転生したらフォルテだった件   作:雷影

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いよいよ魔王達の宴(ワルプルギス)に向かうフォルテとリムル。
そして、クレイマンの城へと向かった朱菜とアイリス。
そこで待ち受ける者は!

……魔王達の宴(ワルプルギス)の前に、フォルテがあるものを回収します。




81話 示指のアダルマン

紅丸達が、クレイマンの軍勢に対処する少し前。

電脳電子世界(スペクトルワールド)に転移していたフォルテ。

その目に映る光景は、建物が破壊され廃墟と化した世界だった。

森は吹き飛び、大地は抉れたり崩壊していた。

 

この世界は、フォルテがある賞牌人形(メダロット)を解き放った無人の世界だった。

 

フォルテが破壊された世界を進んで行くと、この世界に放った賞牌人形(メダロット)を見つけた。

 

黒と赤の厚い装甲の恐竜型。その体は帯電し関節分などから火花が上がっていた。

 

(…やはり。賞牌人形(メダロット)の身体では保たなかったようだな。)

 

フォルテはその恐竜型に近づくと、それに気付いた恐竜型がギギギッ!と鈍い音を響かせながらフォルテの方へ首を向けた。

 

その姿は、破滅の魔獣と呼ばれる機械生命体ゾイドであるデスザウラーそのものだった。

 

この賞牌人形(メダロット)に入れたメダルは、超越神デューオから得た情報(データ)から復元したオリジナルデスザウラーのゾイドコアに宿る意思をメダルに宿した物。そして、その身体である賞牌人形(メダロット)は、デスザウラー自身の身体を基本(ベース)して作り出されたDザウラー・Sだ。

メダロットのアプリゲームでのゾイドコラボで実際にあった姿で、…まぁ側から見たら、小さくなったデスザウラーそのものなのだが。

 

内骨格(ティンペット)や装甲は賞牌人形(メダロット)だが、フォルテが高純度の魔鋼で創造した特別製。機能や武装はデスザウラーその物となっていた。

 

「思う存分暴れたようだが、……やはりその身体ではお前の力に耐え切れなかったようだな。」

 

如何に高純度の魔鋼で作った特別製であっても、惑星を滅ぼせるほどの力を持ったデスザウラーのメダルから供給されるエネルギーには耐え切れなかったようだ。

 

「……フォルテか。」

 

デスザウラーがフォルテの名を呼んだ。本来なら喋るどころか、本能のまま破壊の限りを尽くす魔獣であったデスザウラーがこうして話せるのは賞牌人形(メダロット)の身体のお陰でもあるが、フォルテのスキルである破滅魔獣(デスザウラー)によって、精神リンク出来ているからでもあった。

 

「どうだ?思う存分、本能のままに暴れ回り破壊のかぎりを尽くして満足できたか。」

 

フォルテの問いに、デスザウラーはグルルと軽く唸った。

 

「…ああ。仮初の身体であっても、我の意思で思うがままに破壊の限りを尽くせたのだからな。」

 

「それは良かった。なら一旦俺の中に戻ってくれるか。その賞牌人形(メダロット)の修復をしなければならないからな。」

 

「…分かった。」

 

デスザウラーは、背中の装甲を開放し、嵌め込まれたメダルをフォルテに見せる。

フォルテは近づきメダルに触れる。

 

「…お前の本来の(ボディ)も必ず復元する。」

 

「……信じて待っている。」

 

フォルテはメダルを抜き取り、デスザウラーのメダルはフォルテのエンブレムに納まった。

 

フォルテの得た究極能力(アルティメットスキル)である破滅魔獣(デスザウラー)。それを得る際、フォルテはデスザウラーのゾイドコアを情報(データ)化して吸収していた。つまり、フォルテはデスザウラーと一体化しているのだ。

アニメのプロイツェンやヒルツと違い、主導権は完全にフォルテが握っており、デスザウラーを従えている。

デスザウラーの自身も、吸収される際にフォルテの巨大な力に感じ取り従うことを選んだ。何より、デスザウラーの悪意に呑み込まれないフォルテの姿を見たデスザウラーは、フォルテこそが自分の主に相応しいと認めたのだ。

明確な知能と自我を持つデスザウラーだからこそ、フォルテの持つ力を理解でき、それだけの力を持ちながら破壊衝動や欲望のままに暴れないフォルテの心の強さと優しさも理解出来た。

 

そして、スキルを通してフォルテと対話し従う事を伝えたのだ。

フォルテ自身も驚いていたが、デスザウラーの心とリンクしていたので嘘ではないと知り受け入れた。

それで、デスザウラーの為に仮初の身体としてDザウラー・Sを用意し、この無人の世界で破壊衝動を解放していたのだ。

思う存分暴れられれば、デスザウラーも満足してよりフォルテに従うようになると考えたからだ。

 

その考えは正しく。デスザウラーは仮初であっても身体を与えて自由に暴れさせてくれたフォルテにより強い忠誠を誓っていた。

 

こうして、Dザウラー・Sも回収したフォルテは魔国連邦(テンペスト)に戻った。

 

 

 

 

その後、リムル達がいる議事堂の執務室へと向かい扉を開けると、漆黒の服装を身に纏うリムルと、新たな巫女服に千早を羽織った朱菜が立っていた。

 

