周囲の魔人の掃討に入った。

 

アルビスは笑みを浮かべて、改めてヤムザと向かい合う。

 

 

そんな戦場を、隠蔽しながら密かに様子を見ているリーガルの液体兵とジャミングマン。………この戦場で何か仕掛ける気かもしれない。

 

 

 




アルビス達が戦うべき相手との戦闘を始める中、やはりこの戦場に潜んでいたリーガルの魔の手。
次回、戦場で更なる事態が!
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