「まあ、良くお似合いです!リムル様!」

 

「はい!とても素敵です!」

 

「その凛々しきお姿、我が主人に相応しい!」

 

「実に素晴らしい姿です。リムル様。」

 

リムルの新たな服装に、紫苑は目を輝かせながら何度も頷き、嵐牙は尻尾高速で振りながら褒めていた。

ゴスペルも落ち着きながらリムルの新たな服装に感動していた。

 

「そっ……そうか?」

 

リムルも満更ではないようで、頭に手を置きながら照れていた。

 

「朱菜様も、とても良くお似合いです!」

 

「おっ…ありがとう。」

 

「確かに。二人共によく似合っている。リムルもいつもと違って引き締まって見えるな。」

 

フォルテの声に皆はフォルテの方へと振り向く。

 

「お帰りフォルテ君。」

 

「フォルテ。用事は済んだのか?」

 

「ああ。」

 

「フォルテ。」

 

アイリスがフォルテに駆け寄る。

 

「…気を付けてね。」

 

「アイリスも無理はするな。…ん?アイリスも服装を変えたのか。」

 

「あっ…うん。」

 

アイリスは、いつもの牡丹色の服の袖丈とスカートに美しい蝶の刺繍が施されていた。

 

「良く似合っているよアイリス。アイリスの可愛さが惹き立つデザインだな。」

 

「……ありがとう。」

 

フォルテにそう言われ、頬を赤くしながらほくそ笑むアイリス。

 

その様子をじっと見ているリムル。

 

「…うん?どうしたリムル?」

 

「いや…なんでもない。(相変わらず無自覚だな。)」

 

その後、改めて気を引き締める朱菜とアイリス。

 

「それでは、私達も行って参ります。」

 

「「うん。」」

 

リムルとフォルテは頷く。

 

「朱菜様!アイリス!クレイマンの手下の奴らをボコボコにしてきてやってください!」

 

「我らの分まで!」

 

紫苑はそう言いながら、シャドーボクシングのようにその場でジャブを繰り出しながらアッパーを繰り出す!

嵐牙は変わらず尻尾を高速で振り続ける。

 

「はい。」

 

「うん。」

 

それに答えるように朱菜とアイリスは笑みを浮かべる。

 

「気をつけてな。」

 

「無茶だけはするなよ。」

 

「はい。リムル様とフォルテ様も。」

 

「行ってきます。」

 

朱菜とアイリスはそう言って、クレイマンの城へと向かう為転移して行った。

 

こうして、今執務室に残っているのはリムル、フォルテ、紫苑、嵐牙、ゴスペル、シズさん、ウルティマ、

トレイニーさん、トライア、ベレッタ、スペル。フォルテとリムルを守るように立つグレイガとファルザー。それと、漫画を読み続けるラミリスとヴェルドラ。

そんなヴェルドラを見ているアゲンストとヴェルキオン。

 

(もうすぐ魔王達の宴(ワルプルギス)への迎えが来るのに緊張感が無いな。)

 

フォルテがそう思っていると、同じ事を思っていたリムルがヴェルドラ達にある事を問いかける。

 

「なあ、魔王って十人居るんだよな?ミリムにラミリス、レオン、カリオン、フレイ、クレイマン。後四人はどんな奴なんだ?」

 

確かに、残りの魔王が誰か気になるな。だがリムル。そのうちの一人は一緒にミリムから聞いていただろうに。ミリムとラミリスと同じ最古の魔王の事を…。……後、もう一人は俺は知っているかもしれない。

 

「我は小物には興味が無いのだ。が、二千年程前に吸血鬼(ヴァンパイア)の女魔王と戦った事があるな。」

 

ヴェルドラの言葉にフォルテとウルティマが反応した。

 

「女魔王?」

 

「洒落の分からん奴だったぞ。奴らの都を燃やしたらマジギレしてな。まあ、良い遊び相手になってくれたものよ。」

 

「そりゃ誰だって怒るだろうよ。」

 

「リムルの言う通りだ。」

 

リムルとフォルテの言葉に、ヴェルドラの複製と呼べるアゲンスト、ヴェルキオンも頷いた。

 

「今の我らなら分かる。都を跡形も無く消されたあの女魔王の怒りが…。」

 

「フォルテの中で学んで知った。あれだけの美しい都を創り出し、維持する苦労の大変さが…。」

 

フォルテの中で学習した二人はもの凄く反省していだ。

 

「……一応会う事があったら謝罪するようにな。」

 

「うむ。」

 

「そのつもりで考えている。」

 

「うぐッ…まあ、我も今ではちょっぴりだが悪かったかなーとは思っておるぞ。」

 

「ちょぴりでなくもっと反省しろ。」

 

「名は確か、ル…ルース?いやミリスだっか?」

 

名前を思い出せないヴェルドラ。そんなヴェルドラが思い出そうとしている名の特徴を聞いてフォルテはウルティマを見ると、ウルティマはそれに頷いて答えた。

 

「それって、ルミナス・バレンタインじゃないのか?」

 

「おお⁉︎そうだ!その名だ!」

 

やっぱりか…。

 

「フォルテ?なんでフォルテがその魔王の名を知っているんだよ。」

 

リムルが疑問に思うのは当然だった。

 

「…魔王達の宴(ワルプルギス)が終わった後に話す。」

 

フォルテがそう言う中、ウルティマは苦笑いを浮かべていた。まさかコリウス王国でその魔王がいたなんてリムルも思わなかっただろう。

 

「その国なら、千五百年前ぐらいからロイ・ヴァレンタインって男が魔王になってるよ。」

 

「なに?そうなのか。」

 

「代替わりしたってことか?」

 

ん?じゃあコリウス王国で見たルミナスは魔王の座から降りたのか?後でウルティマに確認してみるか。

 

「おおっ!」

 

「どうした⁉︎」

 

フォルテが考えていると、突如ヴェルドラが声を上げた。

 

「ここで真なる敵が現れるとは〜、次号への見事な引である。」

 

漫画の展開に感心していただけだった。

 

「真面目にやれよ!ネタバレすっぞ!」

 

「いっそ全て暴露しようかリムル。」

 

「そうカリカリするでない。後は巨人族(ジャイアント)の魔王ダグリュールだな。何度か喧嘩したが勝負がついておらぬ。」

 

「ヴォルドラが名前を覚えているくらいだからそうと強そうだな。」

 

「いや。ヴェルドラと戦って決着がついていないのだから間違いなく強いだろう。」

 

「いや。今なら我が勝つがな。」

 

すると、漫画を読んでいたラミリスがヴェルドラに問いかける。

 

「そういえば、師匠ってギィとは戦った事ないの?」

 

「む?悪魔族(デーモン)の魔王ギィ・クリムゾンか………うむ。奴は遥か北方に居を構えておるしな。まぁあんな何も無い所には行く必要もないのだ!」

 

ヴォルドラはそう言ってはいるが、……冷や汗を流しているのが見て分かる。

これは何か誤魔化しているな。悪魔の魔王ギィ・クリムゾンはウルティマとディアブロと同じ原初の悪魔の一人(ルージュ)であるのはウルティマから聞いてはいるが……。

 

フォルテは気になりアゲンスト達を見る。フォルテの視線に、アゲンストとヴェルキオンは口を開いた。

 

「…魔王ギィの元には姉上がいるのだ。」

 

「ちょ⁉︎」

 

「姉上ってことはヴェルドラと同じ竜種だな。」

 

「その通り。」

 

「白氷竜ヴェルザード、氷の女帝の異名を持つ姉上だ。」

 

「そうなのか。」

 

「じゃあ、ヴェルドラがギィのところに行かないのはお姉さんがいるからなのか?」

 

「何故に?」

 

リムルとフォルテが首を傾げると、ヴェルドラは体を縮めて震えていた。

 

「……なぁアゲンスト。その姉と何かあったのか?」

 

フォルテの疑問に、アゲンストも冷や汗を流しながら口を開いた。

 

「…姉上には何度も叩きのめされて、何度も消されたのだ。」

 

「えっ?」

 

「マジで?」

 

「その記憶は今も我らに刻まれておるのだ。」

 

「成る程…だからヴェルドラが北方に行かない訳だ。」

 

「トラウマになっているんだな。」

 

リムルとフォルテは少しヴェルドラに同情するのだった。

 

「師匠も大変だったんだね。後、二人が知らないのはディーノちゃんだね。寝てばっかりの、私以上にサボるのが好きな魔王だよ。」

 

「ラミリスの同類がいるのか。」

 

「なっ⁉︎同類言うな!」

 

リムルにそう言われて頬を膨らませて拗ねるラミリスだった。

 

「これで十人の魔王の名が分かったな。……ん?」

 

「あっ。」

 

丁度その時だった。執務室にある気配を感じ取ったのは。

 

「時間のようですね。」

 

「お迎えが来たね。」

 

執務室にかなり凝ったデザインの扉が出現した。

 

「相変わらず仰々しいねぇ。」

 

「空間を繋げる扉か。凝ってるな。」

 

「誰か来るぞ。」

 

フォルテがそう言うと、扉が開き中から緑髪のメイドが現れた。

 

「お迎えに参りました。ラミリス様。」

 

この気配…ウルティマと同じ原初の悪魔のようだ。

 

すると、ラミリスが緑髪のメイドに話しかける。

 

「久しぶりじゃんミザリー!相方のレインは元気?」

 

「お陰様で変わりありません。」

 

そうかミザリーと言うのかあのメイド。髪の色からして、原初の(ヴェール)だと分かる。

 

今度はウルティマがミザリーに話しかける。

 

「僕からも久しぶりだねミザリー。」

 

ウルティマを見たミザリーは目を見開く。

 

(ヴィオレ)…何故貴女が此処に。」

 

ミザリーの言葉に、ウルティマは口からチッチと鳴らしながら人差し指を振るった。

 

「今の僕はウルティマだよ。」

 

ウルティマの言葉にミザリーは更に驚いた。

 

「まさか…貴方に名を与えた者が。」

 

「そうだよ。僕の主人(マスター)であるフォルテ様からね。」

 

そう言って、ウルティマがフォルテの方に顔を向けると、ミザリーも釣られて顔を向ける。

 

「なるほど。………そちらがフォルテ様とリムル様ですね。」

 

「ああ。」

 

「おう。」

 

「我が主、ギィ様より御連れするよう仰せつかりました。どうぞこちらの門を通り、魔王達の宴(ワルプルギス)……その会場へお進みください。」

 

「じゃあ行くよ。ベレッタ、トレイニーちゃん。」

 

「はい。ラミリス様。」

 

「お供致します。」

 

「ラミリス様。お気をつけて。」

 

「ベレッタ。ラミリス様の事、たのみましたよ。」

 

トレイニーさんとベレッタを連れてラミリスは門の中へと入って行った。

トライアとスペルは今回はお留守番となったようだ。

 

……フォルテは門を見ていた。

 

(この先に全ての魔王が集結している。……だが俺も真なる魔王となった。覚悟はできている。寧ろ、どんな凄い魔王達がいるのか楽しみになってきた。)

 

フォルテはほくそ笑みながらそう思った。

そして、リムルと目を合わせ互いに頷き合う。

 

「行くぞ。」

 

「「はい!」」

 

「シズさん。ウルティマ。俺達も行こう。」

 

「うん。」

 

「行こうフォルテ様。」

 

リムルとフォルテは紫苑、嵐牙、シズさん、ウルティマを引き連れ門の中へと入って行く。それを見守るトライアが口を開いた。

 

「リムル様。フォルテ様。それに皆様もどうぞお気を付けて。」

 

「何かあったら、すぐに我らを呼ぶのだぞ。」

 

ヴェルドラの声に応えて、リムルとフォルテは片腕を上げて手を振った。

 

最後にミザリーが門の中へと入って行き、扉が閉じられるのだった。

 

 

 

 

 

リムルとフォルテが魔王達の宴(ワルプルギス)に向かった頃。

傀儡国ジスターヴ。クレイマン領の領内にて、朱菜達は深い霧の中を彷徨っていた。

 

「…不味いな。ワシの魔力感知が妨害されておる。」

 

「ええ。この霧は視界を制限するだけでなく、魔素の流れを乱し阻害します。」

 

「思念伝達や空間移動も使えないようにしているようだな。」

 

「加えてこの霧が敵の制御下にあるとすれば、奴らが中の獲物を把握するのは容易い。」

 

「この霧で拙者達の情報を得ていると言うことだな。」

 

「無駄かもしれませんが、なるべく気配を抑えて進みましょう。」

 

「なるほどのう。拠点の防衛として上手くできておる。」

 

流石に敵の本拠地だけはあり、油断ならない防衛策が施されていることに、より警戒を強める蒼影、白老、シャドーマン。

 

「朱菜様。俺から離れませんよう。」

 

「アイリスも、拙者から離れないようにしておくのだ。」

 

「ええ。ありがとう蒼影。」

 

「うん。分かったわシャドーマン。」

 

朱菜とアイリスは笑顔を見せる。そして、二人の気配が消えている事に蒼影達は気付いた。

 

(完璧に気配を消しておられる。)

 

(アイリスも見事に気配を消している。)

 

「幻覚魔法と妖術の組み合わせですな。お見事ですじゃ朱菜様。アイリス。」

 

「私達には、二人のような気配を断つ技術(アーツ)はありませんから。」

 

「私は、朱菜から色々教えて貰えっただけなので。」

 

二人がリムルとフォルテの魔王への進化の祝福(ギフト)で新たなスキルを得ている。

朱菜が得たのは、ユニークスキル創作者(ウミダスモノ)。独自の魔法技術を創造する能力だ。

アイリスが得たユニークスキルは学習者(マナブモノ)

その名の通りあらゆる事を学ぶ事で瞬時に学習し、一度でも学んだ事をすぐさま覚えられる。

 

アイリスはこのスキルを得た後、ミュウランから補助魔法を教わり、この戦いに備えて朱菜から魔法と妖術を、

ウルティマから暗黒魔法と元素魔法を学べるだけ学んだのだ。

 

霧の中を彷徨いながらも進んで行く朱菜達。

そんな中、蒼影とシャドーマンはある違和感を感じていた。

 

(…妙だ。敵の気配がまるで感じられない。)

 

(いかに霧が有用であろうと、拠点防衛に人員を割かない筈は無いのだがな。)

 

すると、朱菜とアイリスが何かに気付いた。

 

「朱菜これは…。」

 

「ええ。どうやら私達は、罠に嵌められたようです。」

 

「罠ですと?」

 

「敵の気配はまだ感じ……何⁉︎」

 

霧の中から突如、朱菜達の囲む様にゾンビやスケルトンなどの無数の不死系魔物(アンデッド)が現れた。

 

「なんと…濃霧とはいえ、この広大な荒地でこれだけの数、気配を悟らせずに一体何処に隠れておったのじゃ。」

 

「多分この霧が、空間干渉を引き起こしていると思う。」

 

「アイリスの言う通りです。敵が隠れ潜んでいたのではなく、私達が誘き寄せられたのです。包囲陣の中心へ…!

 

朱菜達の周囲は、数え切れない不死系魔物(アンデッド)に取り囲まれていた。

 

「(魔力感知が利かん以上、兵力の把握は困難だ。しかし、数が多いだけならば。)朱菜様。俺とシャドーマンが突破口を開きます。その隙にアイリスと白老様と……。」

 

「いいえ蒼影。どうやら、そう甘い相手では無いようです。」

 

「うん。」

 

朱菜とアイリスは気付いていた。不死系魔物(アンデッド)の軍勢の中、ひときわ強い存在感を放つ存在に。

 

不死系魔物(アンデッド)の軍勢の中、王冠を被り司祭が羽織る聖職衣である白亜の法衣に身を包んだ骸骨が現れた。

その者から感じる魔力は凄まじいものである。

 

「なんて膨大な魔力なの…。」

 

「そうか。御主が…。」

 

「クレイマンの配下…特に五本指についてはミュウランから伺っています。数多の不死系魔物(アンデッド)を従える拠点の防衛に優れた者。この禍々しく巨大な力…もう間違いありません。」

 

死霊の王(ワイトキング)、示指のアダルマン…!」

 

そうこの骸骨こそ、五本指の一人示指のアダルマン。

 

「如何にも。余がアダルマンである。数多の不死系魔物(アンデッド)を従える死霊の王(ワイトキング)。偉大なる魔王クレイマン様にお仕えするこの地の守護を命じられた者。下賤なる侵入者よ。大人しくその命を差し出すが良い。」

 

アダルマンがそう言う中、朱菜とアイリスは冷静に周囲の状況を確認していた。

 

「完全に囲まれているみたい。」

 

「ええ。空間転移による脱出も不可能。この場を切り抜けるには、アダルマンを倒すしかありません。」

 

「ならば、速やかに!」

 

「異論はない。俺の一撃は、死者すらも殺す。」

 

「拙者の一撃もだ。」

 

駆け出す白老、そしてその場から消える蒼影とシャドーマン。

 

「フッハハハ。身の程を知らぬ者達よ。愚かな事だな!」

 

アダルマンがそう声を上げる中、天空眼を開眼した白老の刃がアダルマンに届く直前に何者かが割って入り白老の刃を防いだ。

 

「………ほう。ワシの動きを読むとは、腐肉となったその肉体で未だ剣士であり続けるか。」

 

白老の攻撃を防いだのは、死霊騎士(デスナイト)だった。

白老はそのまま死霊騎士(デスナイト)と応戦する。

 

その隙に、蒼影とシャドーマンがアダルマンの背後から仕掛けるが、腐敗した二頭の竜が突如襲い掛かって来た。

 

咄嗟に紙一重で躱した蒼影とシャドーマン。

 

「龍だと⁉︎」

 

「まさか、腐肉竜(ドラゴンゾンビ)か。」

 

「その様な甘い相手ではありません!死せる魔物の頂点、死霊竜(デス・ドラゴン)です!」

 

朱菜がそう叫ぶと、二体の死霊竜(デス・ドラゴン)が咆哮を轟かす。

 

「死せる魔物……。」

 

「ならば、死ね。」

 

そう言って、蒼影とシャドーマンは死霊竜(デス・ドラゴン)に向かって跳躍!そのまま手から無数の糸を放った。

 

「「操糸万妖斬(そうしばんようざん)」」

 

二人が放った糸が、死霊竜(デス・ドラゴン)を絡め取りそのまま一気に締め上げながら切り刻んだ

 

「……やった。」

 

細切れとなった死霊竜(デス・ドラゴン)を見て蒼影がそう呟くが、細切れとなって崩れた死霊竜(デス・ドラゴン)はその場ですぐさま再生していく。

 

「何?(馬鹿な。一撃必殺が付与された攻撃だぞ⁉︎)」

 

再生を始める死霊竜(デス・ドラゴン)に驚くシャドーマン。

 

「………なるほど。死には耐性があるという事か。では肉体だけではなく、その魂ごと滅してみせよう。」

 

「蒼影、落ち着きなさい。冷静な貴方なら見抜ける筈です。」

 

朱菜にそう言われアダルマンを見る蒼影。

 

「………アダルマン。あの死霊の王(ワイトキング)のですね。」

 

「ええ。」

 

そう。二体の死霊竜(デス・ドラゴン)の魂は、アダルマンの中にあるのだ。

 

(拙者達で死霊竜(デス・ドラゴン)二体と周りのゾンビ共から朱菜とアイリスを守りつつアダルマンを倒す。)

 

(さて、どう組み立てるか……。)

 

シャドーマンと蒼影は、朱菜達を守りながらどうアダルマンを倒すか考える。

そんな二人に、アイリスが口を開いた。

 

「蒼影さんとシャドーマン。私達を守ろうとしなくていいの。」

 

「アイリスの言う通りです。貴方達はその竜の足止めに専念しなさい。」

 

「しかし……!」

 

「大丈夫です。」

 

「私達を信じて。」

 

朱菜とアイリスの笑顔を見た蒼影とシャドーマンは、笑顔の奥にある二人の強い決意を感じ取った。

 

「(………そうだ。大鬼族(オーガ)の里より落ち延び、リムル様とフォルテ様と出会ったあの日から、朱菜様は守られるだけの姫ではなくなった。)御意。ご武運を。朱菜様。」

 

「(……そうであったな。アイリスは、ずっとフォルテ様の力になるべく、朱菜から魔法、妖術など学べることは全て学んでいた。今のアイリスならば問題ないだろ。)承知した。アダルマンは任せる。アイリス。」

 

「貴方達もね。その竜達は任せましたよ。」

 

「ありがとう。」

 

朱菜とアイリスを信じて、蒼影とシャドーマンは目の前の死霊竜(デス・ドラゴン)に立ち向かう。

白老は死霊騎士(デスナイト)と激しい攻防を繰り広げる。

 

そして、朱菜とアイリスはアダルマンの方へと歩み出す。

 

「私達はね、怒っているのです。」

 

「異世界人の振る舞い、ファルムスの侵攻。それらを仕組んだクレイマンに…。」

 

「物見遊山をしに此処へ来たのではありません。」

 

「ほぉう。どうするつもりだねお嬢さん方?護衛に頼らず、君達に何が出来るというのだね。」

 

アダルマンはそう言って合図を送ると、不死系魔物(アンデッド)達が一斉に朱菜とアイリスに襲い掛かる。

 

「心配無用ですわ。」

 

「私達だからできることがある。」

 

朱菜とアイリスが同時に両腕を広げる

 

「「対魔属性結界(アライメントフィールド)‼︎」」

 

朱菜とアイリスを中心に薄桃色の光が円形に広がる。そして、光に触れたアダルマンを除く不死系魔物(アンデッド)達は一瞬で消滅した。

 

そして、二人を起点とした巨大な結界が張られた。

 

「ほう。魔法不能領域(アンチマジックエリア)聖浄化結界(ホーリーフィールド)の融合といったところか。なるほど。じつに美しい魔法の構成よな。一定レベルに満たない不死系魔物(アンデッド)が立ち入れば、その身はたちまち崩れよう。」

 

アダルマンは、二人が張った結界を冷静に分析した。

 

「これで他の不死系魔物(アンデッド)はこの結界に入ってこれない。」

 

「私達が貴方を倒せば、貴方を核としているこの辺り一帯の防衛機構も破壊できますね。」

 

「ほう見事だ。それに余の秘密を見抜くとはな。娘達よ名は?」

 

「朱菜と申しますわ。」

 

「私はアイリス。」

 

「朱菜とアイリス…朱菜殿とアイリス殿か。では尋常に勝負と行こうか。もしも余に勝てたなら、貴女達の望みに従おう。」

 

「その申し出はありがたいけど…。」

 

「私達は、ただ魔王クレイマンの滅びを望むのみ。邪魔しないと言うならば、この地での生存は認めて差し上げますわ。」

 

「フッフフハハハ。それが叶わぬのはご存知だと思うが?」

 

「そうですか。貴方ならその呪縛にうち勝てると思いましたが、私の思い違いなのですね。」

 

「…呪縛にうち勝てるものなら、とうにやっておるわ。簡単に言ってくれるものよな。」

 

「それじゃあ…予定通り、貴方を倒す。」

 

アイリスが覚悟を決めた瞳でアダルマンを見る

それに答えるようにアダルマンは妖気(オーラ)を解放する。

 

「力の限り、余に抗ってみるがいい!」

 

朱菜とアイリスによるアダルマンとの戦いが始まった。

先手を打ったのはアダルマン

 

「全てを溶かし、侵食せよ!侵蝕魔酸弾(アシッドシェル)!」

 

詠唱と共に無数の魔法陣が展開され、魔法陣から酸弾か朱菜とアイリスに向かって撃ち出される。

 

幻炎の防壁(フレイムウォール)!」

 

夢之闘気(ドリームオーラ)!」

 

朱菜の蒼炎の防壁で身を包み、アイリスは以前にフォルテから貰ったチップから得た夢之闘気(ドリームオーラ)を展開し、アダルマンの酸弾を防いだ。

 

「やるではないか。ならば、これはどうだ!怨念の亡者共よ、生贄を捧げよう!呪怨束縛(カースバインド)‼︎」

 

アダルマンの指先から、猪八戒とゲルドの混沌喰い(カオスイーター)に似た無数の亡者の怨念が襲い掛かる。

 

迫る怨念に、朱菜とアイリスは慌てる事なく、両手を組んで祈るように魔法を発動する。

 

「「聖なる福音(ホーリーベル)。」」

 

二人か魔法を発動した瞬間、上空に神殿と大量の鐘の幻影が現れ、荘厳な鐘の音が周囲に響き渡る。

その鐘の音により、アダルマンが放った魔法の怨念は成仏するかのように消滅した。

 

その光景に、アダルマンは後退りながら驚いた。朱菜とアイリスが使った魔法を見て信じられないと言わんばかりに。

 

「……馬鹿な。神の奇跡だと⁉︎何故だ!何故魔に属する者が神聖魔法を操れるのだ⁉︎それは神への信仰心がなければ操る事の出来ぬもののはず…!」

 

驚くアダルマンに向かって、朱菜とアイリスが口を開いた。

 

「不思議ですか。それは貴方の頭が固いだけです。」

 

「神聖魔法は、人間にのみ許された魔法じゃないの。」

 

「奇跡を信じ、願う者ならば誰にでもその思いの強さに応えてくれるのです。その対象はなにも聖なる存在である必要はありません。」

 

「善も悪もない。使う人の思いの強さこそが力へと変わるの。」

 

朱菜とアイリスの言葉に衝撃を受けるアダルマン

 

「なん…だとぉ…。(有り得ない…!余は…私は間違っていたのか⁉︎ルミナス教の最高指導者達に嵌めれ、死地に追いやられた時、神ルミナスは救いの手を差し伸べてはくれなかった。更にこの様な姿に成り果ててしまった。私は神への信仰を失った。だから二度と、神聖魔法を扱えぬと思っていたのに。…そうではないと言うのか……。)」

 

アダルマンは、今まで自分はもう神聖魔法が使えないと思ってきたが、違うと知りショックを受けた。

そんなアダルマンだが、朱菜とアイリスに問いかける。

 

「何故だ。何故私が神聖魔法の使い手だと思った。」

 

その問いに朱菜とアイリスは答える。

 

「…その姿です。」

 

「貴方が着ているのは、高位の司祭級以上の人しか羽織れない純白の聖職衣だよね。」

 

「アアア…。」

 

「それを着る資格のある高位術者でありながら、この程度の呪縛にもうち勝てぬと嘆く軟弱者。」

 

「ングゥ!」

 

「神聖魔法への未練だけでその衣を纏うなど、警戒する必要もなかったようですね。」

 

朱菜らしくない相手を挑発するような言い方。だが、その言葉でアダルマンは目を覚ました。

 

「言わせておけば、好き勝手な事を!」

 

アダルマンはそう声を上げると、祈る様に手を合わせ詠唱を始める。

 

「神へ祈りを捧げ奉る。我は望み、精霊の御力を欲する。」

 

アダルマンの詠唱に答えるように、朱菜とアイリスの足元に魔法陣が展開される。

 

「我が願い、聞き届け給え。」

 

更に二人の頭上に魔法陣が次々と登るように展開されていく。

この神聖魔法は、ヒナタがリムルとフォルテの分身体を葬った最強の神聖魔法である霊子崩壊(ディスインテグレーション)だ。

 

詠唱しながらアダルマンは自分の覚悟の弱さを嘆いた。

 

(腹立たしい。この娘達がではない。そうだ、私には覚悟が足りなかった。私を慕ってくれた仲間達が不死系魔物(アンデッド)と化した事で、彼らを残して逝く事が出来ないと。甘かったのだ!本気で奇跡を請い願うならば!朱菜とアイリスという娘達に恨みはない。それどころか、私の目を覚ましてくれた恩義すらも感じる。だが私は、私を此処に縛りつけた男、魔王カザリームの呪いにより自殺が出来ぬのだ!すまぬな、朱菜殿、アイリス殿。道連れにさせて貰うぞ。)

 

アダルマンは朱菜とアイリス諸共、自身も霊子崩壊(ディスインテグレーション)で滅びるつもりだ。

 

「(せめて苦しまぬように一瞬で…。)万物よ尽きよ!霊子崩壊(ディスインテグレーション)‼︎

 

「それを…!」

 

「待っていました!」

 

「ぬっ⁉︎」

 

「「霊子暴走(オーバードライブ)‼︎」」

 

アダルマンの霊子崩壊(ディスインテグレーション)が放たれるその瞬間、

アダルマンの霊子崩壊(ディスインテグレーション)の魔法陣が別の魔法へと書き換えらていく。

 

「なっ………何ぃい⁉︎(まさか…構築した魔法が組み換えられている⁉︎)私の十分の一にも満たぬ魔素量しかない貴女達が私の魔法を上書きしただと⁉︎」

 

「貴方なら、私達以上に聖なるエネルギーを集める事が出来ると思っていたよ。」

 

「見事でした。覚悟を見せて頂いたお礼に、この地から解き放って差し上げましょう。」

 

「おお…!」

 

アダルマンは二人の姿に見入った。そして、朱菜とアイリスを中心に聖なる浄化の力が放出される。

その光に、アダルマンは勿論。死霊騎士(デスナイト)死霊竜(デス・ドラゴン)達、そして不死系魔物(アンデッド)の軍勢も包まれる。

そして、ジスターヴ全域が聖なる光に包まれた。

 

光が収まると霧は晴れ、不死系魔物(アンデッド)達は消えていき、死霊騎士(デスナイト)死霊竜(デス・ドラゴン)は完全に沈黙。

アダルマンもその場で倒れ、頭から外れた王冠が砕けった。

 

朱菜とアイリスは勝利したのだ。

 

「終わったね朱菜。」

 

「ええ。」

 

「お見事です。朱菜様。」

 

「アイリスも見事だった。」

 

朱菜とアイリスの元に蒼影とシャドーマンがすぐに現れる。

それと同時に、白老もゆっくりと歩み寄る。

 

「いやはや、死霊騎士(デスナイト)は思った以上に凄腕でしたわい。朱菜様とアイリスに助けられましたな。」

 

「ううん。白老さんがいて助かりました。」

 

「アイリスの言う通りです。それに蒼影とシャドーマンも、あの死霊竜(デス・ドラゴン)を相手に良くぞ時間を稼いで下さいました。」

 

「いいえ。倒せなかった事を恥じるばかりです。」

 

「拙者もだ。」

 

「「「「「……はぁ。」」」」」

 

次の瞬間、皆が同時に息を吐いた。

 

「私は、自分の怒りのままに、少々無茶をし過ぎたようです。アイリスが補佐してくれたのが助かりました。」

 

「私も、まだ自分の力が足りない事をこの戦いで実感した。朱菜がいたから私も最後まで戦えた。」

 

「左様ですな。ワシらは強くなった事で、自惚れておったようですじゃ。」

 

「リムル様とフォルテ様が心配なされた通り、戦場ではないが起こるか分からない。俺達がもっと情報を集めておくべきでした。」

 

「蒼影の言う通り。拙者もより多くの情報を集めておくべきだった。」

 

「「「「「……はぁ。」」」」」

 

再び溜め息を吐く朱菜達。

 

「では、……クレイマンの城を制圧するとしましょう。」

 

そう言って、朱菜達は霧が晴れ姿を露わにしたクレイマンの城を見据える。

その時だった。

 

「お待ち下さい。」

 

聞き覚えのある声が背後から聞こえ皆が振り返ると、なんとアダルマンが立っていた。

 

「んっ!生きておったか⁉︎止めが必要か!」

 

アダルマンを見てすぐさま構える白老達だがそれを、朱菜とアイリスが止める。

 

「待って白老さん。」

 

「アイリスの言う通りです。その方には、もう戦う意思はないようです。」

 

アダルマンの側に集まる死霊騎士(デスナイト)死霊竜(デス・ドラゴン)二体そして、消滅したはずの不死系魔物(アンデッド)の軍勢。

 

すると、アダルマンがその場に跪く。

 

「朱菜様、アイリス様。」

 

「えっ?」

 

「……様?」

 

アダルマンの突然の様付けに戸惑う朱菜とアイリス。

そして、死霊騎士(デスナイト)死霊竜(デス・ドラゴン)不死系魔物(アンデッド)の軍勢も一斉に朱菜とアイリスに跪いた。

 

「朱菜様とアイリス様の魔法のお陰で、我ら一同この地からの束縛より解放されました。浄化されずに生き残ったのも何かの縁。是非ともお願いしたき義がございます!」

 

「あっ…えっ。」

 

「なっ…なんでしょう?」

 

さっきまでの威厳のある姿から想像できないくらいの剽軽なアダルマンの姿に戸惑うアイリスと朱菜。

 

「私も、朱菜様とアイリス様の信仰するお方に会ってみたいのです。失われた信仰心では、全盛期の力に及びませんでした。私の神ルミナスへの信仰は死にました。ですので、新たなる神を得たく思うのです。」

 

「え〜と…その…神と言うか……。」

 

「私達はリムル様とフォルテ様を敬ってはいますが、信仰してはいませんよ。」

 

「おお!リムル様とフォルテ様と仰るのですね!我らの新たなる神に相応しい素晴らしきお名前です‼︎」

 

もう本当に、あのアダルマンかと疑ってしまう変貌ぶりに笑顔のまま開いた口が閉じられない朱菜とアイリス。

 

「私共は脆弱な不死系魔物(アンデッド)ではありますが、それでもなにかお役に立てると愚考致します。是非ともリムル様とフォルテ様に、我らを御引き合わせ願えないでしょうか。」

 

そう言って頭を下げるアダルマン。他の不死系魔物(アンデッド)達も一斉に頭を下げる。

 

必死に請願するアダルマンの姿にどうしたものかと悩む朱菜とアイリス。

二人の脳裏にリムルとフォルテの姿が思い浮かぶ。

 

ポイン。ポヨヨン!

 

スライム姿で弾むリムル姿。そして、威厳ある圧倒的存在感を放つフォルテの姿。

 

(…確かにフォルテのあの姿を見たら納得するかも。それに、フォルテも不死系魔物(アンデッド)に興味を持っていた筈だから良いかな。)

 

(まぁいいでしょう。素のリムル様をご覧になれば、諦めてくれるかもしれませんし。)

 

アイリスと朱菜は違った意味でアダルマンをリムルとフォルテに会わせる事を決めた。

 

「分かりました。」

 

「フォルテに会わせるね。」

 

「ふぁあ!ありがとうございます!」

 

アダルマンの虚空の眼に薄桃色の炎が灯った。

 

「ですがその前に…。」

 

「はあ?」

 

「私達にはやらないといけないことがあるの。」

 

そう言ってクレイマンの城を見据える朱菜とアイリス。

それを見たアダルマンは…。

 

「成る程。では御案内致しましょう。」

 

「「え?」」

 

「どうぞ。私に付いて来てください。」

 

そう言って、朱菜達をクレイマンの城まで道案内すると言って前に出るアダルマン。

 

「どうぞどうぞ。」

 

必死に守っていた城まで簡単に案内するアダルマンの姿に朱菜達は笑みを浮かべながらついて行くのだった。

 




アダルマンとの戦いに勝利した朱菜とアイリス。
アダルマンのあの変貌ぶりには、皆も唖然となりますよね。

それとは別にお知らせが。
現在、仮面大佐さんが書いている小説『この白狐の戦士で祝福を』でコラボして、こちらの転生したらフォルテ世界にその登場人物達が来た話が始まっています。
時間軸は、映画の紅蓮の絆から一ヶ月経った頃である少し先の未来。
故に、まだ登場していないキャラや仕様などネタバレになりますが、それでも良ければ是非読んで下さい。
どうしてそのキャラなどが登場するかは、こちらの本編で投稿していきます。
こちらも、追い付き次第コラボの話をこちら目線で投稿します。
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